140回 衆議院・厚生委員会
岡田委員 新進党の岡田克也です。
きょうは、薬の問題を中心にお伺いしたいと思いますが、始める前に、委員長、今の会議は定足数を満たしておりますか。
住委員長代理 ちょうど二十人おります、私も含めて。
岡田委員 定足数というのは委員長を入れるのですか。
住委員長代理 委員長も入っています。
岡田委員 この健康保険法等の一部を改正する法律案の審議、極めて重要だと私は思うのですが、今ざっと見渡しまして、定足数ぎりぎりの二十名。自民党さんは十八名のうちの七名、委員長を入れると八名ですか、九名ですか、半分ですね。我が党が十二名中八名ですか。どうなっているのでしょうか。
私は、理事会においても、極めて出席が悪いということを自民党の理事には申し上げたところでありますが、こういうことで本当に審議がちゃんとできるのかという気がいたします。定足数は満たしているということですから、満たしている範囲において、私、質問を続けますが、ぜひそこは、町村委員長おられませんけれども、きちんと対応していただかないと、私どもとしては、この委員会で本気になって審議をしようという気があるのかどうか、疑問に思わざるを得ないということを申し上げておきたいと思います。
さて、きょうは薬の問題を中心にいろいろお伺いしたいと思っております。そのほかにも、老人医療とか診療報酬とか医療供給体制とか、さまざまな課題がございますので、その中できょうは薬に限って御質問させていただく。順次それぞれの課題についてきちんとした議論をさせていただき、厚生省のお考えというものを確かめていきたい、その第一歩だというふうに考えているわけでございます。
さて、薬価の問題でありますけれども、日本の薬は非常に高い、薬価差がある、こういうことでありまして、いろいろな制度改革を厚生省の方も当然お考えだと思いますが、少し頭の整理をまずしてみたいというふうに考えております。
薬価差の発生を避けるためにどうしたらいいか。一番簡単なのは、薬価基準を廃止する、こういうことであります。薬価基準を廃止したときに、それじゃどういう形でその薬の価格が決まり、あるいは償還していくのかということについて、幾つかの考え方があると思いますが、まず、医療機関が現実に購入した価格を医療機関に対して償還する、購入価格払い制とでもいいましょうか、そういう考え方が一つあるのだろうと思います。それからもう一つは、医療機関でなくて、卸業者にその実際の仕入れ価格に一定のマージン率を乗せた価格で償還するようなことも考えられるだろうと思いますが、こういう考え方については厚生省としてどのように評価しておられるでしょうか。
高木(俊)政府委員 薬価差の問題に着目して、今先生、二つの方式を御指摘でございましたけれども、まず最初の、購入価格をもって医療機関に対して償還すると申しますか、それを払うという、これを仮に購入価格払い、こういうふうに申し上げるとすれば、このやり方の場合は、医療機関ができるだけ安く薬を購入しようというインセンティブがどの程度働くかという問題があると思います。要するに、購入価格をそのまま償還してくれるわけですから、また逆に、安く買ったからといって、それで、少なくとも医療機関にとってのメリットというのが非常に薄くなりますから、その辺の問題がやはり一つ問題ではないか。ということは、裏返して申し上げれば、薬の価格というものが高どまりしてしまうのではないか、そういうおそれがこのシステムだとあり得るということだと思います。
それから、もう一つの方式としまして、卸業者の仕入れ価格に一定のマージンを乗せてそれを償還する、このやり方でありますけれども、これは、卸業者あるいは製薬企業、これが言うなれば償還価格を決めるような格好になるわけでありまして、そういった意味では流通の問題に今度はなってまいります。そういった中で、そもそも流通価格というものが引き下がるようなインセンティブが働くだろうかということになりますと、一定マージンを乗せた格好で全額償還してもらうということになりますから、そういった意味ではやはり価格がなかなか下がらない、高どまりするというようなことになるのではないかというふうに思います。
もちろんこれは、そういった方式は全く成り立たないと申し上げているわけではありませんで、当然、そういった弊害というものを是正するような措置を別途講ずることが可能であるならば、そういう方式ももちろん制度として成り立つわけでありますが、今お話のございました形について申し上げるとすれば、そういった懸念があるのではないか、このように考えております。
岡田委員 よく似た仕組みになるのかもしれませんが、患者が一たん医療機関に支払う、それを償還するという考え方についてはいかがでしょうか。
高木(俊)政府委員 患者の償還払い方式ということで、これはフランスがこういった形を医療保険の中でとっているわけであります。これはもちろん薬価差というのはないわけですし、それから、患者が一たんは薬代を支払って、そしてそれを保険から償還してもらう、こういう形ですから、薬に対するコスト意識といいますか、そういった面も患者さんの方で持っていただけるような格好になるわけであります。ですから、そういった意味では、これはもう現にフランスでも行われておりますから、制度論としては成り立たないというわけではないと思います。
ただ、我が国の場合にこの制度を、これは国民的な合意ということになるわけでありますが、これを採用するとした場合に、これまで我が国の場合、現物給付というのが定着しておりますから、そういった中でこういう償還払い方式というものについての理解がどの程度得られるか。
それからまた、実務的に考えますと、手続として一種の代理受領みたいな、患者さんは手続をとればいずれは保険の方から払ってもらえるわけですから、それを例えば医療機関が代行する、そういった代理受領みたいな形をいたしますと、実質的には現在の現物給付のような形になりますから、そういった意味で、その辺のところが、メリットがその分だけ減殺されるということがあると思います。
