142回 衆議院・予算委員会
岡田委員 民友連の岡田克也でございます。
きょう、私の方は、事前に配付をさせていただいた要旨に従いまして、まず、日米防衛協力の指針関係につきまして議論をさせていただきたいというふうに思います。
日米防衛協力の指針につきましては、基本的に私はこれを支持する立場でございます。日米同盟の実を上げるために、日米同盟関係の強化のためにはその実効性を上げていくことが必要である、そのための措置の一環として今回の防衛協力のガイドラインの話もあったし、あるいはそのさらに先にあるのはそれを具体化するための国内立法である、そういうふうに考えているところでございます。個々にはいろいろ議論しなければいけない点はございますが、基本的にはそういう立場で、政府の考え方というものをきょうは質問していきたいというふうに思っております。
防衛協力のガイドラインの話は、一つ大きな話として、私は、やはり憲法九条に定める武力行使との関係、あるいはその境界線をどう引くのかという非常に難しい問題がございますが、きょうは、その点は次回に議論させていただくことにいたしまして、そのほかの点で、特にシビリアンコントロールを重視するという立場から、ガイドライン関係の予定される立法のフレームワークについて議論していきたいと思っております。
そこで、まず総理にお尋ねしたいと思いますが、シビリアンコントロールという言葉をよく聞くわけでございますが、政府において、あるいは総理のお考えということでも結構でありますが、シビリアンコントロールというものについて、その意義、どういうふうにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
橋本内閣総理大臣 公式にお答えを申し上げるとするなら、平成三年九月三十日に、衆議院のPKO特別委員会に対し、政府のシビリアンコントロールについての考え方として申し述べた方針を申し上げることになるのだと思います。
その上で、私の感じを交えてお答えを許していただけますなら、シビリアンコントロールというのは、政治が軍事に対する優先の確保を指すものである、そして、民主主義国家においてぜひともこれを確保しなければならないものである、そのように思います。
そして、現行の我が国の制度におきましては、自衛隊は、文民であります内閣総理大臣、防衛庁長官のもとに十分管理をされる。また、法律、予算等につきまして国会の民主的なコントロールのもとに置かれている。また、国防に関する重要事項については、内閣総理大臣を議長とする安全保障会議の議を経ることになる。こうした仕組みをとっていることでシビリアンコントロールの実を上げている、そのように考えます。
そして、こうした考え方が受け入れられ、定着してまいりましたのは、旧大日本帝国憲法下における統帥権問題、これが後に我が国における大きな国論の分裂につながっていった。そして、それがあるときには政争の具に供せられた。そうした反省の中からこうした考え方が取り入れられ、それが定着をしてきたものだ、私はそのように考えております。
岡田委員 今総理は、政府によるシビリアンコントロールということを中心にお話をいただいたと思いますが、もちろん政府のコントロールということは非常に重要でありますが、同時に国会のコントロール、一般的には予算や法案の審議を通じてのコントロールということはあるわけでありますし、これは後ほど少し議論したいと思いますけれども、現在の自衛隊法においても、防衛出動あるいは治安出動における国会承認というものがあるわけでございます。
私は、今総理は統帥権の問題を例に引いて御説明をいただいたわけでありますけれども、基本的に自衛隊も、一般の軍隊とは違うかもしれませんが、一つの武力集団といいますか、一般の市民生活の中では少し異質の集団でありまして、それをいかにしてきちんとコントロールしていくかというのがシビリアンコントロールの根本の問題意識だろう、そういうふうに思っているところでございます。
それでは、少し話題を変えまして、ガイドラインはもちろん日本が直接攻撃にさらされた場合ということも規定しているわけでありますが、今回のガイドラインで非常に特徴的なのは、周辺事態という概念が持ち込まれていることだと思います。この周辺事態については、今まで国会でもいろいろ議論がございました。その議論の結果も踏まえて、現在のところでは、「周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である。周辺事態の概念は、地理的なものではなく、事態の性質に着目したものである。」そういう政府の考え方がこのガイドラインの中にも示されているわけでございます。
私は、周辺というのは地理的概念で、どうも、周辺事態ということで、これは地理的な概念ではないというその説明にはやや違和感を覚えるわけでありますが、しかし、一応そういうふうに「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」だというふうに定義をされておりますので、そういう前提で少しここの議論をさせていただきたいと思います。
まず、「日本の平和と安全に」という、平和とか安全と言うときに、これはどういう概念かという問題がございます。具体的には、安全と言うときに、狭い意味での安全、それからより広い意味、特に経済安全保障という意味での安全という問題があるかと思いますが、この点について、ここで言う安全というものは中身は具体的にどういうことなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
越智委員長 北米局長。
岡田委員 外務大臣にお願いします。済みません、委員長、ちょっと待ってください。私は、予算委員会ですので、基本的に、細かいことを聞くつもりはございませんので、政府委員の答弁は私が指名したときのみにお願いしたいと思います。
越智委員長 御希望としては聞きますが、指名は委員長の権限でございます。指名いたしました。
高野政府委員 今の御質問でございますが、平和と安全とは具体的に何か、あるいは経済的安全保障の意味合い等でございます。
