12年ぶりの「再々質問」
民主党を代表して衆議院本会議で森総理に質問。
質問と答弁の一方通行で終わること多い代表質問の場で、12年ぶりに「再々質問」を行ない、国会審議の活性化に一石を投じた。
第150回国会 衆議院 本会議 第2号
2000年09月25日 平成十二年九月二十五日(月曜日)
議事日程 第二号 平成十二年九月二十五日 午後一時開議
一 国務大臣の演説に対する質疑 本日の会議に付した案件
議員請暇の件国務大臣の演説に対する質疑
岡田議員 民主党の岡田克也です。
質問に先立ち、森総理に一言率直に申し上げたいことがあります。それは、第二次森内閣の組閣についてです。 来年一月からの省庁再編を控え、年内にも新たな組閣が行われると言われていますが、なぜ半年間の任期しかない内閣をつくったのでしょうか。半年間しか任期のないことがあらかじめわかっている大臣に、官僚に対してリーダーシップを発揮しろと言う方が無理じゃないでしょうか。 例えば、省庁再編は霞が関の大改革です。しかし、この改革に魂を入れるためには、政治家がしっかりとしたリーダーシップをとらなければなりません。数カ月後に交代することがわかっている大臣にそれを求めることは困難です。結局は官僚ペースで、実質的に重要なことが今決まりつつあるのです。社会保障や教育などの大改革も、任期の短い大臣のもとでは足踏みをするしかありません。 森総理に、今極めて重要な時期にある日本国のトップリーダーとしての責任と自覚はあるのでしょうか。能力本意ではなく、当選回数主義により任期六カ月の大臣を大量生産する森総理からは、時代に対する危機感を感じることはできません。二十一日の所信表明演説においても、総理がみずからの意思と責任で難局に立ち向かっていこうという気迫を感じさせるものはありませんでした。 以下、鳩山代表との重複を避けながら、森総理の所信表明演説に対して質問します。まず、外交、安全保障について質問します。 森総理は、所信表明演説の中で、先見性と戦略性を持って、積極的かつ創造的に外交を展開すると述べられました。私の目には、森外交には先見性も戦略性もなく、目の前にある大きなチャンスをみすみす逃し、失点を重ねているとしか見えません。流れに身を任せるままでの主体性なき森外交によりいかに国益が損なわれたか、以下具体的に指摘し、森総理の答弁を求めます。第一に私が指摘したいのは、日ロ平和条約交渉です。 三年前に、当時の橋本総理とエリツィン大統領の間で、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすとの合意がなされました。このクラスノヤルスクの合意は、当時、日ロ関係に大きな突破口を開くものであり、日ソ共同宣言以来の大きな前進であると高く評価されました。 その締結期限である二〇〇〇年も残すところ四カ月となったところで開催された九月の日ロ首脳会談が、平和条約締結、すなわち領土問題解決に向けた極めて重要な意義を持つものであったことは言うまでもありません。しかし、何ら前進はありませんでした。私は、今回の森・プーチン会談は、大国間の外交交渉には珍しい一方的なもので、日本側の完敗だったと思います。そこで、森総理に四点お伺いします。 一つ、今回の共同声明は、実質的にはクラスノヤルスク合意を事実上白紙に戻すことであり、二〇〇〇年末までに平和条約を締結することは断念したものであると私は判断しますが、いかがでしょうか。 二つ、プーチン大統領の厳しい対応は事前に十分予想されたことです。余りにも日本側の対応は戦略に欠けていたのではないでしょうか。少なくとも二〇〇〇年にかわる新たな期限の設定をするなど、妥協はできなかったのでしょうか。 三つ、森総理は、このような一方的な結果を招いたこと、すなわち日本の国益を大きく損なったことに対して、どのような責任を感じているのでしょうか。 四つ、近い将来の平和条約締結のために、今どのような戦略性と先見性を持って挑まれるのか。以上四点について、明快な答弁を求めます。