そういったような問題ではないかというふうに考えておりますが、その辺のところをどう評価するかということではないかと思います。
岡田委員 私は、最初の、医療機関に対して償還する、あるいは流通業者に対して償還するというのは基本的にだめだと思うのですね。価格メカニズムというのは全く働かないわけでありますから、多分、案にならないだろう。
患者が一たん医療機関に払うというのは、その払う額にもよるのだろうと思います。例えば定率制と組み合わせれば患者さんは痛みを感じるわけであります。全額ということになりますと、患者さんも何でもいいということになるのだろうと思うのですね。だから価格メカニズムが働かない。定率制をあわせ導入すれば、ある程度価格メカニズムは働くとは思いますが、しかし、医療機関で診てもらって、この薬が必要ですよと言われたときに、患者がその医療機関に対して、いや、もっと安い薬があるはずだとか、そういうことは現実にはなかなか言えない。そういうことを考えると、この制度もなかなか現実にはうまく働かないのかな、こういう気がするわけでございます。
それからもう一つ、公的な団体が薬を一括購入して、そして、医療機関に無償で配る、医療機関はその薬を使うという考え方についてはどういうふうに評価しておられるでしょうか。
高木(俊)政府委員 これはかつて、薬価差というものをどう是正していくかというような検討の中で、いわゆる一種の公社方式みたいなことを検討したことがございます。
ただ、今日、それじゃそれがどうかということになりますと、むしろ、そういうことよりも、もう薬価基準制度そのものを抜本的に直す時期に来ているということでありますから、この公的団体なりが一括購入する、そして、それを医療機関に配付して、それを医療機関が使うというやり方というのは、これは必ずしも、システムとして妥当かどうかということになると、かえって煩雑になるのじゃないかという気がいたします。
それからもう一つは、現在は医療機関が必要な自分のところで使う薬を直接購入する、そういうような格好に対しまして、まあ注文をとればいいじゃないかということにもなるかもしれませんけれども、公的団体がある程度まとめて買って、それを配付するということになりますから、そういった中でのロスといいますか、むだというものも出てくるおそれがある。
そういうことを考えますと、効率性の問題とかそういう点等を考えると、比較の問題として、薬価基準制度というものをこういう格好でやるよりも、むしろマーケットメカニズムを働かせるようなシステムの方がすぐれているのではないかな、そのように感じております。
岡田委員 ここで言う公的機関というのは一体何だということにも恐らくよるのだろうと思うのですね。例えば、健保組合などが交渉して一括購入して、そして、その組合員の方に対してはこの薬しかだめですよと医療機関に対して指示をする、こういうことであれば、健保組合はみずからの財政を考えて値引き交渉を薬品会社とするということはあるいはあり得るのかなという気もいたしますが、制度はかなり複雑になる、患者さんが自由に医療機関を選べなくなる可能性も出てくるわけで、現実にはこれもなかなか難しいかな、こういう気が私もいたします。
したがって、ほかの制度ということになるわけでありますが、それじゃ参照価格制度、これもなかなか、言葉が先行している嫌いがありますけれども、私の理解では、保険償還する価格の上限を成分別または薬効別に決めて、この上限を超える分については全額患者負担とする、こういうふうに理解しておりますが、この参照価格制度についてどういうメリットとデメリットがあるのか、簡単にお答えをいただきたいと思うのです。
高木(俊)政府委員 まさに参照価格制という言葉で一義的なものがあるわけではありませんけれども、今先生が御指摘のような形を仮にとるというふうにした場合でありますけれども、公定価格というものを決めるのではなくて、市場のマーケットメカニズムを通じて薬の価格形成というものを行うという意味ではやはりこれが一番すぐれているのだろうというふうに思います。
そういった際に、償還基準額をどう設定するか、その辺の設定の仕方というものが一つ重要なポイントになるだろうというふうに思いますし、それからまた、償還基準額というものは一たん決めたらもう未来永劫それでいくというものではありませんから、当然、薬の取引の実勢に合わせて常時見直していく必要がある、そういった意味での適切な見直しというものがなされないとこれも欠陥を生じることになると思いますが、そういったものを適切にやっていくということであるならば、やはりマーケットプライスということが形成されるという意味では一番透明なシステムではないかというふうに思っております。
岡田委員 その際も、前提として成分別あるいは薬効群別に分けるといっても、それが本当にできるのか、どこまでを一つの塊にするのかという技術的な問題が一つあると思うのですね。それから、全くの新規の開発薬がある場合にはその扱いをどうするのか、その値段をどうするのかという問題が当然出てくるわけであります。
このあたりについて、厚生省、仮に参照価格制度を導入するとした場合に、どう考えておられるのか。それから、今局長おっしゃったように、参照価格の決め方について、もし今、参照価格を導入するとすれば、どういう考え方で価格の水準を決めるのか、その辺について何かお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。
高木(俊)政府委員 現在、ドイツがまさにこの参照価格制度を導入し、そして薬効群別に分類しているわけであります。ドイツの場合は、三つのグループに分類してやっておりますけれども、こういったような形で薬効分類を行っていくというのは一つ参考になるだろうというふうに思います。
それで、ドイツも、参照価格と申しましても、今、全銘柄について参照価格が設定されているわけではありませんので、そういった意味では、まだある意味では開発途上のようなところがあるだろうと思います。
