12/11 予算委員会質疑(北方領土問題、今後の日米関係)
【委員会】衆議院 予算委員会
【日 時】2024年12月11日(水) 9:00~9:30(30分間)
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【主な質問内容】
- 北方領土問題
- 今後の領土交渉における東京宣言(1993年)の位置付け
- シンガポール合意で安倍総理が二島のみ返還に舵を切ったことについて
- 石破総理は、シンガポール合意の交渉記録を読んだのか
- シンガポール合意は今後の領土交渉の基礎となり得ない
- 首脳外交に偏重しすぎることのリスク
- 今後の日米関係
- 所信表明演説で示された「両国の国益を相乗的に高めあうことで、自由で開かれたインド太平洋の実現に資することができる」との考えについて
- 石破総理における、FOIP、とりわけ法の支配の位置づけ
- G20サミットにおける「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、そして、責任を共有するグローバル・ガバナンスの構築が鍵である」との石破総理の発言
- 日本外交において「法の支配」はキーワードだが、アメリカファーストを強調するトランプ次期大統領と、どのような姿勢で向き合うべきか
- ドイツ、フランス、韓国が大きな政治的混乱状態にある中、トランプ大統領がスタートする。日本の果たさなければならない役割は重大
議事録
〇岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。
本題に入る前に一つ。
昨日、被団協の皆さん、ノーベル平和賞の授賞式がございました。田中熙巳代表委員が印象深い演説を行われました。
ノーベル委員会の授賞の理由は、核兵器使用は道徳的に容認できないという国際的な規範、核のタブーを形成したことに対するノーベル賞の授与であるというふうにされております。私は、今までの被団協の皆さんの御苦労と御努力に心から敬意を表したいというふうに思います。
それに関連して、一つ総理に質問したいと思います。
昨日、我が党の重徳議員が、核禁条約の締約国会議のオブザーバー参加について総理に聞きました。総理の答弁は、オブザーバーとして参加することにどんな意義があるか検討する、こういう答弁でした。
今までの木で鼻をくくったような総理の答弁と比べると、検討すると言われたことは私は半歩前進だと評価しますが、是非、お願いは、この第三回の締約国会議は来年の三月です。ですから、それに間に合うタイミングで検討結果を出してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇石破内閣総理大臣 被団協のノーベル平和賞受賞は、本当にすばらしいことだと思っております。
今委員お尋ねのオブザーバー参加についてですが、別に木で鼻をくくったとは思いませんが、今までの答弁と少し違うのは、オブザーバー参加するということ、参加している国もあります、実際に核の傘を提供されていながら参加している国があって、それが会議においてどのような主張をしたのか、それで会議の流れがどうなったのかということを検証しないでオブザーバー参加もしないということは、私自身としては少し納得のいかないところもあって、これをきちんと精密に検証した上で、さて、我が国が戦争における唯一の被爆国として、その悲惨さを最も知る国としてオブザーバー参加をして、どのような議論を展開をすることが望ましいかということを分析せずして参加しますということは、私は余り正しいことだと思っておりません。
きちっと検証もします、読める限りの議事録は読んでみたいと思っておりますし、どの国がどのように反応したのかというものを見たいと思っております。単に逃げ口上として検討しますと言っているわけではございません。
ただ、いつまでにという期限を区切ってということは、その検証の進捗状況にもよりますので、ここでいつまでということを申し上げることはできないということでございます。
〇岡田委員 今まで、第一回、第二回、どういう議論が行われて、オブザーバー参加をしている国、例えばドイツがどういうことを述べて、どういう扱いを受けたかということは、それは外務当局は当然把握していますよ。ですから、そんなに時間がかかる話じゃないんですよ。是非、三月までに結論を出して、そして三月の締約国会議に間に合うように、来年も予算委員会がまた一月に開かれますから、結論を出していただきたい、そういうことを申し上げておきたいと思います。
さて、今日は、北方領土の問題を中心に、総理と是非議論したいと思って参りました。
総理は、北方領土に関して、所信表明演説で、我が国としては、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持いたしますというふうに言われました。それから、我が党の野田代表の衆議院本会議の質問に対して、平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であるという点で、我が国の立場は一貫いたしております、これまでにも、御指摘のシンガポールでの合意を含め、ロシア側と粘り強く交渉を進めてまいりました、こういうふうに答弁されております。この十二月二日の答弁の前段の部分、四島の帰属の問題であるという点で、我が国の立場は一貫しておりますというふうに述べられました。
そこで、私がお聞きしたいのは、エリツィン大統領と細川総理との一九九三年東京宣言、これは、四島の名前を具体的に挙げて、そこに帰属の問題があるんだということを確認したものです。この東京宣言は我が国の北方領土交渉の基礎の重要な一つである、そういう認識でよろしいですね。
〇石破内閣総理大臣 それは、四島の帰属の問題であるということは一貫をいたしております。その間にいろいろな会談があり、いろいろな合意がありということでございます。それらを全て包括をしながら、この問題を解決に向けて努力をしていくということでございます。
