143回 衆議院・商工委員会金融安定化に関する特別委員会連合審査会
岡田委員 民主党の岡田克也です。
私の方で、今政府の方から出されております中小企業信用保険法の一部を改正する法律案、それから野党提案の信用保証協会法等の一部を改正する法律案について、それぞれ質問したいと思います。
まず、質問に先立って、通産大臣の基本的な御認識を聞いておきたいと思いますが、両法案が出てきた背景にあるのは、現下の景気の現状、そしてとりわけ中小企業に対する金融機関の貸し渋りという現実を踏まえてこの法案は出てきたと思いますが、中小企業に対する貸し渋りの現状について通産大臣はどのように認識しておられるか、お聞きしておきたいと思います。
与謝野国務大臣 現下の不況並びに金融システムに対する不安から起きております信用収縮の影響を最も受けておりますのは、私は中小企業だろうと考えております。
中小企業庁を中心に八月にきちんとした調査をやりました結果、民間金融機関から融資を受けている中小企業のうち、貸し渋りを受けているということを答えた方が三割を超えております。そういうことで、貸し渋りの状況というのは依然改善されていない、大変深刻な状況にある、そのように認識をしております。
岡田委員 どの程度深刻な状況にあるかということを、通産大臣の御認識をお聞きしたいと思うのですが、私どもも当然、週末に地元に戻ればいろいろな声が聞こえてくるわけでありまして、最近自殺が多いというようなこともよく言われるわけですが、私の選挙区でも先般、私のよく存じ上げていたある会社の社長さんが自殺をいたしました。結果的にはそのことによって保険金がおりまして借金が払われた、こういうことがございました。それから、たまたま私の中学校の同級生に、何とか資金繰りというか新規融資をしてほしいということでいろいろ当たったのですが、例えば信用保証協会の枠がもう目いっぱいになっている、そういう状況の中でなかなか新しく貸してくれるところはない、こういうこともございました。
これは一つの例なんですが、今極めて深刻な、戦後未曾有の厳しい状況にあるのじゃないかというのが私の実感でございますが、そのあたりについて通産大臣の御認識をお聞きしたいと思います。
与謝野国務大臣 先生も地元でそういう例をたくさん知っておられると思いますし、私の地元でも、五十万円足りないから手形が落ちない、そのために倒産するかもしれない、そういう危機的なところまで追い込まれる中小企業が非常に多い。
そういう中で、私ども、政府としてできますことは今まで精いっぱいやってきたつもりでございます。これは政府関係の三金融機関に対して資金量を確保すること等でございますけれども、それでも到底間に合わない。したがいまして、新しい観点から、信用保証協会の充実を図って、やはり民間金融機関から中小企業が資金を借り入れる場合、担保だ、保証人だと大変やかましいことを言われます。そういう中で、保証協会の充実を図って、保証協会が相当程度まで保証ができるということを確保しようとしたのが、今回の中小企業に対する貸し渋りに対するいろいろな大綱、対策でございます。そういう一連の中で、やはり今御審議をいただいております信用保険法の一部を改正するということも必要なこととなってまいりました。
先生が御指摘のように、貸し渋りというのは我々が想像している以上に実体経済の中で進んでいるということを我々本当に十分わかった上であらゆる対策を講じていかなければならないというのは、先生のお考えと私は同じでございます。
岡田委員 それでは、鈴木議員の方にも同じ質問をしたいと思いますが、今の貸し渋りの状況をどのように認識しておられるか。
それと、貸し渋りというのは一つの現象だと思いますが、なぜこういうことになったのかということもあわせてお聞きしたいと思います。
鈴木(淑)議員 岡田委員の御指摘のとおり、私どもも、現在の中小企業に対する深刻な貸し渋りの現状を深く憂慮しているわけでございます。
