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1998.09.02|国会会議録

143回 衆議院・金融安定化に関する特別委員会

岡田委員 民主党の岡田克也です。

私は、まず一つ、昨日の審議の関係での確認を金融監督庁長官にお願いしたいと思います。

一部報道によりますと、きのうの審議の中で、これはたしか金融危機管理審査委員会委員長の答弁を引用しての記事だったと思いますが、現在金融監督庁が行っている長銀に対する検査が終了する前に資本注入を決断することがあり得るんだ、こういう趣旨の答弁をきのうこの委員会で行われたという報道がございますが、金融監督庁として、そういう可能性があるというふうに考えておられるのか、あるいはないということで否定されるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

日野政府委員 お答えいたします。

現在私どもが長銀に対して行っております検査は、大手十九行に対する検査の一環として行っているものでございまして、決して審査委員会のために行っているとかそういったものではございません。あくまでも通常の検査として行っているわけでございます。

ただ、問題は、ただいま委員の御指摘がありましたように、もし長銀から公的資本注入についての申請が審査委員会になされた場合には、恐らく審査委員会においては、さまざまな観点からその審査基準をクリアすることができるかどうかということを審査されるでありましょう。また、その際には恐らく、私どもが行っている検査の内容はどうなっているかということも示せということをあるいは言ってこられるかもしれません。私どもといたしましては、そういった時点までには何とかその検査は終わらせなければいけないかなというふうに思っていることでございます。

岡田委員 必ずしもはっきりしなかったわけでありますが、もう一度確認いたしますけれども、検査が終了する前に資本注入を認めるという、あるいは認めないということかもしれませんが、そういう決断をすることはあり得るのかあるいはないのか、これは非常に大事なところだと私は思いますので、明確に御答弁いただきたいと思います。

日野政府委員 お答えいたします。

公的資本の注入を認めるかどうかということは、あくまでも審査委員会がまずお決めになり、そしてさらに閣議でこれを御承認されるという手続になるかと思います。

審査委員会の、確かに私もその七人委員会のメンバーの一人ではございますが、あくまでもその委員会がお決めになることで、委員会がどういう審議をなさるかということはそこになって初めてわかることでございますので、今私の方から確たる、今委員から御質問にあったようなことを直接お答えすることができないということは御理解いただきたいと思います。

岡田委員 形式論を言えば、今長官のお話というのもあるいはあるのかもしれませんが、この長銀の問題がこれだけ議論になって、そして国民世論の中から、税金を投入するあるいは公的資金を投入するのであればもっと情報公開しろ、こういう声が非常に強い。あるいは、情報公開ということはさておいても、やはり公的資金を投入する以上、実態がきちんと把握されて、そして例えば債務超過でないということが明確でなければ、これは法律上公的資金を投入できないわけでありますから、ここまで来て、なお検査が完了しない段階で資本注入を決定するということは政治的にはあり得ない、私はこういうふうに思うわけでございますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 もちろん、破綻になりましたときには公的資金を導入できないということは、これは当然のことと思いますが、具体的なお運びは、これは監督庁と預金保険機構のお運びの問題だと思います。

岡田委員 手続論からいえば、それは、たまたま十九行全体にやっている検査と今回の長銀問題というのは重なったという言い方も可能かもしれません。しかし、今回の検査というのは、やはりこの長銀の問題が一つの大きなきっかけになって、そしてその長銀の実態を調べる、そういう意味があることは間違いありませんし、しかも、幾らになるかわかりませんが、例えば五千億の公的資金を投入するということであれば、それは政府として責任を持って、問題がないあるいは債務超過でないということを明確にした上でそういうものに投入をしない限り国民的理解を得られない、私はこういうふうに思うわけでございます。

そういう意味で、政治的に、私は検査が終了する前の資本注入というのはあり得ないというふうに思うわけですが、もう一度大蔵大臣の御見解を聞きたいと思います。

宮澤国務大臣 終局的には金融危機管理委員会の御決定、その際の管理委員会あるいは委員の方々の御意見によるものと思いますが、委員の中に金融監督庁長官もおられますし、大蔵大臣もおりますので、恐らく長銀の内容について、その所見をその委員たちが求められるということはあるであろうと思います。

岡田委員 大蔵大臣もその委員のお一人でございますね。ですから、例えば大蔵大臣が、検査結果が出ていない段階での審査というものは、つまり資本注入というものは認めないということをこの場でおっしゃれば、それで決まりなんです。いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 検査結果が全くわかっておりませんときに、それを先取りするようなことは適当ではないと思います。

岡田委員 全くとかいうことじゃなくて、検査が終了していない段階での資本注入は認めない、こういうふうに断言できますでしょうか。

宮澤国務大臣 一般論として申しますならば、そういうことは言えないことだろうと思います。

岡田委員 私は、一般論を言っているんじゃなくて、長銀のケースで言っているわけです。

ここは非常に大事なところで、資本注入を検査なしで認めることがあり得るということになりますと、後からちょっと議論しようと思っておりますが、検査を故意におくらせる。なぜおくらせるかといえば、それは実態が相当悪いからだ、こういうような議論を次々と呼ぶわけでありまして、今大事なことは、きちんと検査する、そして、その結果に基づいて、ルールに基づいて処理をしていくということだと思うんですが、今の大蔵大臣のお話を聞いておりますと、いや、実態はかなり悪いから、検査もきちんとせずに、検査したら例えば債務超過とかいろいろまずい話が出てくるから、そういうものはふたをかぶせて、とにかくやみくもに資本注入していく、そういうふうに国民は受け取ると思うんですね。

