“社会保障改革”棚上げは事実と異なる!(夕刊フジコラム「ズバリ直球」12年6月28日号)
社会保障と税の一体改革関連法案が、100時間以上の徹底審議を行った特別委員会での採決を経て、26日午後、衆院本会議で可決された。非常に大きな山を1つ越えた。日本にとって良かったと、心から思う。
今回の議論で辛かったのは「マニフェスト違反だ」という批判だ。私は、明白な違反とまでは思わないが、確かに、マニフェストには増税について書いていない。多くの国民の方々の誤解を招いたことは事実で、その点は率直におわびしなければならない。
政権交代後、私も「すぐには消費税を上げなくても何とか大丈夫ではないか」と思った時期もあったが、その考えを変えざるを得なくなったのには、2つの理由がある。
1つは、東日本大震災の発生だ。1000年に一度の大震災のため、昨年、補正予算を3回通し、復旧・復興のため20兆円を注ぎ込んだ。さらに追加の予算が必要なことは確実だ。日本の財政状況は限界に来ている。
もう1つは、欧州の経済危機だ。数字だけなら、日本の借金の対GDP比はギリシャやスペインよりも悪い。今は大丈夫だが、近い将来のリスクはより大きいともいえる。この2つの要因から、私は「社会保障制度の持続可能性のためにも消費税を上げざるを得ない」と判断した。
ただ、「増税だけで、社会保障制度改革は棚上げした」という指摘は、事実とは異なる。今回、8法案が可決されたが、うち税法は2法案だけで、残り6法案は、年金機能強化法案や認定こども園法案、社会保障改革推進法案など、社会保障改革に関するものだ。
サラリーマンの厚生年金と公務員の共済年金の一元化、年金受給資格期間の25年から10年への短縮、パート労働者への厚生年金の適用拡大、認定子ども園の拡充など、民主、自民、公明3党は社会保障改革を前進させることで合意している。
マニフェストで約束した後期高齢者医療制度の廃止や最低保障年金については、これから1年かけて社会保障制度改革国民会議で徹底的に議論していくことになった。
衆参ねじれのなか、結果を出して、政策を前進させるには、野党と交渉・合意して進めるしかない。社会保障改革について多くの政策が決定されており、「増税だけ」といった批判は、3党合意を理解していないとしかいいようがない。
今後、参院で同法案が審議され、可決・成立すれば、国際社会は「日本は財政再建に向けて一歩踏み出した」と評価するだろう。
財政再建を先送りして、日本国債の金利が上がれば、予算すら組めなくなる。予算が組めなければ、年金や医療など社会保障費を大幅カットせざるを得なくなる。国債を大量に保有している銀行が貸し渋りを始めれば、日本経済は急速に悪化する。そうなると、国民生活に大きなダメージを与えることになる。
私は、このようなリスクを軽減することで、この時代に生きる政治家としての責任を少しでも果たせると考えている。
今回の本会議採決で、反対や棄権した人が多く出たのは大変残念だ。野田首相や私たちの思いを共有していただけなかったのは、説得が足りなかったのだと思う。
処分については党の問題で、これから役員会、常任幹事会などで議論されることとなる。党員のみならず、国民にとって納得のいく結論を求めたい。(副総理)