143回 衆議院・予算委員会
岡田委員 民主党の岡田克也です。
きょうは、限られた時間でありますので、大きく三つの問題についてお聞きをしたいと思います。
まず、経済、景気対策でありますが、具体的な減税の中身でありますとか、あるいは今後予想される補正予算の中身につきましては、別の機会に、具体案が出たところで詳しくお聞きしたいと思いますが、きょうは、そういった議論の前提として幾つか確認しておきたい点がございます。そういう点について、大蔵大臣、そして総理を中心にお聞きをしたいというふうに思っております。
まず第一点、これは昨日もいろいろな委員の方から質問が出て議論になったところでありますけれども、昨年春の九兆円の負担増が景気に及ぼした影響をどう考えるのかということについてお聞きをしたいと思います。
総理は、所信表明演説あるいはそれに対する質疑の中で、景気に対しては従来の、橋本総理と同じトーンでお答えになりました。すなわち、昨年秋以降の金融システムに対する信認の低下、あるいはアジアの通貨、経済危機が予想を上回るものであった、そのことが我が国経済に極めて深刻な影響を及ぼした、こういう答弁をされているわけであります。しかし、昨日議論になりましたように、私は、基本的な今回の景気悪化の発火点といいますか、最初の大きなきっかけが昨年春の九兆円の負担増であった、こういうふうに思っておりますし、従来、橋本総理に対してもそういうことを何度か申し上げてまいりました。
きのう、堺屋経済企画庁長官は、政府の失政であったという閣僚になる前のお考えについて、今も変わっていないということを言われたわけでありますが、これはある意味では世間の常識といいますか、九兆円の負担増というものが景気後退のまず最初にしてそして非常に大きなきっかけになったということは、いわば私は常識ではないかというふうに思うわけであります。しかし、なかなか政府はそのことをお認めにならない。
最近、七月二十九日の日銀総裁の講演というのがございます。読売国際経済懇話会における講演というのがありますが、その講演録を見ましても、日銀総裁もはっきりこういうふうに言っておられます。昨年春以来の景気の停滞は、消費税率引き上げなどの財政面からの影響やアジア通貨、経済情勢の混乱をきっかけとするものでした。つまり、消費税率の引き上げというものが景気の停滞のきっかけになっているということをお認めになっているわけでございます。
この点について、やはり何が原因で現在の不況がもたらされたのかということを明確にいたしませんと、今後政府がとるべき景気対策の中身というものも、そのことによって変わってくることは当然あり得るわけでありますので、その点についてまず大蔵大臣にお聞きしたいと思いますが、昨年春の九兆円の負担増というものが現在の不況の大きな原因になっているのではないか、そういうふうに私は思いますけれども、大蔵大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。
宮澤国務大臣 過去に起こりましたことの何が原因で現在の状況が生まれたかということは、申すまでもなく非常に複雑な問題でありますが、振り返ってみますと、前回の衆議院総選挙の際の国民の雰囲気は、これは各党を通じてさようでございましたけれども、どうも二十一世紀を迎えて日本に閉塞感がある、人口動態も明らかになりましたので、このままでは、何かをしなければならないという主張が、国民もそれを受け入れておられたように思います。したがいまして、党によりまして、消費税を二%上げるということはやむを得ないということで選挙に臨んだ党もございました。国民はそれを半ば受け入れ、半ば疑問に思うといった、そういう選挙でございましたから、いわば改革を各党が目指した選挙であった、リフォームの選挙であったと申し上げてもいいと思います。
したがいまして、消費税の引き上げも、そういう選挙の関連もありまして、まあまあ結果としては受け入れられた、そのあたりまでは、国民が将来を展望して、これは思い切ったことをしなければいけないということをかなり思っておられたように思うのであります。
そういうことを背景にいたしまして、岡田委員の言われましたような幾つかの政策が実現をした、それが昨年の春あたりのことでございます。したがいまして、財政改革といったようなことも、そういう角度から議論をされ決定をされた経緯がございます。
しかし、タイに通貨危機が起こりましたのは八月でございますが、それからそれがインドネシアへ行き、さらに年末には韓国に参りますが、その間に、十一月に三洋証券の倒産等々が起こる、この間に急激に新しい現象があらわれてまいりました。その段階で考えますと、年初に考えた消費税の引き上げ、あるいは特別減税を取りやめるといったような措置、また財政改革からきます健康保険の負担等々は、その段階で考えますと明らかに重荷になっておった、こういうふうに考えざるを得ないかと思います。
