トピックス

2010.04.09|記者会見

外務大臣会見記録(平成22年4月9日)

外務大臣会見記録(平成22年4月9日(金曜日)15時04分~ 於:本省会見室)

○冒頭発言
(1)第1次戦略兵器削減条約の後継条約の署名について
(2)キルギス情勢について
(3)ハイチ地震・チリ地震を受けた大規模自然災害等に対する危機管理体制の在り方について
(4)横須賀市訪問について
(5)沖縄返還に関わる情報公開に関する不開示決定取消訴訟について
(6)2010年のJPO派遣候補者選抜試験について
○いわゆる「密約」問題に関する調査(沖縄返還に関わる情報公開に関する不開示決定取消訴訟)
○大規模自然災害等に対する危機管理体制のあり方
○日中首脳会談
○米軍再編問題
○横須賀訪問
○対北朝鮮措置の延長
○核セキュリティ・サミット
○中国における邦人麻薬密輸犯の死刑執行

冒頭発言
(1)第1次戦略兵器削減条約の後継条約の署名について

【岡田大臣】まず、第1次戦略兵器削減条約の後継条約の署名について、昨日8日ですが、オバマ大統領とメドベージェフ大統領の間で、プラハにおいて、第1次戦略兵器削減条約の後継条約に署名をいたしました。
 両国が進めていた交渉の結果として、核弾頭と運搬手段の削減の水準に合意したことなど、重要な進展があったことを我が国としても評価をいたします。
 核兵器不拡散条約NPT第6条の核軍縮義務に従ったこの条約が、5月のNPT運用検討会議に先立ち署名されたことは、同会議に向けた重要な貢献であり、我が国として高く評価するところであります。
 両国による同条約の早期批准を期待するとともに、その他の核兵器保有国も参加した世界的な核軍縮の進展及び目標である「核兵器のない世界」に向けて、国際社会の中でリーダーシップが発揮されることを期待しているところでございます。

(2)キルギス情勢について

【大臣】2番目は、キルギス情勢です。本日の国会でも既に述べたところでありますが、4月7日、首都ビシュケクにおいて、野党勢力など反政府デモ隊と治安部隊の間で衝突があり、これまでに70名以上の犠牲者、1000名を超える負傷者が発生しております。このことについて、憂慮の念を持って、事態の推移を注視しています。
 現地には、約130名の邦人が長期滞在しておりますが、現在までのところ、邦人被害の情報はありません。これまでキルギス在住の邦人等に対し、治安情勢、安全対策に関する情報を提供するとともに、治安悪化に備えた注意喚起を行ってきています。引き続き、外務省として、邦人保護と情報収集に遺漏なきを期するために、現地に緊急対策本部、そして外務省連絡室を設置し、万全な対応を行っているところであります。
 8日には、野党側党首が臨時政府を発足させたと承知をしておりますが、他方でバキーエフ大統領は辞任を拒否する声明を出しており、事態の今後の推移は予断を許さず、すべての当事者が対話を通じて平和的な問題解決に当たり、一刻も早く事態が収集されることを期待しております。