第二に、森総理のインド、パキスタン訪問について質問します。 この訪問に関し、森総理は多くの成果を得ましたと述べられていますが、私には、そもそも何のためこの時期インド、パキスタンを訪問したのか、その意図すら理解できません。 インド、パキスタンは、言うまでもなく無謀な核実験を行い、世界じゅうから強い批判を受けました。我が国も経済制裁を続行中であります。このような状況のもとで訪問された森総理の最大のなすべきことは核の問題であったことは自明のことであると私は考えます。核問題に関し、森総理はどのような成果を上げたのでしょうか。私は、インド、パキスタンが核保有国となったことに対する森総理の危機感が、余りにも欠如しているのではないかと感じています。 以下、三点質問します。 一つ、インド、パキスタンの核保有を放置することは、核保有国は米ロ英仏中の五カ国以上にふやさないという戦後長く続いた核不拡散体制の重大な逸脱であり、今後さらなる核保有国を生む引き金になり得るとの認識をお持ちでしょうか。 二つ、カシミール問題を持つ両国が核を持つことは、現実に核が使用される可能性すら否定できないというふうに私は考えますが、そのような危機感をお持ちでしょうか。 三つ、だからこそ、両国の核保有について早期にこれを断念するよう説得することこそが、世界が日本に期待した役割だと私は考えますが、森総理はこの点に対し、どのような役割、責任を果たしたのでしょうか。明快な答弁を求めます。第三に、日米関係について質問します。森総理は、日米関係は我が国外交の基軸であると述べられました。私も同感です。しかし、日米両国が真のパートナーシップで結ばれるためには、日本が米国に一方的に依存、従属するのではなく、みずからの主体性を持って、主張すべきことは主張し、同時に果たすべき責任を全うしていくとの関係を構築することが必要です。この視点から、普天間飛行場の移設問題について、森総理にお聞きしたい。 総理は、沖縄県が十五年の使用期限を設けるよう求めていることをどう考えているのですか。沖縄サミット時の日米首脳会談の際、クリントン大統領との間でこの問題を真剣に話し合った形跡はありません。沖縄県の要望を米国に単に伝えるだけの日本政府、森総理の姿勢は、沖縄県に対して不誠実であるだけではなく、米国政府に対しても果たすべき責任を逃げているというふうに受け取られているのではないでしょうか。森総理の責任ある答弁を求めます。 第四に、いわゆる有事法制について質問します。 この点について森総理は、所信表明演説の中で、法制化の検討を開始するよう要請するとの与党の考え方を十分受けとめながら政府の対応を考えると述べるにとどまっています。これでは、日本国総理大臣としての意思を何も感じることはできません。 私は、日本が侵略されるなどの緊急事態が発生したときに、自衛隊がシビリアンコントロールのもとで適切に活動するためのルールをあらかじめ法律として決めておくことは、政治の当然の責任であると考えています。与党に言われたからとか政府の対応をこれから考えるとの第三者的な演説は、日本国総理大臣として無責任です。総理のこの問題についてのより明快な答弁を求めます。 また、言うまでもなく、自衛隊の出動などにより、平常時とは異なる権利義務関係が生じ、国民の権利が制限される場合が想定されます。緊急事態や有事の名のもとに基本的人権を不当に制約しないとの基本原則をまず法制化するに当たって確認することは極めて重要と考えますが、総理のお考えを伺います。
次に、経済財政問題について質問します。第一に、補正予算の必要性について伺います。 私は、景気の現状を楽観視しているわけではありません。不良債権の処理、不透明な消費の先行き、原油高の影響など、不安定要因はたくさんあります。しかし、一年前と比べ、明らかに異なる点があります。それは、企業収益が改善し、大企業を中心に設備投資が持ち直しつつあることです。このような民間の資金需要が活発化しつつある中で、公共事業を中心とした景気対策を実行することは、必要でないのみならず、金利上昇を招き、民間の自律的回復に水を差す可能性が高いと私は考えます。補正予算は、経済構造を改革し、民間主導の経済成長を促進するものに限るべきで、伝えられる、政府の従来型の公共事業を中心とした補正予算は、不要であるばかりでなく、有害であると考えます。森総理の見解をお伺いします。第二に、景気対策と財政構造改革の関係です。 森総理は、就任時には、景気回復を財政構造改革に優先させるとの小渕前総理の路線を踏襲すると明言されました。ところが、今回の所信表明演説においては、財政の効率化と質的改善を進めることや、持続可能な財政の仕組みづくりのための準備を強調されています。今までになかったことです。森総理は路線転換したのでしょうか。他方で、社会保障のあり方や中央と地方の関係については、景気がさらに回復した後まで先送りすると述べています。