周辺事態の定義に言う「日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」ということは、単に経済的のみならず、軍事的な観点を含めて日本の平和と安全に重要な影響を与える場合を言うわけでございます。ある事態がこのような意味で周辺事態に該当するか否かは、事態の態様、規模等を総合的に勘案して判断するということになります。
一般的に平和と安全という言葉でございますが、国連憲章、安全保障条約にもございますけれども、これは安全保障という言葉に密接にかかわるわけでございます。これは当然のことながら、国の安全と繁栄を維持し、国民の生命財産を守ることを内容とするものだと考えております。
岡田委員 ここはガイドラインの基本的なキーワードでありますから、私はぜひ大臣にお答えをいただきたかった。こういうキーワードについても政府委員が答弁するようでは、予算委員会の審議成り立たない、そういうふうに思います。
今の北米局長の御説明で、私は非常に気になる御説明がございました。経済的安全のみならず軍事的な安全も言うと。ということは、経済的安全も入る、そういう意味ですか。大臣、どうですか。
小渕国務大臣 区分をすることは困難だと思います。
岡田委員 そうすると、私はよくわからないのですが、従来、政府の御答弁の中で、基本的には、中東で、例えば産油国で何らかの危機が発生したというような場合にはここで言う周辺事態には含まれない、こういう答弁が従来あったように思うわけでありますが、そういった中東で産油国に危機が発生して我が国に石油が来ない、つまり経済安全保障がそこで害される、こういう場合も、ここで言う、ガイドラインで言う周辺事態に含まれる、こういう解釈でございますか。
小渕国務大臣 一般的に安全保障という問題について御答弁申し上げたわけでございまして、今の安保条約に基づくガイドラインということになりますれば、この安全保障の問題についてはあくまでも安保条約に基づいての安全保障、こういうことでございます。
岡田委員 今の大臣の御説明は、そうすると、ガイドラインの中で、周辺事態というのは安全保障条約、安保条約の目的達成というのが一つかかっていると。そこで、周辺事態に基づく後方支援のところは安保条約の目的達成というのがかかっているから、もう一縛りかかっていると。それ以外の部分については、このガイドラインで言う安全というのは非常に広い概念である、こういう解釈でございますか。
小渕国務大臣 一般的に国家安全保障と言われればすべての問題を含んでいる、こう申し上げているわけでありまして、ガイドラインの問題については、これは日米安保条約に基づいての安全保障という立場で考えていくべきものだと考えております。
岡田委員 私は先ほどから、ここで言う安全の議論というのは、ガイドラインにある周辺事態の定義における日本の平和と安全に重大な影響を与える事態だ、その周辺事態の定義における安全とは何ですかという議論をしているわけでございますが、そうすると、先ほどの北米局長の答弁を取り消されて、これは軍事的なものである、こういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
高野政府委員 周辺事態との関係における定義でございますが、周辺事態が軍事的観点を含め我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であるということでございます。
したがいまして、例えば湾岸、中東等で起きている事態について言えば、日本の平和と安全に重要な影響を与えるかという観点からいえば、そういうことは基本的に生じることは想定し得ないということは前から御答弁申し上げているとおりでございます。
岡田委員 今の御説明は、軍事的な安全を含めということは、軍事的安全という観点がなければこの周辺事態に言う安全にはならない、そういう意味ですね。
高野政府委員 昨年の国会でもこの御議論をいただいた際に申し上げているところでございますが、経済面だけではなく、総合的に勘案して日本の平和と安全に重大な影響を及ぼしているかどうかということから判断するわけでございます。こういうことでございます。
岡田委員 非常に答弁が私にはよくわからないわけでありますが、経済的安全も含め総合的に判断するということは、経済的な安全保障だけであって、軍事的な安全ということにかかわらないような場合には、これはガイドラインの想定する周辺事態に該当するんでしょうか、しないんでしょうか。明確にもう一度お答えいただきたいと思います。
高野政府委員 繰り返しで恐縮でございますけれども、周辺事態の認定に当たりましては、単に経済面だけでなく、総合的に勘案して日本の平和と安全に重大な影響を及ぼしているかどうかでございます。それは、軍事的な観点も含めて総合的に判断するということでございます。
岡田委員 今の御説明だと、例えば中東の我が国が非常に依存度の高い産油国で何らかの軍事的な衝突が起きたと。もちろん、日本の経済安全保障には非常に大きな影響を及ぼします。しかし、軍事的な波及というのは日本にはない。こういう場合にもこのガイドラインの適用になる、そういうふうに考えていいわけですね。
高野政府委員 今の御質問に対しては、そういう事態は周辺事態には該当しないということでございます。
岡田委員 今の御説明と、それから該当しないという答えの間に、私は論理的な関係を認めることはできません。
ここは、委員長にお願いしたいのですが、政府の方で、この周辺事態の定義について、もう一度きちんとした政府としての見解をお示しいただくことを求めたいと思います。
外務大臣、もし何かございましたら。
小渕国務大臣 繰り返して申しわけありませんが、周辺事態というのは、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合で、経済的のみならず軍事的な観点を含めて日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合を言うわけでございます。
岡田委員 いまだに私は理解できないのですが……。
ですから、軍事的な安全に影響がなくても、経済的に非常に重大な影響を及ぼすようなことになれば、これはガイドラインの適用がある、こういうことですね。
小渕国務大臣 総合的に勘案して判断をするわけでございます。