(3)ハイチ地震・チリ地震を受けた大規模自然災害等に対する危機管理体制の在り方について

【大臣】3番目に、資料をお配りしておりますが、ハイチ地震、チリ地震を受けた大規模自然災害等に対する危機管理体制の在り方であります。両地震を受け、体制面での整備について議論をしてまいりましたが、その結果がまとまりましたので、報告したいと考えております。
 まず、改善点としては、今までは本省における危機管理体制として、特に初動については、各担当部局長が主導して対応に当たっておりました。ハイチとか、或いはチリということになると中南米局長ということになる訳であります。今後は、危機管理担当審議官が中心となって、初動体制をより迅速に行う体制の整備をいたしました。
 それぞれの担当局、担当課ということになりますと、今回はハイチ、チリと同じ担当部局でありましたので、明らかに最初のハイチよりも2回目のチリの方が対応は早かった。やはり、初めてということになると、経験の蓄積という意味では十分ではない訳で、今後ともどこで、例えばアジアで、アフリカで、どこでそういった大規模災害が起こるかわからない訳であります。そういう意味で、危機管理担当審議官のところにさまざまな経験の蓄積を持って、そこがまず初動体制においては主導するということにしたところであります。内閣における危機管理官と同じような発想だとお考えいただければいいのではないかと思います。
 また、政務三役も参加をして、事案発生直後の第一報を得た後に対応を協議する対策会議を導入しました。更に、緊急対策本部の設置基準、つまり事案によっては対策本部を設置する。そして、体制を明確化し、国連安全局との緊密な連絡を図ることで、治安情報の入手ルートを多角化したほか、在外公館における通信体制についても充実させることとしました。これはハイチにおいて、電話が電池切れになったりとか、具体的に幾つかの問題が発生いたしましたので、そういったことについて、通信体制そのものも、予算を伴う話ではありますが、より充実させるということについても決めたところであります。
 次に、緊急援助隊等の迅速な派遣を実現するために、原則災害発生後、24時間以内に準備チームを派遣する。派遣準備段階の関係省庁との連携を強化する。移動手段を多様化する。例えばチャーターとか、そういったことも含める。それから、医療機能について拡充する。NGOと連携強化するということについて、JICAや関係省庁と既に協議を行っておりますし、なお、詰めを要するところについては、協議をしていきたいと考えているところでございます。
 今後の検討課題として、自衛隊部隊のさらなる活用。基本的には、国際的な、一般的なルールとしては、他で対応できないときに軍が出るという基本的な原則がありますが、そのことは当然であります。しかし、医療部隊など、場所によっては最初から自衛隊の医療部隊を出していくということも考えなければいけない場合もあるのではないかと思っております。
 それから、危険な地域に派遣する際の隊員の安全確保の在り方は、附帯決議など、安全確保が最優先ということになっております。もちろん、安全確保は最優先ですが、そのことにあまりにも縛られ過ぎることによって、出すことに対して躊躇するということがない訳ではないということでございます。
 それから、被災地での他国チーム、NGOとの協力の拡充。それから、緊急援助隊活動の指揮命令権の整理。それぞれの省庁なり、或いは自治体なりが派遣する人の指揮命令権を持ったまま、それを束ねる形で緊急援助隊が出るということになっております。それで何か問題がないのかどうかということについても、少し議論が要るのではないか。今まで別に問題は発生しておりませんが、しかし、指揮命令権というのは、特に修羅場ですから、もう少し整理をした方がいいのではないかとも思っているところであります。
 それから、ハイチ、チリとありますが、チリに関して、経験もあったということもあって、国際支援に対するチリ政府の意向がなかなか明らかにならない点で、困難性があった訳ですけれども、しかし、そういう中で適切に対応できたと考えております。緊急援助隊の医療チームに関しては、派遣迅速性を重視し、まず先発隊を派遣いたしましたが、その後、チリ政府の方針によって、後発隊の派遣は見送ることにしたことは皆さんもご存じのとおりであります。
 実は、こういう情報は出した方がいいと判断して申し上げますが、そのときチャーター機のキャンセル料というのが発生しております。直前まで出すつもりでおりましたので、チャーター機を準備しておりまして、当日キャンセルということになりまして、約1800万円のキャンセル料が発生しております。もう少し賢明な判断ができなかったかというご批判もあるかと思いますが、そういったリスクも持った上で、なるべく早く出すということを考えていくということ。それが今回は残念な結果になったということだと考えております。そういうことがだめだということであれば、やはり出すことについて、より状況を見極めて出すことになる訳で、こういったことが今後もあり得るということは是非ご理解をいただきたいと考えております。ある程度こういった空振りになるという覚悟を持って派遣を決定したということでございます。

(4)横須賀市訪問について

【大臣】私(大臣)は明日、横須賀市を訪問いたします。横須賀市では、吉田市長と意見交換をするとともに、横須賀海軍施設、米軍ですが、その視察を行う予定でございます。

(5)沖縄返還に関わる情報公開に関する不開示決定取消訴訟について

【大臣】先ほど判決が出た沖縄返還に関わる情報公開に関する不開示決定取消訴訟でありますが、結果は少し意外な感がいたしますが、国側が敗訴ということになりました。もう少し判決文などは精査をしなければならないと思いますが、この裁判において、国側としてどこまで主張したかというのは、私(大臣)も必ずしも明確に把握している訳ではありませんが、去年の政権交代後、私(大臣)が就任し、その当日に法的な裏付けをもって事務次官に対して命令を発し、そして徹底的に調査を行ったということが十分反映されていないのではないかと思います。これはもう少し判決文をよく見てみなければいけませんが、少なくとも当方よりそういう申し立てを行わなかったという話もあります。その辺、私(大臣)はよく分かりません。いずれにしても、今、外務省にそういうものはないということは、調査の結果、明確でありまして、そのことに対して、それ以外のことはないということは申し上げておきたいと思います。よく判決文の趣旨を検討してみたいと思います。

