141回 衆議院・財政構造改革の推進等に関する特別委員会
岡田委員 新進党の岡田克也でございます。
私の方は、きょうは経済協力と社会保障の関係を中心に質問したいと思います。
まず、経済協力について質問したいと思います。
この法案の中で、第二十二条第一項「政府開発援助費の量的縮減目標」「平成十年度の当初予算を作成するに当たり、政府開発援助費の額が平成九年度の当初予算における政府開発援助費の額に十分の九を乗じた額を上回らないようにするものとする。」つまり、一〇%減ということを決めているわけであります。
今まで経済協力の予算というのは、いわば聖域扱いであって、財政再建の中で防衛費と並んで一定の伸びが確保されてきたという歴史がございます。そういう中で見ると、この一〇%減というのは唐突な感じがする。いいか悪いかということは、私の考えは後で申し上げたいと思いますけれども、ほかの項目を見ても、公共事業七%減というのはあっても、一〇%の大幅カットというものはほかにないと思うわけです。
これだけの大幅カットをするということは、今の経済協力予算に対していろいろな基本的な考え方、しかもそれはネガティブな考え方があってこういうことになっていると思うわけですけれども、総理のこの一〇%減についての基本的なお考えを聞かせていただきたいと思います。
〔委員長退席、佐田委員長代理着席〕
橋本内閣総理大臣 ODA、いわゆる政府開発援助、これが我が国の国益の維持増進あるいは安全保障の観点から重要な施策として位置づけられてまいりましたこと、そして、我が国が平和国家として国際社会で積極的に活動してまいります上でも非常に大きな国際貢献の柱の一つであったことは議員御指摘のとおりであります。そして、そういう位置づけというものは、基本的に私は将来にも変わらないものだと思います。
その上で、この何年間かの間、我が国のODAの量的な拡充というものが国際的にもひどく飛び抜けた状況になってきている。そして、国連の新たな財政負担の議論を見ておりましても、非常に多くのものを日本が求められる。しかし、日本が求めておりますような国連改革というものがなかなか進まない。そういう状況等があり、一方では、我が国の本当に危機的な財政状況の中で、やはりこのODAというものについても量から質へ変えていく必要があるということを考えまして、十年度のODA予算というものを対九年度比一〇%マイナスの線を上回らないということにいたしました。
この効果が最大限に上がりますような重点的、効率的な予算配分というものを今まで以上に心がけていく、そして、その質の向上及び効果・効率的な実施に努めていきたい、そのように考えておるところであります。
岡田委員 今の御説明で私は納得しがたいわけですけれども、まず、量的にかなりふえてきたと。確かに予算ベースではそうだと思いますけれども、最近の円高傾向でむしろ量的にはここ一年をとれば厳しいというのが現実だと思いますし、それから、全体の財政状況が厳しい中でこのODAもということを御説明だったと思いますけれども、なぜODAが一〇%減になっているのか、ほかと比べて大きくカットされているのかということについての説明では私はなかったように思いますが、この点についていかがでしょうか。
涌井政府委員 財政改革会議におきます議論では、ODAにつきましては、我が国のODA実績が平成三年以来六年連続で世界一の水準となり、既に量的拡充は国際的に顕著であるということ、それからもう一点は、欧米先進国においては厳しい財政事情を背景として援助額を抑制する、いわゆる援助疲れの動きが見られる一方で、我が国の財政赤字が主要先進国中最悪になっているということにかんがみまして、我が国のODA予算の水準を引き下げるべきだという議論がなされ、最終的にマイナス一〇%という決定になったわけでございます。
岡田委員 今、主計局長の方から経過説明はいただいたわけですけれども、そういう議論を踏まえて、総理としては今大蔵省の方が説明されたような議論を是としてお決めになった、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
橋本内閣総理大臣 財政構造改革会議の中で議論をしてきました議論の帰結として、この数字を確定をいたしました。
岡田委員 さて、そもそも論なんですが、経済協力というのは一体何のためにやっているのか、そういうところがきちんとしていないと、果たして一〇%カットがいいのか悪いのか、あるいは、そもそも経済協力について今までふやしてきたことがよかったのか、そういうことがはっきりしないと思うわけであります。ここのところがなかなかわかりにくいというか、いろんな御説明をいただくのですが、聞いているうちにわからなくなるというのが私の実感でございます。
一言で言って、もちろん経済協力は非常に多様でありますからなかなか一言で言えない部分があることはわかりますが、大きな柱として経済協力というのは一体何のためにやるのかということについて御説明をいただきたいと思います。外務大臣。
小渕国務大臣 抽象的になるかもしれませんが、一言で言えば、世界の平和と安定に寄与するために支出するものだろうと。我が国としては、憲法の前文にもありますように、国際的に名誉ある地位を占めたい、こういうことに尽きるんじゃないかと思います。
もちろん、経過で、戦後、賠償から始まって経済協力に進んでいった点もありましょうし、いろいろ、我が国が発展する過程で世界の各国からの協力あるいはまた国際機関からの融資そういうものを受けて我が国がこれだけ発展してきた、そういう背景を考えると、これだけになった日本としても応分の対応をしていかなければならないのじゃないかと思いますし、要は、世界のそれぞれの国々に経済的にも非常に差異がある、こういう意味で、やはり世界各国が水平化してそれぞれが自立できるような形になっていくことが冒頭申し上げましたように国際的な平和と安定につながるということですから、この理念に向かって努力してきた、こういうことだろうと思います。
