「年金情報流出」徹底的な審議求める 情報管理にあきれ果てた… (夕刊フジコラム「ズバリ直球」15年6月11日)
日本年金機構の個人情報流出事件は、収まる気配がない。まず、サイバー攻撃を行って、個人情報を流出させた犯人は許し難い。捜査当局は犯人を迅速に特定して、きちんと処罰を受けさせるべきだ。
同時に、125万件もの情報流出を防げなかった、年金機構の情報管理にはあきれ果てた。不正アクセスを許したのは、ウイルスが入った添付ファイルを開くという、標的型メールの古典的手口だった。パスワードの設定もされていないパソコンも多かった。今どき、小学生でも注意するのではないか。重要情報を取り扱っている意識が欠如している。
政府の対応も問題だ。年金機構のウイルス感染を知った厚労省の担当係長は10日以上も上司に事態を伝えず、塩崎恭久厚労相に報告されたのは感染から20日後とされる。年金機構の理事長が事件公表の記者会見をしたのは、それからさらに4日後だ。事の重大性を把握せず、いたずらに時間を浪費したと言わざるを得ない。年金機構も政府も、その責任は極めて重い。
再発防止のためには、きちんと国会で事実関係を明らかにする必要がある。来年1月から導入予定の共通番号(マイナンバー)制度に対する、国民の方々の不安も高まっている。衆院で2日、参院で1日の集中審議が行われたが、まだまだ不十分だ。政府には事態収拾への対応と、徹底的な審議を求めていきたい。
さて先週、衆院憲法審査会の参考人質疑で、与野党が推薦した3人の憲法学者全員が、集団的自衛権の行使容認を含む、審議中の安全保障関連法案について「憲法違反」と指摘したことが大きく報道された。
菅義偉官房長官は記者会見で「法的安定性や論理的整合性は確保されている。違憲との指摘はあたらない」「まったく違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と語っていたが、そのような著名な憲法学者がいるのならば、ぜひ国会に呼んで意見を聞きたいものだ。
今回の憲法学者の指摘で、昨年7月に与党だけの議論で閣議決定された「安保法制の基本方針」と、それに基づく安全保障関連法案の問題点が改めて明らかになった。
そもそも、同法案の国会審議では、安倍晋三首相は質問に真正面から答えず、関係のないことを延々と話している。外相と防衛相は、野党の追及に答えられていない。報道各社の世論調査では、国民の約8割が「説明不足」と答えていた。こんな状況で、戦後の安保政策を抜本的に変更するなど、考えられない。11本の法案を個別に再編して、出し直すべきだ。
国会での「与党圧倒的多数」という現状は変わっていないが、国民の声を受けて風向きが変わってきた。国民の生命と生活を守り、日本の平和と安全を守るためにも、維新の党や共産党など他の野党と連携して、安倍政権と戦っていきたい。 (民主党代表)