委員御質問の、なぜこんなことになったんだろうかという点でございますが、当初、政府におかれましては、これは資金が足りない、もっと端的に言えば資本が足りない。自己資本比率規制が早期是正措置とともに四月から入ったものですから、この関係で分母を小さくしたくて抑えているという御理解であったようでございますが、その御理解のもとに、三月に、例の金融安定化緊急措置法に基づいて二兆円弱、主要銀行に資本注入をしましたところが、目に見えた効果がない。人によっては、実はもっと減ったんだろう、それがこの程度にとどまったのは効果があったとおっしゃいますが、素直に見て効果がなかった。
私は、この原因は、実は自己資本比率の問題だけじゃなくて、あと二つほかに原因があって貸し渋りが起きていると思うんですね。そこを見落としているというふうに思います。
二つというのは何かといえば、一つは、四月に同時に外為法の抜本改正でビッグバンが本格的に始動したわけですね。そうしますと、効率を高めなければいけない。端的に言えば、自己資本比率は上げたいが自己資本の収益率、ROEは下げるわけにいかない。そうしたら、両方一遍に上げようと思ったら、融資構造の合理化、そして効率的な融資にどんどん絞り込んでいく、これをやると二つの比率は両方上がるわけですね。それを志向し始めた。それからもう一つは、不良債権の早期処理をしなきゃいかぬ。これはもう、ROEと自己資本比率、両方どんと下げるわけですから。
こういう矛盾した三つのことを同時に銀行に要請している。それに対する答えとして出てきているのが貸し渋りだというふうに考えますので、単純な資本注入で解決するような問題ではないと考えております。
このたび、信用保証協会の保証能力の強化を貸し渋り対策として、私ども一番最初に予算委員会の席上で野田幹事長がこういう構想があるというふうに申し上げたと思うんですが、これを考えまして、政府におかれましても同じ考えの政策をおとりになる、大変結構だと思っておりますが、この保証能力の強化というのは単純な資本注入と違いまして、御承知かと思いますが、保証がつきますとリスクレシオが下がりますので、一般の貸し出しのときほど自己資本比率は下がらないのですね。だから、ROEを上げ、自己資本比率を上げ、両方上げるという観点からいうと、保証で貸し渋り対策をするというのは単純な資本注入よりはるかに効果のあるものだと考えています。
岡田委員 今、鈴木議員は三つの理由を挙げられたわけですが、私は、それに加えて、その大前提としてあるのが実体経済の悪化だろうと思いますね。そういう実体経済の悪化の中で、借り手の体質も非常に、経営体質も弱っておりますから、そのことも当然のことながら貸し渋りの根本原因だ。そういう意味では、やはり現在の政府の経済政策の誤りといいますか、現在のと言うべきなのかあるいは前政権のと言うべきなのかということはあると思いますけれども、やはりそれが根本的原因であるということは指摘をしておかなければいけないというふうに思います。
そこで、通産大臣にお聞きしますが、今回のこの中小企業信用保険法の一部を改正する法律案で、無担保保険については保険価額の限度額を三千五百万円を五千万円に、特別小口保険については七百五十万円を一千万円に引き上げる、こういうことでございますが、このことによってどの程度の貸し渋り対策といいますか、あるいは新規貸し出し増というものが期待をできるのか、お聞きしたいと思います。
鴇田政府委員 お答えいたします。
政府といたしましては、中小企業等に対する貸し渋り対策を、昨年の秋以来、累次の経済対策において講じてきたところでございます。
保証協会の保証承諾額は前年同期比で約一〇%程度今年度に入ってから動いておりますが、今回の法律改正によりまして限度額が引き上げられることによって、より使いやすい制度に変わりますので、数量的には申し上げられませんが、これがさらに増加していくことと期待をしております。
もちろん、先般閣議決定をいたしました中小企業等貸し渋り対策大綱の中には、別途特別の保証制度、二十兆円の保証制度を、実際これから制度設計をして発足することにいたしておりますが、これらの措置も相まちまして、合計で二十兆円の保証規模に対応できるものと考えているところであります。
岡田委員 その際、予算措置というのは当然必要になってくると思うんですが、どの程度の予算を、追加予算というものを考えておられるのでしょうか。
