132回 衆議院・外務委員会
岡田委員 通告いたしました本論に入る前に、ちょっと午前中の質疑を聞いておりまして少し気になるところがありましたので、一、二、大臣にまず御質問させていただきたいと思います。
日米関係でありますが、午前中の大臣の答弁で、日米関係全体として、自動車問題等若干の問題はあるが全体として良好であるというふうに認識しているというお話がありましたが、そこの御認識についてもう少し詳しくお話をいただきたいと思います。
河野国務大臣 日米関係は、戦後五十年、日米安保条約など両国関係を結ぶ幾つかのきずなもありまして、日米両国の関係は総じて良好なものだというふうに考えております。経済、文化、社会あるいは人の往来、その他、両国共同して国際社会へ貢献しようというコモンアジェンダ、その他さまざまな問題について一つ一つ問題を乗り越え乗り越え今日まで来ておりまして、今日の状況では、先ほど申し上げましたように、幾つかの問題はあるけれども総じて日米関係は良好であるという認識を私は持っております。
岡田委員 日米の自動車問題は、私も今回はこういう解決しかあるいはなかったかもしれないな、そういう気がいたします。やはり言うべきことはきちんと日本としても言うべきでありますので、やむを得ない結果であったかもしれません。
しかし、この自動車の問題のバックグラウンドとして巨大な貿易インバランスが存在するわけで、もし仮にこの自動車の問題が何らかの形でけりがついたとしても、貿易インバランスという問題はそれとは関係なく存在し続けるわけでありまして、やはり貿易インバランスについてどうするのかということがきちんと出てこないと、自動車の問題というのはそのうちの一つがあらわれてきたにすぎないわけでありますから結局同じことでありまして、そういう形で個々のイシューが出てきてそのたびにぶつかり合う、そして基本のところが変わらない、私は、こういうことでは日米関係に大変な悔いを残すことになるのではないか、このように考えますが、この点につきまして大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
河野国務大臣 これは語ればさまざまな視点でいろいろな議論ができると思うのです。例えば自動車の問題も、これが国と国との、政府と政府との話し合いということで議論をすべき分野と、メーカーとメーカーがもう少し話し合うことができなかったかとかあるいはディーラー同士の話し合いがもう少しあった方がよかったのではないかとか、恐らくこれはさまざまな議論があると思うのですね。しかし、これは、今そうしたことを申し上げても、この場面では意味のないことでございます。
したがって、これまでの自動車の問題は、我が方としては、いわゆるガバメントリーチというのでしょうか政府が手の届く範囲内で我々とすれば協議をして、これは政府間の協議である以上それが当然だと思いますから、そういうことはやろう、こう言ってきたわけで、この辺の相互の理解というものがあればもう少し問題の処理の仕方というのは変わってきたかもしれない、そういう問題はあると思うのです。
それからまた、貿易黒字の問題、インバランスの問題はこれまた二国間だけのインバランスで物を考えることがいいのかもう少しマルチで考えるべきではないかという議論も他方あると思います。したがって、これを二国間だけの黒字、赤字の問題で解決をしようということだけの議論で果たしていいかどうかということも、これは専門家同士が大いに議論をすべきだろうと思います。
また、我が国の黒字も、御承知のとおり徐々にではありますが減ってきているという事実もございます。こういった努力というものもなされているということを考えますと、基本的に両国が国際社会の中にあって最も重要な二国間関係だという認識を持ち、現実にそういう状況であるわけでございますから、誠意を持ってこの関係を良好に保つため、あるいは、さらによくするための努力というものがあらゆる分野で行われていくということが望ましいというふうに私は思っておるわけでございます。
岡田委員 私が申し上げたかったのは、自動車の問題はこれは役所と役所、政府と政府であるいは処理できる問題、処理すべき問題かもしれませんが、その背景に巨大な貿易インバランスあるいは日本の貿易黒字、こういうものがあるということであれば、やはりこの巨大な貿易黒字をいかにして減らしていくか、是正していくかという、ここは役所と役所の問題ではなくて政治の問題だと私は思います。政治の指導力、リーダーシップが見えないというところに今日の日米関係についていろいろな問題が出てきている、そんな気がするわけであります。
規制緩和の計画も五カ年計画が発表されましたし、いろいろなことを言われるのですが、しかし、それがメッセージとしてきちんと伝わっていかない、あるいは中身がないせいかもしれませんし、やり方が悪いせいかもしれません。
いずれにしても、これだけ日米関係の中で懸案がある中で、村山総理なり河野外務大臣がもう少し前面に出て、そして日本のリーダーとして、政治家としてこの問題をどういうふうに取り扱っていくのかそういうものがあってほしいな、このように私は思うわけであります。
日米関係については、私は大臣とは大分違いましてもっと悲観的な見方をしておりまして、東西対立がなくなった今、アメリカの父親のような保護といいますか庇護といいますか、そういうものはもう全くない、まさしく裸の中に日本とアメリカが対峙しているという状況の中で、やはりきちんと解決すべきものはしていかないと次第次第に日米両国の友好の基盤というものは侵食されていく、そういうふうに私は認識をしているところでございます。
