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1998.05.07|国会会議録

第142回国会 衆議院安全保障委員会

岡田委員 続きまして、民主党の岡田克也でございます。

きょうは、武器の使用の点を中心にいろいろお聞きをしたいと思っております。

まず、部隊としての武器の使用に関しまして、私自身が平成七年の六月九日、安全保障委員会におきまして、当時の玉沢防衛庁長官に対して質問をしております。その中で申し上げたことは、個々人の判断による武器使用ということしか認めていないということが果たしてPKOの隊員として行かれる自衛隊員の安全の確保にきちんとつながるのかどうか、こういう問いに対しまして、当時の玉沢長官は、私はこれは何度読んでも理解できないのですが、まずPKOで「危険であるあるいは身の危険を感ずるというような点におきましては、部隊長の判断によるかあるいは個人の判断によるかは別といたしましても、危ないという認識は共通のものがある」。「したがいまして、部隊長が命令によって武器使用をやると仮に決めたとしましても、危険性というものは去らない。」これは当たり前のことだと思うのです。したがって、「むしろ個々の隊員がその使命を全うするためにその責任を明確にし、個々の隊員が銃の発砲等におきましても責任を持つ、こういう趣旨をより徹底していった方がこの平和協力業務の趣旨に合うのではないか、私はこのように考えます。」、こういうふうに大臣は答弁されているわけでございます。

この答弁の意味は、私、必ずしもよくわからないわけでありますが、しかし、安全保障委員会におきまして、国会の場におきまして、大臣がこういう形で、個々の隊員がその使命を全うするためにその責任を明確にして、個々の隊員が銃の発砲等におきましも責任を持つ、その方が法の趣旨に合うんだということを明確に述べておられるわけです。

防衛庁長官は、この考えを現在でも維持されるということでしょうか、それとも変更するということでしょうか。

久間国務大臣 変更する必要性が生じたからこそ、今回、法改正をお願いしているわけでございます。

岡田委員 そこで、私の方ではこういうことも申し上げております。自衛隊法の八十九条二項で、自衛官が武器を使用するには、基本的には部隊指揮官の命令によらなけれはいけないということになっている、ところが、このPKO法ではそれが個々の使用でなければいけないということで全く逆転している、そこが基本的におかしいのではないかということを私は申し上げているわけでございます。

その上で、PKOの法律をつくったときは社会党は野党であった、しかし、その社会党が与党の一角を担い、村山総理大臣も出している、そういう状況のもとで一いろいろな経緯があって部隊の武器の使用というのは認められなかったんだけれども、総理まで社会党が出している状況のもとで、現実に隊員を送り出している立場にある防衛庁長官がリーダーシップを発揮して、従来のおかしな法律上の考え方を改めるべきだ、法改正をすべきだということを申し上げております。

それに対して、当時の長官は、「法律を変えるという考えは全く持っておりません。」、こういうふうにお答えになったわけでございます。

私は、これはやはり政治家としての責任感の問題じゃないかと思います。だれが見てもおかし-い。もちろん、この法律をつくるときにはいろいろな経緯があって、そうでもしないと通らないという状況があったかもしれない。しかし、その後、事情が変わって、社会党の総理大臣が誕生した以上、私は、閣内において当時の防衛庁長官が総理を説得して、自衛隊員が危険な状態に置かれている、そのことを一刻も早く解消すべきだということで、法改正についてのイニシアチブをとるべきではなかったか、こういうふうに思うわけでありますが、長官の御感想をお聞きしたいと思います。

久間国務大臣 実は、三年後に見直すということで平成七年の八月から見直しが始まったわけでございまして、今まさに委員が御指摘になりました委員会でのやりとりは六月の時点でございます。それから二カ月後に、PKOについてこれでいいのかということで見直しが始まったわけでございますので、その時点で果たして全く考えておられなかったかどうかはわかりませんけれども、まだ政府として、それから検討を始めて、改正をこうするということを決めるまでは、やはり今みたいな答弁になったんじゃないか。

あの答弁でもただいまのところということを言っておりますので、それからニカ月後に改正の作業に入ったということを考えますと、その辺はどのような事情にあったのかは私もつまびらかに聞いておりませんけれども、その後、八月からPKO法の改正等の作業に政府としては取り組んでいったということを御理解賜りたいと思います。

