定例記者会見録 2001年12月
12月25日
○党財務・金融・予算部門関係者が集まり経済・金融問題について議論
○2次補正と隠れ借金によって30兆円枠は形骸化、かえって不透明に
○効率的な予算への思い切った組み替えや減税が重要
○改めて法律を整備し金融システム危機への備えに万全を尽くすべき
○農水次官辞任によっても農水省という組織の責任は何ら軽減されない
○小泉政権に対しては個別の課題ごとに対峙あるいは協力していく
○減税、円安、金融緩和は是認するが財政による内需拡大論には与しない
○有事法制に限らず党内で意見が分かれるのは政党として当然のこと
○民主党が浮動層に支えられているという事実を忘れた組織論はナンセンス
来年度予算と国債30兆円
【政調会長】今日、財務・金融・予算部門の関係者—-衆参予算委員会の理事、財務・金融・経済産業部門のNC大臣と総括副大臣—-計20名近くが集まりまして、朝から先ほどまで横浜市内某所で議論をしていました。
政府の予算案も出来ましたし、来年の国会の冒頭は、恐らく2次補正予算の審議から入っていくと思いますが、年が明けますとそんなに時間があるわけではありませんので、基本的な方向について、大枠の議論をしたということです。
別に結論をきちんと出したわけではありませんが、今日議論したことを少し整理して、それを基にもう一度、党大会前日の1月18日の夜に集まって、さらに議論を深めようと。こんなふうに考えています。
今日、午前中は東大経済学部長の堀内教授にも来ていただいて、堀内さんの現状認識を話していただきながら、意見交換をさせていただきました。そういう意味で、午前中は金融中心、午後は金融プラス財政・経済運営について議論をしたところです。
結論めいたものは出していないと申し上げましたが、もちろん我々は今回の2次補正・来年度予算については非常に問題があるという認識です。賛成・反対というところまではまだ決めていませんが、問題が多々あるということです。
2次補正については、1次補正のときに「需要不足を財政で補うようなことはしない」と小泉総理は明確におっしゃったにもかかわらず、その直後に2次補正の編成に着手いたしまして、結果を見ると公共事業中心の2次補正が組まれたということで、1次補正のときに「公共事業はない」と胸を張ったのは何の意味があったのかという感じがします。
しかも、財源的にNTTのお金ということで、将来形式上返すお金ですから、そのことによって、使い道にも制約が出てきて、非常に偏りのある予算になっていると思っています。
加えて、これが今年度の国債発行30兆円枠を事実上超えただけではなくて、来年度の公共事業の予算を先食いしているわけですから、結果的に来年度の30兆円枠も形骸化していると言わざるを得ません。
扇国土交通大臣が「2次補正と来年度予算を合計すると、国土交通省の公共事業予算は減っていない」と正直におっしゃったそうですが、それは非常に率直なご感想で、結果的に来年度だけを見ると公共事業10%カットというふうに見えますが、現実は2次補正とセットで考えると、そういう実体にはなっていないということも、併せて指摘しておかなければならないと思っています。
来年度予算ですが、これも30兆円枠にこだわったのは良かったんですが、その結果、逆に不透明性が深まって、何のために財政の建て直しをするのか、全くその逆方向の結果になってしまったと思います。
つまり、財政を建て直していくうえでの前提は国民の理解であり、そのための情報開示ということであるはずです。それが、非常に見えにくい形の隠れ借金方式をあちこちで使ったことで、非常に議論しにくい、国民にとって見えにくい結果になっているということは指摘しておかなければいけないと思っています。
それから、来年度の30兆円枠についてはこれから議論していくことですが、我々は基本的に内需拡大とか需要不足を補うための財政出動という考え方をとっていませんので、「今の景気が悪いから歳出規模をもっと増やせ」というようなことを言うつもりはありませんが、ただ、予算の組み替えということは非常に重要ではないかと。
今回、5兆円減らして2兆円増やすということですが、その中身はまだよく見えていません。それはこれから検証していかなければいけないと思いますし、その際には先ほど申し上げた2次補正との合計で考えなければ意味がないわけですが、ここをいかに思い切ってやるかというのが今回の予算の最大のポイントだったはずです。
より効率性の高い、将来的に価値のある予算に思い切って配分を変えていくということが、今回の予算の最大のテーマであったにもかかわらず、それは非常に形式的なものに終わってしまったということです。
これで景気に対しても大きなマイナスの影響があるわけですし、より効果の大きいところに組み替えていれば、多少でもそれが相殺できたと思いますが、それも出来ませんでしたので、非常に問題のある予算であると考えています。
金融問題
【政調会長】今申し上げたような方向で大枠が議論したわけですが、金融問題についても議論をいたしまして、かなりの確度で金融クラッシュがあるんじゃないかというような議論をしました。
その中で、我々としては、従来から厳格な資産査定と十分な引当てということを言ってきてるわけですが、それに加えて、やはりいざというときのための法的備えをしっかりしておかなければいけないだろう—-。そんなふうに思っています。
現在の預金保険法の改正された中身では、何でも書いてあって何でも出来る形になっていますが、やはり基本的には債務超過の場合には公的管理(国有化)、そして債務超過に至らない過小資本の場合には資本注入というようにきちんと分けて、かつ経営責任を明確に問えるような形の立法が必要であると。
今の預金保険法のスキームはその辺が非常に曖昧で、何にでも対応できるような形になっていますが、逆言いますと、責任の取り方とかリストラといったことについて、非常に不十分なものになる、あるいは資本注入するかしないかが恣意的になるという危険性を秘めていますので、ここはもう一度きちんとした法律を出し直すべきだと。そんな方向性で—-党の機関ではありませんので、今日は正式に決めたわけではありませんが—-議論が集約されつつあるということです。
減税
【政調会長】来年度予算の話に戻りますが、減税は考えていいのではないかと。我々は歳出を増やすということは考えていませんが、党の税制改正案でまとめたローン減税やNPOに対する減税は、景気対策そのものではありませんが、結果的に景気にとってもプラスの効果もありますし、そういったことも考えていいんじゃないかということです。
産業構造改革と日本経済の再生
【政調会長】大体そういったことで議論が盛り上がりましたが、もう少し前向きの話として、不良債権処理なんかももちろん大事なんですが、やはり基本は日本経済が再生することですから、そのために、どうしたら新しい産業が出てくるか、より効率性・生産性の高い産業にシフトしていくかという点について、きちんと議論をすべきだということでした。そのための具体的な政策をこれからしっかりと議論しなければいけません。
その中で一つ言えば、金融機能が麻痺している、つまり本来であれば金融機関がリスクを取ってより生産性の高い分野に融資をすることで、そういう分野が育つということであるにもかかわらず、現実には守りに入って、そういうことがほとんど行われていないのではないかと。
東証マザーズなど直接金融の道もありますが、同時にやはり金融機関が間接金融で新しい産業を育てていくということも重要なポイントですので、そういうことが今出来ていないとすると、やはりその点についてしっかり対応を考えていくべきじゃないかというような議論も大分出ました。
その他にもいろいろありましたが、今日のところは大体の方向合わせをしたわけで、引き続き次回もう一度議論をして、是非来るべき国会に備えたい—-。そんなふうに考えています。
農水事務次官の辞任
【記者】狂牛病の関連で、農水省の事務次官が辞任することになったんですが—-
【政調会長】あ、聞いてないや。いつそうなったの?
