142回 衆議院・予算委員会
岡田委員 民主党の岡田克也です。菅代表の時間の枠の中で、若干の質問をさせていただきたいと思います。
まず、経済、景気対策であります。
先ほど来話に出ておりますように、四月の失業率が四・一%という史上最高になりました。完全失業者の数は二百九十万人であります。二百九十万という数がどれほどのものであるのかということを想像していただくために申し上げますと、例えば広島県の人口が二百八十八万人、茨城県の人口が二百九十八万人でありますから、広島県や茨城県の、そこに在住する県民のまさしく赤ん坊からお年寄りまですべての人が、働きたいけれども職がない、それが今の現状であります。
この一年間で五十九万人の失業者がふえました。その中でも特に目立つのは、中高年齢者の失業者であります。統計によりますと、四十五歳以上の有効求人倍率は〇・二一、五十五歳以上になりますとわずか〇・一一でありますから、一つのポストに対して、職業に対して十人の人がそれを求めている。そのうちの一人しか職業につけないという大変悲惨な現実であります。
四十五歳とか五十五歳ということになりますと、家庭においては一家の大黒柱であります。お子さんは例えば中学校や高校あるいは大学に行っておられて、突然職を失う、途方に暮れる、そういう大変残念な、人生においても非常につらい状況に陥っている方がたくさんいらっしゃるというのが現実であります。
先ほど労働大臣の方からいろいろ雇用対策について述べられましたが、私は、今ここでその雇用対策の中身の是非について論じようとするものではございません。むしろ、こういうことが起こった、その政府の景気の現状に対する認識について、ぜひ総理のお考えを聞きたいと思っております。
この予算委員会の審議において、わずか二カ月前、あるいは三カ月前、つまり三月におきまして、何度も何度も、桜の咲くころには景気は回復基調に乗るとか、一―三月は大変厳しいけれども、それを通り越して四月になれば順調な回復基調に乗るという答弁が繰り返されたわけでありますけれども、その四月が現実の数字となって出てくれば、先ほどの四・一という史上最悪の失業率だ。このことについて、まず総理の責任といいますか、これだけの認識の違いがあったことについて、総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。
橋本内閣総理大臣 経済判断等につきましては、補足をまたお許しいただかなければなりませんが、今まさに、景気のためにこの補正予算の御審議を願っております。そして、議員は雇用情勢について非常に厳しくとらえられましたが、私も同様にとらえておりますし、それ以上に、特に四十五歳以上あるいはそれ以上の部分におきまして非自発的退職者の数がふえていること、これは非常に私は気になっております。
そして、特にこの一両月非常に気になっておりますのは、同時に、一方はあるいはリストラその他で発生したもの、これを吸収し切れないという理屈がつくかもしれません。そしてその場合に、職業訓練等の対応をもってこれにこたえることができるかもしれません。
しかし、もう一つ、私がこの雇用の指数の中で非常に気になっておりますのは新卒及び若年者であります。しばらく前までは求職者数が求人を下回っておりました。言いかえれば、自分が好きな職につけないかもしれないけれども、働く意思があれば若い方の場合には職がありました。この一両月、有効求人倍率が若年層において一を切っております。これは私にとりまして非常に重たい数字でありますし、新たな業が起こる、それが実は残念ながら転廃業の数を下回っている状況とともに、今の状況を非常に厳しいものと私に受けとめさせている、そうした大きな数字でもございます。
それだけに、雇用対策というものにつきましても、ただ単に例えば南関東とかいったブロックでとらえるのではなく、地域というもの、その地域における業種構成というもの、そしてその地域における職を求める方々の年齢構成等、雇用失業情勢により即した対策をつくろうと今努力をしておるところであります。
岡田委員 確かに若年者も、二十四歳以下の失業率は八・五%ということですから、大変高い水準であります。
ただ、私が今総理にお聞きしたかったのは、失業ということについての総理の御見解ではなくて、そもそもこういうことが起きたのは、春になれば景気が回復基調に乗るというふうに何度もそういう認識を述べられた、そういう認識の甘さあるいは誤りをどういうふうに考えておられますか。四月になって現実に数字が出てきたら、大変厳しい数字だった。
