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1995.11.09|国会会議録

134回 衆議院・安全保障委員会

岡田委員 新進党の岡田克也でございます。

六十分というお時間をいただきまして、主として大綱についていろいろ議論させていただきたいと思います。

議論に入ります前に、先ほどの愛知委員の質問に対する議論の中で、つまり与党の中で大分意見の差があるじゃないか、こういう問いに対しまして、先ほど長官は、安全保障の問題というのは国の存立の根幹にかかわることである、だからこそ今のこの幅広い与党の中でけんけんがくがく議論をして、そして安全保障政策について合意が得られていくということは非常に価値があるんだ、こういうふうに言われたと承知をしておりますが、それはまさしくおっしゃるとおりである、ぜひ与党の中で大いに議論をしていただきたい、こういうふうに思っております。

しかし、社会党の出しております大綱に関する案を見ておりますと、議論を尽くして本当に合意が得られるのだろうか、そういう気すらするわけであります。当然この大綱は最終的には閣議決定を経なければいけないわけでありますが、もし意見の合意が得られない、こういうことになった場合には、長官はどういうふうになされるおつもりでございましょうか。

衛藤国務大臣 連立三党の政府でありますから、当然それぞれ各党の防衛政策についての意見があることも、よく承知をしております。また、岡田議員御指摘の根幹の問題につきましても、いろいろの御意見もありましょう。私ども政府といたしましては、与党の各党の考え方を十分にお聞かせいただきまして、さらに言うならば、粘り強く御意見を拝聴させていただきたい。そして、できる限り連立三党のそうした防衛政策に集約されるものが反映されるような形で防衛大綱、そういうものをこれからつくっていくようにいたしたい、このように考えておるわけであります。

岡田委員 ぜひ立派な大綱ができるように議論を尽くしていただきたい、こういうふうに思いますが、もしその集約ができないということになれば、国の根幹にかかわる安全保障の問題でありますから、内閣総辞職に値することである、こういうふうに私は思うわけでございます。この点についてはこの場でこれ以上申し上げることではございませんが、ぜひしっかり議論していただきたい、こういうふうに要望しておきます。

さて、大綱についてでございます。

まず、現在の大綱について少し質問したいと思いますが、現在の大綱は約二十年前、昭和五十一年に閣議決定ということになっておりますけれども、このときの大綱の前提となる我が国を取り巻く国際情勢はどういう状況にあったのか、簡単に御説明をいただきたいと思います。

小池政府委員 現在の大綱は約二十年前の一九七六年に策定されたわけですけれども、そのときの国際軍事情勢の認識は、同じく大綱の中に書かれておりますが、世界的に見れば、米ソ両国を中心とする東西関係において対立要因は依然として根深く残っている、しかしながら、核戦争を回避し相互関係の改善を図るための対話が継続されている、それで、当時デタントとも称されたのですけれども、東西間に大規模な武力紛争が生起する可能性は低下していると見られた時期でございました。

我が国の周辺におきましては、当時中ソ対立というのは継続しておりましたし、それから、米中関係が改善された数年後のことでございます。それで米国、中国、ソ連三国間の均衡が成立している、他方、朝鮮半島の緊張というのは依然として極めて厳しいものがあった、我が国周辺諸国の軍事力も増強が続いていた、そういう国際軍事情勢の認識のもとに大綱が策定されたものでございます。

岡田委員 今御説明いただきましたように、基本的には米ソのデタント、そして米中関係の改善、それから中ソの対立、そういう状況の中でこの大綱ができ上がっているという御説明であったと思いますが、その後、そういったどちらかというと緊張緩和の時代からまた逆戻りといいますか、アフガン侵攻もありましたし、いろいろな意味で米ソの対立が厳しい事態になった、そういう状況もあったと思います。

そういう波を乗り越えて二十年間この大綱が継続をしたというのは、どういう理由に基づくものなのでしょうか。

秋山(昌)政府委員 御指摘のとおり、世界情勢、特に我が国を取り巻く安全保障の環境は、昭和五十一年に大綱が制定された後変化がございました。ただ、数年前の冷戦が終えんするという激変以前の変化というのは、一応、五十一年の当時想定した大綱の国際情勢の範囲内という観点でこれまで大綱を運営してきたところでございます。

岡田委員 二十年間、これだけ国際情勢が変化をする中で今の大綱が続いてきたというのはやや不思議な感じもいたしますが、いずれにしても、現在この大綱があるわけでございます。

この大綱の中で、本当にこの大網が前提としているかどうかは私もよくわからないのですが、基盤的防衛力という考え方がございます。これについての基本的な中身といいますか、内容といいますか、それをお聞かせいただきたいと思います。

秋山(昌)政府委員 基盤的防衛力構想とは、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するというよりも、みずからが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有する、そういう考え方でございます。