したがいまして、二十一世紀を展望してのいわゆる我が国の殊に長期経済計画の危機というものは、問題の提起としては間違いなかったのですけれども、将来に備える余り、国民的な心理が非常に暗くなってしまった。どういうふうに表現したらよろしいのでしょうか、問題は大変先なのだが、しかし今から備えなければならないのだ、そういう政治の呼びかけが、国民としてはあたかももう不安がすぐに来るような、そういう受け取られ方になってしまったとでも申し上げたらよろしいのでしょうか。そういう意味で、岡田委員の御指摘になっておられますことは、私は全く間違いだというふうには思っておりません。選挙のときの雰囲気とそれからその後一年に起こった出来事との間にかなりの急変があって、それが国民心理に影響を及ぼした。
消費税の引き上げがその直接の原因であったかないかについては、まだまだ学者の間にも政府部内にも議論があるように思います。すなわち、昨年の七―九には消費性向は少しよくなっておった、であるから消費税の影響はそこで切れたのだというふうに考える人々もありますが、その後にまた悪くなっておりますから、実は思ったよりは消費税の影響は大きかったというふうに経済企画庁などは白書などではそう言っているように思われますので、その点につきましてもまだ議論は完結していないと思いますが、岡田委員のお出しになりました疑問は、まだ終局的には答えられていないように私は思います。
岡田委員 明確なお答えをいただけなかったわけでありますが、まず一つは、一昨年の衆議院選挙における各党の公約、当時新進党は消費税引き上げ反対ということを述べたわけでありますが、それから、当初のスケジュールで昨年春に上げることは決まっておったということもこれは事実でありますが、そういうことがありながら、しかし景気の現状を見たときに、あえてそれをそのままスケジュールであるからといってやるのか、あるいは、そこでもう少し景気の見通しがはっきりするまで少し待つとか、あるいは、私は消費税だけでなくて九兆円の負担増全体を言っているわけでありますが、所得税の減税を打ち切ることを少し延ばすとか、そういう選択肢は十分あったはずであります。それをやらなかったことがやはり今日の景気の後退を招いた最大の原因になっている、私はそういうふうに考えているところであります。
大蔵大臣は少しぼかして言われたわけでありますけれども、やはり私は、そこのところをしっかり踏まえることがこれからの景気対策を考えていく上で非常に重要である。そこがはっきりしないということが、逆に言いますと、堺屋長官は昨日、官僚というのは過去に行った誤りを訂正しようとしないということを言われましたが、私は、それをそのまま総理を初め閣僚の皆さんに申し上げなければいけない、そういうふうに思うわけでございます。総理は、この九兆円の負担増というものと景気の関係についてどういうふうにお考えでしょうか。
ただし、一言申し上げておきますが、九兆円の負担増が景気後退の原因になったからといって、私は、じゃ消費税を三%に戻せということを言っているものではございません。消費税引き上げには反対をいたしましたけれども、一たん引き上げられた後それをどうするかというのは、これは中長期的に我が国の税制をどうするかという観点もあわせ考えなければいけないわけでありまして、それと逆行するようなことは一たんやってしまったときには控えるべきである、それが民主党の考え方であるということはあわせ申し上げた上で、総理のこの九兆円の負担増についての、景気後退に及ぼした影響についてどう考えておられるかということをお聞きしたいと思います。
小渕内閣総理大臣 当時の橋本内閣の基本的考え方が財政構造改革ということで、その法律制定に専念をしておりまして、その考え方を貫き通そうという大変強い決意が表明されておりまして、そのことによって法律も制定をされ、一部改正をされましたが、執行されてきたということでございますが、その後の日本経済並びに世界の経済の趨勢を考えましたときに、こうした考え方を貫き通すという環境がなかなか厳しくなっておったということは事実であろうと思っております。
したがいまして、そういう時点におきまして、財政再建という立場から考えますと、消費税の導入につきましては、御案内のように先行的に十六兆五千億と言われる三カ年にわたる減税も前々されておりましたので、やや機械的に、当初決められた消費税の導入の方針を貫き通そうという感じがあったのではないかという気がいたしております。
申し上げましたように、その間に諸般の情勢の変化等もございましたので、その時点で経済の動向その他を勘案をしながらこうした税の導入その他全体にわたりまして検討をすべきことではあったかとは思いますけれども、しかし、このことをもってすべてがこの景気後退の原因であるとも言いがたい点もあるのではないかというふうに考えております。
