5/22 外務委員会質問(条約審議、核抑止について)
【委員会】 外務委員会
【日 時】 5月22日 10時13分~10時48分(45分)
動画はこちら ⇒ YouTube 【岡田かつや国会論戦】
(質問要旨)
Ⅰ.日・ベトナム受刑者移送条約ほか
Ⅱ.東アジアの核抑止について
Ⅲ.新START延長に向けた対応について
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次に、岡田克也君。
◎ 岡田委員 立国社の岡田克也です。
まず、日・ベトナム受刑者移送条約に関連して法務省に聞きたいと思いますが、現在ある移送条約に基づく実際の運用ですが、どうも、例えば送り出し移送の所要期間を見ますとかなり時間がかかっている。二〇一三年から二〇一九年までに二百三十五名の方が対象になっていますが、二年未満で答えが出た人は十八人、八%、最も多いのが三、四年で七十八人、三三%、六年以上かかっているという人も十二人いるということです。
何がネックでこんなに時間がかかっているんでしょうか。
◎ 椿政府参考人 議員御指摘のとおり、送り出し移送の所要期間につきましては、平均して三、四年の期間を要しており、六年以上の期間を要するケースもあることは承知しております。
送り出し移送につきましては、その手続の中で、移送の法定要件の該当性や相当性、例えば、受入れ国の国民であることの証明、受入れ国において受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰を促進することが期待できるか、被害者の感情等に照らし、送り出し移送の実施が相当か、受入れ国における刑の執行内容は我が国の刑罰の目的が達成されると認められるものか等につきまして、受入れ国との情報交換も行いながら、個別具体的かつ総合的に勘案して決定しております。そのため、受入れ国との手続の進捗等によりまして、所要期間に差異が生じることがございます。
法務省といたしましては、受入れ国との手続が円滑に進み、送り出し移送の実施が適当と認められる案件につきましては、速やかに移送できるよう、今後とも国内及び外国関係機関との連携を図ってまいりたいと思います。
◎ 岡田委員 これは、余り時間がかかるということになると、まず受刑者は同意をするわけですね、同意してから何年も何年も手続が進まないというのは、私はかえってこれは人権問題と言われてしまうのではないか。したがって、条約をいろいろ結ぶのはいいんですが、その運用がきちっとしていないと、非常に問題ではないかというふうに思うわけです。
法務省のホームページを見ますと、この法律の適用について、今御指摘のような、一つは受刑者移送法二十八条各号に掲げる要件ということで、該当性判断ということが言われています。
それ以外に相当性判断ということが言われていて、一部言われましたが、事件関係者や社会一般の状況に照らし相当かどうか。もちろん被害者あるいは被害者に関連する方々の感情を十分に配慮したものであることは重要だと思いますが、社会一般の状況に照らしとか、そういう非常に抽象的な要件が入ってくると、なかなか判断に時間がかかる、あるいは迷う、先送りするということが起きているんじゃないか。
それからもう一つは、恐らく外務省と法務省の間のキャッチボールにかなり時間がかかっているんじゃないか。
そういうことについて改善する必要があると私は思うんですが、いかがですか。
◎ 椿政府参考人 個々のケースにつきまして、さまざまに事情が異なるところがございますので、一概にどのような原因で所要期間を要しているかということを申し上げるのは難しいところがございますが、繰り返しになりますけれども、国際受刑者移送制度の趣旨に鑑みまして、速やかに手続が進むよう、今後とも国内及び外国関係機関との連携を図ってまいりたいと思います。
◎ 岡田委員 条約や法律上求められている要件は、実はそんな複雑なことではなくて、かなりシンプルですから、平均三、四年かかっているというのは、ちょっと私には理解できないんですね。何か問題が、恐らく外務省も含めてあるんじゃないか。かなり複雑な、外務省と法務省のやりとりが何回も行われなければいけない仕組みになっていますから、そういうことも含めて、これは、ぜひこの際、両省でしっかり見直しをしていただきたいというふうに思っております。
もう一点、OIEについて質問したいと思います。
