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1997.08.26|国会会議録

140回 衆議院・厚生委員会

岡田委員 新進党の岡田克也でございます。

きょうはちょっと時間が長いものですから、効率的に質問していきたいと思いますが、よろしくお願いを申し上げます。

まず、八月七日に出ましたこの「二十一世紀の医療保険制度」についての厚生省案、大変興味深く読まさせていただきました。大体お役所が出す文書というのは非常に平板で、読んでいる途中で嫌になることが多いわけですが、いろいろな具体的提案が盛り込まれておりまして、もちろんその中には、私どもとしては認められない、そういうものも入っておりますけれども、具体的なものがいろいろ盛り込まれておりまして、よくここまでおまとめになった、まず敬意を表したいと思います。

その上で順次質問していきたいと思うわけでありますが、まず基本的なところとして、この厚生省案は改革の基本的な視点というものを一体どこに置いておられるのか。先ほど大臣がお話しになった中で、一つは、増税はしないんだ、こういうことをおっしゃいました。それからもう一つは負担の公平ということをおっしゃったと思うのですが、このあたりがこの改革のキーワードになるのかなというふうにも思いますが、その点について、この改革の視点についてもう一度大臣の基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。

小泉国務大臣 先ほども述べましたが、日本の医療制度というのは先進諸外国と比べても基本的に遜色のない水準にある。だれでもいつでも適切な医療を受けることができるというこの国民皆保険制度を二十一世紀の社会においても維持発展させていきたいというのが基本であります。

その際に、これからの動向を見ますと、高齢者はますますふえていきます。若い世代が比較的少なくなっていくという中にあって、医療費の中身を見ますと、どうしても高齢者の医療費は、経済成長に比べてそれよりも多くふえてまいります。そうすると、基本的に、医療費をこれから捻出するという場合に 税金と保険料と患者負担、この三つの組み合わせをどのように調整していくかだと思います。そういう中で、あるべき医療給付、そして適切な、できるだけ低い負担をお互い分かち合っていこう、よい給付、低い負担というのはだれもが望むことでありますが、それをどのように構築していこうかということだと思います。

そういう中で、今までの委員会の御審議におきましても、もう小手先の見直しでは済まない、薬価にしても診療報酬にしても医療提供体制にしても、あるいは保険制度におきましても、総合的な、構造的な改革をしなければならないということで、この三十数年来の今までの経緯とそれぞれの制度の矛盾を見直して、総合的に議論の場を設け、そして、厚生省としても一つの責任ある案を出せということで今回出したわけであります。

基本的に言いますと、今すべての歳出を聖域なく見直さなければいけないということで、もう増額ということが認められるような状況ではございません。すべての省庁が前年度に比べてマイナス予算を今後当分とっていかなければならないという中におきまして、医療費こおきましても、増税はしない、赤字国債は発行しないという前提の中で、どのような良質な医療を確保し国民の皆様から支え合っていただけるような制度を構築していくかといりことで考んだ案であります。お金がふんだんにあって増額する中の改革は比較的容易であります。今回は、増額できない、そういう中での改革でありますから、私は、それぞれある面におきましては痛みを分かち合わなければならない点が出てくる、歳出削減という総論賛成の中で、いざ各論になりますとこれだけは例外という状況ではないという中での改革を御理解いただきたいと思います。

岡田委員 今は増額という表現を使われたわけでありますが、いずれにいたしましても、これ以上増税をしないという考え方は、それは一つの御見識かと思いますけれども、それはいわば財政の世界での論理ではないかというふうに私は思います。増税をせずとも結局保険料とか自己負担がどんどんふえていくということであれば、国民から見れば同じことでありまして、増税はしないけれどもほかのところをふやすというのでは話にならぬわけでありまして、トータルとしての医療費の伸びをいかに適正なものにしていくか、こういうことが大事なのだろうと思います。

増税をしない、増税をしないということを大前提に言ってしまいますと、他の省庁の話でありますけれども、例えば一般会計はマイナスになっているけれども特会のところでふえていて事業量はふえているとか、そういうことが間々あるわけでありまして、同じようなことになってしまうのではないか。やはりトータルとしての医療費をどうするかということが大事なのではないか、その上で、税と保険料と自己負担をどういうふうにかみ合わせていくかというのが次の議論として出てくる、そういうふうに私は思うわけでございます。

そして、大臣の言われた世代間の公平の問題。これから高齢化時代を本格的に迎えるに当たって、高齢者のための医療費がどんどんふえていく。そういう中で、余りにそれを働く世代、若人に負わせるわけにはいかない、それは基本的にそのとおりだと思います。しかし、今大臣のお話を聞いておりまして、私は、一つ欠けているのではないか、あるいは大臣もそういうことは当然前提としてお考えかもしれませんが、具体的に御指摘がなかったのは、やはり効率化という問題ではないかと思います。

大臣みずからこの委員会の場で何度も、医療というのは統制経済だという表現をお使いになったと思いますし、私もそのとおりだと思います。厚生省が薬の値段あるいは医師の診療行為それぞれについて点数をつける、これほど典型的な徹底した統制経済というのは日本の中では非常に珍しい、私はそういうふうに思います。そして、ソビエト社会主義が崩壊したように、そういう統制経済というのはどこかで破綻が来る。もうそのことがあちこちで出てきているというのが、私は、現状認識としてしっかりと我々の肝に据えるべき問題じゃないか、そういうふうに思うわけでございます。

安田病院の問題もありましたけれども、ああいった病的なものではなくても、いろいろな意味で統制経済が破綻してきている。したがって、これからの医療構造改革というのは、統制経済を強化したり、あるいは統制経済で問題があるからそこをまた統制でもって補っていくということではなくて、基本的に厚生省初め行政の権限というものを、そのかみぐあいというものを少なくしていく。そういう中で、どこでも言われることでありますけれども、効率化するために競争を促進していく。あるいは、医療という特質、もちろんございます、人の命を預かっておりますから限界はあるとしても、競争原理というものを可能なところは入れていく、そういう中で全体として効率化を図っていくことが大事なのじゃないか。