〇岡田委員 戦後の我が国の北方領土交渉、元々は日ソ共同宣言があります。その後、ソ連は領土問題の存在すら否定してきました。それが変わったのは、ソ連からロシアに変わる、そういう段階で、東京宣言、エリツィン大統領の時代ですけれども、四島の名前を具体的に挙げて、そこに四島の帰属問題は存在するんだということを確認した、日ロ間でですね。そういう意味では、私は日本外交の一つの画期的な勝利であったというふうに思うわけです。その後、ずっと日ソ共同宣言と東京宣言を並べて、基本的には、歴代首脳がこれを交渉の基礎にするということを最近まで言ってきたということです。
その東京宣言について、引き続き重要な交渉の基礎であるということを明言してもらいたいんですが、いかがですか。
〇石破内閣総理大臣 ロシアのウクライナ侵略によりまして、今、日ロ関係は厳しい状況にございます。ございますが、我々として、四島帰属の問題を解決し、平和条約を締結するという方針には何ら変わりはございません。
今後、仮に平和条約交渉が再開するということがあったといたしまして、当然のことでございますけれども、今委員が御指摘の東京宣言も含めまして、これまでの日ロ間の諸合意、諸文書を踏まえて交渉に当たるということでございます。
〇岡田委員 東京宣言が交渉の基礎になるということは、総理、お認めいただきました。
そこで、安倍総理の時代のシンガポール合意、これが問題になるわけですね。シンガポール合意というのは、従来、東京宣言と日ソ共同宣言を並べて交渉の基礎にしてきたのを、あえて東京宣言を除外して、日ソ共同宣言を交渉の基礎にするというふうに確認されたということです。つまり、東京宣言を排除しているというふうに考えられるわけですね。ですから、このシンガポール宣言というものを交渉の基礎として認めてしまうと東京宣言が排除される、そういう論理的関係にあると私は思うわけです。
ここのところについて、シンガポール合意について、これからの交渉の基礎にすべきかどうか。総理、どう考えておられますか。
ちなみに、先ほど言いましたように、総理は、御指摘のシンガポールでの合意を含め、ロシア側と粘り強く交渉を進めてまいりました、これはなぜか過去形で言っているんですね。ですから、これからそうするとは言っていないのは、私は幸いなことだというふうに実は思っているわけですね。シンガポール合意を交渉の基礎にしてはいけないというふうに私は思っているわけです。そこのところはいかがなんでしょうか。
〇石破内閣総理大臣 そこで、しましたと過去完了形で申し上げているのと、いたしますと言っていることにそんなに違いがあるわけではございません。そこで……(発言する者あり)いや、政府として申し上げております。
私が先ほどから申し上げておりますのは、今後、日ロ間で、今厳しい状況にございますが、再開をした際には、今御指摘になりましたシンガポールでの首脳会談における合意も含めまして、これまでの日ロ間の諸合意、諸文書を踏まえ交渉に当たるということでございます。これは取る、これは取らないという立場にはございません。
〇岡田委員 ここはよく注意された方がいいと思うんですよ。
今までの、例えば岸田総理の時代ですが、令和三年の本会議における総理の演説の中では、シンガポール合意を含め、これまでの諸合意を踏まえてというふうに、シンガポール合意を明言されました。ところが、令和四年になると、シンガポールでの首脳間でのやり取りを含めというふうに、表現を変えているわけですね。合意という言葉はなくなりました。そして、ウクライナ戦争後は、シンガポール合意に言及していないんですよ。
そういう流れがある中で、今総理がシンガポール合意をあえて言及されるというのは、私は重大なことだし、ここは考え直していただく必要があると思いますが、いかがですか。
〇石破内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりでありまして、大統領、そして我が総理との間でいろいろなやり取りがございました。そのやり取りも踏まえということでございまして、シンガポールにおいて話されたことをどのように位置づけるかということも、この一連の交渉の中で判断をしていくべきものだと考えております。
〇岡田委員 確認ですが、石破総理は、シンガポール合意のプーチン大統領と安倍総理との二人だけのやり取り、それから、その後、外務次官とかが入って、あるいはラブロフ外相も入って確認した拡大会議、二つあるというふうに言われていますが、その議事録は読まれましたか。私は、あらかじめ読んでこの場に来るようにと事務方には言っておいたんですが、読まれましたか。
〇石破内閣総理大臣 当然、読んでおります。
〇岡田委員 それでは、安倍総理御自身も、私との予算委員会のやり取りで、私は、シンガポール合意というのは東京宣言を排除している、だから二島に絞ったのではないか、歯舞、色丹で、そこで国境線を引く、国後と歯舞、色丹の間に国境線を引くというふうに提案したのではないかというふうに問うたのに対して、安倍総理はあやふやな言い方で、はっきり言われなかった。
ところが、次の資料を見ていただきたいんですけれども、最近の著書の中で、安倍総理ははっきりと二島交渉だということを言われているわけですね。
「安倍晋三回顧録」、これは読売の橋本さん始め著名なジャーナリストが聞き取ったものでありますが、いろいろなことを言っていますが、二島返還に向けた交渉をスタートすることになりましたというふうに言っておられます。
それから「宿命の子」、船橋洋一さんが、これは安倍さんだけじゃなくていろいろな人から聞き取った結果を書いているわけですが、安倍さんの発言として、二島返還提案で日本は国家主権を自ら放棄したと言うが、四島を全部握られている中でこれ以上、降りるも何もない、これ以上、下がりようがないではないかと。
つまり、二島返還ということを国会で安倍さんは認められなかったけれども、しかし、著書の中で、あるいは回想録の中で明確に言われているわけですね。ここをどう考えられますか。
〇石破内閣総理大臣 当然のことながら、「安倍晋三回顧録」、あるいは船橋先生の「宿命の子」という、該当部分は読んでおります。