岡田委員 私は基本的に、軍事という観点が必ず含まれる、それがこの周辺事態の定義だというふうに考えておりましたが、今の御説明だと、総合的にという名のもとで、軍事的な観点がなくても、場合によってはこのガイドラインの適用はあり得る、こういうお話だと思うのです。総合的に勘案する。軍事というのは必ずなければいけないという御説明はないわけですから。そういうことになりますと、おっしゃるように、これは世界のあらゆるところで、今これだけ相互依存性高い時代ですから、日本の経済的な安全保障が害される事態というのはあらゆるところであり得るわけですね。
例えばアフリカのある国で、日本が非常に依存している希少金属の生産国で何か軍事的な問題が起こった、あるいは軍事的な問題でなくてもいいのかもしれません、そういうときにもこのガイドラインの適用があって、米軍がそこに何らかの武力的な関与をする場合、日本はこのガイドラインに基づいて後方支援もあり得る、こういう話ですね。
高野政府委員 お答え申し上げます。
先ほどの大臣からの御答弁の繰り返しになりますが、周辺事態は、単に経済的でなく、軍事的な観点を含め我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態でございます。
これは、周辺事態という時々刻々推移し得る事態のすべての局面において、いろいろな局面が出てくるわけでございますが、周辺事態が我が国の平和と安全の関係において判断されることにかんがみますと、我が国に対して軍事的な観点からの影響を与え得る可能性は全くないような事態、これは周辺事態には該当しないものと考えます。
岡田委員 今のお話で少し明らかになったと思うんですが、どうも議論がかみ合っていないように思います。
では、もとに戻りまして、しかし、本当に経済的な安全と軍事的な安全というものは明確に区分できるのか。今、全く軍事的に脅威を及ぼさないような、影響を及ぼさないような場合にはこの周辺事態に該当しないというお答えだったわけですけれども、じゃ、軍事的なというのは一体どういうものを言うのか。そこの定義を明確にしないと、結局、全くというかなりきつい縛りをしていますから、周辺事態に当たるかどうか、非常に微妙な判断をしなければいけない場合が多い、こういうふうに思うわけですが、そこのところはいかがでしょうか。
小渕国務大臣 先ほど来御答弁申し上げておりますように、周辺事態、これに対しての、事態の態様、規模、こうしたものがすべて時々刻々変わってきておるわけでございまして、そういった点をその時点において勘案して、事態について対処する、こういうことだろうと思います。
岡田委員 いろいろ答弁いただいたんですが、私の今聞いた範囲では、最初の北米局長の周辺事態の安全についての御答弁と先ほどの御答弁にも少しニュアンスの違いがあるように思いますし、ここはぜひ文書で政府としての周辺事態についての考え方をお示しいただきたい、そういうふうに思います。委員長、いかがでしょうか。
越智委員長 既に答えておりますが。
岡田委員 非常に不明確です。不明確であります。
高野政府委員 先ほどの御質問にちょっと戻らせていただきますが、軍事的観点を含め日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態とは何かということでございます。
特定の事態を念頭に置いているわけではないことは従来から周辺事態に関して申し上げておりますが、典型的に申し上げますと、日本周辺地域において日本の平和と安全に重要な影響を与えるような実力の行使を伴う紛争が発生する場合、あるいは紛争の発生が差し迫っている場合、及び紛争後の秩序の維持、回復が求められている場合等も含むと思いますが、そういった場合が考えられると思います。
岡田委員 典型的な場合はそうだと思いますが、どこまでその外縁が広がっていくかということが非常に大きな議論であります。
きょうは時間がありませんから、引き続きこの問題、もう少し整理した上で議論したいと思います。
では、一つお伺いしたいのですが、今回のイラク危機、これがもし極東で起きたと仮定した場合に、これは周辺事態に当たりますか。
高野政府委員 繰り返して申しわけございませんが、周辺事態は、その事態の性質によって判断されるべき問題でございます。したがいまして、その事態の態様、規模等を総合的に判断して考えざるを得ませんので、今の御質問についてはお答えすることはできないということでございます。
岡田委員 今回のイラク危機と同じ規模の、同じ中身のものが極東で起きた場合に、当然、米軍がこのイラク危機と同じように出動しますね。そのときに、これは周辺事態に該当しますかどうですかと具体的に聞いているのです。抽象的に聞いているのじゃないのです。
橋本内閣総理大臣 私、ちょっと今の議員の御質問の仮定は無理があると思います。
というのは、現実に中東で起きております情勢、これは湾岸戦争というものから継続した、もう一つさかのぼりますならば、イラクのクウェートに対する侵略の開始の時点から継続している事態であります。そして、そのプロセスの中における国連の安全保障理事会における決議にイラクが違反をしているかどうかという問題で、これに対して今国際社会がどう動いているかは、議員御承知のとおりの状況であります。
これをちょっと極東に当てはめると。どこの地域に当てはめましても、ちょっと私、これは問題のある仮定だと思いますし、その仮定を仮に一〇〇%受け入れてお答えをするとしても、その時点における周辺事態に相当するかどうかの判断は、日本政府が日本政府として行う判断であり、まさにその点では局長が先ほど来、また大臣も申し上げておりますように、その時点における状況を総合的に判断して、日本が自主的に当たるか当たらないかを判断すべきことだと思います。
岡田委員 今、国連の問題を言われましたが、このガイドラインの問題というのは、基本的に国連が機能していない場合を想定して、もちろん臨検とか例外はありますが、やっているわけで、私はそれが大きな違いになると思いませんし、この議論はここできょうはやめますが、私は、これだけ議論して、まだ周辺事態の定義について政府の中できちんとしたものがないし、あるいは少なくとも国民から見て非常にわかりにくいということは、この議論を通じて明らかになった、そういうふうに思いますから、なお引き続き議論したいというふうに思っております。
さて、ではこの周辺事態、これは日本とアメリカそれぞれが決めることになると思うのですが、日本がこの周辺事態ということを認定する場合に、それはだれがどのような手続を経て周辺事態というものを認定するのでしょうか。