つまり、桜の咲くころに景気は回復基調に乗るのじゃなくて、桜が咲くころにまさしく景気が一段と落ち込むというのが現実だったわけですから、そのことについて、どのように責任をお感じになりますかということをお聞きしたわけであります。
尾身国務大臣 昨年来の景気の動向でございますが、秋口以降、企業の倒産やあるいはアジアの経済状況等を反映いたしまして、家計や企業の経済の先行きに対する不安感が非常に強くなりました。そのことに対しまして、金融システム安定化対策あるいは二月の特別減税等の措置をとったところでございます。
そういうことによりまして、景気に対するマインドあるいは消費者の態度というものはやや正常化しているような兆しが見られると考えております。しかし、そのことの影響がことしに入りましてから、生産あるいは雇用等の実体経済全般にまで及んできておりまして、そういう意味で、先ほど来のお話のとおり、景気が非常に厳しい現状にあるというふうに認識している次第でございます。これに対しまして、私ども現在提案をしております総合経済対策によりまして、補正予算も組み、景気を順調な回復軌道に乗せたいということで今提案をしているわけでございます。
ただ、そういう状況でございますが、現在の状況は、例えば平均消費性向で見ますと、九月の消費性向七一・九%から急速に消費者のマインドが悪化をいたしまして、二月までに六八・四%という低水準にまで消費性向が低下をいたしました。三・五ポイント、金額ベースで十兆円を超える消費性向の低下があったわけでございますが、二月の特別減税等の効果もあり、マインドもやや改善をしたと私は思っておりますが、三月、四月には、三月には消費性向が七一・七%に戻り、四月にはさらに七二・九%ということで、固定資産税の払い込みの時期等の影響もありますけれども、やや消費性向そのものは正常化しているというふうに考えております。
ただしかし、可処分所得が生産、雇用等の影響を受けまして低下していることがありまして、消費の絶対水準は低いわけでございますが、消費者のマインドを示す消費性向には回復の兆しがかなりはっきりと見られるというふうに理解をしております。
岡田委員 大変長い御答弁だったと思うのですが、一言、消費性向について、企画庁長官、何度もいろいろな場でおっしゃいますから。
私の認識はちょっと違うのですね。消費性向というのは、可処分所得を分母にして、分子は幾ら使ったかということですね。だから、消費性向がよくなるということは、たくさん使う場合もそうなりますけれども、分母の所得が減れば消費性向が上がるのですね。今回の場合、確かに四月は時間外手当が非常に減って所得が減っていますよ、それが消費性向が上がった理由であって、全く原因と結果を取り間違えている、私はそういうふうに考えております。
いずれにしましても、私の質問は、責任はどう感じているのですかということに対して、今の総理と経済企画庁の御答弁ですから、テレビを見ておられた方はそれを見てどういうふうにお感じになるのか、私には、私の質問に答えていただいていない、そういうふうにしか思えないわけであります。
時間がございますから、次に参ります。
今までの政府の経済対策を見ておりまして、いろんな意味で機動的な対応が打てないでいるということを非常に感じるわけであります。そして、その妨げになっているのが、言うまでもなく財政構造改革法であります。
例えば、昨年の十二月に、総理は二兆円の減税ということを突然打ち出されたわけでありますが、私は、あの減税が、もちろん一時的減税でありますから効果に限りはありますけれども、もし一カ月早く行われていれば、十二月のボーナスの時期に間に合った。そうすれば減税は一挙にできたはずなのですね。
ところが、一カ月おくれたために、ことしに入って何カ月かに分けて減税をする、あるいは事業者所得の場合にはまだ減税が終わっていない、住民税も終わっていない。そういうことで、細切れの減税になってしまった。大変もったいないことだと思うのです、同じ二兆円を使うのなら。しかし、なぜ十二月まで二兆円の減税を決断できなかったかといえば、国会において財政構造改革法の審議が進んでおりまして、とてもそんなことが言えない状況にあったということだと思うのです。