OIEというのは非常に歴史のある国際機関で、かつて一九九二年にはアジア太平洋地域代表事務所が東京に設置されたということであります。しかし、今回、特権及び免除に関する協定が結ばれるということです。
九二年に事務所が設置されながら、今日までこのアジア太平洋地域代表事務所の特権及び免除に関する協定が結ばれてこなかったのは、私は非常に時間がかかり過ぎているというふうに思うんですが、何か理由があるんでしょうか。
◎ 塚田政府参考人 お答えいたします。
OIEにつきましては、アジア太平洋地域事務所が一九九二年に東京に設立されたわけでございますが、当初はOIEからは、事務所に対する特権・免除の付与につきましては特段の要請はなされていなかったということでございます。
一方で、越境性の動物疾病等に対する対処の緊急性が高まる中で事務所の活動も活発化してきたため、OIEから特権・免除の付与に関する要望が示されるようになりまして、具体的には、二〇一七年にOIEの事務局長から当時の外務大臣に対しまして要請がなされました。
こうした具体的な要請を踏まえまして、OIEの役割が拡大する中で、事務所の円滑な活動を確保し、OIEとの連携の強化を図ることは重要だというふうに考えまして、OIEとの協定の交渉を行いました結果、今般、この協定の締結を目指すというふうにした次第でございます。
◎ 岡田委員 二〇一七年までは要請は全くなかったということですか。
◎ 塚田政府参考人 そのとおりでございます。
◎ 岡田委員 今回、非常に必要があるから必要だということでこの委員会で議論されているんですが、ちょっと私にはよくわからない。東京にそういう事務所が設置されたのであれば、それがうまく回るように、日本としても積極的にそういった特権及び免除に関する協定を締結すべく動くべきだったと思いますし、何か、向こうから要請がなかったからおいておいたというのもよくわからないわけであります。
私は、今回の世界観光機関の附属協定の締結もそうなんですが、何か非常に時間がたっている。例えば、世界観光機関であれば、二〇〇八年七月に附属書が発効している。今回、非常に大事なものだということで委員会に附属書がかかっているわけですけれども、発効後十年以上かかっているのはなぜなんでしょうか。
◎ 塚田政府参考人 お答えいたします。
二〇〇八年のこの附属書の作成以降、UNWTOに対する特権・免除の付与の必要性につきまして先方と検討を行ってきたわけでございます。
その際、議論のポイントとなりましたのは、UNWTO側が職員を派遣するという意思決定、これをまずしていただくことが先決ということを私どもの方から申し上げており、一方、UNWTO側は、特権・免除の付与の決定をまずしてほしいと、日本側において。このどちらが先に来るかということがいわば検討の際の大きなポイントだったわけですけれども、昨年、UNWTO本部の方から新たに駐日事務所に職員を派遣するという意向が表明されまして、これが政府内で検討を更に前に動かすいわば決定打となりまして、本格的な検討を始めるということになりました。
加えまして、地方創生のかなめでもございます日本の観光産業のさらなる発展のために、UNWTOとの連携を強化する重要性が急速に高まっているということを受けまして、今般、附属書の締結を目指すということとした次第でございます。
◎ 岡田委員 割とつまらないことで議論が停滞してきたんだなという感が否めません。
この両機関は、いずれも日本に事務所がある。そういうものの誘致については、かなり日本政府としては働きかけをしてきたはずだと思うんですね。せっかく誘致しながら、それがちゃんと機能できるような前提が整わないというのは、私は決して望ましいことじゃないというふうに思うんですが、大臣、一般論で結構ですから、こういったことについて、もう少し改善の余地があると思われませんか。
◎ 茂木国務大臣 国際機関、それが例えばアジアで唯一の事務所を日本に置く、これは観光分野についても動物の検疫においても極めて重要なことなんだと思っておりまして、それは積極的な誘致をするということは当然でありますが、その上で、そこがきちんと機能することによって、やはり日本のプレゼンス、その分野でのプレゼンスも高まるということでありまして、まずスピード感を持って対応する、同時に、そのフォローアップというものをしっかりしていくということが極めて重要だと考えております。