【記者】今日……
【政調会長】ああ、ずっと籠もってたから聞いてないな。
【記者】まあ、新体制をとって……
【政調会長】それは責任を取って辞任ということじゃないんでしょ?
【記者】ええ。そういったですね、今の事務次官は局長時代の対応にいろいろ問題があったと言われてたんですが、それが新体制を理由にクビをすげ替えられると。こういう対応についてはどのように思われますか。
【政調会長】まず、我々は国会にきちんと出てくるべきだということ主張したにもかかわらず出てもこずに、しかも、そういう形で引責辞任ということじゃないわけで、それでは全く説明責任を果たしていないと言わざるを得ないと思います。
ただ、辞任されても国会には呼べますから、事実関係はしっかり質す必要があると思いますし、農水省の組織としての責任が何ら軽減されるわけではありませんので、組織としての農水省の責任についても国会でしっかりと議論していきたいと考えています。
【記者】武部農水大臣の責任については?
【政調会長】事務次官を辞任させたことに対する責任ですか。それとも、今回の一連の対応に対する責任ですか。
【記者】全部絡めて……
【政調会長】一連の対応に対する責任は当然ありますよね、大臣には。組織のトップですから。特に、今回は最初に発覚してからの対応が非常にまずかったということ、あるいは生産者に対してはもちろんですが、流通関係者や消費者に対して十分な対応が出来ていないというようなことについて、大臣は重い責任を負っていると思います。
それも前国会で、閉会中審査の開催も含めて、随分いろいろ申し上げたわけですけれど、引き続き問題にしていかなければいけないと思っています。
こうした事件が、薬害エイズ、ヤコブ病、そして今回の狂牛病と続いていますので、やはりこれは官僚組織そのものに致命的な問題があるんじゃないかと考えざるを得ませんので、そういったことについての改革も含めて、しっかりとした対応をしていかなければいけないんじゃないかと。次の国会の大きな論点だと思っています。
小泉政権との対決姿勢
【記者】今日の議論では、小泉構造改革路線の不十分さというか、そういった政権の姿勢に対する評価みたいな話は?
【政調会長】そういう議論もありました。
【記者】方向性というか、何かまとまったというようなことは?
【政調会長】ちょっと一部誤解を招いているのは、マスコミの報道ぶりなんですが、党大会に向けての「活動方針」が全面対決一辺倒みたいな、何でも反対みたいな印象で受け取られているとすると、それはちょっと違います。もちろん、我々は厳しく対応していくと「活動方針」には書いてあって、それはその通りですが、現実には国会においても7割以上の法案に賛成してるわけです。
結局、小泉政権に対してどうこうというよりは、その具体的な政策についてはケース・バイ・ケース、アイテム・バイ・アイテムで検証して、良いものはもちろん賛成する場合もあるでしょうし、しかし反対する場合もきちんと対案を示し理由を述べながら厳しく対峙していく。そして、小泉政権全体に対しては、そういう中で厳しく対決・対峙していく—-。こういう考え方です。
ですから、小泉内閣に対して対決・対峙していくからその法案に対して全部反対するかといえば、そこまで言うとちょっと言い過ぎですよということです。そこは確認しました。
我々が小泉内閣に厳しく対峙していくなかで、自民党の抵抗勢力と一緒くたにされたらたまらんと。我々はむしろ、小泉内閣よりももっと前向きに改革を進めていくというなかでの対決であるということを確認したわけです。
内需拡大論
【記者】構造改革路線に対しては、内需拡大が不十分だというような意見もあるんですが、先ほど減税という話もあったんですけれど、政調会長は内需拡大論についてはどのように考えていらっしゃいますか。
【政調会長】内需拡大という場合に、財政出動による対応というのが一つ考えられるわけですが、これに対しては我々は極めて慎重といいますか、基本的に否定的です。
組み替えとかそういうことはあるんですが、同じ予算の歳出の金額の枠の中で、こっちをやめてこっちに加えろとか、そういうことは当然言うつもりですが、「これでは予算が足りないからさらに歳出を増やせ」と言うつもりはありませんし、そういう政策は考えません。そういう意味では、内需拡大策というものに対しては否定的です。
減税というのは、そういう内需拡大というよりは、我々が一つ言ってるのはローン減税ですね。これは過去の負債の清算ということ、バブルのときに高い金利で家を買ったりして担保価値が落ちてるというような場合に対する対応ですので、それは内需拡大という観点に基づいてやるものではありません。
NPOに対する減税措置というのも、結果的には雇用増に繋がるかもしれませんが、それを目的にするというものではありません。社会全体の構造を変えていくなかで、そういう新しい雇用増に繋がる部分はあると思いますが、そういうことを目的とするものではありません。
【記者】今日の議論の中で、財政出動の可能性も残すべきだというような意見はあったんでしょうか。
【政調会長】そういう考え方に立たないということは確認いたしました。
円安
【記者】円安が進んでるんですが、それについてはどのように?