岡田委員 そこで、この改正作業ですが、平成七年の八月に法律で定めた見直し時期が来たということで事務的な検討作業に入った。そして、それから約一年後の平成八年九月に、「国際平和協力法の見直しについて」という総理府国際平和協力本部事務局の一応の取りまとめができた。その間、一年かかっております。そして、さらにそこから一年近くかけて平成九年の五月に、同じく総理府国際平和協力本部事務局の「国際平和協力法の改正について」という最終的な結論が出た。それからまた一年かけてこの国会で法案が提出され、今議論されている、こういう流れであります。

つまり、見直しの事務的作業が始まった平成七年から約三年を要して今日に至っている。どうしてこんなに時間がかかったのか。いずれも確かに論点を含む問題だとは思いますけれども、しかし、きちんと議論していけば、こんなものは一年もかかる話ではなかろうというふうに私は思うわけであります。
 なぜこれだけの時間を政府の中においておかけになったのか、そのことについての御説明を官房長官にお聞きしたいと思います。

村岡国務大臣 国際平和協力法の見直しについては、政府といたしまして、平成七年八月に同法に規定する見直しの時期を迎えて以来、これまでの派遣の経験を踏まえ、法の実施のあり方について見直しを行った結果、先般、改正法案を国会に提出したものでございますけれども、遅かったじゃないか、こういうお話でございます。

私も国対委員長を前に経験をいたしまして、昨年とかおととし、国会の情勢その他もいろいろございまして、延び延びになってきたことも事実でございます。遅くはなりましたけれども、何とか今回この法案を上げていただきたいとお願いをいたします。

岡田委員 今、国会の情勢というふうに言われましたが、三年かかったのは国会が理由ですか。国会が理由で三年間かかったわけですか。今の御説明はそういうふうに聞こえましたが、私はそうじゃなかろうと思うのですよ。

ですから、なぜこんなに時間がかかったのか、そのことについての御説明をいただきたいと思います。

村岡国務大臣 七年から二年数カ月になりますけれども、この見直しの検討も、少し延びて長くかかったろうと思いますけれども、その後、ある程度まとまってから、また国会の情勢もあって、提出時期というものは今回になったという説明をしているところであります。

岡田委員 まず、国会の情勢というのは具体的におっしゃっていただけませんか。国会に出すことは、政府としては別に障害があるわけじゃございませんね。閣議決定して、国会に出せばいいわけですから。

だから、国会に出した後、この委員会あるいは本会議で議論されるまで、非常に、一年も二年もかかったというのであれば今の御説明で納得できますが、おくれたことを国会のせいにされて、それは具体的にどういうことなのか、明確に述べていただきたいと思うのです。

村岡国務大臣 私は与党の国対委員長も経験いたしました、与党内のいろいろな調整に長くかかった、こういうことであります。

岡田委員 つまり、国会の中での話じゃなくて、与党の中での話である、こういうことでございますね。わかりました。

私は、この武器の使用について、個々人の判断に任せるというのは現場の自衛官の皆さんにとっては非常に酷な話でありまして、心理的なプレッシャーも非常に大きいということを想像できるわけですし、現にそういう話も聞いております。私は、このPKO法ができて以来、今日までの間に、武器の使用のこの規定が障害になって自衛官の方に、例えばお亡くなりになるとか、あるいはけがをするとか、そういうことが起こらなくて本当によかったなというふうにつくづくと思うわけでございます。

しかし、そういう危険は常にあったわけで、私は、やはり自衛隊を送り出す立場にある長官として、あるいは政府の中でこの法律を所管する官房長官として、この法改正についてはもっと真剣に、急いで取り組むべきではなかったのか、そういうふうに思うわけでございますが、改めてその点についての御見解をお聞きしておきたいと思います。

久間国務大臣 御承知のとおり、今言いましたように、平成七年から検討を始めたわけでございますが、平成八年には選挙があっております。法律というのは、私もその作成を役所におってやったことがございますけれども、選挙の前でございますと、国会がうまく通るかどうかということを心配するわけでございます。そういうこともあったんだろうと思います。

私が就任しましてから、PKO本部の方と一緒になりまして防衛庁としても作業を急ぎまして、平成八年から急ピッチで皆さんやっておられまして、平成九年にはでき上がったわけでございます。
 
そういうようなこともございまして、今度法律を出しますときには、出して、これがまたスムーズに通らないと、また廃案ということになると大変なことになりますので、その辺も見ながら政府としても提出時期をうかがうわけでございまして、そういうことも背景にはあるのだということをぜひ御理解賜りたいと思います。

したがいまして、与党もひっくるめまして、国会としてとにかく通してもらわないといかぬわけでございますから、そういう意味では、ぜひこの政府案で通していただきたいという気持ちがありますので、できるならば賛意を得た上で通していただけるというような見通し等についてやはり私たちも慎重に考えざるを得ないわけでございますので、どうかその辺の事情を政府側としては持っておるということも御理解賜りたいと思うわけです。