それから、ドイツの場合は、特許期間中のものについては参照価格を外しておりまして、そういった意味では自由価格といいますか、それで償還している、こういうようなやり方をとっておるわけであります。この参照価格制を初めて導入したドイツの例というのは一番参考になるというふうに思っておりますが、我が国で仮にこういったものを考えるとした場合に、その辺のところが一つの参考例になるだろう。
ただ、具体的にそれじゃ参照価格をどう決めるのか。これはまさに私どもとしては、今の段階では、従来の公定価格というものを廃止する、要するに薬価基準というものは公定価格制ということであり、それに伴う弊害というのは大きい、むしろマーケットというものを信頼し、そういった中で透明のもとに価格形成を図られるべきだ、そういうふうなことで、それを基本に考えておりますが、それから先の具体的な技術的な問題について、は、なお今後さらに詳細に詰めなければいけないというふうに思っております。
ただ、私どもの現在の薬価基準制度も、最初に新薬の値段を決めるときには公定価格でありますが、その後はマーケットの中で決まっていく価格を参考にしながら決めていっておりますので、そういった意味では、全く白地に償還価格を決めるというのとはちょっと違いますから、現行のそういった薬価基準の価格、そういったものも参考にし、そしてまたドイツにおける状況というものを参考にしながら、そこら辺の具体的な技術論というものを解決していくのかな、そんなふうに考えております。
岡田委員 参照価格制と定率負担というものの組み合わせというのは、私は論理的には考え得ると思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
高木(俊)政府委員 参照価格制という、先ほど御指摘のあったような形で一定の償還基準を決めて、そしてその償還基準額を超える分については、薬について自己負担にしていただくというふうな考え方をとった場合に、しかもそのときに、基準額というもののレベルをどの程度に設定するかということとも密接に絡むと思います。その基準額というものを、ある程度、薬の価格が引き下がるような、そういったインセンティブが働くような水準に設定する、そういった点では、余り高い水準じゃない、むしろ若干一部負担が伴うような水準に設定するということになってまいりますと、さらにまた薬だけ定率で取るというような形というものがいいのかどうかという問題はあります。
ただ、この定率負担といった場合に、医療費全体に対して定率の負担をお願いした上で参照価格、こういうのはあり得ると思いますが、薬だけに着目して定率と参照価格との組み合わせというのは、これはなかなか案としては厳しいかなという気がいたします。
岡田委員 ここは薬だけにするのか、それとも全体で定率ということにするのかというのは、どちらも考え得ると思うのですが、もしそういう定率制というものを組み合わせなければ、恐らく薬の値段はみんな参照価格に張りついちゃうだろうと思いますね、それより安いものも。そういう意味では、定率制というものは参照価格を導入するにしても欠かせないのじゃないか、そういうふうに私は思います。
今までの議論で、薬価基準を廃止するということになれば、いろいろな考え方があるけれども、参照価格制が非常に有力である、そういうふうに私は考えますし、局長の御答弁もそういう線に沿っての御答弁だったというふうに理解をいたしました。
それじゃ、翻って現在の価格設定ルールについて若干お聞きをしたいと思うわけですけれども、まず、先ほどドイツの参照価格制を例に挙げられたときに、新規開発薬は参照価格設定はないのだ、青天井だ、こういうお話がありました。特許がある限りは青天井だと。私は、それは非常に合理的な考え方ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
もちろん、弊害もあるでしょう。しかし、特許というものをどう考えるのかという問題ですね。特許だけじゃなくて、最近は著作権も含めて知的所有権というものと工業財との関係なんですけれども、知的所有権というのは、開発者の開発意欲を確保するために、一定の期間、排他的な権利を与える、独占を許すわけですね。その一定期間が終わったら、それは公共財としてみんなに自由に使ってもらう、これが知的所有権の基本的な考え方であります。
そういう考え方に立ったときに、現在の薬価の決め方の中で、特許の切れてしまった先発薬ですね、後発医薬品というのが出てまいります。特許は切れていますから、当然コピーしますね。そういうものは他の財であれば、工業製品であれば当然できることなんですね。特許が切れたらみんなまねしていいということになっているわけです。
ところが、この薬の世界はそうなっていないように思います。つまり、先発医薬品の価格に対して後発医薬品というのは〇・八掛けだ。しかも、この前まで〇・九だったのを〇・八にわざわざして差をつけた。ここはどういう考え方に基づいているのでしょうか。
高木(俊)政府委員 先発品と後発品との関係でありますが、現在の取り扱いは、平成八年の七月から現在の〇・八掛けになっておりまして、平成六年七月から八年六月までは〇・九掛けだったわけであります。これは、中医協の中での御議論の結果、こういうような取り扱いになったわけでありますが、後発医薬品につきまして、先発医薬品と比べて、有効性とかあるいは安全性とか、そういったものに関しては同等なものであるということで、薬事法上承認されておるわけであります。
にもかかわらず、それならば同じ値段でいいじゃないかということになろうかと思いますが、流通の実態、これをずっと見ていきますと、処方するお医者様等のいわゆるブランド志向といいますか、そういった面が一つ指摘されたりいたします。それからまた、開発した企業の医療機関等に対する情報の提供の差異と申しますか、そういったようなものの違いというようなことがあるということで、流通の実態を見ますと、後発医薬品の方が先発医薬品に比べますと低い価格で現実に最初から売り出されている。
