平成27年2月19日 第189回国会 衆議院予算委員会「格差是正、ISILによる日本人殺害、安全保障法制」
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○岡田委員 民主党の岡田克也です。
十六日の私の代表質問に対する総理の御答弁を中心に、九十分、意見交換、議論していきたいと思います。
まず、格差の是正についてであります。
その十六日の総理の御答弁で、これは二番目なんですが、格差に関する指標はさまざまであり、格差が拡大しているかどうかについては一概には申し上げられませんが、中略ですけれども、税や社会保障による再分配後の所得の格差は、おおむね横ばいで推移していますという御答弁を総理にいただきました。
ぜひ、使っている統計とかお考えがあってこういう御答弁になっていると思いますので、御説明いただけますか。
○安倍内閣総理大臣 私が述べた、社会保障の再配分機能を行った後についてはおおむね横ばいというのは、これはジニ係数について申し上げているわけでありますが、ジニ係数というのは、大体同じ収入であれば、こちらが人だとすると、収入とすると、リニアで上がっていくわけでありますが、差が出ると、この差の分との面積が大きいとジニ係数が拡大していくというものであります。
そこのジニ係数で見ると、社会保障の所得再配分後で見ると、おおむね横ばいである、このような認識から答弁させていただいたところでございます。
○岡田委員 総理の、ジニ係数をお使いになったということなんですが、確かにジニ係数で二〇〇一年以降を見ると、総理のおっしゃることもわかります。ただ、その場合でも、これはもともとは経済財政諮問会議の民間委員の考え方が総理の御発言に反映されていると思うんですけれども、経済財政諮問会議での民間委員も、若年層のジニ係数は若干上昇しているということを経済財政諮問会議の資料の中で主張しているわけであります。
それからもう一つは、二〇〇九年の経済財政白書、少し前になりますが、この中では、八〇年代以降、所得格差は緩やかに拡大しているというふうに述べているわけですね。
ですから、統計というのは期間のとり方ですから、確かに総理のおっしゃられたことは間違いではないと私は思いますけれども、もう少し長く見ると、トレンドとしては上がっている、あるいは若年層はやはり厳しくなっているということは言えるんだというふうに思いますが、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 若年層について言えば、ジニ係数においても、今、ジニ係数で統計がとれている期間でございますが、これは二〇一〇年までですかね、若年層においてはそういう傾向が見られるということであります。
○岡田委員 ちょっと議論の前提として、二〇一〇年ぐらい、あるいは一二年ぐらいまでしか統計がなかったりしますので、私は、アベノミクスで格差が拡大したとかそういう議論をきょうするつもりはないということは申し上げておきたいと思います。もう少し、周期で見たトレンドの話を、格差の問題、議論したいということで、アベノミクスでどうかというのは、これはまた別の機会に議論させていただきたいと思います。
今、総理からジニ係数というお話が出ましたので、これは私も長々と説明するつもりはありませんが、代表的な格差を示す指標というのは、ジニ係数と相対的貧困率と二つあるわけですね。
総理が御説明になったのですが、ジニ係数というのは、世帯ごとに所得を累積していく、ですから、全員が同じ所得であれば、均等分布線になるわけですね。格差が大きいほどゆがんでくるということで、総理がおっしゃった再分配所得というのは、当初所得に比べると、そのゆがみが是正されているということなんですが、もう一つの相対的貧困率というのは、全員を所得の順番に並べて、一番真ん中の人、これを所得中央値というふうにして、その半分の所得しかない人、半分以下の人を貧困というふうに呼んで、そこに何割、何%の人が入っているかであらわすものであります。
この相対的貧困率を見ますと、実はかなり上がっているわけですね。つまり、一二ポイント、一三ポイントから一六ポイントということで、この青い方が相対的貧困率、下が子供の貧困率ということですが、いずれにしても、これはかなり顕著に上がっているということは言えると思います。
この相対的貧困率について、総理、どうお考えですか。
○甘利国務大臣 いずれの数字も、安倍内閣の数字が出ていないから、民主党政権までの数字しかどうしてもないんですね。
ジニ係数は、再分配後はほぼ横の数字。相対的貧困率、つまり、中央値の半分以下の所得層が何%いるか、これも、厚労省のとるデータと総務省のとるデータで相当乖離がありまして、厚労省のデータによりますと、たしか相対的貧困率は一六・一ぐらいでしたか、OECD平均が一一ぐらいですから、それよりかなり高い、ワーストシックスに入っている。ただ、総務省のデータをとりますと、これが一〇・一なんですね。OECD平均より低いんです。
それで、厚労省のデータというのは、サンプル数は三万サンプル、総務省のデータは、サンプル数は、世帯数は六万ぐらいなんです。この差は何で出るのかというと、厚労省の調査というのが、福祉事務所を通じた調査がなされる、総務省の調査は、自治体を通じて、市町村を通じて調査がなされるということで、厚労省の調査を見ますと、三百万未満世帯の数が多く出るんです。総務省の調査はそうじゃないんですね。
これはどっちが正しくてどっちが正しくないと言うつもりはないんですけれども、調査対象とサンプル数が少しずれているんじゃないか。だから、真実は多分真ん中辺にあるんじゃないかというふうに思います。(発言する者あり)いや、そんなことないって、そんなことあるんですよ。ないんだったら、ない証拠を示してください。
○大島委員長 やじに答える必要はありません。
○甘利国務大臣 はい。
そういうことですから、答えている対象サンプルがかなり違うということで、ここは少し調査をしたいと思います。
それから、委員御指摘の、いずれにしても、ジニ係数において数字が上がっていないのに相対的貧困率が上がっているということについては、正直言って、どういうことなんだと私も聞きましたけれども、ジニ係数での変わらないということと相対的貧困率のグラフの変化というのは、正直な話が、まだ解明をできていないんです。
○岡田委員 甘利大臣、評論家じゃないんですから、責任ある大臣の立場ですから、わからないということじゃなくて、それはわかるようにしてもらわないと困るわけですね。
さっきのジニ係数の話も大臣言われましたが、私が言いましたように、もう少し長く見ると、やはりジニ係数も悪化しているんですよ。それから、若年層はやはり悪いんですよ。
だから、ジニ係数はいいというふうにおっしゃいましたが、そういうことは必ずしもそうは言えないということを私は申し上げているわけです。
しかも、相対的貧困率が上がっていることについて、よくわからないじゃなくて、そこはきちっと解明すべきだし、日本政府として国際的にはこういう数字を出しているわけですから、やはりそれが解明されることが私は先決だと思いますよ。
そして、少なくとも、総理がおっしゃったように、補正後には……(甘利国務大臣「何で民主党のときやらないんだ」と呼ぶ)大臣、やじらないでください。やじるのはおかしいでしょう、あなた。
○大島委員長 甘利さん、答弁するときは手を挙げておっしゃってください。
○岡田委員 私が申し上げたのは、やはり中期的な問題としてこれはちゃんと捉えるべきだということを申し上げているわけで、別に、安倍政権のアベノミクスを批判しているわけでもないし、今大臣は民主党政権どうだと言いましたが、これは過去二十年ぐらいの話なんですね。私は、それは政治家としてやはり真摯に取り組まなきゃいけないんじゃないか、どこの政権の話じゃないんだということを申し上げているわけですよ。
ぜひ、ジニ係数だから、余り変わっていないからということじゃなくて、統計によってこれだけのことも、相対的貧困率が出てきているわけですから、そこはやはり真剣に捉えていただいて、この格差の拡大の問題、格差が拡大している可能性が非常に高い、そういうことについて、まず事実認識として、総理、ちゃんと受け入れていただきたいんですが、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 甘利大臣が御答弁をさせていただいたのは、事実認識をちゃんと捉えるということでは全くこれは岡田代表と同じなんですよ。事実認識を捉える上においては、この統計がどういう統計であるかということもしっかりと把握しておく必要があるんだろうということであります。
では、この相対的貧困率は、先ほど甘利大臣が簡単に説明をさせていただいたわけでありますが、まさにこれはフローでやっているわけでありまして、資産等は、資産や負債の保有状況が計算に反映されていないという点があります。
