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4/6内閣委員会 質疑

【委員会】 衆議院 内閣委員会

【日 時】 4月6日(水)11:00 ~ 11:34 【34分間】
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⇒  You tube 【岡田かつや国会論戦】2022.4.6

【質問要旨】
I. 基本的考え方
 1. 自由で開かれた経済と経済安全保障
 2. これからの日中経済関係
 3. 多くを政省令や閣議決定に委ねていること
 4. 法第5条の「合理的に必要な限度」の意味

II. サプライチェーンの強靭化
 1. 特定重要物資の対象
 2. 供給確保計画未提出事業者と備蓄
 3. 法第48条と罰則

III. 特許出願の非公開化
 1. デュアルユース技術を対象とすることの妥当性
 2. 外国で同じ発明に特許権が成立した場合の扱い
 3.「通常生ずべき損失」の範囲

IV. 重要特定技術
 1. 従来の技術開発支援体制の問題点
 2. JAXAの基礎研究との関係
 3. なぜ太陽電池、車載電池がシェアを落としたのか

(答弁要求 岸田総理、小林大臣等)


議事録

岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。
 まず、総理に基本的なことをお聞きしたいと思います。
 最近の様々な新たなリスクの登場、例えば、経済的手段によって自国の意向を他国に押しつける。尖閣が緊張したときに、レアアースが突然止まるという経験を私自身いたしました。それから、自国に有利な形でルールを変えようとする。トランプ大統領の時代のアメリカがその傾向があったということは、私は否めないというふうに思います。そういう経済の分野における新たなリスクに対して、経済政策を安全保障の観点から捉え直す必要があるということは、私も恐らく政府と同じ考え方であります。
 ただ、気をつけないといけないのは、そのことによって、例えば、経済のブロック化を招くとか、あるいは民間の自由で公正な経済活動が妨げられるとか、もっと行き過ぎると保護主義に陥るとか、そういうことが懸念されるわけです。
 そこで、総理にお聞きしたいんですが、先ほどの緒方委員の話にも通じるんですが、我が国は基本的に自由貿易というものを推進してきたはずであります。そして、国際分業によってより効率的な生産というものも、目指してきた。RCEPとかTPP11というのもそういう考え方に基づいて制定されてきたというふうに思います。この自由で公正な経済活動あるいは自由貿易というものと経済安全保障というものの関係を、分かりやすく、どう考えておられるか御説明いただきたいと思います。
岸田内閣総理大臣 まず、結論から申し上げるならば、委員御指摘の自由で開かれた経済活動と、そして、経済等を通じて自国の国益あるいはルール等を考えていく、ルールそして国益を経済面からも大事にしていく、こうした考え方、このバランス、これが現実の対応において重要であるということであると認識をしております。
 そういった認識に基づいて、今御審議いただいている法案についても、この法律を構成させていただいていると考えております。基本的な考え方は、以上申し上げたとおりであります。
岡田委員 総理は今バランスと言われたんですが、確かにバランスは大事です、ただ、基本はやはり、我が国としては自由貿易というものを軸に据えて新たなリスクに対して対応していく、そのための例えば今回の法案であったりするわけですが、やはり基本は自由貿易だ、そこの軸が揺らいではいけないと思うんですが、いかがですか。
岸田内閣総理大臣 経済の観点から考えた場合に、自由で開かれた経済活動が基本であるということ、これは委員御指摘のとおりだと思います。
 ただ、今の法案においても、経済と安全保障を通じて様々な国益、ルールを考えていくというようなことを考えますときに、やはり、自由や民主主義、法の支配、人権といった国際的に普遍的な価値観、こういったものも考えながら国益を考える、こうした考え方とのバランス等も考えていかなければいけない。経済において、基本は委員御指摘のとおりだと思いますが、現実の経済、国際社会においては、そうした今指摘をしたようなことも含めてバランスを考えていく、こういった考え方も大事ではないかと考えます。
岡田委員 もう一つお聞きしたいと思いますが、中国との関係であります。