そして、この考え方に基づく防衛力の中身でございますけれども、「防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼」としたものでございまして、我が国の置かれている戦略環境、地理的特性等を踏まえて導き出されたものであるということでございます。

岡田委員 今の防衛計画の大綱ですが、これを全体目を通しても、今局長がおっしゃった中の後半の部分、「防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有する」こういう表現は出てくるわけでありますが、前段の部分あるいは基盤的防衛力構想という単語、これは出てこないわけであります。本当に今のこの防衛計画の大綱というのは基盤的防衛力というものを前提にして、それを基本にしてできているものなんでしょうか。

秋山(昌)政府委員 五十一年に閣議決定されました「防衛計画の大綱について」の四の「防衛の態勢」というところに次のような記述がございます。「情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配慮された基盤的なものとする。」この「基盤的なものとする。」という考え方をとりまして、これまで通称基盤的防衛力構想と申し述べてきたところでございます。

岡田委員 私の知るところによりますと、間違っていたら御指摘いただきたいと思いますが、基盤的防衛力という考え方はこの大綱以前からあったんではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

秋山(昌)政府委員 現在の防衛大綱ができる以前は実は、直前は四次防、第四次防衛力整備計画、四次防、三次防、二次防、そういう五カ年計画がございました。その五カ年計画は、もちろんその金額とかあるいは装備品の調達とかそういったものが入っておりますが、同時に、現在の防衛大綱に相当するような、国際情勢ですとかあるいは防衛力の役割あるいは体制といったものも含んだまさに五年間の、いわば現在でいうところの防衛大綱と次期防といったようなものを合体したような形で、その四次防ですとか三次防ですとかそういったものがつくられていたわけであります。

そして、その四次防、三次防といった時代におきましては、基盤的防衛力整備ということではございませんで、当時の考え方は、通常兵力による、通常戦力による、局地戦以下の侵攻に対していかに我が国を守るかということで、実は、二次防、三次防、四次防と防衛力整備計画を累次やってまいりましても、通常戦力による局地戦以下という侵攻に対して我が国を守るような水準にまでなかなか防衛力の整備が上がらないということと、一体どこまで我が国の防衛力が積み上がらないと我が国は守れないのかといったような、そういう国民からの声もございました。

そして、五十一年の一、二年前から新しい防衛力の方針を示す必要があるんじゃないか。そういう観点からつくられたのが今の防衛大綱でございまして、それまでの局地戦以下の侵攻に対する防衛計画というところから変わりまして、この基盤的防衛力整備計画というものがつくられたというふうに私は認識しております。

岡田委員 今の大綱の中にもう一つ概念が出てまいります。つまり「限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得る」いわゆる限定的かつ小規模侵略事態、こういうことであろうと思います。この概念と基盤的防衛力というのはどういう関係にあるんでしょう。

秋山(昌)政府委員 「限定的かつ小規模な侵略」と申しますのは、全面戦争や大規模な武力紛争に至らない規模の侵略のうち小規模なものをいうという考え方でございます。

その規模、態様等を具体的に示すことは、これは実はなかなか困難でございますけれども、一般的に申し上げますと、事前に侵略の意図が察知されないよう侵略のための大がかりな準備を行うことなしにこの行動が行われ、かつ短期間のうちに既成事実をつくってしまうことなどをねらいとしたといったようなことを我々考えたところでございます。

防衛庁といたしましては、別に特定の国を想定したわけではございませんけれども、今申し上げましたような我が国周辺の地域の軍備の配備状況を考えまして、今申し上げたような形でその限定的な小規模の侵略というものを想定したところでございます。

岡田委員 私がお聞きしておりますのは、今のこの大網に定める防衛力の装備水準、これは先ほど述べられた基盤的防衛力ということでできているのか、あるいは限定的かつ小規模侵略事態ということを想定してできているのか、どちらなのかということをお聞きしているわけでございます。

秋山(昌)政府委員 現在の大綱におきまして我が国が保有する防衛力について冒頭申し上げましたけれども、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡の取れた態勢を保有することを主眼といたしまして、そして、我が国の置かれている戦略環境それから地理的特性等を踏まえてその具体的な規模を導き出すとともに、これが侵略事態に対して有効なものでなければならないという観点から、周辺諸国の軍備を考慮いたしまして、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るものを目標とすることが適当であるとしたものでございます。言葉をかえて申し上げますと、基盤的防衛力構想あるいは基盤的防衛力の整備そのものが、結果として限定的小規模侵略に独力で対処するということとイコールであるというふうに考えております。

岡田委員 非常に分かりにくいわけで、聞いていてもほとんどわからないわけです。私の理解では、基盤的防衛力というのはいわば絶対的な概念である。周囲の環境とか特定の国を想定せずに、我が国自身がそれ自身必要なものとして持っているものである。それに対して限定的小規模侵略というのは、特定の国を、それを具体的に言うかどうかは別にして、私はこれは極東ソ連軍だと思っておりますが、特定の国を念頭に置いてそれに対して対処し得るようというそういう相対的な概念である、こういうふうに理解をしておりますが、こういう理解は誤りでありましょうか。