それから、今景気対策の補正予算を審議しているわけでありますが、これだって、もし四月に当初予算を改正して景気対策を盛り込めば、二カ月早く手を打てたはずであります。しかし、財政構造改革法があって、減税ができない、公共事業の積み増しもできない、そういう中で本予算をまず通して、これは立派な予算です、こう言って通して、その後で法改正をして補正予算をするということで二カ月おくれた。つまり、財政構造改革法が足かせになって後手後手に回っているという現実があります。
私は、もう済んだことは済んだことでこれ以上言うつもりはございませんが、これからもそういうことが起こり得るから私は申し上げたいわけであります。つまり、以前に総理にも御指摘申し上げたと思いますけれども、来年度予算において公共事業予算をどうされるのですか。財政構造改革法で、公共事業予算のキャップを外しませんでした。
ということは、今年度当初の、財政構造改革法十四条に言う公共投資関係費というのは十兆四百六十九億円であります。補正後で十三兆五千三百九十六億円。来年度当初は十年度当初よりも減らさなければいけませんから、十兆しかできない。そうしますと、今の十三兆五千三百九十六億円から十兆まで三・五兆円以上、割合にして二五%公共事業予算を減らさなければいけないのですね。
私は、公共事業予算が景気対策としていいとは思いませんけれども、もし自民党や政府の皆さんが公共事業予算が景気対策として重要だ、減税よりも効果があるとおっしゃるのであれば、どうしてみずからの手足を縛って、そして来年度またデフレ予算を組もう、こういうことにされるんでしょうか。
大蔵大臣は、私の質問に対して、いや来年のことは考えていないというふうに口を滑らせておっしゃいましたけれども、もしそうだとすれば、改めてお聞きしたいと思うんですけれども、来年度の当初予算、公共事業予算がわずか十兆円ということで、二五%ことしに比べて減になる。それで本当に景気対策をやっていけるというふうに、公共事業は一番景気対策として効果がある、そういうふうに主張しておられる政府として思われるんでしょうか。
私は、そこのところについて、公共事業についても何らかの手が打てる形にしなかった、そういうことを見ておりまして、国民の皆さんは、ああやはりこれは支離滅裂だ、行き当たりばったりだ、こういうふうに思っておられるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
松永国務大臣 お答えいたします。
前々回でしたか、ちょっと私は言い直したつもりですが。具体的な数字については考えていないと言ったのであって、何にも考えていないとは申し上げなかったつもりなんです。それは岡田さん、ひとつ、そういうふうに発言したわけでありますから、それはそうしてください。
委員御指摘のように、財政構造改革法の規定がありますから、したがって、今回積み増しした分、これは細かく言えば、平成十年度補正予算(第1号)フレームという資料の中で書いてある三兆五千億ということの中には科学技術振興特別対策費とかあるいは情報通信高度化とかというのがあるものですから、いわゆる主要な経費ごとにキャップをかけておるわけでありまして、そのキャップがかかる公共事業関係費としては、積み増し分は二兆八千四百万ですが、いずれにせよ、その場合には二四%当初予算よりもふえることになります。ふえた形に現在なっております。したがって、十一年度の公共事業関係費を考える場合にはふえない前の状態にしなきゃならぬわけでありまして、その意味では、補正後に比べて二四%減った形に実はなるわけであります。
さて、そういう形で、来年度の公共事業関係費の予算が組めるのかということが御指摘の主たる点だと思うのでありますけれども、これは毎年のようにそういう苦労をしながら予算を編成してきたわけでありますが、今回の……(発言する者あり)いやいや、それは実はあるんですよ。もっと減らした例があるんです。平成七年度から八年度にかけては何と三二%減らした形で予算を組んだ、公共事業関係費を組んだ例もありますが、しかし二四%というのは相当な数字であることはよく覚悟しております。
しかし、今回の十六兆円を超すこの景気対策を着実に実行した後の我が国の経済状態あるいはまた金融情勢、そうしたもろもろの状況を見きわめながら、適切な予算を組んだと言われるような立派な予算を組むように、これから暮れにかけて努力をしていきたい、こう考えておるわけであります。