 先ほど総理も言われたように、バイデン大統領は、民主主義と専制主義の競争の時代だ、そういうふうに言っておられると思います。経済面においても米中の対立が深まっている。そういう中で、日本にとって最大の貿易相手国である、あるいは十三億人の巨大市場である、日本の企業も多額の投資をしているこの中国との経済関係というものを、今後どういう考え方に基づいてやっていくべきなのか、そこの基本的なお考えを聞きたいと思います。
岸田内閣総理大臣 まず、中国は、御指摘のように、我が国にとりまして最大の貿易相手国であり、そして国際社会においても大国であります。中国に対しては、隣国である我が国としても、主張すべきことはしっかり主張し、そして責任ある行動を求めていかなければならないと思います。同時に、共通の諸課題については、対話を重ね、また協力することも考えていかなければいけないと思いますし、いずれにせよ、建設的、安定的な日中関係を考えていかなければならないと思います。
 その中で、中国との経済関係ということで申し上げるならば、冒頭申し上げたように、最大の貿易国、そして日本企業の中国における拠点は三万三千を超えていると承知をしていますし、在留邦人も十万七千を超えるということであり、深い関係があります。経済については、日本全体の国益に資する形で、対話と実務協力を適切な形で進めていく必要がある、このように認識をしています。
 そして、経済大国となった中国には、国際社会のルールにのっとり、大国にふさわしい責任をしっかり果たしてもらうこと、これが日本経済あるいは世界経済の更なる発展にも重要だという観点から日中関係を考えていくことも重要であると認識をいたします。
岡田委員 私は、観点を変えれば、やはり中国との関係は、機微な技術や情報をしっかり守る、そして重要な原材料、部品の過度の依存を避けるということは、これは国としてやっていかなければいけないことだというふうに思います。ただ、そうはいっても、これだけの相互依存関係ができていますから、今言ったようなことをやりつつ、民間企業が自らのリスクを取りながら経済活動をする、そこの部分も必要なことだ、しかし、最終的にはリスクは民間企業で取ってもらわなきゃいけない部分も私はあるんだと思います。
 そういう日本と中国の経済関係というふうに私は思っておりますが、いかがですか、総理のお考えは。
岸田内閣総理大臣 自由な活力ある経済ということを考えた場合に、やはり民間企業が主役にならなければならない、これは大切な考え方であると思います。
 ただ、あわせて、複雑化する、そして拡大する国際社会において、国として国益を考え、役割を果たしていく、官民協力する形で日本の経済について考えていく、こうした官民の協力という点も重要であると思います。民間の企業にしっかり活躍してもらう、こうした場をしっかり用意しながらも、複雑化する国際経済社会の中で、国として、官として果たす役割、これもあるんだということもしっかり認識していかなければならないと考えます。
岡田委員 日本にとって中国が必要であるように、中国にとっても日本がなくてはならない存在であるということは、私は、これからの日中関係を考えたときに非常に重要なことではないかというふうに思っております。
 そこで、法案について入っていきたいと思いますが、先ほど来議論に出ているんですが、この法案は、政省令に多くを委ねたり、あるいは閣議決定、そういうところが非常に多いわけですね。そのことに対して、我々は、立憲民主党の考え方、案では、政省令制定に当たり関係事業者の意見を聞くこと、それから法律の施行状況について国会への報告を義務づけること、こういった法改正を提案をいたしました。なかなかそれは受け入れられるところになっていないんですが、考え方としてはそんなに離れていないと思うんですね。どうして法律で書くことは駄目なんですか。
岸田内閣総理大臣 本法案におきましては、措置の対象となる物資、事業、あるいは技術分野等は、御指摘のように、政令あるいは省令で定める仕組みとなっております。
 ただ、その際の要件については、法律上、可能な限り明確化していると認識をしておりますし、これらの対象物資等は、政令や省令の制定に先立ち、まずは事業者を含む産業界あるいはアカデミアなど様々な分野の知見を有する方々から意見を聴取した上で基本指針を策定するとしております。こうした形で考え方を明らかにし、そして基本指針を策定する、このようになっておりますので、本法案、事業者の予見可能性ということについては配慮した形になっていると認識をしております。