だから、そういうことはないんだ、きちんと責任を持って検査して、その検査に基づいて、ルールに基づいてやっていく、私は、そういう宣言を今大蔵大臣にぜひしていただきたいと思って、先ほどからしつこく聞いているわけですが、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 今、岡田委員の言われました、先の方の部分は岡田委員の御意見でございます。私はそういうことを申したことはありませんから、したがって、何かにふたをかぶせるというようなことを私は申しておりません。

一般論として、監督庁の検査というものは当然いろいろな銀行について進んでおるわけで、行われるわけですが、他方で、公的資金導入の申請というのは、おのおのの銀行がその時々の事情によって申請をするのでありまして、二つのことが、こっちの検査が済んでいないからこっちはだめという、そういう相関関係で一般論として申し上げるのは私は困難だ、こういうことで御理解いただきたいと思います。

岡田委員 私は一般論を今議論しているわけではありません。一般論については、大臣がおっしゃるようなことも言えるかもしれません。

しかし、この長銀のケースについて、もう既に検査が七月十三日に開始をされて、通常であれば二カ月ぐらいで検査できる、そういうお話もきのう長官の方から出ておりましたが、なかなか検査結果の出る見通しが立たない。そういう状況の中で、これは通常のルールを無視してやろうとしているのではないかという疑念が高まっている。

あるいは国民の間から、もう少し情報公開をして、五千億投入するなら投入するということで、もとは自分たちの税金でありますから、それをきちんと理解したい、納得したい、そういう気持ちが非常に強い。これは当然の御要望だと私は思いますが、そういうことに対して、少なくともきちんと検査して、その検査に基づいて、そしてルールに基づいてやっていきますと、長銀のケースについて。そういうこともおっしゃれない状況なんですか。

宮澤国務大臣 大蔵大臣にいたしましても、あるいは金融監督庁長官も同じお立場ではないかと思いますが、ある程度のことを、事実を知った上で、それで意見を申し上げなければならないことでございます。ただ、一般にそういうことが言われているといったようなことで申すわけにはまいりませんから、恐らく、聞かれれば、自分の知っている事実はこうだ、あるいは自分はそういう事実をまだ確認していない、このようなことにならざるを得ないと思います。

岡田委員 今のお話を聞いておりますと、本当に不透明感が高まるというふうに私は思うんですね。国がやっている、金融監督庁のやっているその検査結果も待たないでそういう重大決定をするということが、私は一般論で言っているんじゃありません、この長銀のケースについてそういう可能性があるということは、私は、極めて重大なことだ。もしそれがそういうことであれば、それは今の政府の姿勢を象徴的にあらわしているというふうに取り扱われて、いろいろな意味で波及があるというふうに大変心配するわけでございます。先ほどから何度お聞きしても同じ答えでございますが、本当にそれでいいのか、私は大変疑問に思うところでございます。何回聞いても同じお答えですから、そういうお答えしかないというふうに理解せざるを得ないわけですけれども、少し観点を変えてお聞きしたいと思います。

それでは金融監督庁長官、きのうも少し出ておりましたが、この長銀の検査というものは大体いつごろ終わる予定ですか。きのう、通常であれば二カ月だけれどもというようなお話がありましたが、長官にお聞きします。

日野政府委員 検査の終了、いつごろまでかかるか、たびたびお尋ねがございます。

検査官を七月に送り出しました。まだ帰ってきておりません。十九行に対する検査の一環として送り出しました。送り出すときには、私どもは、戦場に兵士を送り出すような気持ちで、水杯とは言いませんが、とにかくそういった気持ちで送り出して、一日も早く帰ってきてくれることを心から祈っている状態でございます。

従来は二カ月ぐらいで終了して帰ってまいりましたが、人によりましては、とにかく、妻子と摩れ、家族と別れ、宿に泊まりながら、自分で洗濯物などを洗いながら検査をやっているという状態でございまして、しかも、精密な検査を鋭意やっておりますので、従来は二カ月ぐらいかかっていたということは申し上げてまいりましたが、とにかくできるだけ早く御期待に沿うように済ませたいと思っております。(発言する者あり)

相沢委員長 御静粛に願いいます。

日野政府委員 ただ、これは現在、三月末の資産の状況について検査をしているわけでありますけれども、その後、さまざまな事態の変化というものがございました。こういったものについても、できるだけ最新の情報を得たいというふうに努力しております。

先ほどから委員が、審査委員会の審査までにできるのかどうかというお尋ねもございましたが、私どもといたしましては、もちろん審査委員会のためにこの検査をやっているわけじゃございませんけれども、できるだけ審査委員会の御要望にも備えられるようにしたいというふうに考えている次第でございます。

岡田委員 いろいろお述べになったわけですが、まず基本的に、確かにこれは十九行の検査であるというのはわかりますが、しかし同時に、検査を開始する時点では、もう長銀の問題というのがかなりマスコミをにぎわせるところまで来ておったわけでありますから、同じように検査するにしても、やはり長銀にまず集中的に検査をする、重点を置いて検査をするというのは、これは当然のことだと思うわけであります。

実態的に、今長銀に対する検査というのは、全体の人員の中で何割ぐらいを長銀に割いておられて、そしてその上で、いつごろ検査の結果を出される予定なのか、もう一回お聞きしたいと思います。これは長官にお聞きします。私は政府委員の答弁は求めません。

日野政府委員 お答えいたします。

検査というものは、何か釈迦に説法で恐縮でございますが、ただ単に数が一度にどっと行けばいいというものでもないようでございまして、精鋭をとにかく張りつけるということで、現在、前にはたしか十二名で、その後何名か追加したと申し上げたかと思いますが、現在は十五名行っております。それは、全体で今百十一名いろいろなところへ出ておりますが、そのうち十五名が行っているということでございます。百十一名の中で十五名行っております。