同時に、日本外においてもやはりさまざまな国際機関があるわけでありまして、そこに日本人スタッフがより多く出ていくということで、両側において日本のプレゼンスをどう高めていくかということが極めて重要だと考えております。
◎ 岡田委員 それでは、次に移りたいと思います。
前回に引き続き、ちょっと東アジアにおける抑止の問題を議論したいと思います。条約に関連する皆さんはもう結構ですから、お帰りいただいて結構です。
それでは、前回の議事録をちょっともう一回よく精査してみたんですが、まず、大臣は、前回、五月十三日の私とのやりとりの中で、こういう答弁がありました。アメリカも地上発射型の中距離ミサイルを開発中だが、米国からは、直ちに配備する状況ではなく、また、具体的な配備先についても検討は行っていないとの説明を受けている、そういうふうに答弁されました。
これは、米国側が地上発射型の通常ミサイルについて言及した、その発言を受けての答弁だったというふうに思います。具体的にはエスパー国防長官が昨年八月に何回か発言しているというふうに聞いておりますけれども、ただ、現に日本政府が配備について何かアメリカ側から打診があるということはないにしても、やがてそういう議論が出てくることは間違いがないというふうに思いますが、いかがでしょうか。
◎ 茂木国務大臣 先日十三日の委員会で、この米国の地上発射型中距離ミサイルについて、まず、開発中である、そして、具体的な配備先については検討は行っていない、そして、これは核弾頭搭載型ではなくて、あくまで通常弾頭搭載型である、このように答弁をさせていただきました。
ただ、INF全廃条約で米ロに廃止が義務づけられていたミサイルをそれ以外の国々が開発、実戦配備している状況が出てきている、このことについても申し上げたと思いますが、これは我が国自身にも関係する重要な問題でありまして、引き続き米国とも緊密に意思疎通をしていきたいと思っております。
◎ 岡田委員 東アジアにおけるこういった形での通常ミサイルの配備というものは、これは米国政府として、現在まだ開発中だけれども、それを配備する、そういう考え方を持っているということは間違いないというふうに思います。
そこで、東アジアというときに、具体的に配備できる国というのは限られているというふうに思うわけです。日本が配備の打診を受けた場合にどう対応されるおつもりですか。配備というときには、自衛隊に配備するというものもあれば、在日米軍基地に置くという考え方もあると思いますが、そういったことについてどう考えておられますか。
◎ 茂木国務大臣 先ほど申し上げたように、今、米国は具体的な配備先については検討は行っていないということでありますが、今後、米国の核抑止を始めとする拡大抑止、これをどう実効性を確保していくかについては、日米間でさまざまなやりとりをやっていく必要があると思っております。
ある程度の時間がかかる中でそういった議論は進むと思っておりまして、今の段階で、ここはこうなるという一つの結論を持って臨むつもりはございません。
◎ 岡田委員 このミサイル自身は核を持たないミサイルだという、そういう前提で今私はお聞きをしたんですが、確かに、これは簡単には答弁できない問題だというふうに思うんですね。東アジアをめぐる安全保障環境の大きな変化の中で日本自身がどうするのかという問題、同時に、国内の状況もあるし、それから、相手国と想定される国あるいは国々の反応というものも考えなきゃいけない。非常に難しい問題であって、私も実は、今聞かれれば簡単に答えられない問題だというふうに思っております。
私は、そういう意味でも、突然降って湧いたようにこういう問題が起きるのではなくて、状況に応じて、丁寧な国内での議論というものが必要だというふうに思いますが、その点についてはいかがですか。
◎ 茂木国務大臣 まずは、アメリカは開発中であったり配備については検討していない、こういう段階にある中で、しかし、米国の拡大抑止の問題についてはこれからもやりとりをしていかなきゃならない。何らかの方向性、これが見えてきた場合には、当然、それは国会に対しても国民の皆さんに対してもきちんと、変化する東アジアの安全保障環境の中で、どういう今オプションがあるかとか、どういう方向を目指す必要があるか、こういったことについては丁寧に御説明する必要が出てくるかもしれませんが、今はそういう段階にない、こんな認識を持っております。