最初から二割ぐらい低い価格で売られているということになると、やはりこういった流通の実態を考慮すべきだろう。それと同等の価格で提供し、最初から二割ぐらい安く売られているということになりますと、初めから二割の薬価差みたいなものを含ませた形になりますから、やはりこれは適当ではないだろうということで、この流通の実態を考慮して、後発医薬品については先発医薬品の〇・八掛け、こういうふうに決められたわけでございます。
岡田委員 〇・八掛けじゃなくて、後発医薬品というのは〇・六掛けぐらいの値段で現実には売られているのだという説もありますけれども、いずれにしても、そういう流通の実態というものが議論として成り立つのは価格メカニズムが働く自由市場での話でありまして、薬の世界というのはそうじゃないですね。安ければ需要がふえるという関係にはないわけですね。医療機関にとっては、安くても高くても同じなんですから、むしろ高い方が薬価差が入っていい、こういうことですから、そういう流通の実態にある中で、現実に後発品が安いから薬価も差をつけていいのだということには私はならないというふうに思うのですね。
お医者さんからしたら、自分は痛まないわけですから、むしろ高ければ高いほどいいという面もあるのですから、それは、名の通った方がいいということになると思うのですね。本当の自由な市場で全く同じ機能のものがあって、多少それは一方は有名メーカーで他方はそうじゃないかもしれないけれども、しかし、機能が全く同じだったら、まあブランドがある、ないによって数%の差は出るかもしれませんが、基本的には価格は一つになるはずなんですよ。それを、厚生省が違う価格をつけているというところに私は非常に矛盾を感じるのですが、ここのところをもう一度いかがでしょうか。
高木(俊)政府委員 問題は、最初の値決めというものを公定価格でまさに決めているというところにこういうような矛盾が起こるのだと思います。まさに御指摘のとおり、全くの自由市場での価格形成ということ、そういった中でのあれであれば、こういうことは起こらないのだろうと思います。
ところが、現行の薬価基準制度の場合は、まず最初の出発点の価格は公定価格で決めますから、そのときに、流通の実態、これは今から始まるわけではありませんから過去の状況というものを眺めてみた場合に、後発品の方が一定の割合で初めから安く売られているということであるならば、やはりそこのところは勘案して価格を決めるというのも一つの合理的な考え方ではないかなというふうに思っております。
岡田委員 私の常識からいえば、余り合理的とは思えないのですね。非常に薬の世界の特有な現象がこういうふうに出ているように思います。
このことによって、これは一つの計算ですけれども、例えば先発医薬品の価格を後発医薬品の価格まで落とす、特許が切れれば後はコピーは自由なんですから、先発医薬品の価格を後発医薬品の価格に合わせて水準を低下させるということによって、一体どのぐらいの医療財政上の効果があるのか、何か計算されたことはありますでしょうか。
高木(俊)政府委員 私どもとしてはやはりルールというものが必要ですから、強制的にというわけにいきませんが、そういう意味では机上の計算ということになるわけであります。
一定の条件を置いて仮に計算してみるということでやってみますと、いわゆる後発医薬品のある先発医薬品、これの割合がまずどのぐらいあるかということで、これは薬価ベースで見てみたわけですが、平成八年の九月の薬価調査に基づきまして計算してみますと、約二割程度というふうになっております。そうしますと、保険給付の薬剤費の総額、これがおおむね八兆円と言われておりますが、七・六兆円程度であろうというふうに計算いたしますと、これが全部その後発医薬品に振りかわるような格好になりますから、これの二割が幾らかというと、一・五兆円ということになります。この一・五兆円というものをどの程度まで下げるかということじゃないかと思います。
これを、例えば後発医薬品の最低価格まで引き下げるというふうにしたといたしますと、この辺がかなり腰だめになりますが、三割程度の引き下げになるというような考え方もありますので、仮に三割程度引き下げるということになりますと、一・五兆円の三割でありますから四千五百億、こんなふうな計算、単純にこういう前提で計算するとそんなことかなというふうに思います。
岡田委員 前提の置き方でかなり計算の結果は違ってくるのだと思いますけれども、後発品が出ている先発品の金額というのは約二兆円強ある、そして、後発品の価格というのは先発品の六割だ、だから、それだけでもう八千億ぐらいのお金が浮いてくるのだ、こういう計算も他方ではあります。
いずれにしても、今の後発品に対してかなり厳しい価格のつけ方、低くしているわけですね。そのことによって、今、日本では後発品のシェアが大体六、七%ぐらいですか、ドイツではそれが四〇%だ。やはりここは何か考えるべきだと私は思いますが、大臣、いかがでしょう。
小泉国務大臣 今までの薬価の決め方によりますと、先発品の努力は後発品に比べて評価しなければならない点があったと思いますね。新薬を開発するには、実験をするにしても、研究投資にしても大変なものだと思います。そういうことから、そういう労力に比べれば、後発医薬品はかなりそういう手間を省いて新しい薬を出すことができるという点で差をつけていたのでしょうが、今御指摘のように、いろいろ批判が出ております。高い方に引きずられていくのではないか、低い方に合わせたらいいのではないかという話も当然出てきておりますので、私は、このままの薬価算定方式はもう無理が来ているのだなと。今後の薬価基準を見直すという中で、今の御指摘、御批判にたえ得るような薬価基準の見直しをしていく中で解決していくべきだなと考えております。
