香港―中国との関係で緊張も、金融中心地としての位置付けは不動
先般(8月13日~15日)、香港と台湾に行く機会がありました。同僚の古川元久衆院議員とともに、香港で1泊、台湾で2泊という極めて忙しい旅でした。
訪問の問題意識は中国との関係です。その距離感に悩む香港と台湾については報道などでは聞きますが、この目で見たいと思い、行ってきました。今日はそのうちの香港について、少しお話ししたいと思います。
まず、香港が非常に親日的であるということはご存知の方も多いと思います。香港の人口は、約710万人ですが、昨年1年間で75万人、10人に1人が訪日しています。しかも、訪日経験10回以上のリピーターが4分の1を占めるということで、多くの方々に日本にお越しいただき、日本に対して良い感情を抱いている人も多いということです。
この香港で、中国との距離感をめぐって街頭でデモが起こるなど、緊張が生じています。
具体的には、香港のトップである行政長官の選挙は、いままでは間接選挙で約1200人の選ばれた人たちが長官を選んできましたが、これを直接選挙に切り替えるということが議論されています。
2007年に中国の全人代(全国人民代表大会)で、10年後の2017年には香港で直接選挙を実施することが可能であるという決定がなされています。
問題はその直接選挙の中身です。候補者を特定の何人かに絞り込み、直接選挙で選ぶやり方にするのか、あるいは、民主化を叫ぶ人たちは、そうではなく、例えば、人口の1%の署名を集めた人は誰でも立候補できると、そこまで民主化を徹底すべきだという主張をしています。そういったことで、いま対立が生じているということです。
民主化の方向性はいいが、それをステップ・バイ・ステップで進めていくのか、それとも一挙に進めるのか、というスピード感の違いとも言えると思います。
民主化推進派は、香港の中心街である「セントラル」、アメリカのニューヨークで言えば「ウォール・ストリート」のようなところを一挙に占拠すると主張し、世界の注目を集めています。
民主化をめぐる対立の背景にあるのは、やはり中国の存在です。1997年に「香港特別行政区基本法」を作って、イギリスから中国に返還されたときに、50年間はいまの資本主義を認めるということになっていますが、当時と現在とでは中国の経済規模は相当異なっています。
そういう中で、いまから30数年後には中国自身もかなり民主化をし、そこに香港も一体化していくというイメージで考えていた人も多かったと思います。
しかし、中国はなかなか政治改革が進まず、経済的にはどんどん大きくなってきています。そういったことに対する一種の焦燥感や心配が、香港の中で生じているのかなと思いました。
香港の人々と話していると、一方で急ぎ過ぎは良くないという声もあります。そして、香港の現在の地位については、例えば港は中国の深圳や上海に抜かれてしまいましたが、金融の中心地の1つという位置付けは不動です。
上海でもこれから金融特区を作っていこうという構想は中国側にもありますが、やはり、社会主義国である中国政府と一線を画した香港のほうが、国際金融市場にとってはより活動がしやすいということはあると思います。
あるいは、香港に最近、アジア地域全体のヘッドクォーター(本部)を設けるという多国籍企業も増えており、シンガポールと並んで香港ということになるわけですが、それもやはり香港の現在の立ち位置というものがあって、初めて可能になっているわけです。
逆に言うと、中国がいろいろな意味で事実上の実効支配というものを強めてくれば、香港の魅力が失われてしまう。それは中国にとっても損失になるわけで、そういう意味では、香港がいまの立ち位置を失わない限り、香港の特別な地位は維持されるだろうという見方も随分示されました。
私も、なるほどと思って聞いていたところです。いずれにしても、これから香港がどうなっていくかということについては、台湾の人たちが目を凝らして見ています。非常に刺激的な1日でした。
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