世代間の分配の話というのは限られたパイの中での話でありまして、そうじゃなくて、質を落とさずにパイそのものの成長を少し抑えていく、それが効率化でありますけれども、それが一番大事なことじゃないかというふうに私は思いますが、大臣、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 私、同感であります。

先ほどの答弁の中でもそれに触れたつもりでございますけれども より具体的に申し上げますと、医療費というのは、税金と保険料と自己負担の組み合わせなのですが、さらに、薬価にしても診療報酬体系にしても、これは医療関係者、医療提供者の効率化に大きく依存してきているところであります。税金も保険料も自己負担もできるだけ低く抑えたいという限り、効率化を徹底的に追求しないとこれは実現不可能であります。その辺をよく御認識いただきたいと思います。

今回厚生省の示しました案におきましても、そこを私は強く指摘したいのです。薬価においても診療報酬体系にしても、統制経済の中ではありますけれども、できるだけ効率化を徹底したい。市場原理を導入できるところ、競争原理を導入できるところは、できるだけそのような効率化が追求できるような方法がないものか、そこにメスを入れていただかない限り、税金と保険料と自己負担をふやさざるを得ない。その税金と自己負担と保険料を低くするのだったらば、その分だけ薬価と診療報酬、医療提供体制、医療関係者の徹底的な効率化をぜひとも模索していただきたい。私も希望しております。

岡田委員 基本的に共通の認識に立つというふうに理解をいたしました。

医療費年間二十八兆と一口に言いますけれども、頭割りで考えれば、四人家族で年間百万であります。家計の中で百万の支出というのはそうたくさんございません。食費と、ほかに何がありますか、多分余りないと思うのですね。そのぐらい大きなボリュームの部分について統制経済があって、そしてそこを何とか効率化しようということで議論しているのだ、そういう基本認識に立たないと本当の改革の意欲というものが出てこないのだろうと私は思っております。

そこで、この医療保険制度改革についての全体のスケジュールでございます。

個別に触れられている部分もございますが、全体的に、ここに書かれたものについて何年をめどに完了しようというふうにお考えなのか、厚生省のお考えを聞かせていただきたいと思います。

高木説明員 厚生省案の中で、十一年度を目途に実施するというようなことが出ておりますのは、薬価基準制度の見直し、それから診療報酬体系につきましては、これはむしろ十一年度からできるものはやっていく、こういうふうな表現になっておりまして、そのほかについては、いつから、いつまでというのは明示しておりません。

私どもの考え方として、どうしてその二つをそういうふりこ明示したのかと申しますと、十一年度より前に、要するに来年度からやるにはいろいろな準備、事務的な問題も含めましてそのための準備にどうしても時間が必要であるということで、薬価基準制度につきましては、新しい方式に切りかえるためには、専門家の方々の御協力を得て、そして例えばその基準のつくり方、あるいはグルーピングの仕方それぞれについても前作業というものをやっていかなければいけない。そういうようなものについてやはり一年ぐらいはかかるというふうに私は見ております。

それからまた診療報酬体系、これは四十年ぶりの大改革ということになります。また、この診療報酬体系というのは極めて広範多岐にわたっておるわけでありますから、これを抜本的に見直そうということで考えておりますので、そういった意味では、各学会の先生方とか、あるいはまた専門の職種の先生方等の御協力を得ながらこの診療報酬体系の見直しというものをやらなきゃいけない。そうしますと、完成するにはやはり二年ぐらいはかかるというふうに私は見ております。しかし二年待つというわけにはいかないというふうに思っておりまして、そういった意味で、方向というものを踏まえながら、できるものについては十一年度からでもやっていきたい、こういうようなことで書いてあるわけでございます。

しかしながら、全体のスケジュールをどうするのかということでありますが、これは、この四月に与党三党がまとめました医療制度改革の基本方針というのがございますけれども、この中では、基本的には二〇〇〇年を目途、平成十二年を目途に実現するように取り組むというのがございます。私どもとしても、基本的にはこれが念頭にございますし、また、六月三日に閣議決定されました財政構造改革の推進についてという中でも、できるものは平成十年度からでもやっていくというのがございますし、それから、この財政構造改革の集中改革期間というのが十年、十一年、十二年ということでございます。

私どもとしましては、それらを念頭に置きますと、平成十二年度には全面的に実施ができるようにしていきたいと考えておりますが、御案内のとおり、厚生省案に対してもいろいろな反対意見がございまして、どちらかといえば非常に厳しい意見の方が多いわけでございますから、そういった中で国民の理解を得ながら、それからまた、近々与党三党としての抜本改革案というものも取りまとめられると聞いておりますし、そういったようなもの、あるいはまた、それぞれの政党におかれましても抜本的な検討をされているというふうに聞いておりますし、そういった内容等々が出そろう中で、私どもとしてはベストの改革案というものを策定し、そして御提案していかなきゃいけないというふうに考えております。

できれば、そういった意味で、広く大きな方向については賛同が得られるような、そういうものにしたいと思いますが、制度というのは常に一回つくったらそれで完璧ということはございませんから、まず現行制度を改革するという意味で、できるだけ幅広い国民的な合意が得られるような方向というものを私ども努力をいたしてまいりますけれども、そういった意味でぜひ御支援を賜りたいというふうに思っております。

岡田委員 基本的には二〇〇〇年めどというお話だったわけですけれども、診療報酬と薬価についてははっきりと期限が書いてありますけれども、医療提供体制その他についてはそういうものが触れられておりませんし、二〇〇〇年がゴールであれば、二〇〇〇年に至る道筋をやはりタイムスケジュールとして示していただく必要がある。そういうものがないと結果的にはどんどん先送りになってしまうのではないか、そういうふうに考えますので、そこも含めて今後きちんとした形で出していただきたい、そういうふうに要請をしておきたいと思います。

