「トランプ大統領」誕生に対する日本の備えは大丈夫か(夕刊フジコラム 2016/5/12)
私は大型連休中、地方行脚に汗を流した。前半は長崎と宮崎、福岡、後半は秋田と青森を、参院選の候補者と衆院の総支部長とともにきめ細かく回り、街頭演説や国政報告会をこなした。
新しく立ち上げた民進党のお披露目とともに、安倍晋三政権との違いをていねいに説明したが、手応えは予想以上だった。私たちの大きな主張は「憲法の平和主義の危機的状況」と「格差是正への決意」だった。
憲法の平和主義については、多くの人々が危機感を共有していると感じた。昨年の憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認、それに続く安全保障法制審議の強引さと、憲法改正に対する安倍首相の前のめりの発言が原因だ。
経済政策への関心も高かった。
地方では「アベノミクスの実感はない」どころか、「関係ない」という反応が圧倒的だった。青森の日本海側の漁村では、住民の方々が「日々の生活で必死。(アベノミクスは)違う世界の話のように感じる」と語っていた。
九州などでは、避難生活が長期化している熊本地震への対応も注目されていた。被災者支援や被災地の復旧・復興、高齢者や障害者などの弱者が十分なケアを受けられる態勢を、政府は早期に整備しなければならない。
さて、米大統領選の共和党候補者指名争いで、不動産王のドナルド・トランプ氏が指名獲得を確実にしたと報じられている。最終的に大統領になるのかまだ分からないが、同氏の躍進は、米国が抱える問題の深刻さを象徴している。
トランプ氏は「米軍の外国駐留経費の全額負担要求」や「日本車の関税大幅増」など過激な政策を打ち上げている。事実誤認もあるのだろうが、本気だとすれば、大統領に就任した場合の衝撃は計り知れない。トランプ氏の発言を聞く限り、日本政府が日米安保や経済の意義、事実関係を伝える努力をしてきたのか疑問だ。今からでも遅くはない。全力で取り組むべきだ。
通常国会の会期も残すところ3週間、参院選まで2カ月となった。永田町の関心事は、安倍首相が6月1日の会期末に衆院解散に踏み切るかどうかだ。私自身は「可能性は50%以上」とみている。何があっても驚かず、十分な対応ができるよう準備をしている。
「自由」「共生」「未来への責任」という旗を掲げる民進党は、普通の人々が豊かに暮らせる、格差の少ない社会を実現することを目標としている。そして、立憲主義と憲法の平和主義を何としても守り抜く。これは今年夏の選挙の「二大争点」だと考えている。来週には、衆院予算委員会や党首討論が予定されている。安倍首相と経済・雇用政策や憲法・安全保障法制について、徹底的に議論したいと考えている。 (民進党代表)