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1993.11.12|国会会議録

第128回国会 衆議院政治改革に関する調査特別委員会

岡田委員 新生党の岡田克也です。時間も十五分しかございませんので、端的にいろいろ御質問したいと思います。

今お聞きをしておりまして、皆さんの中で堀込さん、土田さん、野本さん、大体私、同意見であります。特に土田さん、非常に説得的なお話をされていたと思います。それから永田さん、独自のお立場に立って中選挙区制度がいい、こういうお話であります。これは時間があれば十分議論したいところでありますが、国会の中では実は中選挙区制度が一番いいという議論は、議員個人としてはあるかと思いますが、政党としては日本共産党以外はそういう考え方はございませんので、きょうは時間の関係もあって割愛をさせていただきたいと思います。そういう意味で、松沢さんと飯塚さんに主としてお聞きをしていきたいと思います。

まず、松沢さんにちょっとお聞きしたいのですが、一票制の問題です。先ほどもちょっと出たのですが、憲法問題がございまして、私も政治改革特別委員会の中で衆議院の法制局に、一票制について憲法上問題がないということが断言できるのか、こういう質問を二回しております。つまり、無所属候補に入れた場合に政党のところが空欄になってしまう、あるいは小選挙区に候補を立てていない政党に投票したい人は小選挙区が空振りになってしまう、これが投票する権利を奪うことになるのではないか、したがって憲法違反ではないか、こういう質問に対して衆議院の法制局は、答えは言えない、つまり憲法に合っているということを断言できなかったわけであります。この点についてどうお考えでしょうか。

松択睦君 さあ、私が聞いたわけじゃないからわかりませんから、先生の方がわかっているんでしょうから。ただ、過去に二名連記ということが終戦直後の衆議院選挙ではございましたね。だから二名連記なんかの方がわかりやすいと私どもは思いますね。

だけれども、なぜ一票制かといえば、自分の意思が、個人に入れたことはイコールそれは政党に入れたことになる、比例区を選んだことになるということの方が非常にわかりやすくて投票する側の方はいいと思いますし、そんなに政策が違わないのにあの党だ、この党だとやたら出て、それで混乱して五人も十人も出てというんじゃなくて、ある程度みんなまとめられて、二大政党型を志向するための小選挙区制だという論理もあるんですから。多党化の論理もあるんだから、両方ともあるにしても、いずれにしても明確な方が選ぶ側はいいんですよ。

ところが、今の議論は、みんな選ばれる側の方が、おれの都合が、おれの都合がと言っていて出てくる感じになっているから、これではちょっとわかりにくいから自民党としては一票制で統一した、こう思います。

岡田委員 今の松沢さんの御意見は政策論なんですね。それで、そこは一票制、二票制それぞれの立場からいろいろな議論があると思うのですが、私がしておりますのは憲法論でありまして、幾ら政策的によくても憲法に違反しては、これは憲法が最高法規でありますから、できないわけであります。

もし、憲法違反の疑義がかなり強い中でこの制度が導入をされ、衆議院選挙が行われた、その後最高裁判所に行って違憲であるということになれば、これは大変なことになってしまう。つまり、選ばれた人はみんな憲法違反で選ばれてきたということになるわけで、国政大混乱に陥るわけであります。そこの問題点があるということを一言御指摘をさせていただきたいと思います。

松沢睦君 ですから、そのことは法律をつくられる衆議院議員の方々がよく御存じなんですから、私どもは憲法違反であるかないかということはわからないのですから、それはそういうお立場で国会で論戦をしていただきたいと思います。

岡田委員 ですから、せっかくの地方公聴会でありますから、国会ではそういう議論がある、それを踏まえて御議論をいただきたいということを申し上げるわけであります。

それから、飯塚さんにお聞きしたいと思いますが、先ほど、比例区で全国単位だと女性が出にくくなる、こういうお話がございましたが、どういう意味なんでしょうか。ちょっとわかりにくかったものですから、御説明いただきたいと思います。

飯塚実枝子君 参議院の例を見ましても、私の最も尊敬する先生がこの前、十六位だかで当選できなかった。私たちの自民党の方でございまして、大変女性党員も尊敬とあこがれを持っていた先生でございましたけれども、その先生が次点ということで当選されなかった。私たちもいろいろな会に出かけていますけれども、女性を優先するあるいは尊重すると言われておりますけれど、私はまだまだ、特に国会の中では、本当に女性副総理がいらしてもいいくらいじゃないかと思うのでございますけれども、女性の地位というのは非常に低い。地域にありましては私たち婦人が大同団結してこの人を出そうという、特に上州の女性の中でそういう雰囲気が高まってまいればそれもまた可能かもしれませんけれども、全国区ということは非常に難しいのが現状であると思います。