岡田委員 世界の平和と安定に寄与するというお話でありますが、世界の平和と安定というのは非常に重要なことであることは間違いないわけですけれども、そのことと、それじゃ、これだけ日本の国内が非常に厳しい中でこれだけの援助をしなければいけないのか、一兆円の援助をしなければいけないのかということがどういうふうに結びつくのかということだと思うのです。
私どもよく有権者の皆さんとお話をしておりますと、経済協力に対しては大変厳しい意見が多い。それは、もちろん誤解も一部あるとは思います。しかし、例えばこういうことを言われますね。総理や外務大臣に大変失礼ですけれども、総理や外務大臣が外国に行かれる、そのときに必ず援助の金額が示される。何かこう手土産みたいな、ばらまきでやっているのじゃないかというのが、これは国民の受けとめ方です。
それからもう一つは、いろいろなむだがあるのじゃないか。これはマスコミの報道に基づいて国民が判断しているわけですけれども、例えば立派な病院がつくられて、その病院が結局使いこなせる人がいない、そういう報道がよくされますね。あるいはむだなダムがつくられる、そういうこともあります。
それからもう一つは、不正の温床になっているのじゃないかということですね。経済協力で、いろんな裏で資金が還流しているのじゃないかとか、そういうことも報道を時々されて、そういうことに対する疑念もある。
そういう国民の、ばらまきじゃないかとか、むだがあるのじゃないかとか、不正があるのじゃないかとかいうそういう疑念に対してきちんと答えないと、私は、幾ら世界の平和と安定に寄与するというきれいごとを言っても、それで国民がわかりましたということにはならないと思うわけですけれども、この点について、総理、外務大臣、いずれでも結構ですけれども、お考えを聞かせていただきたいと思います。
小渕国務大臣 実は私、昨年、党におきまして総裁から命ぜられたただ一つの仕事は対外経済協力委員会の委員長、こういうことでございました。そのときに、ただいまお話にありましたように、来年度以降ODA予算については一〇%カットという財政改革会議の報告がなされるということも聞きました。
その過程でいろいろ議論しましたが、結局党内的にも、今委員が御指摘したような点に触れての御意見もありました。あるいはまた、現在の景況に関して、中小企業その他大変厳しい環境の中で対外的に経済協力をする意義はどうかというようなこともございました。あるいはまた反面、もっともっと各国に対する協力は、せっかく世界のトップドナーになったんだから、この地位は占めていくべきだという議論もありました。
そこで、一〇%について私自身も考えまして、ここにおられる総理や大蔵大臣にも、一〇%からもっと削減できないかというようなことも考えてはみましたが、やはり私は、今日ODAに対しては大きな変革期だろうと考えております。そのことは役所におきましても、外務省はもとよりですが、通産省あるいは経企庁等々につきましても、内部的にいろいろの審議会をつくりまして、新しいODAのあり方について検討を始めているということでございまして、そういった意味で、一〇%カットというのは非常に厳しいことです、厳しいことですが、この機会にやはり、戦後ずっと続けてまいりました援助のあり方等も含めまして、新しい二十一世紀を目指してのこのODAのあり方ということを検討すべきある意味では絶好の機会ではないかとも考えまして、そのことを甘受して政府の決定にもなっておるわけであります。そういう意味で、御指摘をいただいたような点も含めまして、これから全力を挙げて新しいODAのあり方、姿、こういうものを徹底して検討しなきゃならぬと思いますし、何といってもそれは国民の皆さんの理解と協力がなければできないことですから、せっかくの機会ですからこのことも含めて努力を傾注すべきだ、こう考えております。
岡田委員 そこで、今総理もお話しになったところでありますが、二十一条の一項で「その量的拡充から質の向上への転換を図る」という表現が出てまいります。このことの具体的意味というものはどういうことでございましょうか。
三塚国務大臣 本件、外務大臣からも言われました。基本は総理から言われたところであります。御案内のとおり、厳しい批判がございます。
同時に、御案内のとおり各国から、途上国だけではなく中進国まで要請が相次いでおります。九一年からだと思いますが、ODA拠出国ナンバーワンであります。九一年から連続して今日まで巨額の資金提供を行ってまいりました。そういう中で、量より質への転換、これが最大のポイントであります。御案内のとおり、各省庁にまたがっております。よって、所管の枠を超えた総合調整が行われなければなりません。
今後、これは重点的、効率的な予算配分を行うことによって質の向上を図り、その内容が被援助国の理解と信頼を得るものになりますよう、今後、国際貢献の責任の重大なことを加味しながら最大の努力をしてまいります。
岡田委員 今の大蔵大臣の御説明は、量から質への転換というのは、要するに、実施体制の話だと。そこで各省ばらばらにいろいろなことをやっている、そこにむだがある、だからそれを総合調整してやっていけば効率的になる、こういう御趣旨だというふうに理解をいたしましたが、それだけでございますか。例えば、援助の中身について構造的な改革というものをお考えではございませんでしょうか。
三塚国務大臣 本件は、外務大臣からも指摘、また岡田委員から段々の、援助のあり方、批判について御指摘がございました。当然私どもも本件は知悉をいたしております。よって、その内容の点検、構造改革の推進についても明示をされておるところでございますから、内容にわたり点検をし査定をしてまいりますことは、原案作成権のある大蔵の責任であると思います。