なお、今御審議を願っておるこの補正予算に基づく対策が着実に実行されれば、景気回復軌道に、暮れまでの間の状態を見ながら我々やっていくわけでありますけれども、相当の効果は出てくる、こう見ておるわけであります。それに、十一年度につきましては既に二兆円の特別減税は継続してやるということも決めておるわけでありまして、それらのこと等総合的に判断しながら、十一年度の予算は、十一年度については考えていきたい、こう思っているところでございます。
岡田委員 私は、公共事業予算をふやさなきゃいけないとか、そういう視点で議論しているんじゃなくて、景気の問題との関係で、二五%も減らして、減少させて、それで大丈夫なんですかと。二四%ですか。
今の大蔵大臣の御答弁は、これから経済対策、景気対策の効果が上がって、来年度予算案は二五%、二四%公共事業予算が減っても、景気は順調に回復するような状態までなっている、そういう答弁だと御理解していいですね。
松永国務大臣 景気が順調に回復軌道に乗っていくという願いを込めての今度の景気対策でありますから、したがって、それを前提にして十一年度の公共事業関係予算は組まざるを得ない、こういうことなんです。
岡田委員 組まざるを得ないといっても、それは、みずから財政構造改革法の改正を中途半端にやっていってそうなっているだけであります。私はとても、政府からも自民党からも話がありますけれども、不良債権処理の問題一つとったって、景気はそんなに順調に回復するとは思えない。そういう中にあって、二四%も公共事業を減らすしか予算の組みようがないという、そういう非現実的な法律を通すという、そこに本当にこの国をきちんと支えていくという政治家としての責任感があるのか、そういうふうに私は申し上げておきたいと思います。
次に、社会保障制度改革に参りたいと思います。
今、国民がいろいろなことを心配していると思います。先ほどの雇用の話もそうでありますけれども、その心配の一つに、将来の社会保障制度がどうなるかということがあると思います。特に年金や医療について、このままでは大変なことになる、制度がもたないというキャンペーン、財政改革キャンペーンというのが行われました。私は、そのこと自身は決して悪いことじゃないと思うんです。社会保障制度の厳しい現状を国民に知っていただくことは大切なことであります。国民的議論の前提であります。
しかし同時に、そういう現実を知っていただいた上で、じゃどうするんだというのが次にあるわけですね。その、どうするんだ、医療制度改革どうするんだ、年金どうするんだということについて、なかなか政府の方向性が見えてこない。だから国民は、年金もらえないんじゃないか、あるいは十分な医療が受けられないんじゃないか、そういう心配を非常にしている。そのことが、そういう先行きに対する不安が現在の景気の低迷の一つの大きな原因になっている、そういうふうに思うわけであります。
そこで、まず医療制度改革についてお尋ねをしたいと思います。
私は、医療制度改革についての政府の議論というのが袋小路に入っているというふうに思います。昨年、厚生委員会、私も厚生委員としてずっとおつき合いをさせていただきましたけれども、厚生委員会の場で議論になったのは、政府は、二兆円の医療費の負担増をする、その二兆円の医療費の負担増とそして構造改革というものは、これはセットになっているものだ。
私どもは同時期にやれと言ったんですけれども、構造改革をしないで二兆円の負担増を先行させることは認められないというふうに私は申し上げましたけれども、しかし政府の方も、そのことについては、負担増の前提として構造改革はやらなきゃいけないんだというふうにおっしゃったはずなんですね。
そして、平成十一年度から薬価制度の改革とか診療報酬制度の改革はやるんだ、そのためには、次の国会、つまりこの十年度通常国会に法案を出さなきゃいけないということを厚生省お認めになったはずなんです。それが、この国会に法案が出てこない。そういうことがあるから国民はますます不安になるわけであります。このことについて、どう考えておられますか。
