夕刊フジコラム「ズバリ直球」10年9月8日号
民主党代表選は中盤戦に入った。菅直人首相と小沢一郎前幹事長という両雄が激突したこともあってか、国民の関心も高いようだ。新聞やテレビでも連日取り上げられている。告示直前、話し合いで一本化するとの話もあったが、選挙になって本当に良かったと思う。
2人は公開討論会やテレビ出演、街頭演説などで忙しく飛び回っている。私は菅首相を支持しているが、首相の魅力は何と言っても、どんな難題にも果敢に立ち向かうチャレンジャー(挑戦者)の姿勢だ。最近、一段と「らしさ」が出てきたと思う。
小沢氏は政界の大先輩、経験も豊富だ。どういう首相になりたくて、何を目指すのか、国民に明確に伝わるような発信を期待したい。
ともかく、お互いの政治理念や政策を主張し、国民の疑問にもクリアに答えてほしい。選挙戦が盛り上がっているだけに、両陣営内ではいろいろな感情があるだろう。大切なことは、選挙後、選ばれた代表をしっかりと支え、全員野球でやっていくことだ。
さて、私は7月終わりからの1カ月間で、外相として4回海外に出張し、アフガニスタン、ベトナム、ラオス、ウズベキスタン、カザフスタン、インド、タイ、中国、モンゴルと、アジア9カ国を回ってきた。「アジアの大いなる活力」を感じ、また、日本への感謝や好意を感じた。
タイでは今春、デモ隊による混乱があり、日本人も1人亡くなったが、すでに世界の輸出基地としての勢いを取り戻しつつあった。多くの日本企業も現地で頑張っていた。
インドのシン首相は親日的といわれているが、アジア通貨危機の時、日本の支援を受けたことがその背景にあるといわれている。カザフスタンとウズベキスタンの大統領も、ソ連邦崩壊時に、日本が中央アジア各国に援助したことをよく覚えていた。近く大統領が来日するモンゴルも「わが国初となる経済連携協定(EPA)は日本と結びたい」と意欲を示していた。
モンゴルには終戦後、旧ソ連によって日本人捕虜約1万6000人が抑留された。この時、日本人捕虜が建設した建物が、現在もモンゴル外務省として使用されていた。モンゴルの人々は今でも、日本人捕虜の真面目な態度や働きぶりを知っていて、日本人を信頼しているようだ。
こうした先人たちの「遺産」に心から感謝しつつ、日本と各国がWinWin(ウィン・ウィン=ともに勝つ)の関係になるよう、さらに努力したいと改めて感じた。
今回、タイとインドでは日本の支援で建設された地下鉄にも乗った。現地の人々の生活の一端に触れることができて、とても楽しかった。たまには会議室から抜け出して、街に繰り出すのも悪くない。