◎ 岡田委員 近い将来そういう議論が必要になってくるんだというふうに思いますが、今は、米国が配備を考えている通常ミサイルの話を私はしたつもりであります。
その上で、今度は核の話ですね。核について、前回の審議、私とのやりとりの中で大臣はこういうふうに言っておられます。東アジア地域において新しい安全保障上の脅威が存在するようになってきているとした上で、こういった中においては、よりきめ細かな核体制のあり方、こういうものを模索していく必要はあると考えている、そういうふうに大臣は答弁されているわけです。
よりきめ細かな核体制のあり方というのは、もう少し具体的におっしゃっていただきたいんですが、どういうことでしょうか。戦略核による拡大抑止というだけではなくて、よりきめ細かな核体制のあり方ということになると、それは非戦略核による抑止ということを念頭に置いてされた発言かなというふうに思うんですが、いかがですか。
◎ 茂木国務大臣 先日私が、よりきめ細やかな戦略核のあり方を模索していく必要があると述べましたのは、望ましい核体制のあり方については、安全保障環境の変化等も踏まえ、より詳細かつ不断に検討していく必要があることを述べたものでありますが、特定の核体制を念頭に置いた答弁ではありません。
いずれにせよ、米国の拡大抑止の実効性向上に向けて、引き続き、米国と緊密に協議をしていきたいと思っております。
ただ、その上で申し上げますと、我が国周辺においても、戦術核を保有し、これを増強する国が現在存在している以上、現時点において、いかなる戦力を持って抑止力を構成するか、こういう検討において、戦術核を排除することはできないと考えております。
◎ 岡田委員 大臣、今、御自身の答弁を言われましたが、戦略核という言葉は大臣の答弁には出てきておりませんので、よりきめ細かな核体制のあり方、議事録によるとそういうふうになっておりますので、そこは訂正しておきたいと思いますが。
今、戦術核の話をされましたね。確かに、NPR二〇一八では、柔軟な核オプションを拡大することが強調されています。あるいは、小型核や、新たな艦船発射巡航ミサイル、SLCMの開発も強調されております。
東アジアにおける、そういった非戦略核、あるいは戦術核と言ってもいいかもしれませんが、それを日本として将来求めていくべきなのかどうかということについて、大臣は今検討の必要はあるというふうにおっしゃったと思いますが、東アジアの今の安全保障環境を見ると、そういった非戦略核の存在というものは必要であるというふうにお考えですか。
◎ 茂木国務大臣 その体制の、どういうものを持つかという検討の中から排除することはできないと申し上げたわけでありまして、それが必ずしも今の段階でプリコンディションで持つ必要があるという意味で申し上げたわけではございません。
◎ 岡田委員 今、日米間で核をめぐるかなり深い議論が行われているはずだと私は思っておりますが、その中で、日本がそういった戦略核でない核を東アジアに配備することを積極的に求めているということは今でもないというふうに理解しておいていいですか。
◎ 茂木国務大臣 それで結構であります。
そして、更に申し上げると、先日も答弁をさせていただいたと思うんですが、米国側の抑止力を確保するに当たって、具体的にいかなる運用を行うのか、いかなる装備体系を保有するかといった点については、我が国は最終的にこれを判断する立場にはなくて、すぐれて米国が判断すべき事項であると考えております。
この点、岡田委員、二〇〇九年、外務大臣時代に、クリントン国務長官、当時でありますが、に対して、我が国は、米国の特定の装備体系について、それを持つことが必要であるか、持つことが望ましいかについて判断する立場にはない、そういった書簡を送られていると承知をいたしております。
◎ 岡田委員 それは、私のレターの読み方が間違っています。レターを読んでいただければわかるんですが、要するに、日本の事務方が、トマホークの退役や、それから小型核について、むしろ必要だというふうに述べたという、そういう報道がありましたので、もしそういうことを日本政府が言ったとすると、それは違うと。つまり、日本は、アメリカ政府はそのときトマホークの退役はもう決めていたし、小型核の開発についても、これは議会は認めなかった、そういう状況の中で、一旦アメリカが意思決定したものについて異論を述べることはありませんという、そういう脈絡で述べたわけで、一般論として大臣が言われたようなことを私が言ったわけではないということは申し上げておきたいと思います。