与謝野国務大臣 ただいま申し上げました二十兆というのは、幾つか前提がございます。
それは、現在は、保証協会が保証料をいただきますと、保証協会が保証料の六、保険公庫が保証料の四をとりますが、逆に、代位弁済をしますと、最終的には保証協会が二、保険公庫が八負担することになっております。したがいまして、最終的な姿としては、事故の二〇%を保証協会が負担をして、なおかつ保険公庫が八〇%を負担する、そういう仕組みになっております。この仕組みは今回も残します。
二十兆ということを申し上げましたのは、私どもは大体二千億の中小企業予算を要求し、これを各県の保証協会に県を通じて注入いたしたい。そういうことになりますとどういうことかと申しますと、仮にそれが全部事故に遭ったといたしますと、保険公庫には今後その都度必要に応じて資金を投入していかなきゃいけない。マキシマムそれは八千億でございまして、二千億足す八千億ということに最後の最後にはなるんだろうと思っております。
そこで、事故率、通常ですと二%ぐらいを想定して物事をやっております。実績も二%を実は割っておりますが、今回は、仮に事故率を一〇%まで上げる、そして事故が起きたけれども最後にはその半分ぐらいが回収できたということになりますと、総保証額の五%が最終的には返ってこないという仮に計算をいたしますと、二+兆の五%ですから一兆円、一兆円を八対二で分けますと、八千億が保険公庫、二千億が保証協会ということで、二千億で約二十兆の保証ができるという仕組みはただいま御説明したような構図になっている。したがいまして、予算の要求の規模は二千億というふうに御理解をしていただきたい。
ただ、事故率とか回収率というのはあくまでも想定した数字でございますから、計算の前提に使った仮置きの数字だ、そのように御理解をいただければと思っております。
岡田委員 今、政府の方から政府の法案についての基本的な考え方の御説明があったわけですが、鈴木議員の方にちょっとお聞きをしたいと思います。
今回の政府案の中で提案されております無担保保険と特別小口保険の限度額の引き上げにつきまして、野党案の方にはその旨の規定がないように思いますが、基本的にこのことについてどういうふうに考えておられるのか、確認をしておきたいと思います。
鈴木(淑)議員 私どもの案は、御承知のように、貸し渋り対策として、政府案と同じような今の中小企業保険の枠組みでの増強と並んで、破綻金融機関の借り手で他行にシフトできない借り手を支援するための特別の枠組みと、二つ入っているわけでございます。その特別の枠組みの方では、岡田委員御承知のように、融資限度額を思い切って三億円という非常に高いところに置いているわけでございますが、従来からあります中小企業保険の枠組みについては、特別の言及をしていないというのは御指摘のとおりでございます。
これについては、私は、政府案が若干引き上げたというのは一歩前進だなというふうに思っておりまして、そのことについて修正するという考え方、あるいは将来もっと引き上げなきゃいかぬのじゃないか、我々は別途三億円という枠も頭に入れているわけですから、貸し渋りの場合ももう少し引き上げなきゃいけないかもしれないということは、大いに野党三会派の中で議論すべき課題だと思っております。
岡田委員 それじゃ、鈴木議員に質問したいと思いますが、野党案の中で、貸し渋り対策としての部分と、それからもう一つは金融破綻関連保険の新設という部分と二つから成り立っているわけでありますが、この金融破綻関連保険について、どの範囲の債権というものが対象になり得るのか。破綻した金融機関が持っている貸し付け、その中のどの範囲のものが、第一分類、第二分類、第三分類、第四分類とこうある中で、すべてを対象にするというふうにお考えなんでしょうか。
鈴木(淑)議員 岡田委員御案内のとおりでございますけれども、私ども野党三会派の案では、金融機関が破綻した場合に、通常は法的手続で整理に入っていく、特別の場合として公的管理がありますが。そうなりますと当然、第三分類、それから第四分類がもしあれば、これは、私どものいわゆる日本版RTC、整理回収機構ですね、こちらへ回るわけでございます。したがって、残りの第一分類、第二分類の中で、自分の力で他行にシフトできない借り手というのがこの制度の対象になってまいります。