森総理の真意は一体どこにあるのでしょうか。 小渕前総理は、景気回復を優先すると明言されました。私の結論は小渕前総理とは違いましたけれども、日本国総理大臣としてみずからの考えを明確に述べられたことは、立派だったと思っています。 森総理は景気回復と財政構造改革について基本的にどのように考えておられるのか、国民に対し、明確な表現で答弁することを求めます。 第三に、財政構造改革の重要な柱である社会保障制度改革について質問します。 今国会に、健康保険法と医療法の一部改正案が提出されます。いずれも、二〇〇〇年までに医療制度の抜本改革を行うとの約束を踏みにじった末提出された部分的な改革案で、極めて問題があると言わざるを得ません。平成九年の健保法改正以来の政府の改革の約束とその後の後退の繰り返しを見るとき、日本医師会等の医療提供者に余りにも偏った自民党の姿勢に、強い懸念を持たざるを得ません。 森総理には、患者や健康保険料を負担している生活者の立場に立って医療制度改革を断行する決意はおありでしょうか。答弁を求めます。 次に、総理は所信表明演説の中で、社会保障の基本は自己責任の原則に立つ社会保険方式に基づくべきと述べられました。しかし、自己責任だから社会保険方式がよいとの議論は納得がいきません。今後さらに増大する社会保障の財源を税と社会保険のいずれで賄うのかという議論は、世代間の公平の確保、システムの効率性、安定性などの視点を踏まえた議論がなされるべきで、自己責任原則をキーワードにすることは不適当だと考えますが、総理の見解を求めます。
次に、今国会での焦点と考えられる幾つかの点について質問します。第一に、永住外国人の地方参政権の問題です。 総理はこの問題について、国会において御議論を進めていただきたいと考えておりますと述べるだけで、みずからの意思を感じさせるものは全くありません。森総理御自身は、永住外国人に地方参政権を認めることに賛成ですか、それとも反対なのでしょうか。答弁を求めます。 また、総理は国会において議論を進めていただきたいと言われましたが、各党の賛否は既に決まっているのです。決まっていないのは自由民主党の対応であり、自民党総裁として森総理がより強いリーダーシップを発揮すべきと考えますが、その意思はあるのでしょうか。答弁を求めます。 次に、この問題は自公両党の連立に当たっての重要合意事項であったはずです。続総務庁長官に対し、法案成立に向けて公明党はいかなる決意で臨まれるのか、答弁を求めます。第二に、少年法について質問します。 総理は少年法改正について、政府としては与党の議論の結論を受けて適切に対応すると述べられました。まるで与党に丸投げしているかのようで、総理としての考えは全く伝わってきません。多くの国民が関心を持つこの問題に総理の考えが示されないことは、極めて残念です。 私は、犯罪に対して毅然とした姿勢を示し、みずからの行いに対し責任をとるとの規範を徹底することは大変重要なことだと考えています。しかし、今問題になっているのは、人格の形成過程にある未成年者に対する刑事処分の問題です。総理に答弁を二点求めます。 一つ、今回の与党の改正案による副作用はないのでしょうか。凶悪事件に目を奪われる余り、更生の可能性ある少年の未来を奪うことにならないのでしょうか。 二つ、最近の少年による想像を超える犯罪は、少年法の改正だけでは到底解決できるものではありません。専門家の意見を十分に踏まえ、また当事者である少年たちの育った環境などに対する徹底的な分析を踏まえた総合的な対策が必要ではないでしょうか。いつまでにこのような総合対策を準備されるのでしょうか。 この問題は、総理がみずからの言葉で国民に語るべき重大な問題だと考え、納得のいく答弁を求めます。第三に、政治資金の問題について質問します。 久世金融再生委員長は、特定の企業から利益提供を受けていたことを理由に辞任しました。特に、特定企業から一億円の資金提供を受けていた問題は見逃せません。 企業側の説明によると、自民党本部の建物を管理する財団法人自由民主会館に対し寄附をしたことになっており、他方、久世議員の側は、党費の肩がわりを自民党に振り込んでもらったとしています。どちらの言い分が真実なのでしょうか。また、いずれが真実であろうとも、自民党と事実上一体化した財団あるいは架空の党員を使った裏献金である疑いは濃厚であります。 自民党総裁としての森さんにお聞きします。