岡田委員 大蔵大臣というよりむしろ外務大臣にお聞きをしたいと思いますけれども、この量的拡充から質の向上というときに、体制以外にどういう質的向上というものをお考えなのでしょうか。従来の経済協力の基本的考え方を変えるとかあるいは重点化するとか、そういった観点はないのでしょうか。私には、体制を一元化するということだけで、一〇%カットに相当するそういうものが出てくるというふうには、ちょっと思えないわけであります。
小渕国務大臣 先ほどもちょっと御紹介いたしましたけれども、前外務大臣のときでございましたが、この問題については、二十一世紀に向けてのODAを検討すべきだろう、こういうことで、外務省におきましてもODA改革懇談会というのをつくりまして、現在中間報告の段階でございますが、いずれ今年末から来春早々にかけて報告が出ると思うのです。
そこでの取り上げた項目を御紹介しますと御理解いただけると思いますが、一つは、国別の計画を策定して、もう少し国々の、それぞれの実態を考えていくべきだ。あるいは現場主義、途上国のニーズに即したものにしなきゃならない。それから実施体制、これは今大蔵大臣申されましたが、我が国の十九省庁にわたる体制の中でそれぞれ取り組んでおりますけれども、こういった点についても、最も効果的、合理的にするのはどういうことかというような点もあろうかと思います。
それから南南協力の問題。さらに国民参加ということでありまして、最近はNGO等の非常な努力が認められるわけでありますが、こうしたところとの協力関係をどうするか。そしてまた、何といっても、これを実行するためには人材が必要である。その養成には心がけてはおりますけれども、まだまだ諸外国などに比べますとその点では残念な状況でありますので、こうした諸点をいま一度レビューしまして、それぞれ実のある方向にいたしたいと思っております。
なお、先ほどODAについて、戦後ずっとと言いましたが、先ほどお話し申し上げたように、それぞれの国に対して、日本が独立する過程におきまして、それぞれ賠償問題の支払い等に出発した点もございまして、そうしたものから出発した点もありますが、ODAとしては、昭和四十年以降そうした形で、非常に額も増額の一方でやってきた、こういうことでございますので、申し上げたいと思います。
岡田委員 今外務大臣から国別の話が出ましたので、一つの例を取り上げて、国別の援助額の決定というのがどうも惰性に流れていないかということを申し上げたいと思うのですが、具体的に国の名前を挙げるのはどうかと思ったのですが、例えばインドネシアですね。
インドネシアは、一九九六年の日本からの最大のODAの供与国であります。九・七億ドル、大変な額だと思います。全体のODAの二・六%を占めます。二番は中国でありますが、中国は八・六億ドルですから、中国より一億ドル多いわけですね。それから、円借の累計で見ますと、インドネシアに対して、今まで二・九兆円の円借を供与しています。二番は中国で、一・九兆円ですね。
なぜインドネシアにこれだけ力を過去に入れ、そして今も力を入れなければいけないのか、そこについてぜひお考えを聞かせていただきたいと思います。
小渕国務大臣 お答えいたします。
今委員が御指摘のように、インドネシアにつきましての累計額は御指摘のとおりでございます。最近の数字で、九七年では第二番になっておりますが、いずれにいたしましても、その数字の多いことは確かであります。
そこで、インドネシアにつきましては、国自体が、五カ年計画に基づきまして各援助国に計画的に支援を要請しておりまして、特に他の東南アジア諸国と比べて大きなインフラ需要に対応するため、円借の期待が非常に高いということにこたえたものだろうと思っております。
そこで、インドネシアにつきましては、伝統的に我が国と非常に友好関係にあるのみならず、我が国の海上輸送及び天然資源供給にとりましてまことに重要である、また途上国のリーダー的役割を果たしている点でも外交的に重視をしておるということでありますが、いずれにいたしましても、インドネシアが今日これだけ大きな期待がありまする以上は、それにこたえていきたいということの結果がそうした数字になっておるものだと思っております。
岡田委員 いろいろ今御説明されたのですけれども、期待が高いというのは、これはどこの国も期待は高くて、日本の援助をたくさんほしい、そういうふうに言っていると思うんですね。伝統的な関係というのは、これは要するに惰性だということの裏返してはないでしょうか。
今外務大臣がおっしゃった中で、天然資源の供給国として重要だ、確かに過去においてはそうだったと私は思います。インドネシアは石油の供給国であります。中東依存度を下げるという国策があります。そういう国策から見れば、インドネシアにいろんな意味で援助していくということは大事なことだと思います。しかし、インドネシアは二〇一〇年には石油輸入国になるんです。そういうふうに言われています。つまり、今や輸出国じゃないんです。そういう国に対して、今の理由で、大事な石油供給国であるという理由で援助を続けているというのは、それは私は惰性だと思います。いやいや、そうじゃなくて天然ガスがあるじゃないかと言われるかもしれませんが、天然ガスは、インドネシアだけではなくて、オーストラリアもアメリカも、タイでもマレーシアでもブルネイでも出しますから、別にインドネシアが特に大事だということはないはずですね。
それから、もう一つ申し上げたいんですが、中立国、非同盟国のリーダーだとおっしゃった。それはそうかもしれませんが、非同盟国という概念は、東西対立があったときに非常に意味があったんであって、今や色あせていると思うんです。そういう意味でも、インドネシアに特に出す必要性というのは薄れている、そういうふうに私は思います。