ただ、そこにこう書いてあったからといって、そのことを今、外交交渉の一つの証左として、参考にはなるかもしれませんが、それを一つの確定したものとして、もう御本人もおられないわけでございますし、これが価値があるものだとは思いますが、出版物というものを、確定したものとして、事実としてこれから先の議論に供するということには必ずしもならないということでございます。
〇岡田委員 これは日本を代表するジャーナリストが安倍さんから聞き取って、責任を持って書いた本なんですね。それが事実かどうか分からないというような、そういう御趣旨の発言だと思いますが、それは私はないと思うんですね。日本のメディアを愚弄するものじゃないですか。
安倍さん自身が、安倍回想録については安倍晋三著になっているんですね。それにもかかわらず、総理、どうなんですか、そういった発言を無視して今おっしゃったことになりますよ。どうですか。
〇石破内閣総理大臣 無視をするとは私は一言も申し上げておりません。
そのような出版物というものを、政府の考え方として、ここにこう書いてあるからということでこれからの議論を進めるということには必ずしもならない。そのときの責任ある政府の立場にいる者が発言をするということなのであって、それは立派な方であり、著名なジャーナリストであり、だけれども、それをベースとして議論を進めるということにはならない。それは当然のことでございます。
〇岡田委員 このシンガポール合意の後、その意味は何なのかと、日本のメディアの対応も分かれました。
北海道新聞などは、これは二島に絞った、そういう報道でした。大手のメディアの中には、二島先行返還だ、そういうふうに言われたところもあります。これは事実を全く分かっていない記述なんですよ。つまり、二島を返して平和条約を締結する、平和条約を締結するということは、国境線を引くということなんですから。だから、二島先行などということはここには全くないんです。
とすれば、やはり、歯舞、色丹でいいというふうに、安倍さんが、そこで国境線を引きますというふうに提案したというふうに、私には、考えざるを得ないんですが、いかがですか。議事録を読まれたと言いますが、本当に確認されましたか。
〇石破内閣総理大臣 私は、確認もしていないものを確認したなどということを言うような、そんな無責任な立場には立っておりませんので、そのことは事前に申し上げておきたいと思います。
一九五六年日ソ共同宣言第九項に、これはもう外務大臣まで務められた委員御案内のとおりで、平和条約交渉が継続されること及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されることを規定しているというのが共同宣言でございます。我々日本側といたしましては、ここに言う平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題である、このような一貫した立場に基づき交渉を進めてきたものでございます。
御指摘のシンガポールにおける首脳会談では、日ソ共同宣言、先ほど申し上げました一九五六年日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるということで合意をしたものでございますが、この合意も含めまして、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、その日本政府の立場はずっと一貫をしているものでございます。
〇岡田委員 日ソ共同宣言の我が国の解釈はそうだったかもしれませんし、それにより力を与えたのが東京宣言だった。その東京宣言をあえて排除して日ソ共同宣言だけを交渉の基礎にしたというところが、やはり二島で国境線を引くという提案をしたのではないかというふうに推測されるわけだし、安倍さん御自身も認めておられるということです。
総理が今、議事録を確認したと言われました。
私は、衆議院の情報監視審査会、これは八人で構成していますが、そのメンバーの一人なんですね。特定秘密にアクセスできます、条件次第によっては。この審査会は、八人いますけれども、自民党三人、立憲民主党三人、国民民主党、維新、つまり野党が多数なんですよ。
ですから、総理が言っておられることが本当かどうか、私は確認しようと思えばできる立場にあるということですが、それでも構わないですね。主張を続けられますね。
〇石破内閣総理大臣 それは委員の権利として、今そういう立場におられるわけですから、私としてそれをディスターブする立場にはございません。
〇岡田委員 今の総理の発言を踏まえて、審査会で議論したいというふうに思います。
ただ、こういう形で、私は、安倍さんは、いろいろお考えになった結果だとは思いますが、安倍さん御自身が言っているのは、やはり中国とロシアの間にいわばくさびを打ちたい、そのために平和条約の締結まで持っていきたい、そういうお考えもあったと聞きますが、だけれども、急ぎ過ぎて、国土の、今まで一度も日本固有の領土以外の領土ではなかった四島の中の七%の部分だけで妥協した疑いが濃いということなんです。七%で妥協したけれども、結局それも取れなかったということなんです。だから、これは私は大きな戦後の外交敗北の一つになるというふうに思うんですね。
そういうことがなぜ起こったのかということを、私は、しっかり検証しなきゃいけない。二島に限っていないと総理は言われるかもしれません。それは確認します。しかし、少なくとも、あえて日ソ共同宣言のみを交渉の基礎にしたということが妥当だったのかどうか。
もっと言えば、首脳間で何回も会談を重ねられました。このシンガポールもそうです。首脳間で会談を重ねる、ほかの人を入れない、通訳以外入れないというのは、お互いの信頼関係を増す上では、それは重要な手法だと私は思います。しかし、具体的な交渉をそういったトップだけでやる、あとは通訳が入っただけというのは、私は、大きなリスクを抱えているというふうに思うんですね。私は、プーチン大統領がそもそも、平和条約締結、その気持ちがあったのかどうかすら疑わしい、最初からその気がなかったんじゃないか、ロシア外務省の対応などを見ているとそういうふうにすら思えるわけですね。
だから、総理もこれからトップとの会談が続くと思いますが、やはり交渉自身は、事務方も入れて、そういう場で行わないと非常にリスクがあるし、とんでもない結果を招くことになりかねない、そういうふうに思うんですが、いかがですか。
