民主党代表選挙政策発表・会見要旨
- 代表選政策:民主党政権獲得10年後の日本の姿を示した
- 最も訴えたいのは政治が国民の信頼を得てリーダーシップを発揮すべきという点
- 当面の安保政策として2つの考え方を提示、今後党内で十分議論したい
- 国連決議がある場合に武力行使を含めどこまで出来るかは憲法解釈の問題
- 武力行使可能な待機部隊を認める意見が党内に厳然としてある以上議論は当然
- 消費税率が何%になるかはサービスの水準にもよる、一概には言えない
- 能力・努力・運が人生の3要素、必ずしも所得は努力の結果に比例しない
- 待機部隊構想は積極的に検討するが、憲法上の本質的問題ではない
- イラク批判は現在の憲法解釈が前提、解釈変更ならどうか一義的には言えない
「2015年、日本復活ビジョン」発表【岡田】昨日に引き続いて、昨日お話ししたとおり、今日は政策の発表をさせていただきたいと思います。
お手元に「2015年、日本復活ビジョン」ということで配布させていただきましたが、党の政策については、皆さんご存じのとおり、参議院選挙においてマニフェストが示されたわけです。
マニフェストは、私自身がかなり自分で書いた部分、前半の総論はそうですし、各論についても、今まで6年間、民主党の中で議論してきたことが書いてあるわけです。
私が政調会長代理、政調会長、そして幹事長の時代は、政策からは少し距離を置いて、なるべく口を差し挟まないようにしていましたが、代表としても当然、こ の党の今までの政策に責任を負うわけで、マニフェストと極端に違うことは言えないというか、言うべきでないというか、あるいは言う必要がないというか、い ずれにしても、このマニフェストに書いてあることは、私が今まで考えてきた基本的な政策です。
いろいろご議論もいただいてますように、かなり中身は具体的だし、議論を重ねてきた精緻なものですが、結果として全体像が見えないというご意見もあります。
確かに、このマニフェストを読み込んで理解していただくのは、なかなか大変なことだと思っています。
そういう意味で、より分かりやすくと。今までは、現状から出発して、そして、ある程度調整しながら将来の姿を示すという形だったわけですが、逆に10年ぐ らい先にどういう日本になっているかということをお示しして、そしてそのための具体策としてマニフェストに書かれたようなことがあるんだという逆の視点か らの説明をしたほうが分かりやすいのではないかということで、今回、「2015年、日本復活ビジョン」ということを書かせていただきました。
なぜ10年後かという議論もあるかもしれませんが、それは最初のところに書いたように、これから数年後に民主党政権ができて、そしてその民主党政権の下で 衆議院でいえば4年任期で2期8年、民主党政権の中で改革をした結果、大体こういう形の日本が出来上がるというものです。
これを、1つの私のビジョンとして、私が次も代表という重責を担うということに仮になると、さらに党内外の有識者も含めて議論を重ねて、より明確なものにしていきたいと考えています。
今回お示しするもの自体は、この10日間ぐらいかけて、私が書いたものですので、若干思い込みとかいろんな間違いもあるかもしれませんが、私が思い描いて いる民主党政権の下での日本というのはこうなるという姿をかなり具体的に示し得たのではないかと思っているところです。
今日は細かい説明は省きますが、また個別のご質問があれば申し上げたいと思いますが、一番大事なことは、「1.本当の民主義国家日本を創る」という言葉に なっていますが、やはり政治への信頼がしっかり出来上がるということで、この当たり前のことが日本に出来ていないということが全ての根源であると考えてい ます。
しかし、国民が政治、政治家、政党を信頼していないというなかで、政治がリーダーシップを発揮しようがないわ けで、やはり政治が重要であるということを国民の皆さんが認識していただいて、そして政治家がしっかり自らが行動することで、国民のために政治家というも のは一生懸命働いているという認識を持っていただけるということが最も重要なことだと考えています。
そのためには、政治自身が変わらなければなりません。どういうふうに変わるべきかということについて、具体的な考え方に基づいて、一つの姿を示したつもりです。
個々の政策は書いてありませんが、大体マニフェストに基づいて、10年後こういうふうになっているべきだという、べき論を申し上げたつもりです。
その他、「2.自由で公正な社会を実現する」というところは、もう少し具体策を掘り下げる必要があると私は思っています。いくつかの例を挙げて、お話し申し上げましたが、ここもかなり理念的なところです。