以上の点につきまして、何かもし大臣としてのお考えがありましたら、お聞かせをいただきたいと思います。
河野国務大臣 確かに、政治のリーダーシップというものを求める議員の御意見というものは一つのお考えだろうと思います。ただ、それは一体具体的に言うとどういうことなのか。つまり、政治が民間の経済、民間の企業に命令ができるかというと、そういうことではないのでしょう。私は基本的に日本の経済について考えるのは、黒字が多いから黒字を減らさなきゃいかぬ、減らさなきゃいかぬ、何か黒字を減らすことが大事な政策だということもいかがなものかという気がするのです。
いや、基本的にこうしたインバランスがいいと私は申し上げているのではありません。そうではなくて、日本の経済はやはり生産性が上がっていく、そういうことが基本的には望ましい、そういう状況の中で、しかし国際関係というものはちゃんとマネージされるということでなければいけない。
つまり、日本の経済が怠惰になって、その結果黒字が減ってちょうどいいあんばいになるということがいいはずはないのであって、やはり日本自身は例えば技術の開発も行われ、経済の中には生産性の向上というものもきちんと追求されて、しかし国際経済の中では日本の置かれている立場というものはちゃんとマネージメントされるということがいいというふうに私は思います。そのために、では政治が何をするかということを考えると、政治が経済の中でなすべき分野というものは一体どのくらいあるだろうかという感じもしているわけでございます。
日米関係については、岡田議員は私と意見が違うとおっしゃいましたが、基本的には少なくとも現時点がそんなに悪い状況だと議員も思っておられないのではないかと私はあえて思うわけでございます。
確かに、かつてジャパン・バッシングと言われて、最近は新聞の見出しにもジャパン・パッシングなんという言葉が出て、どうも、ともすればアメリカのアジアに対する関心というものは日本を通り越して、日本よりもっと東の、あるいは南のアジアに対してアメリカの関心が向けられている。日本は空を仰ぐと上を通り抜けていっているという、そういう見出しもございますけれども、しかし、日米の依存関係というものはそれは大変に大きなものがあって、この日米相互の依存関係というものはそう簡単に変われるものではない。
いや、だからといって、先ほど申し上げたように、あぐらをかいていていい、怠惰でたかをくくっていていいというふうに私は思いません。我々がやらなきゃならぬことはございますけれども、我々がなすべきことをきちんとしていけば、私はこの二国間関係というものは引き続き国際社会の中で最も重い、重要な二国間関係となっていくことができる、そういうふうに考えております。
岡田委員 日米の依存関係、非常に大きいものがあるからそう簡単に崩れるものではないという御趣旨の御答弁だったと思うのですが、確かに経済の問題ではそうであろうと思います。これだけもうお互い入り組んで、いろいろ国と国が違いますから限界はあるにしても、双方が完全に一体化しつつあるような、そういう状況だと思いますが、政治や安全保障の面では、私は非常に脆弱な基盤の上に立っている、アメリカにとって日本というのはそれほど、場合によっては必要としない、そういう場面も来得るような、そういう状況ではないかこのように思っております。ここは認識の違いだと思いますので、これ以上申し上げません。
いずれにいたしましても、私が申し上げたかったことは、政治のリーダーシップということを私申し上げましたが、これは別に民間企業の経済活動に政治が介入をしろとか、そういう次元の話ではもちろんございません。むしろ、民間企業の活動がもっと積極的に行われる、そして輸入がふえていくように規制を緩和することを初めとして、日本経済の構造改革というものをもっと政治がリーダーシップをとってやるべきだ、そういう意味で私は申し上げたわけでございます。
いずれにいたしましても、この問題はこの辺にさせていただきたいと思います。
次に、ゴラン高原へのPKOの派遣問題について、連休前にも質問させていただいたところでございますが、まず、この派遣の決定がいまだになされていないということでありますが、タイムリミットはいつなのか外務省の当局の方にお聞きをしたいと思います。
柳井政府委員 タイムリミットの問題につきましては、我が国のUNDOF参加問題につきまして昨年五月に国連から非公式の打診を受けて以来約一年が経過しているわけでございます。そういうこともございまして、カナダ側から、参加の可否についてできるだけ早期に連絡してほしいという要請を受けております。
さらに、カナダ側からは、交代に際しまして、カナダ国内の人員の人事の計画もございますので、それとの調整もする必要があるということで、実際の交代時期を大体六カ月ぐらい前に知らせてほしいというふうに要請を受けております。
また、自衛隊側の事情といたしましても、参加が決定した場合にはいろいろな研修その他の準備期間が必要だということで、やはり半年程度必要だというふうに言っております。
一方、カナダ部隊におきましては、毎年二月、五月、八月、十一月と、三カ月ごとに要員を一部ずつローテーションで交代させておりますので、その交代時期を目安にする必要もあるということで、現時点で考えられます最も早い交代時期といたしましては、以上にかんがみまして、十一月ということになると思います。
以上のことから見ますと、仮にということでございますが、仮に最も早い十一月派遣をめどとするのであれば、近々結論を得る必要があるというふうに考えております。