〇石破内閣総理大臣 それは、平和条約締結問題のような重要な問題を解決する上で、この場合には安倍総理とプーチン大統領ということでございます、そこにおいて信頼関係を醸成し、率直な会話を行うということが問題解決に大きな役割を果たすということは、それは当然あり得ることでございます。
だけれども、そこで全てが決まるかといえば、それはそうではないわけで、それは、国会の持っている条約の批准というものがあって、そうでなければ、個人的にどんな関係をつくって、どんな合意をしたとしても、国会が国民から与えられている権能として、それは本当に、委員がおっしゃるように、そんなものを大統領と総理大臣、それだけで勝手に決めてはいけませんよということは国会の持っている権能なのであって、首脳同士で勝手に決めていいわけではない、当然のことでございます。それを本当に効力あらしめるかどうかは、まさしく全国民を代表する我々で構成される国会がということでございます。
首脳同士で何を話すことがあっても、それはいいでしょう。だけれども、そこにおいて、それが本当に意味のあるものか、国家として効力を持つものかということを決めるのは国会でございますから、首脳同士がいろいろな忌憚のない話をすること、何らそれは妨げるものではないということでございます。
〇岡田委員 プーチン大統領と安倍総理は何回も、二十数回会って、その多くは事務方を入れずに二人だけで会談をすることを重ねて、そしてこのシンガポール合意に至っているということなんです。私は、そういうことはやはりリスクが高いということを、率直に、しかも、それは一部の官邸官僚が主導する中で行われた、外務省はある意味では置いてきぼりを食っていた。そういうことについて、やはり正しく反省をしてもらいたいというふうに思います。
シンガポール合意について、これは実は文書がない、それから共同記者会見もやっていないということなんですね。しかも、提案したけれども、ロシアの憲法が変わり、国会でも拒否された。そういう意味では、私は、一旦合意したものの、今やそれは無効だという状況にあると思うんです。
したがって、そういうものをこれからの交渉の基礎に据えるのは間違っている。あくまでも日ソ共同宣言と東京宣言を中心に、諸合意を基礎として交渉をするというのが私は日本の外交の取るべき立場だというふうに思いますけれども、総理はあくまでもシンガポール合意というものを交渉の基礎に据えられるんですか。東京宣言と矛盾していますよ。
〇石破内閣総理大臣 私は、基礎に据えるとは一言も申し上げておりません。いろいろな合意があり、いろいろな文書があり、いろいろな宣言がございます。それを踏まえてとは申し上げますが、基礎としてということは一言も申し上げておりません。
私どもとして、繰り返しになりますが、これは皆で共有したいのですけれども、あくまで四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結する、こういう方針は全く変わっておりません。そこで二島にしちゃったとか先行論だとか、そういう立場を政府として確定したことは一度もございません。
〇岡田委員 時の総理が合意しているから問題なんですよ。だから、それを軽く見ない方がいい。私は、今のうちにシンガポール合意については排除しておいた方がいいというふうに提案しておきたいと思います。
時間も限られておりますので、次に、ちょっと日米関係。
総理の所信表明演説の中で、日米関係について触れた部分で、当然のことながら、合衆国には合衆国の国益があり、我が国には我が国の国益があります、だからこそ、率直に意見を交わし、両国の国益を相乗的に高め合うことで、自由で開かれたインド太平洋の実現に資することができると考えます、トランプ大統領とも率直に議論を行い、同盟を更なる高みに引き上げていきたいと考えております、こういうふうに述べられました。
ここの、両国の国益を相乗的に高め合うことでというところが、それが自由で開かれたインド太平洋の実現に資するというところがよく分からないんですが、少し説明してもらえますか。
〇石破内閣総理大臣 それは、あえて所信で石橋湛山を出しましたのは、これは委員もお読みだと思いますが、湛山が、功利的でなければならない、外交はということを言っているのですよね。何か、それを私は読んだときにすごく違和感があったんです、得さえすればいいのかと。いや、そうではなくて、商売というのは、一方が得をして一方が損をする。そのときは、得した方にはいいように見えても、決してそれは続かない。二度とあんなところと取引はしないというようなことになる。お互いが与え合ってお互いが得をするというような、そういうような関係でなければならない。それを功利的なというのだというので、かなり得心をしたところがあるのです。
合衆国と日本の利益というのは当然違います、国が違いますから。利益が一緒ならば、それはまた別のことがございましょう。ですけれども、このアジア太平洋地域において、平和と安全を維持をするということ、自由貿易を維持していくということ、堅持をしていくこと、その上において、国益は違うのだけれども、あくまで自由と平和を守り、そして経済が確実に発展するという環境をつくる上において、どちらがどういう役割分担をするかということが、相乗的に高め合うことになるのだと思っております。
二十数年前と比べてアメリカの力は相対的に落ちているわけで、中国のGDPというのは物すごく上がっておって、インドのGDPというのも物すごく上がっておって、そこにおいて、ではお互いがどのような安全保障の役割を果たしていくかということも、劇的にと申し上げていいと思うのですが、変わっていると思っております。
役割の分担を、また変更もございましょう。ですけれども、それによって果たすべきはこの地域の平和であり、そしてこの地域の経済的な発展だということで、相乗的にということを申し上げた次第でございます。
〇岡田委員 もう終わりますけれども、なかなか今大変な状況ですよね。おっしゃった石橋湛山の考え方は、トランプ次期大統領の考え方とは大分違う。取引だと言っているわけですね。