(6)2010年のJPO派遣候補者選抜試験について

【大臣】最後ですが、2010年のJPO派遣候補者選抜試験についてご連絡をしたいと思います。国際機関における邦人職員増強の一環として、JPO派遣制度を実施しておりますが、JPO派遣制度というのは、将来、国際機関の正規職員を目指す若手の邦人をJPO(Junior Professional Officer)として、原則2年間国際機関に派遣し、国際機関の正規職員となるために必要な知識や経験を積む機会を提供するものであります。本日から6月9日までの間、2010年度JPO派遣候補者選考試験の募集を行います。書類審査及び面接審査を通じて、国際公務員になるために必要な専門性と経歴を持っている方を選抜するものであります。合格者はJPOとして、UNDPやUNICEFやUNHCRを始めとする、さまざまな国際機関に派遣されます。外務省としては、本制度を通じて、より多くの日本人の方が国際機関で活躍されるよう支援をしてまいるところでございます。
 ちなみに、2009年度は510名が応募をし、34名が合格ということでございます。35歳以下の日本国籍を有する者というのが条件でございますので、皆さんの中でも意欲のある方は是非受験をしていただいたらどうかと思います。

いわゆる「密約」問題に関する調査(沖縄返還に関わる情報公開に関する不開示決定取消訴訟)
【毎日新聞 野口記者】密約の情報公開の訴訟についてなのですが、今回、判決は国側に開示を命令するというような内容になっておりますけれども、外務省の調査で問題になっていた吉野局長とスナイダー公使の文書は見つからなかったという結論になっていますけれども、それについても改めて「不存在」ということにする場合には、外務省として、存在しないというときは、なぜ存在しないのかというのを説明しなければならないと思いますが、その辺り、どういった対応を考えていらっしゃいますか。

【大臣】まだ、判決の結果をよく精査しておりませんで、そういう段階でコメントすることには慎重でありたいというように思います。よく中身を見た上で判断したいと思いますが、ただ、私(大臣)が今聞きましたところでは、今回改めて徹底的に調査をしたということを、当方から裁判において申立てをしていないという少し信じられないような話もございますので、そこのところは、裁判の中身についても、こちらの進め方も含めて精査してみたいと思います。ただ、(文書は)ございません。それは調査の結果、(文書は)ありませんので、ないものをどう説明するかというのはなかなか難しいことだと思います。

【ビデオニュース 神保記者】密約の件でフォローアップなのですけれども、判決の要旨しか手元にないのですが、要旨を見ると、不存在で、見つからなくなった理由を外務省側にきちんと調査をしろと、だからそこの部分の挙証責任、これこれこういう理由でないのだ、ということを外務省の方から説明をしなければならないという判決文になっているのですが、具体的には、歴代の事務次官、アメリカ局長、条約局長、アメリカ第一課の課長を始めとする同課在席者、外務省が本件、各文書を保有するに至ったと考えられる時期以降に、これらに関与した可能性のあるものに対し、逐一取扱い等について聴取することが求められると文書にあるのですが、これは、大臣は精査してからというように仰いましたけれども、このような調査というのを今後更に行う可能性というのはあるのでしょうか。

【大臣】まだ判決文についてよく精査しておりませんので、それが現実的なことを言っておられるのかどうか、現実的に可能なことを。随分昔の話でありますので、そのことも含めてよく検討しなければならないと思います。

【ビデオニュース 神保記者】調査の可能性は排除されないのでしょうか。

【大臣】現時点では何も申し上げません。

【琉球新報 滝本記者】今の件に関連してなのですけれども、大臣が仰られた中で、訴訟指揮として、なぜ主張されなかったのか。徹底調査したことを裁判で申立てなかったということがなぜなのかというのが、信じられないという話なのですけれども、そもそもこの裁判に当たって、大臣がどのような指揮でいくのかということについては、一切関与されていなかったということになるのでしょうか。

【大臣】この裁判は、実は裁判手続としては、確か1月か2月ですか、もっと早かったかもしましれません。事実上終っていました。それで判決が延びていたということですから、私(大臣)が就任してから何回公判が行われたのか、私(大臣)はあまり記憶がないのですが、多くは前政権の下で行われたことであって、私(大臣)自身が個別の裁判について、何かコメントすることはありませんし、それはそれぞれの司、司といいますか、弁護士もいる訳ですから、相談して進めていったものと思います。いずれにしても、これは地裁の判決ですから、これから更にどうするかということは、これをそのまま受け入れるということは、私(大臣)はないと思いますので、今後どうするか、よく検討してみたいと思います。