このような手法は違法な行為であるとの認識はありますか。また、自民党においてどの程度行われ、また現在も行われているのでしょうか。答弁を求めます。 私は、政治資金の流れをより透明にするため、今すぐ実行できることとして、収支報告書の保存期間の延長とコピーの解禁を提案します。総理の賛同を得たいと思いますが、いかがでしょうか。答弁を求めます。 以上、総理の所信表明演説に関し、私の考えを述べてきました。私が森総理の演説を聞いていて最も残念なことは、日本国総理大臣としてみずからの責任を果たしていこうという強い意思が感じられないことです。流れに任せるままの主体性なき森外交により、日本国の国益が大きく失われています。経済政策の分野では、経済企画庁長官や亀井政調会長に任せきりで、総理の存在感は希薄です。今国会の重要案件である少年法改正や参議院選挙制度、永住外国人に対する地方参政権の付与などの問題に対しても、所信表明演説の中で総理としての明確な方向性は何ら示されませんでした。 私は、今まで質問するに際し、私自身の考えを明確に示した上で森総理のお考えを質問してきました。せめて、私の質問に対しては、官僚の作成した答弁を棒読みするのではなく、総理自身のお考えを総理自身の言葉で語っていただきたいと思います。 総理の答弁が納得のいかないものであった場合には、二度、三度と引き続き再質問を行うことを念のため申し添えて、私の代表質問といたします。
内閣総理大臣(森喜朗君) 冒頭、岡田議員から、第二次森内閣の組閣についての御指摘がございました。 今次内閣は、さきの総選挙で国民の皆さんの御審判を経て、絶対安定多数を得た与党三党の連立内閣であり、選挙後の国会で首班指名を受けて組閣されたものであります。議員の御質問は、こうした民意を反映して政府を組織するという民主主義や議院内閣制を否定されるものではないかと、判断に迷います。この内閣の閣僚は全員、その任期の長さにかかわらず、十分、官僚諸君に対しリーダーシップを発揮できるすばらしい、優秀な方々ばかりであります。 先般の日ロ首脳会談において署名されました平和条約問題に関する声明に関し、この声明はクラスノヤルスク合意を事実上白紙に戻すものであり、二〇〇〇年末までに平和条約を締結することを事実上断念したものではないかとの御指摘がありました。 同声明においては、日ロ双方が東京宣言に基づき、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすとのクラスノヤルスク合意の実現のための努力を継続していくことが明確に確認されており、事実上断念したとの御指摘は当たりません。 二〇〇〇年にかわる新たな期限設定についてのお尋ねでありますが、今回の話し合いの結果、今後の交渉については、クラスノヤルスク合意の実現のための努力を継続していくことで一致いたしております。これに従い、今後は、本年末まで引き続き最善の努力を払っていく必要があり、新たな期限についての議論を行う段階でないことは御理解をいただけると思います。 今回の日ロ首脳会談の評価についての御意見でありますが、確かに、四島の帰属の問題について一致することはできませんでしたが、領土問題の本質について、率直な、信頼関係に基づいた議論を行うことができました。 その結果、東京宣言及びモスクワ宣言を含む今日までに達成されました両国間のすべての諸合意に依拠しつつ、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく交渉を継続することが確認できたことは、重要な成果であったと思います。 今後の平和条約交渉についての御質問でありますが、私とプーチン大統領は、交渉のプロセスの効率性を高めるべく、両国の外務大臣に対し、交渉を加速化させるための新たな方策の策定、領土問題の歴史に関する共同作成資料集の改訂版の準備、平和条約締結の重要性を世論に説明するための努力の活発化という措置をとるように指示をいたしました。今後、これらの措置を進めつつ、引き続き平和条約締結に向けて全力を尽くしていく考えであります。 インド、パキスタンの核保有についてのお尋ねでありますが、政府としては、御指摘のとおり、両国の核実験は国際的な核不拡散体制に対する重大な挑戦であり、これは単にインド、パキスタン両国のみならず、さらなる核拡散への誘因になるものとして、深く憂慮しなければなりません。 