分類が正しければ、常識的に考えて、そういう借り手というのは第二分類の中にいるんだろうというふうに思いますけれども、しかし、分類が必ずしも正しくないということで、第一分類の中にも自力で他行にシフトできないところがいれば、当然この私どもの法律の対象となりまして信用保証が受けられる、こういう仕掛けになっております。
岡田委員 今の御説明ではありますが、野党の出している金融機能の再生のための緊急措置に関する法律案で、我々は、第八条による金融整理管財人による管理と、それから公的管理という、二つのスキームを用意しているわけであります。しかし、この二つのいずれにも乗らない場合というのは当然考えられるわけですね。
例えば八条で、金融整理管財人による管理というのは、八条の一項の一号、二号、特に二号に「その業務の全部の廃止又は解散が行われる場合には、当該金融機関が業務を行っている地域又は分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずるおそれがあること。」こういうことでありますから、特別管理はもちろん非常に限定された場合でありますが、特別公的管理だけじゃなくて金融整理管財人による管理の場合も、法律の建前はすべてをこのスキームに乗っけるわけではないというふうに思うわけですね。
大きな支障が生じなければこのスキームに乗っからない、そのまま破綻させてしまう、法律上はこういうことになるわけで、そうすると、そういう場合の第三分類、第四分類というものは、これはどうなるというふうにお考えなんでしょうか。
鈴木(淑)議員 岡田委員御存じだと思いますが、その場合も私どもの野党案では法的な手続に入ってまいりますから、破産法あるいは会社更生法の場合と似た形で、当然、第三分類、第四分類の回収が始まる形になっているというふうに思います。
私どものこの法律の方では、ごらんいただいていると思いますけれども、「債務者の業務及び財産の状況並びに当該債務に係る担保の状況等に照らしその回収について通常の度合を超える危険を含むと認められる債権に係るもの」というふうになっておりまして、これは、第三、第四はこれには入ってこない、通常は第二分類、そして万一第一分類の中にそういうものが入っていればということになります。
ですから、岡田委員御懸念の第三、第四というのは、むしろ我々三会派で出している法的手続の中で、通常の破産手続の中で回収されていく。私は、それは日本版RTCの方へ回るというふうに理解しておりますが。
岡田委員 あらかじめ通告してありませんでしたのでこの辺にしたいと思いますが、いずれにしても、この八条にも乗っからないようなケースについて、それではだれが、第三分類、第四分類である、あるいは第二分類であるということを判断するのか。これは信用保証協会がするのか、ほかにどういう手順があるのかというところがちょっとよくわからないんですが、御説明いただけますでしょうか。
鈴木(淑)議員 信用保証協会へ行く前の段階で、我々の法案、この法案じゃなくて四法案の中の一つで今ごらんになっているものですけれども、それによれば、金融再生委員会が決めた基準、そして金融再生委員会が選任した金融整理管財人等によって分類が行われて、日本版RTCへの引き渡しと、受け皿銀行があればそちらへ行く分というのが分かれてくるというふうに理解しておりますが。
岡田委員 では次に参りますが、この野党案では五兆円の出資ということを想定されているわけでありますが、この五兆円の出資によってどの程度の信用が新たに供与されるというふうにお考えなのか、お聞きをしたいと思います。
鈴木(淑)議員 今の御質問にお答えする前に、一つつけ加えなければいけなかったのは、御存じだと思いますが、第六条の二項で、信用保証協会が行う前項の資産の査定とは、金融再生委員会規則で定める基準に従い、回収不能となる危険性または価値の毀損の危険性に応じてその有する債権その他の資産を区分する、こういうことが明確に書かれておりますから、そこで岡田委員御心配のような第三分類、第四分類は排除されていくというふうに思います。