 また、今申し上げました基本指針あるいは下位法令を定めるに当たっては、こうした国会の審議をしっかり踏まえるということ、これは当然のことであると思いますし、国会を含めて、国民、事業者に必要な説明を尽くすこと、これは当然であると考えております。
 こういった考え方に基づいて法律のたてつけを考えているというのが政府の考え方であります。
岡田委員 どうしてそれを法律に書かないのかということをお尋ねしているわけですね。民間事業者の意見を聞く、当然だと思います。政府もそうされるだろうと思いますけれども、どこまできちんと聞くかどうかは分かりません。ですから、それを法律できちんと規定しておく。
 それから、一番問題なのは、やはり政省令とか閣議決定とか言われますが、それは国会とは無縁のところで決まるわけです。政府の中で決められる。もちろんいろいろな人の意見を聞くにしても、でも、国会の意見を聞くということにはなっていないわけですね。
 だから、その施行状況について国会に定期的に報告するということは私は非常に大事だと思うんですね。普通の法律ならまだしも、これだけ抽象的なことがいろいろと残っている、まあ大急ぎで作られた法律なのかもしれませんが、こういうものについて、大事ですから、是非、国会に対する報告ということを私はお約束いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
岸田内閣総理大臣 こうした法律と、そして政令、省令、下位法令との関係については、委員御指摘のような様々な考え方があるとは承知していますが、やはり現実の社会の中で、複雑化する、そして激しく変化する社会の中で機動的に法律を稼働させていく、こうした観点からこのバランスは考えられていかなければならないと思います。
 ただ、最も大切な、そして委員も御指摘になられました様々な関係者の意見等については、基本指針の策定等を通じてしっかりと反映させていただくなど、この法律のたてつけとして様々な工夫もさせていただいている。実質的な点については、多くの方々の意見もしっかりと反映させていただいているということだと思いますし、国会につきましては、法令の運用について、絶えず様々な観点から御議論をいただき続けていく、法律を運営する上で、絶えずそうした国会の審議には堪えていかなければならない、これは法律の運命であると思っております。
岡田委員 そうはいっても、例えば国会閉会中だと何か月も議論ができない状態だってあるわけですね。もちろん、閉会中審査をすればいいと言われればそのとおりですが、そういう場合に、野党から求めがあったら、きちんとこの法律の施行状況について報告していただいて議論するという場は是非確保していただきたい。これは政府の問題じゃないと言われるかもしれませんが、そのことを改めて申し上げておきたいと思います。
 法律の第五条で留意事項というのがあります。規制措置について、合理的に必要と認められる限度で行わなければならないというふうに書かれています。私は、これはざる法だと思うんですね。合理的に必要と認められる限度、誰が合理的に必要と認めるんですか。基本的にはそれは政府だ、政府の裁量ですよね。余りにも非合理なものがあればそれは排除されるかもしれませんが、合理的かどうかというのは一義的には政府が判断するということになると、しかも、留意事項、単なる留意事項なんですね、そうすると、これはほとんど規定を置いた意味がないと私は思うんですね。
 例えば、外為法では、第一条「目的」のところで、外国為替、外国貿易その他の対外取引が自由に行われることを基本とし、自由が基本とし、対外取引上必要最小限の管理、調整を行うというふうに規定されております。本来、こういうふうな規定にすべきだったんじゃないですか。いかがですか。
岸田内閣総理大臣 まず、経済安全保障の取組を進める上では、企業の経済活動、またアカデミアの研究活動、こうしたものは原則自由であるとの大前提に立った上で、これらを大きく阻害することがないようにすること、これは重要な考え方であると思います。そして、そのため、この法律によって講ずる規制措置の実施に当たっては、委員御指摘のように、法案の第五条において、「経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならない。」と規定をしております。