岡田委員 今の御説明は、私は全く納得しがたいわけです。

もしそういうふうにおっしゃるのであれば、現在出されているこの法案は、野党はこれについてオーケーとどこかで言っているのですか。私はこの問題の責任者ですが、民主党として、この法案について、出す前から結構ですと言った覚えはございません。しかし、今の長官のお話は、見通しがつかないと出せなかったんだということは、今回出したということは、見通しがついているということになるのじゃないですか。

久間国務大臣 そういうことじゃございませんで、国会の御論議等がまずスムーズに進めていただけるかどうか、そういうような雰囲気、そういう国会の状況、先ほど官房長官がおっしゃられましたように、官房長官は国対委員長としても経験があられますので、そういうような国会の情勢かどうか、そういうふうなことを総合的に判断されながら、今回、出そうというふうに最終的に決めたということでございます。

だから、各党それぞれの賛意を全部得た上で提出したというわけじゃございませんので、どうかその辺の事情等も、そうはいいながらも、当委員会における質疑とかいろいろな形の中で、これはどうなっているのか、早くせよというような御意見等も結構いろいろ出ておるわけでございますから、そういうような御意見等もしんしゃくしながらやらせていただいて、しかも国会の会期とかいろいろなことを考えながら、とにかく出した以上は一日も早く通していただきたい、また通せるような雰囲気の中で出させていただきたいという気持ちで出させていただいたということでございます。

岡田委員 先ほどの官房長官の御答弁の方が私は正直だと思うのですね。

結局、これは政府の中あるいは与党の中での問題でありまして、自社さ政権のひずみがここに出ている、大きなひずみの一つがここに出ているというふうに私は思います。こんな簡単なことといいますか、重要であり、かつ、やる気になればできることが、これだけ時間がかかったのは、そういった自社さ連立というものの大きなマイナス点であったということを私は申し上げておきたいと思います。

そこで、私は、今までの質問でもおわかりいただきますように、個々の隊員に判断を強いるのは間違いであるという基本的な考え方でございます。しかし、だからといって、今の法案でそのまま納得するというものではございません。少し詰めておきたい点がございますので、その点についてこれから順に御質問をしたいと思います。

まず、平成三年の九月二十七日に武器使用と武力の行使の関係についての政府の統一見解というものがございます。この政府の統一見解というものは、今回の法改正に当たってもそのまま維持しているというふうに考えてよろしいのでしょうか。

茂田政府委員 お答えいたします。

武器の使用と武力の行使の関係についてという、これは平成三年九月二十七日に衆議院のPKO特別委員会に出した統一見解ですけれども、これは現在も維持されております。

岡田委員 ということは、今回の指揮官の命令による武器の使用ということについても、この統一見解にあるように、自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員の生命又は身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の「武器の使用」は、憲法第九条第一項で禁止された「武力の行使」には当たらない。
こういう解釈ですね。

茂田政府委員 お答えいたします。

そういう解釈でございます。

岡田委員 それじゃ、ちょっと話が回り道をするかもしれませんが、憲法九条による武力の行使と自衛権の発動ということについての従来の政府の考え方について確認をしたいと思うわけであのます。

従来、自衛権について、これは個別的自衛権を言ったものだと私は理解をしておりますが、自衛権というのは国の基本的生存維持のための権利である、したがって、憲法九条一項で禁止された武力の行使には該当しないのだ、こういう御答弁をされていると思いますが、そのことの意味というのはどういうことなんでしょうか。

九条一項は武力の行使というものを基本的には禁じているわけでありますが、九条一項とは一員矛盾するがより根源的な自然権として自衛権の行使というのは認められているのだ、こういう考え方だと私は理解するのですが、そういうことなのか。それとも、九条一項によって、個別的自衛権の発動というのは例外として除かれているのだというふうに考えるべきなのか。どちらなんでしょうか。

久間国務大臣 これは私の見解でございますけれども、私は、今委員が御指摘になったように、国としての自己保存的な権利、それが個別的な自衛権だと思っております。

岡田委員 したがいまして、九条一項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こういう規定を見る限りは、個別的自衛権の発動も九条一項には形式的には該当する、しかし、より根源的な自然権というところで、個別的自衛権というのは、何をもっても、憲法であっても排除できないぐらいの根源的なものだからそれは認められているのだ、こういうことでよろしいですね。