【政調会長】これも議論になりましたが、為替は誘導できるものではないし、そうすべきでもないけれども、今の日本経済の実力を考えると今後も円安の方向に進むということは十分あり得るし、容認できることだというような議論でした。
一定以上の円安になったから介入して買い支えなければいけないといった考え方に立つ必要はない。自然体でいいということです。
日銀の量的緩和政策
【記者】日銀の金融政策、量的緩和については何か議論はあったんですか。
【政調会長】ありました。今日、講師で来ていただいた堀内先生からもその辺はいろいろと議論があって、彼も「悩みながら」ということだったんですが、それを受けていろいろ議論はありました。ただ、量的緩和を今やめろとか、そういう考え方には立たないということです。
じゃあ、積極的にやるべきかと言えば、効果も限られてるということで、そこはまだ少し議論を残したということです。例えば、社債やCP(コマーシャルペーパー)を買ったりということに対しては慎重論ですが、外債を買ったり、国債をもう少し買うということについては、今日は結論を出しませんでした。
有事法制
【記者】今日の議論とは直接関係ないんですが、来年の通常国会に向けて、有事法制に対する考え方の基本的なところをお聞かせください。
【政調会長】今回の不審船の問題もありますので、有事法制についての議論はさらに高まると思いますが、政府の考え方がまだ出てきてませんので、その骨格がある程度示されないとなかなかコメントするのは難しいと思います。
ただ、民主党の立場は、安全保障基本政策を議論したときに、そこはかなり集中的に議論していまして、その中には当時の菅代表、鳩山幹事長代理、横路さん、皆入ってたわけですね。
そして、我々は緊急事態法制は整備する必要があるということを確認しています。ただ、そのときに基本的人権の侵害が起こらないように配慮しなければいけないということも併せて確認をしていますので、そういった考え方に基づいて党内で議論していきたいと思います。
政府が全体像を体系的にボンと出してくるのか、細切れに出してくるのかというのも分かりませんし、第1分類(防衛庁所管法令)、第2分類(他省庁所管法令)だけで出してくるのか、それとも総則的な部分を付けてくるのか、その辺もよく分かりませんので、ちょっと今の段階ではコメントしにくいということです。
我々も議論自体は積極的にしていかなきゃいけないと思っていますので、早く政府に考え方を出してもらいたいなと思っています。
【記者】有事法制の議論になりますと、今年と同様、場合によってはですけども、中身によっては党内が割れることもあると思うんですが、その対応についてはどのように?
【政調会長】議論が分かれるのは常に分かれるんです、いろんなことをやっていけばね。どんな問題でも議論は分かれます。これは安全保障だけではなくて経済もそうですし、それは政党ですからいろんな意見があるのは当たり前です。
そういうことですが、先ほど言いましたように、我々も必要性は党内ですでに確認していますので、そういう中で鋭意議論していきたいと思います。
そして、最終的には意見集約をするわけですから、集約したものに対しては当然従っていくと。いかなる結果であろうと党で決めたことは所属の議員がそれに対して従っていくというのは、組織として当然のことだと思っています。
不審船沈没事件
【記者】今回の不審船の事件で、「検証が必要だ」と菅幹事長はおっしゃってるんですが、政調会長は今回の政府側の対応で検証が必要な問題点というのはどこだと思われますか。
【政調会長】僕はまだあまりよく見てないもので分からないんですけれども、常識論として言えば、あれだけ反撃を受けたなかで、正当防衛と言えるか言えないかと聞かれれば、私は言えると思います。
【記者】最初の威嚇射撃については?
【政調会長】うん、そこが議論のあるところでしょうけれどね。ちょっと今意見を求められれても……でも、威嚇射撃ですからね。
党組織のあり方
【記者】党大会に向けて、党のあり方のような話がいろいろ出てるんですが、全国幹事長会議でもネットワーク型かピラミッド型かというような議論がありましたが、政調会長の描くイメージというのはどういうものなんでしょうか。
【政調会長】ここは僕、幹事長にしっかり議論を党内的にもしてもらいたいということを参議院選挙の直後からいろんな場で発言して、幹事長にもお願いしてるんですが、今回県連支部に交付金を増やすということにしましたよね。
それから、300人の各支部・選挙区のサポーターないし党員をつくるということにしました。仮にネットワーク型をとるにしても、最低限の水準としてこの程度の党員が必要だというのは、私もそう思いますので異論を述べるつもりはなかったんですが、ただ将来の姿としてネットワーク型にしていくのかピラミッド型にしていくのかというのはきちんと議論しなければいけない、あまり先送りすべきでない問題だと思います。
ただ、この前の各県連の幹事長会議に出て思ったのは—-こういうことを言うとやや批判をいただくかもしれませんが—-県連の組織あるいはその下の支部、そういう党の組織というのは実は民主党の中の一部しか表していないわけで、それ以外に大きな浮動層というものがあるわけですね。
組織にもっと交付金を増やすべきだ、あるいは県連に増やすべきだというような議論をしているのはどちらもおかしくて、そういう既存の組織に基づく部分以外に大きな浮動票というものに支えられて我々の党があるんだということを忘れた議論というのは、やや偏りがあるんじゃないかと思いながら聞いていました。
【記者】それはネットワーク型にしたいということでしょうか。
【政調会長】「ネットワーク」をどういうものと考えるかにもよるんですけどもね。
システミック・リスクへの対応
【記者】不良債権処理で、「改めて法律を整備して」ということでしたが、それはシステミック・リスク(金融システム危機)の具体的ケースを想定して中身を詰めておくということですか。
【政調会長】そうですね、はい。今、地域的なシステミック・リスクと全国的なシステミック・リスクについて、一応仕組みとしてはあるんですよね。特に全国的なシステミック・リスクについては非常に幅広く書いてありますが、そのときの責任の問題なんかは曖昧ですので、きちんと整備をして出し直したほうがいいと考えています。