岡田委員 私も、その先発医薬品、特に新規性の非常に高いものについて、開発費がたくさんかかる、そのことについてどうでもいいと言っているわけではありません。これは後でまたちょっとやりたいと思いますが、そこのところをきちんと見ていないという部分があるかもしれない。わかりません。しかし、そういう部分があるのかもしれません。
しかし、いずれにしても、それは普通の工業製品の世界では、薬以外の部分では、特許が切れるまでの話でありまして、特許が切れたら自由にやっていいよ、コピーしてもいいし、したがって値段も基本的には一つに収れんしていくよというのが普通の工業製品、財の世界の常識でありますから、そういった常識が通る世界にぜひしていただきたい、そういうふうに思います。そして、そのことによって、国民の払う税金や保険料がかなり緩和されるということは事実でありますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。
さて、今の薬の価格の決め方でありますけれども、一つは、類似薬効比較方式というのが今ございますね。この類似薬効比較方式について、これは私、全部情報公開できるのじゃないかというふうに考えます。
つまり、これは類似の薬と比較して、一日当たり幾らということを逆算して、そして値段をつけていくということであれば、どの類似薬と比較してどういう計算式でこの価格になったのかというのは、これは機械的に決まる話であります。それは全部それぞれの薬ごとに公開できるのじゃないか。公開することで、そこにおかしなことがあればチェックができるわけですから、おかしなことも起こらない。こういうふうに思うのですが、この類似薬効比較方式による薬価算定について、すべて情報公開をするというお考えはありませんでしょうか。
高木(俊)政府委員 新薬の値段の決め方は二つのルールでやっているわけでありまして、一つがまさに類似薬効比較方式というやり方、こういった類似薬効がない場合には原価計算という形で決めているということでございます。
この基本的なルールについては、これは中医協の中で建議が行われ、そして、それが決められておるわけでありますが、個々の薬について、それでは具体的に公表してはどうかということだと思います。まさに、この類似薬効比較方式によって算定した場合、算定に用いた比較対照薬がどれであるのか、それからまた、その場合に加算が行われたということであれば、そういった加算の種類というものがどういうものであったのか、そういった内容についてやはり明確にすべきであるという御指摘であると思います。
そこは、私もそのとおりだというふうに思いますし、今後、この薬価基準の、類似薬効比較方式で算定をするという内容についてはやはり公表をしていくという方向で検討していきたいと思っております。
岡田委員 類似薬効比較方式については、個々の薬ごとに情報公開していただける、こういうふうに受けとめました。
それで、この類似薬効比較方式の対象というか、ゾロ新と言われるものがありますね。ゾロ新については基本的には制限していこう、こういうお考えだと思いますが、この類似薬効比較方式で値段を決めている薬というのは、例えば最近の実例でいってどのぐらいの数があるのでしょうか。
高木(俊)政府委員 最近の四年間で申し上げたいと思いますが、全体でいきますと、成分数で百九十二の新薬を薬価基準に掲載しております。品目で三百七十品目ございます。この四年間の中で、類似薬効比較方式で決めたものが、成分数では百七十一成分、約八九%でございます。それから、品目数で申し上げますと、三百四十八品目、約九四%、こういう状況でございます。
岡田委員 そうすると、残りは原価計算方式ということになるわけですね。
高木(俊)政府委員 失礼しました。残りは原価計算方式でございます。
岡田委員 その原価計算方式でありますが、これも一応公式ができている、こういうことであります。
例えば、労務費や販売費や営業利益や流通経費については、既存の統計を使ってその平均値をとったりして計算する。ここの労務費や販売費や営業利益や流通経費については、業界平均の数字を使っているとすれば、会社によって、あるいは薬の種類によってほとんど差は出てこないということに論理的になると思うのですが、いかがでしょうか。
高木(俊)政府委員 原価計算方式の場合でありますが、これは内容としては、製造にかかる材料費、労務費、販売費、それから一般管理費、営業利益、流通経費、主なところはそういったもので構成されておるわけであります。
この中で、材料費を除く各費目の構成割合、これにつきましては、いろいろな、例えば労務費であれば労働省の毎勤統計、製造経費とか一般管理販売費とか営業利益、こういったものについては、開銀が発行しております産業別財務データハンドブックというものがございますし、流通経費という面では、厚生省の業務局が調べております医薬品産業実態調査というものがございます。こういった各種の統計資料に基づいて、その数値を参考にしまして、そして価格設定を行っている。比較的客観的な設定といいますか、ある程度画一的な設定というふうになっていく費用であります。
材料費につきましては、これは、メーカーの提出資料、その中身を精査しまして、そして、合理的な費用かどうかという点についてチェックをさせていただいて算定をしている。
これらを足し合わせて原価計算を行っている、こんなふうなやり方をさせていただいております。
岡田委員 その際、研究開発費というものは一体どこで見ているのでしょうか。
高木(俊)政府委員 研究開発費につきましては、これは、いわゆる技術研究費という形で、販売費及び一般管理費、その中に含まれているということでございます。
岡田委員 先ほどの説明ですと、販売費や一般管理費というのは、既存の統計で業界の平均値をとったりして計算しておられると。そうすると、研究開発費というものもそういう業界の平均値で計算しているわけですか。
高木(俊)政府委員 この研究開発費は販売費及び一般管理費に含まれておるわけでありますが、この販売費及び一般管理費につきましては、開銀の、有価証券報告書に基づきまして産業別財務データハンドブックというのが出ていますが、これの比率を使用させていただいております。