岡田委員 今の御議論を総合いたしますと、五月の中ごろまでには大体決めなきゃいかぬのじゃないかというふうに考えるわけですが、いまだに派遣の決定がなされていない真の理由はどこにあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。これはまあ政党間の話ですから、ぜひ自民党総裁としての河野大臣にお願いしたいと思います。
河野国務大臣 繰り返しで申しわけない気持ちがいたしますが、政府視察団と与党三党の視察団が同時期に出まして、政府側の報告書が提出をされております。与党側の報告書も提出をされておりますが、それは視察に行かれた方々の報告書であって、それを与党としてどう評価するかということについて御議論がなされているというふうに承っております。今各党が、それぞれその報告書を評価して、各党の態度といいますか考え方について議論をしておられるようでございます。最終的には与党三党の結論というものが導き出されなければならないと思います。
現在はそのプロセスでございますので、何党がどうであるかということはちょっと私の立場、私の立場は非常に妙でございますけれども、今少なくとも外務大臣としてここで御答弁をする立場から、申し上げるのは控えさせていただきたいと思います。
岡田委員 連休前に同じ質問をしましたときに、同じような大臣の御答弁ですが、一つだけ違う点がありまして、連休前には、調査団は帰ったばかりだからというのがそれに加わっておりまして、それから二週間たって、さすがにそのことは言えなくなったのかなという思いで聞かせていただきました。
新聞等によりますと、社会党の中で、PKF本体業務との一体性を排除できないのではないかということが最大の理由で、もう一つは、要員の撤退とか武器使用について独自の原則が貫かれるのか疑問があるというようなことで、結論が社会党の中で出ていない、こういうふうに聞いておりますが、このゴラン高原へのPKO派遣問題で、PKF本体業務との一体性を排除できないというのは私にはちょっと理解しがたい理由でありますが、この点、外務省としてはどのように見ておられるのか。
柳井政府委員 いわゆるPKF本体業務との関係でございますが、UNDOFへの参加が決定されました場合には、我が国の輸送部隊はいわゆる後方支援部隊に属するわけでございます。したがいまして、停戦の遵守状況を監視する等の業務を行う歩兵部隊とは別個のものであることは御案内のとおりでございます。
この輸送部隊の業務といたしましては、UNDOF全体の活動に必要な、例えば食料品等の必要な物資を主要港湾等から輸送する、そういう業務内容でございます。こういうような業務内容につきましては、先般現地に参りました調査団の方々が確認されているところでございます。
したがいまして、我が国部隊が行う輸送業務はいわゆる平和維持隊の後方支援業務に該当するわけでございまして、自衛隊の部隊が行う業務は現在凍結されているいわゆる平和維持隊本体業務には該当いたしませんで、私どもといたしましては、これらの業務と一体化するというようなことはないというふうに考えております。
岡田委員 要員の撤退や武器使用について独自の原則、独自の原則という意味は、我が国の国連平和協力法に定める原則が貫かれるかどうか不安があるということも述べられているわけでありますが、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
柳井政府委員 このいわゆる五原則の中の我が国独自の撤退と武器使用の原則につきましては、与党の調査団報告におきまして、最初の三原則については確認された。しかし、撤収と武器使用の問題については若干の確認を要する課題がある。したがって、この二項目に関連して、我が国として国際平和協力法の原則を貫くことに支障がないか国連との間で明確にしておく必要があるということが述べられておりまして、政府調査団の方でも確認をすることが適当であるというようなことが書いてございます。
この二つの調査団は四月十九日に東京に帰ってこられましたが、四月二十日に国連事務局に念のため確認をいたしました。御案内のとおり、我が国の五原則につきましては、法案審議の最後のころだったと思いますが、そのころからいろいろな機会に国連側に説明をいたしまして、国連側としてもこれで問題はないということを言っておりますし、またカンボジアその他の活動に既にこの五原則で参加した実績がございますので、私どもとしては問題はないと思ったわけでございますが、念のために確認をいたしました。
その結果、国連側といたしましては、このUNDOFへの日本の参加に関しても、日本が五原則を前提として参加を行うことについて何の問題もない、その点は双方の共通の理解があるというふうに確認をしております。その後も別な機会に確認を求めて、念のために確認をした経緯がございますが、いずれの場合にも問題はないという回答に接しております。
岡田委員 このゴラン高原へのPKOの派遣問題ですが、この件について国連の方からいろいろお話があったと思います。大臣も直接たしかガリさんとお会いになったときにその話が出たのじゃないかと思うのですが、今の点も含めまして、どのレベルで今まで要請があったのか。国連はどなたが日本のだれに対して要請をされたのか。あるいは、政府調査団をこの前出されて、各国の当事国の首脳とお会いになっていると思いますが、例えばどういう方とお会いになって、そのときにこの話が出ているのか簡潔にお話しいただきたいと思います。話の中身までは結構ですから。
