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1997.06.13|国会会議録

140回 衆議院・厚生委員会

岡田委員 新進党の岡田克也でございます。

まず大臣、大変お疲れさまでございます。百五十時間という極めて長い時間の審議に、我々も大変勉強させていただきましたが、大臣の方も、一つ参議院もありますし、さぞかしお疲れのことだと思います。

いろいろな議論の中で、かなり率直に、一部開き直りもありましたが、かなり率直にお答えいただいたということは、率直に私どもも評価したいというふうに思っております。

さて、きょうは一般質疑でありますが、現在参議院で再修正された健保法等の一部改正案につきまして、若干の確認をしたいと思っております。

まず、大臣にお伺いしたいと思います。

この健保法等の一部改正案は、二転三転したといいますか、当初の審議会の答申から見れば、審議会の答申が出、そして法案の形で出た。薬については一日一種類十五円という形であったのが、衆議院の段階で、我々、何かこれがおかしいということを余り言った記憶がございませんが、与党の中で政府提案のものをお変えになった。そのときに、採決のときに、まさかこれ変わることないでしょうねということを私どもの坂口委員が質問して、そういうことはありませんというふうに修正案の提案者から答弁いただいたわけでありますが、参議院でまた変わってしまった。

政府案と衆議院の改正案と今回の参議院の案と三つあるわけですが、大臣、この三つの中でどれが一番いいというふうにお思いでしょうか。

小泉国務大臣 政府案が一番よかったのじゃないかなと思っております。

岡田委員 そうは言っても参議院で再修正されたわけで、私どもとしては、これは大臣に言う話ではありませんが、やはり政党として、一応、衆議院、参議院があるということはわかるわけですけれども、しかし、こう与党の中でころころ変わったのでは私どもも非常に対応に困るわけでありまして、与野党で議論した結果、衆議院と参議院はそれぞれ院の構成も違いますし、その結果として変わるということであれば理屈は立つと思いますが、与党の中で勝手に議論して勝手に変える、政府提案を衆議院で変えるだけでもかなり異常な姿だと思いますが、それをまた参議院で変えるというのは、一体国会の権威というのはどうなっているのかというふうに私としては感じざるを得ないわけでございます。

さてそこで、今回の参議院での修正によって国庫負担にどのぐらいの影響が出たのか、厚生省にお答えいただきたいと思います。

高木(俊)政府委員 今回の参議院の修正によりまして、平成九年度満年度ベースで、国庫負担、八十億円ふえることになります。

岡田委員 これもいろいろな計算の仕方があるのだろうと思いますが、八十億円、従来に比べてさらに国庫負担がふえる、こういうことでございます。逆に言えば、患者負担が減るということかもしれませんが。

こうなると、私、特に問題だと思いますのは、六歳児未満に対する薬剤の負担をゼロにした、こういうところについて、私は釈然としないものを感じております。六歳児未満の薬剤負担をゼロにした、その考え方というものは一体どういうものなのか。これはもちろん厚生省が御提案のものではありませんから、間接的に厚生省としてこのことについてどう評価しているのか。それから、大臣は、こういった六歳児未満の薬剤負担についてゼロにするということが望ましいことだというふうに考えているのか、あるいはいないのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

高木(俊)政府委員 参議院の修正の際に、委員会でもこの点について御説明がありましたが、これは一つには、小児の場合、このケースについては、薬剤に対する今回の新たな一部負担の額、これが、実際に支給されるいわゆる薬剤費の実費でありますが、それを上回るケースがかなり多く生ずるということが一点ございます。それからまた、少子化対策といった点にも配慮する必要があるというようなことから、このたびの、小児については、六歳未満、薬剤負担を取らないというふうに修正をするものであるという御説明でございました。

小泉国務大臣 小児に対して今回は薬剤負担を取らないということに修正がされたわけですが、私は、財政が許せば、小児に対しても高齢者に対しても、ある一定の配慮があっても悪いとは思っておりません。今後、少子化対策等もあります。高齢者対策に比べると小児対策というのに対して配慮が足りないのではないかという意見もあります。そういう点も含めまして、私は、一つの対策といいますか配慮として、小児に対しては一般と違った対策があっても悪いとは思っておりません。

岡田委員 私は、この点はかなりひっかかるものがございます。

例えば、所得の低い方に対して、今回もお考えでありますけれども、負担能力がないということで、そこの部分について別途今回のような措置をとるのは、これはまだわかります。

しかし、少子化対策という、本来の医療とは違う次元のもので扱いを変えるというのは、これは、国が全額負担するものであればいいと思います。しかし、これは保険であります。保険というのは、保険に入っている人たちがみずから出し合って、そして助け合うという制度であります。そこに、国の政策、全然次元の違う政策を、政策目的を入れてやっていくというのは、私は、考え方として基本的におかしいのじゃないか、こういう気がするわけであります。