久間国務大臣 周辺事態が発生した場合、どういう形でいろいろなことをやっていくか、実効性あるものにしなければならないということで、今、官房副長官をチーフにしまして、一つの勉強会といいますか、取りまとめを各省庁でやっております。非常に広範多岐にわたるものですから、なかなか議論が煮詰まっていない点がありますけれども、その過程において、そういう手続等についても議論がされながら、いろいろな整備をしていこうと思っております。
岡田委員 まだ検討中ということですが、ちょっと観点を変えまして、周辺事態が発生したときにいろいろな日本国民の私権の制限ということが出てくる、こういうふうに思いますが、今までの検討の中で、周辺事態あるいはもう少し限定して周辺事態発生の際の自衛隊が後方支援をする場合に、どういう私権の制限というものが想定されるというふうにお考えでしょうか。
久間国務大臣 財産権等、個人的な私権との関係についても十分留意しながら議論をしておるわけでございますけれども、要は、実効性を確保するということが大事でございます。
そういうような場合に罰則等をつけましても、実効性が確保されなければなかなかできないわけでございますので、そういう意味で、罰則等を設けてそれを縛るような、そこまでは考えないで、要するに何らかの協力が得られるような体制がどうすればできるか、それを鋭意検討しているところであります。
岡田委員 具体的になかなかお答えいただけないのですが、例えば有事法制を検討したときの政府の考え方の中にもこういうのが出てまいります。
航空機用の倉庫を臨時につくるという場合に、これについては建築基準法の規制がかかる。それに対して、有事においては、自衛隊の建築する建築物については建築基準法に関して特例措置が必要であると考えるというのがあるのです。私は、後方支援の場合にだって、米軍機に対して同じようなことがあり得るのではないかというふうに思うわけであります。
あるいは、火薬類の夜間の積みおろしというのは、今政令で制限されているけれども、これについても特例が要るという検討結果があります。これも同じようなことが起こるのではないか。
それから簡易病院をつくる、医療法に定める構造設備なしの病院ということで特例措置が要る、こういう検討結果が出ているわけですが、後方支援の場合にも、例えば有事が発生した地域から送り返されてくる傷ついた病人に対して、そういった簡易病院で対応するということはあり得るんじゃないか。そうすると、同じように構造設備なしの病院ということで特例措置が要るんじゃないか。
やはり法律的な、新たな立法をもってそういうことに対処していくということは、当然必要になると思いますし、あるいは、今の自衛隊法の中で防衛出動の際のいろいろな規定がありますね、物資の収用でありますとか電気通信設備の利用でありますとか。そういうものについても周辺事態に基づく後方支援の場合に同じような問題が出てくるのではないか、こういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
久間国務大臣 我が国が攻撃にさらされております場合と周辺事態の場合とでは、若干緊急性といいますか、そういう点も違うのではないかと思います。
それと同時に、先ほどから何回も言っておりますように、要は実効性を確保するためにどうすればいいかということでございますから、協力体制を日ごろからつくっておく、そういう形で実効性を確保していくという方法もあるわけでございます。今のところ、罰則まで設けて強制的に従わせるということが少し可能じゃないんじゃないかというようなことから、罰則については、強制力を持たせるような立法については、議論の中でもないわけではございませんけれども、非常に可能性として少ないということでございます。
岡田委員 罰則までつけるかどうかは別にして、国が動くときには法律の根拠がなければできないわけでありますから、法律の根拠というものをきちんとしておかないと、いざというときに制度が動かない、こういうことになるのではないかというふうに思うわけであります。そういう意味で、私は、私権の制限まで踏み込んでそういう法的な手当てが必要になる場合が出てくるだろう、そういうふうに予想しているわけでございます。
そこで、次に、周辺事態発生時に自衛隊が対応する場合に、先ほど、周辺事態の認定とか認定手続、だれがどのように手続をするのかということについては検討中であるという、余りお答えをいただかなかったわけでありますが、少なくとも、私は、自衛隊を動かす場合には内閣総理大臣の命令というものがそこに必要になってくるというふうに思います。
今の治安出動あるいは防衛出動、いずれも内閣総理大臣の命令があって初めて自衛隊は動くわけであります。これはシビリアンコントロールの一つのコアの部分ですね、核の部分だと思うのです。勝手に動かさない。防衛庁長官がという場合もあるかもしれませんが、私は、基本的に、大規模に動かしていくということであれば内閣総理大臣の命令ということが必要になると思うわけでございますが、そこのところについては基本的にどういうふうにお考えでしょうか。
久間国務大臣 当然、自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣でございますから、内閣総理大臣の命令によって行動するわけでございます。
ただしかし、内閣総理大臣だけの命令かというと、議論の中でいろいろやっておりますけれども、例えば安全保障会議の議を経るとか、あるいは内閣で決定するとか、そういうような段取りを経ながら、内閣として、その長として、内閣の長としての内閣総理大臣の命によって動くというような一つの手順をやはり踏みながらやっていかなければならない問題であろうという意見が大勢を占めております。
岡田委員 それは当然のことだと思います。
そこで、内閣総理大臣が一定の手順を踏んで出動命令をする場合の国会の関与ということについてどういうふうにお考えか、お聞きしたいというふうに思っております。
まず、先ほど総理も言及されました、あるいはお手元に配付をさせていただきました、平成三年九月三十日の政府のシビリアンコントロールについての考え方というのがございます。これは、PKOの法律を議論する際に、政府としてお考えをおまとめになったものでございます。私は、この政府の考え方が今でも維持されているのかどうかということについて、まずお聞きをしなければいけないと思います。