インド、パキスタン両国の核の使用の可能性についてのお尋ねでありますが、御指摘のとおり、カシミール問題を抱える両国が核実験を行ったことには重大な懸念を有しております。今回の私の訪問でも、両国間の緊張に懸念を表明し、その平和的解決に向けた対話の再開を両国に強く働きかけるとともに、両国に対し、核不拡散分野での進展を強く求めてまいりました。 インド、パキスタン両国による核の放棄に向けた働きかけについてのお尋ねでありますが、私は、私の両国訪問に際し、核兵器の削減及び廃絶に向けての取り組みを両国に呼びかけるとともに、その中で我が国が特に重視する両国の包括的核実験禁止条約への署名等を強く働きかけた次第であります。この結果、両国から、包括的核実験禁止条約の発効まで核実験モラトリアムを継続する旨の確認を得たところであり、平和国家たる我が国の役割を果たしていると考えております。普天間飛行場の移設に関するお尋ねがありました。 代替施設の使用期限の問題については、政府としては、昨年末の閣議決定にあるとおり、国際情勢もあり、厳しい問題があるとの認識を有しておりますが、稲嶺県知事及び岸本名護市長から要請がなされたことを重く受けとめ、これを先般の日米安全保障協議委員会等の閣僚レベルで米国政府関係者に対して取り上げてきたほか、先般のサミットの際、日米首脳会談においても私よりクリントン大統領に対し取り上げたところでもあります。 これに対し、クリントン大統領からは、在沖縄米軍を含む在日米軍の兵力構成等の軍事態勢については、SACOの最終報告及び一九九六年の日米安保共同宣言を踏まえ、日本側と緊密な協議をしていきたい旨の言及があったところであります。 これを踏まえ、政府としては、今後とも昨年末の閣議決定に従い適切に対処してまいる考えであり、あわせて国際情勢が肯定的に変化していくよう外交努力を積み重ねてまいります。 有事法制について責任ある対応をとるべき旨の御指摘がありました。有事法制は、我が国への武力攻撃などに際し、自衛隊が文民統制のもとで適切に対処し、国家国民の安全を確保するためにぜひとも必要な法制であり、平時においてこそ備えておくべきものであると認識いたしております。 所信表明においては、今後の政府の対応を考えていくに当たり、一つの重要な判断要素として与党の考え方があることを示したものであり、政府としての対応を決定するに当たっては当然私が主体的に判断することとなります。有事法制について基本原則を確認すべき旨御指摘がありました。
自衛隊の行動は、もとより国家国民の安全を確保するためのものであり、有事の場合においても可能な限り個々の国民の権利が尊重されるべきことは、議員の御指摘をまつまでもなく当然であると考えております。補正予算は、不要であるばかりか有害ではないかとの御指摘がございました。 政府・与党の迅速にして大胆な経済政策によって、我が国経済は緩やかな改善をいたしております。しかしながら、雇用情勢はいまだ厳しく、消費は一進一退の状況にあり、企業の倒産件数も高水準になってきております。いわば我が国経済は、七合目から八合目に達しておりますが、まさに正念場であって、もう一押しが必要な状況にあると考えており、こうした観点から補正予算を編成することといたしております。 その際、我が国の経済を新時代にふさわしい構造に改革し、二十一世紀における新たなる発展を確実にすることが現下の最大の課題であることから、IT革命の推進、環境問題への対応、高齢化対応、都市基盤整備の重要四分野を軸とした日本新生プランの具体化策を中心に盛り込むことといたしております。これらの施策により、我が国経済の再構築を進めるとともに、民需中心の自律的回復に向けた動きをより確かなものとしてまいりたいと考えております。 財政構造改革についてのお尋ねでありますが、我が国の財政は厳しい状況にあり、財政構造改革は必ずなし遂げなければならない課題でありますが、まずは、経済を自律的な回復軌道に乗せるため、景気回復に軸足を置いた経済財政運営を行っていくことといたしております。経済が自律的回復軌道に乗る前に性急に財政再建を優先させれば、景気回復を危うくさせることにもなりかねません。 同時に、財政が将来も持続可能な仕組みをつくり上げるための準備を今から始めるとの観点から、財政の透明性の確保を図り、効率化と質的改善を進めながら、我が国の景気回復をより確かなものとして、その上で、税制のあり方、社会保障のあり方、さらには中央と地方との関係まで幅広く取り組んでまいりたいと考えております。こうした基本的な考え方は、従来から申し上げているとおりでございます。