あわせて、インドネシアという国が今どういう国なのかということも指摘しておかなければいけないと思います。選挙はやっていますけれども、その選挙が果たして民主的に行われているのか。同じ人がずっとトップに立って、その一族がいろんな意味で利益を得ているという、そういう報道も無視できないと思うんですね。
そういうこと全体をひっくるめて考えたときに、本当に我々の大事な税金をこの国にこれだけ出す必要があるのか。一年間で九・七億ドルの、これは円借ですけれども、供与している。そういうこと一つ一つをとらえて、やはり国別に本当に出す必要があるのかどうか。
その中で、重要な視点の一つは、我が国にとってどうなのか、国益から見てどうなのかという観点だと思うんです。そういう観点から見直して、そしてもう一度、この二国間の援助についてリストラをやっていただきたい。そういうことをきちんとやらないと、国民に税金をこれだけ投入することについて納得してもらえない、そういうふうに私は思うわけですけれども、外務大臣の御見解を聞きたいと思います。
小渕国務大臣 お答えいたします。
先ほども御答弁申し上げましたように、財政改革という立場でありましたけれども、削減率で最も高い数字をお示しをされたんです。ですから、それに対して、我々としてもこれにどうこたえていくべきかということで、申し上げましたように、大変いいゴールデンチャンスだという見方もできるわけですから、今御指摘のような点について、先ほどもお話し申し上げましたが、国別の問題につきましても精査して、過去からの継続は、これは大切にしなきゃならない問題だと思うんですね、一遍に切るということはできないわけですから。しかし、同時にまた、これから、それぞれの国と我が国との関係をも含めまして、十分検討しながら、その数値についても正しい数値が生まれるように検討していくべきだ、このように思っています。
岡田委員 経済協力についてはもう一言だけ申し上げたいと思いますけれども、どうしても二国間は切りにくいということで、国際機関を通じた多国間が予算カットのターゲットになっている。その中で、特に任意の拠出金が切られているという、予算要求ベースでそういう事実があると思います。
例えば、緒方さんがトップを務める国連難民高等弁務官事務所、これに対する予算が、九十四億円が三十七億円カットされた。これはやはり、緒方さんという日本人、非常に頑張っておられる、我々は同じ日本人として応援してあげたい、そういう気持ちは、それは国民の気持ちだと思うんですね。それに対して、三十七億円のカット、三九%のマイナスです。こういうこともやはりもう少し考えるべきじゃないか。
確かに国連の機関の中には非効率で何をやっているかわからない機関もあるかもしれませんが、しかし我々は、緒方さんの活躍というものは、それは評価している国民がほとんどだと思うんです。そういうことについてもぜひ御配慮をいただきたいと思いますが、大臣のもし何かコメントがございましたら、おっしゃっていただきたいと思います。
小渕国務大臣 予算編成、概算要求過程におきまして、先ほどお示しをいたしました数字に基づいて、外務省としては、その拠出金の問題につきましても、ある意味では削減率が三五プロから四五プロということになっておるわけですね。その中において、どういう機関がどのようなお仕事をされておられるかということも、それは十分検討しなければならない問題だと思っております。
そういった点で、私自身も国連に参りました折に、まず国連の事務総長からもいろいろ御指摘がありましたが、いずれにいたしましても、それぞれの機関に対する拠出金問題につきましては、最終的には、これから予算編成過程におきまして、外務省としても十分検討した上で、財政当局とも御相談させていただきたいと思います。
岡田委員 それでは、次に社会保障の問題についてお聞きしたいと思いますが、まず社会保障関係費の伸びについてでありますが、これは八条で、平成十年度の社会保障関係費の額は平成九年度の当初予算の額に三千億円を加算した額にする、それから十一年度、十二年度は百分の二を乗じた額を上回らない、こういうふうに書いてあります。これは、高齢者の人口の伸びの範囲に予算の伸びをとどめた結果こういう数字になっている、こういうことでございますが、なぜ高齢者の人口の伸びによって社会保障費の伸びというものを決めなければならなかったのか、そのことについて、総理の基本的なお考えを聞きたいと思います。
橋本内閣総理大臣 我が国のさまざまな変化の基本的な要因の中に、人口構造の高齢化、同時に少子化というものがあることは、議員がよく御承知のとおりであります。
財政構造改革会議が財政構造改革のためにあらゆる歳出を議論をいたしました中で、社会保障関係費というものの性質も随分議論になりました。そして、高齢化の進展に伴いまして、そのままにいたした場合、毎年多額の当然増の生ずる経費、そういう性格を持っておりますことから、集中改革期間中にも一定の伸びは持たさなければならない。同時に、社会保障関係費の当然増のうちで、物価あるいは賃金の上昇に伴う単価の増などによる影響、こうした部分について制度改革などによって吸収することを考えまして、集中改革期間中の社会保障関係費の増を高齢化の進展に伴う高齢者数の増に伴う増分以下に抑制する、このような方針を決定をいたしました。
岡田委員 高齢者の伸び以外の、いわばそれ以外の当然増部分については制度改革でのみ込む、こういうお話でございます。
しかし、一方で、じゃその制度改革というものについての具体的な道筋、青写真というものはあるのかということであります。もちろん、今医療制度についてあるいは年金について、それぞれ議論が政府の中で進行中であることは私も承知をしておりますけれども、しかしどういう方向になるのかということについての具体的な絵がまだ見えてこない。そういう中で、伸びをこれだけキャップで抑えてしまうということは、それはいたずらに国民の不信、不安を招いているのではないか。