岡田委員 すべてが原因であったとは言えないということのその意味は、九兆円の負担増というものが、あるいは消費税の引き上げというものが景気後退の原因の一つであったということはもうお認めになったというふうに理解をさせていただきたいと思います。
じゃ、次に参りますが、この予算委員会の場でことしの二月、三月ごろ、景気の見通しについて随分当時の経済企画庁長官あるいは総理と議論をさせていただきました。三月になるまで経済企画庁長官は、桜の咲くころには景気は回復基調に乗る、三月末でクレジットクランチが解消され、そして減税の効果も出てきて回復基調に乗るんだということを何度も繰り返され、もちろんそれは経済企画庁長官だけではなくて、当時の橋本総理もそのことについて異論を唱えられなかったわけでありますから、基本的には同じ考え方であった、こういうふうに思うわけであります。
しかし、それが明らかな誤りであったということは、事実が示しているわけでございます。この二月、三月の当時の政府の景気判断の誤りということについて、大蔵大臣はどのように評価されますか。
宮澤国務大臣 現実の問題として申し上げれば、桜が咲くころには景気は回復基調に入るであろうと言われました閣僚の御発言があるとすれば、現実には、桜は散りましたが景気は回復していないということだと思います。
岡田委員 そのことについて、じゃ、総理にお聞きしたいと思いますけれども、現実に、この予算委員会の場で何度も述べられたことが実現しなかった、そのことについて、それは確かにそのとおりだというのは今の大蔵大臣のお答えでありますが、総理として、そういう誤った見通しを述べ続けたことについてどのようにお考えでしょうか。
小渕内閣総理大臣 前内閣の閣僚席に私も座っておりまして、岡田委員と当時の経企庁長官との質疑応答、お聞きをいたしておりましたが、経企庁長官としては、当時の経企庁のもろもろの資料を判断いたしまして、そのような形で景気は回復し、桜の咲くころということで国民の皆さんにもお示しをされたわけですが、結果的にそのとおりにならなかったということにつきましては、まことに残念のきわみだと思っております。
岡田委員 もう少し率直なお答えを期待していたわけでありますが、当時も恐らく、経済企画庁長官も含めて閣僚の皆さんは、景気がそんな桜の咲くころに回復するとは思っていなかった。しかし、そう言わないと、景気対策を即座にやる、つまり当初予算を修正するとかそういうことになる。しかし、そのことは財政構造改革法があってできない。そういう自縄自縛の中でそういう苦しい答弁を続けられたというのが実態だろう、私はこういうふうに思うわけでございます。
私は、あえてこういう過去のことを二つお聞きいたしましたのは、やはり率直に、総理初め閣僚の皆さんが誤りは誤り、間違いは間違いということでお認めになるところから本当の議論が始まるだろう、こういうふうに思ってお聞きをしたわけでございますが、なかなかはっきりしたお答えがいただけなかったのは大変残念なことでございます。
それじゃ、次に参りますが、減税の景気浮揚効果というものについて今の内閣はどういうふうにお考えなのか、お聞きをしたいと思います。
前内閣におきましては、減税というのは基本的に公共投資に対して景気浮揚効果は劣る、あるいは当時の自民党の加藤幹事長などは、減税などをやってもほとんど意味がないというような趣旨のお話が多かったわけでありますが、小渕総理は、六兆円の、あるいは六兆円を上回る減税ということを打ち出されたわけでありますから、当然減税が景気浮揚に効果があるという前提でそういう対策を打ち出されたと思うわけであります。ということは、従来の政府の考え方を変えるということに私はなるのではないかと思うのですが、基本的に所得税の減税あるいは法人税の減税というものと景気回復効果というものについてどのようにお考えなのか、お述べをいただきたいと思います。
小渕内閣総理大臣 減税することが景気に影響がないということについての御主張があられるように聞いておりますが、私自身は、少なくとも、マクロに申し上げて、この減税ということによりまして国民の懐が豊かになるということは、そのことは必ず消費の拡大にもつながり、そして景気の回復にもつながるという認識をいたしております。それだけですべてが解決するとは思っておりませんが、有力な一つの手段であるというふうに考えております。
岡田委員 減税すれば、すべて貯金に回るのでない限り景気効果があることは事実なんですが、基本的に、そのことについて、今の総理の御答弁はその範囲にとどまっていると思うのですが、もう少し積極的な景気浮揚効果といいますか景気対策としての減税の位置づけというものが私はあってしかるべきだし、また、そういうものがあるからこそ六兆円の減税というものを言われたと思いますので、その点について明確に述べていただきたいと思います。
