夕刊フジコラム「ズバリ直球」12年6月14日号
「社会保障と税の一体改革」法案をめぐる、民主、自民、公明3党の修正協議が先週金曜日から始まった。難しい課題もあるが、連日の協議はいい方向に進んでいると思う。
欧州危機の懸念や厳しい国家財政が指摘されるなか、「決めて、前に進める政治を実現しなければならない」という決意で臨んでいる。真摯な議論のうえで、何とか合意点を見いだしてほしい。野田佳彦首相も、国会会期末の21日までに衆院採決できるよう、政府として最大限の努力をすると明言している。
私は毎週末、全国各地を回って一体改革の必要性を説明している。厳しい意見もあるが、時間をかけて丁寧に説明すれば、「社会保障制度を持続可能なものにして、財政の危機的状況を克服するには消費増税も仕方ない」と、おおむね理解していただいていると受け止めている。
民主党は2009年衆院選で「4年間は増税しない」と約束した。今回の法案では「14年4月に消費税8%、15年10月に同10%」としており、正確には公約違反とはいえないが、多くの国民の誤解を招いたことについては真摯に反省したい。
しかし、政権交代後の経済状況の変化や、厳しい財政状況を目の当たりにして、「政府・与党として、ここは逃げられない」「もう先送りできない」と決断した。政府・与党の責任として、一体改革は成し遂げなければならない。民主党内にもいろんな意見があるが、野田首相の決意はまったくブレていない。
関西電力大飯原発についても、野田首相は先週、「国民生活を守るため、再稼働すべきだというのが私の判断だ」と方針を示した。地元・福井県側の同意を得られれば、最終決断を下すことになる。
原発の再稼働について、国民の方々に聞くと「慎重にすべき」という声が多い。福島原発事故の記憶が生々しく、当然の反応だと思う。ただ、再稼働しなければ、電力の安定供給は厳しく、企業活動に支障をきたし、国民の方々の雇用や生活に悪影響を与えかねない。政府・与党の責任として、安全性を確保したうえで、再稼働させることを決意したものだ。
「増税はしない」「原発も再稼働しない」と言うのは簡単かもしれない。増税も原発再稼働も、国民から喜ばれる政策ではない。ただ、もはや先送りできないし、時間的余裕もない。物事のプラス・マイナスを総合的に判断し、苦しくても結論を出すことが、政府・与党の責任だ。
さて、全国各地を回るなかで、興味深い、町おこしに出合った。
石川県の加賀温泉郷をPRするため、旅館のおかみさんなど観光業に携わる女性が結成した「レディー・カガ」の皆さんが、JR加賀温泉駅で和服を着て出迎えてくれたのだ。米人気歌手の名前をもじっただけというアイデアが素晴しい。メディアでも頻繁に取り上げられ、観光客も増えているという。
残念ながら、今回は温泉に浸かる時間もなく、食事も駅弁をかき込んだだけだった。改革法案が成立して、時間的余裕ができたら、ぜひ家族で訪ねたいと思う。(副総理)