 委員の方から、必要最小限度にするべきではないか、こういった御指摘でありますが、自由な経済活動との両立を図る観点から、規制については絶えず必要最小限度のものにするよう努めるということ、これは当然のことであると思っています。
 しかしながら、国際情勢の変化等に伴う安全保障のリスク、これは絶えず変化しておりますし、予測し難い部分があります。こういった点から、こんな点を考えましたときに、あらかじめ一律に必要最小限と規定するのではなくして、合理的に必要と認められる限度と規定する方が現実的に適切であるという考え方に基づいて、こうした規定が設けられているものであると認識をしております。
岡田委員 それは、政府から見れば、こういった非常に裁量の余地の多い規定は適切だということかもしれませんが、逆に、民間の事業者からすれば、どこまで規制されるのか非常に不安が残るということになると思います。外為法では、基本は自由だよ、しかし対外取引上必要最小限の管理、調整を行うというふうに書いてあるわけですね。それと比べると余りにも私は広過ぎると思います。安全保障の定義すら法律上なされていない中で、合理的に必要なと言われても、これはほとんど規定の意味がないと私は思うんです。
 もう一回、いかがですか。
岸田内閣総理大臣 法律において基本的な考え方、事項を明らかにしていくこと、これは大変重要なことだと思いますが、一方で、この法律を適用する現実の国際情勢、国際経済の状況は絶えず変化をし、流動化し、複雑化している、こういった現実があります。この現実に適切に法律を当てはめていく際にどうあるべきなのか、あらかじめ一律に厳格に定めることによって現実への対応が十分可能なのかどうか、こういった観点を突き詰めていくことも大事であると思います。
 こういった観点から、先ほど申し上げましたような形で法律の中には規定をしていると認識をしております。これは、この法律を現実に運用する際に様々な工夫をしなければいけない、そうした観点からの工夫であると認識をしております。
岡田委員 私は、政府の活動というのは余り信頼していないものですから。
 例えば、二〇一九年七月の韓国への半導体原材料の輸出規制措置というのが安倍内閣の下で行われました。ちょっと通告していないんですけれども。当時、総理は閣僚ではなかったんですけれども、これは、徴用をめぐる問題で、決められたというか日本が設定した時間内に答えがなかったということで、関連三品目の輸出を規制強化をした、安全保障だということでしたわけで、それは対抗措置ではないという説明を政府はしましたが、事実上は対抗措置と言われても仕方のないようなやり方だったと思うんですね。
 こういうものを適切だったと思いますか、総理。
岸田内閣総理大臣 今の挙げられた例が適切なのかどうかということでありますが、今の例に関しては、決して政府として対抗措置として講じたという説明ではなくして、あくまでも法律を厳格に適用するという形でこうした対応を行った、こういった説明を行ったと承知をしております。法律に基づいて対応した例であると認識をし、その点においては適切であったと考えております。
岡田委員 総理の立場からは不適切だったとは言えないと思いますが。
 結局、一定期間内に徴用をめぐる問題の解決策が示されなかった、そういう韓国政府は信頼できない、信頼できないから、信頼関係の下で輸出管理に取り組むことが不可能になった。だから、信頼関係という一つのクッションは入っているんですが、実は、徴用工の問題で答えがなかったからやったんだと。私は、これは非常に悪い先例をつくってしまったと思うんですね。政府として、そういうことも時にはやってしまうんだ、あり得るんだと。
 これで民間事業者なんかはすごく困ったわけですよ。輸出ができなくなってしまった、韓国に。そういうこともあるので、やはり規制というものはもっとしっかりと縛っておかなければいけないと私は思います。
 参議院における審議もありますから、この辺にさせていただいて、あと、具体例ですが、まずサプライチェーンの強靱化について。
 ここで、特定重要物資について、事業計画を出していろいろな政府からの支援を受けるという事業者以外の事業者、一般の事業者に対して生産、輸入、販売、調達に関し必要な報告、資料提供を求めることができる、四十八条でそういうふうになっております。これには罰則がついておりません。ただ、維新の案では罰則をつけるということになっております。