医療制度改革についてお尋ねでありますが、健康保険法等改正法及び医療法改正法案は、医療保険制度の安定を図るとともに、良質で効率的な医療提供体制を確立することを目的とするものであり、医療制度の抜本改革に向けた第一歩となるものであります。医療制度改革は、国民皆保険を維持し、生活者である国民が安心して良質な医療を受けられることが基本であると考えております。こうした考え方に基づき、国民各層の理解を得ながら改革を進めてまいります。 社会保障についてのお尋ねでありますが、社会保障は、人々が生活のさまざまなリスクに直面したときに社会全体で支え合う重要な仕組みであります。 この社会保障の費用を賄うに当たって、個人の自立を基礎に置く我が国においては、国民みずからがあらかじめ老後の生活や病気などのリスクに備えるという考え方に基本を置くべきであると考えており、こうした意味で、自己責任の原則に立つ必要があると考えております。したがって、給付と負担の関係がより明確である社会保険方式が我が国にふさわしい仕組みであると考えております。 これまで社会保障は、皆年金、皆保険制度などにより国民生活の安定に寄与してまいりましたが、今後、社会保障を賄うための費用の増大が見込まれており、引き続き、制度の長期的な安定を図るため、世代間の公平やシステムの効率性などにも配慮しつつ、社会保障の改革を進めてまいりたいと考えております。 永住外国人に対する地方参政権付与についてお尋ねがありました。 この問題につきましては、既に七月五日、公明党・保守党案と民主党案の二法案が国会に提出されているところでありますが、我が国の制度の根幹にかかわる重要な問題であり、賛成論から反対論までさまざまな意見があり、真剣な論議が行われておりますことから、各党各会派における国会等での御議論を進めていただきたいと考えております。次に、永住外国人に対する地方参政権付与についてのリーダーシップについてのお尋ねがございました。 先ほども申し上げましたとおり、この問題は我が国の制度の根幹にかかわる重要な問題であります。党内においてもさまざまな意見があり、今真剣な議論が行われているところであります。私としても、自分自身、自民党の幹事長として昨年十月の三党合意にかかわった経緯もあり、私なりの考えも有しているところでありますが、ただいま申し上げたような状況の中で、総理・総裁としての意見について、あえて申し上げるべきではないと考えております。引き続き、党とも緊密な連絡をとりつつ、国会等での御議論の行方に注意を払っていきたいと考えております。
与党の少年法改正案についてのお尋ねであります。 深刻化する少年犯罪に対処するため、与党三党においても、少年法のあり方について種々の観点から大変精力的に御議論され、その結果、改正案を近く国会に御提案をいただけるものと承知しております。 少年法は、個々の事案、当該少年の特性等に応じて刑事処分を含め多様な処分を用意しているところであり、少年に対し、事案に応じて刑事処分によりその責任の自覚を促すこととしても、少年の健全育成という目的に反するものではないと考えております。 いずれにせよ、政府といたしましては、国会での御議論を踏まえ、適切に対処してまいりたいと考えております。 また、少年犯罪対策についてのお尋ねでありますが、最近の非行情勢はまことに憂慮すべき状況にあるとの認識をいたしております。この問題につきましては、家庭、学校、地域、関係機関等が協力し、社会が一丸となって取り組んでいくことが必要であると考えております。 こうした観点から、先月、政府の青少年対策推進会議が、重大な非行の前兆段階での的確な対応、悪質な少年犯罪に対する厳正な措置、特異重大事件に関する動機、原因の解明等を内容とする当面とるべき措置を取りまとめており、これを踏まえ、現在、関係省庁において諸対策を総合的に推進いたしております。 少年犯罪対策につきましては、今後とも政府一体となって諸対策の推進に努めてまいる所存であります。 久世前金融再生委員長に関してのお尋ねがありました。 従来からお答えをいたしておりますように、自民党によれば、平成三年当時、財団法人自由民主会館では、建物の管理、維持運営費や人件費などに必要な寄附を募っており、その一環として、大京からは関連会社等を含め平成三年に合計一億円の寄附を受けていた、このことは大京側が振り込んだとされる銀行において入金を確認いたしております。