そしてまた、同時に、我が国においては単身高齢者や母子家庭の増加が影響している。母子家庭が影響している、母子家庭が貧困的な状況になっているということについては、我々も認識をしなければいけないと思っていますよ。しかし、やはりそういう分析をしていく必要があるんだろう、こう思います。
そして、それがどれぐらい影響を与えているかということの中において、我々は分析をしていかなければならない、こう考えております。
○岡田委員 総理、今資産とか負債の話をされましたね。資産と負債というのは関係ないです、所得の話をしているんですから。ジニ係数だって同じでしょう。ジニ係数に資産、負債は関係あるんですか。
だから、そういう役所のつくった答弁を棒読みするんじゃなくて、所得の問題を今議論しているんですから、ぜひそこはよくお考えいただきたいというふうに思います。
やはり、きちんとした事実認識をお互い共通に持つことで、初めて政策の必要性というのは出てくるわけですから、ぜひこの問題は引き続き議論していきたい。ぜひ、政府の中でも、見解が、読み方がいろいろあるとかいうことじゃなくて、きちんとした結果を示していただきたいと思います。
次に、総理のこの格差問題についての発言の中で、総理は過去に、頑張った人が多くの利益を得ていることをただ批判することはやはり間違っていると思う、こういうふうに言われていますね。ここは私もそうだと思いますよ。むしろ、頑張って利益を得た人は称賛されるべきかもしれませんね。
問題は、下から二番目なんですが、誰にでもチャンスがある、そして頑張れば報われるという社会の実現に向け、尽力してまいりますと。これ自身はもちろん正しい。私も全く同感です。ただ、問題は、アメリカンドリームという言葉もありますけれども、全員がそういうことが、頑張ればそうなるのかということだと思うんですね。
こういう議論というのは、悪くすると、所得が少ない、あるいは貧困に陥っているのは頑張らなかった結果であるという議論に結びつきかねない、そういう問題がある。そういうふうに思うわけです。
総理にちょっとお聞きしたいんですが、総理は今内閣総理大臣。今の立場は頑張った結果のみだというふうにお考えですか。
○安倍内閣総理大臣 先ほどの答弁に対してちょっと、所得と資産についての関係でありますが、高齢者の単身がふえたということを先ほど申し上げました。
ジニ係数においては、私も何も、フローと資産、ストックとの関係については、もちろん言及していなかったわけでありますが、この相対的貧困率、それはジニ係数も同じですが、それは入っていないという中において、ジニ係数が上がっているというときにも、この説明をかつて小泉政権でもしたことがあるんですが、いわば、年をとっていけば、資産は形成されているけれどもフローはなくなっていく。しかし、単身で、これはふえていきますから、世帯が。単身世帯がふえていくから、それがふえた分、影響している可能性がある。
ジニ係数においてもそういう説明をしたこと、これは、社会保障の分を勘案する前の数字についてそういう説明をさせていただいたということで、私はお話をさせていただいたわけであります。
同時に、総理大臣に私の努力だけでなったかと。私はそれほど傲慢な人間ではなくて、これはやはり、政治というのはかなり運によって左右されるものがありますし、そもそも、いろいろな方にめぐり会えるかどうかということなんだろうと思います。同時に、私の場合は、私の父親も祖父も政治家でありました。当然、多くの方々に最初からめぐり会えるチャンスをいただいていたという大きなアドバンテージがあったのは事実であります。
それと、先ほど岡田代表が言ったように、頑張れば報われるというのは、うまくいっていない人は全部頑張らなかったというわけではもちろんなくて、頑張ったら報われる可能性がなければ、社会は活力ある社会にならないという意味で申し上げたわけでありまして、世の中というのはそんな単純なものではそもそもないわけでありまして、それを前提にお話をしているところでございます。
○岡田委員 私も随分運がよかったというふうに思うんですね、自分も。野党の代表ではありますけれども。先祖、両親、家族、そして何より、私を支持していただいた支持者の皆さん、本当にいい方々に恵まれて今日まで来れた、総理も同じ思いだろうと思います。
その気持ちに立ったときに、所得の格差がついている現状に対して、やはり何とかしなければいけない、そういうことだと私は思うんですね。今のこの日本、これは日本だけではなくて先進国共通の現象だと私は思いますが、経済のグローバル化もあって格差がだんだん拡大してきている。そのことに対して、是正していく、そこにやはり政治の大きな役割がある。
もちろん、経済成長が大事だということを私は本会議でも申し上げました。成長は大事です。しかし、その成長の果実をいかに再分配していくかという視点が政治には欠かせない、そういうふうに思うんですが、総理、そこは御同意いただけますか。
○安倍内閣総理大臣 その点については、基本的に同意をさせていただきたいと思います。まさに、再配分機能を行うのは国としての責任であろう、このように思います。
この格差については、いろいろな意見があるわけでありますが、いわば格差が固定していないということと、これは許容できない、それが一体幾らぐらいかというのは社会的な常識ということになるんでしょうけれども、この格差はやはり許容範囲を超えているというところにしないための、さまざまな税制上、あるいはさまざまな制度、社会保障の仕組み等々を使って国がそうしたゆがみを是正していく必要はあるんだろう、このように思います。
同時に、そうした再配分機能を生かすためにも、成長してしっかりとそのための果実を得るということも重要であろう、この点については基本的に岡田代表と同じではないかと思っております。
○岡田委員 それが許容の範囲かどうかということだと思うんですが、私は本会議でも、格差是正の具体的手段として、所得税、資産課税の強化ということを申し上げました。つまり、一月にまず増税しているわけですね。最高税率、所得税四〇%を四五%にした。そして、相続税も五五%になった。これは、三党合意、民主党政権のときに自民党、公明党の賛成をいただいて三党合意して、それが実際に実施されたのは一月ということなんです。
私が申し上げたのは、これではまだまだ足らないんじゃないかということで、例えば、四五%に最高税率がなったといっても、これは課税所得四千万円以上の人なんですね。そうすると五万人、増税額五百九十億円ということですから、もう少し底上げすべきじゃないか、税率を上げるべきじゃないかということを私としては主張したわけですが、総理のお答えは、税制における再分配機能のあり方については、経済社会の構造変化も踏まえながら、引き続きよく考えてまいりますというお答えだったんですね。何もお答えいただけなかったんですが。
もう一回聞きます。
やはり私は、もう少し、所得課税それから相続税について、格差是正の観点から、もう一段の税率アップ、あるいは課税対象の拡大を考えるべきだ、検討すべきだというふうに思いますが、いかがでしょう。
○安倍内閣総理大臣 今もう既に御紹介いただいたんですが、我々は既に、所得税の最高税率あるいは相続税の最高税率を引き上げました。
そこで、それが不十分だという御指摘でございますが、これは考え方の問題なんですが、四千万円の方々が四〇から四五%に上がったんですが、彼らがこれはやはり当然支払うべき額であろうと思うかどうかということも大切なんだろう、こう思うわけであります。
頑張って得た収入の例えば半分は国で半分は自分、そうなれば五〇%ということになるわけでありますが、しかし、その中で、今や経済はグローバルな時代ですから、住居を、東京ではなくても、例えばシンガポールや香港でもいい時代になってきているわけでありまして、そういう中において、これはやはり幾ら何でもちょっと高過ぎるなということを思って、そういう所得のある人材が流出してしまえば、いわば金の卵を産む人たちを失っていくことにもなるわけでありまして、そこのところの考え方なんだろう。
また、相続についても、一生懸命自分は頑張って稼いで、それは子供に残したいと思うのは、これは自然な人間の心なんだろうなと思います。しかし、そこでいわば格差が固定化しないように、相続税という手段を使って再配分を行うところでありますが、そこを果たしてどこまでにするかということについて、これは党によって考え方が違うのかもしれませんが、我々は、十分な議論を行っていく必要もある。もう既に、例えば、今までの税制の中においても、相続税について日本が高過ぎると思った人たちが、いわば住居を移すという人たちもいたわけであります。
ただ、自分のお金を残すためだけに日本という場所を捨てるのは、私もどうかと思いますけれども、果たしてそれで人生が豊かになっているのか、幸せになっているのかというのは、実は違うんじゃないかとは思うんですが、しかし、そう思う人たちも出てきているということもあります。そういうことや何かを勘案しながら検討していく必要もあるんだろう、このように思います。