教育の問題などの具体例を取り上げて、申し上げていますが、もう少し専門家の意見も聞きながら、深める必要があると思っています。
「3.持続可能な社会保障制度を確立する」のところは、年金は基本的に民主党の考え方を踏襲していますが、医療については、特に高齢者医療については独立 方式を採用していますので、これは従来の民主党の考え方とは少し違う方向だと思います。私の持論を述べさせていただきました。
それから、少子高齢化に備えた子供手当といいますか、大体月4万円くらいの養育費を使っているわけですね。これは所得の多い少ないにかかわらず、大体子供さん1人当たり普通のご家庭でかかるのが現在価格で4万円。
それぐらいの額を18歳まで見るという、思い切った子育て支援をやるべきではないかと。これは金額的にはかなりの金額になります。「その財源は」と言われれば、現在の所得税における配偶者控除とか扶養控除を財源に充てるということになりますが、それだけでは足りません。
歳出増につながる話ではありますが、これぐらい思い切ったことを行うべきだということで、あえて提案させていただきました。
それから、「4.効率的で満足度の高い地域社会を実現する」というのは、私の地方分権に関する基本的な考え方を整理して申し上げたものです。
どちらかというと、党の中では道州制についての議論がかなり熱心になされるわけですが、もちろんそれは、将来の展望として議論がなされるわけですが、私 は、これも持論ですが、基礎自治体重視、ということで市町村を中心とする基礎自治体、そこに思い切った権限、財源、税源の移譲を行うべきだと。
そういった基礎自治体に出来ない場合に都道府県、都道府県に出来ない場合に国。そういう順序で考えるべきだと。地方自治あるいは分権の話をするときに、国 対地方という切り口の中で、地方の中の2階建て部分である都道府県と基礎自治体である市町村の関係というのは、まだあまり論じられていません。
今は確かに、都道府県知事の中に非常に改革派の人がたくさん出てきまして、知事会も活性化してますから、それはそれでいいわけですが、しかしあくまでも住 民という視点から見ると、一番大事なのは基礎自治体ですので、ここに思い切った権限を持たせると。それに伴い、税源、財源も持たせるということがあくまで も基本であるというのが私の持論です。
しかし、それだけの力のないといいますか、準備のない基礎自治体も当然あるわけです。そういうところについては、中2階である都道府県が一部代わって代行するということも現実には必要ではないかということを申し上げています。
住民の視点から見ると都道府県も、あるいは州も中2階という意味では同じですから、ここを論じる意味はあまりないんじゃないかと思っています。
ただ、基礎自治体が充実していけば都道府県の仕事は減っていきますから、必然的に広域化して対応すると。例えば、160万人ある県で、30万人の固まりが 5つ出来ますと、そこで基本的にやってしまいますので、残りあと10万人しかありませんので、そのためだけに県があるというのはとても効率がよくないわけ で、そういう県が集まって10万、10万の残りのところを新しい州がやるとか、そうなれば必然的に広域的な公共事業は州がやるとか、道州制だとしても、そ ういう姿だろうと思っていまして、州があまり大きな権限を持つというのは私はイメージしていません。そういう思いで書かせていただきました。
それからもう1つ、あえて書いたのは、格差の問題をそろそろ議論をきちんと詰めなければいけない時期に来ているのではないかと。格差を全部財政調整してしまうということでは、効率的な自治体の運営は出来ないわけですし、努力しても報われないということになるわけです。
そういう意味では、ある程度の格差は前提にして、分権というのは議論されるべきであるということを、あえて率直に申し上げました。
「5.日本経済の活力を最大化する」のところは、基本的には、経済は市場に任せるというのが私の持論です。より効率を上げていく、そのためには市場を通じた競争ということが基本になるということです。
もちろん、市場で対応できない経済以外の分野、あるいは経済の中でもエネルギーとか環境とか、そういうものについてはなるべく市場の力を活用しながら、政治がしっかり対応していかなければならない分野でもあります。
それから、「6.財政の建て直しに道筋をつける」のところは、これは作っていて本当に気が滅入るといいますか、時々絶望的な気分にもなるわけですが、まず プライマリーバランス(基礎的財政収支)で言いますと、10年目に確保するというのは政府とほぼ同じですが、まずこれはなかなか大変なことであるというこ とです。