岡田委員 どうもよくわからないのですが、そうすると、ほとんどの薬の値段はみんな一緒になってしまうのじゃないですか、客観的な資料でやっているとすれば。でも、現実に、薬の額は全部違いますよね。そこの矛盾はどうして出てくるのでしょうか。
高木(俊)政府委員 先ほど申し上げましたように、まず、材料費はそれぞれ別になりますが、それから、それぞれの先ほど申し上げたような各費目、これについては、先ほど申し上げたような各種統計資料に基づく数値を参考にしているということでやっております。
ただ、これは全く同じということではなくて、それぞれ開発に当たっての労務費にしましても販売費にしましても、労務費なんかにしてそうでありますが、それぞれの人員構成等々によっても若干違う面がありますから、だから、必ずしも全部同じということにはならないと思いますが。
岡田委員 どうもよく理解できないのですが。
例えば、非常に膨大な研究開発費を投下して、そして立派な薬ができた、それから、そう大した研究開発費を投下しなくても、ここで言う原価計算方式の対象になるような新規性のある薬ができたという場合に、当然、薬の値段は変わりますよね。現実にも違っているはずなんです。
ところが、今の御説明では、そんな違いが出るはずがない。材料費ぐらいのところは、これは会社ごとに違いますよと言われても、材料費の考え方にそんなに大きな差が出るはずがないのですから。だから、研究開発費というのは一体どこで見ているのかというのが私にはわかりません。
もし見ていないとすれば、それは新しい研究開発はできないわけですね。私は、それはもう完全な制度的な欠陥だと思います。もし見ているとすれば、局長、いろいろ御説明いただきましたけれども、そして、客観的な数字でやっていると言いながら、あちこちで不透明なやり方でそういうものを織り込んでいる、そしてその中で、私は、研究開発費に名をかりた、不透明ですから、客観的な基準じゃありませんから、いろいろなおかしな話も出てくるのだろう、あるメーカーだけが優遇されて高い薬の値段をいつもつけてもらっているとか、そういう話も出てくる余地があるのじゃないか、こういうふうに思いますが、この点について、大臣、いかがでしょうか。
小泉国務大臣 いかに税金を使って、公費を使っているからといっても、細か過ぎると私は思いますよ。細か過ぎる、決めるのが。この公定の矛盾が出てきている部分です。だからこそ、この公定価格制度にもう限界が来ているのであって、これでは企業の自主性が発揮できないなと。
統制経済、市場経済、どちらがいいかという優劣の問題にもかかってくると思いますけれども、私は、まさに市場経済の中で、医療は統制経済がゆえに規制も多い、そして、細々とした指導もしなきゃいかぬ、またそれを逃れようとしていろいろな方法を考える、ここにもう矛盾が来ている、統制経済でありますけれども、できるだけ市場原理を導入するといいますか、市場実勢にゆだねた方法をとらないと、今指摘されたような矛盾点はなかなか解決できないのではないかな、そう感じました。
岡田委員 そういう意味で、市場メカニズムを働かせていくためには、私は、完全な医薬分業というものが前提になるだろう、こういうふうに思います。特に外来の場合には、完全な医薬分業にし、かつ患者に定率の負担を求める。これは、定額であっては患者の痛みというのは同じですから、定率にしてこそ初めて、その患者が、薬の高い、安いということについて痛みを感じるわけですね。そしてなおかつ、医師が薬の指定をするときには、個々の薬品の名前で指定するのではなくて、銘柄で指定するのではなくて、薬効で指定する。この三つの条件が重なって、完全医薬分業と定率負担とそして薬効の指定、この三つが重なったときに初めて、価格メカニズムというのが外来の場合働いてくるのじゃないか。
患者さんは薬屋さんに行って、そして、みずからは何割か自分で負担をする、つまり懐が痛むという前提のもとで、同じ薬効の薬が幾つか並んでおれば、その中で、例えばこの薬はブランド品だけれども高い、こちらは安い、どっちを選ぶかは患者さんがみずから選ぶ、そういう仕組みであって初めて価格メカニズムが働くと思うのですが、この点について何か異論はありますでしょうか。
丸山政府委員 医薬分業につきましては、現在、最近急速に進展をしておるわけでございますが、御承知のとおり、全国平均で二〇%程度ということでございまして、完全分業されている欧米に比べてはその差が大きいということでございます。
その際に、今お話しの処方せん、薬効についての指摘をするだけでよろしいのじゃないかというお話でございますが、それは医師の処方権との関係がございまして、これまで大変難しい問題であるとされてきたところでございます。
岡田委員 私は、難しい難しいという御答弁を聞きたくて質問しているのではございません。医薬分業については、きょうは時間がありませんからまた改めて次回でもさせていただきますが、外来の場合はそういうことだろうと私は思います。
それでは、入院患者の場合どうか。入院患者の場合は、さっきも言いましたが、患者さんが自由に薬を自分で選ぶということがなかなかできないですね。お医者さんにあてがわれたものを飲むしかない。この薬ちょっと高いからほかに同じ効能で安いものがあるはずだとか、それはよほどの専門家でないと言えないわけであります。
そうだとすると、薬の値段という観点からのみ言えば、入院患者の場合には診療報酬を包括・定額払いにしていく、その中で、お医者さん自身が一定の額の中で同じ効能なら安いものを選ぼうというインセンティブがあって、そこに価格メカニズムが働く、こういうことじゃないかというふうに私は思っております。だから、外来の場合と入院の場合でちょっと分けて考えていくべきだ、こういうふうに思うわけであります。
そういう基本的な考え方、大体、欧米の各国もそういう考え方ではないのかと私は思うのですが、この点について何かコメントがありましたらお願いしたいと思います。