他にありますか?それじゃあ、今年はこれで終わりますが、来年はもう少しいい年であることを(笑)、いえ、今年も十分いい年であったと思うんですが、来年は選挙があれば選挙に勝ちたいと思ってますので、是非宜しくお願いします。今日はご苦労様でした。
12月18日
○交際費を使う企業ではなく、それを投資に回す企業こそ税制で支援すべき
○郵政3事業の中間報告を了承、簡保・検査・限度額についてさらに議 論
○1次補正の直後に2次補正を組んだことは国会審議を踏みにじるもの
○米国のAMB条約脱退表明に関する総理のコメントには主体性が全くない
○現状程度の円安は日本の実力を表したものであってメリットのほうが 多い
○診療報酬の引き下げに痛みはなく、三方一両損になっていない
○基本的人権を守るという立場から、どういった場合にどういった手続 きで新たな権利義務関係に入っていくのかを決めておくことが緊急事態 法制の意義
○政権は選挙で勝って獲得するのが本筋であって政界再編を念頭に置くべきではない
税制改正
【政調会長】まず、税制改正についてですが、すでに政府案も与党案も出ています。しかし、両者は必ずしも一致していないところもありまして、特に中小企業の交際費の課税の問題は政府と与党のなかで意見が違うようですが、私の個人的な意見を言わせていただくと、交際費に対する課税を軽減するという思想が分かりません。
こういう厳しい時期に、交際費をバンバン使うような中小企業を保護すべきなのか、それとも、それだけの財源の余裕があれば、しっかり投 資をして将来に向かって切り開いていこうという中小企業を応援するのか—-。こういう選択の問題だと思います。
飲み食いと言っちゃ悪いですが、交際費を使うことを奨励する、そこ に税制の重点を置くというのは、結局、描いている中小企業像とか日本 の未来像というものがかなり違うのかなという感じがします。
郵政3事業
【政調会長】次に、郵政3事業についてですが、一度NCで議論したものと同じものが今日総務部門から出てまいりまして、これを了承しました。ただ、まだ中間報告でありまして、最終報告ではありません。
今日の議論では、主として3点についてなお検討を進めるべきであるということにいたしました。一つ目は金融庁による検査を導入すべきか どうかという問題。二つ目は簡保の取り扱いを廃止から現状維持まで含めてどうするかという問題。そして、三つ目は現行の預入限度額1000万 円をどこまで引き下げるのかという問題です。
以上の3点について検討するという条件を付したうえで、中間報告を了承しました。政府案と共通する部分もありますが、より踏み込んだところもたくさんありますので、これから政府案も具体的にまとまってくると思いますが、今日の中間報告をベースにして、国会で議論していきたいと考えています。
2次補正予算
【政調会長】それから、2次補正予算の具体的な中身として「緊急対応 プログラム」が出てまいりまして、国費2兆5000億円ということでいろ いろと書いてあります。
亀井静香・自民党前政調会長が日曜日のテレビで同じことをおっ しゃっていましたが、2次補正が必要なら、なぜ1次補正のときに一緒 にやらなかったのかと。分けた理由が分からないということです。資産デフレの話やテロの問題などいろいろ理由を挙げてますが、そんなこと は1次補正の段階で分かっていたことですから、それを理由に2次補正 を組むというのはよく分かりません。
1次補正を組むときに、「需要不足に対して、それを財政で補うようなやり方は取りません」ということが文書にもなって示されて、そういう考え方に沿って総理は国会で明確に答弁されたわけですから、一体あれは何だったのかと言わざるを得ません。
国会における補正予算の審議を事実上踏みにじるような形で2次補正が出てきたわけで、大変残念に思っています。具体的には、2次補正の予算審議のときに、そういった議論をしっかりとしなければいけないと考えています。
米国のABM条約脱退表明
【政調会長】それから、先日アメリカがABM条約(弾道弾迎撃ミサイ ル制限条約)からの脱退を表明しまして、いよいよ来るべきときが来たかという感じですが、私が非常に気になったのは、それに対する総理のコメントです。
総理は「これは米ロ間の問題だ」という認識を示されたうえで、「今後、軍備管理・軍縮・核不拡散・国際的な安全保障が進むような方向で進展すればいい。米ロ間も話し合いを良くしていると思う」と、全く他 人事でありまして、自ら主体的に関わっていく、被爆国として今まで国 連等の場において核兵器・核軍縮の問題に主体的に取り組んできたとい う認識が全く欠落したコメントだと言わざるを得ません。
もちろん、直接の当事者は米ロですが、このアメリカのABM条約脱 退が、今後の核軍縮・核不拡散に波及していく問題だという認識が全く 欠如しているのは、非常に問題があると思っています。
私も予算委員会で2回ほど訊きましたが、核の問題になると小泉さんは他人事になってしまいますので、そこは非常に残念な気がしています。
円安問題
【政調会長】あと、最近円安が進んでいますが、基本的に民主党は円安 については、そう悪いことではないと従来から考えていますので、今の 景気の状況あるいはデフレという現実を見たときに、一般的には円安のデメリットだと考えられることも、決してデメリットではないと私は思 いますので、円安傾向が進むことはどちらかといえば望ましいことで、 それは日本の現在の実力を表した結果でもあると考えています。
どこまで進めば問題なのかと水準を云々する立場に政治はありません が、現状程度の円安はデメリットよりもメリットのほうが明らかに大き いと思っています。
診療報酬の引き下げ
【記者】診療報酬改定について具体的な数字が出てきましたが、それに ついてはどのようにお考えですか。
【政調会長】今回の数字(マイナス2.7%)は、物価の下落や賃金の減少 を踏まえれば当然の数字です。ただ、「当然の数字」ですから、仮に 「三方一両損」あるいは「痛みを分かち合う」という小泉さんの観点を 是認したとしても、それでは「痛み」はないと思います。
つまり、サラリーマンの場合、将来自己負担が2割から3割に上が る、あるいは保険料が上がるという意味で「痛み」があるわけですが、 診療報酬のほうは物価の下落等による当然のマイナス改定であって、そ れは「痛み」でも何でもないわけですから、そういう意味で「三方一両 損」とか「痛みの分かち合い」ということになっていないと言わざる得 ません。