というのは、その後、PKFについては国会の承認を要するという法律が、当時の自民党、そして野党の一部も含めて成立をしているわけであります。ここでは、これはPKFも含んでPKOというものは、そもそもシビリアンコントロール、国会による承認というものは要らないのだ、そういうペーパーになっているわけでありますが、結果的には、PKFについては国会承認をするということが国会で決まった。したがって、このペーパーはそのまま通用するものなのか、政府の見解として。あるいは、その後PKFについて国会承認を必要としたということをもって何らかの変更があるのか、その点について、まずお聞きしたいと思います。
茂田政府委員 お答えいたします。
先生御指摘のとおり、PKO法案の審議の際に、政府がシビリアンコントロールに関する政府見解を出しております。その中では、PKO協力のための自衛隊の参加について、それに先立って国会承認を求める必要はないという政府の見解を表明してございます。
しかし、その後、PKO法の審議を経まして、いわゆる参議院修正によって、PKFの本体業務の実施については国会の承認が必要であるというふうに法案が改正になりました。この改正された法案が成立いたしておりますので、政府としては、国会で採択された法律に従うのは当然でございますから、PKFの本体業務に関する参加については国会の承認を求める立場にあるということになっております。
したがいまして、最初の政府見解が、この点では変わってきているということであると思います。事前承認を求めるという制度になってきていると思います。
ただ、その際に、これ以外の点がこの政府見解にありますけれども、このPKFの本体業務について国会承認を求めるという点以外については、政府の見解は変わっていないということでございます。
岡田委員 PKF、具体的には、例えば武力紛争停止の監視でありますとか緩衝地帯の巡回でありますとか放棄された武器の収集処分、こういうPKFについても自衛隊がそれに参加することについて国会承認が要る、こういうことになっていることとのバランスから考えても、私は、周辺事態において内閣総理大臣が自衛隊の出動を命令する際に国会承認というものは避けて通れないだろう、そういうふうに思うわけですが、この点についていかがお考えでしょうか。
久間国務大臣 PKFにつきましては、あの当時の議論の中で、一応シビリアンコントロールは確保されておるけれどもより慎重を期すということで、立法府の意思としてあのようにされましたので、それに従っているわけでございます。
したがいまして、これから先、どういう法律になるのか、その法律の内容に従って私ども自衛隊は動くわけでございますけれども、ただ、若干違いますのは、周辺事態の場合、邦人救出等急ぐ場合が出てくるかもしれません、あるいはまた難民がたくさん押し寄せる場合があるかもしれません。そういうすべてに対して国会承認をつけなければならないというふうにするかどうか、これはやはり議論のあるところでございまして、やはり国会の御審議等を経ながら、私どもも立法作業においていろいろと検討しながら、これから先詰めていく問題じゃないか、そういうふうに思っております。
岡田委員 私も、このガイドラインに定めるいろいろな対応すべてについて国会承認が要るのかどうかということについては、議論の余地はあるというふうに思っております。ただ、先ほどの後方支援、米軍の活動に対する日本の後方支援で自衛隊が関係する場合には、これはやはり国会承認が必要なのではないか、少なくともそういうふうに思っております。
この政府の御見解の中で、なぜPKOについては国会承認が要らないのかということを述べたくだりで、基本的に国会承認というのは、「そもそも我が国にとって重大な事態であり、また、国民の権利義務に関係するところが多い」というのを、治安出動、防衛出動について国会承認を求めることの理由として挙げております。
この周辺事態の場合について申し上げれば、その定義上、周辺事態というのは、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である」ということですから、当然、「我が国にとって重大な事態」であるということとほぼ同義であろうというふうに思いますし、国民の権利義務についても、先ほど申し上げましたように、いろいろな意味で国民の権利義務にかかわってくる、こういうふうに思います。
あるいは、そもそもを振り返れば、シビリアンコントロールの本来の趣旨からいえば、自衛隊という一つの武力集団を大きく動かすときに国会の承認というものがあるというのは私は基本的な考え方だと思いますが、この点について総理のお考えをお聞きしたいと思います。
橋本内閣総理大臣 私は、今、議員の御論議の中で、要するに、非常に微妙なあるいは議論を今後必要とするところがあるということを認めていただいた上で述べられた点には、まず敬意を表したいと思います。
その上で、まさに引用されましたように、防衛出動及び命令による治安出動、こうしたものに対して国会承認の規定があり、また、命令による治安出動に対して事後の国会の承認を得ることが定められている。同時に、そのPKOの場合において、自衛隊の参加について、国民の権利義務に直接関係する面というものではないということから国会の承認までの手続を必要とすることは考えない。ただ、その場合におきましても、その自衛隊の部隊などが海外において行動することでもあって、国会に十分御理解をいただく、また、国会の御意向を実施面に反映させていく必要があるということをこの見解で述べておる点を非常に私は注意深く改めて目を通しておりました。
そして、先ほど防衛庁長官から御答弁を申し上げましたように、新ガイドラインに関する作業はいまだそのプロセスでありまして、結論を得ている状況ではありませんから、確たるものを申し上げる状況にはありませんけれども、今、議員が指摘されましたような問題点をも含め、我々としては検討をしていきたい、そのように思います。
岡田委員 これは確認でありますが、ガイドライン関係の立法というのは、この国会に提出されますか。