いずれにしても、核について、これも議論から排除はできないという大臣のお立場であります。
そこで、今度は、今後の軍備管理の進め方について少し議論したいと思うんです。
大臣は、アメリカのトランプ大統領がINF全廃条約を失効させました、そのことの理由というのは、ロシアの条約違反よりも、米ロ以外の国々が開発、実戦配備したことの方が大きいと思うということを前回発言されています。それはそうかもしれません。
しかし、では、INF全廃条約を失効させたら、例えば中国との話合いがより進むんでしょうか。大臣の御発言はそういうふうに受け取れるんですけれども、条約を一旦なくしてしまった方が、中距離ミサイルについての中国との話合いが進む、あるいは軍備管理についての中国との話が進むというふうな御判断ですか。
◎ 茂木国務大臣 中国との話が進むかどうかの前に、まず、これまでの軍備管理の枠組みとして、INF全廃条約というものは、軍備管理、軍縮において歴史的な役割を果たしてきたことから、同条約が終了せざるを得なくなった状況は望ましくないと考えているわけであります。
そして、その理由については、二点申し上げたわけでありますが、そこの中で、まさに二点目が、東アジアの安全保障環境、これが急激に変化する中で、米ロだけによります軍備管理の枠組みでよいのか、こういった議論がさまざまなところであるわけでありまして、そうした観点から、INF全廃条約のような枠組みに限らない、より広範な国家、より広範な兵器システムを含む幅広い軍事管理が必要であるという考え方であります。
ですから、仮にINFがあったにしても、今直面している脅威、さらには今後拡大していく脅威を考えたときに、何らかの形で軍縮の枠組みをつくっていくとなると、より広範な兵器システムを含んだ幅広い軍備管理、これを模索しなければ、大きな意味、大きな成果を上げることはできないと思っております。
◎ 岡田委員 最終的なゴールは私は同じなんですが、そこに至るプロセスとしてどう考えるのか。より大きな、広範な国家、より広範な兵器システムを含む幅広い軍備管理の重要性、アメリカが指摘している、そのことは私も否定をいたしません。ただ、そういうゴールに到達するために、例えばこのINF全廃条約のように一旦白紙に戻してしまって、では、どうやってそういう広範な国家とか広範な軍備システムについて一定の結論に持っていくのか、その絵をどういうふうに考えておられるのかというのが私の質問なんですね。
やはり、圧倒的な核保有国は米ロであります。それ以外にも、中国を始め、核を持っている国はあるし、特に中国は核をふやしているわけですから、それを視野に置いて議論していかなければならないことは間違いありませんが、圧倒的に核を持つ米ロがまずきちんとタッグを組んで、そして、このINF全廃条約や、後から言います新START、それを更に先に進めていくということがあって初めてその他の核保有国に対して巻き込んでいくということが可能になるんじゃないか、そういうふうに私は思うんですが、大臣の考えはいかがですか。
◎ 茂木国務大臣 岡田委員の問題認識といいますか、アプローチの仕方については十分理解いたします。
その上で、私の考えを申し上げますと、アメリカ、ロシア、中国、それぞれ持っている兵器というものは違うわけであります。そうなりますと、特定の分野に絞って削減交渉をするというのは、かえって多分難しくなるんだと私は思います。
より広い分野で、どれだけ全体が譲れるか、こういう議論をしていくことの方が、結果的には何らかの、それぞれが一定の目的を達成する、若しくは、それぞれが同じような形で、イコーリー・アンハッピー、こういう言葉を使うんですけれども、同じようにみんなが不満を持った状態で解決をするという状態に達することができるのではないかな、こう思っております。
もちろん、こうした幅広い軍備管理の構築、簡単ではないわけでありまして、だからこそ、関係国が膝を交えて話し合う、そして信頼醸成を進めていく、また、信頼に足り得るような削減のプロセスというか仕組みもつくっていくということで、大変な作業にはなると思いますけれども、私は、遠回りのようで、それが現実的なアプローチではないかなと考えております。
◎ 岡田委員 中国は全く議論を拒否していると私は思うんですが、そういう中で、巻き込んでいくといっても、本当に議論になるのか。それから、プレーヤーはもっとふえますね。イギリスもあればフランスもある。もちろん、それ以外にも核保有をしている国はある。