 私は、やはり基本的に、計画を出して一定の恩恵を受けている事業者じゃない一般の特定重要物資を扱っている事業者に対して罰則をつけるというのは、基本的な考え方として誤っているというふうに思うんですね。サプライチェーン、どこの事業者から、どういうところから、どういう契約で幾らで買っているかとか、そういうことは企業にとって一番コアな企業秘密、それを、何か恩恵を受けている事業者じゃない一般の事業者に対しても調査をかけて、そして従わなければ罰則をかけるというのは、私はかなり異常な考え方だというふうに思うんですね。
 だから、政府の案は罰則は入っていないんですが、そこのところ、どういうふうにお考えですか。
岸田内閣総理大臣 本法案では、安定供給確保を図るべき物資の選定あるいは問題の把握を図るために、当該物資のサプライチェーンについて調査が可能な旨規定を置いているわけですが、その際に、一般的な事業者に対するサプライチェーン調査、これは本法の規制や支援の枠組みに入っていない事業者も広く調査対象としております。
 そうした本法の規制や支援の枠組みに入っていない事業者に罰則つきの応答義務を課すということ、これは、調査を受ける側からすれば強権的であり、自発的かつ率直な情報提供を妨げる懸念があることなども踏まえれば、罰則の対象としないことが適当だと考えた次第です。
 これは、別の見方をするならば、こうしたサプライチェーンの実態、物資や問題の把握をするためのサプライチェーンの実態を調査する際に、これはできるだけ幅広い事業者に参加してもらってこそ全体をしっかり把握できるわけでありますから、幅広い事業者にこの調査に加わってもらうためにも、こうした罰則については、法案にあるように、規定していないという対応を取っていると認識をしております。
岡田委員 今までのこの委員会での答弁でも、有識者会議の指摘を踏まえて総合的に勘案した結果であるという答弁をしていますが、私はそうじゃないと思うんです。考え方として間違っているというふうに思いますので、そういうふうに申し上げておきたいと思います。
 次に、特許出願の非公開化についてです。
 ここで私が問題にしておりますのは、その対象であります。
 核兵器の開発につながる技術それからシングルユース技術のうち我が国の安全保障上極めて機微な発明を基本とするというふうに、この委員会でも答弁がなされております。では、デュアルユース、つまり軍民共用技術についてはどうかということですが、イノベーション促進の観点から、支障の少ないケースに限定すべきという有識者提言を踏まえて定めたいというのが答弁です。非常に、有識者提言というものを間に挟んで、かなりこれは幅のある答弁だと思うんですね。
 私は、日本の特許制度からいうと、諸外国にあったとしても、日本にとってはこれは初めての制度なんですね。特許というのは、基本的には、発明を開示するということの見返りに独占的な権利を与える。これは、そもそも開示しないというわけですから、特許制度にとってはいわば革命的な、そういう制度だというふうに思うんですね。
 そうであれば、やはり最初は、核兵器の開発につながる技術、シングルユース技術、この範囲でスタートすべきじゃないか。制度が成熟してきた中でその範囲をどうするかということを議論すればいいのであって、最初からデュアルユース技術、軍民共用技術まで広げてしまうと、その範囲はかなり私は曖昧で、逆に言うと発明意欲というものをそいでしまうというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
小林国務大臣 お答え申し上げます。
 近年、防衛技術と民生技術の間でボーダーレス化、いわゆるデュアルユース化が進展しています。このデュアルユース技術が、各国における最先端の武器や防衛システムの開発の決め手となることも十分にあり得るところだと考えます。したがって、国家及び国民の安全を損なうおそれという観点で見れば、デュアルユース技術を一律に制度の対象外と位置づけるのは、そうしたおそれのある技術の拡散を防ぐという本制度の趣旨に照らして適当ではないと考えます。
 ただし、デュアルユース技術を対象に取り込むに当たりましては、安全保障と産業の発達の両立を考えることが重要だとも考えています。そこで、この法案では、保全指定を決める第二次審査、すなわち保全審査におきまして、産業の発達への影響を考慮すべき旨を条文上明記しております。
 また、技術分野で絞りをかける第一次審査の段階では、一律に保全審査の対象とした場合、経済活動やイノベーションに及ぼす支障が大きい技術分野につきましては、別の角度から更に絞りをかけるため、政令で付加的な要件を定める構造としています。