秋山(昌)政府委員 基盤的防衛力構想は、我々としては、絶対的なものである、水準がある水準から動かないというようなものであるというふうには考えておりません。我が国の周辺地域における軍備の配備状況あるいは軍事能力といったものについて当然その影響を受けるという認識でございます。

ただし、誤解のないように申し上げておきますけれども、例えば欧米の諸国の国防力の整備といいますのは、ある特定の国あるいは特定の勢力あるいは特定の脅威を具体的に積み上げまして、それを積算し、そしてそれに対応する国防力を整備する、そういう考え方でございます。

それに対しまして、我々の方は、特定の具体的な脅威というものを見積もって、そしてそれに対して我が国の防衛力を考えるということではございませんで、先ほど申し上げましたように、「防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼としこそして、我が国が置かれている戦略環境あるいは地理的特性、これは特に我が国の日本という地理的特性等を考慮して規模を導き出したもの、これはかなり固定的なものと考えておりますけれども、我が国周囲の軍備状況、配備状況というものに影響されるというふうに考えております。

岡田委員 安保論争や防衛論争というのは神学論争だというふうによく言われますが、今の議論を聞いていて恐らく、私も理解ができませんし、多くの国民は全く理解できないだろう、こういうふうに思うわけであります。

私がここでこういう議論をわざわざしておりますのは、今までは社会党という存在があって、まことに失礼なことながらいろいろ意見があった。ですから、なるべくしっぽをつかまれないように非常に抽象的な概念で逃げてきた。この防衛計画の大綱についてもそうでありますし、今までのいろいろな国会答弁についてもそういうところがあったんではないかこういうふうに思うわけであります。今回、社会党が与党になられて、新しい事態の中で、もっときちんと国民に理解をされる議論をしなければ大綱をつくり直す意味がないんじゃないか、そういう問題意識で聞かせていただいているわけでございます。

「防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有する」、これで具体的な防衛水準が果たして出てくるのでありましょうか。私はそこがどうしても納得できないわけであります。一体何を言っているのかさっぱりわからない、こういう気がいたします。

今の大綱のことを言っても仕方がありませんので、新しい大綱について、この基盤的防衛力構想というものを引き継がれるというふうに聞いておりますが、その点についてはいかがでございましょうか。

秋山(昌)政府委員 現在の大綱は、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、みずからが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという基盤的防衛力構想を取り入れたものでございますが、今回新しい防衛大綱を検討するに当たりまして、この基本的な考え方は踏襲していくという考えでございます。

岡田委員 今の御説明の中でも幾つかわからない点がございます。例えば、みずからが力の空白とならないように、こういうことでありますが、既に日米安保条約が存在する中で、日本のみの防衛力の装備の水準が空白を呼ぶということは非常に考えにくいのではないかと思いますが、この点についてはどう考えておられるのでしょうか。

秋山(昌)政府委員 我が国の防衛につきましては、日米安保体制というものを一つの柱としながら、独立国として必要最小限度の防衛力を保有するということでございますが、その防衛力が例えば極めて小さいということになりますと、力の空白が生じ、むしろアジア・太平洋地域における不安定要因になる、そういうことを懸念いたしまして、この力の空白にならないよう最小限度の防衛力は保有したい、こういう考え方でございます。

岡田委員 もちろん米軍は万能ではございません。特定の機能に偏っておりますから、米軍だけで力の空白が埋まるということにはならないと思いますけれども、しかし、もし基盤的防衛力の具体的水準をこの空白論で行うとしたときに、本当に有効な基準となり得るのかどうかというのは私は大変疑問に思うわけでございます。

それと同時に、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力、ほとんどトートロジーというか、基盤的防衛力とは独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力であると言うのは、何も説明していないのではないかという気がいたしますが、この点はいかがでしょうか。

秋山(昌)政府委員 現在の防衛大綱の四、これは「防衛の態勢」ということが書いてあるわけでございますが、五に陸海空自衛隊の体制、これは陸上自衛隊、海上自衛隊あるいは航空自衛隊が実際どういう体制をとるべきか、そして、その具体的な規模は御案内の別表に出ているわけでございますが、この陸海空自衛隊の体制の中で、まさに力の空白とならない、そして独立国としての最小限度の防衛力とはどういうものかということを明示しているわけでございます。

例えば、全部説明をすると長くなりますので一部申し上げますと、陸上自衛隊につきましては、まず第一番目に、「わが国の領域のどの方面においても、侵略の当初から組織的な防衛行動を迅速かつ効果的に実施し得るよう、わが国の地理的特性等に従って均衡をとって配置された師団等を有していること。」この考え方によりまして、我が国の地理的特性、海峡ですとかそれから山脈ですとか川ですとかあるいは当然のことながら行政区画ですとか、そういったものを考慮しながら、そして通常国際的にも考えられます陸上兵力の一つの戦闘組織の規模というもの、例えば師団ですと、いろいろありますけれども、一万人前後といったようなものを考えて、そして今申し上げましたような考え方でどういうふうに配備したらいいかということを検討した結果、現在十二個の師団と二個の混成団というものを日本に区画して配備しているところでございます。