○岡田委員 かつての所得税の最高税率、八五という時代もあったと思いますが、七五%という時代が長かったですよね。昭和三十二年から五十八年まで、七五%、住民税を含めるとさらにアップするわけですが。これは確かに、かなりやり過ぎだと私も思います。そこまでということを言っているわけじゃありませんが、もう少し、フラット化し過ぎたものを是正すべきじゃないかと。
自分の努力でここまで来たと同時に、やはり運がよかったということを考えれば、そこまで考え合わせれば、私はもう少し許容されるんじゃないかというふうに思うんですけれども、そういうことをお考えになる余地は、総理はありませんか。
○安倍内閣総理大臣 これは人によって考え方が違うんだと思うんですが、いわば経済の世界で財をなしていくタイプの方々は、本当に俺は頑張ったんだという思いを持っている人たちというのは結構多いんじゃないかと思うんですね。自分はほかの人よりも三倍四倍働いたんだ、それによって積み上げた富を、例えばそれを自分の子供たちに受け継がせようというときに、ほとんどとられてしまう。
ここで、いわば、それを回避するために物すごい汗を流されるよりは、これだったら払おうということで、結果として払う金額がふえる方向に、プラス方向に、もっと資産のかさを上げていって、結果として額としてはふえていくということも起こるかもしれませんが、ここのところは考え方だろう。それぞれの考え方であって、これはやはりさまざまな観点から考えたいと思います。
岡田代表が言っておられることも、私も十分理解できますよ。しかし、ここは、どれぐらいかという、国民的なというか、そういう支払いをする人たちのある程度の立場も考えないと、ただ苛斂誅求にやることになってしまうのではないかと思います。
○岡田委員 私は別に懲罰的にやれとか、そんなことは全く言っていないんですね。ここは自民党と民主党の立ち位置の違いということなのかもしれませんね。
総理も、子供の貧困問題というのは極めて大事だということは主張されています。そこはかなり共通点があると思って申し上げるわけですけれども、先ほどの相対的貧困率で、子供がいる現役世帯の貧困率が非常に高い。これは、時系列的に上がっているとかいうことは余りないんですけれども、しかし、五割を超えているというのは、OECD加盟国の中で、韓国だけは数字がないんですが、その韓国を除くと最下位なんですね。これは私は本会議でも申し上げたんですが、国としての恥じゃないか、こういう状況であるということは。これを何とかしなきゃいけないと思うんですが、総理、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 子供の貧困率が高いという御指摘でありますが、特にそれは一人親に非常にその傾向が見られるわけでありまして、そういう意味においては、一人親家庭に我々は着目した施策を打ってきているわけでございまして、きめ細かな支援が必要であるというふうに認識をしています。
このため、市町村等を中心に、子育てや日常生活に関する相談支援や、児童扶養手当の支給、仕事の紹介などを行ってきたわけでありますが、昨年には、一人親家庭の親が就職に有利な資格を取るまでの生活を支える給付金について、恒久化するとともに、非課税にいたしました。
そして、平成二十七年度予算では、一人親家庭の子供に対する学習支援のためのボランティア派遣について頻度をふやすこととしておりまして、また、親についても、よりよい条件で就職できるように、学び直しの支援を新たに行うこととしております。
こうした、いわば子供の貧困という状況に陥りやすい一人親の御家庭にしっかりとスポットを当てながら、自立できるように、自立の支援を中心に応援をしていきたい、このように思っております。
○岡田委員 子供の貧困問題については、二〇一三年に議員立法で子どもの貧困対策の推進に関する法律ができて、それに基づいて、民主党の主張というのは全部は入らなかったんですけれども、例えば、きちんと数値目標を定めろとか、都道府県に計画を義務づけろとか、そういう民主党の主張というのは残念ながら実現しなかったんですが、しかし、とにかく法律はできて、それに基づいて進んできている。
今総理も少し言われましたが、私は、文科省の関係の予算は割とよくつけられているな、十分ではありませんけれども、頑張っておられるなというふうに思います。それは文科大臣の御努力も大変あるんだと思いますね。
問題は、やはり現金給付なんですね。児童扶養手当、これが何とか増額できないかということなんですけれども、現在、四万一千二十円、子供さん一人の、一人親の場合ですね。二人目になると五千円になり、三人目になると三千円になる。総理、月三千円といったら、一日百円ですよね。第三子、三人子供がいる家庭は三千円プラスになる、つまり一日百円プラスになるという、これは何か意味あるんですか。私、余りにもこれはおかしいと思いますが、そう感じられませんか。
○塩崎国務大臣 児童扶養手当の支給期間の問題、今御指摘ございました。
今、十八歳になっておりますけれども、二十歳までという御意見があることももちろん承知はしておりますけれども、まず第一に、その財源をどうするのかということも当然ございます。
それから、高等学校等進学率が九六%を超える一方で、大学、専門学校等への進学率が七〇%程度で、高校を卒業して就職する方々もいることをどう考えるのか。
それから、奨学金の支給、授業料の減免等の教育分野での施策や、一人親の家庭の児童を大学等に就学させるための資金の貸し付けなどの、他の施策とのバランスなどもいろいろあって、今、延ばすべきだというお話と、増額をせいということで、第二子、第三子の話がございましたけれども、恒常的なその財源と、それから子育て生活支援や就業支援という、言ってみれば個別の対応などの、一人親支援施策の全体のバランスをどう考えて効果を出していくのかということもやはり考えた上で、慎重に考えていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っております。
○岡田委員 児童扶養手当の予算は確かにかなり大きい、国と地方を合わせると五千億円ぐらいだと思います。しかし、それによって、母子家庭百万人、それから父子家庭でいうと六・五万人、そういった家庭の所得が底上げされているということなんですね。
先般、私、あしなが育英資金で生活する六人の学生の意見を聞く機会があったんですけれども、やはり彼らもここを一番何とかしてもらいたいということを言うわけです。
実は、本会議で総理と意見交換というか議論した後、ですから火曜日の夜に、その意見交換した六人のうちの一人が突然私の議員会館の部屋を訪ねてきまして、私も少しびっくりしたんですけれども、手紙を置いていったんですね。ちょっとそれをポイントだけ読ませていただきたいと思うんですが、その総理の御答弁を聞いてです。
私は驚きました。私の周りには、お金がなく進学を諦めた子供たちがいます。夢をかなえるために大学に入ったのに、学費が払えず退学し、今も非正規で働いている友がいます。貧困がゆえに家庭が壊れ、死にたいとまで言っている子供たちがいます。格差が許容範囲だなんて、政府はそんな子供たちを見捨てるということなのかと、はらわたが煮えくり返る思いでした。子供たちの未来は日本の未来です。子供たちが貧困から脱し、支えられる側から支える側に回れば、必ず日本にとってプラスになることでしょう。日本各地で貧困に苦しんでいる弟たち、妹たちをどうか救ってください。
こういう手紙を残していかれたわけですが、やはり、この五〇を超える貧困率、これは何とかしなきゃいけないと総理は思われませんか。
そして、総理は、実は子どもの貧困対策会議の会長でもあるわけですね。総理大臣であるとともに、子供の貧困対策の責任者でもあるわけです。今申し上げたことで、何とか所得の底上げのために御尽力いただけませんでしょうか。いかがでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 子供の貧困という状況、まさに、子供の貧困によって教育の機会が失われる、将来に希望が持てない、そういう日本にしてはならない、このように思っております。ですから、子供の貧困対策は極めて私は重要だと考えております。
先ほど塩崎大臣が児童扶養手当について答弁させていただいたわけでありますが、五千億少し予算がかかる中において、我々もそれはふやしていくことができれば、財源が確保できればと思っておりますが、同時に、いわば二人親の家庭と一人親の家庭に注目したのが児童扶養手当でございますから、その関連もあるんだろうと思いますし、あるいは、その中で、児童扶養手当が行っている家庭と行っていない家庭、これは収入においてそうなっていない家庭もあるわけでありますが、そこで頑張っているお母さんや一人親のお父さんもいるわけでありますが、そうしたいわば消費生活水準等の差が出ないように、逆転をしないようにということも勘案する必要もあるんだろうな、このようにも思います。