構造改革の道筋が一方で見えていれば、ああ、こういうところで予算を何とか削減していくのか、したがって実際には自分たちにとっては影響はないことだあるいはやむを得ないことだ、こういうことがわかるわけですが、そういう全体の構造改革の姿なくして予算だけをカットしていくという、そういう手法が本当にいいのだろうか、そういう気がいたしますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
小泉国務大臣 私は、財政構造改革五原則が出てきたとき、総理が、これをやり抜かなければあすの日本はない、非常な決意だなと思いました。容易ならざることであると。だからこそ、これが具体的になったときには大変だなと思いましたけれども、そこまで総理が決意を固めている、これは、これを支えていかなきゃならないと。
当然、今国民の税金がどの分野に一番使われているかといいますと、今までの借金の利払い、いわゆる国債費であります。このまま税金が利払いに回ってしまう。借金を払うために税金を投入する、これは大変なことだということから、財政構造改革、あらゆる聖域なしに踏み込んでいこうということになりますと、多くの政党の方々も国民も、まず歳出を削減しなさいという総論は全部賛成だったのです。
しかしながら、一律に全部マイナスというのは、これは厚生省の予算を預かる私にとっては不用能ですよと申し上げました。そういうことから、厚生省だけは来年度予算、前年度に比べてマイナスにはしない。厚生省だけではありません、科学技術庁と厚生省だけはマイナスにはしない。プラスの部分は、ほかの省庁がより多くのマイナス部分をかぶってもらう、これまた大変なことであります。今までには考えられない。予算というのは毎年ふえるものだということから、来年度はマイナスするということ自体、これは大きな時代の転換期に来たなと思っております。
そういう中で、国の予算が一番使われているのは社会保障関係費と公共事業費であります。私が日ごろから言っているのは、この財政構造改革なり財政再建というのは大変なことだというのは、なぜ大変かというと、最も国民が要求しているところの予算を減らさなきゃならない、それは社会保障関係費と公共事業費であります。選挙区へ帰ってみればわかります、一番ふやしてくれといりのが公共事業と社会保障関係であります。だからこそ、財政再建というのは口では言うけれども容易じゃない。このままマイナスしたら、経済は縮小しちゃう。いかに民間の活力を発揮させなきゃならないか、両面でいかないとこれは大賀なことになりますよと言いますけれども、ここまで非常な決意を固めたのだからやりましょうと。一番不満が来るところでありますよ。しかし、三千億円増を認められたところで、これから集中三年間というのは、総理の決意にこたえて、非常の決意で我々も、この財政構造改革と同時に社会保障改革に取り組まなきゃいかぬということで今進めているわけであります。
そして、介護保険導入、さらには医療制度の改革におきましても、今まで三十数年間でき得なかったことを、厚生省、主体的な責任を持って意見を出せというから八月七日に提示したわけであります。
これは、今までは考えられないような、薬価から診療報酬から医療提供体制から、ほとんど総合的に網羅した案であります。これを今後、患者負担をできるだけ避けるというのだったら、今まで各政党、各会派で最も抵抗の強かった薬価の部分においても、診療報酬の部分においても、医療提供体制の部分においても大幅に切り込まなきゃならない。これは総合的に考えてもらわなきゃいかぬということで、案を出しました。
しかし、固定しておりません。かなり柔軟な案です。大枠の基本方針は示しましたけれども、これから総合的な観点から眺めて、かなり私は幅のある柔軟な案だと思っております。委員も厚生委員ですから、その点は十分御承知のことだと思います。
そういう中で、私どもとしては、これから予算編成に向けましては、現行制度の中でそれぞれ削減しなきゃならない。さらには、来年度に向けて、抜本改革案と並行して、抜本改革案の示す方向の中で、現行制度を中心にしてカットしなきゃならない。整合性をとるということでこれから苦労するわけでありますけれども、ともかく、もうこれ以上若い世代にツケを回すことはできない、増税もできない、だから行財政改革が必要だということで出てきた中で、総論の中で各論を進めていく中で、それぞれが痛みを伴う、汗を流す、これを国民に理解を求めながら苦しいながらもやっていかないと、あすの日本はないという気持ちで私は取り組んでいかなきゃならないと思っております。
岡田委員 今の厚生大臣の基本的な考え方は、私は全く共通するものがございます。ただ、今、公共事業と並んで社会保障について、それを削減することについて国民の不満が一番強い、こういうお話がありましたが、私はそうではなかろうと思うのですね。つまり、国民は説明をすればわかってもらえる話だと私は思うのです。現実にそうだという実感もあります。
しかし、何を不満に思っているかというと、結局、この前の医療費もそうなんですが、負担が先行するからなんですよ。負担増が先行して、構造改革、構造改革というけれども、それが後から来る。本当にそれをやるのかどうかわからない。結局、全部国民に単純に負担をかぶせるだけで、従来の構造は変えないでいくんじゃないかという不満があるから国民は今怒っているわけですね。そこのところをしっかりやってもらいたい、そういうふうに思うわけであります。
今も、昨日もいろいろな議論が出ておりますけれども、例えば難病の問題、あるいは高額療養費の問題私はこういう問題についても今までどおりではいかぬ、変えなきゃいかぬというふうには思っています。しかし、そういう話ばかりが先行いたしますと、結局国民の負担、税がふやせないからほかの自己負担とか保険料でふやしていって、そこでお茶を濁そうとしているんじゃないか、そういう一般的な感覚が国民にある。それを、構造改革をきちんと道筋を示すことでそういう感触を払拭していただきたい、そういうふうに思っているわけでございます。