世界を見渡したときに、お隣の韓国の状況もありますし、ヨーロッパも、ドイツもフランスも、今、内閣が構成できるかどうか、かなり厳しい状況にあります。そういう中でトランプ大統領が一月にスタートするから、やはり日本の果たす役割は非常に大事だというふうに思うんですね。
そこを、総理も私と同じで、どちらかというと理屈の方が好きで、取引とかいうのは余り好きじゃないかもしれませんけれども、しかも、取引だけじゃなくて、やはり理屈は大事なんですね。そこもトランプ大統領としっかりとかみ合わせて。
そして、下手をすれば、アメリカが世界のリーダーでは四年後にはなくなってしまいますから、このままいったら。そういうことに絶対ならないように御努力いただきたいということを申し上げておきたいと思います。
終わります。
本題に入る前に一つ。
昨日、被団協の皆さん、ノーベル平和賞の授賞式がございました。田中熙巳代表委員が印象深い演説を行われました。
ノーベル委員会の授賞の理由は、核兵器使用は道徳的に容認できないという国際的な規範、核のタブーを形成したことに対するノーベル賞の授与であるというふうにされております。私は、今までの被団協の皆さんの御苦労と御努力に心から敬意を表したいというふうに思います。
それに関連して、一つ総理に質問したいと思います。
昨日、我が党の重徳議員が、核禁条約の締約国会議のオブザーバー参加について総理に聞きました。総理の答弁は、オブザーバーとして参加することにどんな意義があるか検討する、こういう答弁でした。
今までの木で鼻をくくったような総理の答弁と比べると、検討すると言われたことは私は半歩前進だと評価しますが、是非、お願いは、この第三回の締約国会議は来年の三月です。ですから、それに間に合うタイミングで検討結果を出してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇石破内閣総理大臣 被団協のノーベル平和賞受賞は、本当にすばらしいことだと思っております。
今委員お尋ねのオブザーバー参加についてですが、別に木で鼻をくくったとは思いませんが、今までの答弁と少し違うのは、オブザーバー参加するということ、参加している国もあります、実際に核の傘を提供されていながら参加している国があって、それが会議においてどのような主張をしたのか、それで会議の流れがどうなったのかということを検証しないでオブザーバー参加もしないということは、私自身としては少し納得のいかないところもあって、これをきちんと精密に検証した上で、さて、我が国が戦争における唯一の被爆国として、その悲惨さを最も知る国としてオブザーバー参加をして、どのような議論を展開をすることが望ましいかということを分析せずして参加しますということは、私は余り正しいことだと思っておりません。
きちっと検証もします、読める限りの議事録は読んでみたいと思っておりますし、どの国がどのように反応したのかというものを見たいと思っております。単に逃げ口上として検討しますと言っているわけではございません。
ただ、いつまでにという期限を区切ってということは、その検証の進捗状況にもよりますので、ここでいつまでということを申し上げることはできないということでございます。
〇岡田委員 今まで、第一回、第二回、どういう議論が行われて、オブザーバー参加をしている国、例えばドイツがどういうことを述べて、どういう扱いを受けたかということは、それは外務当局は当然把握していますよ。ですから、そんなに時間がかかる話じゃないんですよ。是非、三月までに結論を出して、そして三月の締約国会議に間に合うように、来年も予算委員会がまた一月に開かれますから、結論を出していただきたい、そういうことを申し上げておきたいと思います。
さて、今日は、北方領土の問題を中心に、総理と是非議論したいと思って参りました。
総理は、北方領土に関して、所信表明演説で、我が国としては、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持いたしますというふうに言われました。それから、我が党の野田代表の衆議院本会議の質問に対して、平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であるという点で、我が国の立場は一貫いたしております、これまでにも、御指摘のシンガポールでの合意を含め、ロシア側と粘り強く交渉を進めてまいりました、こういうふうに答弁されております。この十二月二日の答弁の前段の部分、四島の帰属の問題であるという点で、我が国の立場は一貫しておりますというふうに述べられました。
そこで、私がお聞きしたいのは、エリツィン大統領と細川総理との一九九三年東京宣言、これは、四島の名前を具体的に挙げて、そこに帰属の問題があるんだということを確認したものです。この東京宣言は我が国の北方領土交渉の基礎の重要な一つである、そういう認識でよろしいですね。
〇石破内閣総理大臣 それは、四島の帰属の問題であるということは一貫をいたしております。その間にいろいろな会談があり、いろいろな合意がありということでございます。それらを全て包括をしながら、この問題を解決に向けて努力をしていくということでございます。
〇岡田委員 戦後の我が国の北方領土交渉、元々は日ソ共同宣言があります。その後、ソ連は領土問題の存在すら否定してきました。それが変わったのは、ソ連からロシアに変わる、そういう段階で、東京宣言、エリツィン大統領の時代ですけれども、四島の名前を具体的に挙げて、そこに四島の帰属問題は存在するんだということを確認した、日ロ間でですね。そういう意味では、私は日本外交の一つの画期的な勝利であったというふうに思うわけです。その後、ずっと日ソ共同宣言と東京宣言を並べて、基本的には、歴代首脳がこれを交渉の基礎にするということを最近まで言ってきたということです。
その東京宣言について、引き続き重要な交渉の基礎であるということを明言してもらいたいんですが、いかがですか。
〇石破内閣総理大臣 ロシアのウクライナ侵略によりまして、今、日ロ関係は厳しい状況にございます。ございますが、我々として、四島帰属の問題を解決し、平和条約を締結するという方針には何ら変わりはございません。