中身に入る前にもう一問お聞きしたいと思いますが、この医療保険制度改革というのは、政府のおっしゃる六つの改革、社会保障制度改革の中の重要な部分である、こういうふうに認識をしておりますが、私ちょっと奇異に感じますのは、この社会保障の問題、実は橋本総理が大変お得意の分野、厚生大臣経験者でありますし、いろいろな意味で非常に見識をお持ちの分野ではないかと思います。それにしては余りこの医療制度改革を初めとする社会保障制度改革で総理の顔が見えない、そういう気がするわけでございます。

この今回の医療保険制度改革の厚生省案をおまとめになって、当然大臣は総理にも御説明されていると思いますが、具体的に総理からこの案についてどういうコメントがあったのか、あるいは今後の医療保険制度改革について総理としてどういう指示があったのか、その辺についてお聞かせをいただきたいと思います。

小泉国務大臣 総理は、社会保障改革を六大改革の一つに掲げて、社会保障制度につきましては、医療のみならず各般にわたって一つの見識を持っておられる政治家であります。当然、私もその点を考慮に入れながら、その都度総理から細かな指示なり助言なりがあるかと思っていたのですが、実を言いますと、細かいことは言いませんで、社会保障制度は大事だかち、その中で医療制度改革、しっかりしたよい案をつくってくれということだけでした。

そこで、しっかりしたよい案をつくるために厚生省挙げて全力を尽くしますということでこの案をつくったわけでございますけれども、その点についても、あれが悪い、これがいいということは言いませんで、今後この案をもとにしっかりやってもらいたい、与党の協議会、また国民の意見があるだろうから、頑張ってもらいたいということだけでありました。

岡田委員 小泉大臣に全権を委任した、そういうことだろうと思いますが、私としては、もちろん厚生省のこの案、いろいろここには議論があるところでありますから、私どもも含めて、あるいは与党の方からもいろいろな意見が出てくると思いますが、議論した結果、せっかくのいろいろな提案が大幅に後退してしまうということにはならないように、ぜひそこは、総理は大臣にお任せしたということでありますから、頑張ってさらにいい案にまとまるように御努力をいただきたい、そういうふうに要請をしておきたいと思います。

さて、具体的中身に入りたいと思いますが、まず、診療報酬であります。

診療報酬の基本的考え方につきましては、大体今までこの委員会で議論してきたことが踏襲されているというふうに思うわけですが、一つのポイントは定額制を導入するということにあると思いますが、その定額制の具体的な水準の決め方が非常に問題だと思います。定額制というのはいろいろな意味で効率化のインセンティブを与えるというメリットはもちろんありますが、しかしその水準が現実離れして高過ぎたら、これは医療費がどんどん膨れ上がるだけであります。そういう意味で適正な水準ということがポイントになると思うわけでありますけれども、具体的にその適正な水準というものをどのように厚生省としてはお決めになろうとしているのか。どういう考え方でどこが適正であるということをお決めになるのか、今のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

高木説明員 今回の診療報酬体系の見直しの中で、定額制というものを幅広く導入していこうという方向でありますが、この一つのメリットとしては先ほど委員御指摘のとおりでありまして、これからの社会の中で医療費の伸びというものをどういうふうに安定化させていくのか、そういった中で一つこういった方式というものも有効であろうというふうに思います。

問題は、御指摘のとおり、まさにこの水準というものをどう設定するかということで、今よりもトータルとしての医療費というものはふえるということもありますし、あるいは逆にその水準というものを抑えるというような作用も働くわけであります。そういった意味ではこれは非常に難しい問題でありまして、私どもとしては、この診療報酬体系の見直しに当たっての基本的な方向というものをお示ししたわけでありますけれども、具体的にこれをどの水準に設定していくのかということについては、これは具体的な作業と同時に幅広い議論が要ると思います。

ちなみに、今後の段取りという中で申し上げますと、やはりこういった大きな作業でありますから、各学会あるいは医療関係職種等の専門家の方々に参画いただいて新しい診療報酬体系というものをつくっていく、こういう作業というものを進めていかなければならないというふうに考えております。でき上がったものにつきまして中医協にお諮りして、そしてそこで関係者の最終的な合意を得ていく、こういうふうな段取りを考えているわけであります。

ただ、これがなかなか具体的に申し上げられないので申しわけありませんけれども、私どもとしては、今回のこの定額払い制というものを幅広く導入していくという中には、従来指摘されておりますような過剰な検査とか過剰な診療、あるいは投薬の面においても、新しい方式が行われたとしても過剰な投薬というものがないような、そういう仕組みにしていかなければいけませんし、そういったものがやはり適正化される、抑制されるということが必要であります。

そういった中で、医療のむだなり非効率といったものを改善していかなければいけないというふうに考えているわけでありますから、そういった意味では、まさに医療のむだ、非効率というものを改善できるような、そういう水準に設定をしていくということは基本だろうと考えておりますが、具体的なレベルについては、まさにこれからの専門家を交えた作業の中で国民的な合意を得ていかなければならないだろうというふうに考えております。

岡田委員 具体的な検討の中身というのは非常に専門的な部分にわたると思いますので、なかなか私どもも一概にこうだということは言えないわけでありますが、少なくとも言えることは、その議論をする人の構成が適正であること、そしてもう一つは議論がきちんと情報公開されていること、オープンになっていること、そのことによってその議論の中身を外側からきちんと担保していくということが私は非常に重要なことではないかと思います。

そういう意味で、今の中医協について見たときに、今のお話でも最終的には中医協の場で決定をされるということでありますが、中医協の審議の公開ということについては厚生省も今まで大変御努力をされてきたところでありますけれども、委員の構成について、現在のような構成で本当にいいのか。これは、私は予算委員会で大臣にも御質問させていただいたわけでありますが、当事者同士が話し合って、いわばニギリの場として、支払い側と医療提供側が決めるという、それに近い構成に今なっていると思うのですね。しかし、基本的には、これは税金も入っている話でありますし、決して保険料だけではありません、そういう意味では中立委員、つまり保険者でもない医療提供者でもない人が過半数いて、そしてそこで議論をする、そういう形に持っていくべきじゃないかというふうに私は思うわけであります。これはもちろん法律改正が必要でありますが、この点について大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