それで、そういう形でどんどん官の方が全く次元の違うものを持ち込んでいくというところに、私は、政府と民間との役割分担というのも非常におかしくなってくるし、あるいは政府の肥大化ということにもつながってくる。

やはりこれは保険で医療を見るのだ、それを保険制度でお互い助け合ってやっていくのだということであれば、その範囲のものにとどめておくべきじゃないか、こういうふうに思いますが、大臣、お考えはいかがでしょうか。

小泉国務大臣 その御意見も私なりに理解できると思うのでありますが、一律の配慮という面において、一方では特別の配慮をした方がいいという意見が必ず出てきます。その際に、私は、余り複雑にならない方がいい、あくまでも簡素の方がいいと思います。そういう際にはどのような層に対しても、どのような部類に対しても、どのような政策にしても、ある一定の例外的な配慮というのは、その時々の政治判断、そのときの社会情勢によって、一概に否定できるものではない。できることならば、大方の理解を得られるのだったらば、公平で中立で公正というのは一律だと思いますけれども、政治の社会におきまして、経済の実態の社会におきまして、ある層に対して、ある者に対して、特別の配慮というのはその時々の政治情勢で判断すればいいのではないかというふうに考えております。

岡田委員 私は、普通の予算でやるものならそういう御議論も成り立つかと思いますが、保険だから特に申し上げているわけであります。

保険料を取られる人は、そういう国の少子化対策のために保険料を取られているわけではないはずだと思うのです。国が取り上げた保険料で勝手にそういう全然次元の違う政策をやるということが本当に適切なのかどうか、かなり疑問に思うわけで、もしこういうことを認めれば、それじゃ医療保険で保険料取っておきながらそれで公共事業やるとか、そういうことまで場合によっては可能になる、論理的にはそういうことにもつながりかねないわけで、私は、大変こういう考え方に違和感を覚えているところでございます。

小泉国務大臣 私も、特別の配慮というのは限定すべきだと思います。例外的だという意識を持って、あるときにある特別の配慮というのは政治の世界では否定されるものではないのではないか、しかし、その特別の配慮というのは極めて例外、限定的だという意識を持つことも大事だと思います。

岡田委員 もう一つ、これの問題は、今回、いろいろな意味で負担増になるわけですね。要するに、金がないから、財政がもたないから負担をふやす、こういうことで、かなり国民に対して無理を言うわけです。みんながそういうことで我慢をしましょう、だから高齢者も含めて我慢してくださいということであれば、それは、我々は賛成はしておりませんけれども、一つの考え方かもしれません。しかし、そういう中で、いや、一部だけ例外で少しまけてあげますよ、そういうことですと、そんな余裕があるのなら高齢者の負担をもう少し軽くしてもらった方がいい、こういう議論も成り立つのではないか、私はこういうふうに思っておりまして、依然として釈然としないものを感じているところでございます。

さて、今回の六歳児未満の薬剤費負担をなしにしたことによって、国費ベースでは二十億円の新たな負担が必要になる、こういうことでありますが、国費以外の部分でどの程度の負担が出てくるというふうに厚生省は試算しておられるのでしょうか。

高木(俊)政府委員 各制度ごとに異なるわけですが、それぞれの制度で保険収支に与える影響ということを見てみますと、まず、平成九年度の満年度ベースでございますが、政管健保で三十七億円、仮に取ったとした場合に比べると三十七億円の違いがある、それから、組合健保の場合が三十億円、国民健康保険が十四億円、共済あるいは船保を合わせまして十三億円ということで、これら合計いたしますと、医療保険全体で九十四億円というふうに見込んでおります。

岡田委員 そうしますと、それに国費を含めて百億円強ということですね。

高木(俊)政府委員 これは保険収支でありますから、国費はこの中に全部含まれております。

岡田委員 いずれにしましても、百億円近い全体の負担が発生するわけであります。

ところで、今、こういった乳幼児に対する医療費の負担については、自治体レベルでそれに対していろいろな軽減策が講じられているというふうに思うわけでありますが、そういうものがありながら、今回、この薬について負担を負わせないというのは、その結果、一体どういう結果になるのでしょうか。単純に考えますと、百億円近いお金を全体で負担することになった、その分、地方自治体の負担が軽くなるだけではないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。

高木(俊)政府委員 各都道府県で小児に対するいわゆる自己負担分の減免等をやっております。これは、現行制度の中における一部負担について行われているわけですが、それぞれ、対象年齢等かなり違っていたり、あるいはやり方についても、償還払いの県もあったりしております。そういった中で、今回、さらに薬について一部負担をお願いするということにしたわけですが、これについても、各自治体の単独事業でその分を減免するかどうか、これはこれからの問題であります。

今回、六歳未満の小児については取らないということになったわけでありますけれども、この部分というのは従来も負担しているわけではありませんから、そういった意味で、今の段階では、形としては地方自治体の財源の肩がわりのような格好にはなっていないということでございます。