柳井政府委員 いろいろ実は国連とは日常的な接触がございますので、かついろいろな機会に国連側から非公式な打診がございましたことから、正確にちょっと記憶しておりませんけれども、国連のこのPKOをやっております直接の責任者は事務次長のレベルでございます。ただ、それ以外にも、例えば大臣がガリ事務総長にお会いになったときとか、あるいは現地での接触等を通じまして、いろいろな形で要請なり、あるいは参加すれば歓迎するというようなお話があったわけでございます、要請と申しますか打診と言った方がいいかもしれません。
岡田委員 ガリ事務総長みずから大臣にお話があった、あるいは政府調査団をわざわざ出して、現地でそれぞれ各国の首脳がこの点について日本に対して期待を述べたり要請をしたりした。そういう全体の国際情勢がある中で、なかなか結論が出ずにここまで来ている。私は非常にこれは日本の信用問題といいますかそれにもつながってくる状況ではないかこのように思うわけであります。
先ほど、五月の中旬ぐらいまでに結論を出さないと十一月に間に合わないという話がありましたが、もし結論が出ないときに、それはそのままにしておかれるのでしょうか。それとも、五月中旬までに結論が出ないときには、今回のこのゴラン高原へのPKO派遣問題についてはきちんとお断りをされるのでしょうか、どちらなのでしょうか。
河野国務大臣 余り、五月の中旬と、こう詰めた言い方を私はまだするつもりはございません。三つの党が相談をするわけでございますから、若干時間がかかるということはあるかもしれません。しかし、先ほど政府委員が御答弁申し上げましたように、仮に十一月の交代時期に間に合わそうと思えば、それぞれ六カ月程度の準備期間が要るということは、かねてから言われているわけでございますから、大体常識的に考えられる時期には、十一月に交代を引き受けましょうという返事をするべきだと思います。
仮にそれが間に合わないときにはどうするかというお尋ねでございますが、私どもとしては、これがだめなら次はどれというほど、まだいろいろ考えているわけではございませんで、私どもとしては、今与党三党での御相談を注目して、その結論を待って我々として判断をしたいというふうに思っているわけでございます。
岡田委員 いずれにしましても、十一月に間に合わないのなら、それなりのきちんとした理由をつけて説明をしなければいけないと思うのです。ひょっとしたら十一月に間に合うように出るかもしれませんよという期待をいつまでも持たせるわけにはいかない問題だと私は思うのですね。
では、そのときにどういう理屈をつけて説明をされるのか。今いろいろお聞きしておりましても、社会党の述べておりますPKF本体業務との一体化の危険性があるとか撤退やあるいは武器使用について疑問があるとか、そういうことは明確に国連のサイドで否定をしてきているわけでありますから、理由がないのじゃないか。一体どういう理由で参加できないということを御説明されようとしているのかその点について御説明をいただきたいと思います。
河野国務大臣 まだ結論が出ないと言っているわけではないのでございまして、だめなときだけ想定してあれこれ考えるよりは、いい場合どうするかということも考えなければなりませんし、まだ、だめなときを前提にして考えておらないのでございます。
岡田委員 私どもも、与党時代に連立政権の難しさというものは経験をしておりますので、大臣のお立場もなかなか大変なものだと思いますが、しかし、そろそろタイムリミットは来つつあって、どこかでやはり言うべき方が言わないと、この問題はまとまらないのじゃないか、そんな気がいたします。
先ほど、同僚議員の質問に対して大臣の方は、政府調査団の報告を踏まえて最終判断することになるのではないかという言い方をされましたので、私はいい結果を出していただけるだろうというふうに期待はしておりますが、いずれにしても、いつまでも結論が出ずに時間だけが過ぎていくということですと、一体日本外交というのはどうなっているのだ、だれが物事を決めているのだ、あるいはどういう方針でやっているのだ、こういうことになりかねないわけでありますので、先ほど言いました、ガリ事務総長やあるいはカナダやあるいは関係国の首脳も巻き込んだ話でありますので、ぜひ近日中に大臣のリーダーシップを発揮していただいて、いい方向でおまとめをいただきたい、このように思うところでございます。
それでは、このPKOの問題はこの辺にさせていただきまして、条約に入る前に、経済協力の問題について若干お話をいただきたい、こう思っております。
まず、議論に入ります前に、経済協力、政府開発援助の基本的な目的というのは一体何なのだろうか、この点についてまず簡単にお答えをいただきたいと思います。
平林政府委員 お答え申し上げます。
先生御指摘の政府開発援助の目的でございますが、政府開発援助大綱、ODA大綱に定められておりまして、広範な人づくり、経済社会基盤、これには国内の諸制度を含むわけですが、経済社会基盤、さらには基礎生活分野の整備、こういうものを通じまして、途上国における資源配分の公正あるいは効率、さらにはよい統治を実現する、その上で健全な経済発展を実現することを目的とする、こういうことが定められております。
また、このような目的に沿って日本の支援を継続することによりまして、我が国とそれぞれの途上国との間の友好関係、さらには、そういうような発展した途上国とほかの諸外国との良好な関係、こういうものが図られる、これが日本のためにもなるというようなことが全体の目的か、こういうふうに心得ております。