現在の延長線上ではとても出来ない話で、思い切った公共事業の削減。他の先進国のGDP比にするということ が1つと。そして、かなりのウェイトを占める人件費について、人数を減らすことを中心に、アウトソーシングやそういう手段も書いておきましたが、人件費の 節約をすると。
そして、国がなすべきでない、あるいは官がなすべきでないことは、思い切って民間がやるということで、ぎりぎりやってそれでも増税ということは避けられないだろうと。
そのときには間接税中心の増税にならざるを得ないということで、大きなテーマとしては、今国民の中にある消費税に対するアレルギーというものを、やはりきちんと政治が説明していくなかで、それを変えていく必要があると。
少子高齢化の中で、これしかないんだということをいかに説得的に掛け合えるかということが政治の大きな役割であると思っています。
今回の選挙で、年金について3%の年金目的消費税の話を意識的に行ったのも、わたしのそういった決意の1つの表れです。
これはなかなか、長い厳しい道だと思いますが、しっかり政治が責任を果たしていく。しかし、歳出の徹底的な効率化・重点化ということをまずやる、その姿を示すということが大事になると思います。
最後の「7.世界に最も貢献する日本外交」のところは、基本的に世界に最も貢献する日本という立場・地位を確立するということを強調させていただきました。
同時に、日米同盟を強化しながら、アジアにおける日本という姿を示させていただいたつもりです。
集団安全保障の基本原則
【岡田】これ、10年先を見ていますので、世界の平和の維持・創造に最も貢献する日本という1つの出来上がった姿を示しています。安全保障の問題はそのプロセスも重要ですので、あえて別紙で当面の考え方についての、これから党の議論の方向性を書かせていただいたところです。
お手元に、「集団安全保障の基本原則の検討について」という2枚紙が配布されていると思いますが、皆さん十分お分かりのことと思いますが、第1に国連の平 和維持・創造のための活動に日本は率先して取り組むと。そのことを民主党の外交政策の重要な柱とするということが第1点です。
それから、第2点は、憲法9条の考え方ですが、9条はもちろん、過去の戦争の反省に基づいて、日本が勝手に武力行使しないということを、ある意味では国際法上認められたものも含めて、かなり厳しく手かせをはめているということです。
しかし、それは自らの判断で、この自衛権の行使とか、あるいはそれを超えた武力の行使、そういったものについての話であって、国連の安保理あるいは総会の 決議があるという場合には、その武力行使に抑制的な姿勢というものをもちろん基本とはしながらですが、同じ次元で論じる必要はないと考えています。
これを論理構成するためにどういう論理があるかという、そういう視点で見ると、1つは、これは国権の発動ではないという考え方に立って、憲法9条の枠の外にあるということです。つまり、国連決議がある場合には、国権の発動ではないという立場に立つということです。
これは我が党で言えば、小沢さんやあるいはその小沢さんと合意された横路さんや、その他の皆さんは、基本的にこういう考え方に立っておられるということです。
もう1つの考え方は、国権の発動には当たると。例えば、国連決議があるかないかの判断に当たっては、それは例えば今回のイラクの問題を見ても、やはり国と して、これがきちんとした国連決議に該当するかどうかという判断をするわけですから、日本は日本として。それはやはり国権の発動ということになる。
それから、実際に国連決議がある場合に、全て自動的に出すわけではなくて、そこで国としての出す出さない、どういう形で出すかという判断もあるわけですか ら、そういう意味では、国権の発動に当たる、したがって9条がかぶってくるという前提に立ちながら、しかし、もともと9条の規定の趣旨というのは、勝手な 自らの判断での武力行使を制限しているという趣旨ですから、そういう観点から見れば、国連の決議がかぶったものについては、より弾力的に考えていいという 解釈をするという立場です。私は論理的にはそういう2つの考え方があるんだろうと思っています。
前者の考え方に立てば、基本的に9条の問題ではないという考え方ですから、あらゆる行動が憲法上は可能であるということになります。
あとは法律なり具体的対応においてどういう制限をするかという問題は、もちろんこれは可能です。憲法が認めているからといって何も出来ないということではありません。しかし、いずれにしても憲法上は武力行使も含めて出来るということになります。