高木(俊)政府委員 欧米各国それぞれ、そこらは完全に一致しているわけではありませんが、入院患者の扱いについては基本的には先生がおっしゃったような方向ではないかと思いますし、私もやはり、そういうのが基本的な方向じゃないかというふうに思っております。
岡田委員 もちろん、今のは薬の世界についてだけ見た話でありまして、入院患者さんの場合の定額払いというのはほかのデメリットもありますから一律に薬価の問題だけでは判断できないと思いますけれども、基本的にはそういうことではないかというふうに考えております。
それで、医薬分業の話でありますけれども、先ほど局長、私が質問する前に大体お答えいただいたと思うのですが、いずれにしても医薬分業というのが大前提になるとすると、これをどれだけしっかりやっていくかという問題だと思います。
例えば国公立病院あるいは厚生省直接御所管の国立病院について、今、医薬分業はどの程度の実態にあって、そしてなぜ一〇〇%に近い数字ができないのか、その点についてお伺いしたいと思います。
小林(秀)政府委員 国立病院では、院外処方せんの発行の推進の事業として、平成元年以来努力をしてまいりました。平成元年当時は、国立病院は、療養所はちょっと除きまして、病院でいきますと七・一%でありましたが、平成七年では二九・五%の数字まで上がってきて、全国平均以上の数字になりました。
それで、どうやって推進しているかといいますと、モデル病院を決めまして、それは外来が平均五百名以上あるところを選んでやりまして、一番いいところは、平成元年〇・八%であったところが平成七年度では九二・四%まで進んだ病院もあります。
なかなかうまくいかないところもあります。それは一つは病院の問題があると思うので、私も細かいところまでわかりませんけれども、すごく進むところというと地域との連携というのがありまして、実はその病院だけが努力して済む問題ではない。地域に受け皿の薬局がないといけない。本来は、分業分業と言ってやってきたわけでございますけれども、面分業と言われて、病院で出した院外処方せんが各地域へ散っていく、患者さんの自宅の近くでそれがもらえるという仕組みが本当はいいわけです。門前薬局になったのでは、本来、面分業のよさが出てこない。そういうためにはやはり地域の受け皿というものがあるということでございまして、私どもとしては、その受け皿をいろいろ考えながら一生懸命推進していかなくちゃいけないと思っています。
そういう意味では、国立病院が、完全分業というところまではいきませんけれども、全国の医療機関の先駆者となるべく分業は進めたい、このように思っています。
岡田委員 地域に受け皿がないということですが、地域にも、よほどのへんぴなところでない限り薬屋さん、薬局はあるわけでありまして、今おっしゃった受け皿がないというのは具体的にどういうことでしょうか。
小林(秀)政府委員 院外処方せんで、面分業で出しますと、患者さんが自宅の近くの薬局に行かれる、そうすると、そこに品ぞろえがしていないといけないとか、それから土曜、日曜やっていないとか夜間もあいていないとか、ヨーロッパなんかは夜間あいているわけですね。いつでもあいているということが大事なことなんです。そういうような、やはり薬局は薬局としてのいわゆるやるべきことがある。
それからもう一つは、薬剤師さんも今までは分業ということになれていらっしゃらないから、そこまでの教育というのですか、患者に対してきちんと薬の説明をする、そういうことに対する教育もまだ完全に全国うまくいっているというわけではございませんので、それは地域の事情を考えてやっていかなくちゃいけない。
しかし、いずれにしても、これを推進していくということは大事なことでございますから、それについては大いに頑張っていこうと思っています。
岡田委員 先ほど言いましたように、薬の値段の問題を考えたときに、医薬分業というのが大前提になる話であります。しかも、これはゆっくりやっていたのではいつまでたっても、この薬の問題で、市場メカニズムという話になってこないわけですから、大車輪で厚生省として進めていかなければいけない問題だと思うのですね。その割には随分のんびりした話だな、本当にやる気があるのかと、お聞きしていて、率直に申し上げてそういう気がいたします。
少なくとも国立病院は厚生省御所管ですから、そこについては、早期に一〇〇%に立ち上げていくという具体的計画をつくって、二年計画ぐらいでやっていかないと、これはいつまでたっても薬のところで改革ができないということになるのじゃないのでしょうか。私が自分の経験で言っても、要するに、国立病院じゃないのですが、公立病院、市立病院、県立病院、そういうところがまずきちっと医薬分業をやれば受け皿はできるのですよ。ある程度のお客さんが確保できるということになれば、薬屋さんの方も共同で薬を備蓄したり、そういうことに対してお金をかけるのですね。ところが、それがないと、いつまでたってもそれはできないですよ。
そういう意味で、医薬分業を進めるための起爆剤として国公立病院をまずきちんと医薬分業する、そうすればほかの病院はそれについてくると思うのですね。その点について御決意のほど、大臣、いかがでしょうか。
小泉国務大臣 私が平成元年に大臣に就任したときも、この医薬分業、大事だと言ってやってきたわけですが、今二割ちょっと超えたぐらいですか、これは今後とも医薬分業を推進していくのは大事ですから、せめて国立病院は率先垂範して医薬分業を推進していく体制をとっていくべきだと私も思います。
岡田委員 厚生省というか、この医療分野での改革を二〇〇〇年までにやるのだということであれば、ゆっくりしている暇は全くないということになると思います。私は、厚生省の中でも、何か局によって、大分この医薬分業に対する取り組み方というか感覚にずれがあるように、そういう気がしますけれども、ぜひ、そんなことを言っていないで、省を挙げてこの医薬分業に対して取り組んでいただきたい、こういうふうに思います。そして、その前提として、まず国立病院について完全にやっていただきたい、こういうふうに御要望申し上げておきたいと思います。