岡田委員 それにしても随分悠長な話ではないかなというふうに思うわけですね。この長銀の問題、これをどういうふうに処理していくのかというのは、日本国経済の将来を占う上でも非常に重要である。私どもは資本注入に賛成しているわけではございませんけれども、しかし、今現実に長銀のリストラ、そして資本注入、合併ということが議論されている中で、この検査が長引けば長引くほど常識的には資本注入も合併もおくれていく、そういう構図にあると思うのですね。

今、国会の審議がいろいろ混乱しているから長銀の問題がというような議論がありますが、実態はそうではないはずです。実態は、この検査がなかなか進んでいかない、このことが一つ大きな、全体の長銀の問題が進展しない原因になっているはずですね。

先般、日経新聞で、八月二十九日だったと思いますが、住友信託銀行の専務さん、合併検討委員長代行はこういうふうに言っていますね。お盆のころに監督庁の検査結果が出ることを期待したが、そのスケジュールがおくれている、したがって、合併の最終決断の時期は九月から十月めどにずらさざるを得ない、こういう報道もあるわけであります。

そういう意味で、私は、ここは検査をいつまでにきちんと終えるということを長官がお述べになることがこの長銀問題にとって非常に重要なポイントだというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。

日野政府委員 お答えいたします。

お言葉を返すようで大変恐縮でございますが、住友信託は、恐らく仮に私どもの検査が終了したといたしましても、私どもは住友信託にはもちろんそういうことは伝えませんが、長銀にはもちろん伝えます。そういたしますと、両行が合併交渉を行っておりますので、住友信託に対して、秘密協定をお互いに結んでおりますので、伝えることになるだろうというふうに推測されますが、私どもが行っている検査を住友信託が、先ほど宮沢大蔵大臣も御答弁されましたように、デューデリジェンスをかけて、さらに住友信託が、合併という観点から改めて資産の内容を検査されることになるだろうと思います。恐らくそれは物差しが大分違ってくるのじゃないかと。

私どもは、いわゆるゴーイングコンサーンといいますか、そういった観点から検査をしておりますが、合併の当事者となりますと、さらにそれを一層厳しくと申しますか輪切りにすると申しますか、そういった観点からデューデリジェンスをかけてくるのではないだろうかと思いますので、必ずしも私どもの検査が早いから遅いから合併が早くいくとか遅くいくとかいったようなものではなくて、それは合併交渉の中で住友信託とそれから長銀がお考えになることではないかというふうに考えております。

岡田委員 今のお話なんですが、確かに、住友信託銀行は、八月二十一日の高橋社長名でのコメントの中で三つの条件を挙げている。そのうちの一つに、重要事実把握のための事前調査というのをちゃんとやります、これは合併の前提です、こういうふうに述べておられますね。

しかし、この調査というのは、金融監督庁の検査というものを踏まえて行われることになるのじゃないですか。金融監督庁の検査が終了しないと、この事前調査というものはできないというふうに私は理解しておるのですが、いかがなんでしょうか。

日野政府委員 お答えいたします。

住友信託銀行がどういう観点からデューデリジェンスを実施されるか、検査が終了してからかどうかということは、私どもからは何ともお答えできないわけでございまして、恐らく合併の構想が打ち立てられましてその合併交渉が進んでいく段階で、当然のことながら、相手の資産内容について、これはもう当然知るべきでありましょうし、また知る義務がむしろ合併当事者にとってはあるかと思います。

ですから、当然私どもの検査とはまた別に、何らかの形で住友信託が長銀の資産の内容をいろいろな意味で検討されているのではないかと拝察いたしますけれども、その内容は、私ども金融監督庁にとっては知る由もないことで、まことに、それでお答えできないということでございます。

岡田委員 新聞報道では、先ほどの専務さんは、金融監督庁は一日も早く検査結果を示してほしい、こういうふうに述べているのですね。現実に金融監督庁が直接に住友信託銀行に検査結果を示すことができるのかどうか、多分私はできないと思うのですが、しかし長銀を通じてそれを知ることはできる、こういうことだと思います。合併の相手もそういうふうに言っておるわけですし、少なくとも金融監督庁の検査というものが合併の前提となっている、そういうふうに私は受けとめるわけであります。金融監督庁が、検査はいっ終わるかわかりません、こういうことですと、合併交渉も進んでいかないという論理的な関係にあると思うわけであります。

だからこそ、いつまでに検査を終えるのかということぐらいは明示していただきたい、こういうふうに申し上げているわけですが、そうしますと、それに対する御答弁というのは、従来どおりわからないということになるわけですね。いかがですか、長官。

日野政府委員 お答えいたします。

検査は、もともと十九行に対する検査の一環として行っているわけでございまして、決して合併のために検査を行っているわけではございません。

合併は、あくまでも両行の自主的な経営戦略に基づいて判断されて交渉を打ち立てられたものでございますし、また、恐らく合併の両行はお互いの資産の内容をみずからの責任で評価して、さらには、例えば合併の比率を決めるとか、あるいは将来の新銀行の名前を決めるとかいったような点まで協議されることになるわけでございますので、決して私どもの検査をまたなければ合併が進展しないといったようなものではないと存じます。

岡田委員 それでは、ちょっと観点を変えますが、長銀への資本注入ということは、住友信託と長銀が合併をするということを前提条件にして行われるのでしょうか。それとも逆に、言葉をかえますと、合併がないということになった場合には資本注入は行われないというふうに考えていいのか。それとも、合併ということは全く別のこととして、合併があろうがなかろうが、資本注入の決定は行われるのでしょうか。

