夕刊フジコラム「ズバリ直球」12年4月4日号
「社会保障と税の一体改革」に関する法案が、先月30日に閣議決定され、国会に提出された。「消費税増税」ばかり注目されているが、法案には所得格差是正のため、所得税や相続税の最高税率を5ポイント引き上げるなど、幅広い税制改正が盛り込んだ。低所得者向けの最低保障機能を強化する法案や、幼保一体化の「総合こども園」を設置する法案など、社会保障改革に関する法案も同時に閣議決定している。
野田佳彦首相は法案提出後の記者会見で「先送りする政治から決別する」「命懸けで、必ずやり抜く」と語っていた。私もまったく同感だ。
日本に残された時間は少ない。わが国の財政は、予算の半分を公債(=借金)でまかない、国と地方を合わせた借金の残高は経済規模の2倍近くとなっている。財政も社会保障も極めて深刻な状況にある。
「増税反対」と唱えていれば簡単かもしれない。しかし、これ以上放置すると、近い将来、年金や医療、介護といった社会保障を大幅にカットする、血が流れる厳しい状況になりかねない。国民の方々にはどうか理解していただきたい。
閣議決定後に、政務三役4人を含む政府・民主党関係者が相次いで辞表を提出したのは残念だ。
中には、政府で一体改革に取り組んできた人もいる。輿石東幹事長や前原誠司政調会長と党務を支えてきた人もいる。まだ、辞表は受理されていない。国家・国民が苦境にある今こそ、政治家としての働き時だ。何のために政治家になったのか、政治家として何をなすべきなのか、1人ひとり静かに考えてほしい。
もちろん、国民の方々だけに負担を強いているわけではない。「身を切る改革」にも着実に取り組んでいる。
3日の行政改革実行本部では、国家公務員の新規採用を56%抑制することを決め、閣議決定した。過去2年の抑制幅は、政権交代前の2009年度比で37%、26%だから大幅な抑制だ。「学生へのしわ寄せ」との批判もあるが、総人件費2割削減に向けて、やれることはすべてやる。
もちろん、採用抑制は一律ではなく、各府省の状況に応じてメリハリを付けた。それでも、「これ以上、人を減らされたら仕事にならない」という悲鳴も聞こえてきた。仕事のやり方を変えるとの発想が必要だ。
大多数の官僚は昼夜を問わず、一生懸命働いている。ただ、どうしても「効率的にいい仕事をする」という発想に乏しい。部下が効率的にいい仕事ができるような職場環境を作ることは、管理職の最も重要な仕事の1つだ。各府省幹部は肝に銘じてほしい。
新聞・雑誌の定期購読の見直しも、霞ヶ関の意識改革の一環といえる。今年度から各府省の新聞・雑誌を35%減らすことにしたが、それだけで年間4億円の削減となった。民間企業であれば当たり前の発想が大事だ。
このほか、規制改革にも大きな成果があった。自然エネルギーを普及・拡大するため、自然公園内での地熱発電の拡大、メガソーラー設置時の緑地義務の見直し、小水力発電の許可手続きの簡素化といった規制改革を閣議決定した。規制改革は成長戦略の柱でもあり、今後も政治主導で大胆に進めていくつもりだ。