久間国務大臣 九条一項は個別的自衛権を排除するものではない、そのように理解しております。

岡田委員 そこで、それじゃ今回のこの武器の使用というのは、同じような考え方に基づいて、自分の身を守る、身体を守るということは根源的な自然権だから九条一項の問題でないというふうに考えているのか。私は、今までの政府統一見解はそういうふうにも読めるわけです。そうじゃなくて、九条一項に定める武力の行使には該当しない、つまり自然権とかそういう次元の話じゃなくて、九条一項という土俵に乗っかった上で、そこに条文上該当していないんだという考え方に立つのか。これはどちらなんでしょうか。

久間国務大臣 かって政府見解が平成三年に出されましたときも、一と二というふうに分けて書いてありますように、これは両方の意味からも、自己保存的な自然権的権利だという意味でも武力の行使には該当せぬし、また一般的な憲法九条で書いているいわゆる国際紛争の一環としての戦闘行為というような点からいっても、いわゆる停戦合意がなされている状態の中で行われる武器の使用にすぎないのであって、ここで言う武力の行使には当たらない。両方の意味からもこれはいわゆる武力行使とは違うんだということを、平成三年の時点での統一見解で出されました文書は書いているのじゃないか。ダブルの意味で、両方からいってもこれは違うということを言ったんだというふうに理解しております。

岡田委員 仮に、長官がおっしゃるように、両方の意味があるのだというふうな考え方に立ったときに、今回の部隊としての武器の使用を認めた場合にも、今長官がおっしゃる両方の意味での理由というのが依然として通用するのかどうかというところについてはいかがでしょうか。

久間国務大臣 私は、平成三年のこの統一見解は現在も維持できるというふうに思います。

岡田委員 私はちょっとそこに疑問を感じるわけでございます。

というのは、従来は個々人がみずからの身を守るために武器を使用するということでありましたから、個々人の自然権的権利というのが根源的なものとして憲法以前にあって、その発動としての武器の使用は法に言う武力行使に当たらないという解釈が成り立ったと思うのですが、今回部隊としての使用ということになりますと、個々人の判断というよりも部隊としての使用になりますから、少しそこからずれが出てくるという感じがするわけであります。

なぜそんなことを言うかといいますと、もし部隊としての使用についても根源的な権利であるということを認めてしまいますと、それがさらに拡大していく可能性はないのかということを非常に危惧するからであります。やはり自然権と言うからには、それは国か個人ということであって、集団について自然権という考え方を認めるべきではないのじゃないか、私はこういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 私どももそのように思っております。今度の場合でも、単に命令によってするというけれども、それは個人としての自然権というようなものの延長であって、部隊としての、その集団のいわゆる自己自衛権といいますか、そういうものではないというふうに思っております。

私は、先ほど一と二と二つの意味から別だと言いましたのは、一の方においては、憲法九条で言っている武力の行使というのはいわゆる国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうということからも外れておるという意味で、武器の使用が武力の行使にはならないということを言ったわけでございます。

そして、個人の問題としての今度のものも、武器の使用はいわゆる自己保存のための自然権的権利というもので、それは武力の行使とは別だということを言ったわけでございます。

今回、命令によって武器の使用ができることになっているけれども、それは従来の目的と変わらない。ただ、それの混乱を避けるために、より適正な武器の使用ができるようにということで命令によるとしたことであって、部隊の自己保存というようなことになりますと、それは非常に-今言われましたように、個人あるいは国という場合ははっきりしておりますけれども、部隊の自己保存のための権利だというふうに言ってしまいますと、かなり広がるような気がするわけです。

そういう意味で、従来の一と二の二つの考え方を今回も踏襲しているのじゃないかというふうに私は理解しております。

岡田委員 長官の基本的な考え方と私は余り違っていないように認識しておりますが、ですから、一と二というふうな分け方をすれば、一のところ、つまり憲法九条一項の文章からいって、これは例えば少なくとも国際紛争ではないわけでありますから、武器使用が武力行使に当たるかどうかという問題はそこでシロになっている、こういうことであって、自然権という話をここでは持ち出すべきではない。

個々人の判断で使用している状況においてはそういう議論ができたかもしれませんが、今や指揮官の命令によって武器を使用するわけでありますし、それから、みずからの生命を守るための武器の使用だけではなくて、PKO法上はそうじゃない場合も認めているわけですね。例えば威嚇のために武器を使用する、例えば天に向かって鉄砲を撃つということは認められておりまして、緊急避難や正当防衛が認められるのは、それは相手の身体に対する攻撃は正当防衛や緊急避難に当たる場合にのみ認められているわけであって、逆に言いますと、それ以外の武器の使用というのも当然法律は念頭に置いているわけですから、ある意味でそういう広がったものについて、これは自然権だ、しかも部隊としての使用について自然権だというのは、私は将来に非常に禍根を残すように思うわけですが、いかかでしょうか。