いずれにいたしましても、今読まれた手紙のような状況を我々は一日も早くなくしていきたい。そのためにも、無利子の奨学金がしっかりと必要な人の手に渡るように我々も推進をしていきたい、このように思っております。
○岡田委員 もちろん、両親が二人そろっておられても貧困な家庭はたくさんあります。ただ、この数字をごらんいただくと、やはり母子家庭ないしは父子家庭の貧困率が非常に高いんですね。これを何とかすべきじゃないかということで私は申し上げているわけです。
今、財源の話も出ましたけれども、先ほどの最高税率、所得四千万円以上の方、四〇から四五%、五ポイント上げたわけですが、これで五百九十億円なんですね。ですから、全体、所得税を底上げする中で財源を得ることだって私は十分可能だと、もちろんこれだけに使うわけにはいかないということだと思いますが、ということを申し上げて、この格差の問題は引き続きいろいろな観点から、予算委員会の場でもお許しをいただいて、総理と議論をしていきたいというふうに思っております。
さて、次に移ります。
ISILによる日本人殺害問題について、検証を政府でもしておられるということですが、やはり私は、十二月三日から一月二十日までの間に、その間何ができたかということの検証が非常に重要だと思います。
岸田外務大臣にまずお聞きしたいと思うんですけれども、大臣は、十二月三日に後藤健二さんの拘束が奥様のメールで判明したというふうに答弁されていますね。三日の何時ぐらいにお知りになったんでしょうか。
それからもう一つは、結局、そのメールに政府が直接返事をするということではなくて、いろいろな国とか、関係各国とか、あるいは宗教関係者とか部族長とか、そういうところに働きかけるという道を選んで、政府が直接、そのときはまだISILだということは特定されていなかったと思いますが、そことメールを通じて交渉するということはしなかったんだというふうにおっしゃいましたが、そういうふうに決めたのはいつごろですか。
○岸田国務大臣 まず、御指摘のように、十二月三日に犯行グループからのメールについて御家族から連絡を受け、この段階で、後藤氏が何者かに拘束された可能性が高い、これを認知した次第です。
そして、十二月三日何時にこの報告を受けたかという御質問をいただきました。
済みません、今ちょっと手元にその三日の記録がありませんので、たちまち何時に具体的に事務的な報告を受けたか、ちょっと今、確たるお答えをすることができませんが、三日、連絡を受けて早々に、私もそういった事態について連絡を受けたものだと承知をしております。
そして、直接交渉しなかったことについて御質問をいただきました。
この点につきましては、今申し上げましたように、十二月三日、何者かに拘束された可能性が高いということは認知いたしましたが、その時点で、ISILによって拘束された可能性、これは否定できないものの、確たる情報には接していなかった、こういったことでありました。
そして、十二月二十日にISILによるものと見られる動画がネットに掲載された時点で……(岡田委員「一月」と呼ぶ)失礼。ことし一月二十日、この動画が掲載された時点で、ISIL関係者による犯行である可能性が高い、このように判断したわけであります。
そして、それに対する対応でありますが、後藤さんと湯川さん、このお二人を解放する上で何が最も効果的な方法なのか、この観点から、政府として全体で検討をした次第であります。
そして、その観点で検討した結果、ISILと直接交渉する、接触をするということではなくして、我が国が今日まで外交等において培ってきたさまざまな関係国、情報機関、あるいは宗教関係者、さらには部族長、こういったあらゆるルートを活用して取り組むという対応を決定し、それを実行したということであります。
○岡田委員 それをいつ決定されたのかと聞いているんです。
○岸田国務大臣 対応につきましては、十二月三日以降、こういった事態をしっかり把握した後、その時点では、現地対策本部はもうそれよりさかのぼって八月からスタートしておりましたし、外務省におきましても対策室、官邸におきましても情報連絡室、警視庁におきましても連絡室を立ち上げていたところであります。
そうした関係者と協議の上でそういった事態を把握した後、いつの時点か、何日の何時だったか、この点につきましては今把握はしておりませんが、早急に対応を検討し、方針を確定し、それを実行したということであります。
○岡田委員 十二月三日に拘束が判明して、恐らくすぐには決められなかったと思うんですね。相手が誰なのか、これは結局一月二十日までわからなかったということですが、そもそも本当にメールの相手が後藤さんなのかということも、これは奥様とのメールのやりとりを何回かする中で確認されたと思うんですね。
ですから、直後ではないと思うんですけれども、十二月のどこかの時点で、これはやはりメールの相手を、直接政府が出ていってやるのではなくて、違うやり方で、つまり今大臣もおっしゃった、私も申し上げた、関係国や部族長や宗教関係者のルートでやるべきだということを十二月のどこかの段階で決めたという理解でいいですね。
○岸田国務大臣 先ほども申し上げましたように、十二月三日以降、関係者で検討し、そして対応を決定した次第であります。
○岡田委員 それで、官房長官にちょっと質問したいんですが、官房長官、答弁の中で、これは参議院の予算委員会ですけれども、ISILはまともに交渉できる相手ではない、そういう中で、国家安全保障局、内閣危機管理監、内閣情報室、警察、外務省で協議したと。それから、最終判断は誰が行ったのかと問われて、私のもとで情報集約の会合を開いて、そこで判断した、こうお答えになっていますが、ちょっと私が不思議なのは、これは内閣として総理とか外務大臣が入らない、情報関係者の中で決めたということですか。
つまり、どういう交渉をするかというのは非常に大事なこと、命にかかわる非常に大事な分岐点、私は間違った判断をしたと言うつもりはないんですけれども、非常に大事な判断を官房長官が情報関係者だけで決めたということなんですか。
○菅国務大臣 ちょっとその前に申し上げたいんですけれども、十二月三日の日に何者かに拘束されているというメールが入ったんですよね。その交渉について、後藤夫人が民間の専門家の方に相談をされて、対応をずっとしてきているんです。それに対して政府は、後藤夫人を警察、外務省でサポートして、ずっと支援してきたんです。
そして、十二月のたしか十九日だったというふうに思いますけれども、夫人と犯人側とのやりとりの中で、後藤さんが確かに拘束されているという心証を持ったのが十二月のたしか十九日であります。そして、そこからまたその民間の専門家の方を通じて後藤夫人がメールを交換している、それについて、もちろん政府はサポートさせていただいてきている。
そういう中で、しかし、具体的にその犯罪者というのはISILだということの確証を得ることができなかったんです。
結果として、一月二十日、あのように大きな、動画によって発信をされて、そういう中で、先ほどの岡田委員の話になるわけでありますけれども、私ども、私のもとに三人の官房副長官、そして、これは当初から対応しておりました内閣危機管理監、そして国家安全保障局長、さらに内閣情報官、それと外務省、警察庁、専門家の中でさまざまな対応策について相談をして、その方向性をそこで見出して、当然、総理に御報告をさせていただいて、ISILというのは、先ほど私が申し上げましたけれども、まさにテロリストであって実態が定かでないと。
そういう中で、十二月三日から、最も影響のある効果的な対応策は何が必要かという中で私どもはさまざま相談してきたわけであります。そういう中で、ヨルダンを初め周辺国、さらには宗教の指導者、部族の長、そうした人たちとの、一番効果的な対応はそこではないかなということをそこの会合で判断をして、総理に当然御報告をさせていただいて、私どもが対応してきたということです。
○岡田委員 ですから、十二月十九日、あの映像が出たのは一月二十日ですから、約一カ月あったわけですね。この間、直接コンタクトするんじゃなくて、関係国や部族長あるいは宗教指導者、そういうあらゆるルートを伝って何とか後藤さんを救出できないかという努力を政府としてされたというふうに思うんです。
一つ私がよくわからないのは、現地の対策本部に十数名増員した、それは一月二十日以降だったというふうに外務大臣は答弁されているんですね、国会で。そういう部族長や宗教関係者とコンタクトをとろうとすれば、やはり土地カンのある専門家を早く現地に投入して、そして、物量作戦じゃありませんが、少しでも多くの人がしっかりとコンタクトすべきだというふうに思いますが、なぜ、二十日になってから十数名の増員、それまでは増員していないということになったんでしょうか。いかがでしょうか。