 この付加要件というのは、特定技術分野の指定と一体を成すものとして、有識者の意見を聞いた上で閣議決定する基本指針に基づき定めることとなりますが、規定の趣旨に照らせば、当然、発明者自身が機微性を認識し秘匿の必要性を感じるようなケースなど、保全審査や第一国出願義務の対象に取り込まれても産業の発達への支障が少ないものに限定する要件でなければならないと思います。例えば、防衛、軍事用途で開発された技術といった限定をかけることなども考えているところであります。
岡田委員 既にこの委員会で答弁されたことを繰り返していただく必要はありません。総理にお聞きしているわけです。
 私は、今の説明を聞いても、やはり、国の手のひらでその基準というものがどうにでもなるような、そういう印象を受けるんですね。だから、よほど慎重な運用をお願いしたいと思います。
 時間も限られていますが、ここで言う通常生ずべき損失を補償するという、そのときの中身なんですが、これは何も書かれていないんですが、発明に要した費用は当然ですけれども、発明が商品化されたときの得べかりし利益、海外も含めて、という理解でいいですか。簡単にお願いします。
小林国務大臣 通常生ずべき損失というのは、損失補償制度を規定する多くの法律で用いられている表現であって、一般に相当因果関係の範囲内にある損失を表すものと承知をしております。
 具体例を申し上げますと、例えば、発明の実施を不許可とされたため、製品の製造、販売が国内外でできなくなったことによる損失ですとか、第三者が同じ発明をして実施したけれども、特許権が留保されているため、実施許諾料相当額を請求できないことによる損失などが考え得るところであります。
岡田委員 海外で先に特許を取られちゃったというようなことも当然起こり得ますよね。かなり大きな損失を被ることもあると思います。
 重要特定技術についてお聞きします。
 私、この制度、一番分かりにくいんですね。何のためにこれをやるのかなというのが、いま一歩分からない。今までの様々な技術開発の制度がありますよね。宇宙や海洋なども、バイオとか、国もいろいろな技術開発制度を持っている。
 具体的に聞きますと、例えば、宇宙について、JAXAという組織があります。JAXAは、大学との共同研究とか宇宙科学技術の基礎研究、あるいは人工衛星の開発、利用、そういうものを総合的、計画的に行うということが規定されています。そのJAXAの行う技術開発、研究開発と、今度の制度というのはどういう関係にあるんでしょうか。そこをきちっと整理されるべきなんじゃないですか。
小林国務大臣 この法案は、政府機関が多様な主体に対して円滑な情報共有を行う新たな法的枠組みを設けて、これまでの取組を補完するものです。
 委員御指摘のJAXAにおける宇宙科学の基礎的研究につきましては、例えば、宇宙や生命の起源を探る宇宙科学、探査における直接的な応用を考慮しない研究などは、基礎研究段階のものとして位置づけられますので、この法案に基づく協議会を設置する必要性は想定しづらいと考えます。
 他方で、宇宙分野におきましても、例えば、衛星コンステレーションの技術といったような、各府省のニーズ情報を共有しつつ研究開発を進める場合、あるいは、JAXAが有するノウハウの管理を要する情報をアカデミア、スタートアップなどが多様な主体で共有して、一体となって研究開発を進める場合などには、協議会を設置することで、産学官で円滑な情報共有をすることによって、より効果的に研究開発を進めることが考えられるところであります。
岡田委員 普通は、新しい制度をつくるときには、既存の制度との整合性というか、新しいものをつくるなら古いもののここはもうスクラップするとか、そういう議論があって制度ができてくるというのが普通だと思うんですね。行革の議論などはそういう議論をよくいたします。
 これは、新しいものだけがぽんと来るので、非常に私は不思議に思っているんですね。ひょっとすると、宇宙の平和的利用という規定がJAXAにはかかってきますから、それをクリアするための新しい制度なのかなというふうにも思ってしまいます。
 いずれにしても、そういう多くの論点がまだ残っております。参議院での審議もございます。制度の必要性というものは私どもは認めておりますが、かなりまだ論点があると思いますので、しっかり審議していきたいと思います。
 終わります。




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