今後、仮に平和条約交渉が再開するということがあったといたしまして、当然のことでございますけれども、今委員が御指摘の東京宣言も含めまして、これまでの日ロ間の諸合意、諸文書を踏まえて交渉に当たるということでございます。
〇岡田委員 東京宣言が交渉の基礎になるということは、総理、お認めいただきました。
そこで、安倍総理の時代のシンガポール合意、これが問題になるわけですね。シンガポール合意というのは、従来、東京宣言と日ソ共同宣言を並べて交渉の基礎にしてきたのを、あえて東京宣言を除外して、日ソ共同宣言を交渉の基礎にするというふうに確認されたということです。つまり、東京宣言を排除しているというふうに考えられるわけですね。ですから、このシンガポール宣言というものを交渉の基礎として認めてしまうと東京宣言が排除される、そういう論理的関係にあると私は思うわけです。
ここのところについて、シンガポール合意について、これからの交渉の基礎にすべきかどうか。総理、どう考えておられますか。
ちなみに、先ほど言いましたように、総理は、御指摘のシンガポールでの合意を含め、ロシア側と粘り強く交渉を進めてまいりました、これはなぜか過去形で言っているんですね。ですから、これからそうするとは言っていないのは、私は幸いなことだというふうに実は思っているわけですね。シンガポール合意を交渉の基礎にしてはいけないというふうに私は思っているわけです。そこのところはいかがなんでしょうか。
〇石破内閣総理大臣 そこで、しましたと過去完了形で申し上げているのと、いたしますと言っていることにそんなに違いがあるわけではございません。そこで……(発言する者あり)いや、政府として申し上げております。
私が先ほどから申し上げておりますのは、今後、日ロ間で、今厳しい状況にございますが、再開をした際には、今御指摘になりましたシンガポールでの首脳会談における合意も含めまして、これまでの日ロ間の諸合意、諸文書を踏まえ交渉に当たるということでございます。これは取る、これは取らないという立場にはございません。
〇岡田委員 ここはよく注意された方がいいと思うんですよ。
今までの、例えば岸田総理の時代ですが、令和三年の本会議における総理の演説の中では、シンガポール合意を含め、これまでの諸合意を踏まえてというふうに、シンガポール合意を明言されました。ところが、令和四年になると、シンガポールでの首脳間でのやり取りを含めというふうに、表現を変えているわけですね。合意という言葉はなくなりました。そして、ウクライナ戦争後は、シンガポール合意に言及していないんですよ。
そういう流れがある中で、今総理がシンガポール合意をあえて言及されるというのは、私は重大なことだし、ここは考え直していただく必要があると思いますが、いかがですか。
〇石破内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりでありまして、大統領、そして我が総理との間でいろいろなやり取りがございました。そのやり取りも踏まえということでございまして、シンガポールにおいて話されたことをどのように位置づけるかということも、この一連の交渉の中で判断をしていくべきものだと考えております。
〇岡田委員 確認ですが、石破総理は、シンガポール合意のプーチン大統領と安倍総理との二人だけのやり取り、それから、その後、外務次官とかが入って、あるいはラブロフ外相も入って確認した拡大会議、二つあるというふうに言われていますが、その議事録は読まれましたか。私は、あらかじめ読んでこの場に来るようにと事務方には言っておいたんですが、読まれましたか。
〇石破内閣総理大臣 当然、読んでおります。
〇岡田委員 それでは、安倍総理御自身も、私との予算委員会のやり取りで、私は、シンガポール合意というのは東京宣言を排除している、だから二島に絞ったのではないか、歯舞、色丹で、そこで国境線を引く、国後と歯舞、色丹の間に国境線を引くというふうに提案したのではないかというふうに問うたのに対して、安倍総理はあやふやな言い方で、はっきり言われなかった。
ところが、次の資料を見ていただきたいんですけれども、最近の著書の中で、安倍総理ははっきりと二島交渉だということを言われているわけですね。
「安倍晋三回顧録」、これは読売の橋本さん始め著名なジャーナリストが聞き取ったものでありますが、いろいろなことを言っていますが、二島返還に向けた交渉をスタートすることになりましたというふうに言っておられます。
それから「宿命の子」、船橋洋一さんが、これは安倍さんだけじゃなくていろいろな人から聞き取った結果を書いているわけですが、安倍さんの発言として、二島返還提案で日本は国家主権を自ら放棄したと言うが、四島を全部握られている中でこれ以上、降りるも何もない、これ以上、下がりようがないではないかと。
つまり、二島返還ということを国会で安倍さんは認められなかったけれども、しかし、著書の中で、あるいは回想録の中で明確に言われているわけですね。ここをどう考えられますか。
〇石破内閣総理大臣 当然のことながら、「安倍晋三回顧録」、あるいは船橋先生の「宿命の子」という、該当部分は読んでおります。
ただ、そこにこう書いてあったからといって、そのことを今、外交交渉の一つの証左として、参考にはなるかもしれませんが、それを一つの確定したものとして、もう御本人もおられないわけでございますし、これが価値があるものだとは思いますが、出版物というものを、確定したものとして、事実としてこれから先の議論に供するということには必ずしもならないということでございます。
〇岡田委員 これは日本を代表するジャーナリストが安倍さんから聞き取って、責任を持って書いた本なんですね。それが事実かどうか分からないというような、そういう御趣旨の発言だと思いますが、それは私はないと思うんですね。日本のメディアを愚弄するものじゃないですか。
安倍さん自身が、安倍回想録については安倍晋三著になっているんですね。それにもかかわらず、総理、どうなんですか、そういった発言を無視して今おっしゃったことになりますよ。どうですか。
〇石破内閣総理大臣 無視をするとは私は一言も申し上げておりません。