宮澤国務大臣 我が国は今かなり成熟した消費社会になっておりますけれども、ここでその一単位の資金あるいは資源をどこに投入すべきか、政府であるか、企業であるか、家計であるかという選択の際に、私は明らかに家計だというふうに考えます。それは、常にそうであると申し上げているのではございませんけれども、仮に消費性向が七〇を前後するということは、それは確かに消費に回る率は高くない。けれども、こういう状況において、政府部門に投入するか、企業に投入するか、家計かといえば、私はやはり家計だというふうに思います。
岡田委員 それでは、次に財政構造改革法について若干お聞きしたいというふうに思っております。
まず、財政構造改革法の改正問題について、総理は次期通常国会にそれを提出するというふうに述べておられるわけでありますが、私は、何で次期通常国会なのかという気がするわけであります。
つまり、これから来年度予算について政府は予算編成されるわけでありますが、当然、政府案というものは、通常であれば年末ないし年の初めには閣議決定される、こういうことになるわけであります。そして、予算の審議というものも国会にかかってくる。しかし、それは、今の財政構造改革法との関係でいえば、矛盾をはらむといいますか、端的に言えば違反するものであるかもしれない、こういうことだろうと思います。
したがって、私は、順序としては、まずこの財政構造改革法の改正というものが国会にかかり、そしてその改正が成った上で予算編成をしていくというのが物事の順序だろうと思うわけでありますが、そういう意味で、通常国会に改正案を提出するというのは遅いのではないか、こういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
小渕内閣総理大臣 岡田委員のお考えも一つかとは思いますけれども、予算編成の作業におきまして、現行の財政構造改革法の個々の規定にとらわれることなく、全力を尽くして景気の回復に資する予算を編成していく決意でございます。
そこで、財政構造改革法の凍結の最終的内容は、予算編成過程におきまして、景気回復のための税制改正を含めた具体的な施策の内容等の議論を踏まえて検討してまいりたい、こう考えておりまして、そういう意味で、予算編成を終えまして、新しい予算を提出するという過程の中で、種々税制改正その他の問題がございますので、そうしたことを十分見きわめて、当然のことでございますが、予算を国会を通過させるためには、その予算の編成の前提となります財革法ということがございますので、これは決着を図らなければならないかと思っておりますが、法的に申し上げれば、予算を国会にお出しをして、そして同時にまた財革法を国会にお願いをして、同時にこれが通過できる、こういうこととしてこれから進めさせていただきたい、こう考えております。
岡田委員 私は、基本的に、まず財革法の改正がなければ予算の審議はできないのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。この点はまたそのときに詳しく議論させていただきたいと思いますが、それでは財革法の凍結ということの具体的意味についてお聞きをしたいと思います。
これから御検討されるということだろうと思いますが、基本的に凍結ということはどういうことなのか。全面的にそれを停止するということを意図しておられるのか、あるいは部分的には生かすものも考えておられるのか。
私の考え方を申し上げさせていただきますと、今の財政構造改革法というのはいろいろな中身を含んでいるわけでございまして、例えばその財革法の中で「目的」のところに書いてありますが、各歳出分野における改革の基本方針、集中改革期間における国の一般会計の主要な経費に係る量的縮減目標、政府が講ずべき制度改革、こういうものについて、それぞれの項目ごとに規定されているわけでありますが、私はその中で、例えばこの制度改革の部分などは、むしろ、全面停止ということで一たん殺してしまうのではなくて、生かしておかなきゃいけない部分もあるんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。
この財革法については私どもいろいろな問題があるというふうに思っておりますが、単なる予算の縮減の部分と、そして将来を見据えた構造改革の部分に大きく言うと分かれる。その構造改革の部分について、全部がこのままでいいと私は思いませんけれども、しかし、かなり残すべき部分もあるんじゃないか。そういう観点で見ると、この凍結ということの意味というのは、中身というのはどういうことなのだろうかということを今お伺いしておく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
宮澤国務大臣 前段で、先ほど総理がお答えになられましたが、岡田委員は、今この凍結についての法案を提出して御審議を仰ぐべきだ、こういう御主張をされまして、私はそれも一つの御意見であると思っています。