【フリーランス 岩上氏】今の問題に関連しまして、大臣のご説明を伺っておりますと、そうすると、裁判の訴訟の手続そのものは、ほぼ前政権の時代に終わっていて。

【大臣】今、そこまで断言していません。

【フリーランス 岩上氏】という可能性があって、今の現政権になって、密約問題の開示の命令を下されて、この問題の徹底的な追求、調査を行って報告を行ったということでした。開示を行ったという、言わばタイムラグが、裁判と実際の現政権での調査と、その発表とのタイムラグが判決へのずれ、それから大臣が、これは少し現実と違うのではないかという違和感もご表明されている訳ですけれども、その理由になるのでしょうか。

【大臣】よく判決を見ておりませんので、率直に申し上げて、分かりません。これからよく精査してみたいと思います。ただ、法に基づいて、行政組織法に基づいて命令を発して、そして調査をやったということが盛り込まれていないとすると、そういった主張をしなかった方にも問題があるというふうに言わざるを得ないと、私(大臣)は思います。そういう経緯もよく含めて検証してみたいと思います。

【共同通信 西野記者】判決を精査されるということなのですが、大臣のお言葉を聞いていると、このまま受け入れることはないという言及もありました。これは、もちろん、精査した上でということなのですが、控訴もあり得るという見方でよろしいのですか。

【大臣】よく精査してみたいと思いますが、その可能性は排除できないと思います。我々の納得のいく判決では必ずしもないということであります。

【共同通信 西野記者】一方で、大臣がこの判決に至るまで、外務省の中で、そういう主張していなかったと、きちんと主張していなかったことに、今、遺憾の意を表明されていると思うのですが、なぜそのようなことが起こっているのか、私たちも密約の取材をする際に、この訴訟と密約が今後どうなるのか、非常に関心を高く持っていたのです。
 一方で、外務省の中で大臣がどのような訴訟指揮が行われているのか把握されていなかったというのは、逆にこちらとしてはどうしてかなと疑問を持ったりするのです。そこら辺が少し、大臣がこの判決にしても、やはり「外務大臣は」というところで命令が出ていて、その責任と裁判の中身と整理した上で話をしていただかないと、少し分かりにくいです。大臣が遺憾だと仰っていることは、外務省全体の話なので、大臣に返ってくる部分もあると思います。そこのところを少し整理してください。

【大臣】いずれにしても、私(大臣)は吉野さんの守秘義務を解くということはいたしましたが、個々の裁判における闘い方についてまで、関与、干渉するつもりはございませんので、ある意味では任せていたということであります。

【朝日新聞 鶴岡記者】今のに関連して伺います。外務省の調査結果は、恐らく11月20日の時点で出ていて、その後、年末年始の裁判では、恐らく有識者委員会の検証が終わるまでは公表しないがために、準備書面では多分、留保するとして明らかにしてこなかったと思うのですけれども、11月の時点で外務省の結果を発表して、事実を追加して申し立てていれば、こういうことにはならなかったような気がするのですが、つまり外務省の公開の在り方として、11月に結果が出たのに3月まで公開しなかったというところに問題があるような気がするのですけれども、いかがでしょうか。

【大臣】それは、有意識者委員会での結果も含めて公開するということでやっておりましたので、そういうやり方が、まずかったというようには思っておりません。

【毎日新聞 野口記者】11月に外務省の内部の結果が出ていて、そこの密約に関連している外務省の内部のチームと裁判を担当している担当者の間では連携が取れていなかったということでしょうか。当然、大臣もそれに関知していなかったので、関連させてしっかりと裁判でも主張するように指示もなかったと思うのですが。

【大臣】ですから、密約の検証といいますか、省の中でやっていたチームというのは独立しておりましたので、外に対してその結果については出さない。省内も含めて、そういう形でやっていたことは事実であります。それ以上のことは、私(大臣)は今、お答えしかねます。