岡田委員 今の衆議院も参議院もそうなんですが、現状を見ますと、とりわけ自由民主党、私も自由民主党であったわけですが、自由民主党の場合には女性議員が地方区において非常に少ないという現実があります。これは恐らく個人本位の選挙ということと無縁ではないだろうと私は思うわけであります。現実に我々議員の生活を見てみますと、それこそ家族をほうり出して朝から晩まで走り回っている、こういう現実があります。女性の場合に、例えば子供さんを抱えておられる、あるいはお仕事を持っておられる方が選挙に出よう、こうしたときに、そういうものを捨てなければいけないという問題が出てくる。その辺が実は日本において女性議員が少ない一つの大きな原因ではないかなと私は思っております。

全国だと女性が少なくなって都道府県だと多くなるというのは、必ずしもそうは言えないのかなと。それはまさしく先ほど御指摘ありましたけれども、それぞれの党の女性に対する考え方の問題、あるいは女性議員に対する評価の問題であって、必ずしもブロックが全国だからだめだとか都道府県だからいい、こういうことにはならないんじゃないかな、こういう気かいたしますが、どうでしょうか。

飯塚実枝子君 中選挙区の場合、確かに今まで自民党は地方議員に女性が大変少なかったと思います。
これは先生はもと自民党にいらしたから御承知のように、自民党は非常に有能な男性の先生方の層が厚い、少しぐらいの小ざかしい女性が出ていく余地がない、それぐらいに自民党はすばらしい男性の先生たちがいらっしゃると、今でもこのように思っております。一部の方のために大きな自民党すべてが悪いというようなことに憤慨しておるところですけれども、今回は小選挙区となりますと、女性が出られる確率が中選挙区よりも、女性同士の団結というのが、例えば地域の婦人会とか今までいろいろお互いに育ててきましたものを女性が力を合わせれば、中選挙区よりもむしろ小選挙区の方が出やすくなるんじゃないかな、このように単純に、これは女性の意見でございます。

岡田委員 それから、ちょっと時間もありませんので一言コメントさせていただきますが、先ほどの飯塚さんのお話の中で、選挙というのは直接選挙するのが大原則だ、本人を選びたいというのが有権者の権利である、こういうお話がありました。

これは、我々今の制度になじんでしまっていますので、そういうふうに思うわけでありますが、世界的に見ますと、候補者を直接選ばない、つまり比例制の国というのはかなり現実にはありまして、候補者を直接選ぶ小選挙区制の国というのは、英米系の例えばカナダとかアメリカとかイギリス、そういう国はありますが、ヨーロッパの大陸系の国は比例制というものが何らかの形で入っている国がほとんどである。そういう国は個人を選ぶというよりも党を選ぶということが前提になっているということなんで、我々は余りにも今の中選挙区制度のもとで個人を選ぶということに目が行き過ぎていますが、必ずしもそれは投票者の権利を奪うということではないと私は思っておりますので、これはコメントだけ申し上げさせていただきます。

時間もありませんので、松沢さんにもう少し聞かせていただきたいのですが、地方議員への配慮の問題ですね。これは非常に大事な問題だと私も思っておりまして、例えば何にお金がかかるかといえば、一つは選挙、そしてもう一つは日常の活動ということになると思います。私は、お金が少なければ少ないほどいいという考え方には立っておりません。選挙にお金がかかるのであれば、それは国なりあるいは都道府県が負担をする、公営選挙の割合をふやしていくことで解消できるのではないか、こういう気がいたします。それから、日常の議員としての活動のために一定の経費が要る、こういうことであれば、それはまさしく都道府県議会とか市町村の議会で御議論いただいて、そのために必要な費用をそれぞれの都道府県や市町村の御判断で有権者の皆さんの御理解をいただいた上で出す仕組みをおつくりになったらどうか、こういう気がいたしますが、いかがでしょうか。

松沢睦君 おっしゃるとおり、地方議員については、地方議員にかかわらず国会議員全部そうですけれども、とにかくいつから十何人も秘書がいるようになったり、ああいうことをするようになったのか、ちょっとわからないぐらいやっちゃった。そういう流れで、地方議員もみんなそういう影響を受けたわけです。だけれども、よく考えてみれば、我々自身みんなそうですけれども、秘書もいないし、自分一人で回っていて地元の仕事をしているのですから、そんなに選挙に金はかかりません。

だから、公費の負担というものはできるだけ受けない方がいい。国会議員のように政党にうんと金をよこせなんて、そんなことを地方議会なんかは考えてもおりませんし、またその必要も私はないと思います。しかし、向こうがもらえてこっちがもらえないのはばかげじゃないかという議論があって、そういう話も出るのでしょうが、基本的にはお金を使わないということが原則ですから、現状の中で地方議会に改めて県議会を開いてお金を国会と同じように出すなんということは、私は考えてみたこともございません。