小泉国務大臣 政府の基本方針を提示していないということは誤解です。はっきりと方向は示しております。抜本改革であるだけに、多くの方の意見を聞こう、診療報酬改定にしても薬価基準の根本的な改革にしても、専門家の意見を聞かなきゃならないということで、国会提出は確かにおくれています。しかし、十二年度を目途に実施するという基本方針は変えておりません。御理解いただきたいと思います。
岡田委員 今大臣がおっしゃったのは、恐らくこの「二十一世紀の医療保険制度(厚生省案)」というこれを言っておられると思います。去年の夏、出ました。私もこれについては一定の評価をいたしました。しかし、この中に出てくるんですね。例えば、いろいろな検討の結果を踏まえ、今後厚生省としては、次期通常国会、つまりこの国会ですよ、次期通常国会に向けて、抜本改革法案の取りまとめに努めると。それが出ていないから言っているわけであります。
政府の方針が一たんは出された。与党の方針も出されました。しかしそれが、例えば薬価制度について言えば、それに対する反対が例えば製薬工業会から出ている、医師会からも出ている。それに対して、やはり足を引っ張られて議論が混迷して、結局結論が出ないという現状じゃないですか。政府としてきちっと方向が出されたのであれば、そういういろいろな御意見に対してきちんと説得をして、そして案をまとめ上げるというのが私は政府の仕事じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
小泉国務大臣 御指摘のとおり、製薬業界でも抵抗が出ております。医師会からも抵抗が出ております。アメリカの一部からも反対が出ております。いかに大きな改革か。しかし、十二年度実施の方針は変えておりません。早く出してまとめるのか、十分じっくり意見を聞いて、十年度に国会に出すか、それは選択の問題だと思います。十二年度実施の方針は変えておりません。
岡田委員 十二年度、十二年度とおっしゃいますが、十一年度と約束をしているわけです。全体は十二年度ですよ、高齢者医療とか、ほかにもいろいろありますから。しかし、全部一遍にできないから、十一年度にまず薬価と診療報酬についてはやるというお約束だから私は申し上げているわけであります。そういういろいろな関係者の調整ができない。参議院選挙に関係ありませんか。私はそういうふうにも思えるわけであります。
それでは次に、年金制度であります。
年金制度については厚生省の方で、五つの選択肢ということで、五つの、AからEまでの案を出されました。私は、出されたことは評価をいたします。国民的議論が可能になりました。しかし、その五つの選択肢を出してもう半年であります。そろそろきちんとした方向性、AからEのうちの大体どの方向でいくのかということは政府が示さないと、白地で議論していってもなかなか集約されないじゃないですか。
しかも、年金制度は五年置きですから、来年の通常国会に法案を出さなきゃいけない。今度の参議院選挙が最後の選挙であります。それまでに政府としてのお考えをきちんと出していただいて、我々も考え方を出して、そして選挙を戦うというのが本来のあり方じゃありませんか。そういったお考えはございませんでしょうか。
小泉国務大臣 これは、今、五つの選択肢を出しております。これは多くの方に評価いただいていると思います。むしろこの中で、選択肢を出さないですぐ厚生省案を出したら、逆の批判が起こったと思います。むしろ、大事な問題だから国民的な議論を喚起しようということで、一年かかって識者とか国民の意見を聞いて、ことしの暮れにまとめる。私は、生煮えの議論よりも、この方が多くの国民の理解を得ているのではないか。
逆に、出さない出さないと言っていますけれども、五つの選択肢を出して今議論をしているところなんです。厚生省は、暮れまでに一つの案にまとめるよう努力しております。その間には、独断ではなくて、各界各層の識者の意見を聞いてまとめる。むしろ、丁寧で親切なやり方だと思います。
岡田委員 意見を聞くのも限度がありまして、もう私は半年たっているというふうに申し上げているわけであります。
例えばこのA案からE案の中で、A案というのがありますね。現行給付水準を維持する、そのかわり保険料は現在の二〇%を三四・三%まで高める。私は、こういう案は現実的じゃないと思う。厚生大臣はどういうふうにこれをお思いか、後でお聞きしたいと思いますが。A案からE案まで全部選択肢で示すのではなくて、一たん示されたのは結構なんですが、半年たった以上、このうちのこれとこれぐらいでどうかという方向性ぐらい、私は政府として出すべき時期に来ていると思うんですね。でないと、全然議論が集約されないじゃありませんか。いかがですか。