正確に申し上げますと、機甲師団として、機動的な師団としてもう一師団戦車の師団がございますけれども、通常の兵力について申し上げますと、今言ったような考え方で十二の師団と二つの混成団というものがあるわけでございます。

それから、例えば海上自衛隊について申し上げますと、「海上における侵略等の事態に対応し得るよう機動的に運用する艦艇部隊として、常時少なくとも一個護衛隊群」これは八・八艦隊と通称言っておりますけれども、「一個護衛隊群を即応の態勢で維持し得る」そういう一個の護衛艦隊を有していることということで、現在四個の護衛隊群で構成する一個の護衛艦隊があるわけでございまして、これも、考え方はそこに明示しているところでございます。

航空自衛隊についても一点だけ申し上げますと、我が国周辺のほぼ全空域を常時継続的に「警戒監視できる航空警戒管制部隊を有していること。」ということで、現在固定レーダーサイトが全国に二十八ございます。高空域、低空域、そのカバーできるところは違いますけれども、現在そういう形で我が国の周辺のほぼ全空域を常時継続的に監視できるといったような体制を有しているところでございます。

その他の点についても、陸海空自衛隊ごとにそれぞれ説明がされておりまして、そして、その部隊の数その他につきましては別表に明示しているところでございます。

岡田委員 今局長の方から、大綱の五の「陸上、海上及び航空自衛隊の体制」のところの御説明をいただいたと思うのですが、私が質問しておりますのは、ではなぜこれだけ、ここに書いてあるようなことが独立国として最小限必要な装備なのかというところの説明がないではないかということであります。

それはどういうことかといいますと、結局相手方というものを念頭に置かないと議論ができないことだと思うのですね。どういう具体的な脅威が想定をされるのか、それに対して我が国としてどういう装備水準にしなければいけないのか、こういう議論でありまして、独立国としての必要最小限と言われても、それは相手方によって違うわけであります。

最初に私が絶対的な概念というふうに申し上げたのはまさしく今の局長の答弁のようなことでありまして、そういう相手方を想定しない、これだけ持っていれば独立国として十分なんですよ、そういう概念というのは実際上は存在し得ないんじゃないか、少なくとも装備の基準としては機能しないんじゃないか、こういうふうに思うわけでございますが、長官、いかがでございましょうか。

衛藤国務大臣 我が国の防衛基盤、これはある意味では独立国家の基本にかかわる問題ですから、絶対的な概念というものがあります。と同時に、周辺諸国の相対的な国際環境とか相対的な軍事情勢とか、そういうものの中で対比される中でそれぞれ基盤的防衛力を整備していく、こういうふうに私は考えております。

岡田委員 私が何度も繰り返して申し上げるのは、せっかくこの大綱をおつくりいただいて、そして国民が、確かに我が国を防衛するためにはこれだけの装備が必要である、こうしっかり認識をしていただくためには、わかる大綱でなければ、読んで理解できる、聞いてわかる大綱でなければ意味がない、そういうふうに思うわけでございます。そういう意味で、基盤的防衛力という考え方は極めてわかりにくい概念である、そういうふうな問題意識で先ほどから発言をさせていただいているわけでございます。

例えばアメリカの、やや昔のことになりますが、一九九三年、当時のアスピン国防長官が発表されたボトムアップ・レビューというレポートがあります。その中では米軍の規模を規定しているわけであります。

一つの主要地域紛争が起きた場合に必要とされる規模として、陸軍でいえば四から五個師団、空軍であれば十個戦闘航空団、それから百機の爆撃機、海軍であれば四から五個の空母戦闘群、海兵隊であれば四から五個の遠征旅団、こういうものが必要であるということを述べ、その上で、アメリカの国益を守るためには、世界で一つの主要地域紛争が起きたときにそれに対応できるというだけではいま一つの地域紛争を誘発してしまいかねないので、二つの主要地域紛争に同時に対応できるような能力の維持が必要である、そう考えて、今述べました一つの主要地域紛争に対応できるだけのほぼ二倍の戦力、陸軍であれば十個師団、海軍であれば空母十二隻、そして空軍であれば二十個戦闘航空団、爆撃機百八十四機、海兵隊は三個海兵遠征団、そういうものが必要である、こういう説明になっております。

これは素人である私どもにも、本当のところはわかっていないかもしれませんが、非常にわかりやすい、頭に入りやすい説明であります。どうしてこういうことがこの大綱において書けないのでありましょうか。お聞かせをいただきたいと思います。