医療費につきましても、私は非常に残念だったわけですけれども、本来は負担増と並行して構造改革をやるという話であった。それができなかった。今度は、医療費の負担増を始める九月までには構造改革の案をまとめると与党三党はおっしゃった。しかし、これも出てこなかった。結局、先送り、先送りであります。そういう姿勢が私は国民の不安感を増している、そういうふうに思うわけであります。
具体的なことは、時間がございませんので申し上げませんが、ぜひこれから、私ども野党でありますけれども、議論にはどんどん参加をしていきたいと思いますので、構造改革について、ぜひいい案ができるように厚生大臣、総理の御努力をお願い申し上げたいと思います。
橋本内閣総理大臣 私は今、議員の御質問と厚生大臣のやりとりを聞きながらいろいろなことを思い起こしておりました。今、薬剤の問題がたまたま提起になりましたが、薬剤差益に着目した医療機関経営というものが不健全だという議論は、私どもが国会に出てきたころからございました。そして、四十二年に、それを是正するために薬剤の一部負担というものが導入され、結果として、これは大変な国会での紛争のあげくに成立をいたしましたが、二年後にこれはまたもとに戻されたわけであります。あるいは、将来の医療機関の膨大な増加を考えると、無医大県解消という名のもとに全国に医科大学を設置することの是非というものも随分議論がございました。しかし、結果として、これはそういう方向に動いていきました。医療供給体制の根本的な変化がこの時期に起きてまいりました。
一方、私自身も、ドクターズフィー、ホスピタルフィーを分離した診療報酬体系をつくり、それによって医療機関の経営は安定すべきであり、薬剤差益を中心とした医療機関経営はおかしい、繰り返しいろいろな機会に、自分自身が厚生大臣をいたしましたときも含めやってみましたけれども、結果としては今までなかなかそういう方向に向かわなかったわけであります。そして、その中で、いつの間にか財政的にそれぞれの保険財政が逼迫するという事態にもなってまいりました。もちろん、その間に老人医療を工夫いたしましたり、いろいろなことはやってまいりましたけれども、根本的な効果を生ずるに至らなかったわけであります。
今回、この財政危機を逆に利用しという言い方は非常に不謹慎な言い方になるかもしれませんので、そこは、そういう言い方は避けたいと思いますけれども、これ以上どうにもやりようがない、その中で、しかし将来に向かっても安定した医療保険制度というものはこの国の未来に必要であり、安定した年金制度を維持していくことは、将来の国民の暮らしを考えたときにも絶対必要なものだ。とすれば、この高齢化の進展する中、しかも一方で少子化が進行しているわけでありますから若い働き手も減っていく中で、どういうシステムを組み立てることができるか、全力を尽くして私たちも取り組んでまいりますので、どうぞ御協力を心からお願いを申し上げます。
岡田委員 次に、年金改革についてお尋ねをしたいと思います。
年金の問題は、この委員会でも何人かの委員が取り上げたところでありますが、私も、今若い世代に年金の将来について非常に悲観的な受けとめ方がある、最大の問題はやはり制度の安定性に対する疑問だろうと思います。もっと言えば、五年ごとに見直すことになっている、その五年ごとにだんだん条件が悪くなる。このままいったら、五年、五年で、二十年ぐらいたったらなくなってしまうのじゃないか、こういう不安があるわけであります。
これは、私も五年前の改革にはかかわっておりましたので自戒を込めて申し上げるわけですけれども、当時、何とか三〇%に保険料を抑えよう、二九・八%でしたか、抑えた。ところが、今の新しい人口統計に基づいてやると、いや、三四・六%か八%だ、こういうことで、全然違ってきちゃうわけですね。わずか五年、あるいは五年たたないのに全然違ってきちゃっている。
そういうことじゃなくて、二年後の制度改革はあるわけですけれども、そのときには、少なくともこれから二十年ぐらいはこのままで大丈夫ですよとはっきり胸を張って言えるぐらいの、そういう改革をむしろやった方がいい。その結果、かなり厳しくなると思います。厳しくなっても、これはもう変わらないんだと胸を張って言えるようなものにした方がいいんじゃないか、私はこういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
小泉国務大臣 基本的に今の御意見に私は賛成なんです。
ただし、平成元年に年金改革案、私、厚生大臣のときに大きな話題になりました。当時から、このままでいくと、六十歳支給になると若い人の負担は大変だ、もたないよということで、六十五歳支給の改正案を出しました。しかし、結局、国会に出す前に、反対が多くて提出することはできなかったのですが、その中でも、六十五歳にするのは二十二年後のことを考えてやったんですけれども、いろいろな偏った宣伝によって、来年から六十五歳になるという宣伝をされまして、これはとんでもないという反対が強くなった。あの当時でも、六十歳から六十五歳でやるというのは二十二年かけてやるんですよというのがなかなか国民にわかってもらえなかった。ここが非常に難しいところです。ぱっと出すと、もう来年から、六十歳でもらえると思ったのが五年また延ばされるのかという誤解を与えられた。
しかし、ようやく自民党が、そういう批判というものを反省しながら、各党の協力を得て、六十五歳支給開始年齢を二〇一三年からやることになりました。これも、ようやく、ああ二〇一三年から六十五歳になるのかと、六十五歳支給開始年齢が通ったというとすぐ六十五歳になると思ったのですけれども、結局まだ先の話だな、たしか十七、八年かけて六十歳から六十五歳にするよというのがだんだん理解されるようになりました。