○岸田国務大臣 もともとヨルダンの現地対策本部には、シリアから退避してまいりましたシリア大使館の関係者、そしてもともといたヨルダンの大使館の関係者、このアラビア、イスラムの専門家が常駐しておりました。
現地対策本部はその体制で対応していたわけですが、一月二十日以前も、外務省本省あるいは周辺の在外公館からは、例えばトルコに対しまして、シリアに国境を接するトルコに出張ベースで数名ずつ何回かに分けて人員を派遣し、情報収集等を行いました。合わせて十数名になりますが、人員を派遣して、情報収集を行う。また、警察庁におきましても、シリア周辺国に人員を派遣して、協力要請とか情報収集を行う。こういった形で、さまざまな働きかけ、そして協力を得ていたということであります。
ですから、現地対策本部の人員という意味においては、一月二十日以降人数をふやしたということでありますが、それの外側で、外務省あるいは周辺の在外公館、あるいは警察庁、さまざまな関係者が周辺国に出張ベースで出かけていき、働きかけを行い、協力を得てきた、こういった対応で臨んだ次第です。
○岡田委員 ヨルダンが最も重要な国である、そう考えたからこそ、そこに現地対策本部を設けたと思うんですね。その現地対策本部の増員ではなくて、トルコや周辺国、それはわかりますよ、だけれども、どうして一番大事だと考えたヨルダンの増員がなされなかったのかというのが、私にはわからないんです。説明してもらえますか。
○岸田国務大臣 ヨルダンに現地対策本部を置いた理由ですが、今回のこの事案、シリアにおいて発生した事案でありますが、シリアにおいては、他の主要国も同じでありますが、治安の悪化に伴って大使館が退避しておりました。現実、このシリアには我が国の大使館は存在しないという状況でありました。そして、そのシリア大使館がヨルダンに退避している、こういった状況でありました。
そうしたことに加えて、やはりヨルダンというのは、中東地域における情報拠点の一つとして評価されている国であり地域であります。こうした諸点を勘案した上で、我が国としましてはヨルダンに現地対策本部を置いた次第であります。
そして、その人員の増強につきましては、先ほど申し上げましたような対応に基づいて、具体的な増員は一月二十日以降とさせていただいた次第です。
○岡田委員 大臣が何を言っているかよくわからないんですが、大事な国だったらもっと早く増員すべきだ、そこはやはり私は、危機感が足らなかったんじゃないかというふうに思いますね。周辺の国にはそれぞれ人を張りつけたかもしれませんが、もっとヨルダンにも集中的に早く人を張りつけるべきだったんじゃないかというふうに思います。
この点はなお議論させていただきたいと思いますが、官房長官にちょっとお聞きします。
先ほど、十二月三日に後藤さんの拘束がわかりました。官房長官、何時に官邸に入られましたか。
○菅国務大臣 私は当時、解散の選挙中でありました。自民党本部の要請に基づいて私は遊説に出向いておりましたので、私が官邸を留守にする間、内閣法に基づいて、定めによって世耕副長官に、私の職務を代行できるというものがありますので、副長官にお願いをして、私は不在をしておりました。ただ、常に電話連絡はとっていたということであります。
○岡田委員 やはり、拘束がはっきりわかって、直ちに官邸を中心に対応をとろうとしたら、官房長官は十二月三日、いた方がよかったんじゃないですか。
この日の日程を見ますと、朝から、静岡県、愛知県で十カ所街頭演説をされて、最終的には十八時、JR名古屋駅の新幹線口、ビックカメラ前で演説をされていますから、恐らく官邸に入られたのは早くても二十一時前ぐらいじゃないかと私は思うんですね。
もし官邸に官房長官がおられたら、もっと早く対応できたんじゃありませんか。反省はありませんか。
○菅国務大臣 これはぜひ御理解をいただきたいんですけれども、官房長官不在のときは、それは内閣法の定めによって官房副長官はその職務を代行することができるわけでありますから、私はそうさせて、指名をして、当時、参議院の世耕副長官に、在京し、対応をできるよう手当てをしていたということであります。そして、夜間においても連絡はしっかりできるようにしていたところであります。
それと同時に、十二月三日というのは、後藤さんが拘束された、本当にそうかどうかということはその時点ではわかっていなかった、十二月三日、拘束されているというメールが来たわけですから。先ほど申し上げましたけれども、十二月十九日になって、それは後藤さんだということが判明したんです。このことも理解をいただきたい。
○岡田委員 官房長官、えひめ丸事件、御存じですよね。森政権のときに、森さんは横浜でゴルフをしていた。官房長官は、福田さんは群馬県で、離れていた。結局、総理と官房長官がともに総理官邸から離れていたということの反省に立って、官房長官、これは暗黙のルールというのはあったんじゃないですか。つまり、官房長官は基本的に官邸周りにいる、離れるときは総理がかわりにいる、基本的にはそういうことじゃないですか。
そういう暗黙のルール、私、これは暗黙かもしれませんが、非常に重要なルールだと思う、国家の危機管理として。いざというとき、何か起こったら、地下のオペレーションルームにおりていって指揮をとらなきゃいけないでしょう、官房長官は。その人が遠くに離れていて、総理も遠くに離れていて、それで国家の危機管理ができるんですか、皆さん。どうですか。
○菅国務大臣 私は、申し上げましたように、内閣法において、官房長官不在について、あらかじめ官房長官の定めるところによって副長官がその職務を代行する、そういう規定をされているところでありますし、それに基づいて私は世耕副長官を在京、対応できるようにしておいたわけでありますし、その日に後藤さんが、十二月三日にですよ、完全に拘束されているということは、三日の日はわからなかったんですから。事実確認ができたのは十九日ですから。
○岡田委員 結局、翌日の十二月四日も官房長官は朝から茨城県に街頭演説に出かけておられますよね。選挙期間中で官邸におられたのは、閣議をやった十二月九日の午前中。記者会見もその日だけは官房長官がやっておられますね。それだけ官邸をずっとあけ続けていた。
後藤さんが、それは、はっきりしたのは十九日かもしれませんが、あらゆる情報を収集して、どうなっているかということを官邸はまさしく必死の思いでやっていたはずだと私は思うんですよ。それから、先ほど外務大臣も言われていた、部族長や宗教関係者やいろいろな国との関係で情報を集めて、それはいろいろな情報がありますから、正しい情報、間違った情報、そういうものをやはり精査して、何とかして人質の命を助ける。そのために官邸は必死の覚悟でやっていたと私は思うんですが、それにしては、毎日毎日、街頭演説ですか。街頭演説されていたんですか。
いつそういう作業をやられたんですか。夜ですか。どうして昼間おられないんですか。お答えください。(発言する者あり)
○菅国務大臣 ちょっと静粛にしてくださいよ。
御夫人が、旧知の民間の専門家、その方を通じてやりとりをしていたんです。そして、十二月十九日になって、そのやりとりの中で、後藤さんが拘束されているという心証を持ったのが十二月十九日なんです。
ですから、それまでの間に政府として、私は当時選挙中ですから選挙応援に行きました。しかし、官邸には、私の職務を代行できるという内閣法の定めに従って、世耕副長官がしっかりと対応した、このように思います。
○岡田委員 この間の奥様と相手とのメールのやりとりの、これもいろいろなアドバイスを政府としてはしていたと思うんですね、そういう作業。それから、先ほども言いました、関係国との情報収集や分析、部族長、宗教関係者、もう必死になって日本国政府としては対応していたはずですよ。そのときにその中心になる官房長官が昼間いないということが、私には理解できないんですよ。はっきりまだ固まっていなかったからいいという話では私はないと思いますよ。
総理、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 もう一度官房長官からも答弁をさせていただきますが、では、官房長官の仕事は何かということなんだろうと思います。
そして、こうした事態が起こって、まだISILかどうかわからない段階においては、基本的には危機管理監が対応します。これは当たり前なんですよ。それは、日々いろいろなことが起こっているわけですから、実際に。世界じゅうでいろいろなことが起こっているんですよ。そこで、定かではないという情報、邦人がいなくなったという情報なんというのは結構あるんですよ。でも、その中でどう対応していこうかということは、これは危機管理監のところで対応していきます。
今回のことについては、これは後藤さんの奥様から御連絡があった。でも、そこは……(発言する者あり)済みません、少し静かにしていただけますか、山井さん。私が一生懸命答弁しているんですから。(発言する者あり)
○大島委員長 静かに。
○安倍内閣総理大臣 よろしいでしょうか。