日野政府委員 お答えいたします。

これは、時系列から申しますと、まず六月二十六日に合併構想が打ち立てられました。合併の話がまず先にあったわけでございます。交渉が進むに従いまして長銀のリストラが必要だということに相なりまして、リストラをするということになりますと過少資本になるといったようなことになりました。したがいまして、公的資金の申請を行うことになったというふうに承知しております。

岡田委員 今の御答弁は、合併がないときは資本注入しない、こういうことで理解していいですか。非常に御答弁が官僚的でよくわからないのですが。

日野政府委員 申請はあくまでも長銀がなさることなわけですね。私どもがしなさいとか、するなとかいったような立場ではございませんで、長銀が自分が置かれている立場を考えて、過少資本になる、こういったことで果たして合併ができるかどうかということを考えた上で恐らくなされるのではないかというふうにこれは推察させていただいております。

岡田委員 申請のことは別にして、そういうときに資本注入を認めるかどうか。これは金融危機管理審査委員会の委員長にお聞きした方がいいのかもしれませんが、そういう申請が出てきたときに、合併ということを条件づけて資本注入を認めるのか。つまり、合併が破談になったときは資本注入しません、こういうことなのか。それとも、合併がどうなろうと、とにかく長銀に対する資本注入というのは認めると。もちろん、いろいろな条件を満たさなければいけませんよ。しかし、基本的にはそういうことなのか。いずれなんでしょうか。佐々波委員長。

松田参考人 ただいまのお尋ねの点でございますけれども、審査委員会の方としては、やはりこれは自己申告制度でございますので、申告が出た段階でその要件を審査することになります。したがいまして、合併を前提にしなければ申告しないとか、あるいは合併が認められなければ申請をしないとか、そういう条件は私ども決められませんので、出てきた条件の中で最大限厳正に審査をさせていた、だきたいと思っております。

岡田委員 形式論はそういうことなんですが、ただ、これだけの大量の公的資金を投入するというときに、私は、国民に対して基本的な考え方の筋道は示すべきだと思うのですね。

先ほどいろいろお話が出ていましたが、基本的には長銀はリストラする。そのリストラを前提として住友信託との合併ということがあって、長銀のリストラと合併というのは、これは一つの対になっているわけですね。そういうものに対して資本注入をする、こういうふうに考えるわけですが、そういうふうに今理解をされていると思うのですが、もし合併がだめになれば長銀のリストラもできない。そして大蔵大臣も、合併ができないのであれば長銀というのは立ち行かなくなるというような趣旨の答弁もしておられるわけですから、そういうところに資本注入するということはあり得ない話ではなかろうか。だから、資本注入をするという決定をするときには、少なくとも合併が条件ですよということはつけざるを得ないと私は思うのですが、そのぐらいのことは、大蔵大臣、いかがですか、今この場で言えませんか。

宮澤国務大臣 それは、先ほどから政府委員や参考人の言っておられることが私はごもっともだと思いますのは、資本導入をするかどうかの金融危機管理委員会の決定は、申請に基づくものであります。申請にはその理由というものが必ず付されておりますから、したがって、そういうことがない事態で、申請というものを前提にしないで答えをしろと言われてもそれは無理なので、申請という意味は、ただ一本紙が来るというのではない、その理由というものがつけられておりますから、それを読まなければやはり判断はできないと申し上げるしかないのじゃないでしょうか。

岡田委員 全くよくわからないわけでありますが。

最後、合併をするかしないかというのは、これは私企業の問題ですから、政府は最終的に強制できませんよね。ですから、住友信託が決める。しかし住友信託は、合併を決めるときには、それは、政府資金がどれぐらい長銀に対して注入されるか、あるいは長銀のリストラがどのぐらい実行できるか、こういうことを踏まえて、最後ぎりぎりの、まさしく住友信託という会社の存亡をかけた決断をすると思うのですね。

しかし、その資本注入というものが、今おっしゃったように、申請が出てこないとわからない、こういう話ですと、スケールメリットというか、お互い自縄自縛になっていて物事が進んでいかないのじゃないか、そういう状態に今陥っているのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 合併の交渉が今どういう状況にあるかを私は存じませんので、きちんとはお答えができませんけれども、少なくとも、今の交渉は、この間長銀が提出いたしましたリストラの案をベースに行われているはずでございますから、そうだといたしますれば、ある段階で長銀から公的資金導入の申請が行われる、そういう想定のもとに交渉は進んでおるのではないかと思います。

岡田委員 聞いているとだんだんわけがわからなくなってくるわけでありますけれども、やはり、これだけの巨額の公的資金を投入するということであれば、私は、先ほどから議論になっておりますが、まず第一にきちんと国の検査を終える、これが大前提だと思うのですね。しかし、政府がおっしゃるには、それはわかりません、横並びでやっていることですから何とも申し上げられません、こういう話なんですね。そして、申請が出てきたときに、それは合併が前提ですよ、だから合併が破談になれば資本注入はしません、そういうことも今言えるはずなんですね、現実には。しかし、そういうことも、いや、申請書が出てこなければ何とも言えませんと。

これで、国会で審議して、この長銀処理の問題、五千億の公的資本投入の問題について与野党で何か方向性を出せと言ったって、私は無理だと思うのですよ。国民の皆さんも全く納得できない話じゃないかと私は思うのです。

ある意味で、もう大分議論は尽きているわけですが、大蔵大臣、私が今申し上げたことについてもし何かコメントがあればおっしゃっていただきたいと思います。

宮澤国務大臣 これは、現実の問題になりますと、金融危機管理委員会が判断を、委員が判断をせられるべきことですが、今岡田委員の言われましたその後段の点は、あのリストラ計画によりますれば、ある段階で長銀は公的資金の導入を申請してくるであろう一その場合に、リストラ計画でございますから、それは合併というものを前提にして申請をしてくるであろう、あの計画に関する限りは、そこのところは私はそういうふうに推定していいのではないかと思います。