秋山(昌)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたけれども、欧米の諸国における国防力の積み上げ方式と我が国の防衛力の整備の仕方の違いということを申し上げたわけでございますが、これは世界的に見ましても、要するにベースフオースといいますか基礎的な防衛力ないし国防力を整備する国と、それから、その相手の特別な、特定の具体的な脅威を算定いたしまして、そしてその脅威に対して国防力を積み上げるやり方と両方ございます。

日本の場合には、今申し上げた前者のタイプ、つまり特定の脅威を積み上げて、具体的にそれに対抗するといったような防衛力の積み上げではございませんで、まさに独立国としての必要最小限度の防衛力というのはどんなものかといったようなことを、もちろん周囲の戦略環境あるいは我が国の地理的特性等々を考慮してっくるわけでございます。したがって、全くその周囲の戦略状況に影響されないわけではございませんが、しかし、ある特定の具体的な侵攻の脅威というものを見積もりまして、それに対して国防力、防衛力を積み上げるという形ではない、それはそういうタイプの防衛力の積み上げではないということでございます。

岡田委員 もちろん、特定の脅威を積み上げるということになりますと特定の国を前提にするわけでありますから、外交上いろいろ新しい摩擦も起こるかもしれない、そういう御配慮はよくわかるわけであります。

では、今局長のおっしゃった、特定の脅威を積み上げる方式でない、我が国のような基盤的防衛力という考え方で必要な防衛水準を計算をしている、そういう国としてどういう国があるのでしょうか。それは一般的なものなのでしょうか。

秋山(昌)政府委員 済みません、今ちょっと手元に資料がございませんが、まずアメリカとかNATO諸国あるいは当時のワルシャワ機構諸国は、先ほど申し上げましたようにお互いに脅威を積み上げて国防力を整備してきたという国でございます。

それ以外の国では、ちょっと記憶にはございませんので、正確に調べまして別途御答弁申し上げたいと思います。

岡田委員 それではちょっと話題を変えまして、我が国を取り巻く軍事情勢ということです

が、基本的にまずロシアが重要であると思いますが、ロシアの現時点における我が国に対する軍事的な脅威についてどのように認識しておられるのかあるいは将来的にどのような可能性があると見ておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

秋山(昌)政府委員 極東ロシア軍につきましては、近年量的には縮小傾向にございまして、軍の活動も全般的には低調になっております。しかしながら、大規模な戦力が蓄積されている状態は相変わらずであるという認識でございますし、ペースは大分緩やかにはなっておりますけれども、近代化が進められているという認識をしております。それから、流動的な国内情勢、そしてロシア軍の建設の先行きが不透明であるといったようなことも相まって、極東ロシア軍の存在は依然として我が国周辺地域の安全に対する不安定要因になっていると認識しております。

このように極東ロシア軍の将来につきましては不透明でございまして、確たることを申し上げることは困難でございますが、いずれにせよ、防衛庁といたしましては今後ともその動向に注目してまいりたいと考えております。

岡田委員 よく、東西冷戦が終わった、こう言われるわけであります。東西冷戦が終わったということの意味でありますけれども、欧州における東西冷戦終結の意味とそれから極東における意味というのは大分違うのじゃないか、こういうふうに私は思っておりますが、この点についてどういうふうにお考えでしょうか。

小池政府委員 先生御指摘のとおり、欧州の東西冷戦後の状況とそれからアジア地域における状況というのは大いに異なっていると、同じような認識でございます。

すなわち、アジア・太平洋地域におきましては、冷戦の間でも、欧州のようなNATO対ワルシャワ条約機構という東西の二極化した対立、そういう構造は存在しなかった。それから、冷戦が終わった後も、現在、朝鮮半島、南沙群島あるいは我が国の北方領土などの未解決の問題が依然として存在している。欧州においては、冷戦終結後安全保障体制の構築に向けた動きが見られますけれども、アジアにおいてはそのような状況はない。しかしながら、東西冷戦が終結したことによりまして、この地域におきましては、一つは、極東ロシア軍が量的に縮小傾向を示して軍の活動も全般的に低調になっているという変化があることも事実でありますし、また、ソ連がアジアの共産主義政権国家に対しての軍事援助活動を大幅に削減ないし停止したこと、あるいはソ連と韓国との国交樹立という大きな変化があったということもまた事実がと思います。

岡田委員 今の御説明に加えて、私は、ヨーロッパにおいては広大な緩衝地帯ができたということは非常に大きいのではないかと思っております。今までは、東西ドイツのところで、前線といいますか、そういうものがあったと思うのですが、ドイツも統一された、あるいは東ヨーロッパ諸国もそれぞれ民主化した、ソ連自身も幾つかの国に分かれた、そういう中でロシアの隣にはウクライナという国がある。つまり、従来の西ヨーロッパとロシアの間には幾重もの緩衝地帯ができている。それに対して日本の場合には、極東でありますから、ロシアと向かい合っているという現実は変わらない。そのことも非常に大きな要素ではないかと私は思っております。