そこで、そういう中において、官房長官のところにももちろん情報は入っておりますが、選挙中ではありますが、私のところにもずっと秘書官がついているんですから、これは情報が入ってきます。それは、メールも電話もあるんですから、常時。ということにおいては、オペレーション自体は全く何の支障もないわけでありますし、そこで次々とオペレーションを進めていくという指示を出さなければいけない状況では、その段階ではないんですよ。残念ながら、その段階ではかなり情報も限られていましたし、その段階ではないわけであります。
そこで、またISIL側とも、まだISILかどうかというのはわからないわけですから。そもそも、政府としての立場というのは、テロリストとは交渉しない、これが基本的な立場です。しかし、接触等については、これは、その段階ではISILということが明らかになっていないわけでありますから、明らかになっていないのにそこに接触して聞くというのは、こんなばかげたことはもちろんしないわけでありますが、そこで、部族長等々から我々はさまざまな情報収集を展開していたわけでありまして、その中で、まだ、残念ながらなかなか収穫がないという状況が続いていた、こういうことであります。
○岡田委員 ですから、相手ははっきりしないけれども、ISILの可能性が高いということは容易に想像できたと思うんですね、後藤さんの行った先から見れば。そういうときに、しかも公務じゃないんですよね、選挙応援ですからね。私は、その感覚がわからないですよ。それでいいと開き直るならいいですよ。だけれども、最終的に、国民の命、そこに責任を持つ、危機管理の責任を持つのは総理であり官房長官じゃないですか。その程度の認識でいいんですか、本当に。
私は、選挙期間中に記者会見で申し上げたことがあります、残念ながら記事にはなっていませんが。やはり官房長官があれだけ選挙で官邸を離れているのはいかがなものかと。
例えば、あのときに、エボラ熱の感染が国内に広がる可能性がありましたね。北朝鮮のミサイルの話も、どうなるか、いつ何が起こるかわからない。もちろん、国内外のテロだってわからない。そういうさまざまなリスクがある中で、ずっとのんきに、昼間、連続して官邸をあけている。(発言する者あり)公務でない、選挙をやっていたという意味で言ったんですよ。官邸をあけていた、そういう感覚が私はわからないと申し上げているんです。いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 それは、危機管理がちゃんとできているかどうか、民主党がそんなことを言えるんですかと、私は、そういう気持ちにもなりますよ、はっきりと申し上げてね。(発言する者あり)
○大島委員長 静かに、静かに。
○安倍内閣総理大臣 私は、先ほどえひめ丸の例を挙げましたが、あのとき私は官房副長官で、東京でそれを担当しておりました。ですから、実際、私はそのとき官房副長官としてオペレーションを担当していましたが、これは、官房長官の、私は代理として職務を果たしていたと思いますよ。その中において、あのとき、外務省に対しても、あるいはまた海保に対しても、さまざまな指示を出しておりましたし、アメリカとの連絡において、官房副長官としてその役割は果たしておりました。
ですから、官房長官が離れていたから官房副長官ではだめだということではなくて、これは法律にそうなっているわけでありますから、だから、官房副長官というのは、そういう覚悟を常に持ち、準備をしながら、そういう体制を整えながら、当然、官房長官や総理と直ちに連絡をとれるようにしていくということであろうと思います。
また、選挙でありますから、安倍内閣の考え方を国民に、選挙という機会を通じて国民に伝えていくということも、これは政治家としての側面もあるわけでありますから、それは一つの、当然、民主党にとってはそれは、官房長官が選挙で回るということは嫌なことかもしれませんけれども、そこは、仕事との関係においては何ら支障はないということははっきりと申し上げておきたい。
その段階で官房長官を中心にオペレーションをしなければいけないという状況では全くないわけでありますから、そこについて、そういういわば官房長官がまるでぼうっとしていたかのごとくの御指摘は私は全く当たらないし、それは失礼な指摘ではないか、このように思います。
○岡田委員 総理は言いたいことを言われましたけれども、後でよく精査されて、削除された方がいいとは思いますが。
二年前の選挙のとき、藤村官房長官、みずからの選挙も非常に厳しかったんですが、藤村さんは選挙期間中、一日しか地元に戻っていないですね。そのときには総理がかわりに官邸にいたと。彼は落選しました。もちろん、それが理由で落選したわけではないかもしれませんが、しかし、そのぐらいの責任感はあったということですよ。責任感はあったということなんですよ。それが普通なんです。
今までの自民党の歴代内閣、選挙期間中どうですか。官房長官が選挙で走り回っているという内閣はありますか。今回初めてじゃないですか、そういうことは。
集中的なオペレーションをしていたわけではないというふうに総理はおっしゃったので、では聞きますが、もし東日本大震災並みの地震があったときに総理も官房長官もどこか遠くに離れていたら、誰がオペレーションルームに入って各大臣に対して指示するんですか。副長官がやるんですか。それはやはり、官房長官が必要だからこそ、官房長官の存在があるんじゃないですか。副長官で十分できますか。どうですか。
総理、答えてください。
○菅国務大臣 まず、副長官はできます。このことは明言しますよ。先ほど来私が申し上げているじゃないですか。内閣法の中で、官房長官が不在のときはあらかじめ官房長官が定めるところによって副長官がその職務を代行する旨が規定されているわけですから、それに基づいて私はしっかりと対応をしていたわけでありますので、官房副長官が指揮できるということは、これは明言します。
それと同時に、岡田委員も外務大臣をやられたと思います。邦人保護、これは危機管理監、それと外務省で対応するということが基本ですよね。
それで、その時点において、先ほど来申し上げていますけれども、十二月三日の時点においては、拘束されたの一報だけで、それが事実かどうかということさえ確認できていなかったわけですから、それで、ありとあらゆるところで情報収集をしていた。それと同時に、メールも、頻繁に交わすということではなくて、これはプライバシーから言えない部分がありますけれども、後藤夫人は旧知の民間の専門家の方にお願いをしていたわけでありますから、そして、最終的に後藤さんが拘束をされているということがわかったのが十二月十九日ですから、そこは私は危機管理に全く問題ないと思います。
○岡田委員 私が申し上げたのは、何が起こるかわからない、これから国内のテロだって起こるかもしれない、そういうときに総理も官房長官もいなくて、それで危機管理に万全を尽くしたと言えますかということを聞いているわけですよ。
総理、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 そのために、例えば危機管理監が、当面のオペレーションについては、さまざまな邦人保護等については危機管理監がいるわけであります。
そして、例えば東日本大震災のようなことが急に起こったらどうかと。その段階では、もちろん、例えば私が離れていたら、総理大臣である私が責任者ですから、基本的に。もちろん、官邸において、官房長官は指示を出すことができますよ。でも、それは基本的に総理大臣が指揮をとるわけですよ、どこにいたって。どこにいたってですよ。
私の場合は、多くの秘書官が大体ともに帯同して行っておりますから、そこで直ちに連絡をとるようにしておりますし、自衛隊等が常に待機、ヘリコプターが待機をして、直ちにヘリコプターで帰京できるような態勢を常に整えながら行動をしているわけでございます。そういう段階においては、まさに総理大臣が直ちに帰って対応する。あるいは、外にいても、官邸にいなければ何の指示も出せないという状況ではないんです。
ですから、余り形式主義的に陥って、結果として逆に結果を出せないということになり得るわけですから、官邸にいる人しか指示を出せないわけではないんですよ。私が外にいても指示を出せるんですよ、これは。たとえ外国にいたとしても、私は指示を出しますよ。今までも指示を出していました。
ですから、そういう意味においては、危機管理上全く問題はなかったということははっきりと申し上げておきたいと思います。
○岡田委員 まあ、私は、拍手している人の気が知れませんね。私も副総理として官邸におりましたが、ちょっと感覚が違い過ぎます。
それでは、総理、確認しますが、これからも総理、官房長官がともに官邸を離れるということは普通にあるんだということですね。いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 それは、今までの、ずっとこの二年少しの官邸の対応を見ていただければ明らかなわけであります。あれは選挙の期間だからああいうことがあったわけでございますが、それ以外においては、まあ大体。しかし、でも、それが絶対だめかといえば、そうではないわけでありますし。