次に、信用保証協会の保証でどれだけの信用が破綻金融機関の借り入れ企業につくだろうかということでございますが、先ほど最初の御質問のときにも申し上げましたように、自己資本比率の計算に当たって、信用保証協会の保証がついている貸し出しというのはリスクレシオが下がりますので、通常の貸し出しよりも自己資本比率を下げないという効果があります。今の貸し渋りの中にあっても、最初に申しましたように、単に資本が足りなくて貸し渋りしているだけじゃなくて、効率的な融資構造へのリストラをしようと思って貸し渋りをしているという側面もありますので、普通は、保証がつけば、これは融資構造のリストラに資するものとして融資がつくというふうに思いますが。
岡田委員 ちょっと今の点は、野党の提案ですので、野党間でもう少し詰めなければいけないかもしれないというふうに申し上げておきたいと思います。
それから、野党案では平成十三年の三月三十一日までに金融破綻関連保険業務を廃止するということにしているわけでありますが、ということは、平成十三年三月三十一日までに新たな融資先を見つけるということになると思うのですが、これが果たして現実的なのか。平成十三年にこの特別の制度を廃止したときに大きな混乱が起こらないか、そこが非常に気になるところでありますが、
どういうふうにお考えでしょうか。
鈴木(淑)議員 御指摘のように、平成十三年三月三十一日までにと書いてありますが、ここでこの法案がエクスパイアするわけではなくて、ごらんいただいておわかりのように、見直し規定になっているわけですね。廃止を含めて見直すと書いてある。これは、一緒に出している野党三会派の法案が同じ時期までの時限になっているわけであります、金融再生委員会にしても。ですから、それと平仄を合わせる意味でここで見直し規定を入れたわけです。
だから、この二〇〇一年三月時点で見直して、全体のバランスを考えて、もう少し続ける必要があれば続けるし、全部一体のもので、ここでもう打ち切りだという判断であればここで廃止、そういう規定でございます。
岡田委員 ここは一つの物事を裏から見るか表から見るかということなのかもしれませんが、もちろんこういう対策ができることで多くの中小企業が救済されることは間違いございませんが、しかし同時に、それは第二分類が中心だとしてもかなり問題のある債務者が含まれていることもまた事実でありまして、問題のある銀行を平成十三年までに整理してしまうという、そちらの方はよくわかるのですが、そこでむしろ問題のある借り手というものをどういうふうにソフトランディングさせていくのか。
平成十三年で全部切ってしまうということになるとこれは大きな混乱を招くわけですし、しかし、そこでそうしないということになりますとこれはいつまでも、今ある第二分類の中での不良債権というのを国が全面的に抱え込んでずっといくということになりかねないわけで、かつての震災手形のような、そんな感じもしないわけではないわけですが、そこのところはどのように考え方を整理されているのでしょうか。
鈴木(淑)議員 岡田委員御指摘の点はまさに悩ましいところでございまして、岡田委員もお聞き及びかもしれませんが、私ども野党三会派の実務者レベルの協議のときに大きな問題になり、議論をしたポイントの一つでございます。
当初私どもは、この法案についてはこの見直し規定を外しておきました。しかし、逆に、ずるずるといつまでもやってはいかぬのじゃないか、他の法案とワンセットになっている以上、ここで廃止する時限立法にしてはどうか、こういう意見もありました。三党協議を重ねました結果、これは両方の可能性を含んだ見直し規定にしよう、そして、今岡田委員御指摘のように、ずるずる不良債権みたいな形で持続することは防がなければいけないが、さりとて信用保証という事柄の性格上、そんなぽんと切れるものじゃないという側面も同時に考慮しようというので、最終的にこういう形になった次第であります。
岡田委員 通産大臣にお聞きしますが、先ほど鈴木議員の方からは、政府案の限度額の引き上げについては野党としてももちろんこれは反対するものではなくて、そういう意味では、野党法案と閣法、政府法案は矛盾するものではなくて相補うものである、こういう趣旨の御答弁があったと思います。それでは、通産大臣の方からごらんになって、この野党法案についてどのように考えておられるか、基本的にこういう考え方が必要であるというふうにお考えなのか、あるいは問題があるというふうにお考えなのか、いかがでしょうか。