岡田委員 そうすると、今の御答弁では、資本注入、しかし民間の方がそういうふうにしてくるであろうというお話であって、明確に政府として、合併が資本注入の前提であるという御答弁ではなかったわけですけれども、ここが本当に私は大事なところで、いずれにしても、今の三十分ほどのやりとりを見ていて、国民の皆さんとかあるいはマーケットがどういうふうに受けとめるかということを私は非常に心配をいたします。

結局、従来型の裁量行政、見えない行政で、検査もやると言っておきながら、故意にずるずる結論を延ばして、ちゃんとやればひょっとしたらまずい結果が出るかもしれない、だから結果を出さずにその前に行政的な決定をしてしまう、資本注入を決めてしまう、そういうふうに受けとめられ、従来と何ら変わっていない、金融監督庁をつくってそのトップに検事出身の日野さんに来ていただいたけれども、やっていることは従来の大蔵行政の延長で何も変わっていないじゃないか、こういうふうに受けとめられることを私は大変恐れるわけでございます。

いずれにいたしましても、もうこれ以上議論しても仕方がないと思いますが、私は、非常に不透明な、そういう感じを受けたところでございます。

それでは、もう一つ、長銀に関して御質問したいと思います。

長銀破綻の場合の影響の一つとして、ノンバンクの問題が何度か取り上げられまして、長銀系のノンバンクが破綻をすると、それが破綻の連鎖を呼んで大変影響が甚大だ、だから、ノンバンクの破綻を防ぐためにも長銀に対する資本注入というものは認めていかなければいけないのだ、こういう御趣旨の答弁が大蔵大臣からもあったというふうに思いますが、基本的にはそういう考え方と理解してよろしいですか。

宮澤国務大臣 微妙なところですけれども、私の申し上げましたのは、長銀の、あるいは両行の合併計画というものは、住友信託の要求によりまして、長銀は不良債権は処理をすること、そして非常に親しい関係にある向きに対する問題の整理をすること、これが今岡田委員の言われました部分と思いますが、そういうことが条件になっておりますので、長銀としては、その条件を満たさなければ合併計画が推進できない、そういう立場にあるものというふうにリストラ計画を私は読んでおります。

松田参考人 お答えいたします。

審査基準は法令の趣旨の中でつくるものでございますので、例えば三年連続と書いてありますけれども、これが二年でだめなのか、あるいは五年ならいいのかという問題は多少あると思います。常に、我々はそういうことを考えながら、そこは、審査基準が法令の範囲であれば多少変更することもやむを得ないな、それは合理的なものであればそうせざるを得ないなと思っておりますが、当面、現在のところそういう変更を想定していないという状況にございます。

岡田委員 法曹界出身の松田さんとも思えない御答弁のようにも思いますが。

この法律をつくるときに、とにかく審査基準にかなりの部分をゆだねたという経緯がありますね。ちゃんとしたものをつくりますから、全員一致ですから、こういう話だったのですが、実際出てきたものを見るとこういうものが公然と入っている。そして、こういうものがあるから、自己資本比率が〇ぎりぎりであってもこの資本注入の対象になるんだという逆手にとったお話をされる与党の議員もおられるわけで、私は、非常にこれは弊害があるな、やはりこういうことをもう少しきちんとしていくことも国際的な信頼性を増すためにも重要なことじゃないか、そういうふうに思って申し上げたわけでございます。

基準そのものがいいかげんですと、それに基づいて、じゃ長銀の場合の資本注入についてどうなのかというときに、またそれに対して信頼感がなくなる、こういうことになるのではないかというふうに思っております。

次に参りますが、これも一部きょうのマスコミに出ておりましたが、きのうの審議の中で佐々波委員長が、ことし三月の資本注入に当たって何を審査したかというときに、個別行の実態は把握しておりません、こういうふうに述べられました。そのことについて、これは余りにも無責任ではないか、そういう批判があるわけですが、個別行の実態を把握していないという意味はどういう意味なのか、もう少し敷桁してお話しをいただきたいと思います。

佐々波参考人 まず、昨日の私の発言につきまして不十分な点があったことを先生方におわびしたいというふうに思います。

お尋ねの件につきましては、個別銀行のバランスシートを見ていなかったかのような発言があったようでございますけれども、真意といたしましては、個別企業のラインシートと申し上げるべきことでした。もう一度繰り返しましょうか。真意といたしましては、個別企業のラインシートというふうに申し上げるべきところを個別銀行のバランスシートと言い間違えましたことを、ここに訂正させていただきたいというふうに思います。

審査委員会といたしましては、三月の資本注入の際には、申請に係る二十一行につきまして、個別行の内容を審査いたした上で資本注入をいたしまして、その際、審査委員会は、金融監督当局の最高責任者でいらっしゃいます大蔵大臣及び日銀総裁が委員となっておられますので、両委員を通じて、上記のような、というのは、個別銀行のバランスシートについての的確な認識をいたしましたというふうに申し述べたいというふうに思います。

岡田委員 そうすると、例えば長銀に関して言えば、長銀が貸し出している個々の貸出先についての情報は今把握していない、しかしバランスシートは見た。しかし、バランスシートというのは、これは公表されているんじゃないですか、最新のものがその時点で見られたかどうかは別にして。そうすると、公表されている資料を見て、これはいい悪い、こう判断したわけですか。