基本的に、これは極めて形式主義的におっしゃっているなと。私も、第一次政権と比べれば、三年以上総理大臣をやっておりますし、また、官房長官を一年、官房副長官を三年やっております。これは形式主義に陥るのが一番よくないんです、ある意味、官僚主義的にね。そこは、どこにいても、やはり基本的には総理大臣が指示を出すんですよ、官房長官がいようと副長官がいようとね。
ですから、大切なことは、総理である私が指示を出す。今回のことについても、基本的には、私のところに情報も入っていましたし、私から最終的な指示を、官房長官が報告した上において指示を出しているわけでありまして、官邸にいなければ何もできないというようなことは、基本的には、もちろん官邸に帰ってきますよ、しかし同時に、官邸にいなくたって連絡ができないわけではありませんし、それはもう当たり前のことなんだろうな、このように思いますよ。
ですから、例えばアメリカですら、一時、あの九・一一のときには、大統領も副大統領も両方ともワシントンを意図的に離れるわけであります。それは、むしろ意図的に離れている中において、上空から指示を出している。日本はそこまでいかないわけでありますが。これは事実としてそうなわけであります。
そのように、我々は、あの選挙のときはそうだったわけではもちろんありませんが、ですが、形式主義的に、官邸にいなければ仕事ができない、いわば官邸にいる人がやらなければいけないということではないということと、さまざまな危機対応には危機管理監が対応する、これが基本であるということは知っておいていただきたい、このように思います。
○岡田委員 総理、言うに事欠いて、アメリカのテロのときの話はちょっとおかし過ぎますよ。あれは、ワシントンに二人いて狙われる可能性がある、そういうことでばらばらにワシントンを離れたわけですが、きちんとハード的に対応できるというものがあったわけじゃないですか。日本にはそういうものはないわけでしょう。そして、オペレーションルームにいれば、それはいろいろな情報が集まるし、指示も直ちに出せる、そういう仕組みになっていますよ。それにかわるものがほかにありますか。だからこそ、やはり官邸周りに総理か官房長官か、どちらかいなきゃいけないことになっているんじゃないですか。
その程度の認識ですか、本当に国家の危機管理について。私は全く理解できないですよ。それで大丈夫ですか、これから。いろいろなことが国内で起こるかもしれませんよ。
総理に、危機管理監なり官邸の中で、やはり官房長官か総理のどっちかは官邸にいるべきだというアドバイスをした人はいませんか。私はそういう人がいなかったらおかしいと思いますよ、それだって。そういうことも含めて、ぜひしっかり検証してください。私、この問題はさらに議論していきたいと思います。
何かもし一言あればおっしゃってください。
○安倍内閣総理大臣 いわば内閣法があるんですから、内閣法にのっとって指示を出せる人がいるわけですよ。
まさに、官邸にいなければ対応できないというわけではないですよ。今まで私は、いろいろな外国や何かに行っていますが、そこからちゃんと指示を出しているんですから。イナメナスのときだってそうですよ。最終的に指示を出したのは、私が指示を出しているわけで、海外から指示を出して、そのとおり対応しているわけであります。形式的には官房長官が官邸から出すということもあるかもしれませんが、私がちゃんと官房長官に指示をして出しているわけであります。これはそういうものなんですよ。
ですから、その中において我々はしっかりと対応できていて、瑕疵はなかったということははっきりと申し上げておきたい。形式だけ整えておけばいいということではないわけでありまして、法的にはしっかりと我々は対応できているわけでありますし、実際のオペレーションにおいてもそれは問題なかったということは申し上げておきたいと思います。
○岡田委員 私も外務大臣を経験して、海外にいるときにいろいろな情報に接するということは何度もありました。しかし、本省にいてさまざまな情報に接するのと、海外にいるのではやはり違うんですよ、それは。
私、総理と官房長官の危機管理についての認識をきょう聞いて非常に驚きましたが、国民の皆さんはどう思われたでしょうか。きょうは、この問題はこの辺にしておきたいと思います。
安全保障法制、時間が非常に限られてしまいましたので、総理、徴兵制について。つまり、集団的自衛権行使をすると自衛隊員のリスクが高まる、だから自衛隊を希望する人が減って徴兵制になるんじゃないかという議論がありますよね。それに対して総理は、徴兵制は憲法上許されるものではない、この解釈に変更の余地はありませんというふうにお答えになっています。きのうもその趣旨の答弁をされていました。
憲法解釈の余地はないんですか。
○安倍内閣総理大臣 憲法解釈上、政府としての立場は定まっておりまして、苦役にこれは匹敵するということであり、これはもちろんさまざまな議論があるところかもしれませんが、政府においては、これはもう議論の余地がないという考え方でございます。徴兵制はいわば憲法違反になるということははっきりと、重ねて申し上げておきたいと思います。
○岡田委員 今、政府と言われましたが、安倍内閣においてはと言うべきでしょうね。
もし、いや、徴兵制は憲法は認めているというふうに主張する総理大臣が出てきたらどうされますか。
○安倍内閣総理大臣 いや、これは安倍政権だけではなくて、今までの政権においても、これは憲法上許されないという答弁をしてきているわけであります。
○岡田委員 もちろん国会でも、徴兵制は憲法は認めていないという議論は何度もなされています。本人の意に反する苦役を科することはできない、憲法十八条に反するという解釈ですね。だけれども、内閣が憲法解釈を変えたという悪い前例をつくられたんですよ、総理は。集団的自衛権の行使は認められないというのは歴代内閣がはっきり言ってきたこと、それを一内閣でお変えになったわけでしょう。
では、徴兵制は憲法違反だという解釈を変える内閣が将来出てこないという保証がどこにあるんですか。何を根拠にそんなことを言われているんですか。お答えください。
○安倍内閣総理大臣 今回の我々の憲法解釈の変更については、これは、昭和四十七年の政府のつくった答弁書、これは閣議決定を経ていないものでありますが、との関係においては、基本的な規範、基本的な考え方を変えるものではないということであります。
それといわば徴兵制との関連でいえば、それはまさに苦役に当たる、そういう明々白々な解釈をしているわけでございます。ここに大きな違いがあるわけでありますし、そもそも、徴兵制が始まるというのは、かなりこれはためにする議論なんですよ。集団的自衛権と徴兵制というのは何の関連もないわけでありまして、世界じゅうの国がほとんどみんな集団的自衛権の行使を認めているわけでありますが、むしろほとんどの国が徴兵制ではないわけでありますし、逆に、国民皆兵のスイスは集団的自衛権は行使をしないわけですよ。ですから、全くそれは関連がないということははっきりと申し上げておきたい、このように思うわけでございます。
○岡田委員 私も、徴兵制を憲法が許しているとは思っていないんです。ただ、議論としてはそういう議論はありますね。例えば、良心的兵役拒否というものを入れれば憲法十八条はクリアできる、そういう議論だってありますよ。だから、いろいろな議論があり得る。
問題は、やはり、今まで国会でも議論を重ね、歴代内閣が主張してきてでき上がっている解釈を、ほとんど国会の議論もなく、そして、あの集団的自衛権はどうですか、七月一日に、与党協議ができたその日のうちに閣議決定した。国会で事前に議論しろということに対して、事後的には若干ありましたけれども、ほとんど議論もない、国民の理解もない、そういう中で一内閣が変えたという、つまり憲法の解釈を一内閣が勝手に変えられるという悪い前例を残したんじゃないかということを私は言っているわけですよ。どうですか。
○安倍内閣総理大臣 全くこれは逆ですね。
はっきりと申し上げておきたいんですが、まず、憲法は自衛権について明記をしていないことから、憲法解釈が重要になってくるわけでありまして、これまでの自衛権をめぐる政府の憲法解釈は、今回のように、何回にもわたる与党協議を経て、そして閣議決定を経たものでは全くありません。多くは国会答弁によってのみ形成されてきたものでありまして、いわば、今までの解釈の根幹をなしてきたと言われる、先ほど例として挙げましたが、昭和四十七年の憲法の解釈についての見解、昭和四十七年の見解についても、参議院の決算委員会において議員の質問に答えて資料として提出したものであり、当然、一回の与党協議も行っていなければ、閣議決定も行っていないわけであります。