久間国務大臣 確かに、従来、単なる判断で、やめという抑止的なときだけやっておったのを、今度は命令に変えることによりまして、まずおまえが威嚇射撃をしろ、相手に対して、撃つな、まず威嚇射撃をしろと命ずることによってそれをやる、その次にこうするという形で、手順を踏むことによってそういう射撃が行われます。

それは、今おっしゃられるように、相手に向かって反撃するというわけじゃございませんけれども、しかしながら、それを全部総体として見たときには、やはり自己保存としての自然権を、自己保存するためにその一連の行為が行われておるのだ、そういうふうにも理解できるのじゃないでしょうか。そう思いますと、今度の武器の使用も、帰するところはやはり自己保存的な自然権だというふうに解していいのじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。

といいますのは、これは国の自己保存的な個別的自衛権というのも一つありますけれども、個人のものもありますけれども、集団としてのものをどの程度認めるかというのはまだでき上がっていないのじゃないかというような気がいたしますので、私は、そういう意味ではやはり今回も従来の目的の延長線にある、そういうふうに理解しておるわけでございます。

岡田委員 かなり大胆な仮定の議論をしますが、例えば、戦前満州事変が起きた、それで関東軍が敵から攻撃を受けた、そのときに、それに応戦する、これは自然権だ、こういう議論につながっていきませんか。

久間国務大臣 敵から攻撃されて、自分が危ない場合にそれに応戦する、自己を守るためにそういうような行動をとるということは、それはあると思います。

しかしながら、その前提として、我が国の場合、いわゆる国際紛争の一環としての武力闘争はしないという憲法九条の制約があるわけでございますから、そういう意味での武力行使はできないわけでございますから、そういう意味でダブりのチェックが入っておる、そういうことじゃないかというふうに思うわけでございます。

自己保存的な行為としてはやれるけれども、やれるからといって、それがどこまでやれるか、それの制約はやはりおのずからあるのじゃないかと思います。

岡田委員 繰り返しになりますが、私は、憲法九条一項の「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」というところで説明ができますと言えば十分であって、あえて自然権まで持ち出す必要はないということを申し上げているわけでございます。

なぜそんなことを言うかといいますと、従来、個別的自衛権の発動というのは自然権だから、九条一項があるにもかかわらずそれは国として本源的に持っているのだ、こういう説明が、先ほどもなされたように政府の御見解ですね。私は、それはそのとおりだと思いますが、一方では、それはかなり苦しい説明であることは間違いない。

いかに自然権であっても、憲法というものが実際の制定法としてあるときに、それよりも自然権の方が根源的だからそちらの方が優先するのだという考え方は、実は私は余り通用しない議論ではなかろうかというふうに思います。いろいろな憲法制定当時の事情、その後の国際情勢を踏まえて、苦しいながらそういう説明をせざるを得ないというのが私は現実の姿ではなかろうかというふうに思います。

実際は、日本の国家としては、憲法という実際に定めたものをもって規範とすべきであって、自然権などというものを持ち出すのは、それはよほどの説明ができないときの議論だろうというふうに考えるわけでございます。そういう極めて例外的な概念をこの場に持ち出す必要はないのじゃないかというのが私の問題意識でございます。

基本的には、憲法の条文上こういう歯どめがかかっています、だからいいのですという説明をすれば十分であって、こういうときに自然権というものを持ち出す癖をつけてしまいますと、憲法自身が空洞化していく一つのきっかけになるのじゃないか、私はそういう気すらするわけでございます。

憲法があるにもかかわらず自然権ということで例外を認めるのは、今までの個別的自衛権のところだけで十分だ、そういうふうに思うわけでございますが、これについて何か御感想はございますでしょうか。

久間国務大臣 自己保存的ないわゆる自然権だということを今回非常に強調いたしますのは、一つには、その場所が我が国ではなくて外国でありますから、私どもから見れば、形式的にも停戦合意が成立した中で出かけていっておるわけですから、いわゆる国際紛争としての武力闘争じゃないというのはわかるわけでございます。それを重ねて自己保存的な自然権だということを強調したいのは、その場所が、いわゆるPKOで出かけていくのは外国であるという点もあって、そこのところは特に強調しているのではないかというふうに思います。