当然ながら、当財団法人の収支は適正に処理されており、自由民主会館の人件費を含む管理、維持運営費として使用されたものであるとのことであります。 なお、自由民主会館に対する寄附は、党本部の建物等の財産の管理、維持運営の費用として使用されるものであり、当財団法人から個々の議員に対して支出することはあり得ないが、再調査した結果、自由民主会館から久世議員への支出はないとの報告も受けております。したがって、裏献金の疑いがあるとか違法な行為ではないかとの御指摘には全く当たらないものであります。 なお、久世氏については、官房長官が党を通じて確認したところ、自分は霊友会を応援されていた大京の社長さんに党員集めの御協力をお願いしていた、しかし、具体的にどのようにしたかについては、実務は自分がしたのではないのでよくわからないということでありました。また、この件は平成四年の選挙の際のことでありまして、前回の平成十年の選挙においてはこのようなことはなく、支援団体のそれぞれの党員の皆様から党費を納入していただいたということを念のために明確にしておきたいということでもありました。 いずれにせよ、自由民主党においては、当然のことながら、党員の獲得に当たって、皆様に党の主張を御理解いただき、御自身の意思で入会していただいているものでございます。 収支報告書の保存期間とコピーの解禁についてのお尋ねでありますが、政治資金規正法における収支報告書の保存期間が三年となっているのは、公職選挙法における選挙運動費用収支報告書の保存期間が三年であることとのバランスや、膨大な収支報告書の保存の事情等を勘案して定められたものと考えております。保存期間の延長については、これらの点を踏まえつつ、必要があれば各党各会派において御議論をいただくべき問題であろうと考えます。 また、政治資金規正法においては、収支報告書の原本の閲覧が認められているところでありますが、来年四月の情報公開法の施行後において、自治省において保有している収支報告書について、同法に基づいて開示請求があれば写しの交付も行われることとなるものと考えております。残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。
国務大臣(続訓弘君) 岡田議員の代表質問にお答えいたします。私に対しては、永住外国人への地方参政権の付与についてのお尋ねでございました。岡田議員御承知のとおり、既に国会に提案されている継続案件でもございます。戦前の歴史的な沿革からいっても、私といたしましては一日も早く解決すべき問題であると思っております。以上です。
副議長(渡部恒三君) ただいま議場内交渉中ですので、このまましばらくお待ちください。 岡田克也君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。岡田克也君。 〔岡田克也君登壇〕○岡田克也君 本会議で再質問することは前例もあります。こんなことがもめること自身が、私は全くおかしなことだと思います。 時間もありませんので、三点質問します。第一点、日ロ関係です。 先ほど総理は、二〇〇〇年末までに努力をする、つまり、日ロ平和条約について、締結に向けてやっていくんだという御説明がありました。 しかし、一方で日ロ共同声明の中では、共同資料をこれからつくっていくとか、あるいは世論に説明していくための努力をするとか、総理みずからもおっしゃったそういう表現が入っているわけです。 果たして、十二月までにそういうことをやるつもりなんですか。結局それは、十二月までにできないことを前提に共同声明ができていることを示しているのではないでしょうか。 第二点、総理は、沖縄サミットのときの日米首脳会談で普天間の問題を議論したと答弁されたように私には聞こえました。SACOの問題全体を議論したということは承知しておりますが、本当に普天間について個別に議論したのでしょうか。もししたとすれば、相当真剣な議論を総理としてはされたはずですけれども、どういう議論があったのか、御紹介いただきたいと思います。三番目、最後ですけれども、先ほどの自由民主会館の話であります。 自由民主会館というのは、自民党に建物を貸す以外の仕事をしているのでしょうか。もしそれをしていない、自民党に建物を貸すだけの仕事をしている財団法人であるとすれば、そこに対して資金提供をするということは、結果的に自民党の賃料の負担を軽くするという、全くのトンネルの役割しか果たしていないことになるじゃありませんか。以上三点について、明確な答弁を求めたいと思います。