松田参考人 お答えいたします。

私も審査委員の一人としてその審査に立ち会いました。ちょっと委員長の御答弁で言葉足らずのところがあると思いますので、御補足させて説明させていただきます。

三月の資本注入の審査では事実関係について非常に重点を置きました。特に不良債権の整理の仕方がどうなっているか、見通しなど。

そこで、委員長名で、検査、考査の権限をお持ちになっている大蔵大臣と日銀総裁に、自己査定の資料を審査委員会で取り寄せておりますので、それを中心に、事実関係の数値等について事実を確認をお願いしたいということで、要請を委員長からいたしまして、それを受けて、大蔵省と日本銀行では各行のラインシートを相当量取り寄せて精査をしていただきました。

その結果について、審査会の席上で大蔵大臣及び日銀総裁から事実関係についての御意見をいただいた上で、審査委員全員でまた合議をして、それから頭取を直接ヒアリングをして、補充的にヒアリングをして、そしてその上で資本注入をするという決定を見た、こういう関係にございます。

岡田委員 今のお話ですと、そうすると、大蔵大臣や日銀の方からは、皆さんはラインシートを見てないわけですから、今度の長銀に関しては、例えば日本リースについてどういう状況であるという説明、これは一つの例ですけれども、そういうことを大蔵省はされたわけですか。

伏屋政府委員 お答え申し上げます。

三月の時点の話でございますが、金融危機管理審査委員会のメンバーの一人である大蔵大臣、当時は大蔵大臣が今現在金融監督庁が持っています検査権限を持っていたものですから、その検査結果等を踏まえまして、審査委員会において、申請されました金融機関の財務内容について意見を述べたというぐあいに承知しております。

岡田委員 ですから、ちょっとイメージがよくわからないのですが、意見を述べたはいいのですが、例えば、そういう長銀であってもほかの銀行でもいいのですが、重要な貸出先について、その実態まで踏み込んできちんとした御意見をお述べになったのですか。

松田参考人 大蔵大臣及び日銀総裁からの御意見の中には、自己査定の分類の仕方等についての御意見を伺いましたけれども、個別的な貸出先について、そこまでの御意見は具体的にはなかったように思います。

岡田委員 今のようなお話ですと、もちろんタイミングが非常に切迫していたという事実上の問題はあるにしても、公的資金を大量に投入する、あのときは一兆八千億だったですか、投入するときに当たってほとんど形式審査に近い。そして、日銀総裁と大蔵大臣がこれで間違いございませんと言って、はい、わかりましたと、それに実態は近かったような印象を受けるんですが、もしそれで違うというのなら、具体的にこういうところが違うというのをわかりやすく言っていただけませんか。

松田参考人 先生御指摘のように、非常に限られた時間の中の審査でありました。その中で私ども最大限やつたつもりでおりますけれども、どこまでが形式的でどこまでが重点的にやったというと、まあ主観的な考えもあるかもしれませんが、非常に生意気な物の言い方で恐縮ですけれども、私ども、主観的には、許された範囲では最大限やった、事実関係についても最大限やった、このように思っております。

岡田委員 十分な事務局もない中でいろいろな限界があることもわかりますが、しかし、もしそうだとすれば、こういうことが形式的にしかできないということであれば、法律の立て方、仕組みそのものがおかしいということに私はなると思うんですね。法律上はやはり佐々波委員長のところに、そしてこの委員会にすべてがゆだねられる、こういう仕組みになっているわけでありますから、それだけ責任が重いわけですね、そこに何兆円というお金が、その決定によって投入されるかどうか決まるわけですから。そういう意味では、私は、仕組みそのものに問題があるのじゃないか、そういう感じはぬぐえません。

そして、さっきのところに戻るんですが、今度長銀についての資本注入り話が出てきたときに、やはり少なくとも、金融監督庁の方からきちんと責任を持って検査して、そして問題ありません、債務超過ではありません、自己資本比率はこういう数字ですということがはっきり出ないと、私は、今のような実態から見ると、だれもきちんと判断しないまま資本注入が決められるんじゃないか、そういう気がするわけであります。そういう意味で、金融監督庁の責任を持った検査の実施と、そしてその終了ということが私は絶対必要なことだと思うんです。

もう一回監督庁長官に聞きますが、検査を必ずやり遂げる、こういうふうにおっしゃっていただけませんでしょうか。

日野政府委員 お答えいたします。

しっかり検査をやっていきたいと思っています。

岡田委員 これ以上聞いてもむだなようですね。

それでは次に、ちょっと観点を変えまして、長銀の場合にもデリバティブの問題というのが出てまいりましたし、大手の銀行、これは長銀という固有名詞ではございません、大手の銀行が破綻した場合の国際的な影響というのは非常に大きい、こういうことが言われます。それはそのとおりだと思います。

実は、そういうものを防ぐためにBISの基準が存在しているんだと私は思うんですね。国際的な波及が大変大きいからこそ、国際的にプレーできるプレーヤーというものは少しハードルを高くして、そして限られた人にしよう、こういうことを想定してあの基準ができている。もちろん、日本の銀行を少し抑えよう、そういう趣旨もあったとかいろいろな議論がありますけれども、客観的に見れば、私は、先ほど申し述べたようなことでこのBISの基準ができているというふうに思うわけであります。

確かに日本でも、三月の時点で、金融監督庁の資本注入をするに当たって一定の条件が付されて、リストラ計画を出すことになっていますけれども、そのリストラ計画の中に、一律の人員削減とかそういうことではなくて、海外撤退をするということがもし長銀に関して条件になっておれば、それから半年ありますから今日のような議論にはあるいはなっていなかったのじゃないかという気もするわけであります。こういうことを述べたくありませんが、今後まだ大手行の破綻の話というのが出てき得るという状況の中で、私は、早目に海外撤退というものを一定の条件のもとで進めていくということが金融政策として非常に望まれているところじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。