さて、時間も非常になくなってまいりましたが、今回の薬の負担の問題について最後にお聞きしたいと思います。
何回も局長の方から、一種類一日十五円という負担は多剤使用の制限にはなるけれども、価格抑制のインセンティブとしてはなかなか機能しないという趣旨の御答弁があったと思いますが、この点、もう一度確認したいと思います。
高木(俊)政府委員 今度の改正案でお願いしております薬の一種類一日十五円という一部負担の形でありますが、これは、多剤使用というものについてはコスト意識という面を持っていただける、また、それに対する歯どめには役に立つのではないかというふうに思っております。
もう一方、薬のシェアが非常に高いといった中に、いわゆる高い新薬の方にシフトするという問題がございます。こちらの方は、今回のやり方をとったからといってストレートに寄与するというふうなことはなかなか難しいのではないか、そんなふうに考えております。
岡田委員 そこで、一日一種類十五円というのを五十円にしてしまえばどうかと。これは医師会もそういうふうな意見があるというふうに聞いておりますし、中身は違いますが、民主党さんもそういう御意見があります。
いずれにしても、五十円ということにした場合に、例えば二百五円以上のものは五十円だ、こういうことにした場合に、それは、価格を抑える効果というのは私はないとは言いませんが、例えば二百五円を超えてしまえば幾らでもいいや、みんな五十円だ、こういうことになるのじゃないか。あるいは、二百五円以下のものをただにするというのであれば、それはただだからむだなものでも出していいのだ、こういうことになる危険性をはらんでいると私は思いますが、この点についていかがでしょうか。
高木(俊)政府委員 今度の薬の一部負担の仕組みでありますけれども、あらゆる効果を期待して、この方式ならばそれらの効果を全部吸収できるというやり方があれば一番いいわけでありますが、それぞれ一長一短があるわけであります。
それで、今回お願いしている一種類一日十五円というやり方、これは、特に医師会の先生方はそういう声が強いのでありますけれども、実務的に非常に煩雑だ、これはちょっと幾ら何でも何とか改善できないかという声もございます。そういったような視点も込めてまた別の案というものを考え出されているという面があるわけでありまして、そこら辺、どういう切り口からこれを考えるか。
しかし、いずれにしても、薬に対する御負担をお願いするということによって、薬に対するコスト意識というものを、あるいは受益と負担の公平というものを喚起したいという、そういう点についてはそれぞれ同じようなあれがあると思いますが、そこら辺は、どういうふうな視点でどの程度の効果というものを考慮に入れてやるかということによって、やはりその方法というのはいろいろあり得るのじゃないか。一概に、これはだめで、これはいいというものではないような気がいたします。
岡田委員 十二月の医療保険審議会で示された考え方の中で、今回、一番違っているのはこの薬のところだと思うのですね。定率だ、しかも一割じゃなかったのですね。それを一日一種類十五円ということに変えて、それが手続が煩雑だということでまた違う案になるかもしれない。手続が煩雑なら定率にすればいいのですよ。私はもちろん、この薬の負担について、構造改革とのセットでなければこういう負担はおかしいという考え方を持っておりますけれども、しかし、いずれにしても、今回のような考え方で、今のお考え、一種類一日十五円なら七千七百億円の負担増だ、これだけ巨額のものを何かわけのわからないことで国民に負担させるというのは納得ができないのです。
私、これはもう基本的な国家観になるかもしれませんけれども、国家と個人の関係というのは、いろいろな負担を国家が個人に求めるのは、それは合理的であれば、理由があればいいと思いますよ。しかし、今回の一日一種類十五円とか五十円とかいうのは根拠がないのですね。大臣は、平均百五十円だからその一割だとおっしゃったけれども、国家が国民に対して何らかの負担を課すのであれば、例えば自己負担で一割を負担してもらうとか、そういう根拠がはっきりしていれば許されると私は思いますけれども、こんなわけのわからない丸めた数字で、おまえら負担しろというのは、お上が、封建時代に悪代官が、それこそ一般の農民に対して押しつけたのと同じじゃないか、非常に合理性がないのじゃないか、イギリス的な意味でのリベラルという考え方からいっても私はこれはとても納得できないと思いますが、大臣、この点についてどういうふうに考えておられるでしょうか。
小泉国務大臣 その議論、私は否定いたしません。手続が煩雑だというのだったら定率がよかったのですよ。お医者さんも、それはだめだと言うわけでしょう。いかにまとめるのが困難か。根拠も、そうすると月千二十円もどういう根拠なのかというと難しいですね。かなり合理的説明が難しいのが今の医療制度なんですよ。
ですから、これは段階的に――市場経済の中で統制経済だからすっきりいかないのはわかります。その難しさはあるけれども、この法案を通してから、私は、少なくとも合理的、論理的な改革はないかという方向で改革案をまとめてみたいなと思っております。
岡田委員 最後は開き直られてしまったような気がするのですが、私はやはり、そこは基本的な方向を示して、こういうことでやるからということで納得を求めていくということでないと、余りに非合理的なものを、しかも、先の展望がなくて押しつけられるというところに今回の最大の問題があると思います。
恐らく、概算要求を控えて、厚生省の方も八月いっぱいにはいろいろな抜本的な改革案を打ち出さなければいけないということになると思うのですね。そういうことだとすれば、次の案が出てくるのはそんなに先の話じゃない。とすれば、それを今我々に示していただきたい、その上でこの負担の問題について議論させていただきたい、そういうふうにお願い申し上げて、私の質問を終わります。