【ビデオニュース 神保記者】大臣はこれまでずっと密約というものがないと歴代政権が言ってきた中で、大臣が外務大臣になられて、とにかく密約の存在を明らかにするための調査をやられて、この度、そういう調査をなされました。
 一方でこの訴訟も、密約の存在というものをとにかく明らかにしたいがために、密約文書の開示ということをやったものだと、私は理解しております。ですので、両者が同じ方向に向かってこの密約という問題に取り組んできたと思っていたら、本日の大臣の発言は、この判決に非常に不満であるというか、両者の利害がバッティングしていくような印象があって、少し意外な感じがしたのですが、これは大枠としては、大臣の考えている方向と同じではないのですか。何に対して大臣がこの判決に対して、そこまで不満を持たれるのか、正直分からなかったのですが。

【大臣】調査を徹底したにもかかわらず、更に足りないというかのごとく判決ですから、それは自信を持ってないということを申し上げておきたいと思います。私(大臣)は裁判の中身について、政務である大臣があまり口出しをするべきではないという基本的考え方に基づいて、そういった守秘義務ということについてはオープンに、自由にしゃべっていただこうということで、吉野さんの守秘義務は解いた訳ですけれども、中身については関与しない方がいいと、基本的にそういう考え方でやってまいりました。

【琉球新報 滝本記者】確認なのですが、大臣はこの訴訟において、大臣が命じられた外務省内部の調査、或いは有識者委員会の調査結果、これが反映されるものだというように大臣自身は思っていらっしゃったのですか。

【大臣】少しよく分かりませんので、果たして反映されていないのかどうかも、もう一度きちんとを検証しないと分かりませんので、断定的なことは申し上げたくありませんが、その時点における最新の情報、或いは主張というものは、当然外務省としてしているだろうと、常識としてそう考えておりました。

【毎日新聞 吉永記者】裁判そのものという訳ではないのですが、外務省が公表した有識者委員会のものではなくて、外務省内部の調査チームの調査結果について伺いたいのですが、沖縄返還時の現状回復保障費の肩代わりに関する密約について、調査チームの報告書で、現状回復保障費の400万ドルとボイス・オブ・アメリカの移転費1600万ドルとともに、積み増して3億2000万ドルとすることで日米間で決着したとの経緯を明らかにしました。前政権はこの積み増し自体を認めていなかったと、当時の福田外相は積み増しを否定する国会答弁をしていたということです。岡田大臣は調査チームの報告のように3億ドルに計2000万ドルが積み増しされて、内訳に含まれていたと認識していたと理解してよろしいでしょうか。

【大臣】少しよく分からなかったので。たくさん言われると分からなくなりますから。

【読売新聞 吉永記者】要するに、調査チームの調査結果について、当時の肩代わり費用と言われた土地の現状回復費400万ドルに、更にボイス・オフ・アメリカの移転費の1600万ドル、これを日本政府が肩代わりしていたという調査結果です。大臣自身も3億ドルに2000万ドルが積み増しされていたと、それを日本政府が肩代わりしていたとご認識でしょうか。

【大臣】私(大臣)の印象を聞かれても、それは答えられません。調査結果が外務省の認識であります。

【琉球新報 滝本記者】まさに今の積み増しの関係で、現状回復費の400万ドルであろうが、1600万ドルを更に本来払うべきでないのに払ってというのが密約であるのかどうかということについては、そのまま3億2000万ドルを米国側に払ってあって、その内訳をどのように米国が使うかというのは、米国次第なので日本は関知しないということをこれまで国会答弁してきたと、その範囲を超えないものだったと。確か調査結果のときの会見で、外務省の考えというのは、今まで答弁してきた範囲内だから、密約ではないということでお話しされていたと思うのですけれども。

【大臣】密約の定義ですね。「広義の密約」というのが有識者の結論であります。

【琉球新報 滝本記者】その上での質問なのですが、今回、総額での部分ということではなくて、積み増して余分に払ったのだという認識で払ったという認識はあるのかということを確認したいのですが。

【大臣】ですから、それは報告書にある通りです。私(大臣)自身の考えというは特にありません。外務省の調査結果が私(大臣)の考えです。

【共同通信 西野記者】整理するという意味で、大臣が仰っていることは、当然主張すべきことを主張していなかったということは、非常におかしなことで。

【大臣】いや、その可能性があるということを言っている訳です。

【共同通信 西野記者】可能性があるということで、それでこのままでは受け入れることはできないと仰っているのですが、外務大臣の立場から考えたら、裁判で負けたということは、外務省側が言うべきことを言わなかったということであって、それで負けてしまったのですから、どのような理由で控訴するのかよく分からないのです。外務省サイドの中での話であって、訴訟の関係で言うと、向こうは開示しろと言って、こっちはないと言っていて、負けたということです。外務省の中でいろいろあることについて、それを理由に控訴の可能性を捨てきれないということは、何か少しストンと落ちないところがあるのですが。