いずれにいたしましても、ロシアについての御認識を今伺ったわけでありますが、それでは、この大綱の前提として中国というものをどういうふうに、いろいろ御議論はあったと思いますが、中国について今の軍事力をどのように評価しておられますか。あるいは、将来十年、二十年先に可能性として、我が国にどのような脅威を及ぼす可能性があるというふうに見ておられますか。

小池政府委員 中国の軍事力の現状及び将来についての御質問ですけれども、中国は近年、国防費を大幅に増加させております。昨年、ことしと二〇%以上、対前年比国防費を増加させる、あるいは核戦力、それから海軍、空軍力の近代化を進めている。一言で申し上げれば、いわばかっての量から質の向上を図っているというふうに言えるかと思います。

しかしながら、総体的に見ますと、中国の当面の最重要課題というのは改革・開放政策による経済建設というのを大きな課題としており、また、経済が全般的にインフレ基調であったり、それから財政赤字という困難な問題も抱えているということもまた事実でございます。したがって、国防力の近代化は進むけれども、現在の装備の大宗というのはかなり旧式な装備を保有しているということも考えますと、近代化は漸進的に進むのではないかというふうに見られます。また、中国は近年、南沙群島を含めて海洋における活動範囲を拡大するという動きを見せております。

それで、このような中国の動きというものが中長期的にアジアの軍事バランスにどのように影響を与えるかというのを、我々としても十分注目していく必要があるというふうに考えております。

岡田委員 今の御説明でありますが、そういうものを踏まえて、しかし、安全保障という問題は常に最悪の事態を考えて備えておかなければいけない。別に中国が我が国にとって具体的な脅威になるとかそういうことではなくて、可能性の問題として、最悪の事態としてそういうこともあり得るんだということを念頭に置いて、当然我が国の安全保障政策あるいは防衛力の水準というものは、これは中国に限りません、中国は一例でありますけれども、考えていかなければいけない、そういうことだろうと思うのです。

そういった点についてのきちんとした説明、そして、そのために我が国としては国民の税金をこれだけ使っでこれだけの装備水準が必要である、そういったわかりやすい説明が大綱にはぜひ必要ではないか。

別に、特定の脅威として特定の国を決めつける必要はもちろんないわけであります。しかし、可能性の問題として幾つかのこういう最悪の事態があり得るので、我が国としてはこういう装備水準が必要なのである、そういう考え方がなければ、私はなかなか国民に、今これだけ一般的には東西冷戦が終わって緊張緩和が進み、アメリカを初めいろいろな国が軍備の削減をしているときに、なぜ日本が、多少のコンパクト化はやるとしてもこれだけの水準のものが要るのか、そういう説明にならないのではないか、少なくとも国民に理解されないのではないか、そういう気がするわけでありますが、この点について長官の御意見を聞かせていただきたいと思います。

衛藤国務大臣 確かに脅威対象型の安全保障論というものは非常にわかりやすいと思います。しかし、そうではなくして、地域の危機問題に対していかに我が国の安全を確かなものにするか、こういうことについては、大変説明のしにくい、わかりにくい問題ではあります。しかし、私どもといたしましては、冷戦後の新しい国際環境、軍事情勢、そういうものをしっかり国民の皆さんにも御説明を申し上げまして、新防衛大綱の中にお示しをし、そして国民の皆さんにPRをして御理解をいただく、そういう努力を、積極的な努力をしてまいりたい、このように考えております。

岡田委員 今の大綱は、先ほど言いましたように小規模限定侵略という概念が入っておりまして、これが消えたことは、かえって今の大綱よりもさらにわかりにくくなっているのではないか、そんな気がするわけでございます。

いずれにいたしましても、ぜひ長官初め皆様の御努力で、大綱が国民にわかりやすい、理解しゃすい、そういう形になることが私は防衛問題に対する国民の理解の第一歩だと思いますので、ぜひいろいろな表現その他で御工夫をいただければ幸いだと思っております。

それでは次に移りたいと思いますが、冷戦終了に伴っていろいろな多様な危険が発生するんだ、こういうふうに述べられております。大規模災害とか無差別テロなどの事態に備えなければいかぬ、こういうことでありますが、具体的にそれでは、大綱の装備水準のところでこういった事態に備えるためにどういった装備を考えておられるのか御説明いただきたいと思います。

秋山(昌)政府委員 阪神・淡路大震災ですとか地下鉄サリン事件等に見られたとおり、こういった各種の事態あるいは多様な危険への自衛隊の役割に対する国民の期待が高まっているということで、これらの事態に対して十分備えておくことが重要であると考えております。これまでも、自衛隊はこういった各種の事態において活用し得る各種の装備を整備してきたところでございます。