小泉国務大臣 まさに御指摘のとおり、これから一つにまとめるのです。いかに厚生省は親切か、丁寧か。現実、非現実と判断していただくのは国民であります。この五つの中でどれが現実的か、今厚生省は識者の方に、つい最近調査を出しました。そうしたら、大体、大方のところ、二案、三案ぐらいで、保険料もこれ以上負担させるのはだめだ、給付も今のままでいいわけはないというような方向に識者の考え方は一番多かった。しかし、五つの案の中から、最終的にはことしの暮れまでには一つの案にまとめて、来年の通常国会に出す予定であります。
岡田委員 厚生大臣の自画自賛も結構なのですけれども、これだけ選択肢が広過ぎて、政府がたくさんのものを出していて、そして半年たっても方向性が出てこないということが国民の将来不安につながっているという、そういう現実を私は申し上げているのであります。政府が親切なのは結構ですけれども、不安をあおってしまってはだめなんです。
そういう意味で、一挙に一本に絞るのじゃなくて、もうそろそろきちんとした方向性を、一つに絞れとは言いませんけれども、あるいは二つ、これとこれぐらいだ、そういう方向を示していく時期が、政治の責任で示す時期が来ている、そういうふうに私は申し上げておきたいと思います。
次に、時間も限られておりますので、公共事業に参ります。
公共事業の中で、先般通りました中央省庁改革基本法の中で、公共事業予算の統合補助金化という話が出てまいります。四十六条であります。そこにはっきりと、国が直接行う公共事業は全国的な見地から必要とされる基礎的または広域的事業の実施に限定し、その他の事業については地方公共団体にゆだねる、個別の補助金にかえて統合的な補助金を交付し、地方公共団体に裁量的に施行させる、明文でそういうふうに書いてありますね。
私がお聞きしたいのは、以前もお聞きしたのですけれども明確な答えがありませんでしたから、きょうは総理にお聞きしたいと思いますが、これをいつ実行されるのかということであります。
御案内のように、この中央省庁再編法案の成立を受けて、これから各省庁の設置法が出てまいりますね。設置法が出てきて新しい大きな役所ができてから、こういった地方移管を議論してもだめなのです。まず地方移管をどこまでやるのかということをきちんと決めて、そしてその上で統合していく、新しい設置法をつくっていくというのが私は物事の順番だと思います。とすれば、来年の通常国会に新しい設置法が出てくるとすれば、もうこの夏しかチャンスはないのですね。それを、総理はおやりになるおつもりがあるかどうか。
私は今、総務庁長官にお聞きしようと思いません。総務庁長官には前お聞きして、いろいろ親切な御答弁をいただいたと思ったのですけれども、後で答弁を見たら余り何も中身がなかった。さすがに経験というのはすごいものだなと思いましたが、総理のこれについての、いつまでにやるのかというはっきりとした御見解をお聞かせいただきたいと思います。
橋本内閣総理大臣 これからこの本部をつくり、その本部の事務局機構を整備し、発足させますまでにまだちょっと、一週間や十日は必要だろうと思いますけれども、できるだけ早くこの本部を、私は基本法の成立を受けてスタートさせたいと今考えております。
その上で、その作業の手順としては、私はこの各省の設置法を整備する段階までに、これは法律案作成作業のことです、法律案作成作業としては、地方分権推進計画、既に国会に御報告をいたしておりますけれども、この地方分権推進計画の中にあります関係する法律案、特にその中心的なものは私は恐らく地方自治法になろうかと思いますけれども、この改正作業の方が法律的には先行すると思います。
作業上はそれが先行してくれませんと、それぞれの省庁の現在持っております権限のうち、どれだけを地方にお渡しするというものをきちんと法的に担保する法律上の仕組みができません。分権推進計画の中での中核をなす地方自治法が、そういう意味では、私は一番、法律案としての作業の順としては急ぐと思っております。