【大臣】今の話であれば、私(大臣)も落ちません。ですから、控訴するという可能性があるというのと、それから新たな密約の解明調査を行ったことというのは、1対1にリンクした話ではありません。それは仰ったけれど、私(大臣)はそのように言っておりませんので、この裁判の結果については、私(大臣)は釈然としないところがあるということを申し上げている訳です。そして、その立証の仕方についても、それが常識にかなったものなのかどうかということも含めて、必ずしも釈然と致しませんので、控訴の可能性について検討をするということを申し上げている訳です。もちろん、中身をもう少しよく精査をしてみないと、先ほど判決が出たところですので、私(大臣)自身もあまり詳しく見ている訳ではありません。ただ、そのことと切り離して、では、外務省も十分主張したのかというと、そうではないかもしれないということです。それは中の話です。そのことについて遺憾であるということを申し上げている訳です。

【琉球新報 滝本記者】また整理させて頂きたいのですが、訴訟手続きの中で外務省が十分立証したのかということはどうなのかなということで、それは精査されるべきだということでもあって、十分したのかということについては、遺憾なのかどうなのかということは確認したいということがありましたけれども、それと切り離して、大臣は判決については残念だと仰られたのでしょうか。

【大臣】控訴の可能性があると申し上げました。

【琉球新報 滝本記者】ではなくて、判決自体の受け止めについてなのですが。

【大臣】控訴の可能性があるというように申し上げました。

【朝日新聞 鶴岡記者】確認させて頂きたいのですが、一審の事実認定はもう終わったので、裁判の基本ですが、控訴して何か新たな事実を追加すると、つまり申し立てを追加するということではないですか。

【大臣】もう少し判決を精査しないと分かりませんが、事実の問題というよりも、ここでないということの証明の仕方とか、どちらが証明すべきなのかとか、そういうことについて、必ずしも釈然としないものがあるということです。

大規模自然災害等に対する危機管理体制のあり方
【フリーランス 大川氏】大規模自然災害等危機管理体制のあり方と、並びに紛争地域の対策のあり方なのですが、私がイラクに行ったときにも、フセイン政権の戦争前だったので、子供達が劣化ウラン弾で苦しんでいるにも関わらず、国外には出せないと言われて、ならば「海岸地域のところに病院船等が来れば、それは大丈夫なのか」と言ったら、「それだったら大丈夫。国内だから」と言われました。何が言いたいかというと、病院船という考え方は外務省としてお持ちなのでしょうか。私はこれから国境なき医師団に続いてできるのは、国境なき病院だと考えておりますので、大臣のお考えをお聞かせ下さい。

【大臣】ひとつのアイデアだと思います。だた、コストもかかります。全体の災害支援ということを考えたときに、船は足が遅いですし、様々な限界もあります。普段何に使うかと、平時にどう使うかという問題もあります。そういった意味で税金の使い方として、優先順位をどのようにつけていくかという問題だと思います。

【フリーランス 大川氏】船が遅いと仰られておりますが、別に日本にある必要はありません。例えば、日本が各国の協力を得て、予算の問題も含めてですが、国連に提示しつつ、病院船を各地に置こうということです。特に地震が多い所に病院船を停泊すればいい訳であって、海洋国家の日本が中心になって、そういったアイデアを提案するのはいかがでしょうか。

【大臣】いろいろなアイデアがあるのはいいと思いますが、どこで地震が起こるかというのはなかなか分かりませんので、地震の起こりそうなところに、たくさん船を配置しておくというのは、若干、私(大臣)はどれだけ納税者の理解を得られるかという感じは致します。しかし、アイデアがいろいろ出るのは歓迎です。

【西日本新聞 斎田記者】先程、大臣がご紹介されましたが、チリの派遣の時に当日キャンセルで1800万円かかったというお話ですが、まさに税金の使い方という話で、この判断が妥当だったのかどうかというようなところは十分に精査もされるべきだし、逆に言うと大臣からもう少し丁寧に、どういう目的でやろうとしたのだけれども、結果としてこうなった、今後の課題はこうです、というような説明をして頂きたいと思います。