そして、そもそも医療制度については、全体の構造改革をやるという のが大前提で、そのうえでの負担増が筋であるにもかかわらず、前回の 1割負担を2割に引き上げたときの「構造改革をまずやるべきだ」という議論に対して、「2000年までにやります」ということで切り抜けて、 結局やらなかったわけです。
今回は、その構造改革の話は最初から全くないわけで、そういう意味 では、負担増ばかりの見せかけの改革だと言われても仕方がないと思い ます。
そういう前提のなかで、しかも痛みを分かち合ってるのではなくて、 一方的に痛みを押しつけているものですから、非常に問題のある医療制 度改革だというふうに受け止めています。
「甘い」景気対策
【記者】この間、「ケーキより景気」という民主党の宣伝ポスターを見 たんですが、それを機に幹部の方から景気対策にもう少し重点を置くべ きだというニュアンスを感じることがあるんですが、それについて政調 会長はどのようにお考えですか。
【政調会長】それは幹部によるんじゃない?ただ、経済・金融問題については今月の25日に関係者が集まって集中的に議論することにしていますので、その議論の結果を待ちたいと考えています。
元々我々が景気に対して「どうでもいい」と考えているわけではあり ません。あえて言われれば、景気も重要だし、構造改革も重要だと言っ てきてるわけなんで、その点について党内で大きな差があるとは思って いません。
そして、景気が重要だということの一つとして、円安ということも従来から主張してきているわけです。あるいは規制改革による新たな産業 の創出なども主張しています。
ショートケーキが甘そうなもんですから、「甘い」景気対策を支持し てるんじゃないかという印象を持たれたのかもしれませんが、別にそう いう趣旨ではありません。「景気」と「ケーキ」を引っかけただけですから。ショートケーキが甘そうだから、「甘い」景気対策を取るという 意味を含んでいるわけではありません。
緊急事態法制
【記者】有事法制についてですが、民主党が議論していた「緊急事態法 制」はまとまったんでしょうか。
【政調会長】まとまっていません。部門会議ではまとまって、一度NC に上がってきたことがありますが、そこで注文が付いたままになっていますから、党としてはまとまっていません。
緊急事態法制については、「民主党安全保障基本政策」にかなり詳しく書いてありまして、そのなかで、緊急事態法制をきちんと整備すると いうことを確認しています。
しかし併せて、基本的人権との関係をしっかり整理する必要があると いうことも指摘してありますので、そういう前提に沿ったものに残念な がらまだなっていないということで、NCから部門に差し戻したという 経緯がありますから、もう一度しっかりと議論していただきたいと思っています。
【記者】緊急事態法制で、緊急事態基本法を作るか、そういった基本法 で首相権限を強化するというようなことはせずに個別法で対応するかと いう議論が春頃にあったと思うんですけれども……。
【政調会長】ちょっと誤解を生んでるのは、基本法等の法律になるの か、それとも全体の法律のなかの総則部分になるのかは別にして、そう いうものは恐らく要るんだろうと思うんですね。
どういう場合に「緊急事態」になるのかということも、自衛隊の防衛 出動などについて、いろいろ現行法には書いてあるんですが、緊急事態 法制の体系に入っていくのが、例えば防衛出動の発令があったあとなの か、あるいはその少し前なのかというような議論があると思うんですね。
緊急事態時に、通常とは異なる新たな権利義務関係に入る際、防衛出 動のあとにそういった新たな権利義務関係に入っていくということだ と、「日本が侵略を受けたとき」という防衛出動の発動条件があります から、その前の待機命令をかけている段階ではこれに該当しないことに なります。
しかし、実際に相手が攻めてくる前であっても、自衛隊が行動しなけ ればいけない状況というのがあるんじゃないかと。そういう場合、実際 に防衛出動がかかる前から場合によっては新たな権利義務関係に入って いくということが想定されるかもしれません。
つまり、どういった場合に、どういった手続きで新たな権利義務関係に入っていくのかということを決めておく必要がある。それに対する国 会の関与のあり方も決めておく必要があると。これは具体的な第1分類 (防衛庁所管法令)・第2分類(他省庁所管法令)・第3分類(所管省 庁が明確でない法令)の話に入っていくための導入の話あって、総論の 部分に当たるわけです。
それから、1類・2類・3類と具体的に書くのはいいんですが、例え ば財産権の制限ということに対してきちんと損失補償をするとか、逆に 言えば、損失補償をすれば財産権の制限は一定の範囲で認められるとか、あるいは報道の自由はいかなる場合にも制約されないとか、そういった主な基本的人権についてどういう制約がかかってくるのか。
もちろん、それは憲法の枠のなかの話ですが、そのなかで、どういう 制約が新たな権利義務関係の中身としてかかってくるのかということ は、具体的な各論だけではなくて、できれば総則として法律に書いてお いたほうがいいんではないかと思います。 そういうことを、基本的人権を守るという立場から、きちんと書いて おくことが必要だと私は申し上げているわけです。
【記者】今、政府が言ってるような、安全保障基本法のようなものが あって、それから自衛隊法のような個別法に入っていくべきだというこ とだ思うんですが、そういった入口論については合意できていると。
【政調会長】安全保障基本政策としては合意ができていると私は思って るんですが、部門では必ずしもそういう議論になってないですよね。
むしろ、より慎重な立場の人たちから、「そういうものはないほうが いい」という意見が出たりしてますが、そこはちょっと矛盾してるよう に思います。基本的人権をしっかり守るために、そういった総論部分が 必要だと思うんですが、その辺の議論がまだ十分にこなれていないとい う感じです。部門だけではなくて、NCでもう一度きちんと議論したほ うがいいのかなと思っています。
法律論から言っても、そういう総則部分のない各論というのは、法律 にならないと私は思いますね。まあ、これ以上言うと、また「法制局長官」と言われるからやめておきますが(笑)。
【記者】それは、もう早々に始めると?