ただ、岡田委員は行政の御経験がおありになりますので、その立場から申しますと、仮にただいま凍結法を御審議願うといたしますと、なぜだというお尋ねが必ずあると思います。それは、減税を考えておりますとか歳出を考えておりますとか申し上げますけれども、そのものは具体的でございませんから、そのものを示せとおっしゃいましても申し上げることができない。これに反しまして、予算提案時期と同時にいたしますれば、このような予算でございますから、あるいはこのような減税を考えておりますから、したがいまして、これを凍結しなければなりませんという御説明が行政府としてはできる。今ではそのことを具体的に御説明することができないという問題がありますことも御理解を願いたいと思います。
それから、後のお尋ねでございますが、これはこれから閣内あるいは政府・与党で検討いたしまして、凍結なのか廃止なのか、あるいはそれをどのように考えるかということは、御指摘のようにこれからの問題でございます。
今おっしゃいました、この改革法の中に将来を展望いたしまして制度改正を申しておるところが何点かございまして、そのうちのあるものは、例えば年金のように既に具体的な検討に入っておるというものもございまして、この長期目的そのものは恐らくこれからもこれを追求していかなければならないであろう。あるいはまた、平成何年に予算の赤字依存をGDPの何%にするというようなことも、これは長期の目標として、数字そのものはともかく、やはり持っていなければならないという議論もあろうと思います。したがいまして、これをどのように凍結するのか、あるいは場合によって廃止するのか、これから政府・与党の中で年末まで検討いたさなければならない。
いずれにしても、それは最終的には総理の指示によるものでございますが、検討はまだ途中の段階でございます。
岡田委員 今の御答弁の中で、来年度予算あるいは税制改正との関係をお述べになったわけでありますが、私は、この財革法というのは一年限りの予算についてのものではございませんので、やはり、まず基本的な考え方のところで財革法の凍結というのであれば、そこの議論をきちんとした上で来年度予算というものは出てくる、それが物事の順序だろう、こういうふうに思うわけでございます。
いずれにしましても、次の通常国会で、予算案と、そしてこの法改正が出てきたときに、どういう順序でそれを審議していくべきかということは非常に重要な問題でありますので、そのことは指摘をしておきたいというふうに思っております。
それから、今議論が少し出ましたので確認しておきたいと思いますが、社会保障制度改革、特に医療制度改革や年金改革につきまして、当初の話では来年度に改正案を出すということが、当時の小泉厚生大臣から何度もそういう発言をいただいているわけでございますが、今回の所信表明演説を見ますと、いろいろなものについて期限を書いてある中で、社会保障制度改革、特に年金、医療の改革については、具体的にいつまでにそれをやるということが総理の所信表明演説の中で出てまいりません。
ここについて、念のため確認をしておきたいと思いますが、当初予定どおり来年度に年金制度改革、そして医療制度改革のうちの、これは全部ではないと思いますが、一部について予定どおり国会に改正案を提出する、こういうことでよろしいでしょうね。
宮下国務大臣 社会保障制度改革につきましては、その内容は、今委員御指摘のように、まず年金改革でございます。これは、財政再計算期を十一年に控えておりまして、五年ごとの見直しをやらざるを得ないということで今準備中でございまして、年金審議会において鋭意検討中でありますが、九月にはその意見を求めて、そして厚生省案を秋には出して、それを広く国民的な議論のもとで本年中に取りまとめていきたい、そして、法案としては来年の通常国会にはこれを上程したいというのが年金問題でございます。
医療問題につきましては、これはもう昨年来ずっと検討が続けられまして、昨年の九月から一部改定が行われておりますけれども、なお抜本的な改革の必要性が指摘されております。
そこで、これらにつきましては、特に診療報酬体系の問題でありますとか、薬価の問題でありますとか、診療提供の問題でございますとか、いろいろ非常に国民生活に関係があり、国民医療を確保するために重要な視点が多うございますので、これらは引き続き今検討を医療保険福祉審議会を中心にやらさせていただいております。
しかし、これも平成十二年から実施をしたいということでございますから、できるだけ十一年中に法案を出して、一括してできるかどうか、逐次できるものからやるかどうか、これらを含めまして検討をさせていただくということになっております。
それから、介護保険制度については、御案内のように、既に二〇〇〇年からスタートを予定しておりますので、その実施体制について万全を期していくということでございます。
岡田委員 今、年金は来年やる、来年の国会に出すということをはっきり言われたと思いますが、医療制度改革については、できるだけという表現を使われました。