これは、実は前内閣のときにも予算委員会の場で私申し上げたことがあるんですけれども、大蔵省からは、重要な指摘ですけれども、検討、勉強させていただきますというようなお答えしか返ってきませんでしたが、今そういうことをきちんとやるべきじゃないか。多少強権的になっても、それは将来税金で面倒を見るという話なんですから、例えば、形式的には八%あったとしても、あるいは将来、三月末には無理すれば八までいくかもしれないけれども、今七とか六とかいうところまで含めて、もう海外から撤退しなさい、四の世界で生きていきなさい、こういうことが私はあってしかるべきじゃないかと。そして、そういうふうにすれば、何よりも今最大の国内の経済の足を引っ張っている貸し渋りの問題というのはほとんど解消してしまうわけですね。そういうふうに思うわけですが、この点について、大蔵大臣の御意見をお聞きしたいと思います。

宮澤国務大臣 これはまさに金融行政の問題でございますから、私がお答えすべき問題ではないと思いますけれども。

ただ、従来いろいろ見てきてどういう感想を持っておるかというお尋ねであれば、いわゆる国際化の名のもとに、地方銀行も含めまして随分八%の銀行になられましたけれども、やはりそれはそれなりに反省期というものに入っていて、マネーセンターバンクスのほかに地方銀行も随分というような状況は、銀行自身においていろいろ考えておられるように見えますし、また、そういう時期になっておるのではないか、私はこの問題についていわゆるオブザーバーの立場でしかございませんけれども、そう思っております。

岡田委員 ある意味じゃ宮沢大臣らしい御答弁だったように思います。ただ、それは基本的には銀行が判断すべき問題だろうと思います。しかし、なかなかこれは決断できないわけですね。それから、今決断するとかえってマーケットから、これは危ない、だからこうしたんだというふうに攻撃をされる危険性も秘めている。

そういう意味では、やはり国が一定のガイドラインをつくって、これは法律でもいいんですけれども、そして、こういうものはもう撤退しなさいというふうに持っていくことが、これは国内の貸し渋りとも非常に関係のある話でありますし、あるいは大手行については、少なくとも国が資本注入しているわけでありますから、そのぐらいのことを言える権限が当然あるというふうに私は思うわけであります。

しかも、この金融の問題というのは、根幹が、国際的な全体の経済の破綻につながりかねないということに根本があるわけですから、いろいろな政策を考えていく上で。ということであれば、そのリスクをなるべく事前に少なくしておくということは非常に重要な政策マターじゃないか、私はこういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。

ですから、任せっきりじゃなくて、もう少し政府が主導権をとってそういう方向に持っていくべきだ、それだけの責任があるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 行政としてどうすべきかというお話になりますと、これは私がお答えをしてはならない範囲のことと実は考えております。

日野政府委員 お答えいたします。

確かに、海外に進出している銀行が、例えばロンドンやニューヨークで突然破綻をしたりいたしますと、それは現地の皆様方に対して大変御迷惑をおかけするということは、これはもう間違いないことであろうかと思います。

そういうわけで、現在、自己資本比率の規制上は、国際基準行に対しましては八%以上という自己資本比率が求められているのに対して、国内で営業を行う銀行に対しては四%以上ということで足りることにしているわけでございまして、国際業務に従事している銀行というのは、やはりそういった意味で八%以上の基準をぜひ満たしてもらいたい。もしそれが満たされないようであれば、私どもといたしましては、本年四月に導入されました早期是正措置制度などを活用いたしましてしかるべき措置をとっていただくということになろうかと思います。

つまり、国内基準行になりますれば、当然その自己資本比率の規制上必要な自己資本の額というのが、これは分子でございますが、少なくて済みます。一方、分母となりますリスクアセットというものは、海外業務から撤退いたしますと、それだけ、つまり先ほど御指摘がありましたように、貸し渋りといった意味でも、そういった意味での解消にも大変役立つということにもなろうかと思います。

いずれにいたしましても、それぞれの金融機関が国内銀行に徹するかあるいは国際業務にまで進出するかということは、これからの金融システム全体の中でそれぞれの経営戦略としてお考えいただくことになるのではなかろうかと思いますが、少なくとも、金融監督行政をお預かりしている私どもといたしましては、八%に満たないような銀行に対してはそれぞれしかるべき措置をとっていかなければならないものと考えております。

岡田委員 早期是正措置を厳格に適用していくということは当然のことだと思います。

私が申し上げているのは、仮に八を超えるようなところがあったとしても、本当に日本にとってこれだけの国際的な展開をする銀行が必要なのかという判断に立って、もちろん最後は、これは私企業ですから個別行の判断でありますけれども、しかし、これが全体の国際的な金融システムの安定という観点から、あるいは日本のそういうリスクを小さくするという観点から重要である、そういう観点に立てば、私企業だから勝手にやりなさい、必ずしもそういう必要はないんじゃないか。もう少し強い権限で、どうしても残りたいというところはそれは別だと思いますけれども、少なくとも今の四分の一ぐらいに国際的展開をする銀行というのは、あるいはもっと減らしてもいいのかもしれません、圧縮していっていいんじゃないか。

それから、資本注入を受けている銀行に対しては、より強いことが言えると私は当然思うんですね。例えば、資本注入の部分を除いて八が将来的に確保できるということがなければだめだとか、もちろん今は緊急事態だから今すぐということではなくとも、将来的にそういう見通しが安定的になければそれは認めないとか、そういう政策をきちんと展開していくということが私は非常に重要なことだと思うんです。