内閣総理大臣(森喜朗君) 九月の日ロ首脳会談のことにつきまして、再質問がございました。 私とプーチン大統領の間では、これまでの経緯、そうしたことをまず確認することが大事だ、このように考えまして、これらにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、これまでの日ソ、日ロ両国の合意事項については、すべてこれを合意しよう、これはプーチン大統領からも確実にそのことが発言をされております。 同時に、その冒頭にプーチン大統領から、できるだけ早く、年内にもぜひロシアにおいでをいただきたいということもまず最初にお話がございました。 私とプーチン大統領と五時間にわたりましていろいろお話をいたしましたが、大統領も御就任になったばかりでありまして、これまでの経緯のことについて今いろいろと勉強もし、その資料も取りまとめているところだというお話でございました。 同時に、これから日本とロシアの間には幾つかのレベル、例えば外相レベル、外審レベル、事務レベル、いろいろなレベルがありますし、それから、いろいろな画定、策定の委員会等が用意されていますから、これらの委員会同士の作業を進めましょう、そして、クラスノヤルスク合意にあるように、ことしはこれでだめだということではないでしょう、まだ四カ月もあるわけでありますから、それまでの間にさらに努力をしましょうということで合意をいたしたわけでありまして、決してこれをことしはこれで打ち切ったということではない。 こちらの国も理由があれば向こうにも国の事情があるわけですから、お互いに双方の国民が理解をできるように、また双方の議会でも理解ができるようにお互いにこれからも努力していこうということで、そういう意味でお互いの合意を取りつけたわけでございます。 先ほど申し上げましたように、これからできる機会を得まして、両国のそれぞれの関係者がお話し合いを進めていきたい、できれば最後には私も参りたい、このように考えておるところでございます。 それから、沖縄におきますクリントン大統領との懇談は、時間的には極めて短いものでございます。サミットのときを利用いたしまして各国の首脳会議が二国間会談を行うというのは、ある意味では儀礼的なところもあるわけであります。こうした中で、深く時間をつくってこの普天間の問題等をじっくり話し合う時間というのは、なかなか用意できるわけではございません。しかし、基本的なことだけはきちっと申し上げておりますし、先ほども答弁に申し上げましたように、クリントン大統領も、日本側のそうした申し出につきましては、十分にこのことを踏まえて今後協議していきたい、このように答弁をされておられるわけでありますから、十分話し合いができているというふうに御理解いただけると思います。 久世前金融再生委員長に関します自由民主会館の問題でございますが、先ほどすべての理由をそのまま間違いなく私はここで申し上げたとおりでございまして、それ以上でもそれ以下でもないということをぜひ御理解いただきたいと思います。
副議長(渡部恒三君) 岡田克也君からさらに再質疑の申し出がありますが、残りの時間がわずかでありますから、ごく簡単に願います。岡田克也君。
岡田克也議員 それでは、今の総理の発言について、もう一度私確認したいと思っております。 それは、日米首脳会談でクリントン大統領が、総理が普天間の十五年の期限つきについて具体的にお述べになり、そしてクリントン大統領はそれに対してよく協議したいというふうに本当におっしゃった、そういうふうに確認をしたいと思いますが、いかがでしょうか。
内閣総理大臣(森喜朗君) 先ほど申し上げましたとおり、沖縄におきます会談というのは、皆さんも御承知だと思いますが、サミットの首脳会議に来られた際に、二国間同士がそれぞれ体系的に総合的なお話し合いをすることはございます。そういう中で、具体的なことについてお互いに触れ合いませんが、しかし、こちら側の申し入れはきちっといたしておりますし、日本側の申し入れ等につき、また沖縄の皆さんが求めておられることについては、十分に大事にそれを受けとめてこれから両国で真剣に議論していきましょう、こういうお答えがございました。