岡田委員 いろいろお話しいただいて大変感謝しておりますが、ほとんどよくわかりませんでした。
私ども、地元で一般の住民の皆さんとお話をしておりますと、よく出る話が、どうして一兆円もかけて経済協力なんかしなきゃいけないのか、そんなぐらいなら税金まけてほしい、こういう話が実はかなり出るわけであります。そのときに、私どもいろいろ説明はするわけですが、もし、大臣の地元で有権者の皆さんにそういうふうに言われたときに、一言で納得させるためにどういう言い方をされるのかお話をいただきたいと思います。
河野国務大臣 我々は、国際社会の中で生きているわけです。この地球上にはさまざまな国があり、さまざまな人が住んでいて、我が国がこれだけの経済力を持つに至った理由は、やはり国際社会が平和で、しかも広い世界を相手に我々が仕事をすることができているからだ。そこで我々は、我々が得た経済的な力をさらに国際社会のために貢献する、それによって開発途上の国々の民生を向上させる、そのことがまたさらに大きな経済の輪というものができることになるのではないか。
さらにまた、別の視点からいえば、それは我が国にもそれぞれ不十分な点があり、もっともっとと思う気持ちはあるけれども、目を少し遠くに向ければ、例えば、アフリカに、あるいはアジアの一角には、依然として食べ物がなくて子供が死んでしまう、そういう国がたくさんまだある。そういう国に対して我が国が支援をすることができる、そういう立場に今いるということを考えてほしい。それは、我々がかつての、昔のことを思い返せば、五十年前に、我が国も焼け野原であった時代に多くの国々から支援を受けたこともあるではないかということを考えれば、我が国もまたそれだけのことを国際社会のために今できる立場に立っているということを考える必要がある、こんなふうに申し上げたらどうかと思います。
岡田委員 先ほど事務当局の方からお話がありましたように、平成四年に政府開発援助大綱ができているわけであります。改めてこれを読み直してみまして、私は、本当にわかりにくい大綱だな、何を言いたいのかよくわからないなという思いであります。恐らく国民の皆さんも同じ思いであろう、こういうふうに思うわけであります。
余り揚げ足取りをするつもりはありませんが、例えば、基本的理念のところで四つのことを述べている。これは私、これを読んでも本当に四つなのかどうかもよくわからかいのですが、外務省の説明などを聞いておりますと、四つのことを述べているのだ、こういうふうに言われるわけであります。
例えば、そのうちの一つが、環境の保全ということであります。「環境の保全は、先進国と開発途上国が共同で取り組むべき全人類的な課題となっている。」こういうふうに書いてあります。それからもう一つは、自助努力支援について述べている、こういうことであります。
ただ、基本理念というのは、この経済援助、政府開発援助をするための哲学ともいうべきものでありまして、そういうものの四つのうちの一つが、環境の保全であるとかあるいは自助努力の支援である、これはちょっと私はよく理解ができないわけでありまして、基本理念というのはもう少し根本的な、なぜ必要かという哲学を述べるところであるにもかかわらず、こういう具体的な、対象分野でありますとかあるいは援助の仕方が書いてあるというのは、どういうふうに考えればいいんだろうかこう思うわけでありますが、その点、外務省の方はどうお考えがお聞かせをいただきたいと思います。
平林政府委員 ODA大綱は、多少わかりにくいというところがあることは私も否定しないところではございますが、したがいまして、これがいつまでも万全で、いいということでもないと、正直なところ考えております。日本の援助政策が進展するにつれ、あるいは国際情勢や開発途上国の情勢が進展するにつれ、こういうものも少しずつ変わっていくべきものだとも思いますが、ここで定められております環境保全あるいは自助努力の支援、こういうものにつきましては、やはり我々としては理念に入るのではないかというふうに考えております。
環境保全につきましては、環境分野だけを援助するということではございませんで、環境に直接かかわるプロジェクトを優先するという意味ももちろんございますが、ありとあらゆるプロジェクトを取り上げていく、援助していくという場合に、環境に十分配慮していくというようなこと、これを理念として掲げているわけでございまして、日本のありとあらゆる援助の計画の中で環境のことを重視していくということであるとすれば、これは理念であろうかと思っております。
また、自助努力の支援という点につきましては、これは、日本のみずからの経験、あるいは東アジア諸国等の成功例にかんがみまして、こういう自助努力がないと成功しないということをもって日本の援助を行う場合に相手国に慫慂している理念でございます。したがいまして、これも日本の、独自ではございませんが、日本が非常に強く説得力を持って訴え得る考え方でございますので、日本の援助政策の一つの理念ということで規定して差し支えない、こんなことを考えているわけでございます。
岡田委員 余り細かく言うつもりはありませんが、私も環境問題は極めて大事な問題だと思いますが、では環境問題のほか大事な問題はないのか。例えば、地球規模的問題としては、環境問題と並んで人口問題がある。人口問題はどうしてここに書かないのか。あるいは、基礎生活分野とか人づくりとかそういう分野はどうでもいいのか。どうでもいいとは言いませんが、なぜここに一つだけ出てくるのかよくわからないところであります。