【政調会長】いえ、まだ新しい体制になって部門でも議論してないでしょ?国会も終わりましたし、政府もそんなに急いで出してくるとは 思いませんので。
やっぱり、予算審議があり、経済問題も大変ですから、1日を争うよ うな話ではないと。しっかりとした議論はしたいと思いますが、閉会中 に慌ててやるような問題ではないと思います。
来年度の活動方針と小泉政権に対するスタンス
【記者】今日の常任幹事会で、来年度の活動方針案が了承されました が、それについてのご感想を。
【政調会長】いいんじゃないですか。原案と比べたら大分変わったで しょ?少し議論を整理しようということで、手を入れさせていただき ました。
それから、私から申し上げて明日(19日)、役員会を2時間ほど取りまして、小泉政権に対する民主党のスタンスについて議論する予定で す。
私は党内にそれほど差があるとは思いませんが、ややもすると、例えば代表と幹事長とでスタンスが違うというふうに報道されがちですの で、表現ぶりも含めて、そこはきちっとすり合わせをしておいたほうが いいだろうと。あまり違ったように報道されるのは決して好ましくない と思っています。それは、我々がどうやって政権を取るのかということにも結びついていく議論でもあります。
【記者】政調会長ご自身はどのようにお考えなんでしょうか。
【政調会長】私は前から言ってるように、「良いものは良い、悪いもの は悪い」という立場です。基本的には、政権というのは選挙で勝って、 我々が第一党になって、政権を作っていくということですので、そういう考え方に立って、あとは小泉政権に対して、政府の言ってることが 我々に近ければ、もちろん賛成すればいいし、あまり細かいことを言わ ずに7〜8割が一致していて、それが国民のためになるということであれば、それは賛成していけばいいし、何でもかんでも反対するというよ うな立場を取るべきではないと。
しかし、我々が賛成できないことも、先ほどの医療制度改革を始め、 もちろんあるわけですから、そういうものは明確に理由を挙げて、対案を示して反対していくと。
そういうふうに、一つひとつの項目について、是々非々でメリハリをつけて対応していくというのが本来とるべき態度であるということで す。政界再編だとか、そういう話は念頭に置くべきではないという考え 方です。
社民党の土井さんとか辻元さんが、民主党のスタンスについていろいろとおっしゃってますが、55年以来ずっと政権を取れなかった人たちに批判する資格はないと私は思います。「もっと反対しなければ野党じゃない」とかですね、そんなことを言ってるから政権を取れなかったわけ ですから—-まあ、もともと取る気がなかったのかもしれませんが—- そういう人たちの批判を聞いても仕方がないというふうに考えていま す。
大橋巨泉参院議員
【政調会長】あと、大橋巨泉議員についてですが、毎日新聞の夕刊等も含めて拝見させていただきましたが、私に関しては事実の誤認もありま す。私はそんなに図書館は好きでありませんし、何か委員会と図書館しか行ってないような印象を与えるような内容は全く間違ってると思います(笑)。
まあ、それは細かいことですが、やはり代表や民主党の批判をされること自体は結構だと思いますが、批判するということは責任を伴うとい うことは認識していただきたいと思います。
私も少しお話をしようと思って事務所に連絡を取ったら、「もう日本にいない」と。オーストラリアにお帰りになって、日本に戻られるのは 国会開会前の党大会のときだということですので、言いっぱなしで日本を離れられたという感じがします。
やはり政党人として、いろんな前向きの批判はいいと思いますが、そ れであればマスコミに語ると同時に、党の責任あるものに対しても直接 しっかり意見を述べて、意見交換をすべきではないかと、そんなふうに 感じています。国会が始まるまでに、幹事長なり参議院議員会長に対し て、日本に来てきちんとお話をされるべきだと私は思います。
12月11日
○医療制度の抜本改革なくして患者負担の引き上げは認められない
○診療報酬の引き下げは痛みでも何でもなく当然のこと
○経済・景気対策について党内で議論してまとめたい
○数で与党に劣る野党がバラバラでは、ますます意見が反映されなくなる
医療制度改革
【政調会長】まず、医療制度の問題についてですが、今日のネクストキャビネット(NC)でも議論いたしました。これには2種類ありまして、民主党は望ましい医療のあり方というものをどう考えるかという話と、現在いろいろと政府・与党で議論されている具体的な問題についてどう考えるかという話の2つがあります。
前者については、医療制度ワーキングチーム(WT)の今井座長に「抜本改革スキーム」としてまとめていただき、今日のNCで説明を伺いましたが、方向性としては大体いいんじゃないかということになりました。これから広く意見を求めていくことになると思います。
若干、まだ今井座長ご自身も決め切れていない部分がありまして、とりあえずは中間報告という形でしたが、方向性としてはいいんじゃないかということで確認をいたしました。
一方、後者の具体論については「当面対策スキーム」ということでまとめましたが、基本的に我々は患者負担を2割から3割に上げることには反対です。それはなぜかと言えば、まず医療の無駄を省いて医療費の抑制を図るべきであって、いかにして年間総額30兆円の医療費を合理化・削減するかということに重点を置くべきだと。それをせずに患者負担だけを上げることには反対であるということです。
前回の医療制度改革で小泉さんは1割負担を2割に引き上げたわけですが、そのときに「2000年までに抜本改革をやりますから」と言われたにもかかわらず、結局それがなされませんでした。今回は抜本改革の話は全く出てもこない。そういった中で、2割を3割に上げるということですから、それには賛成できません。
それでは、どういうふうに医療費を抑制したらいいのかという点については、「医療効率化プログラムの例示と抑制効果」という形でまとめました。
第1に、情報開示の徹底、レセプト(診療費明細書)やカルテの電子化等による医療の標準化、医療情報評価の充実によって、患者による医療機関の選択を実現する。第2に、保険者機能を強化し、アウトソーシングを拡大する。そして第3に、社会的入院の抑制、診療報酬体系の見直し、205円ルールの廃止など薬価制度の見直しによって、即効性ある効率化への対応を図る。