しかし、これは、特に診療報酬体系の見直しの問題、そして薬価の問題は、昨年医療費の値上げをしたときに、本来であればことしの通常国会に出すという話だったんですね。それが延び延びになって、しかし小泉大臣は、次期通常国会に出すということを明言されました。それがまた、今のお話ですと少し条件がついた、できるだけという話になったように思いますが、これは、国民に対して負担増をする、本来であればその負担増をするときに改革もすべきなんだけれども、若干ずれる、そこは申しわけないけれどもきちんとやりますからという約束のもとで始まった話でありまして、それが一年延び、また一年延びるということになりますと、これは政府としての重大な公約違反だということになります。もう少しはっきり、診療報酬あるいは薬価については次期通常国会に法案を出すという従来の厚生大臣の答弁について、そのとおりであるということを御答弁いただけませんでしょうか。
宮下国務大臣 基本的には今委員のおっしゃられたとおりでございまして、私どもとしては、平成十二年から抜本的な改革を実施したい、原則として実施したいというように考えております。
ただ、その時期その他につきましては、診療報酬体系の見直し、薬価基準の問題等々いろいろ問題もございますので、十分議論をして、そして本当に公平、公正な国民医療が確保できるような方向で、しかも負担も伴うことでございますから、これらをよく納得する形で合意形成を得てやっていきたい。
平成十二年には基本的に実施を予定した法案を、したがって十一年中には出すということになろうかと存じますが、そういう考えでございます。
岡田委員 きょうは時間も限られておりますからこれ以上追及しませんが、十一年中に出すということで、通常国会に出すというお約束はいただけなかったわけでありますが、これは当時の、自民党、そして社民党、さきがけ、与党三党が国民に対して約束したことでありますから、もしこれが守られないということになりますと、自民党はもちろんでありますが、他の二党も含めて、国民に対してした約束を破ったということになる、そういうことを指摘をしておきたいと思います。
次に、外交・安全保障についてお聞きをしたいと思います。
まず、核軍縮の問題でありますが、さきの代表質問におきまして、池田議員の質問に対して総理がお答えになっているわけでありますが、池田議員の核の保有国に対していかなる対応を日本としてするつもりかという質問に対して、総理はいろいろお答えになっているわけであります。特に、ロンドンにおけるG8のときにおいて、四つの核保有国それからそれ以外の四カ国で議論をした、こういうことを言っておられるわけでありますが、必ずしもその趣旨が明確ではございません。
私は、もちろんインド、パキスタンの問題もありますけれども、その背景にあるのは、核保有国の核軍縮の努力が十分でない、義務を果たしていないということが当然あるわけでありまして、その中でも、先般、イギリスについてはみずから保有核について削減をする、そういう決定をしたと聞いておりますけれども、やはり二大核保有国である米ロがどのように真剣にみずからの核軍縮に取り組むかということが非常に重要な点になってくると思います。
この点について、総理は基本的にどのようにお考えか、お聞きをしたいと思います。
小渕内閣総理大臣 御指摘のように、我が国といたしまして、唯一の被爆国としての立場から申し上げましても、現在の世界における核保有国の核の削減を求めて、強くこれを主張していかなければならない立場でございます。
そこで、従来は、御案内のようにNPTとかCTBTとか、あるいはカットオフ条約、こうしたものを通じまして、それぞれの国々に対して現実的な対応を求めてきたところでございますが、特にインド、パキスタンにおきまする核実験の強行というようなこともございまして、ますますもって今日、核軍縮あるいはまた核不拡散の状況について日本としての努力がなされなければならないということは当然のことだろうというふうに思っております。
そこで、先ほどお話にありましたように、インド、パキスタンの核実験が行われました後、核保有国が集まりましてのジュネーブの会議、あるいはまたG8を中心にいたしました国々におきまして、この印パの核実験に対する批判もさることながら、そのことにとどまらず、こうしたことを契機に、核保有五大国の状況につきまして、具体的にこれからその削減を求めて努力をしていかなければならない。そのためには当然、米ロにおきましても、STARTの実行ということで現在も努力をいたしておるところでございますが、START?につきましても、まだロシアの批准は得られないというような状況でございますので、これをさらに推進のできるように、米ロに対しましても、日本としても事あるたびに我が国の立場を主張し、その努力を慫慂してまいっておるところでございます。