それに対して、9条にかするけれども、解釈面で緩やかに解釈してもいいという立場に立ちますと、文言上、武力行使そのものは駄目だということになります が、その範囲を弾力的に考えるという趣旨から、例えば今、厳しく自らの手を縛っているPKOに参加する場合の武器使用の制限の問題ですとか、あるいは東 ティモールのような治安維持活動を含む多国籍軍への展開、PKO5原則を満たさないような場合での活動への参加、そういうものも憲法9条上認め得るという 形になると思います。
ただ、そういう場合にも、武力行使そのものは出来ないということですから、そこで何でも出来るという、9条から外れているという考え方とは範囲が自ずと異なってくるわけです。
いずれの立場に立ったとしても、今までの武力行使あるいは武力行使と一体となるものまで制限してきた政府の解釈とは異なるわけですから、そういう意味では、党内においてしっかりとした議論が必要だと考えています。
憲法の平和主義に関する問題だけに、平和を創っていくための活動とはいえ、憲法の平和主義に関しての問題だけに、国民に対する説明責任というものが当然政党として発生すると思っています。
したがって、今後党内で、『次の内閣』中心にどちらの立場で行くのかということについて、しっかり議論をする必要があると考えています。
結論が得られれば、その考え方を基本法の形にして、そして次期通常国会に出していくという私の考え方を示させていただきました。
それから、一部の皆さんにご関心の高い国連待機部隊構想ですが、これは昨日申し上げましたように、憲法に関する本質的な問題ではありません。
これは私が勝手に言っているわけではなくて、例えば小沢さんも全く同じ意見だと思います。待機部隊だから9条の問題はクリアされ、自衛隊だから9条違反になるという問題ではありません。それは是非、分かっていただきたいと思います。論理的な問題ですから。
その上でどうするのか、政策判断としてどちらがベターかと。つまり、待機部隊というものを認めるのがベターかどうかという判断です。
私は、従来のマニフェストには「検討する」という表現にしていましたが、しかしここのところは、例えば迅速に派遣するためにはそういう常設のものがあった ほうが早く対応できる。あるいは自衛隊じゃない形で別動部隊が出ていくほうが、いろんな意味で疑念を残しているアジアの国々の理解を得やすいと。そういう 視点から見ると、待機部隊というものを自衛隊とは別に設けるということがより望ましいのではないかと。そういう意味で、「積極的に検討する」と申し上げて います。
ただ、この点も『次の内閣』の中で、これから議論したらいい問題だと。つまり、効率的に見て、同じような装備を持った部隊が2つ存在することになってしまうのではないかという議論も当然ありますので、これから議論したらいいと。
それから、部隊の中で、自衛隊の中につくるというアイディアもありますね。そして、自衛隊の外につくるけれど、防衛庁長官の指揮の下に置くと。3番目は、自衛隊の外につくり、防衛庁長官ではない別の国務大臣ないしは総理の直属として置くという考え方もあります。
そういったことについてもこれから、メリットもデメリットもありますから、しっかりした議論を党の中でしていけばいいのではないかと思っています。
ちょっと長くなりましたが、いろいろな意味で、誤解を招いたり、あるいは間違って報道されている部分もありますので、あえて少し丁寧にご説明をさせていただきました。
以上が、私の政策に対する考え方です。代表選挙が終わったら、この考え方を示して、これから党の皆さんにしっかり説明していきたいと考えています。
2015年の憲法
【記者】憲法についてですが、安全保障の部分に関しては、2015年には憲法9条を含めて改正されていると考えていいんでしょうか。
【岡田】これは、7章にある書き方であれば、憲法を改正しなくても一定の範囲までは出来るんですが、全てをやろうとしたら、かつ2枚紙の中で憲法9条の枠内であるという立場に立てば、それは憲法改正が必要になりますね。
しかし、枠外だという前提に立てば憲法は変えなくてもいいと。全てのことができることになります。
問題は、全てをやるべきなのかどうかという、つまり今の第2の立場に立って、憲法9条の枠の中でPKOの武器使用の問題とか、あるいは治安維持を目的とし た多国籍軍への参加がかなりの程度出来るとなったときに、なお憲法を改正して全てを出来るようにすべきかどうかというのは議論のあるところだと思っていま す。
私の考えはすでに述べたとおりですが、そういうことも含めてこれから議論していけばいいことだと思います。
7章の書き方は、そこについてはどうあるべきかということを前提にせずに、いずれの立場でも読み得るように書いたつもりです。
2015年における国連待機部隊
【記者】その7章ですが、「これらの国際協力活動を迅速に行うための組織が、自衛隊・警察などの関係機関からの出向などによって設けられています」とありますが、これは国連待機部隊ではないんですか。