これらの対策によって、かなりの金額の抑制が可能であり、患者負担を3割に上げる必要は直ちには生じないと考えています。また、医療費の伸び率管理については、「悪貨が良貨を駆逐することになり実現性に乏しい」と述べています。
それから、診療報酬改定の問題についてですが、我々はマイナス改定をすべきだという考えです。具体的にどれくらいの数字が望ましいかということは「エイヤッ」というような話ではないと思いますが、物価や賃金の伸びを考えれば、それだけで3%近いマイナスになってきますし、それに前回改定時の政治加算分を合わせれば5%ぐらいの数字になってきます。
それをそのまま適用しろと言ってるわけではありませんが、そういったことを念頭に置いて医療提供者側にきちんと—-これは痛みでも何でもなくて当然のことだと思うんですが—-理解していただかないと困ると考えています。
経団連のシンポジウム
【政調会長】次に、先ほど経団連主催のシンポジウムに、自民党の麻生政調会長と一緒に出てまいりましたが、今日も麻生さんは「自民党は自由な党だから、何を言ってもいい」というようなお話でした。
「それでも最後は決まったことには従う」とおっしゃったことが辛うじて立派だったかなと思いますが、小泉政権とはかなり違ったお考えをいろいろ言っておられました。
ペイオフについてはもちろん延期論で、あとは漫談のようなお話でしたが、麻生さんのお考えに私が意見を述べるのもおかしいですから、特に申し上げることはありません。
ただ、今の経済・景気の状況の中で打つ手はほとんど限られていることは事実ですが、といってこのまま放置しておくことはできないわけで、そこをどういうふうに考えていくか。
基本的には、もっと民間企業が元気を出すべきであって政府ができることは限られているという前提ではありますが、そうは言っても少し具体的なところをまとめなければいけないと思っています。
1つは予算の組替え、つまり、従来型の公共事業からより効率の高い分野に投資していくということです。政府もいろいろ言ってますが、より徹底的にそれを進めるということが大事だと思います。あるいは、ローン減税ということも我々は言っています。
しかし、本当にそういった対策で済むのか、さらなる歳出増や減税ということについて、何らかの措置を講じなければいけないのか、そういうことについて党内でももう少し議論していかなければいけないと思っています。
衆議院の場合は、予算委員会と財務金融委員会で経済・金融問題について、閉会中もこれから政府とも議論いたしますが、年末に関係者が一度集まって、今後の経済政策について虚心坦懐に議論をしてみたいと思っているところです。
川辺川ダムの強制収用
【記者】川辺川ダムの問題で、国土交通省が漁業権の強制収用申請を決定したということなんですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
【政調会長】これは、菅幹事長が官邸に申し入れに行きましたが、小泉さんもいろいろ言われるんであれば、まずそれにきちんと対応されるべきで、幹事長もそういう思いで官邸に行かれたと思います。結局、総論はいいけど具体論になるとさっぱりだということの1つの表れではないでしょうか。
党議拘束と政党政治のあり方
【記者】先ほどの議員総会でも議論になった党議拘束の問題について、今後NCでも議論していくということになってますが、いつまでにまとめるのかということと、政調会長としての個人的なご意見を。
【政調会長】まだ議論はしてませんが、この前整理したのは、「ああいう形で法案を出したことについて、特に賛同者に名前を連ねた人は反省してもらいたい。まずNCできちんと問題提起をすべきであって、やり方がフェアじゃない。そういうことができる立場にいる人たちが法案の賛同者に名前を連ねたことは、きちんと反省してもらいたい」ということを、まず申し上げました。
そのうえで、「法案にあるような考え方を問題提起するのであればNCで議論する」ということで、玄葉NC総務大臣に—-別に彼が法案の賛同者に名前を連ねていたからというわけではなくて、政治改革担当大臣ですので—-「メリット・デメリットについて論点を整理して、NCに一度諮ってほしい」と申し上げてあります。河村議員の法案そのものにコメントする気はありませんが、要するに政党の議員立法について、所属議員が法案を自由に出していいかどうかという問題です。しかし、仮にそういうことになると、国会の場で同じ政党が矛盾する複数の法案を掲げて議論するということになるわけです。
ただ、私はその話と、政府・与党の言っている党議拘束の話というのは少し性格が違うんだろうと思っています。今、21世紀臨調提言で主張されているのは、事前に総務会などで法案の賛否を決めないで、委員会で少し議論してから決めればいいじゃないかという話で、これは我々はすでにやってることです、基本的には。
政府提出法案についてはNCで賛否を決めますが、それは国会に出される前に決めてるわけではなくて、難しい問題などについては中間報告をいただいたりしながら委員会である程度議論をして、それも踏まえてNCで賛否を決めています。
この前のテロ対策特措法に基づく自衛隊派遣の事後承認などはまさしくそうだったんですが、そういう意味では、我々は政府提出法案については国会に出てくる前に賛否を決めなければいけないというわけではありませんので、それについては政府と与党が抱えているような問題はありません。
問題は我々が出した法案についてです。この問題は、政府の法案に対して与党がどう対応するかというのとは性格の違うもので、同じ党が矛盾する法案を出していいのかということですが、それはそうじゃないだろうと。やはりそこは党できちんと議論をして、考え方をまとめてから国会に出すべきだと思います。
これは、政府が法案を出す場合と大分状況が違います。もし、各議員がバラバラに法案を出すということになりますと、これはまず調整が大変ですよね、事後的にやれということですから。NC制度そのもののあり方も変わってまいります。