具体的なことと申されましたが、このG8のときに、御案内のようにG8のみならず、かつて核を保有しようと試みた国、あるいはまたその能力からいって核製造の力を持たれる国、こういう国々がある意味で一堂に会して、そうした考え方をなぜ遂行しているかという考え方をもって、現在の保有国に対してのプレッシャーをかけることができないかというようなことも含めまして、私自身も外務大臣時代、ブラジル、あるいはアルゼンチン、あるいは南ア、あるいはウクライナ、そうした国々と協調しながら、この五つの国に対しましても、その削減について努力を強く要請をしておるところでございまして、そうしたことを通じながら、それぞれの国が核削減についての努力をさらに一層加速していただきたい、こう願っておるわけでございます。
イギリスは先般、みずからの核につきましてもその数量を減少させるという方向も示しておりますので、引き続いて我が国の立場を強く主張しながら努力をいたしていきたい、こう考えております。
岡田委員 なかなか質問に対して明確なお答えをいただけないわけですが、私は、核不拡散の話を聞いたわけじゃなくて、核軍縮の話を聞いているわけでありまして、その中でも特にポイントは米ロだろう、それに対してどういう働きかけを具体的にされるのか、こういうことをお聞きしているわけであります。
確かに今のSTARTIIについてはロシアの議会がポイントですから、それはそれでいいわけですけれども、その先のことを考えれば、もうSTARTIIIについても、かつて米ロの首脳間では基本的なフレームワークが合意されているわけでありますし、現実にはロシアがそんなにたくさんの核兵器を保有していくということはいろんな事情で難しくなっているということを考えれば、やはりポイントはアメリカであります。そして、そのアメリカに対して日本がどういう働きかけをしていくのかということについて私は総理の御決意をお聞きしたい、こういうふうに思っているわけであります。
一部には、日本はアメリカの核の傘のもとにあるから物が言えないんだとか、こういう話もございます。私はそんなことはないというふうに思うわけでありますが、この点も含めて総理に、アメリカの核軍縮を求めていくということについて基本的にどのようなお考えなのか、お聞きをしたいと思います。
小渕内閣総理大臣 日本が、最大の核保有国であるアメリカに対しましても、大きな世界の流れの中で核軍縮に向けてそれぞれの国が努力しておること、その中で米国に対しましても一層のその努力を要請をいたしていく、これは、私自身もオルブライト国務長官との話の中にも常にこのことも申し上げておるわけでございまして、機会がありましたら、それこそ最高首脳同士の会談等がございますれば、こうした問題も取り上げてまいりたいと思っております。
一方、これはアメリカだけでなくて、ロシアの方の対応も必要じゃないか、これは当然相対的なものでございますので、そうした観点に立ってロシアに対しての対応もしなきゃならぬと思っておりますが、日本といたしましては、御承知かと思いますが、旧ソ連諸国に対する核兵器の解体に対して総額一億ドルの支援を今進めておるところでございまして、既にこの半額以上のものを提供しながらその努力をいたしております。
また、こうした観点に立ちまして、ことしの秋の国連総会、核軍縮・不拡散の道筋を示すような決議案等につきましても、日本政府として真剣に今考えておるところでございます。
岡田委員 時間も限られておりますので次に参りたいと思いますが、江沢民国家主席が訪日されるということになっておりますが、その際の重要な議論のポイントとして、一つは、この国会でも議論されると思います周辺事態法との関係というものがあると思います。
こういうことは我々想定したくないわけでありますが、もし台湾海峡有事ということになって、そしてそれに対して米軍が関与していくということになった場合に我が国はどうするのか、こういう問題があります。それは、そのときになってみないとわからないというのが私は答えだろうと思いますが、中国側は、そもそも周辺事態法の適用というものは台湾海峡あるいは中台問題にはないんだということを求めているわけでありますが、この点について総理はどのようにお答えになるつもりかというのが第一点であります。
あわせまして、先般クリントン大統領が訪中しました際に、首脳会談の議論の中で三つのノーということが議論になったと報道されておりますが、台湾の独立ということに対して我が国は基本的にどのようなスタンスをとっているのか、この点についてもお聞きをしておきたいと思います。
高村国務大臣 周辺事態というのは、政府が何度も御説明したように、地理的概念ではなくて、事態の性質に着目した概念でありますので、この地域は入るとかあるいは入らないとかそういうことは一概に言えないということでございます。そのように御理解をいただきたい、こう思います。
それから、台湾の独立については、日本政府としては、既にそういうことは支持しないということは言ったことはあるし、そういうことだと思います。