小泉国務大臣 御指摘のとおり、中医協につきましても、国民の信頼性を高めていく、そういう観点から現在のあり方を見直していきたい。委員の人選につきましても、御指摘の点を踏まえまして、より透明性、信頼性を高めるような人選をし、今までのあり方を検討して、よりよい構成にしていきたいと考えております。

岡田委員 今の御答弁は、構成そのものを変える、これは法律を変えなければいけないわけですけれども、そういう趣旨であるというふうに理解をいたしました。

それから、定額制の中で、先ほど来いろいろな委員から御指摘がありますように、難しい患者は診ないという、そういうお医者さんは余りいないだろうと思いますけれども、しかし、そういうことが考えられる。限られた費用の中で診るということですから、そういうことはあり得る話だと思いますが、そういうことにならないために、患者の人権を守るといいますか、あるいは医療提供側にきちんと診療する義務を負わすというか、もちろん今の法律の中でもそれに近いものはあるわけですが、より明確にそういった法律的な手当てをすべきではないか。これは患者の権利ということになるのかどうかというのは私はかなり議論があると思いますけれども、しかし、そういう診療拒否といいますか、選別が行われないように法的に手当てをするということは私は十分考えられるし、必要なことだと思いますけれども、その点について、大臣のお考えはいかがでしょうか。

高木説明員 まさに現在の医療状況の中で委員御指摘のような問題、あるいは委員がこのような問題について御指摘される状況というのは、私は余り正常な状態ではないのだろうというふうに思います。

やはり医療行為というものについては、医師のモラルといいますか、これに負うところが大部分であります。そういった意味で、重症の患者さんは金にならないから診ないというようなことが行われていくようなことになれば、まさにこれは我が国の医療制度そのものが崩壊の危機に瀕するということになるのだと思います。そういった意味で、私はそういうようなことが医療界の中でそんなに一般的な例として出てくるというふうには思っておりませんし、まだそういうふうなことがあってはいけないというふうに思っております。

現行の中であってもそういう意味では起こり得るわけでありますが、それは療養担当規則、これは要するに保険医あるいは保険医療機関になるに当たっての一種の契約であります、そういった中で、そのようなことがないように、ある意味では訓示的な意味も込めて書かれておりますけれども、これをさらに法的な規制というふうなところまで高めていくことが必要かどうか。これはやはり、できればそういうふうなことがなく国民がよい医療というものを常に受けられるというような仕組みにしていかなければいけないと思います。

仮にそういうようなことが懸念されるということになれば、それはやはり定額払いの額の水準の問題、こういったものとも絡んでくると思いますから、この定額払いの水準というものが、今委員御指摘のような状況にならないような、医療側においても非常に大きな不満にならないような、そういった配慮といいますか、そういうことも念頭に置いて考えていかなければいけないというふうに思います。基本的には、やはりこういった問題については法律でそういうような担保をしていくということが必要なのかどうか、これは慎重に検討しなければいけないと思います。

岡田委員 今の局長の御答弁でありますが、水準の問題というのは、関係ないわけではありませんけれども、重要な要素ではないと思うのですね。定額払いというのは、それを実施するコストはそれを超える場合もある、しかしそれよりも少ないコストでできる場合もある。ならして帳じりが合っていればいいということだと思うのですね。

ですから、全体の水準の問題ではなくて、それを飛び越えるものがあった場合にそれを選別的に診ないという、そういう非常にけしからぬケースが出てくるんじゃないか。それは、水準が高くても低くてもあり得る話なんですね。ですから、私は、水準が低ければそういう問題が出てくるということじゃなくて、医療機関側の姿勢に問題があればそういうことは出てき得るということを御指摘申し上げたいと思います。

次に、時間もございませんので、薬価の問題に移ります。

まず、薬価基準制度で厚生省のお考えは、ドイツの参照価格制度に近い制度を提唱されているというふうに思うわけですが、一部製薬業界には、自由価格制を導入すべきだ、こういう議論がございます。自由価格制を導入するということについては、厚生省はどういうふうにお考えでしょうか。

高木説明員 医薬品といえども、これは物の売買でありますから、そういった意味で、資本主義市場の中において自由に取引されるというのが私は基本だろうというふうに思っております。ただ、そういった中で、やはりこれまでの薬価基準制度ということ、いわゆる公定価格を定める形でこれまで行われてきた医薬品の取引、あるいはそういうようなことを前提とした医薬品のマーケット、そういった状況が現実にございます。

一方、まさに今製薬業界が主張しておる自由価格制というのがあるわけでありますけれども、現在のいわゆる医薬品のマーケットの実態、それからまた医薬品の業界の流通の実態、そういうようなこと、あるいは医療機関サイドの医薬品に対する考え方等々を考えていきますと、自由価格制を直ちに導入するような実態にあるのかどうか。やはり私は、そういった意味では、公定価格である薬価基準制度を改めるに当たって一足飛びに自由価格制を導入していくというのはまだ、我が国の状況からすると難しいのでまないか。

そうすると、次の手段として、自由価格制というものを将来の方向としてにらむにしましても、その点については新しい方式というものを考えなきゃいけないのじゃないかといりことであります。とりわけ自由価格制にした場合に、これはだれもが懸念していることでありますけれども、本当に医薬品の値段というものが適正になるのか、高どまりというような方向にむしろ働くのではないかというふうに言われておるわけでありまして、私どもとしても、その点やはり医薬品を安く購入できるインセンティブが働くような、そういう仕組みをまず導入していく。それはしかし、いわゆる公定価格制というようなものじゃなくて、そういうものを導入していくというのが次のステップではないか、このように考えております。

岡田委員 端的に言えば、自由価格制というのは価格メカニズムが働く場合に初めて意味があるわけですけれども、薬の場合に、消費者の方が財布を持っていない。つまり財布は保険者が持っていて、何割かの自己負担はあるにしても自分の財布が痛まない、そういう改定に対して、私は、自由価格制といっても市場メカニズム、価格メカニズムというのは働かない、そういうふうに思いますので、自由価格制を全面的に導入することには非常に問題がある、こういうふうに私も思います。