そういった問題に加えて、我々はチャレンジャーであるということを忘れてはいけないんであって、もともと政府・与党に多数決では負ける態勢の中で、チャレンジャーのほうがバラバラでかかっていったのでは、ますます我々の考え方は反映できなくなるわけですし、国民から見ても民主党が何を考えてるのか分からないということになりますので、かなり慎重に考えるべき問題だと思います。藪から棒に、「自由だからいい」というような話ではないと私は思っています。
12月6日
○今国会に26本の議員立法を提出、民主党案が触媒になった政府・与党案も
○与党内の調整不調でホームレス支援法が成立しなかったことの責任は 重い
○麻生提言—-政府・与党との調整もなく、内容的にも無責任なもの
○構造改革によって淘汰されるべき企業が淘汰されることはやむを得な い
今国会での民主党議員立法
【政調会長】まず、この臨時国会で民主党の議員立法が少なかったとい う報道を、どこかの新聞で読んだような気がしますが、我々は新たに26 本の法案を提出しています。
また、我々の議員立法ではありませんが、「刑法改正案」は、我々が参 院選の前に出した「危険運転致死傷処罰法案」(危険運転によって事故を起こした際の刑罰を従来よりも加重したもの)とほとんど同じ内容で した。
あるいは、無認可保育所の届出制について定めた「児童福祉法改正案」 が今国会で与党から出されたましたが、これも—-他にもいろんなもの が中身に加わりましたが—-我々が前国会で提出した議員立法とほとんど同じ内容です。
そういう意味で、我々の議員立法が触媒になって実際の立法に繋がったということが言えると思います。
一方で、残念だったのは「ホームレス自立支援法案」です。これは与党 内の調整の問題で、結局、今国会で法案が提出されるには至りませんで した。
この寒い冬を何とか越せるように、間に合うようにということで前国会 に法案を提出し、そしてそれを基にして与党、特に自民党と協議を続け、今国会で成立させたいと頑張ってきたわけです。
与党の中のどこが悪いのか—-自民党のほうに問題があるのか、それと も他の2党にあるのか—-我々には分かりませんが、結局、今国会に法 案が出されないことになりましたので、その責任はやはり与党に負って もらうしかないと。
この対策が遅れることによって、大変不幸なことになるかもしれませ ん。そういったことに対してしっかり責任を感じていただきたいと思っ ています。
麻生太郎・自民党政調会長の政策提言
【政調会長】次に、自民党の麻生政調会長がいろんな提言をされていま すが、あれだけ気楽に言えるなんて、本当に自民党の政調会長はいいな と思います(笑)。
普通は与党のほうが責任がありますから、政府との関係とか、あるいは 与党内での幹事長との関係とか、そういうものをきちんと調整したうえ で、外に出されるのが当然だと思います。
少なくとも、政府に対して提案をするというのであれば、与党・自民党 内での調整というものがきちんとあってしかるべきで、幹事長の言って ることと政調会長の言ってることがこれだけ違うというのは、やはり自民党の無責任さの表れではないかと思います。
今後、単に観測気球を打ち上げただけということになるのか、それとも 自民党の中できちんと議論されるのか、それも定かではありませんが、 内容的には、ペイオフの2年延期や国債の増発といった、非常に無責任 な内容を含んだものであると思っています。
是非一度、テレビで政調会長同士で議論をしたいと思っていますので、 どこかのテレビ局に呼んでいただければと思いますが、今まで一度もそ ういう場に自民党の政調会長が出られたことがありませんので、非常に残念だと思っています。
国会論戦を振り返って
【記者】今、議員立法についてお話がありましたが、それに限らず、今 国会における民主党の政策的な活動や国会論争について、政調会長はどのように総括されていますか。
【政調会長】なかなか難しい質問ですが、もちろん国会での議論という のは今国会で終わるものではなくて、特に経済・金融問題、狂牛病、あ るいは外務省の不祥事等々について、極力閉会中審査を求めながら議論を続けていきたいと思っています。
ただ、絶対的な時間が不足していたことは否めないので、もう少し審議の時間を確保したかったというのが、私の偽らざる気持ちです。
結局、クエスチョン・タイム(党首討論)も2回やったにすぎませんで したが、これは毎週やるべきだと思います。小泉総理も時々出てきては 元気なことを言われますが、継続的にやれば、いろんな矛盾もはっきりしてくるわけで、結局、政府・与党に都合のいい時期を選ばれて、クエ スチョン・タイムをやられてるんじゃないかという気がします。やはり 毎週やるということが基本ではないでしょうか。
【記者】民主党は構造改革の政党だということで参院選を戦ったわけで すが、今国会を振り返って、参院選での公約と同じ方向で進めたと思わ れますか。
【政調会長】基本的にスタンスは変わってないと思います。それが「小 泉総理にすり寄っている」とマスコミに書かれたこともありますが、基 本的に我々は小泉総理がどうこうということではなくて、構造改革を進 めていくなかで総理の言ってることが我々の考え方に近ければ、それは 賛成することもあるし、そうでないものについては、もちろん明確に反 対していくという姿勢ですので、そこは一貫していると思っていますが、やや誤解されることもあったのは残念だったと思います。
青木建設の民事再生法申請と構造改革
【記者】今日、青木建設が民事再生法を申請しましたが、それについてのご感想と、総理が内閣記者会とのインタビューで「構造改革が順調に 進んでいることの表れだ」とコメントされたんですが、それについてのご感想を。
【政調会長】個別の企業についてコメントすることは、あまり適切ではないと私は思います。それぞれの事情もあることですので。
ただ、一般論として言えば、本来存続し得ない状況にある企業を無理に延命させることは構造改革の方向とは逆ですので、そういう意味では、 今後不良債権の処理が進んでいくなかで、本来淘汰されるべき企業が淘 汰されていく、あるいは法的整理をされていくとということは、大きな 流れとして基本的に理解できることです。