こういうふうに、いかに国民に理解してもらうかという情報提供やら啓発活動等は大事かと思いましたけれども、これからも、今の御指摘を踏まえまして、五年が適当なのかどうかと言いますけれども、国勢調査も五年ごとですね。それで、十年を考えました。しかし、十年では長過ぎるんじゃないか、この時代の変化。五年でも、人口の高齢化と少子化の問題、我々、予想しなかったような進行で進んでいる。これを、じゃ十年まで延ばすと、これほど転変の激しい時代において対応がおくれるんじゃないかという批判もある。となると、十年が長過ぎるとなるとやはり五年というのが適当ではないかなということも出てくるものですから、今言った五年が適当かどうかというのも踏まえて、できるだけ情報を提供して、給付と負担等、あるいは支給開始年齢の点も論点を整理しまして、今後、国民の議論を巻き起こして、お互い合意のできるような改革案を目指していきたいと思っております。
岡田委員 PRの件で言えば、国民はいまだに六十から六十五は一銭ももらえないと思っている人が多いですよ、将来にわたって。この辺もいかに厚生省もPRが足らないかということだと思うのです。部分年金というのも知らないです。
それから、私は二十年というふうに申し上げたのは、二十年間見直しをしないのではなくて、実質的に見直しをしなくて済むような、そういうアローアンスを持った改革をすべきだということを申し上げているわけであります。
年金の将来推計というのは人口の見通しに基づいて行われているということですけれども、現在の数字が、平成四年の九月の推計、例えば二〇五〇年の人口が一億一千百五十一万人。ところが、最新の統計では一億五十万人だ。一千百万人減っちゃったわけですね、わずか五年の間に。見通しが狂った。それから、老年人口が三千百四十二万だったのが、これはむしろふえて三千二百四十五万人。それだけ少子化についての見通しが甘かったわけですけれども、この中位推計をそのまま使うのではなくて、もう少し幅を持って私は計算した方がいいのじゃないか、そういうふうに思って申し上げた次第であります。
それから、いろいろな不安を抱かせないという意味では、この場でも取り上げられたのですけれども、自民党の加藤幹事長が七十歳と言ったと。私は、厚生省の審議会の中でもいろいろな議論が出ていると思いますが、例えば六十五歳をさらに少し、六十七とか、そういう話は議論としてはあっても、しかし七十という議論は私は出てないのじゃないかと思うのですね。突然出てきたのです。しかし、政権与党第一党の幹事長が言うわけですから、国民は、そうなるんだ、あるいは政府もそういうふうに検討しているんだ、こういうふうに思うと思うのですね。
大臣、ここは国民の不安をぜひ取り除くために、今政府の中で七十などという意見が出ているのかどうか、この点について御答弁いただきたいと思います。
小泉国務大臣 我が党の加藤幹事長がどのような発言かというのは詳しくは聞いておりません。新聞報道でそのような御趣旨の発言をしたというのは見ましたが、実際に七十歳にするということ、した方がいいという意見はあっても、これをしようという議論の方向には私はなってないと思います。
これからは、支給開始年齢と今の給付で、そのままでいいのか。あるいは今の給付だと三〇%を超えるのが耐えられるのだろうか、こういう問題がありますから、いろいろな御意見を踏まえながら総合的に、総合的にというのは、税金をどのぐらい投入するか、給付をどのぐらいにするか、保険料をどのぐらいにするか、支給開始年齢をどのぐらいにするかという、こういう点を含めていろいろな選択肢を提供していかなきゃならないな。
当面は、六十五歳の前提でやります。しかし、この六十五歳で、今の給付を下げるのは嫌だ、保険料を上げるのも嫌だとなると、じゃ、支給開始年齢はどうするかという問題が出てきます。その点も含めて、できるだけ国民に、こういう状況だったらこのような給付になりますよ、あるいはこのような保険料になりますよ、このような支給開始年齢になりますよというのは、わかりやすい資料をこれだけ整理して、これから提供して、多くの国民に関心を持ってもらって議論を進めていきたいと思います。
厚生省が七十歳支給開始を検討しているということは全くありません。
岡田委員 それから、世代間の公平それから世代内の公平という問題を一言申し上げたいと思います。厚生省も最近はかなり情報公開が進んでおりまして、今七十歳の方、厚生年金ですけれども、幾ら平均して保険料を払っているか。本人と事業主負担合わせて八百万です。八百万払って、年金は六千百万受け取る。これは平均の姿ですね。それは、いい、悪いということは私申しませんが、事実としてそういう数字になっています。それかり、五十歳の方も三千万払って六千二百万もらう。ところが、十歳の方は六千八百万払って五千八百万しかもらえない。これから生まれる、平成十六年生まれの子供は七千二百万払って五千八百万しかもらえない。
これは、やはりどう考えてもおかしい。七千二百万払って、もちろん半分は事業主ですけれども、七千二百万払って五千八百万しかもらえない、それなら貯金の方がいい。だれが考えても、私はそういうふうになってしまうと思うのです。
それから、今までの日本の経済成長を支えていただいた私よりも年上の皆様に言うのは申しわけないけれども、しかし、八百万で六千万とか、三千万で六千二百万という話を聞きますと、先ほどの若い世代の負担と比較したときに、国家がこういうことをやっていいのか、そういう気持ちすらするわけですけれども、ここを何とかやはり変え、いかなきゃいけない、私はそういうふうに思いますけれども、総理、この点についてはいかがでしょうか。
〔佐田委員長代理退席、委員長着席〕