そしてその上で、これはもう私が申し上げるまでもなく議員も御承知でありますけれども、公共事業について、地方への権限移譲ということがまずあり、同時に、国が直接関与する分野を限定した上で、できるだけ統合的な補助金等として地方公共団体にこれを渡すということを書いているわけですから、これは具体的な設置法並びに公共事業関連の法律の改正というものの両方になると思います。
これは恐らく、やはり地方自治法改正案等、分権推進計画関係の法律案の作業を横目で見ながら進めるということになるのではないでしょうか。ちょっとその具体的な作業まで私も考えておりませんでしたので、手順は、今とっさに議員の御質問から考えたことですけれども。
ただ、いずれにしても、これは来年には御審議をいただきたいと考えておる関連の一つの柱でありますから、整合性を持った作業を進めてまいりたい、特に地方分権推進計画の中にある法改正を要する部分と整合性を持ちながら作業を進めていきたい、そう思っております。
岡田委員 今、私の質問に対するお答えはなかったと思うのですね。私は、設置法という新しい省庁の設置法をつくる、そのときに、もう既にそういった地方への分権ができていればそういう設置法になるし、そうでなければ、今の設置法を足し合わせたようなものになって、その上でまた分権をしていくという手順になるから、それはやはり新しい設置法をつくる前に地方への分権をすべきだということを申し上げたわけで、その設置法との関係についての御答弁はなかったように思います。
橋本内閣総理大臣 ですから、実は、地方分権推進計画の中で、地方自治法関係の改正法律案づくりが先行すると冒頭申し上げました。地方分権は当然進めなければなりませんし、それを受けて中央省庁の統廃合というものも行われるわけですから、私、議員の質問を少しまじめにとり過ぎたんでしょうか。
だから、分権推進計画の中で、しかもその中心になる地方自治法というものの改正作業が、法律改正の順序としては一番先行するだろう。これがきちんと決まることによりまして、ほかの地方分権推進計画に盛り込まれております制度全体が動いていくわけですから、そして、それを当然ベースにしながら各省の設置法の作業に入るんだ、当然そういう方向に進めていくと、むしろきちんと私はお答え申し上げたつもりなんですけれども。
岡田委員 最後になりますけれども、この予算委員会の場で、公務員倫理法の問題でありますが、大蔵官僚の不祥事があって、公務員倫理法をぜひつくらなければいけない、こういうことで、総理は私の質問に対しまして、政府みずからが公務員倫理法をつくる責任があるということまでおっしゃった、これは三月十日のことであります。それから三カ月たって、結局会期末ぎりぎりになってこの法案が提出をされた、この国会ではもう審議はできないという状況であります。
私は、あれほどはっきりと国民の前で公務員倫理法をつくると言われた総理の発言と、そして現実に最近になってようやく提案されたということの乖離に非常に驚いております。これは公約違反ではないか、そういうふうにも思うわけであります。
この点について、総理が公務員倫理法についてどのようにお考えか、最後に御見解を簡単に聞かせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
橋本内閣総理大臣 私は、公務員倫理法を提出するということを確かに申し上げました。その上で、公務員の倫理を縛る法律を行政府自身が書いていいものだろうかという迷いを持っておりますということ、これはむしろ議員立法でお願いすべきではないだろうかと悩んでおりますということも率直に申し上げました。そして、その上で、与党とも御相談をしながら、緊密な連携をとって検討を進めてきましたものが、先日、議員立法として提案をされた次第であります。
私どもは、これは政府・与党を挙げての検討の結果だと考えておりますが、法律を成立させていただいた段階においては、当然のことながらこれをきちんと運用に万全を期す、当然でありますけれども、提出をされたという事実自体で、私は、倫理というものへの方向性はきちんと政府・与党の意思として行政に対して示している、成立をすれば当然これを受けて、しかし成立以前の段階でも、倫理の確立に努める責任がある、そのように思っております。
岡田委員 あれほどはっきりお約束をされながら、こういうことになったことは非常に残念だということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。