基本的に、私は、援助の基本理念としては最初の二つの段落だろうと思います。最初は人道的な見地からの幅広い援助である、そして二番目は、相互依存関係のある中で我が国が貢献をしていく、この二点に集約されるのではないかこういうふうに思うわけであります。
前者の人道的援助の場合は、これは人道的観点ということですから、日本の国益というよりは、より広い見地に立って幅広くやっていく、こういうことでいいんだろうと私は思うのですが、二番目の我が国の相互依存関係という点については、やはり国益ということを念頭に置いて当然援助もやられるべきである、こういうふうに思うのですが、そこのところについては基本的にどうお考えでございましょうか。
河野国務大臣 お答えをする前に、自助努力を支援するということは、私は大変大事な理念だろうと思いますね。自助の意識がない、自助努力をすることを考えない、そこに押しかけていって援助をする、それは本当の援助かどうかという問題がありまして、やはり自助努力あるいは自助の意識というものがあるということがこの支援のために非常に重要だ、これは私は大事な理念なんだろうと思っております。
それから相互依存ですけれども、これもつまり国際社会というものを、我々はできることなら相互依存関係をみんなで持ち合う、そういう社会というものが私は望ましいというふうに思っているわけです。私は、そう思っているということがここに書いてあるという意味ではないのですが、そういう意味でも相互依存関係というものを重視する、あるいは相互依存関係に着目をするということは大事なことだと思います。そうしたことに着目をした支援というものはやはり重要な考え方だろうというふうに思っております。
岡田委員 そういう考え方に立ったときに、日本にとっての国益、これは狭い意味の国益ではありません、広い意味での国益という観点に立って、やはりここの相互依存関係というところの援助の相手方あるいは援助の中身、こういうものも考えていかれるべきではないかと思うんです。最初の人道的援助のところは、ばらまきと言っては言葉は悪いかもしれませんが、ある程度広く薄くやっていく、しかし相互依存のところは、日本の国益というものを考えて、つまり我が国国民の豊かさあるいは平和、そういったものを確保していくという観点で、ある意味では戦略的にそれをやっていく、そういう考え方の整理でよろしいんでしょうか。
河野国務大臣 私は、そう思います。人道援助の場合には、やや緊急的に支援をするというケースがあろうかと思いますが、今おっしゃいました後段の問題は、国際社会全体がよくなるということが結果として国益にもなるということもあるわけでございます。ただ単に戦略的にここを応援しておくことが何か輸出できるとか、資源が確保できるとかという、そういう意味の戦略、それも私は全くないとは申しません。しかし、全体に国際社会がそのことによって安定してくるということは、我が国の国益にも合致するというふうにも見るべきではないかというふうに思います。
岡田委員 どのくらい重点を置いてやるかという問題だと思いますが、限られた予算の中でそれを効率的にやっていくときに、もちろん全部できればこれは一番いいわけでありますが、限られている以上、どのくらい国益の観点というものを前面に出してやっていくのか、こういう問題だと思います。私は、もう少しその国益の観点ということを正面から大綱の中でもうたってよかったんではないか。そういうことがないものですからなかなか国民にとってはわかりにくい。これはやや視野の狭い見方かもしれませんが、例えば、どうして日本から遠く離れた国の経済援助まで日本はしなきゃいけないのか。もちろん人道的援助ならわかるけれども、人道的援助と言えないような援助までどうして国民の税金でやらなきゃいけないのかそういう声もあるわけでありまして、そこはやはり、もちろんそういうもの全部やめると言っているわけじゃありませんが、日本にとってここの国はこれだけ大事な関係だからこういう援助をするんです、そういう立て方ではなかろうかそんな気がするわけであります。その辺がはっきり出ていないところにこの政府開発援助大綱の基本理念のわかりにくさが潜んでいるんではないかそんな気がするわけであります。
それでは次に、同じ援助大綱の原則のところであります。
基本的に四原則、川から用まであるわけでありますが、これがきちんと機能しているというふうに大臣お考えでしょうか。
河野国務大臣 原則というものを設けて、その原則というものを我々も考え、先方にもその原則が我が国にあることを伝えるという意味で、四原則というものは一定の効果を上げている、一定の効果と言ってはいけないのかな、一定の機能を果たしているというふうに思います。
岡田委員 きょうは各論をするつもりはありませんが、例えば中国の問題等を見ておりまして、果たしてこの四原則がある意味があるんだろうかそんな気がするわけであります。よくよく読んでみると、さすがお役所が一生懸命つくられた文章だけありまして、四原則といいながら、これは無原則に近い状態ではなかろうか、こういうふうに思います。
最初の柱書きのところに、「政府開発援助の実施に当たっては、国際連合憲章の諸原則(時に、主権、平等及び内政不干渉)及び以下の諸点を踏まえ、相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断の上、実施する」、こう書いてあります。四原則以外に、例えば内政不干渉の原則についても考えなさい、あるいは二国間関係についても総合的に判断しなさい、こういうふうに書いてあるわけで、ここまで書かれてしまうと、結局四原則がどこかに行ってしまって、実際どういう結論でも導き出せるんじゃないかそんな気がするわけでありますが、ここのところについてもう少しきちんと整理して、そして我が国としてはこれだけは譲れない、そういうふうに限定的にお書きになるおつもりはありませんでしょうか。
