これからのエネルギー転換戦略
1.立憲民主党の提案するエネルギーミックス(2021.6.10)
立憲民主党環境エネルギー調査会は、「エネルギー転換戦略(中間とりまとめ)」を6月10日に発表。2030年において電源構成で再生可能エネルギー50%、CO2排出削減55%以上をめざすもので、専門家に参加いただき1年近い党内議論を行った結果つくられた結論です。
2.政府エネルギー基本計画との比較(2030年)
10月に閣議決定された政府の第6次エネルギー基本計画との差はかなり大きいと言えます。しかし、具体的に比較すると大きな差があるのは限られた分野であることも事実です。
⑴ 2030年のエネルギー消費の差
業務・家庭・運輸部門では立憲案、政府案で大差はない。両案の差は、主として産業部門の省エネの差(2013年比で立憲27%減、政府7%減)。鉄鋼、セメント、紙パルプなどの生産量は、政府案と同じ数字を使っている。政府案の省エネ率は、例えば鉄鋼で1%削減、セメント等で3%削減、紙パルプで0.4%削減等と業界の計画を採用していると思われるが、立憲案は既存設備が現在の優良工場なみの省エネ設備を導入すると想定、この場合、鉄鋼33%削減、セメント等14%削減、紙パルプ43%削減となる。一定のインセンティブを与えることで、業界に2030年までにこれらの努力を求めることは可能と考えられる。
⑵ 2030年電源構成
前提としての発電量が立憲案は8200億kwh(2013年比25%削減)であるのに対して、政府案は9340億kwh(同10%削減)。
立憲案では、8200億kwhのうち、半分を再エネで、その他をLNGを中心とした火力等でまかなうとしている。立憲案には、将来のアンモニア専焼を目指した石炭火力における混焼も含まれている。また原子力については、2030年時点での稼働を排除していない。
⑶ 再エネの発電量
立憲案が4100億kwh、政府案は3360~3530億kwhと600億kwh~700億kwhの差がある。この差の大部分が風力発電と太陽光発電の見方の差によるもの。バイオマス、地熱などは大差ない。政府案は太陽光発電の設備容量の詳細な内訳を示していないが、最大の差はソーラーシェアリング(立憲案では設備容量50百万kw 発電量613億kwh)の見方にあると思われる。ソーラーシェアリングをこの規模で実現するための支援策を具体的に検討する必要がある。風力については、2030年時点における稼働のためには、現時点で具体化が、かなり進んでいる必要があり、個々の計画を精査する必要がある。
3.今後の検討
2030年において、どこまで気候変動対策を実施するか、岸田総理が11月1日に開催された世界リーダーズ・サミットで明言されたように、2030年までが「勝負の10年」となる。そのためには日本自身が、どれだけの省エネと再エネの導入を実現するかが、まず問われている。
立憲民主党の目標値は政府案と比べ、より高いものとなっているが、これまで見てきたとおり、具体的な差の大部分は産業界における省エネ、再生可能エネルギーにおけるソーラーシェアリングと風力の位置付けの違いによるものだ。
立憲民主党案は、専門家と対話しながら作りあげたもので十分な根拠を持つと考えているが、今後国民や産業界と対話しながら、政府案と立憲案の異なる点を近づけ、よりよい計画とすることを目指している。国会においてもしっかりと議論していきたい。各界からも積極的な提案をお願いしたい。
コメント
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いつもご活躍を拝見いたしております。コップ26で化石燃料を使わない場合原発推進と言う国が出てきました。日本はどうするのでしょうか。官僚政治に対して与野党ともにノーと言えない以上原発推進の格好の理由となるでしょう。今の日本で地熱発電や風力や太陽光発電等推進しようと思っていても加熱すればするほど電力会社にシャットアウトされます。水素などの利用も水素を作るにあたっての電力が相当な量になります。やはり原発推進は今の政治の状況では避けられないと思います。野党がすべき事は日本の法律の中から、放射能は土壌汚染を覗くと言う内容を削除させることです。そうすることによって資産価値の失った固定資産を弁償していただく、これこそが今早急にされるべきことでしょう。そうすれば原発推進も躊躇することになるでしょう。世の中の矛盾にメスを入れることが野党の仕事だと私は感じております。頑張ってください応援してます。
・立憲民主党案では原子力と火力を纏めているのは何故でしょうか?(原子力を想定していたけれど短期間で新設火力に変更は環境アセスメント、原料仕入れ的にも無理と思います(遊ばせておく火力案の場合は経済合理性がないけど誰が負担するの?))
・電気自動車が普及するとガソリンから電力に変わるので必要な電力が増えると思いますが発電量合計が他案より少ないのは何故でしょうか?(現状でも自家用車の3割が電気自動車になったら真冬の電力は足りない)
・水力の設備容量と発電量の関係が他案より優れているのは何故でしょうか?
・(政府案でもですが)大手発電会社は水力以外の再エネの発電設備は少ないと思っていますが、ピーク時以外は補助金により安くなった再エネを稼働させるとすると、稼働させない火力・原子力の減価償却の原資はどうする案なのでしょうか?
・(政府案でもですが)再エネは小規模事業者が多く自然環境に左右されますが、電力需要のピーク時を避けて設備メンテナンスができない弱点にはどう対応する案でしょうか?(揚水は1日のピークには対応できるが季節のピークには対応できない)
・年5.6兆円の投資ですが、回収はFITのように国民に広く薄く電力料金の値上げでしょうか?それとも約53%の国民(就業者6676万人/人口1億2507万人)負担でしょうか?(年金生活の岡田克也さんのお友達の同級生からは取らない?)
・立憲民主党案とは違いますが私はCO2削減には代替ベース電源が発明されるまでは旧東京電力以外の原子力発電を推進する以外に方法はないと考えています。(冬の吹雪や曇り空の日は寒くて電力消費が多くなるのに実績値を見て曇り空で太陽光が活躍できてないし、発電できない北海道や東北・日本海側の国民に凍えても耐えてくれとも思っていない)
寒い中の停電を覚悟するなら太陽光や風力を選択するのも有りですが、自然エネルギーいいと言っていてもいざ停電になったら手のひら返す国民性なので原子力しかないと思います。
・今現在(マレーシアLNG供給減懸念等で)冬の停電危機目前なので、立憲民主党は原発に対して政府より積極姿勢にしておかなければ、いざ電力不足に陥って再エネがベース電源として役に立たないと明らかになった時に、政府より再エネを推進している立場の立憲民主党の政府批判は手のひら返しの印象を受けます。(LNG火力が電力不足の起因でもベース電源として再エネを推進しており、原発のように再エネが火力のカバーをできない)