与謝野国務大臣 議員立法についてとやかく言うことは差し控えたいと私は思っておりますけれども、ぱっと見たところ、私どもがやっておりますのは中小企業対策で、中小企業の定義の範囲は、昨今、資本金の範囲をふやして中小企業の実態に合わせた改正をやりました。しかし、野党案は中堅企業という概念を使っておられますので、どこまで広がっていくのかがよくわからないという点が一つ。
もう一つは、いわば今岡田先生が問題にされておられましたように、第二分類、第三分類、第四分類と分けたときに、第二分類も公的なものに移動するということについて果たして問題がないのかどうかということは、やはり検討する必要があるのではないか。私は個人的にはそう思っております。
また、この案を推進していきますと限りない財政出動が要請されてしまうのではないかなという心配をしておりますが、実は余りよく詳細な検討はしておりませんので、ぱっと見たところそういう感じがするという、印象だけ申し上げました。
岡田委員 野党が中でよく議論をし検討して出してきたものでありますし、非常に重要な中身を含んでおると思いますので、ぱっと見たところではなくて詳細に通産省としても御検討いただき、私は考え方としては非常にすぐれたものがあるというふうに思っております。かつ、今回の通産省、政府提案のものだけでは大きな金融機関が破綻するという事態には対応できないことは明らかでありまして、全体の与野党の協議の中でも野党の考え方を大幅に取り入れた形でのスキームづくりが進んでおりますが、そういう中で、やはり借り手の保護ということは非常に重要になってまいりますので、真剣に御検討いただければ大変ありがたいことだというふうに思っております。
もちろん、ややいろいろな問題を含んでいることも事実でありまして、先ほどの平成十三年以降どうするのかという問題もございますし、それから、これは破綻保険の方ではありませんが、野党案ですと一〇〇%保証ですね、公庫と信用保証協会の関係が。そこに、信用保証協会のモラルハザードと言うと言葉は適切ではないかもしれませんが、そういうものが出てくるのではないか。そういう心配も当然あるわけで、この辺は私は、与野党で協議をして、よりよいと言うとやや語弊があるかもしれませんが、内容について協議をしていくことは可能だというふうに思います。
いずれにしても、私は、政府の案だけではいかにも不十分ではなかろうか、こういうふうに思っているところでございます。通産大臣、この辺について何か基本的なお考えございますでしょうか。
与謝野国務大臣 今般私どもが出しました法案は、金融機関の破綻を前提として出しているわけではなくて、いわゆる信用収縮の最も被害を受けている中小企業にいかなる資金の手当てをしたらいいのかという観点からこの法案を出しておりまして、大きな破綻が起きた場合を想定して物事を考えているわけではないという点は御理解をいただきたいと思っております。
岡田委員 鈴木議員の方は、今私がいろいろ、野党ではありますが、少し気になるところを指摘したわけですが、何か御感想ございますか。
鈴木(淑)議員 二つ申し上げたいと思いますが、一つは、一〇〇%再保険でモラルハザードが発生するのではないか、これも野党三会派の実務者レベルで相当突っ込んだ議論をしました。
現在七〇%、八〇%の二つの制度が原則になっております。例外的に九〇、じゃこれは九五にするかという議論もあったのでございますが、現下の厳しい情勢、そして破綻金融機関の借り手保護、この要請から考えて、あえてモラルハザードの危険性を冒してでも一〇〇%再保険にして、各地の五十二の信用保証協会が一生懸命これに取り組んでくれるようにしょうよという判断でこれを出しておりますが、岡田委員も御指摘のように、もしこの考え方に政府・自民党さんも乗って一緒に考えようということであれば、ここももう一回議論し直す余地のある大きな論点だと思います。