ただ、定額制を導入する部分については、あるいは専らその定額制を導入される医療の範囲について使われる薬であれば、あるいはそこは自由価格でもいいのかな、そういう感じはいたしますが、そういうふうにぴしっと分けられるかどうかという技術的な問題も含めて、基本的には問題が多いのじゃないかなというふうに思っております。

さて、厚生省の償還基準額の決め方であります。

先ほどの診療報酬定額制のところと同じように具体的な水準をどうするのかというのがポイントでありまして、そこが適正でなければ、こういう形の償還基準額を入れてもかえって安い薬が高どまりになったりということも起こり得るわけであります。

そこで、償還基準額を決める基準というものが当然出てくるわけでありますが、厚生省の考え方では、薬品の有用性でありますとかあるいは市場規模というものを実勢価格と並んで考慮要因に挙げておられますけれども、具体的にその薬品の有用性あるいは市場規模というものをどういう形でカウントして基準額に反映されるのでしょうか。

高木説明員 まず、償還基準額というものをどう定めるかというところの基本的な考え方でありますけれども、これはやはりそれぞれの薬理作用なりあるいは成分なりというものに着目して、医薬品ごとのグルーピングというような格好をやろうということで考えておるわけであります。その際の基本となる医薬品の価格というのは、これは市場の実勢価格というものを基本として考えていきたい。

そして、その際問題になりますのは、本来ならば、健全なマーケットあるいは競争原理が働くマーケットであれば、そこで形成される市場の実勢価格というものがまさに償還基準額の基準になるべきものであるわけでありますけれども、しかし、委員御指摘のとおり医薬品のマーケットというのは必ずしも完全な市場原理の働いているマーケットになっていない。それはまさに、財布を持っているのは保険者であり、それから医療機関というのは最終消費者ではない、ある意味では小売のようなものでありますし、そういうふうなことでありますから、通常の商品とは性格を異にしております。そういった中で、現在の薬価基準のもとでもそうでありますが、薬価基準というのは、これは御案内のとおり保険からいわゆる給付される額でありまして、実際に取引されている額というのはこれは自由価格、医療機関と卸との間では自由市場で取引されているわけでありますけれども、しかし、いろんな意味でのゆがみが生じておるということであります。

そういった中で、我が国の薬価というものがかなり諸外国と比べて高いものが多いというような指摘もあります。外国薬価とのそういった面での比較といいますか、外国薬価というものを参考にし、それからまた市場規模というのは現在の薬価基準の額を決めるときにも参考にしておりますけれども、やまり製薬企業というのまどのぐらいの売り上げというものを考えるのかということで開発しているわけでありますから、そういった中で値決めというのは今も行われております。

そういった意味で、外国薬価とか市場規模、こういった面については、これはある意味では私は過渡的なものじゃないかという気はいたしますけれども、これまでの薬の値段ということを考えた場合には、こういったものも一応加味しながら、高どまりをしない、それからまた諸外国と比べても高い薬にならないような、そういった配慮というものがどうしてもやはり当分償還基準額を決めるにおいては必要ではないか、こういうような観点からこの厚生省案の中にはそういうようなフレーズがあるわけでございます。

しかし、いずれにしましても、この償還基準額というものを透明性のあるもの、それからまたどうしてそういうふうに決めたのかということについての情報がきちっと公開されなきゃいけない。そういった意味で、いわゆる「専門家委員会」というふうに書いてございますが、こういう専門家の方々から成る委員会、専門家といってもこの範囲をどうするかという、価格のようなものを決めるようなことでありますから、どういう範囲を専門家とするかという問題ございますけれども、いずれにしても、この専門家委員会のようなものをきちっとつくって、そこで償還基準額を決めていただく、このようなシステムにしたいというふうに考えております。

岡田委員 償還基準額決定の手続、それからその議論を透明化するというのは、これは当然前提だと思いますが、今のお話を聞いていましても、画期的な新薬が新たに出てきたような場合にはあるいはそういう有用性とか市場規模というものも考える余地があるのかもしれませんが、一度もう出てしまった後は、私は、不十分かもしれませんけれども市場価格というものがあるわけですから、それをベースにして基準額というのを決めるべきだと。そこに厚生省が、有用性だとか市場規模だとかいろいろ言い出すと、またそこが非常に不透明になってしまう。今の局長の御答弁を聞いておりますと、今の薬価基準制度に非常に引っ張られたお考えがまだ残っているのじゃないか、そういうふうに思いました。

具体的に申し上げますと、例えば特許が切れたような場合に、後発品がどんどん出てまいります。そういう場合の基準額というのをどうするのかという問題があると思いますが、私は基本的に、この場でも申し上げましたが、特許が切れれば保護すべきものまないわけでありますから、コピー自由の世界というのが通常の経済の世界においての常識でありますから、特許が切れてしまった薬については後発品の価格を基準額にするのは当然だ、そういうふうに思うわけですが、この点について大臣、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 これは極めて専門的なことで具体的なものについては局長なりに譲りますが、要は、今の薬価制度においては、高い薬を使いたがる、安い古い薬よりも高くて新しい薬を使いたがる傾向があって、これが薬価を押し上げているのではないか、また医療費の膨張をもたらしておるのではないかということの批判において、こういう制度をなくそうということで現行の薬価制度をなくして、償還基準額、一定の市場取引の実勢にゆだねるような方法をとるわけであります。その趣旨に沿ったような決め方をしないと意味がない。その点は専門家にも十分、何ゆえにこのような制度を設けたのか、現行の薬価基準制度を廃止したのかということをよく念頭に置いて今後の基準を決めていただきたいと私は思います。

岡田委員 後発品の価格よりも基準額を高く設定すれば、後発品の価格は恐らくその基準額に高どまりするというのは、これは経済の常識だろうと思います。そういうこともお考えいただいて具体的な基準額を設定していただきたいというふうに思います。

ただ、私も何が何でもどんどん安くすればいい、そういうふうに言っているわけではなくて、先ほど局長の答弁にもありましたが、新しい、いい薬を開発していこうという意欲を阻害するようなことがあってはいかぬ、そういうふうに思いますので、そういった今までにない画期的な新薬については、少しルールを変えてやっていくしかないのじゃないか。そこを混然一体にしてしまうと非常に見えにくくなってくるというふうに思っております。