【岡田】ですから先ほど言いましたように、国連待機部隊は具体的な中身があるわけですね。3つの類型だと先ほど申し上げました。
自衛隊の中に設ける、自衛隊の外だけど防衛庁長官の下に設ける、あるいは国務大臣も防衛庁長官から外す。そういうバリエーションがありますから、ここで書 いてあるのは書いてあるとおりで、「自衛隊・警察など」によって構成されるということですから、それ以上でもそれ以下でもありません。
それはまさしくこれから党の中で、どういう形が一番望ましいかを決めて、それが10年後にあるということです。幅を持った言い方をしてるつもりです。
【記者】自衛隊の中に設けるということですと、出向という形にはならないと思うんですが、その辺はいかがですか。
【岡田】ギリギリ言えば、そういうことかもしれません。だから「など」と書いてあるわけです。ただ、私の方向性としては、先ほどの最後にご説明したように、「積極的に検討する」ということですから、私なりの一定の方向性というのは、気持ちとしては入れたつもりです。
ただ、これは憲法の話とは関係がないという前提で聞いていただきたいと思います。どちらがよりよいかという視点で考えたときに、一定の常設部隊があって、迅速に対応していくということが望ましいのではないかと思っています。
集団安保基本原則とイラク問題との関係
【記者】2 枚紙のほうなんですが、これまで民主党は、イラクへの自衛隊派遣について憲法上の疑義があるとおっしゃってきたんですが、前者の考え方も後者の考え方もい ずれも憲法上の疑義はないんじゃないかなと思うんですが、これについてどういう解釈なのかということが1つと、今のイラクへの自衛隊派遣というのは、この 2つの考え方だとどういう扱いになるんでしょうか。
【岡田】まず、今の憲法上問題があるというのは、政府解釈を前提に考えていますから、今までの政府解釈からいえば、明らかに問題があると考えています。
これは、今までの解釈を変えるという前提ですから、そういう前提での話とは違うわけですね。政府の解釈を前提とする限り、憲法上の問題があるということを言っているわけですから。
それから、もう1つは、決議そのものをどう読み込むかという問題もあります。これはイラク戦争が始まった直後の場合と、それから主権移譲の後の決議とで は、あるいは読み方が違ってくるかもしれませんし、そもそも安保理決議があるといっても、積極的にフランスなどが賛成しているというよりは、国際協調の中 でやむを得ず賛成をしたというときに、それを国連決議というのかどうかという判断・議論も出てきます。
です から、一概になかなか言いがたいのですが、少なくとも戦争が始まったときには、多国籍軍の実態を見ると、事実上米軍中心の、我々に言わせると国連決議に基 づかない占領軍であったとも考えられますから、そういうことになると、どういう解釈を取っても憲法上クリアされないということになるんだと思います。
【記者】2枚紙にある、前者・後者の考え方であれば、憲法上の疑義はないということですか。
【岡田】民主党としてどういう考え方を取るかはこれからの議論ですが、私は前者、後者のいずれかに集約したいと思ってるんですが、つまり今までの考え方を変えたいと思ってるんですが、そういう考え方に立ったときに、あとは国連決議の解釈の問題ということになります。
それから、憲法上クリアされても、実際に出すかどうかは政策判断ですから、そういう問題もあります。そういったいろんな仮定を経なければなりませんので、今のイラクについて、一義的に「こうだ」と言うつもりはありません。
ビジョンの中で憲法改正が必要な部分
【記者】このビジョンの中で、憲法改正が必要な部分もあると思いますが、それはどこなのかということと、岡田さんのお考えは明らかに後者だと思うんですが、両論併記という形にされたのは、小沢さんへの配慮ということなんでしょうか。
【岡田】後のほうの問題から言うと、私がかねがね申し上げてきたように、当時の代表代行と副代表が前者の考え方で基本的に合意されたわけです。
その後同じように何人かの方がサインされたわけですが、そういう意味では非常に重いと私は申し上げてきました。
党内でそういう厳然とした意見がある以上、それをきちんと中で議論するのは当然のことで、私として自分の持論を押し通すという立場に立つものではありませ ん。きちんとした話し合い、議論をすべきだという意味で、申し上げているところです。私は、その得られた結論に従います。私自身がどちらかと言えば、後者 の考え方に立っていることはご指摘のとおりです。