岡田委員 周辺事態法の関係でありますが、周辺事態は地理的概念でないと。私は地理的概念だと思いますが、いずれにしても、地理的概念ではないとしても、今申し上げましたように、台湾海峡で先ほど言ったような事態が現実に起きた場合に、この周辺事態法の適用というのは頭からないのか。それとも、実際にそれに基づいて我が国が後方支援するとかしないとか、それはそのときの判断でありますけれども、しかし、頭からないんじゃなくて、基本的にはこの法律の適用範囲といいますか、あるいは適用というものが抽象的にはあるのか、そこのところだろうと思うのですが、いかがなんでしょうか。
高村国務大臣 我が国の台湾に対する認識というのは日中共同声明で示されたとおりでありまして、そして中国政府は、台湾の問題というのは中国人同士の問題で、平和的に解決するという意思を持っているわけでありまして、日本としてもそういうことを強く期待している。そういう状況の中にあって、事態の性質に着目した概念でありますから、そういうことの可能性があるのかないのか、そういうことについて答えることが必ずしも適当でない、こういうふうに思っております。
岡田委員 恐らく、今の答弁ではだれも納得しないだろうというふうに思います。
いずれにしましても、例えばこの周辺事態法というのが、国と国との間の争いという場合だけではなくて、一国の間の問題であっても、それが我が国の平和と安全に重大な影響を及ぼすということになれば、それは我が国としては無関心でいられないわけですから、どこまで我が国が行動するかということは別にして、抽象的にはこの法律の適用というものがそういう場合にもあるんだというふうに考えるべきではないかというふうに私は思います。
そういう観点で考えていったときに、この中台の問題というのもそういう一般論の中で処理できるのではないか、こういうふうに考えておりますが、いずれにしても、ここはもう少しわかりやすい説明をしないと、中国もわからないと思いますし、台湾もわからないと思いますし、国民もわからない、こういうふうに思いますので、また機会を改めて詳しくお聞きをしたい、こういうふうに思います。
最後に、時間が参りましたので、公共事業の地方分権について一言お聞きをしておきたいというふうに思います。
地方分権推進委員会が第五次勧告に向けていろいろな議論をしているということが報道されております。そういう中で、私は、中央省庁改革基本法の議論をしたときに、やはり地方分権というものをまず進めて、その上で各省の設置法というものを議論しないと、一たん次の通常国会に各省設置法が出てきてしまって、それから地方分権を議論しても恐らく間に合わないだろう、こういうことで議論をしたことがあるわけです。
報道によりますと、例えば国道についても、一号から五十八号までは国直轄にするが、その他のものについては都道府県に移管をするとか、そういう議論もされているようでありますし、それから私は、補助金について言えば、農業関係の土地改良とか、あるいは集落排水などは国が箇所づけをする必要は全然ないのではないか、もう都道府県に任せたらどうか、こういうふうに思うわけですけれども、これを今地方分権推進委員会と各省の設置法に任せておきますと、なかなか当初の目的とするところが達成できないと思うわけであります。
そういう意味で、総理に基本的なここの考え方についてこの場でお聞きをしておかなければ、あるいは総理がこの点についてリーダーシップを今発揮しないと、地方分権というのはできないと私は思いますので、一言お考えを聞かせていただきたいと思います。
小渕内閣総理大臣 公共事業につきまして、国と地方が適切な役割分担のもとで協調、協力して事務を進めることが必要であるという観点から、これまでも地方への権限移譲、補助金等の整理合理化などを進めてきておるところでございます。
中央省庁改革基本法におきまして、このような観点等も含めまして、国が直接行うものは、全国的な政策及び計画の企画立案及び全国的な見地から必要とされる基礎的または広域的事業の実施に限定し、その他の事業につきまして地方公共団体にゆだねていくことを基本とすることを規定しているところでありまして、この方針に従いまして見直しを行ってまいりたいと思いますが、今岡田委員御指摘のように、現在、地方分権推進委員会におきまして、種々勧告をいたすべく検討を進められておるようでございます。随時私のもとにもこれが届けられつつありますが、各省庁間におきまして、こうした委員会におきまして調整もされておるやに聞いておりますが、私といたしましても、こうした推移も十分見守らせていただきながらリーダーシップを発揮させていただきたい、こう思っております。
岡田委員 余り長く見守っておりますと、こういうものはお役所とそして権限の余りない委員会の皆さんとの交渉事ですから、結局お役所の思うがままになってしまう。そこでやはり求められるのは総理のリーダーシップであるということを最後に申し上げて、終わりたいと思います。
ありがとうございました。