平林政府委員 今先生御指摘のように、注書きには、全体の状況を総合的に判断した上で四原則を適用する、こういうふうに書いてございますが、四原則、それぞれ重要だと考えられますのでこういうような運用をしているわけでございます。極力その四原則を適用して、援助を停止しないで済むように、相手国に対しましてはいろんな点で注文をつけるということをやっております。
環境につきましても、御承知のように、中国の円借款の交渉ではいろいろ強いことも言いましたが、四十件中十五件を環境案件にするようにさせましたし、軍事的用途に使わせないということでは、恐らく例外なく適用されている原則だと思います。軍事費の支出あるいは核兵器等大量破壊兵器等の問題につきましても、中国、インドあるいはパキスタン等々の国につきましてはそれなりの注文をつけております。民主化の促進、基本的人権、市場経済化につきましても同じでございまして、目的は、できるだけ相手にそういうことを遵守させて、いい方向に持っていくということでございますので、外交的な折衝あるいは援助協議の場でそういう努力をしているわけでございます。
ただし、一定の限度を超えて、どうしてもこの原則上許容できないという事態がございます。そういう場合には、相手国に一通り言った上で援助を停止する、あるいは部分的にカットするということもございまして、一時のミャンマーは全面的に停止したこともあります。スーダン、ナイジェリア等は今でも停止しております。ハイチもやっと最近解除したばかりでございます。また、ODA大綱ができる前でございますが、天安門事件のときには中国への援助も停止しました。
したがいまして、この援助の原則は実施されていないということではございませんで、今申し上げましたような考え方あるいはアプローチの仕方でやっているわけでございますが、余り厳密に考えて規定してそのとおり適用しますと、それこそ日本の全体の国益との関係でいろいろぐあいの悪いことも起こるのではないかとも思われます。そういう点も含めましてこの大綱ができているものと理解しておりまして、その精神に従って極力運用するように、政治的なレベルの御決定を仰ぎながらやっているというのが現状でございます。
岡田委員 なかなか外務省の御苦労もわかるわけでありますが、今のこの四原則全体じゃなくて、その中の特に重要な部分について限定をして、例えばこれを法律に書いて、そして国会でも常に、具体的な案件の中でややグレーなものについてはこの場で議論をし、そしてその結果が反映できるようにする、それこそが私は議会制民主主義をしいている理由があるところじゃないか、こういうふうに思うわけですけれども、そういう援助四原則のうちの特に重要な部分について法定化をするということについてはどういうお考えでしょうか。
河野国務大臣 御承知のとおり、この政府開発援助大綱というものは、九二年に決めたわけでございます。それで、我が国の国際貢献の重要な柱でございます援助の基本理念や原則をこういうふうに定めまして、この大綱を踏まえて今日まで実施してきたわけでございます。
このODA四原則の運用に当たりましては、相手国との二国間関係、その二国間の関係の中にはさまざまな関係がございます。この二国間関係、さらには相手国の輝かれている安全保障関係、つまり周辺国との関係というものも考えなければならない部分もございます。あるいは経済社会状況、そういったものを総合的に考えるということになりますと、なかなか一つのマニュアルにすべてを当てはめるというわけにいかない部分がどうしても出てきてしまう。その結果、一つに決めてしまうと機動性を欠く場合がある。確かに、御指摘のとおり、決めることによって相手に対する説得力といいますかそういうものが出てくるということはあると思います。しかしまた他方、二国間関係を考えてみて、あるいはその国の置かれている立場を考えてみて、これがあるためにどうしてもここで援助を打ち切る、あるいは支援ができないということから来るほかの問題を引き起こすということを考えますと、この原則を我々としては大事にしながら実施をするということがやはり適当ではないかというふうに思っているわけでございます。
何といっても、援助でございますから、タイムリーな援助というものが必要でございます。これは相手国の考え方でありまして、どういうふうに申し上げればいいかわかりませんが、国によっては内政干渉ととられるという場面もあったりして、これは支援をしようというのに感情的に悪感情を持たすというようなことがあっても、それは決していいことではございません。要は、この四原則というものをさらに大事に守る、あるいは相手に守らせるというための努力を外交的にさらにしっかりやるということが重要なのではないかというふうに思っております。
岡田委員 実は、私も法制化することについて確信があって言っているわけではなくて、外務省の御意見も聞きながら頭の中を整理している最中であるわけですが、参議院の方で国際開発協力基本法の問題というのが以前に出てまいりました。その中にもODA大綱の法文化の問題というのが入っていた。あるいは最近、五月三日に朝日新聞が、これは経済協力だけではなくて、「国際協力と憲法」ということで幅広い援言をされた。その中にも、国際協力法を制定しなさい、こういう提言がありますので、少し議論をさせていただいたところでございます。