それから、憲法を変えるところというのは、例えば、分権のところとか、あるいは参議院と衆議院の役割分担のところ。これも、今の憲法の中である程度運用でできる部分もありますが、しかしきちんとやろうと思えば、憲法改正が必要になります。
その他、安全保障に関する部分も、今の憲法解釈でどこまで読めるかという話と、憲法を変えるときにより明確にするためにどうしたらいいかという話は矛盾す る話ではありませんから、そこも1つ議論になるかもしれません。そういったところが、当面考えられる部分だと思います。
目新しい部分
【記者】ビ ジョンの目次を拝見しますと、「本当の民主主義国家日本を創る」とか「自由で公正な社会を実現する」とか、これまでの政権でも、あるいは今の政権でも、ど こかで主張しているようなことが並んでるんですが、独自の新しいものなんだよという部分をあえて挙げていただくとするとどこでしょうか。
【岡田】中身的にはかなり、オリジナルなものが多いと私は思います。それは読んでいただければお分かりいただけると思います。
特に、「本当の民主主義国家を創る」と自民党が言っているということを私はあまり聞いたことはありませんが、しかし言ってるとしても、それを本気でやって いるとはとても思えないわけで、そういう意味で、ここに書かれたようなことについて、私は一番最初にあえて書かせていただいたのは、日本の政治の最大の問 題は、国民が政治を信頼していないことだと。
そこを変えない限り、政治のリーダーシップなどと言っても発揮しようがないんだという、そこは強い信念ですので、その信念に基づいて第1章を書かせていただいたということです。
【記者】これまで、同じようなビジョンがあっても、要は実現してるかしてないかということですか。
【岡田】中身をご覧いただくと、従来のものとはかなり違うということは実感していただけると、私は自信を持っていますが。
税制関連
【記者】税 制について2点伺いたいんですが、「2015年には所得税の所得再分配機能が再評価され、行き過ぎた税率のフラット化が是正されています」とありますが、 これは結果的に弱者を救済する、つまり機会の平等ではなくて、結果の平等ではないんでしょうか。具体的に、最高税率はどのくらいを考えていらっしゃるんで しょうか。
それから、子供手当4万円とか高齢者医療に一般財源を充てるとか、年金目的消費税3%ですとか、岡田さんご自身も歳出増とおっしゃいましたが、そうすると、最終的に消費税率はどれくらいを考えていらっしゃるんでしょうか。
【岡田】後者の問題から言いますと、歳出を徹底的に効率化するということを私は申し上げたつもりです。それをどれだけやれるか。
例えば、公共事業については国と地方を合わせて半減するわけですから、これでかなり財源が出てきますね。それから、人件費というのは、実は国の予算の中でかなりの部分を占めますから、そこの部分の削減も出てきます。
そういう歳出の徹底した効率化を前提として、一般歳出の7割以上は社会保障費になるというぐらいまで絞り込んで、その上で、足らざるところを増税していくという考え方です。
高齢者医療も、今でもかなり税投入されていますが、私の考えでは、働く世代に対しては税投入はしないと。つまり、自立的に保険料だけで賄うという形にするわけです。
その上で、高齢者医療については、本人負担と保険料を徴収しながら、しかしかなりの部分は、恐らく7割、8割あるいは9割近く税ということになると思います。
そのときに、ここを目的税にしてしまいますと、なかなか議論が及ばないと。つまり聖域化してしまいますから、一般財源で見ていくと。しかし、その財源とし ては、既存のそういう振り替えですよ。それ以外の部分は、やはり消費税ということになると。その道筋を書いたものです。
それから、確かに子供手当の部分はかなりの金額になると予想されます。これは、配偶者控除や扶養控除をやめるというだけでは足りないわけですから、そこは新たな財源が必要になると。
メリハリをつけるということで、そういうふうにして子供の数を増やして、少子化の傾向を止めるということは長い目で見ると増収効果にもなるということですから、そういう意味で、ここは思い切ってやるべきだということを申し上げさせていただきました。
具体的に何%になるかということは、サービスの水準をどうするかによって変わってくるわけで、一概に言えることではないと思います。
所得税率のほうは、これを結果の平等と見るかどうかですね。つまり、所得税というのは努力の結果を全てきちんと反映してるという前提に立てばそのとおりですが、所得を得るに当たって努力の結果を比例的に反映したものだと私は考えません。