私は、薬の業界の産業育成とか業界育成、企業育成なんという話は全くアナクロニズムだと思います。そういうことを言っている業界は、日本広しといえども、これだけ激しい競争をそれぞれやっている中で、薬の業界プラス幾つかしかないのじゃないかと思います。しかし、新しい、いい薬をつくろう、そういう意欲は大事にする必要がある。そういう意欲のないところはどんどん淘汰されていくのは当然のことだと思いますが、いい薬は、それは開発する、そういう意欲は促進していく必要がある、そういうふうに思っております。

最後に、薬価のところで医薬分業について御質問したいと思います。

医薬分業については、厚生省案の一番最後のページのところで一行出てくるだけで、私はやや残念に思うわけですけれども、一つは、国立病院の医薬分業について、この厚生委員会の場で、私、以前に質問させていただいたわけでありますが、その後、厚生省の方で具体的にどの程度指導されているのでしょうか。私は、やはりこの新しい制度が発足する平成十一年までには、少なくとも厚生省所管の国立病院については完全に医薬分業が成り立っているという状況がつくり出されていなければおかしいのじゃないか、そういうふうに思いますし、その他の大病院や公立病院を中心に、やはり厚生省の方できちんと五カ年計画ぐらいつくって医薬分業を推進していくという姿勢が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

   〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

小林説明員 医薬分業の国立病院関係について、お答えを申し上げます。

ことしの四月十八日に先生に御質問をいただきましたときに、院外処方せん発行のことについて、国立のモデル病院、モデルでやらせている三十八病院については、昭和六十三年八%であったのが平成七年度は三五・八%になりましたというお答えをいたしましたが、八年度の結果も出てまいりまして、八年度は三九・五%という数字になっております。

国立病院というのは、今先生がおっしゃられましたように、医薬分業を進めるということは大変大切ということで前からやっているわけですけれども、さきの国会の先生の御指摘も踏まえ、大臣の御答弁も踏まえまして、七月十一日付でモデルの国立病院に対しまして、平成十年度までに完全分業を達成することというふうに指示を出したところでございます。

この完全分業というのは、患者さんによってすべての人に出せるというわけではありませんので、一応七〇%を超す場合を完全分業と申していますけれども、それを三十八病院では平成十年度までに達成しなさいという通知を発したところでございますし、モデル病院外についても、医薬面分業を進めるように、院外処方せんを発行するようにと指導しているところでございます。

中西説明員 医薬分業につきましては、先ほど松本委員にお答えしたところでございますが、私どもとしましては、地域医療計画の一環として、医薬分業計画をそれぞれの地域の実情に応じて推進していただくよう、予算的な措置も含めて各都道府県を指導しておるところでございます。その際、やはり地域医療体制の中の一つの問題でございますから、地域医療体制をどのように組み立てていくかという観点に立って、医師会、薬剤師会、それから地域の基幹病院も入っていただく協議の場のようなものを設定して、その上で分業を計画的に進めていくという取り組みが具体的になされていくよう引き続き指導してまいりたい、かように考えております。

岡田委員 それでは、次の医療提供体制に移りたいと思いますが、時間も余りございませんので、簡単に御答弁をいただきたいと思います。

まず、大病院の外来の自己負担を五割にするという話が突然出てまいりまして、その大胆さにやや驚いたわけであります。これは大病院の集中を排除するためという御説明だと思うのですが、もし大病院への外来患者の集中を排除するためだけなら、ほかにもやり方がいろいろあるのじゃないかと思いますが、なぜこういった五割という考え方になったのか、そして、厚生省は、今の御予定ではこれをいつ実行に移そうとしておられるのか、この点についてお聞きをしたいと思います。

高木説明員 まず、やはり我が国の医療機関の機能分担、機能に応じた適正な分担のあり方というものをきちっと考えていくというのがまずベースでございます。

そういった中で、大病院の外来の集中という流れというものが従来からございまして、そういった医療機関の機能に応じた役割というものを考えていく場合に、私どもとしては、大病院については、むしろ入院を中心とした機能というものにしていくことが望ましいのではないかというふうに考え、そしてまた、外来については、地域におけるプライマリーケアというものを充実していくと

いうような方向というものを目指すべきだというふうに考えたわけであります。

そういった中で、大病院外来集中というものをどういうような手段で是正していくのか。それについては幾つか手段は考えられると思います。しかしながら、大病院の外来にかかってはいけないということではなくて、そのかわり、それを選択する場合にはやはり経済的な御負担をお願いするというふうな行き方というのも一つの方法であろうということで考えたわけでありまして、そういった意味では、これだけにとどまるわけではないというふうに思っておりますが、こういった行き方というのも一つの考え方ではないかということであります。

また、この問題については、全体の医療提供体制あるいは医療制度のあり方そのものとの関連のもとに提案をしているわけでありまして、そういった意味で、平成十二年を目途に実施をしていきたいと考えておりますけれども。それで、いつから始めるのかということについては、合意が得られればできるだけ早くやっていきたいというように考えておりますけれども、この辺についてはさらに幅広い御議論をいただかなければならないな、このように思っております。

岡田委員 私ま、大病院の外来を抑える、そういうお考えもわかります。一般の診療所を飛ばして大病院に外来でかかる、それは抑える必要があるかもしれません。しかし、大病院の外来に行かざるを得ない、例えば診療所をちゃんと経た上で行く方も五割ですよね。それはやはり、かなり大胆な、そして国民にとっては相当負担の重い悪制度だなというふうに私は思うわけであります。大病院の外来を抑制していく、そういう効果をねらったものであれば、ほかにもやりようはあるのではないかと私は思いますので、ぜひその点も含めてよくお考えをいただきたいというふうに要請をしておきたいと思います。