そういうような背後関係もあって、確かに委員が御指摘の理屈も私もわからぬではございません。そういうような理屈だけで済むのじゃないかというふうに言われれば、そうかなというふうな気もしないではないのですけれども。

しかし、それだけではちょっと問題が生じはしないか、やはりもう少し武器の使用を限定すべきではないかというような気がしまして、そういうような観点から見た場合にも、今度は自己保存的な自然権の発露としての武器の使用だから、そういう面からチェックしても武力の行使にはなりませんということを言っているわけでございますので、どうかそういうような事情も御理解賜りたいと思います。

岡田委員 正当防衛とか緊急避難に該当する場合の武器使用であればそれでもいいというふうに私は思いますが、この法律上武器の使用というのはそれより広がっておりますので、だから、そういう部分についてまで自然権という理屈で認めてしまうということは、アリの一穴じゃありませんけれども、将来いろいろな議論としての広がりを呼ぶ可能性が出てきてしまうのではないか、こういうふうに申し上げているわけでございます。何か御見解はございますでしょうか。

久間国務大臣 特別ございませんけれども、先ほどから言いますように、正当防衛、緊急避難でない武器使用があるかと言われますと、威嚇射撃にしましても、やはりそういうことを避けるための緊急避難あるいは正当防衛、まずはそういうような一環としての威嚇射撃であり、相手がそれによってひるんでとまってくれれば、それでもうその先をしないで済むわけでございますから、そういうようなとり方ができるのではないかというふうにも思うわけでございます。

岡田委員 この点はさらに別の機会に議論をさせていただきたいと思いますが、そういう問題意識もあるということを認識していただきたいというふうに思います。

それでは次に、PKOの本体業務についてお聞きしたいと思います。御案内のように、現在、この法律があるにもかかわらず、附則の二条におきまして、「自衛隊の部隊等が行う国際平和協力業務であって第三条第三号イからへまでに掲げるもの又はこれらの業務に類するものとして同号レの政令で定めるものについては、別に法律で定める日までの間は、これを実施しない。」ということになっております。

具体的には、三条三号のイからへということでありますから、「武力紛争の停止の遵守状況の監視又は紛争当事者間で合意された軍隊の再配置若しくは撤退若しくは武装解除の履行の監視」でありますとか、緩衝地帯におきます「武力紛争の発生の防止のために設けられた地域における駐留及び巡回」、その他いろいろなことが書いてございます。こういうことについては、今回の見直しにもかかわらず何ら触れられていないということになっているわけでございます。

なぜ、法律の本則に書いてあって、例外的に附則でしばらく凍結したものについて、今回凍結を解除しなかったのか、どういう理由で解除しなかったのか、あるいはそもそも検討をしなかったのかしたのか、官房長官にお答えいただきたいと思います。

村岡国務大臣 いわゆる平和維持隊本体業務については、憲法上の問題はないのですが、内外の一層の理解と支持を得るため、「別に法律で定める日までの間は、これを実施しない。」こととされているところであります。このいわゆるPKF本体業務の凍結解除の問題と国際平和協力法の見直しとは、法律上別途規定されているものであります。

政府としては、平成七年八月に国際平和協力法に規定する見直し時期を迎えて以来、これまでの派遣の経験を踏まえ、法の実施のあり方について見直しを行った結果、改正法案を国会へ提出したものでございますが、いわゆるPKF本体業務の凍結解除の問題についてはさまざまな御意見があるところでありますが、政府としては、国会等におけるこの問題の御議論にも十分耳を傾けつつ検討すべきものと考えたものであります。

以上でございます。

岡田委員 平成八年九月の総理府の国際平和協力本部事務局の見直しについての取りまとめにも、そもそも課題として上がっていないわけですね、凍結解除の問題は。

しかし、凍結したというのは、本来やるべきだけれども暫時それを停止しているという状況ですから、見直し時期が来たのであれば、当然、少なくとも課題としては取り上げて検討すべきだったのではないですか、政府としては。検討した結果、それが必要ないということになったのならともかくとして、なぜ課題としてすら取り上げなかったのか。今官房長官は内外の理解と支持という表現を使われましたが、具体的にどういうことなのか、御説明をいただけますでしょうか。

村岡国務大臣 我が国がゴラン高原におきます国際連合平和維持活動、PKOである国際連合兵力引き離し監視隊、UNDOFに参加するに当たって、与党間において合意された「わが国のuNDOF参加に当たっての与党確認事項」の中に「PKF本体業務の凍結解除は、当面行わないこと。」とあることから、政府としては、これを踏まえての見直し作業ということになったわけであります。