ですから、当然、今回は我々は、自衛隊の武力行使にかかわることでありますから、そして憲法解釈の一部変更にかかわることでありますから、何回にもわたりこれは与党において検討を重ね、また、国会においても、岡田委員とも私は相当の議論をしたと思いますよ。そういう議論を重ねた上において、閣議決定を経て、そしてこの国会において関連の法案を出したいと考えているところであります。
もちろん、先に閣議決定を行わなければ法案を出すことはできないのは、これはもう自明の理である、このように思います。
○岡田委員 総理、今まで閣議決定されていなかったと言いますけれども、質問主意書という形で何度も質問されて、閣議決定されていますよ、何回だって。国会で議論しているだけじゃないんですよ。
そして、国会の議論と言われましたけれども、私、確かに昨年、予算委員会で六回か七回、この問題を総理と議論していますけれども、総理の答えは、少なくともあの懇談会の結論が出るまでは、今、懇談会で議論しているから、お答えがこれ以上はできませんというお答え。その後、やっと質問したら、いや、今、与党協議していますから、これ以上は今お答えできませんという答えだったんです。だから、ちゃんとした議論、本当のコアのところの議論ができていないんですよ。そして、いきなり与党協議が調って、閣議決定でしょう。
こういう乱暴なやり方を認めたら、私は本当に心配しているんですよ。それは、安倍総理はいいかもしれませんが、将来的に一内閣がいきなり憲法解釈を変えてしまうということが起こるんじゃないか。そういう悪い前例をつくったという認識がないことが私は信じられないんですよ。いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 まず、閣議決定をしていない、四十七年の政府の解釈については、あれは閣議決定していないのは事実ですよ。その後、答弁主意書に対しては閣議決定していますが、たまたま答弁主意書があったからですよ。でも、政府の……(発言する者あり)
○大島委員長 御静粛に、御静粛に。
○安倍内閣総理大臣 済みません、少し静かにしていただけますか。
それで、いわば政府の解釈を決定したのは、これは閣議決定をしていないわけですから、これは厳然たる事実じゃないですか。その段階でもう政府の解釈は決まっているんですから。それに対する質問があって、それに対する答弁書は閣議決定という手順は経ますよ。でも、その前に既に政府の意思は決まっているんですよ、閣議決定を経ないで。今回は、閣議決定を経て決まったということ。
そして、岡田代表とのやりとりの中で、私がそんな、全てを答えずに、これから決めますなんということ、そういう、これからまさに決まりますという答えをしたこともそれはありました。しかし同時に、集団的自衛権について行使はどこまで許容するかということについては、岡田代表との答弁の中で、私は、個別的自衛権においても必要最小限度ということが決まっているし、既に旧三要件というものもある、武力行使の。そういう制限があるわけだから、集団的自衛権においてもそういう制限がかかってくるという、その後の協議の基本となる答弁は、私は岡田代表のときにこの答弁をしているわけであります。
そういう意味においては、あの国会において重要なやりとりを、残念ながら、あの段階で多くのマスコミはこの答弁の重要性に気づいていませんでしたから、それは記事を書いていなかったんですが、岡田代表は私の答弁に相当程度反応されていたんだろうと思いますが、あれはまさに岡田代表とのやりとりの中において、基本的な、その後の考え方について、形づくるものは、やりとりはさせていただいた、このように思っております。
○岡田委員 総理が一般的な集団的自衛権容認から限定容認ということではっきり言われた答弁は、私もよく覚えています。そこは一つ評価しますけれども、全体としては、まだ懇談会で議論しているということでほとんどお答えいただいていないということは申し上げておきたいと思います。
もう時間も中途半端になりますので、もう一つちょっと確認しておきます。
総理は最近の答弁の中で、私は五十四カ国を訪問し、二百回の首脳会談を行い、ほぼ全ての首脳に集団的自衛権の行使を含む積極的平和主義について理解と強い支持をいただいたところです、こう言われていますね。これは本当ですか。つまり、二百回の首脳会談で、ほとんど全てについて、集団的自衛権を含む積極的平和主義について理解と強い支持を得られたのでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 理解と強い支持、必ずしも強い支持という明確な言葉ではない場合もありますが、しかし、理解や、あるいはまた歓迎するという言葉も含めてそういう表現をさせていただいたわけでございますが、これはほとんど全ての国々から理解や、いわば強い支持と言ってもいいんだろうと思いますが、そうした反応をいただいております。
つまり、それに反対する、日本のそういう方向について反対をするということを明確に言った国はほとんどなかったという、まあ、中国との首脳会談においてはこれについてそういう反応ではもちろんございませんが、基本的には多くの国でそうだったということは間違いないだろう、このように思います。
○岡田委員 私は非常に不思議に思うんですけれども、閣議決定されたのが七月一日ですよね。ですから、総理の任期の中で、一年半ぐらいは閣議決定前。その後、閣議決定されて。だから、この二百回の首脳会談のうち、かなりの部分は閣議決定前なんですよ。そのときに集団的自衛権について、さっきの限定か全面的かということは結論が出ていない段階で、どういう説明をされて強い支持を得られたんですか。お答えください。
○安倍内閣総理大臣 これは積極的平和主義の説明でありますから、集団的自衛権そのものの説明ではありません。いわば集団的自衛権の詳しい説明をできる時間もあれば、これは、紙で渡すだけのこともあるわけであります。
それと、いわば、二百回にわたる首脳会談と申し上げたんですが、これは、その後、同じ国と何回もやっておりますから、そうした意味におきまして、結果として、私が会った首脳のほとんどについては、日本の進むべき道について理解をされている。
そして、閣議決定等々をする前から、閣議決定をするという方向を目指すということについても説明を既に始めているわけでございまして、そういう意味においては、私が言っていることに間違いはない、このように思います。
○岡田委員 先ほどの総理の御答弁で、ですから、私に対して限定的な集団的自衛権行使だというふうに言われる前に、もし首脳会談で、いや日本は実は一般じゃなくて限定的な行使なんですよと説明していたら、それは明らかにおかしいですよね。
それから、今、紙で渡すとかいろいろ言われましたが、集団的自衛権の行使を含む積極的平和主義について理解と強い支持をいただいたところですと総理は答弁されているんです。紙で渡した話じゃなくて、強い支持をいただいたと。これは、では、言い過ぎです。撤回されますか。
○安倍内閣総理大臣 いや、それはもう先ほど申し上げておりますように、それは私が答弁したとおりでございます。それが違うということであれば、違うという証拠を出していただきたい、このように思うわけでございます、ここでそういうことをおっしゃるのであれば。我々は、大体、ほとんど説明をしているわけでありますし。
それと、集団的自衛権の行使ということについても、今おっしゃったように、これは限定的なものであるという詳しい説明ではなくて、いわば集団的自衛権の行使を今までは日本は一切認めていなかったけれども、いわば、集団的自衛権の行使を認めるという憲法解釈の変更も含めて、我々は、地域の平和と安定のために、抑止力の維持向上のために、貢献できるようにしていきたい。
それと、積極的平和主義の基本的な考え方についても説明をしているわけでありまして、これは、あくまでも集団的自衛権を含む積極的平和主義の考え方でありまして、日本はもっとしっかりと国際社会の中において地域の平和と安定を維持するために貢献をしていくということを発信していく、あるいは、実際に行動でそれを示していくということも含めて、今まで以上にこういう説明を行っているわけでございまして、その中において、それは、例えばこういうことも行いますよ、こういうことも行いますよ、こういうことも行いますよということの中の一つとして説明をしているわけでございますし、私の答弁も、集団的自衛権の行使を含む積極的平和主義について理解と高い支持をいただいている、このように申し上げたわけであります。
○岡田委員 総理、限定的集団的自衛権と限定なしの集団的自衛権というのは本質的に違うはずですよね。それを何か余り違わないような今の御答弁だったので、私はちょっとそこも理解に苦しむんですが、いずれにしても、ちょっときょうは残念ながら中身に入らなくて入り口で終わってしまいましたけれども、ぜひ、大事な話ですから、これからも時間をいただいて議論していただきたいというふうに思います。
終わります。