それからもう一つ、「医療提供体制」のところで情報提供の問題が厚生省案に出てまいります。厚生省案では、「医療の現場において、医療従事者による適切な説明と患者の理解に基づく医療の定着を図るとともに、カルテの情報を患者に提供する。」こういうふうに書いてありますが、具体的にどういうふうにして実効性を担保していくおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

私は、やはり医療における情報公開というものは法律でもって担保するしかないのではないかというふうに思っております。今、情報公開ということが一つのキーワードとして言われておりまして、地方も国も、情報公開条例や情報公開法をつくろう、行政機関に対して情報公開をちゃんとしろというのが一つの定着した流れだと思いますけれども、行政ですらそれだけの情報公開をするのになぜ医療機関だけが特別なのかというのは非常にわかりにくい話であります。

医療機関は私的行為だと言えるかといえば、そうじゃなくて、それは保険料や税で賄われているわけでありますから、果たしている機能としては行政とかなり近い公的な性格を持っております。そういうものについて、もっときちんと法律で情報公開を義務づけていくというのは当然のことじゃないか。純粋私的行為であれば、今の医療機関がやっているような情報公開をしないようなやり方は通用しません。例えば、買い物に行っていろいろ買い物をして、そしてお店の人から、はい、まとめて一万円ですよと言われて納得する人はいません。必ずレシートというものが必要になってまいります。そんなことをしたらそのお店はつぶれてしまいます。しかし、今医療の現場ではそれに近いことが行われているのではないか、そういうふうに思います。

法律で医療機関の情報公開を担保していくという考え方について、基本的に大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

小泉国務大臣 これからは、医療機関におきましても、より積極的な情報公開が要求されると思います。また、そのような情報公開をすることによって患者との信頼関係を構築していかないと医療機関もやっていけないという時代になっていくと私は思います。領収証等におきましても今積極的に出す医療機関もふえてまいりましたし、あるいはレセプト開示要求も患者の側からも多くなってくると思います。そういう情報公開の姿勢というものをとるように厚生省としてもいろいろ指導していきたい。

しかし、それをどういう形で立法するかというのはまた別の問題ではないでしょうか。立法については、まだそこまでは考えておりませんが、どういう情報公開を要求するか、それにどう医療機関がこたえていくかという検討は今後とも積極的に行っていく必要があるし、厚生省としても情報公開を促していきたいと思っております。

岡田委員 先般、厚生省は患者のレセプト閲覧について行政指導でその取り扱いを変えられたという報道がありましたが、私は、本来こういうものは一遍の行政指導で変えるようなものではないだろうというふうに思います。レセプトの閲覧あるいはカルテの閲覧、それから先ほどの明細書の発行、あるいはさらにはインフォームド・コンセント、そういうものについてきちんと法律として整える、行政の裁量で出せたり出せなかったりするということではなくて、きちんと法律でそういうものは決める、それは当然のことではないか。

国の情報公開の議論も今までいろいろなことがなされてまいりまして、法律なんか要らないんだ、それは国の裁量で出したり出さなかったりできるんだということ、そういう時代が続きましたけれども、やはりそれはだめだ、法律をきちんとつくって、そして、できるものできないもの、はっきり法律上明確にしよう、そういうふうに流れが変わってきているわけでありますので、私は、医療の世界も同じようなそういう流れできちんと対応されるのが正しい道ではないか、そういうふうに思っております。ぜひ御検討いただきたいと思います。

それでは、医療保険制度について少し質問したいと思います。

先ほど大臣は、地域医療保険制度、つまり第一案ですね、個人的にはそっちの方が魅力的だというふうにおっしゃいましたが、私は、今の国保と健保の二本立てで、どちらが効率的に運用されているだろうかということを考えるわけですね。もちろん、国保制度にもいろいろな問題がありますから市町村も大変御苦労されていることはわかるわけですけれども、しかし、より効率的にやっていこうという意欲がうかがわれるのは健保じゃないか。限られた範囲でありますが、健康保険組合がそういう努力をいろいろやっておられるということはそのとおりだと私は思うわけであります。

それを、国保と一緒にして地域保険にしてしまう、保険者は市町村か県か、こういうことになりますと、それはより効率の悪い方、運営にやや問題のある方に合わせてしまうことになるのではないかというふうに思うわけですけれども、そこのところについて大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

高木説明員 効率といった場合に、どういう視点から物を考えるかということで大分違ってくると思います。

こういった医療保険制度というものを考える場合に、どういうような視点から考えるかというのでまた違ってくるのですけれども、現在の健康保険組合、あるいは共済組合等もそうでありますけれども、いわゆる小集団で保険というものを運営するということのメリット、これをどう考えるのか、そういうような角度で効率性ということをとらえますと、やはり健康保険組合、これも四十人ぐらいしかいない健保組合から相当大きなところまでありますから一律には言えませんけれども、ある程度の規模を持った健康保険組合、小集団で運営していることによる健康管理等におけるメリットあるいは財政運営等におけるメリットというものは、これは大きいことは間違いありません。

しかしながら、いわゆる社会保険としての医療保険というものを考えた場合に、健康保険組合というのは現役時代に、しかも我が国の場合には企業内健康保険といいますか、そういうふうなシステムであります。これは、そもそも我が国に健康保険法というものを導入した、これはドイツのビスマルクがつくった疾病保険法をまねて導入したわけでありますけれども、そういった中で小集団方式というものを導入した。しかし、これはドイツのカッセとはまたちょっと違うところがある。そういった中で、現行の仕組みというのは私は極めて沿革的なものであるというふうに思っております。

これからの高齢化社会というものを考えた場合に、年をとった後も地域において健康の管理なり健康づくりというものに留意しながら生きていくということを考えますと、やはり健康というものは一生涯を通じての問題でありますから、そういう意味では、むしろ地域というものとの関連でライフサイクルを考えるというのも一つの考え方ではないかというふうに思います。

その中で、私は、それぞれの市町村なりが保険者としての努力とともにそういった面でのヘルス事業といったものを担っていけば、それはそれとして一つの効率的な制度ができるわけでありますから、健康保険組合がやっている仕組みという小集団のよさといりものをどう考えるかという問題はありますが、ライフサイクル、しかもそういった中での健康管理といったものを考えた場合にまた地域医療というもののメリットもあるわけでありまして、そこら辺のところは優劣つけがたいのではないかというふうに思っております。