橋本内閣総理大臣 今小泉大臣が、さまざまな選択肢を国民にお示しをしたい、そして、給付と負担の関係についても今非常にうまい例示をされ、例えば、保険料はもうこれ以上持ちたくな.い、給付水準も落としたくない、そうすれば一体とこをいじるんだという形で問題を提起されましたけれども、今私が議員指摘されました部分を伺いながら、こうしたことを含めて情報公開が、これは先ほど六十歳から六十五歳の間に年金がないと思っている方がたくさんいますよという御指摘も含めて、情報公開、周知徹底の必要性というも
のを今改めて感じております。
今議員が提起をされました問題意識、これは私は、先ほど小泉大臣が答弁をした中にも含まれておると思いますけれども、十分注意をしてまいりたい、そのように思います。
岡田委員 私も地元で有権者の皆さんにこの話をしていて、大体年金を受け取っている世代の方は理解してもらえますよね。心底理解しているかどうかわかりませんが、確かにこれは大変なことだ、もう少し何とかしなきゃいかぬ、自分たちの子供や孫がいる、そういうお話がよく出ます。ところが、残念なのは、十歳の人はともかくとして、若い世代がこういうことにほとんど関心を示さないのですね。そこが私は非常に残念でならないわけであります。
今、世代の公平の話をしましたが、これは世代の中でもあると思うのです。厚生年金に入っている人と、自営業でそういった公的年金の非常に限られている人。先ほど言いましたように、例えば五十代で三千万で六千二百万円もらえる、これは厚生年金に入っている人ですね。しかし、そういう公的年金に入っていない人は、国民年金だけで、そういう三千万のプラスアルファというのはないわけですね。
そういう意味でも、やはりこれは同じ世代の中でも不公平が出ているのじゃないか。国の制度でそういうふうになっているということは、私は、いろいろな意味で信頼感を損なっているのじゃないか、そういうふうに思いますが、世代内の不公平の問題について、厚生大臣、いかがお考えでしょうか。
小泉国務大臣 これはよく税制の議論でも出るのです。いわゆるクロヨン。サラリーマンに比べて、自営業者の収入の把握度、所得の把握度、問題がある。保育園に入る場合も、近所から見てみればサラリーマンよりもいろいろ裕福ではないかなと思われるのでも、実際は保育園に入る場合は負担が軽いとか、よく言われます。
しかし、所得の把握度、これは私はある程度やむを得ないと思うのです。サラリーマンにはサラリーマンのよさも悪さもある。自営業者には自営業者のいい面もあるし、苦しい面もある。両方ある。それをどうやって整合性をとるかというのは、個人の職業選択にもかかわってきますけれども、これを全部一緒にしろというのはなかなか難しいのじゃないか。
そして、今の年金の計算においても、大体四十年加入で計算していますから、サラリーマンの場合は、今まで大体終身雇用ですから、入って多いから給付も多くなる。自営業者の場合はなかなか、今のところ四十年加入というのはサラリーマンに比べれば少ないでしょうね、満期でも。そういう点において、サラリーマンに比べれば確かに給付は低いのですけれども、これを一緒にしようとなりますと、これまた実際の今の保険料を自営業者は払えるかどうか、私はとても払えないと思いますよ。
そういう点もありますから、私は、この職業についている方と別の職業と一緒にするというのはまた別の議論だと思いますが、ある程度サラリーマンと自営業者の間での差が出るのはやむを得ないな、どの程度までは許されるかというのがこれからの問題ではないかと思います。
岡田委員 ちょっと私は観点が違うと思うのですが、クロヨンというのは、そういう人もいるということであって、自営業者全員が税金をごまかしているわけではないんですね。この年金の話は、全員がそうだから、国がやっている制度でこうなっているから申し上げているわけで、ちょっと私は今の御答弁は納得しがたいわけであります。
もう時間も限られておりますので、あと年金についてもう一つだけお聞きしたいと思いますが、この法案の十条の二項で、所得の多い人に対する年金の給付制限、書いてありますね。ここは平成十二年までに検討する、こう書いてあるんです。ほかのところについては財政再計算に合わせてやる、書き分けてあるんですね。ということは、所得の多い人に対する年金の制限というのは、例えば来年度予算でやるとか、そういうこともお考えなんでしょうか。
私は基本的に、所得の多い人に対する年金の制限というのは、国民受けはするでしょうけれども、しかし年金、保険という制度から考えたときに本当にこれはいいのかどうかというきちんとした議論をやっていただきたいと思うんです。
本来は、私は、年金は払う、しかし所得税で、累進課税で取るというのが本来の姿だと思うんですね。たまたま所得の多い人、報酬比例ですから保険料もいっぱい払わされるわけですね。保険料をいっぱい払って払って、いざ年金をもらおうと思ったら全然もらえない、これは詐欺じゃないかという感じもいたしますが、いかがでしょうか。
小泉国務大臣 いや、確かに今の議論、多いんですよ。所得のある人から、高額所得者から年金をカットすればいいじゃないかと。今御指摘のように、俗受けはするんですが、年金制度の趣旨からいうとこれは問題が多いという議論も出ています。その点も含めて、十分両論を考えながら、どちらがいいか、あるいはどの程度が妥当なのかという点も含めて、しかるべき時期にしかるべき結論を出したいと思っております。
中川委員長 岡田君、時間です。
岡田委員 時間も参りましたので終わりますが、きょう質問できなくて大変残念だったんですが、小泉大臣は永年在職議員の表彰を辞退されると。ちょっと御意見を聞けずに残念なんですが、国民はこれだけいろんな意味で我慢させられている、削減される。そういう中で、二十五年勤めた、何で長いことをもってよしとして、そして毎月三十万も交通費をもらうんだ、そういう声は非常に多いですね。そういうことについても、やはり私は、国民に負担を求めていくのであれば、みずからが襟を正していく、そういう観点が必要ではないか、そういうふうに思っております。
終わります。