そしてまた、こういった事態に有効に対応するための具体的な装備の内容につきましては、新たな大綱のもと、引き続き検討して所要の措置を構じたいと考えておりますが、御案内のとおり、大綱における別表は、主要な部隊あるいは主要な装備品を明示するということでございまして、その他の装備品等につきましては、毎年度の予算等で明らかにしてまいりたいと考えておるところでございます。

岡田委員 具体的装備についてはそういうことかもしれませんが、もう少しこの辺は敷衍して、大綱の中に基本的な考え方だけでも書いておいていただいた方がいいのではないか、そういう気がいたします。

それから、今局長御答弁の、例を挙げて大規模災害や無差別テロについて御説明があったわけでありますが、その前提となる国際情勢のところで、冷戦は終結したけれども、宗教上の対立、民族問題等に根差す対立の顕在化、地域紛争の発生、大量破壊兵器の拡散等の新たな危険が増大している、こう書いてあります。この点については大綱の中で具体的にどういうふうに織り込まれているのでしょうか。

秋山(昌)政府委員 まさに現在、安全保障会議で検討している最中でございますけれども、我々防衛庁として認識しております国際情勢として、まず冷戦の終結に伴い、世界的な規模の武力紛争が生起する可能性は遠のいた。しかし、他方で各種の領土問題は依然存続しておりますし、特に宗教上の対立とか、あるいは民族問題等に根差す対立が顕在化している。それに加えまして、大量破壊兵器等の拡散といった新たな危険が増大するなど、国際情勢は依然として不透明、不確実な要素に包まれている。そういったような認識をしているところでございます。

岡田委員 余り具体的な御説明ではなかったように思いますが、時間も限られておりますので、最後に有事法制の問題についてお尋ねをしたいと思います。

先ほど来いろいろ議論が出ておりますが、先ほどの局長の御答弁だったと思いますが、法制整備が望ましいけれども、国会や国民世論の動向を踏まえながらやっていかなければいけないのだ、こういう御説明だったと思いますが、もう少し具体的に、どういうことなんでしょうか。何が障害になっているのでしょうか。

秋山(昌)政府委員 有事法制につきましては、既にいろいろな形で研究が進んでおりまして、例えば防衛庁について言いますと、自衛隊法の、例えば防衛出動ですとか、そういったいろいろな条文の規定がありますが、その条文の規定を動かすために、例えば政令ですとか省令ですとかそういった形でまだ十分手当てされていないようなところがございます。

そういう意味におきまして、防衛庁で行わなければならない有事法制の研究は一応区切りがついておりますが、当然のことながら各省庁にかかわる問題があるわけでございます。各省庁の所管の法律で、有事にどうするべきかといったような研究があるほか実は、妙な言い方で恐縮でございますけれども、どこの省庁に属するのか必ずしも明確ではないといったような問題もあります。その辺についての研究が一応前者については済んでいるものの、後者につきましてまだ済んでいない。そして、かつ法制化というところまではいっていないというのが現状でございます。

岡田委員 防衛庁の方でこの有事法制についての研究の結果を取りまとめになっておられると思いますが、一つは、昭和五十三年九月二十一日、防衛庁の見解として「防衛庁における有事法制の研究について」というものが発表されております。それから、昭和五十六年四月二十二日にもその追加的なものが同じ表題で発表されている。その後十年たちますが、十年間、一体防衛庁は何をしておられたのでしょうか。

江間政府委員 有事法制の関係について御説明をさせていただきます。

ただいま先生おっしゃいましたように、この有事法制の研究は、昭和五十二年の八月に内閣総理大臣の御了承のもとに、防衛庁長官の指示によって始められたものでございます。その有事法制として考えられる法制としましては、自衛隊の行動にかかわる法制でありますとか、あるいは米軍の行動にかかわる法制、さらには、自衛隊、米軍の行動に直接にはかかわりませんけれども国民の生命財産等の保護等のために必要になる法制という三つのことが考えられるわけであります。

五十二年から開始をしましたのは、このうち、自衛隊の行動にかかわる法制ということを研究をしたわけでございます。この研究は、近い将来に国会提出を予定した立法準備というようなことではございませんで、あくまでも、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の諸問題を検討するということで進めてまいったわけであります。

それで、先ほど先生御案内のとおりに、第一分類さらには第二分類という点につきましては、一応のそれまでの研究の成果というものを御報告をいたしました。現在、その所管官庁が明確でない事項に関する法律、法令といいますか例えば有事におきます住民の保護、避難または誘導を適切に行う措置でありますとか、有事における民間船舶及び民間航空機の航行の安全を確保するための措置でありますとかそういう幾つかの問題がございますけれども、これは政府全体として取り組むべき性格のものであるということで、現在、内閣安全保障調査室の方で種々の調整が行われているところと承知をいたしております。