【大臣】チリの場合、地震発生の直後にバチェレ・チリ大統領から「現時点では外国からの緊急支援は必要ない」という発表がありました。しかし、そうは言っても大変な状況の中で何か行うべきではないかと、我々としてはそういう議論をしておりました。そういう中で、地震が起きたのは現地時間の2月27日の午前3時ですが、現地時間の28日の午後(日本時間3月1日午前)にバチェレ大統領は簡易病院及び、中長期的な病院の建設等の外国からの支援を要請ということがございました。また、在京チリ大使館からも野営病院を含む支援要請項目リストが送付されました。これを受けて我が国は、医療分野における支援ニーズがあると判断をし、日本時間3月1日に医療チームの派遣を決定し、同日中に3名、団長は外務省、それから医師、JICA職員からなる3名の先発隊を派遣したところです。ハイチの際にもなるべく近くまで(ということで)、チリは遠い国ですから、先発隊を派遣すると同時に近いところまで人員を進めておこうということで、本隊の派遣についても準備をしたということです。しかし、その後チリ政府より一般の初期治療などにあたる海外からの医療チームの受け入れは断っているという通報があり、チリ保健省の方から、「チリが支援を必要としているのは基本的には資材であって人ではない」という発言も外務省に対してなされ、これを受けて日本時間の2日後発隊の派遣を見送るという決定を行ったところです。

【読売新聞 川崎記者】先程、ご説明をいただきました危機管理体制のあり方についてお伺いします。それぞれ、1.2.3.4.と体制及び今後の検討課題等と列挙をされておりますが、それぞれいつからこの体制をやるのか、或いは検討課題となっているところについては、いつまでに結論を出すのかについてご説明下さい。

【大臣】体制の中で予算措置を伴うような、順次やっていかなければいけないことは、順次やっていくしかありません。ただ、本省の体制などについてはマニュアルを変えて、既にそういう体制に入っております。今後の検討課題については、関係省庁との協議が必要でありますので、順次そういった話し合いを行っているところです。中には法律改正を必要とするものもあるかもしれませんので、いつまでにということではありませんが、よく協議をしていきたいと思っているところです。

【読売新聞 川崎記者】今後の検討課題のところで、「既存の国会附帯決議、閣議決定の見直しも含めて検討」とある部分ですが、これは現在のPKO原則の見直しと一緒に絡んでいることなのでしょうか。

【大臣】ここに書いてあるとおりです。ですから、既存のこの緊急支援隊の法律を審議した際に、国会の附帯決議で隊員の安全に配慮するということが書いてあるということです。

【西日本新聞 斎田記者】先程、大臣は冒頭で「こういった空振りがあることも覚悟しなければいけない」というようなお話もありますが、とは言っても現実問題、何度も空振りをしていますと、大切な血税が失われるということなりますので、今後の課題というか、問題点として、どういうところを認識されていて、どういうところを今後改善していこうとお思いかを教えてください。

【大臣】それは、その時の情報をいかに取り、その確度、しかし、それをより慎重にするということになれば遅れてしまいますので、それはトップがその段階で判断するしかないと思っております。今回1800万円の空振りに伴う費用が発生したことは、ひとえに私(大臣)の責任であります。

【共同通信 西野記者】今後の検討課題について、改めてお伺いします。既存の国会附帯決議を見直す場合は、国会にこれを諮ってやらなければいけないし、閣議決定の見直しについては、閣議で諮らなければならない訳ですが、このことについては順次行っているという話ですが、実際に行われているのでしょうか、それとも今後行うというようなことは決めておられるのでしょうか。

【大臣】もう少し、常識で判断していただきたいのですが、国会附帯決議を変えるかどうかということを、まず議論するということです。結論が出て見直しの必要があるということになれば国会に諮るということになる訳で、今そういう議論を政府の中で行っているということです。

【共同通信 西野記者】政府の中で行っているということは、外務省の中でやっているのですか、それとも、外務省を越えてやっているのですか、ということです。

【大臣】まだ外務省の段階ですが、官房長官などには、こういう課題があるということは私(大臣)から説明してあります。

日中首脳会談
【NHK 梶原記者】来週、鳩山総理大臣がワシントンに行かれると思いますが、そこで日中首脳会談が調整されていると思います。そこでのテーマですが、本日、新たに3人の死刑の執行がありましたが、こういったこととか、或いはガス田の話、どういったことがテーマになってくるとお思いになっているのでしょう。