人生は3要素で決まると私は思ってるんですね。生まれもっての能力と、努力と、それから運と。そういうふうに考えると、私はあまりフラット化して、勝ち負 けを決めてしまうというのは、好ましくないと判断をして、これは党内的にはむしろ少数派なんですが、そしてまた私も7割、8割という税率までは考えている わけではありませんが、大きな流れはフラット化という流れにあると思いますので、それはそうではないということをあえて申し上げたところです。
【司会】それでは、時間も来ましたのでそろそろ……
【岡田】いえ、いいですよ別に。
18歳参政権/透明な政治資金
【記者】選挙権・被選挙権を18歳に引き下げるとありますが、そのメリットを伺いたいのと、政治資金に対して監査法人や市民によって厳しくチェックがされているとありますが、具体的にはどのような方法があるのか伺えますか。
【岡田】前者については、私は選挙権も被選挙権も全てと書いていますが、選挙権について言うと、むしろ20歳より18歳のほうが国際的には普通だと思います。そのことは、私たちのマニフェストの中で主張しているところです。
基本的に、18歳から働いている人もたくさんいるわけですから、そういう人たちに選挙権がないというのは、私はむしろ普通じゃないと考えています。
それから、もちろんこれは投票権だけじゃなくて、民法全体に関わる話になってきますので、大きな改革が必要になってきますから、そういうことも含めてしっかりやるべきだということです。
政治資金の問題は、私はここに具体的に書きませんでしたが、やはりパーティーと献金のバランスが悪いということは1つ念頭にあります。
政治献金のほうは公開基準が5万円超ということで、これを引き上げるという動きもありますが、厳しい基準になっていますが、それに対してパーティーはかなり緩やかです。
基本的には形は違っても政治活動に対する資金を集める手法という意味では、かなり共通性がありますので、もう少しバランスを取ったやり方にしていくべきではないかと思います。
同時に外部監査をしっかり入れて、そしてその外部監査を見た市民からの説明要求に対して、しっかり説明責任を果たす。そういう形でのチェックが望ましいんだと思っています。
待機部隊と武力行使
【記者】2 枚紙に国連待機部隊を積極的に検討とありますが、小沢さんや横路さんがおっしゃってる待機部隊は武力行使が可能だというものだと思うんですが、岡田さんが おっしゃってる待機部隊というのは、前者の考え方であれば武力行使できるし、後者の考え方だと武力行使までは出来ないということになる、ということでよろ しいんでしょうか。
【岡田】そうです。【記者】そうすると、待機部隊という名前ではあるけれども、武力行使できるという前提ではなくて、それはこれからの議論ということですか。
【岡田】重要なことは、まず待機部隊ありきではなくて、最初に説明した2つの考え方のどちらを取るのかということをまずきちんと決めるべきだということです。それによって、同じ待機部隊といっても中身は変わりますから。
【記者】それは小沢さんたちとは折り合いがついてるんでしょうか。
【岡田】いろんな政策論争をいろんな方としていますが、具体的にそういった折り合いをつけるつけないといった視点で議論していませんので、そういう意味では「ノー」ということになります。
だからこそ、といいますか、ここは結論を出していないわけですね。2つの考え方があると。それをちゃんと党内で議論しましょうということを申し上げているわけです。
推薦人
【記者】推薦人にはどういった方をお考えですか。
【岡田】昨日申し上げましたように、なるべく幅広くいろんな立場の人からご支援いただけるような形をできるだけつくりたいと思っています。
具体的なことは、これは任せてありますので、私自身がどうこうというものではありません。
財政再建と整備新幹線
【記者】財政の建て直しの部分ですが、政府の整備新幹線計画は全部造る必要はないということでしょうか。
【岡田】私 はそう思います。この前、選挙で全国を回ったときも、自治体の長の中ですら「自分は必要ないと思う」と明言されていた方もいらっしゃいますし、なぜ造るの か分からない、プラス・マイナス考えたときに、ローカル線が廃止されるとかそういうことも含めて考えたときに、本当に必要なのかという声がかなりあると私 は思います。
それはある地域の中のそういうプラス・マイナスの判断ですが、より重要なことは、トータルの国としての財政全体で見たときの判断というのはないですよね。
つまり、一定の地元負担さえすれば、あとは国が造ってくれるわけですから、そこはやはりそうじゃなくて、国の財政がこういう状況ですから、最後は国民1人 ひとりの財布に直接響いてくるわけですから、限られたおカネを一体何に使っていくべきなのかということをきちんと判断できるように、もっと政治が正直に しっかりと説得していくべきだと思っています