ですから、どういう断面で切って議論していくかということを考えないと、私は、広げるだけ広げてしまっても何のいい結論も得られないんじゃないか。現に中国は、何か議論に参加する、議論しようという、そういう機運はあるんですか、今。私は全くないんじゃないかと思いますが。
◎ 久島政府参考人 中国との関係でございますが、これまで十一回にわたりまして日中軍縮・不拡散協議というものを行っております。部長級でございまして、最近の例で申しますと、昨年の五月でございます。
こういう席におきまして、信頼醸成あるいは軍縮につきまして中国に前向きな対応を促してきているところでございまして、我が国として、引き続き中国にそのように働きかけていきたいと思いますし、中国側も、日本との間でそのような対話を続けていく、そういう意思であると承知しております。
◎ 岡田委員 私の経験からいうと、中国は全く本質的な議論には乗ってこないというふうに思いますけれども、少なくとも、米ロがきちんとタッグを組んで、そして中国を議論に追い込んでいくということでないと前に進まないんじゃないか。米ロがタッグを組むということ自身が大変なことですが、そういうふうに思っております。
今御説明ありましたが、では、中国に対して外相レベルあるいは総理レベルで、この核を含む軍縮の問題について、きちんとテーマとして上げて議論したことはありますか。日本自身の問題としてですよ。
◎ 久島政府参考人 お答え申し上げます。
中国との間で外相レベル、首脳レベル、何度も会談はございます。さまざまな外交や安全保障問題にかかわる議論、もちろんしておりますが、詳細につきましては、この場でコメントすることは差し控えさせていただきます。
◎ 岡田委員 さまざまはいいんですが、中国の核をめぐって明示的に議論したことはありますか、そして、それで何か前に進むような議論はなされたんですかというふうに聞いているわけです。
◎ 久島政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたように、日中の軍縮・不拡散協議の場では直接そのような議論をしておりますし、外相レベルでも中国の軍縮の問題につきましての議論は行っておるところでございますが、繰り返しになりますが、それ以上の詳細につきましてはコメントを控えさせていただきます。
◎ 岡田委員 きょうはこの辺にこの問題はしておきたいというふうに思いますが、やはりどういうふうにして軍縮、軍備管理の問題を成果を上げていくかということについて、もう少しいろいろな議論が私はあり得ると思いますので、外務省においてもしっかりと検討していただきたいというふうに思っています。
それでは次に行きますが、新STARTの問題です。
この新START、戦略兵器削減条約の延長の問題ですが、現在、米ロ両国間の協議の現状、どうなっているのか、説明していただけますか。
◎ 茂木国務大臣 新STARTの前に、今の議論、若干短くしますが。
恐らく、中国を巻き込んでいく、率直に言って、私も外相会談等々でなかなか難しい問題だと思いますが、これは軍備管理、さらには通商の問題でもそうでありますけれども、一つは、やはり中国に、あなたは大国なんだ、大国としての責任を果たすべきだ、こういったことをしっかり言い、またもう一方で、世界でそういう潮流をつくって、あなただけが違う道を歩むんですかという形をつくっていかないと、なかなか動かせない、こういう側面があると思っておりまして、それは一朝一夕にはできない問題でありますが、大きな目標として、恐らく、私は、この軍縮の問題、今、中国を除いて軍縮を進めるというのはほぼ意味のないことだ、こんなふうに思っておりまして、そういったアプローチをとっていきたいと思っております。
その上で、STARTにつきましては、安全保障環境の戦略的安定性に資すると同時に、米ロ両国の核軍縮における重要な進展を示すものでありまして、同条約については米ロ間においてさまざまな協議が行われていると承知をいたしております。本年の一月十六日に次官級の米ロ戦略対話が開催され、四月十七日、五月六日には米ロ外相会談が行われた際に、米国務省は米ロ戦略対話の次の段階について議論した旨、またロシアの外務省は新STARTの延長を提案した旨、それぞれ発表しているところであります。