岡田委員 与党間でそういう合意があるということでありますが、政府としては与党の間の約束ですから尊重しなければいけないというのはわかるのですが、もっとありていに言えば社民党さんが反対したということだと思うのですが、そのときの理屈といいますか、なぜ凍結解除しないのか、どういう議論があってそうなったのでしょうか。

政府としては、もちろん与党間でお決めになればそれを尊重しなければいけないということなんでしょうが、やはりそこにはそれなりの理屈というものがあると思うのですね。いかがなんでしょうか。

茂田政府委員 お答えいたします。

先生、これは与党間の話し合いでございますので、政府の側からどういう理屈であったということを説明するのは難しいということで御理解いただきたいと思います。

岡田委員 与党間で決めたから政府としては無条件にそれに従った、こういうことですか。違うのですか。

茂田政府委員 お答えいたします。

どういう論拠でこういうことになったのかという御質問でしたので、それは与党側の論拠ですから、それを政府の側から説明するのは難しい、こう答えた次第であります。

岡田委員 それでは、現時点でこの凍結解除の問題を政府はどういうふうにお考えなんでしょうか。

茂田政府委員 お答えいたします。

PKF本体業務の凍結解除につきましては、本会議で総理から、それから先ほど官房長官からも御答弁がございましたけれども、国会での議論を踏まえて今後検討していきたいというのが政府の立場でございます。

岡田委員 こういうときだけ国会での議論ということになるわけですが、政府としてはどういうふうにお考えなんですか。

この法律を成立させたときに、こういうものは必要だという認識に基本的には立っておられたはずですね。しかし、すぐにそれをやるということはいろいろな事情でできないからしばらく凍結した、こういうことだと思うのですが、基本的には必要なことだと思っているのではないですか。

茂田政府委員 お答えいたします。

先生経緯を御存じだと思いますけれども、政府としては、凍結条項をつけ加えてPKO法案を提案したわけではございません。我々は、PKFもやるということで政府の原案を提出させていただきました。しかし、その後参議院に法案が回りました段階で、いわゆる参議院修正というのが加えられたということでございます。参議院修正の中の一部が、PKFについては別途法律で定めるまで実施しないということが決められたわけでございます。

しかし、政府としては、PKO法提出時にPKF本体業務というのを行うという判断をしておりましたし、これは重要なことであるというふうに認識しております。

ただ、附則第二条と第三条というのは少し書き方が違っておりまして、附則の第三条は、政府として法の実施のあり方の見直しをするものとする、「政府は、」ということになっております。したがって、これは政府としての一定の責務といいますかそういうものがありますので、その責務を果たすという点から、今回、見直しをして改正法案を提案しているということでございます。

附則の第二条の方に関しては、別途法律で定めるまでの間は実施しないということになっておりまして、政府がどうこうするというのは入っておりません。

そして、この参議院修正が入った段階では、この修正を提議した諸党間での話し合いが持たれるということが予定されておりました。その後、いろいろな政治的な状況が変わったということでございます。そういうことで、我々は国会での諸議論に耳を傾けて、その上で今後検討していきたいということを申し上げている次第であります。

岡田委員 この法修正をやった当時の自公民三党が、いろいろな変遷を経て、今大分状況が変わっておりますから、当事者がいなくなってしまった、こういうことだと思います。

しかし、この二条には政府という文字が入っていないという今の御説明ですけれども、この法律は基本的には政府が提案されたものでありまして、それを国会で一部修正したということでありますから、政府あるいは与党として、これについてどう考えるのかということについてきちんとした意思表示がまずあって、その上で、それを受けて野党がどう判断するのか、こういう順序ではなかろうかというふうに私は思うわけでございます。

このままいきますと、これはだれも言わないままどんどん時間だけたって、僕は、PKFという表現自身は純日本的なもので、本来は、全体はPKOの活動だと思うのです。その一番の核の部分が抜けて、本来、PKOに協力することは日本の国際貢献に重要なことなんだというのであれば、やはりその核の部分について早くしっかりした体制をとってやっていく、そのことについて政府としてあるいは与党としてイニシアチブをとっていくということが当然のことだと思うわけですが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 確かに、出したのは、閣法として政府が提案いたしました。しかし、そのうち、ここの部分は凍結するということを国会の修正で、参議院が最初提案しますけれども、衆議院に回ってきて修正されたわけでございます。

法律でもそうでございますけれども、閣法と衆法等がございますが、議員提案の衆法の場合は、それの改正なりなんなりをやるときも、でき上がってしまいましたら実行は政府がやるわけでございますけれども、衆法の場合は衆法で、参議院で上げた場合は参議院で、そこから提案してもらうような慣例がございます。