ただ、一つ先生に申し上げておきたいのは、市町村長、都道府県知事の選び方について、これはもうほとんど全部無所属でいらっしゃいます。ですから、これが一体どうなってくるかということ、そしてそれが非常に安定をしてなじんできているわけですから、そういうことも含めて地方議員の声をしっかり国会で聞いてみて、本当に国会議員と同じベースのことを考えているのか、考えていないのか、じゃどれがいいのかということはしっかり聞いていただいて、そしていろいろ御指導いただきたいと思います。どういうことでも受けて立ちますから。

岡田委員 時間もございませんので、最後にこの法案の今後の問題でございます。

先ほど石破さんの方からもいろいろお話があったのですが、会期が十二月十五日になっている。そして参議院でもそれなりのきちんとした審議をしていただかなければならない。こういうふうに逆算をしてまいりますと、どうも来週のしかるべき時期には衆議院を通過させないと、この国会での成立は不可能であります。

ということは、選択肢は二つあります。もちろんきょうも協議が行われておりますが、きょうから米週前半にかけて精力的な妥協のための協議をして、そして合意に達すればもちろん問題ないのですが、合意に達しない場合に、そのときに政府の原案で粛々と、私は強行採決とは申しません、粛々と採決をしていくのが民主主義のルールなのか、それともこの国会での成立というものを断念して後送りをしてしまうのか、選択肢は二つしかない。もうそこまで今は追い込まれているわけであります。

そういう意味で、私はここではもう随分議論もしてまいりました。この地方公聴会を入れると百時間を超える議論でありまして、宮澤内閣のときよりも多くなる。しかも、海部内閣から含めますと三百時間を超える議論をしているわけでありまして、もうそろそろ断を下すべき時期が来ているのじゃないか。もちろん話し合いは最後まで努力をいたしますが、その結果、最終的には採決ということにいかなきゃいけない、こういうふうに思っているところでございますが、もし御意見があれば一言お伺いしたいと思います。

松沢睦君 十二日というお話があったようですけれども、きょうあたりのテレビを見ていると、今こだわらないというようなお話になってきているようですね。いずれにしても、話し合おうという空気が出てきて共同提案もするべきだという意見も出てきているのですから、お互いにあれをしてぜひ成立をさせてもらいたい。成立をさせてもらいたいが、強行採決で成立をさせるようなことだけはどんなことをしても避けて、共同提案をしてもらいたいということだけお願いします。

岡田委員 私どももなるべく合意の上で成案を得たい、こういうふうに思っておりますが、最後に一言だけ申し上げさせていただきますと、この国会が始まってから政治改革特別委員会の審議が始まるまで一カ月かかりました。もしあのときにもう少し早くこの特別委員会の審議に入っていれば、これだけ日程は詰まらなかったと思います。

それから、自由民主党の森幹事長は、この地方公聴会が終わるまで本格的な協議はすべきでないということを言われました。私は、結論を出すのは地方公聴会の結果が出てからでいいと思いますが、協議に入らないということは理由がないような気がいたします。故意にそういうことをやっておられるとは私は思いませんが、限られた時間でありますので、お互い精力的に議論を尽くしていかなければいけない、こういうふうに思っていることを最後につけ加えさせていただきます。

松沢睦君 先生、一言だけ。

先生は一生懸命御努力なすったと。さっき石破先生にも皆さんにも言ったけれども、全体は知らないのですよ。だから、おれたちだけ努力したのだからもうこれでいいんだというのじゃなくて、国民は知らないのですから、そういう謙虚な立場に立って国会の採決というものを考えていただきたいということを私は申し上げているのです。

それと、今おっしゃられましたように、とにかく皆さんできちんと合意をする。森幹事長だって、私どもに地方公聴会のお話があって片っ方でどんどん進んでいるのでは、何を言ったってしょうがないじゃないか、公聴会なんか、決まっているところへ行ったってしようがないじゃないかという声があるんだから、公聴会が済んでから審議に入ることの方が、私は国民の声を吸い上げるという意味では地方公聴会の意味があるというふうに思いますので、目先のことにこだわらないで、大乗的見地に立って国民のための立派な法案をつくっていただきたいと思います。

岡田委員 一言、最後に。

それぞれの国民の理解が進んでいないというのはおっしゃるとおりかもしれません。しかし、それは、一つはマスコミの仕事であると同時に、それぞれの地域選出の国会議員がそれぞれの地域に帰って語りかけて、そして有権者の皆さんに御理解をいただくというのが仕事であろう、こういうふうに思っておりますので、最後につけ加えさせていただきます。





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