そのような出版物というものを、政府の考え方として、ここにこう書いてあるからということでこれからの議論を進めるということには必ずしもならない。そのときの責任ある政府の立場にいる者が発言をするということなのであって、それは立派な方であり、著名なジャーナリストであり、だけれども、それをベースとして議論を進めるということにはならない。それは当然のことでございます。
〇岡田委員 このシンガポール合意の後、その意味は何なのかと、日本のメディアの対応も分かれました。
北海道新聞などは、これは二島に絞った、そういう報道でした。大手のメディアの中には、二島先行返還だ、そういうふうに言われたところもあります。これは事実を全く分かっていない記述なんですよ。つまり、二島を返して平和条約を締結する、平和条約を締結するということは、国境線を引くということなんですから。だから、二島先行などということはここには全くないんです。
とすれば、やはり、歯舞、色丹でいいというふうに、安倍さんが、そこで国境線を引きますというふうに提案したというふうに、私には、考えざるを得ないんですが、いかがですか。議事録を読まれたと言いますが、本当に確認されましたか。
〇石破内閣総理大臣 私は、確認もしていないものを確認したなどということを言うような、そんな無責任な立場には立っておりませんので、そのことは事前に申し上げておきたいと思います。
一九五六年日ソ共同宣言第九項に、これはもう外務大臣まで務められた委員御案内のとおりで、平和条約交渉が継続されること及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されることを規定しているというのが共同宣言でございます。我々日本側といたしましては、ここに言う平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題である、このような一貫した立場に基づき交渉を進めてきたものでございます。
御指摘のシンガポールにおける首脳会談では、日ソ共同宣言、先ほど申し上げました一九五六年日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるということで合意をしたものでございますが、この合意も含めまして、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、その日本政府の立場はずっと一貫をしているものでございます。
〇岡田委員 日ソ共同宣言の我が国の解釈はそうだったかもしれませんし、それにより力を与えたのが東京宣言だった。その東京宣言をあえて排除して日ソ共同宣言だけを交渉の基礎にしたというところが、やはり二島で国境線を引くという提案をしたのではないかというふうに推測されるわけだし、安倍さん御自身も認めておられるということです。
総理が今、議事録を確認したと言われました。
私は、衆議院の情報監視審査会、これは八人で構成していますが、そのメンバーの一人なんですね。特定秘密にアクセスできます、条件次第によっては。この審査会は、八人いますけれども、自民党三人、立憲民主党三人、国民民主党、維新、つまり野党が多数なんですよ。
ですから、総理が言っておられることが本当かどうか、私は確認しようと思えばできる立場にあるということですが、それでも構わないですね。主張を続けられますね。
〇石破内閣総理大臣 それは委員の権利として、今そういう立場におられるわけですから、私としてそれをディスターブする立場にはございません。
〇岡田委員 今の総理の発言を踏まえて、審査会で議論したいというふうに思います。
ただ、こういう形で、私は、安倍さんは、いろいろお考えになった結果だとは思いますが、安倍さん御自身が言っているのは、やはり中国とロシアの間にいわばくさびを打ちたい、そのために平和条約の締結まで持っていきたい、そういうお考えもあったと聞きますが、だけれども、急ぎ過ぎて、国土の、今まで一度も日本固有の領土以外の領土ではなかった四島の中の七%の部分だけで妥協した疑いが濃いということなんです。七%で妥協したけれども、結局それも取れなかったということなんです。だから、これは私は大きな戦後の外交敗北の一つになるというふうに思うんですね。
そういうことがなぜ起こったのかということを、私は、しっかり検証しなきゃいけない。二島に限っていないと総理は言われるかもしれません。それは確認します。しかし、少なくとも、あえて日ソ共同宣言のみを交渉の基礎にしたということが妥当だったのかどうか。
もっと言えば、首脳間で何回も会談を重ねられました。このシンガポールもそうです。首脳間で会談を重ねる、ほかの人を入れない、通訳以外入れないというのは、お互いの信頼関係を増す上では、それは重要な手法だと私は思います。しかし、具体的な交渉をそういったトップだけでやる、あとは通訳が入っただけというのは、私は、大きなリスクを抱えているというふうに思うんですね。私は、プーチン大統領がそもそも、平和条約締結、その気持ちがあったのかどうかすら疑わしい、最初からその気がなかったんじゃないか、ロシア外務省の対応などを見ているとそういうふうにすら思えるわけですね。
だから、総理もこれからトップとの会談が続くと思いますが、やはり交渉自身は、事務方も入れて、そういう場で行わないと非常にリスクがあるし、とんでもない結果を招くことになりかねない、そういうふうに思うんですが、いかがですか。
〇石破内閣総理大臣 それは、平和条約締結問題のような重要な問題を解決する上で、この場合には安倍総理とプーチン大統領ということでございます、そこにおいて信頼関係を醸成し、率直な会話を行うということが問題解決に大きな役割を果たすということは、それは当然あり得ることでございます。
だけれども、そこで全てが決まるかといえば、それはそうではないわけで、それは、国会の持っている条約の批准というものがあって、そうでなければ、個人的にどんな関係をつくって、どんな合意をしたとしても、国会が国民から与えられている権能として、それは本当に、委員がおっしゃるように、そんなものを大統領と総理大臣、それだけで勝手に決めてはいけませんよということは国会の持っている権能なのであって、首脳同士で勝手に決めていいわけではない、当然のことでございます。それを本当に効力あらしめるかどうかは、まさしく全国民を代表する我々で構成される国会がということでございます。