岡田委員 この問題で余り事務当局にいろいろ言っても気の毒な面があるのだと思います。むしろ国会の責任、あるいは政治の責任だと思うのです。

例えば、今度の大綱では予備自衛官というものが非常に重視されています。しかし、予備自衛官についてこの防衛庁がおまとめになった五十六年四月二十二日の研究の結果によれば、「自衛隊法第七十条の規定による予備自衛官の招集に関しては、招集に相当の期間を要し、防衛出動命令下今後から行うのでは間に合わないことがあるので、例えば、防衛出動待機命令下令時から、これを行いうるようにすることが必要であると考えられる。」こう書いてあります。

つまり、予備自衛官をこの大綱に基づいて予算も使って十分準備したとしても、今のままでは実際には間に合わないんだ、こういうことになっているわけでありますが、こういう事態について、長官、一体どういうふうにお考えでしょうか。そういう事態のもとで予備自衛官を充実する意味があるのでしょうか。

衛藤国務大臣 このたびお示しをいたしました新防衛大綱の中におきまして、御案内のとおり、即応態勢ということをうたっておるわけでありますが、予備自衛官とともに即応自衛官といいますか、そういうものを体制整備をしていきたい、そして予備自衛官の、今御指摘ありました問題点をそういう面で補完をしてまいりたい、かように考えております。

岡田委員 私が申し上げたのは、そういう形で予備自衛官を大綱の中で位置づけられるのは結構だけれども、規定が不備で、そういう自衛官を置いておいたとしても実際には間に合わない、今のままでは。いざ防衛出動のときには使えないんだということを、防衛庁の研究そのものも認めておられる。そういう事態について長官はどう考えられるかという問いであったわけです。

衛藤国務大臣 ソフト面において、運用面において支障を来しておるというのであれば、しっかりそれを検証いたしまして、フォローアップしてその埋め合わせをする、しっかりとしたシステムをつくり上げたいと思います。

岡田委員 そのシステムの問題というのは、つまりそれは法律を、有事法制等、言葉は何でもいいのですけれども、そういう法律をきちんと整備しなければだめだということなんですね。

これは一例であります。ほかにも防衛庁の方でいろいろ御研究になって、どういう問題があるかということはあらかたはっきりしているわけであります。いわばそれがたなざらしの状態になって十年ぐらい、防衛庁がおまとめになってからほったらかしになっているわけであります。これはやはり政治の責任だと思います。

先ほど、国会での動向も踏まえて、こういう御説明があったのですが、国会にきちんとお出しいただければ、我々は議論する用意はいつでもあると思うのです。ですから、まず与党の中できちっとまとめて早く出していただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。長官にお願いします。

衛藤国務大臣 これは、一つは法の整備の問題でありますから挙げて国会の問題でもあると思いますが、防衛庁といたしましては、有事法制については当然のことながら研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましいと考えておりまして、法制化をするか否かという問題は高度の政治判断にかかわるものでありまして、国会における審議あるいは国民の世論の動向等を踏まえて検討すべきものである、このように考えておるところであります。

岡田委員 高度の政治判断とおっしゃいますが、国会に出すことは政治判断でも何でもなくて、その結果国会でそれを審議するのは、それは政治判断かもしれません。しかし、出てこないと審議もできないわけであります。

それで、毎年五兆円程度の防衛費を使って、新しい大綱に基づいてこれからもいろいろな装備がされていくのだと思うのですが、それがいざとなれば使えない、いざ緊急事態が起こったらそれの根拠の法律がないということが今わかっているのに、そのことを放置しておくということは、政治家としてこれはまことに恥ずかしい事態ではないか私はこういうふうに思います。

私どもは今、野党であります。新進党は、この議論にいつでも応ずる用意がございます。ぜひ与党の方でおまとめいただいて、早期にこれを出していただきたい、こういうふうに思うわけであります。

でなければ、こんな立派な大綱をつくっても意味がありません。立派な装備をお金を出して買っても意味がありません。そのことをぜひ御認識をいただきたいと思うわけであります。そういう意味でも、この大綱の中に有事法制の早期整備という一言はぜひ入れていただきたい、こういうふうに思いますが、長官の決意を聞かせていただきたいと思います。

衛藤国務大臣 その問題は重ねて、国会の論議にまちたい。また与党三党の、今御指摘のありました有事法制についてのお考え、そういうものもしっかり踏まえて政府として対処してまいりたい、このように考えております。

岡田委員 もう時間も参りましたのでこれで終わりますが、いろいろ難しい問題もあると思うのですけれども、ぜひ長官が中心になっていただいて閣内でもきちんと御議論いただきたい。これはまじめに議論したら、このことについて、有事法制について、だれも後ろ向きになるはずはないと思うのです。いろいろな過去の有事法制という言葉についてのイメージがありまして、なかなか難しいことをおっしゃる方もいらっしゃるのかもしれませんが、そこはぜひそういう誤解も解きながら、早期にこの問題を解決をしていただきたい、そのことを最後にお願いを申し上げまして、私の質問にかえさせていただきます。

ありがとうございました。




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