岡田委員 私は、もう優劣はついていると思うのですね。小さなものについては同じレベルで統合していく、スケールメリットを享受できるようにするというのは、これは別の次元の話であります。

基本的に地域保険にするということは、私に言わせれば、行政改革の基本的な考え方がわかってないのじゃないかというふうに思うのですね。基本的に民間でできることは民間にやらせるというのが行政改革の基本的考え方だとすれば、今まで健保組合という、企業じゃありませんが、しかし準民間団体がやっていたことを市町村が取り込んで肥大化するというのは基本的に行政改革の考え方に反するし、そして国やそういった市町村がやることが基本的に非効率的であるという前提に立って今の行革論議というのはあるわけですから、私は、そこのところが最初から違っているのではないか、そういうふうに思っております。むしろ大事なことは、まず健康保険組合についてもっと保険者としての自律性を与えることだ。

具体的こまいろいろなことが考えられると思います。例えば、今、支払基金がやっておりますレセプト審査機能を、別にこんなのは特殊法人がやる必要ないわけですから、これを健保組合連合会に移管する。そして、そこで情報を分析して、個々の健康保険組合に対して医療機関の情報や患者の情報をきちんと提供する。今の基金にはそういう意識がありませんから、なかなか情報提供が進まないのですね。単純に集計してお金を払っていればいいと。そういう効率化の視点がないわけであります。

あるいは、私は、保険医の指定の取り消しについてももっと健康保険組合に権限を与えるべきだというふうに思うわけであります。

今回の安田病院事件、いろいろな考え方はあると思いますけれども、やはり都道府県、この場合大阪府でありますけれども、いろいろなことで安田病院にお世話になっていたということもあって、なかなか初期動作がおくれた、そういう面があるのじゃないでしょうか。

本来であれば、保険医の指定というのは知事だけではなくて個々の保険者ができるようにすべきだというふうに思いますが、一足飛びにそこまでいかなくても、知事に対して、あの病院はおかしいよ、だからよく調べてくれ、そういうことを法律上きちんと申し立てることができる権限、調査の申し立て権限、あるいはもっといけば保険医の指定を取り消してくれということを知事に対して申し立てる権限、そういうものが保険者に法律上あっていいのだと私は思うのです。今の制度はそういうものはもちろんありませんし、それから法律上は保険医の取り消ししかできない。取り消すというのはその医療機関にとってはほとんどつぶれろというようなことですから、どうしてもそこは慎重になってしまうわけですけれども、本来、法律的にその前段階もきちんと決めておくべきだと思うのですね、勧告するとか是正しろとか。そういうものが今欠けている。その延長線で今回の安田病院の事件があったのじゃないかと私は思います。

そういう保険医の指定に関するいろいろな手続をきちんと法律で明示して、そして保険者についてもその手続に参加することができる、そういう一つの体系を考えるべきだと私は思いますけれども、この点について大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

高木説明員 保険者の権限ということで、これはとみに医療保険審議会等でも最近議論されてきたところであります。

ただ、今お話がございました点について、法的にそれをきちっと位置づけるかどうかというのはともかくとしましても、現行でもそういった意味での保険者の機能というものが阻害されるということはないわけでありまして、そういった意味では、例えば保険医療機関等の中におかしなものがあるあるいは健保組合等に回ってきたレセプトにどうも不正、不当の疑いがあるというような情報、こういったものは今でも現実に健保組合等から行政の方には情報が来ているということは実態としてございます。そういうものに基づいて、行政機関としてそれを指定取り消しをするかどうかというのは一定のデュープロセスのもとにやっておるわけでございまして、やはりそういった意味での全体のルールというものをどういうふうに組み立てるのが一番合理的、効率的かという問題だろうと思います。

ただ、そういった中で、非常に長い医療保険の歴史の中で、先ほど中医協のお話がございましたけれども、そういった人選等々の問題が果たして有機的に機能しているような状況になっているのかどうか。そういった問題について見直さなければならないものは多々あると思いますけれども、保険者の機能が現行の中で何か制約があって、そして必要な医療費の効率化なり適正化というものに対して保険者が積極的に取り組めないというような、そういう実態はないのじゃないかというふうに私どもは考えております。

岡田委員 医療機関の情報も基金からちゃんと入ってこない。基金に言わせると、いや、それはコンピューター化がおくれていてなかなかできないと。そんなもの、本当に情報を必要とする人だったら直ちこコンピューターの入力するフォームを変えますよ。それがなかなか進まないのは、やはりそれだけの問題意識がないからだと私は思うのです。

それから先ほどの話ですが、それでは、安田病院で、私は、だれが見ても行政の動作はおくれたと思うのです、なぜそういうことが起きたのでしょうか。制度的にそういうものはあるのだとおっしゃるけれども、法律的になければ、それは行政指導という非常に目に見えにくい部分で行われるわけで、そういう中で手続の遅延とかいろいろな横やりとか入ってくるわけでしょう。法律にきちんと書いてあればそういうことはできないわけですね。だから、そこの基本のところをもう少ししっかりやっていただきたい。でないと、このとんでもない安田病院事件のようなことがまた起きてしまう。あるいは国民は、ああいうことをほかの医療機関もやっているのじゃないかとすら思っているわけですね。やはりそこについてはきちんと危機感を持って、そして制度を変える、そういう意欲をぜひ大臣にも示していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 できるだけ、効率的な制度はどういうものがいいかという点につきまして、これからの審議の中でもいろいろ御意見を聞かせていただきたいし、少しでもいい点を取り入れていくという形で進めていきたいと思います。

また、安田病院等における問題につきましても、確かに行政のおくれというのはあったと思います。その点の反省も踏まえまして、今後の改善策も講じておりますので、そういう中で、今後、より積極的な医療の信頼性、効率性を高めていく方法をとっていきたいと思います。今のお話の点も、今後検討させていただきたいと思います。

岡田委員 ありがとうございました。




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