首脳同士で何を話すことがあっても、それはいいでしょう。だけれども、そこにおいて、それが本当に意味のあるものか、国家として効力を持つものかということを決めるのは国会でございますから、首脳同士がいろいろな忌憚のない話をすること、何らそれは妨げるものではないということでございます。
〇岡田委員 プーチン大統領と安倍総理は何回も、二十数回会って、その多くは事務方を入れずに二人だけで会談をすることを重ねて、そしてこのシンガポール合意に至っているということなんです。私は、そういうことはやはりリスクが高いということを、率直に、しかも、それは一部の官邸官僚が主導する中で行われた、外務省はある意味では置いてきぼりを食っていた。そういうことについて、やはり正しく反省をしてもらいたいというふうに思います。
シンガポール合意について、これは実は文書がない、それから共同記者会見もやっていないということなんですね。しかも、提案したけれども、ロシアの憲法が変わり、国会でも拒否された。そういう意味では、私は、一旦合意したものの、今やそれは無効だという状況にあると思うんです。
したがって、そういうものをこれからの交渉の基礎に据えるのは間違っている。あくまでも日ソ共同宣言と東京宣言を中心に、諸合意を基礎として交渉をするというのが私は日本の外交の取るべき立場だというふうに思いますけれども、総理はあくまでもシンガポール合意というものを交渉の基礎に据えられるんですか。東京宣言と矛盾していますよ。
〇石破内閣総理大臣 私は、基礎に据えるとは一言も申し上げておりません。いろいろな合意があり、いろいろな文書があり、いろいろな宣言がございます。それを踏まえてとは申し上げますが、基礎としてということは一言も申し上げておりません。
私どもとして、繰り返しになりますが、これは皆で共有したいのですけれども、あくまで四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結する、こういう方針は全く変わっておりません。そこで二島にしちゃったとか先行論だとか、そういう立場を政府として確定したことは一度もございません。
〇岡田委員 時の総理が合意しているから問題なんですよ。だから、それを軽く見ない方がいい。私は、今のうちにシンガポール合意については排除しておいた方がいいというふうに提案しておきたいと思います。
時間も限られておりますので、次に、ちょっと日米関係。
総理の所信表明演説の中で、日米関係について触れた部分で、当然のことながら、合衆国には合衆国の国益があり、我が国には我が国の国益があります、だからこそ、率直に意見を交わし、両国の国益を相乗的に高め合うことで、自由で開かれたインド太平洋の実現に資することができると考えます、トランプ大統領とも率直に議論を行い、同盟を更なる高みに引き上げていきたいと考えております、こういうふうに述べられました。
ここの、両国の国益を相乗的に高め合うことでというところが、それが自由で開かれたインド太平洋の実現に資するというところがよく分からないんですが、少し説明してもらえますか。
〇石破内閣総理大臣 それは、あえて所信で石橋湛山を出しましたのは、これは委員もお読みだと思いますが、湛山が、功利的でなければならない、外交はということを言っているのですよね。何か、それを私は読んだときにすごく違和感があったんです、得さえすればいいのかと。いや、そうではなくて、商売というのは、一方が得をして一方が損をする。そのときは、得した方にはいいように見えても、決してそれは続かない。二度とあんなところと取引はしないというようなことになる。お互いが与え合ってお互いが得をするというような、そういうような関係でなければならない。それを功利的なというのだというので、かなり得心をしたところがあるのです。
合衆国と日本の利益というのは当然違います、国が違いますから。利益が一緒ならば、それはまた別のことがございましょう。ですけれども、このアジア太平洋地域において、平和と安全を維持をするということ、自由貿易を維持していくということ、堅持をしていくこと、その上において、国益は違うのだけれども、あくまで自由と平和を守り、そして経済が確実に発展するという環境をつくる上において、どちらがどういう役割分担をするかということが、相乗的に高め合うことになるのだと思っております。
二十数年前と比べてアメリカの力は相対的に落ちているわけで、中国のGDPというのは物すごく上がっておって、インドのGDPというのも物すごく上がっておって、そこにおいて、ではお互いがどのような安全保障の役割を果たしていくかということも、劇的にと申し上げていいと思うのですが、変わっていると思っております。
役割の分担を、また変更もございましょう。ですけれども、それによって果たすべきはこの地域の平和であり、そしてこの地域の経済的な発展だということで、相乗的にということを申し上げた次第でございます。
〇岡田委員 もう終わりますけれども、なかなか今大変な状況ですよね。おっしゃった石橋湛山の考え方は、トランプ次期大統領の考え方とは大分違う。取引だと言っているわけですね。
世界を見渡したときに、お隣の韓国の状況もありますし、ヨーロッパも、ドイツもフランスも、今、内閣が構成できるかどうか、かなり厳しい状況にあります。そういう中でトランプ大統領が一月にスタートするから、やはり日本の果たす役割は非常に大事だというふうに思うんですね。
そこを、総理も私と同じで、どちらかというと理屈の方が好きで、取引とかいうのは余り好きじゃないかもしれませんけれども、しかも、取引だけじゃなくて、やはり理屈は大事なんですね。そこもトランプ大統領としっかりとかみ合わせて。
そして、下手をすれば、アメリカが世界のリーダーでは四年後にはなくなってしまいますから、このままいったら。そういうことに絶対ならないように御努力いただきたいということを申し上げておきたいと思います。
終わります。