そういうようなことを考えますと、院として、参議院あるいは衆議院としての両方の御意思でこれはだめだと言われていましたので、我々としては、普通の閣法と比べますと、そこはより慎重にやらなければならない、そういう責務がございます。そういうこともございまして、非常に慎重にやってきているわけでございます。

したがいまして、この問題につきましては、政府だけではなくて、各党各会派においてこのPKFの凍結を――少なくとも政府の意思は、先ほど言われるように、この全体をやりたいということで法律を出しているわけでございますから、それを院の意思としてとめておられるわけでございますから、それについてどうするかというのは、やはり各会派でいろいろと御議論していただいて、私どもも、またそれを反映させていただいて、どうしたらいいか真剣に考えなければならない問題じゃないか、そういうように思っているわけでございます。

岡田委員 長官は、今、政府の大臣として他人事のような言い方をされましたが、長官も自民党の有力な議員の一人ですよね。もし長官の言うことを認めるとしても、しかし、政府ということではないとしても、与党としてこの問題についてどうするのかはっきり意思決定をして、その上で野党に働きかけるということが私は必要ではないかというふうに思います。

正直申し上げて、この問題は我が党の中でもいろいろな議論が出るだろうと思いますけれども、やはり物事はきっかけがないと進まないわけで、それは、この法律について最も必要だというふうに推進をされた政府・与党の方でイニシアチブをとるべき問題だ、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 与党の一員ということでございますけれども、この場は政府に対する質疑の場でございますので、あくまで政府の域を超えて答弁をするわけにはまいりませんので、今委員が御指摘になりました問題点については、個人としては、強く、重く受けとめながら、これからいろいろと配慮してまいりたいと思います。

岡田委員 最後に、今まで日本のPKOについて、随分時間がたったわけでありますし、それから、この法律を通すときには、それこそ国会において大議論があったわけでありますが、現実にこの法律が施行されて、自衛隊が、カンボジアから数えまして、たしか四つのケースだったと思いますが、海外に行かれたわけであります。これについて国際的にどのような評価がなされているのか。国際的にといっても、それは非常に幅広いですから、なかなか全体をというのは難しいかもしれませんが、我が国の自衛隊のPKO活動に対する評価というものについて、政府はどういうふうに認識しているか、お聞きをしたいと思います。

村岡国務大臣 カンボジア、モザンビーク及びゴラン高原における国連平和維持活動並びにルワンダ難民救援のための人道的な国際救援活動にかかわる自衛隊の活動については、国際的に高く評価されていると思っております。

例えばゴラン高原での我が国派遣要員の活動ぶりについては、シリア、イスラエル両国政府関係者を初め、国連のアナン事務総長からも高い評価をいただいているところであります。

岡田委員 それじゃ、自衛隊から見て、こういったPKO活動に参加をするということは、プラス、マイナスあると思いますが、全体としてどのようなメリットないしはデメリットがあったというふうに考えておられるでしょうか。

久間国務大臣 自衛隊が国際平和協力業務を実施してきていることにつきましては、派遣先国政
府を含めまして国際的に高い評価を得ており、国内においても多くの国民の支持を得ているところであります。これらの業務を実施することに特段のデメリットがあるとは考えておりません。

岡田委員 私は、自衛隊というのは、一つの軍隊に近い組織でありますから、ある意味では非常に孤立しているというか外部と遮断されている、そういう部分があることは否定できないと思うわけであります。だからこそ、例えば国会などにも自衛隊の幹部に来ていただいて答弁していただいた方がいいのではないかというふうに私は申し上げているわけです。

こうした形で海外に出ていくことによって、自衛隊の皆さんの意識が少し変わるというか視野が広がる、非常に限られた中で自己完結的に一つの価値判断で物事を考えている、そういう状態から、より広い視野で物事が判断できるようになる、そのことは結局自衛隊としての機能も高めることになる、そういうふうに私は思っているわけですが、この点について、長官、もし何か御感想があれば、最後にお聞きしておきたいと思います。

久間国務大臣 そういう一面はあろうかと思います。しかし、余りそれを強調いたしますと、出ていかない面々がそういう点では非常に視野が狭くていけないというふうにもとられますので、そういうふうな言い方だけではなくて、行った連中は非常に士気も高まるし、また外国のいろいろな部隊と交流することによって国際的な視野も非常に高まってきて、そういう点では非常にいいというような評価も得ております。


岡田委員 私は、そのいい効果が自衛隊全体に波及していく、そういうことを期待しているものでございます。

これで終わります。




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