大蔵大臣は、これは所掌じゃないとおっしゃいますけれども、閣僚ですから、閣僚はすべての案件について責任を負うわけですから、閣僚兼金融行政に非常に御見識をお持ちの識者としてお聞きをしたいと思いますが、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 今、金融監督庁長官の言われましたことが行政指導の基本的なお考えと思いますので、それでよろしいのではないかと思います。

岡田委員 八を満たしていればそれに対してとやかく言えない、こういうふうなお考えというふうに理解をいたしましたが、突然それが六になり五になり、あるいは破綻に瀕して、そしてそのたびに国で大瞬ぎをしなければいけないというのは非常に私は割り切れないものを感じますし、それから、我が国の将来の金融産業というものがどうあるべきかというやはり基本的なビジョンを描いてやっていくという観点に立ったときに、本当にそんなものが必要なのか、こういうことを申し上げておきたいというふうに思います。

最後に、大臣、大変恐縮なんですが、一つ御質問したいと思うのです。

大臣は、金融安定化委員会の初日に、自民党の大島委員の御質問に対して、住専の問題ですけれども、住専について、六千八百五十億円の投入というのは農林系統の金融機関の預金者保護のために行ったという趣旨の答弁を述べられたと思うのですが、このお考えは今でも変わっておられないというふうに考えてよろしいですね。

宮澤国務大臣 あの当時のことは岡田委員も御記憶でいらっしゃると思いますけれども、あの年の暮れの予算編成、予算閣議で、突如として六千八百五十億円という数字が出てきまして、国民にとっては、これは全くその間の経緯を知らされていなかった問題でございました。そのゆえに、これは無理もないのですが、受け取る側が、殊に一部の報道機関は、これは国民の税金を使って住専各社を救済するのである、そういう報道がなされまして、第一印象というのは恐ろしいものでございますが、かなりの国民がそれをそういうふうに受け取ってしまった。

実際問題としましては、そこに至りますまでの間に、住専救済ではなくて、住専数社はもう破産するということが決まっておったわけでございますから、その債権をだれがどのように負担するかという協議がいわば水面下で行われておりまして、その結果として、母体行がとにかく一番のものをしょったことは確かですが、全部合わせますと数兆円のもので、一番大きな債権者は、トータルしますと系統機関であったわけでございます。

系統機関は系統機関の事情がございますから、どれだけ負担できるかということはおのずからございまして、そして、各負担者のトータルをしましたときに六千八百五十億円足りなかった、それが年末ぎりぎりに出た結果でございましたから、これは公になりますと想像できない事態になりかねませんので、財政当局が六千八百五十億円を負担する決心をして、それが予算に計上された、こういうのが真実の経緯であったと思います。

したがいまして、政府が、これは全体の金融の安定、秩序を維持するための金であると説明をいたしましたのは、これはそのとおりでございます。私は、それを否定する意図があったのではございませんが、主たる受益者はだれであったかといえば、それはやはり系統に金を預けておった地方の人たち、農村の金融、農協に預金をしていた人たちが主たる受益者であったというふうに考える、こう申しましたので、政府の公の説明を否定するというものではなくて、安定ということの意味をもう一つ立ち入って申し上げようとしたわけでございます。

岡田委員 この八月二十七日の答弁の議事録を見ますと、 プロラタでやれば農協はつぶれてしまう。そこまではいいのですが、そのときに、農協に金を預けていた人たちはどうなるのかということがエッセンスだったわけですね。しかし、それは言えない、実は、あれで救われたのは、全国の農協に預金をしていた人たち、その信用であったわけです。このことはもう疑いのない明々白々たる事実であるが、だれもそのことを余り今言いたがらないということ、だったと思います。

こう答弁されているのですね。随分今お話しになったことと開きがあるように私は思うわけですね。

確かに、法的処理をすれば系統金融機関が非常に大きな影響を受けたということは、これは事実ですね。その系統金融機関、私は、系統金融機関がおかしくなればそこに預けている預金者が影響を受けるというのはよくわからない議論だと思いますけれども、その系統金融機関がおかしくなるということと、それから今おっしゃった一般の金融システムがおかしくなるということは、私はイコールじゃないと思うのですよ。それを当時の政府は、金融システムがおかしくなるということだけで説明していって、そして実際の、本来後ろに隠れた、大臣が前回正直におっしゃった系統金融機関の救済ということを隠してやったものですから、非常にわかりにくくなった、不透明になった、こういうふうに理解をするわけでございます。

私は、せっかく、大蔵大臣がやっと本音で言ってくれた、こういう姿勢こそが、やはり国会においてこういう率直に語ることこそが、何といいますか、国民の政治に対する信頼を増していくのだなと思って感心して聞いておりましたので、それを何か即座に撤回をされたということを聞いて、大変残念で悲しく思った次第でございます。ということは、もとへ戻って、住専のときにも、あれは金融システムを守るためにやったのだということを大蔵大臣はお認めになっているというようなことになるわけですが、そういう説明を繰り返してきたことが、先ほどの、長銀の検査を終了しないということもこれは対の話であるのですけれども、そういうことが積もり積もって、私は、今政府がおやりになろうとしていることに対して国民が素直に聞けない、結局住専のときと同じように何か別の理由があってだまそうとしているのじゃないか、こういうふうに受けとめられてしまうということを非常に残念ながら申し上げざるを得ないわけでございます。

何かもし大臣に一言ありましたら、お聞きをしておきたいと思います。

宮澤国務大臣 一言だけ言わせていただければ、起こらなかった危機がもし起こったらどのようなことになったであろうかということを申したい気持ちがございました。

岡田委員 それは、その一言で通るのであれば、金融システムの安定のためということで何でもできるわけでありまして、私は、ちょっと大臣らしからぬ御答弁かなというふうに思います。

終わります。




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