これからもこの問題、私の方もよく勉強しながら考えていきたいと思いますが、ただ、少なくとも大綱について、先ほど、いつまでも万全なものではないというお話もありましたが、もう少し国民から見てわかりやすく整理をして、そして書きかえていただく、その努力は必要なことではないか私はこのように思っているところでございます。
この朝日新聞の提言につきまして、いろいろ議論をしようと思いましたが、時間がほとんどなくなりましたので、一つだけ、若干私は気になったところがございます。それは円借款に対する評価の問題でありまして、朝日新聞杜の方は、これからは円借款による産業基盤づくりから無償等の贈与による貧困対策などへ重点を移していくべきではないかこういう提言をされているわけであります。その前提として、今まで我が国が行ってきた円借款に対してやや冷ややかな見方があるのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、この朝日新聞の提言について、この箇所について、どういうふうにお考えでしょうか。
平林政府委員 今、世界的に見まして、世界銀行もそうなのですが、もう少し社会的な分野でのインフラを重視したらどうだとかきめの細かい小さなプロジェクトを取り上げたらどうかこういうような意見があちらこちらから出ておりまして、日本の援助政策もそういうふうな方向に多少重点をシフトしている、こういうことでございますが、これまでの円借款が行ってきました経済的な産業基盤づくり、これは人づくりと基礎的な生活分野と並びまして、非常に重要な分野でございます。それぞれの人々の貧困対策を重点的にやることも大事でございますが、その国あるいは社会全体のレベルを上げるという観点からいたしますと、産業基盤はまことに重要だと考えております。電力がなければ貧困対策も十分ではないと思われます。道路がなければそれぞれの人が近くの市場に行くにも不自由をする。橋もそうだし、港もそうでございます。
したがいまして、日本政府といたしましては、引き続き、この円借款による産業基盤を含めたインフラづくりは極めて重要な援助の分野だ、こういうふうに心得ております。要は、社会的な分野とのバランス、あるいは大きな産業基盤づくりときめの細かい援助とのバランス、あるいはハードな面、建物や施設をつくるという面と技術や知的な貢献をするいわばソフトな面とのバランス、こういうものが大事だと思っております。
その日本のバランスのとれた援助政策、特に円借款の役割というものは、特に東アジアで結果的には顕著な成果を上げているわけでございまして、世界銀行その他でも、東アジアの成功と称しながらこれを評価しておりますので、朝日新聞のこの部分につきましては、貧困対策等への重点が大事だという点は同じ見解を分かち合いたいと思いますが、円借款による、そういう意義のある経済協力について過小評価することはいかがかこういうふうに考えております。
ちなみに、いわゆる基礎生活分野に対する日本の援助も、もう三〇%を超えております。他方、経済インフラは三六%前後、こんなことになっておりますが、そろそろ適切なバランスに至っているのではないかな、こういう感じをしているわけでございます。
岡田委員 私も、ここの箇所については、今お話しのあったとおりだと思っておりまして、ASEAN中心にアジアの国々が次々と経済的なテークオフを果たしている、そこに日本の援助というものが非常に大きな役割を果たしたということは、これは紛れもない事実だと私は思いますし、そのことは我が国として誇っていいことではないかこのように思うわけであります。もちろん、貧困対策その他も大事でありますが、先ほど大臣の話もちょっとありましたように、やはり自助努力というものが根底にないと、どうしてもばらまきになってしまいかねないわけでありまして、要はバランスの問題だとは思いますけれども、従来の円借款について、あるいはこれからも、もちろん重点をどう移していくかという問題はあるにしても、私は胸を張ってこの点については誇っていいのではないかこのように思います。
ただ一点だけ、これだけ円高が進んでくる中で、円借款の前倒し償還といいますかそういうものを認めてほしいというアジアの声もあるやに聞いておりますが、そういう点については、私はもう少し弾力的に考えてもいいのではないかこのように思いますが、この点について簡単に御返事をいただきたいと思います。
平林政府委員 円借款による債務負担が円高によってふえているということで、相手の国々に予期せざる困難をもたらしているということにつきましては、政府としても大変同情と理解を持って対応すべきもの、こういうふうに考えておりますが、今お申し出の点につきましては、海外経済協力基金の方に非公式な打診があったとも伺っておりますが、政府ベースではまだ正式な要請に接しておりません。したがいまして、基金ともよく相談しながらやってまいりたいと思っておりますが、今後の問題として、引き続き円借款がそれぞれの国の役に立つように、また従来どおり、少しでも魅力のあるものであるように、厳しい状況の中ではございますが、考えていく必要があるということは認識しております。
岡田委員 大変申しわけないのですが、二条約について若干の質問をしようと思っておったのですけれども、時間が過ぎてしまいましたので、日米宇宙損害協定、それから政府調達協定、この二つについては私自身賛成であるということだけ申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。