【大臣】確か、まだ正式に日中首脳会談の方は決まってない、そういう方向だという段階だと思います。ですから、限られた時間の中で何を議論すべきかということは、今後検討していきたいと思います。首脳間で議論するに適した問題とそうでない問題もあるのではないかと思っています。

【NHK 梶原記者】本日の死刑執行について取り上げられる可能性はあるのでしょうか。

【大臣】まだ具体的に検討しておりません。

米軍再編問題
【ニコニコ動画 七尾記者】視聴者の質問を代読します。 昨日の北澤防衛大臣のご発言についての質問です。米軍普天間飛行場の移設問題に関連しまして、北澤大臣が「一般的に言えば、迷惑な施設としての米軍の駐留地を建設する」と発言されました。この発言は「一般的に言えば」という前置きはありましたが、国防のトップというお立場と、今この時期にという点を考えますと、この発言に関しまして外交面での影響等はいかがでしょうか。

【大臣】その発言は私(大臣)は憶えておりませんが、もし国会で発言されたのなら私(大臣)は隣にいたはずですが。

【ニコニコ動画 七尾記者】報道によりますと、参院の外交防衛委員会です。

【大臣】そうであれば、私(大臣)は隣にいたはずなのですが、あまり記憶しておりません。ですから、コメントは控えたいと思います。

【フリーランス 岩上氏】今朝の産経新聞の1面に「政府はホワイトビーチ案を断念した」という報道が大きく報じられました。この件に関しまして、これが事実であるかどうかということと、それから、そうなりますと「政府の腹案」と言われているものはホワイトビーチ案を含んでいると見なされていた訳ですが、それが変わってしまったのか、こうなると沖縄県内(の移設)は難しくなり、「現状固定」か、もしくは「県外・国外」を追及しなければいけないのか、この点について、今お話し頂けることをお話し頂ければと思います。

【大臣】5閣僚で共有している認識の中身について、お話しすることはございません。それから、産経新聞の1面については、国会でも申し上げましたが、私(大臣)も入った会議でそういったことを決めたという表現ですから、はっきり申し上げますが、全く事実に反しております。

横須賀訪問
【フリーランス 畠山氏】明日の横須賀訪問ですが、その狙いについて、今一度お願いします。

【大臣】ひとつは、在日米軍、特に海軍の主要たる場所である横須賀で状況を良く把握したいということと、もう一つは今回の密約調査の中でいろいろな議論が出て、横須賀市長からも何度かやり取りが外務省職員との間であり、武正副大臣のところにも副市長だったか記憶しておりませんが、もしかしたら市長かもしれませんが、お見え頂いて話し合いも行われているということであります。そういったことを踏まえて、私(大臣)が市長をお訪ねして、外務省の考え方をしっかり伝えたいと思っているところであります。

対北朝鮮措置の延長
【読売新聞 石川記者】北朝鮮に対する制裁についてですが、本日、1年間延長することを決めましたけれども、この制裁が日朝関係の進展について、どれほど実効性があると見てらっしゃるかについて、教えて下さい。

【大臣】両面あると思いますが、事態は全く変わっておりませんので、それは当然、制裁は延長すると、それ以外のことはないと思います。

核セキュリティ・サミット
【毎日新聞 野口記者】来週、ワシントンで核セキュリティ・サミットがあります。日本政府としては、核の平和利用などで世界に貢献できる分野がいろいろあると思いますが、どういったことを日本政府として役割を果たしていきたいか、特に日米で「核なき世界」で歩調を合わせているので、その点でいろいろできると思いますが、いかがでしょうか。

【大臣】核セキュリティ・サミットは核軍縮や不拡散、不拡散は関係があるのですが、そういう分野についての、特にオバマ大統領の呼びかけによって行われるものであります。当然、日本としてもさまざまに貢献できることがあると思います。国際社会にとって、重要かつ非常に緊急の課題である核セキュリティ、核テロ対策について議論するということです。

中国における邦人麻薬密輸犯の死刑執行
【共同通信 西野記者】本日の死刑の関係について、改めて受け止めとコメントをお願いします。

【大臣】死刑の執行がなされたということで、大変残念に思っております。同じ日本人として、いかなる罪があったとしても死刑になるということについては、特に短期間に4名の方が死刑になったということですから、非常に残念な思いがあります。しかし、それはそれぞれの国の司法手続きを経て決まったことでありますので、残念な思いと同時に、冷静に対応しなければいけないことだと思っております。




TOP