新STARTの延長の可能性を含め、今後の米ロ間の動き、注視をしていきたい、こんなふうに思っております。
◎ 岡田委員 先ほどの大臣の御発言ですが、私は、中国を除いてというふうに言っているのではなくて、中国を本当に巻き込んでいくためには、まず米ロがしっかりタッグを組まないと中国はそもそも議論に乗ってこないんじゃないか、そういう観点で議論しているということです。
今、新STARTについて、注視をしているという御発言だったんですが、私は、もっと日本は積極的にこれに関与していくべきだというふうに思うんですね。もし新STARTが延長されないということになると、戦略核のレベルでもたがが外れて軍拡競争が始まりかねない、こういうことであります。
安倍総理は、トランプ大統領ともプーチン大統領ともそれぞれ何度も会っているわけですから、もっと、この新STARTについてきちんと延長していくということについて、しっかり役割を果たすべきじゃないですか。
◎ 久島政府参考人 お答え申し上げます。
日米、日ロの首脳会談を含めましてさまざまな外交安全保障問題に係る議論はしておりますが、外交上のやりとりの詳細を明らかにすることは、私からは差し控えさせていただきます。
◎ 岡田委員 今の答弁なら出てこなくていいです。本来、私、大臣間、首脳間の議論について質問しているわけですから、大臣がお答えになるべきだというふうに思うんですね。
外務省が中心になって賢人会議というのを、白石さんが座長でやられました。その中でも、大きな提言として、二〇二一年に失効が懸念される新STARTを五年延長することを二〇二〇年までに実現すべきだというのが一つの結論なんですね。
ですから、注視しているんじゃなくて、日本国として、あるいは外務大臣、総理大臣としてどういう役割を果たしてきたのか、あるいはこれから果たそうとしているのか、御説明ください。
◎ 茂木国務大臣 まず、今御質問がありました賢人会議のことについてでありますが、昨年十月に外務省に提出されました核軍縮の実質的な進展のための賢人会議の議長レポートにおいては、新STARTが二〇二一年に失効する前に五年間延長することや、核軍備管理及び戦略的安定性に関する米ロ間の対話が進展することの重要性について言及がなされたところであります。
翌月、十一月、ちょうど名古屋でG20の外相会合が行われたときでありますが、自分が共同議長を務めました、軍縮、核不拡散イニシアチブ、NPDI十二カ国の外相会合におきまして、この提言も踏まえて、新STARTの重要性を強調する外相の共同声明発出をしているところであります。
新STARTにつきましては、我が国は、米ロによる引き続きの履行及びさらなる核兵器削減に向けた対話の継続を求めてきているわけでありまして、当然、アメリカに対しても、そしてロシアに対してもそういった方向での働きかけを継続していきたいと思っております。
◎ 岡田委員 それを具体的に、きちんと首脳会談でテーマとして出して議論しているかということを私はお聞きをしているわけです。
一般論として言うのは、それはそれで結構なんですが、説得する、いかに大事か、この問題、私は本当に大事だと思うんですね。これで新STARTが失効してしまえば、もう全く核の世界では無法地帯ということになってしまうわけです。これだけはやはり守り切るということを、私は、安倍総理も政治生命をかけるぐらいのつもりでプーチン大統領やトランプ大統領に迫るべきじゃないかというふうに思いますが、大臣、そういう気構えはありますか。
◎ 茂木国務大臣 私もそうでありますが、もちろん安倍総理も日本の国益だけではなくて、国際社会の平和と安定においてどういう姿が望ましいか、それに向けて日本としてどんな役割が果たせるか、こういう思いでさまざまな外交交渉に臨んでいるところであります。
岡田委員のおっしゃっていることはよくわかります。その上で、大切な問題については、これについてこう言いましたということになりますと、それが表に出て、では、そこについてどこまで進展があったんだという話になりますので、きちんと岡田委員の問題認識は踏まえて、さまざまな議論を行っている、そのようにお答えさせていただきたいと思います。
◎ 岡田委員 先ほど、注視していくというお話もありましたので、今の大臣の答弁がどこまで本当か非常に懸念を持ちますが、私は本当にこの新STARTは、これは何とかしなければいけない、そういう認識を持って、しっかりと対応していただきたいというふうに思います。