久間国務大臣 鋭意、早急に成案を得るべく、やっておりますけれども、とにかく各省各庁に広がる問題でもございまして、なかなか作業が進んでいないわけでございます。また、特にアメリカとの関係のいわゆるACSA等につきましては、これまた外国との関係もあるわけでございまして、そういう意味で、これから先も鋭意検討を急ぎ、できるだけ早く作業を終えて出せるようにしたい、努力していきたいと思っております。
岡田委員 私は、これは邪推かもしれませんが、いろんな政治状況によって、この法案に対する対応が少しゆがんでいるんじゃないかという気がしております。
いずれにしても、この問題は、シビリアンコントロールという、非常に国にとって重要な問題をはらんだ問題でありますので、例えば個別に、つまみ食い的に現行法の修正をして認めるというようなことではなくて、先ほど防衛庁長官もお認めになった、例えば周辺事態の認定の手続の部分、そして総理大臣の命令の部分、国会の承認の部分、そういうことをきちんと骨組みにする、そういう立法をちゃんと出していただきたい。
目の前のいろんな政治的な配慮から、そういうものを先送りしたり、あるいはあいまいにして、いつの間にかシビリアンコントロールの大きな枠の中から自衛隊の活動というのが抜け落ちてしまう、そういうことにならないように、それを御要望しておきたいと思います。
それから、最初に御質問した周辺事態の定義につきましては、私はきょうの説明では納得しておりませんので、引き続き別の機会をとらえて御質問していきたい、そういうふうに思います。
次に移ります。行政改革であります。
省庁再編成法案もまとまったようでありますが、私は、基本的にこの省庁再編成のやり方に対しては批判的であります。これはマスコミその他でもそういう論調が見られるわけでありますが、まずやるべきことは、国がやるべき仕事の減量である。国と地方の関係、国と民間との関係、そういったものをきちんとやった上での省庁再編成ならわかりますけれども、何か省庁再編成が先行して、数合わせに終わっているんじゃないか、そういう疑問はぬぐえないわけであります。
しかし、法案は出てきたわけでありますので、それを前提に少しお話をしたいと思いますが、私は、この中央省庁の改革基本法案について、いつこれを実行するのか、そして実行するときに、一遍にやるのかあるいは段階的にやるのか、そういう基本的な考え方についてお聞きをしたいと思います。
橋本内閣総理大臣 私は、今議員が基本的に疑念を持つと言われました点は、大変残念であります。
と申しますのは、私が総理という大役を拝命いたしました時点で、既に地方分権については、分権推進委員会が活動を開始しておられました。また行革委員会の方で、官民のかかわりという点からも、規制緩和あるいは撤廃等についての作業は進行いたしておりました。そして地方分権につきましては、分権推進委員会から既に四次の勧告が出されておりまして、この勧告を今国会終了前のできるだけ早い時期に、政府の推進計画として実行に移していこうといたしております。
そして、それだけではなく、分権推進委になお引き続き、国と都道府県、都道府県と市町村、あるいは国から市町村、さまざまな角度での分権の御検討を願うということを私から正式にお願いも申し上げております。また規制緩和、撤廃の作業につきましても、着実に進んでおることは既に御承知をいただいておると存じますが、そうしたものを踏まえた上で、今回の行政改革会議の最終の報告というものはまとめられた。言いかえるなら、国の権限と仕事の減量を進めた上で、二十一世紀というものを目指してこの議論はなされてまいりました。
そして、そういう中で、私は本当に二〇〇一年一月一日からスタートをさせたいということを、移行を開始することを開始したいということを申し上げてまいりましたが、当然のことながら、その再編成のプロセスにおきまして時間差は生ずると私は思います。そして、それはしかし、いたずらに長引かせるということではない。当然ながら引っ越しの時間だけだってかかるわけですから、二〇〇一年一月には移行を開始したい、そのように考えております。
岡田委員 この法案では、第五条で、「遅くともこの法律の施行後五年以内に、できれば平成十三年一月一日を目標として、中央省庁等改革による新たな体制への移行を開始するものとする。」こう書いてありますね。今総理は、時間差とおっしゃいました。その時間差が問題なんですね。
例えばこの中で、公共事業について四十六条で書いてありますね。公共事業については、これは行政改革会議、総理がトップをみずから務められた行政改革会議の最終報告と同じ表現でありますが、基本的に、「国が直接行うものは、全国的な政策及び計画の企画立案並びに全国的な見地から必要とされる基礎的又は広域的事業の実施に限定し、その他の事業については、地方公共団体にゆだねていくことを基本とする」、それからもう一つは、途中を省きますが、「できる限り、個別の補助金等に代えて、適切な目的を付した統合的な補助金等を交付し、地方公共団体に裁量的に施行させる」、こういう方針が具体的に示されているわけであります。
ここに書いた、公共事業についての、例外は国に残るけれども基本的には地方だ、そしてそれは個別の補助金じゃなくて統合的な補助金でやるのだ、こういう基本的な考え方に基づいて、作業をいつやられるのですか。省庁再編成が終わった後なのですか、それとも今からすぐやるのですかということをお聞きしているわけです。
橋本内閣総理大臣 関係閣僚からの補足をお許しいただきたいと思いますけれども、公共事業に関する実施の権限は、これは極力、地方支分部局に移してまいります。そして、地方において主体的に事業が進められるようにしていく所存でありますけれども、細部にわたりましては、関係大臣から御答弁することをお許しいただきます。
小里国務大臣 要旨はただいま総理の方からお話し申し上げたとおりでございますが、特に公共事業に限定してのお話でございますが、これが公共事業を、ただいまお話がございましたように、中央から地方へできるだけ合理的に再配分していきますよ、むしろおろしていきますよという方向でございます。
そのためには、大変規模も大きいし、かつまた事務事業量も複雑多岐にわたっておりますこと、御承知のとおりでございます。したがいまして、先ほど先生の方からお話がございましたように、理想としてと申し上げましょうが、何が何でも二〇〇一年には総体的にわたって実現をしたいという悲願を私どもは持っております。