岡田委員 各都道府県が、従来と同じように、今回、新たな追加負担になった分も含めて、同じような措置をとるとするならば、逆に、今回やったことでその分の負担が軽くなる、こういうことだろうと思うのですね。結局、都道府県は、その分は、今までやってこられた以上、放っておいても多くのところはやるだろうというふうに思うのですね。ということは、結局、大事な国費あるいは各組合の負担の百億円近いお金が単に都道府県の財政に移転しただけではないか、こういうふうに思うわけであります。国の予算も大変厳しい、それからそれぞれの組合の財政も厳しい、そういう中で、そこからお金を吸い上げて、そして都道府県にそれを補助金として出した、都道府県はその分、楽になった分を、それを本当に医療のために使ってくれるのならいいですが、何に使うか全くわからない、都道府県の財政がその分好転しただけだ、こういうふうにも思えるわけであります。

そういう意味で、今回の乳幼児の薬剤費負担を外したということが私にはよく理解できないし、選挙対策としては、与党としてこういうものをやったのだ、そういう意味はあるかもしれませんけれども、そういう発想そのものをやはり変えていかないと本当の改革はできない、そういうふうに私は思っているところでございます。これは大臣や厚生省に言っても仕方がありませんが、そこのところは、こういう改正のときにはもう少し自制心を持って考えていただきたいものだというふうに感じているところでございます。

それでは、健保の問題はこれで終えまして、次に、構造改革の問題であります。

もう何度もお聞きしているわけですけれども、大臣はこの場で、できれば七月いっぱいぐらいをめどに厚生省としての案を取りまとめたい、こういうふうに御答弁をいただいております。それから、我々があっと驚くような案をまとめるという御答弁もあったやに記憶をしております。記憶しておられませんか。我々があっと驚くような思い切った案をまとめるというふうに大臣は言われたように私は記憶しているのです。

いずれにしても、そういう中で、先ほど理事会においても申し上げたわけですが、厚生省として案をまとめたところでこの委員会で御報告いただき、若干の質疑をいただく、そういうことを、私ども、党として理事会で提議をしているところでございます。もちろん、それは委員会で決めることでありますが、委員会の方からそういう話があったときに、大臣としては、厚生省案について御説明いただき、そして質疑を受けていただく、そういうおつもりは当然おありだと思いますが、ここで確認をさせていただきたいと思います。

小泉国務大臣 この国会が閉会すれば、直ちに抜本策取りまとめに全力投球いたしますが、できるだけ早く、七月中にはその案をまとめたいと思います。その際には、与党の協議会等もありますが、私は、委員会のことについてはとやかく言う立場にも今ありませんけれども、委員会の要求等、指示あれば、いかなる場にも出てその案について御説明なり御報告なりすることに対して、何らちゅうちょするものではありません。

岡田委員 お約束いただいたというふうに理解をいたします。

しかし、この改革案はかなり大変だろう。当面の予算を削る、そういう課題もありますし、取りまとめは相当大変だろうと思いますし、厚生省としてお取りまとめになった後で、委員会の場やあるいはいろいろな場で、与党とも御協議があるでしょうし、相当大変だろうと思います。そういう中で、厚生大臣として、この改革案を最後まで責任を持って、政治家としての政治生命をかけてやり抜く、そういう御決意はおありだと思いますけれども、そのことをぜひここで御披露いただきたいと思います。

小泉国務大臣 厚生省予算について五千億円を上回る額を削減しなきゃならない、そういう中で、その五千億円を上回る削減の中で一番の部分を占めるのが医療関係になると思います。今国会の御審議の中でも、一部の患者負担だけではもう限界に来ている、抜本的な、構造的な改革案を示せという御意見も多々あったわけであります。その抜本改革案につきましては、今ざっと考えただけでも、今回の一部手直しの案に対しても、過重負担という批判がかなりの部分で出てまいりました。抜本改革をすればその一部の患者負担がなくなるのではないかというような状況こま、抜本改革案を示したとしても、ならないと私は思っています。かなりの広範な、医療関係者も一般国民も、それぞれの関係者が痛みを伴う改革案を示さなければならないわけでありますので、これは相当の覚悟が要ると思いますが、決められたからには、財政再建、そして日本の経済体質の強化、日本が経済成長を今後とも図れるような経済体制をつくり、その経済成長の成果を福祉の面にも回すというようなことを考えますと、避けては通れない課題だと思いますので、きついと思いますが、抜本改革案を示して、そしてこの抜本改革案に御理解を得られるよう、私としては全力投球していきたいと思います。

岡田委員 九月には自民党の総裁の任期も切れて、内閣改造という声もちらほら聞こえますが、ぜひ大臣、案を示しただけではなくて、その実現に向けて引き続き御努力をいただきたいと御要望申し上げておきます。

ありがとうございました。




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