それからもう一つは、与謝野大臣の岡田委員の質問に対するお答えの中で、こういう信用保証という形で破綻金融機関の借り手にいわば公的資金が入っていく、それも一〇〇%再保険で入っていくということでは、少しずるずる拡大しないかという御懸念を示されましたが、私どものこの破綻金融機関の借り手に対する信用保証のカウンターパート、反対側の政府の案はブリッジバンクなんですね。
政府案はブリッジバンクでございます。ブリッジバンクでよそへ行けない借り手を抱え込んでいくわけですね。私はそれよりも、金融再生委員会で決めた厳しい基準で、しかし一〇〇%の再保険というバックアップがあって、各地の信用保証協会が審査して信用保証していく方が、ブリッジバンクで丸抱えしていくよりは公的資金の投入額は少なくて済むというふうに思うんですね。
ブリッジバンク側の方が、ずるずる、自分の力ではよそへ行けない借り手企業を全部抱え込むわけですから。しかも受け皿銀行がいない場合なんですから、ブリッジバンクというのは。受け皿銀行が手を挙げていないときに、全部よそへ行けない企業を抱え込んでいくブリッジバンク構想の方がはるかに公的資金がずるずると入っていって、不良債権を公的資金で抱え込むようになる可能性は高いというふうに私は思います。ぜひ、政府・自民党におかれましては、私どものこの部分と対比すべきはブリッジバンク構想なんだということを忘れないようにして、対比して考えていただきたい。
それからもう一つ、行政コストが違うと思うんですね。ブリッジバンクの方は、やはり新しい機関をつくっていこうということですから、一定の行政コストがかかります。私どもは、既に存在しているインフラ、すなわち中小企業信用保険公庫と全国に五十二ある信用保証協会を使おうということですから、これは行政コストははるかに低いんですね。
どうぞこの二つを対比して、どちらが、社会的コスト、そして投入する公的資金の負担、それから行政コストが低いのかということを、ぜひみんなで知恵を絞って、与野党ともに考えていただきたいというふうに思っております。
岡田委員 時間も参りました。最後に通産大臣に一言お聞きしておきたいと思いますが、中小企業政策とそれから中小企業に対する金融政策ですね、特に信用保証制度というものを中小企業政策の中でどのように位置づけておられるのかということを、通産大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
御案内のように、我々の野党の案では、信用保証協会に関することというのは中小企業庁設置法から落としておりまして、基本的には再生委員会に一元化をするという考え方でいるわけでございます。基本的に金融に関することは金融再生委員会に一元化をするという、一貫してそういうことを申し上げておるわけでありますが、他方で、この信用保証制度というものが中小企業政策としても非常に重要な位置づけを持っているということも事実ではあると思いますので、これについての基本的な考え方というものをお聞かせいただければと思います。
与謝野国務大臣 まず、先生御承知のように、一口に中小企業と申しましても非常に業種がたくさんございまして、どういうとらえ方をするかというのは非常に難しいわけでございます。しかし、中小企業庁が今までやってまいりました中小企業政策というのは、例えば商店街の対策とか、あるいは中小企業の立地問題とか環境問題とか、いろいろなセクターごとに持っている問題に対応してきたわけです。
その中で、中小企業全体を貫く、あらゆる業種を貫く問題として最も重要なのは、やはり中小企業に対する資金の供与と申しますか、中小企業の金融の問題は従来から中小企業庁の最も重要な政策でございました。これは、国民金融公庫、中小企業金融公庫あるいは商工中金を通じまして、必要な資金が中小企業に供与されるように十分やってきたつもりでございますし、また、無保証無担保の融資も、あれは昭和四十年代の後半に導入されたんですが、その限度額も今まで何回か上げてまいりました。
中小企業の業種ごとの持っている個別の問題、また中小企業全体を貫く問題、こう二つ分けてまいりますと、やはり中小企業全体を貫く問題としては金融の問題が私は多分最大の問題なんだろうと思っております。
岡田委員 終わります。