したがいまして、先ほど総理の方からお話がございましたように、それまでの間に、地方の税源あるいは財源等もきちんと再改組が行われます、地方財源はかくあるべしと。それは、地方分権は原則としてこういう展開を見なければならぬという具体的な絵がかかれてまいりますから。したがいまして、二〇〇一年の実現の時点におきましては、私どもは、行政事務もあるいは財政という視点から見ましても、これが相整って完全遂行できることを目標にいたしておるということでございます。
岡田委員 今の御答弁は、二〇〇一年の省庁再編成のときには公共事業の統合補助金化というものは終了している、こういうことでよろしいですね。
小里国務大臣 その案件によるかと思うのでございますが、少なくともその計画というものは整っていなければならない。しかも、先生がきょうお話しの含意にもあるようでございますが、趣旨にもあるようでございますが、二〇〇一年を待つまでもなく、可能なものは随時実践体制に入っていくということが必要であろう、かように思っております。
岡田委員 はっきりしたお答えをいただけないわけでありますが、省庁再編成をやってから、またこういうことをやっていたのでは、それからまた五年、十年、二十年と、いつの間にか消えてしまうというのが私は予想される姿ではないかと思います。やはり、これをきちんとやって、やった上でスリム化した省庁を一つに再編成していくということが重要なのでありまして、ぜひ省庁再編成に先立ってこの統合補助金化をやっていただきたい、こういうふうに思います。
これは公共事業の統合補助金化だけではなくて、独立法人化、アウトソーシングですけれども、これについても同じことが言えると私は思います。
小里国務大臣 大変基礎的に大事なことを御指摘いただいたと思うのです。
例えば、ただいまお話がございました官邸機能の強化、あるいは独立行政法人化の具体的な作業、あるいはただいまお話がございました地方分権に伴うさまざまの準備、あるいは実行できるものは二〇〇一年までにできるだけそれを実行に移した方が、二〇〇一年という目標は可能性がぐんと出てくるわけでございますから、そのような悲願のもとに作業をさせていただきたい。
以上でございます。
岡田委員 ぜひ今の御発言を実行していただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。
そこで、私は、その中でも内閣機能の強化、これは今からでも実行していいのではないか、こういうふうに思うのです。
具体的に、内閣機能の強化として内閣総理大臣の発議権、これは法律を変えれば済む話であります。別にほかに何か関係するわけではございません。あるいは、内閣官房の組織のあり方、こういうことについてはこの法律に書いてありますけれども、私は、その気になれば省庁再編成と切り離して今からでもできる話だし、それから、これから、これだけ日本の置かれた状況が厳しい中で、やはり政治のリーダーシップ、とりわけ内閣総理大臣のリーダーシップというものが求められるときに、全部一緒になって省庁再編成とセットで二〇〇一年などということを言っていないで、私は、この国会にでも法案提出をして、この点についてだけでも先行してやったらどうか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか、総理。
橋本内閣総理大臣 既に今までにも、例えば官邸機能の強化の一環として危機管理担当官の問題等、国会の御協力を得て、動かせるであろうことを期待いたしております。政府としては、行政改革会議の最終報告を忠実に、増減なくこれを今回の基本法の中にまとめ上げ、国会に御提出を申し上げました。そして、その上、国会の御審議の中において、今議員の御指摘のようなお考えで国会が意見を集約された場合、政府としては、それを受けとめ、実行に移していくことは当然のことであろうと思います。
ただ、その上で、今回の基本法の中に、お目通しをいただいて御質問をいただいておりますけれども、従来であれば各省庁の権限とだれも疑わなかったものが、内閣あるいは内閣府の権限、役割として規定をされておりますものがございます。これは、各省の設置法等をその時点で改正するという作業も並行するわけでありまして、私は、内閣府だけを本当につまみ出して機能強化ができればという思いは、時に自分自身、自問自答する部分を持っておりますけれども、基本法の形態として既に我々は国会に御審議をゆだねましたので、今後の御論議の中からより適切な方向を指示していただくことを期待いたします。
岡田委員 私も、確かに内閣府ということになると、他省庁の設置法との関係がかなり出てくるだろうと思いますが、内閣官房ということに限れば、かなり独立しているのではないかというふうに思います。そういう意味で、その改革というものを先行させたらどうかというふうに御提言申し上げたところでございます。
いずれにいたしましても、先ほど小里長官の方からも、統合補助金化あるいは独立行政法人化については、省庁再編成を待ってやるのではなくて、その前にもやっていくのだというお話がございました。できれば、政府の方で二〇〇一年の省庁再編成までの手順といいますかスケジュールを、何年には統合補助金化をやります、何年には独立法人化をやります、そういうことをお示しいただければ単なる数合わせという批判は消えていくのではないか、私はそういうふうに思いますので、ぜひそういったことも作業をしていただければありがたいというふうに思います。
何かございますか。
小里国務大臣 これは国会がお許しをいただきましたことを前提にしての話でございますが、すなわち、中央省庁の改革基本法が国会の意思として決定をいただきましたときには、間髪入れず、直ちに中央省庁改革推進本部を設置いたします。本部長は総理大臣でございます。直ちに、先ほどからお話がございましたようなもろもろの絞り込みを、行政機能を中心にいたしまして行ってまいります。
そして、先ほど結びとしてお話がございましたように、可能な限り二〇〇一年の時点を、しかも中身におきましても、最も改革という基本を前提にした理想とする姿を具体的に準備をして、そして実行に当たらしめなければならぬ、さように思っております。
岡田委員 それから、定員の問題について触れたいと思うのですが、定員につきましては十年間で一〇%減らすということが書いてございます。
しかし、一〇%減らすというのは、これは純減ベースで減らす話なのか、それとも、定員として一〇%減らしますが増員については別に考えますということなのか、いずれなんでしょうか。
小里国務大臣 これはもう先生御承知のとおりでございますが、まず、今行っておりまする純減という答えを求める方式は、まず定員削減を行います。定員削減数値を求めます。そしてそれに対しまして新規増員を、いわゆる新規増員する分を極力抑える、こういう二つの原資をもちまして、プラス・マイナス・イコール・ゼロでなくて純減。
その純減の結果を今お話があったと思うのでございますが、先生が言わんとしておいでになるところは、プラス・マイナス・イコール純減のところをきちんと固定目標化してかかった方がいいのではないかというお話だろうと思うのでございます。
私はお答え申し上げますが、結果として、決して否定はいたしません。同じ目的、同じ趣旨を持った話でございますから、純減数というものを年次計画を立ててやることも結構でございましょうけれども、ただ、今日、御承知のとおり、行政は日進月歩と申し上げましょうか日々変化をいたしております。したがいまして、結果の方だけを固定しておきますと、前段で申し上げましたいわゆる定員削減というものもなかなか決定をいたしにくい事情になるわけです。
あるいはまた新規増員も、ぐんと抑えられる省庁もあります。例えば、今までの昭和四十三年以降を見てみますと、顕著な数字を示していただいた、例えば農林水産省、建設省のごときは数万人も減らしてきております。逆に外務省なりあるいは科学技術関係なり等々は、特に文部省でございますが、文部省などは相当な増員を進めてまいっておりますという、大変な凹凸がございますので、その辺の状況変化を明らかに見通すことがなかなか困難な事情でございまして、従来、政府は、先ほど申し上げましたような純減計画を実践してきておるという状況でございます。
否定はいたしませんけれども、そういう複雑な事情があることを御理解いただきたいと思います。
岡田委員 複雑な事情があることはよく承知をしておりますが、今までの政府の定員削減、これは前にも私、触れましたが、第一次定員削減計画が昭和四十三年に始まりまして、現在第九次であります。平成十年、今途中でありますけれども、約三十年間やってまいりました。その間、三十万人削減をした。昭和四十三年時点での公務員の定員の数は九十万人ぐらいだったと思いますから、三分の一減らしたというすごい話であります。ところが、その一方で二十五万人ふやした。だから結局、差し引きすると五万人しか減っていないという、一般の常識から見ると極めてわかりにくいというか、国民から見たらだまされたというふうに感じかねないような結果になっているわけであります。
ここでも、十年で一〇%という数字を見れば、なかなかやるんだなというふうな印象を与えるかもしれませんが、場合によっては、同じ数だけふえる、あるいはさらにふえるということもあるかもしれませんので、私は、せっかく法律へ書かれるのであれば純減ベースで書いていただきたい、そういうふうに御要望申し上げておきたいと思います。
最後に、一言総理に申し上げたいと思いますが、財政改革の面で、総理は、法律もつくって一生懸命推進してこられたということでありますが、私は、国民は本当に、総理が本当の意味での財政構造改革をやるのかどうかということは見ていると思うのです。
私は、本当の意味での財政構造改革は引き続ききちんとやっていくべきだという立場であります。これは時間がかかります、構造を変えるわけですから。ですから、景気の面で私どもは六兆円の減税ということを主張しておりますけれども、そのこととは別に、本当の意味での財政構造改革をやっていくべきだ。
そういう観点で見たときに、整備新幹線の問題というのは、私はゆるがせにできないわけであります。
三塚大蔵大臣はかつて、整備新幹線について、見送りを含め抑制する必要があるということを述べておられますし、基本的に、集中改革期間というのは、私は、会社でいえば会社更生法の申請をしているような、そういう事態だろうと思うのですね。
越智委員長 質疑時間が終了していますので、手短にお願いいたします。
岡田委員 はい。関連ですから。
しかし、そういう中にあって、その集中改革期間であるにもかかわらず、大きな投資の意思決定を、しかも、今すぐ必要とするものじゃなくて、新たな整備新幹線の決定というのは、恐らく完成は二十年ぐらい先の話であります。本格的な投資は大分先になるでしょう。そういうものについて、今の内閣総理大臣が、しかも、真の意味での財政構造改革をやっていかなければならない人が、今決める権利があるのかというふうに私は基本的に思います。
それはやはり、この財政再建が完成した暁に、そのときの総理大臣がそのときの有権者の意見を聞いてやるべきことでありまして、私は、整備新幹線についてだめだと言っているわけではありませんが、今のこの段階で今の橋本総理が決める権限はないんじゃないか。
今の若い人たちがこれから財政再建について、これは何とかやってほしい、でないとおれたちの未来はない。総理御自身も、このままでは日本は破滅するとまで国会で言っておられるわけでありますから。一方でそう言われながらこういう先の投資について今決められるというのは、私は、政治家として責任ある態度と言えないんじゃないか、こういうふうに思いますが、もし御意見があれば、一言お願いしたいと思います。
橋本内閣総理大臣 私は長々と論議をしようとは思いません。しかし、整備新幹線と財政構造改革の関係というのは、昨年の六月に閣議決定をいたしますまでにも十分な議論をいたしました。そして、その閣議決定において、収支採算性などの基本条件というものを十二分に確認をする、そして、拙速に結論を出すことがあってはならず、集中改革期間を設けて財政構造改革を進めよう、これは議員が御指摘のとおり、そういう流れに矛盾しないようにしなければならないということを決めてきました。そして、それを受けて、政府・与党の整備新幹線検討委員会が結論を出し、その結論を政府としては受けとめております。
私は、財政構造改革と新規着工決定、今回のものが相反するものだとは考えておりませんけれども、将来の問題に対しおまえが決定をする権限があるのかという御指摘があったことは心にとどめておきたいと思います。
岡田委員 終わります。