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1999.02.12|国会会議録

145回 衆議院・予算委員会

岡田委員 民主党の岡田克也です。

きょうは、こういう場でありますので、ぜひ総理を中心に各大臣の方から御答弁をいただきたい、政府委員の御答弁は控えていただきたい、そういうふうにまずお願いをしておきます。

まず、つい最近、アメリカの政府、アメリカ大統領の経済報告というものが出されました。その中に、日本の経済不況についてのくだりがございます。これはアメリカ政府としての公式見解ということで出ているわけでありますが、それを読みますと、一九九六年、日本経済はついに回復するかに見えた、しかし、一九九七年四月の消費税大幅増税により不況に陥った、日本経済の弱さはアジア危機の原因となった、そういう要旨、そういう中身のことが書いてございます。

なぜ今我々はこれだけの不況に苦しんでいるのか。それは、この予算委員会でもここ数年来いろいろ議論をしてきたところでありますが、我々は、それは消費税の増税、特別減税の打ち切り、あるいは医療費の大幅な負担増、合計九兆円の負担増が引き金になって、少し回復基調の見えた景気を大きく冷やしてしまった、こういうふうに主張しております。政府の方は、むしろそうではなくて、アジアの不況というものが足を引っ張って、それに金融不安が加わって現在の不況になった、こういうふうに言っているわけであります。

しかし今回、なかなか日本政府の白書その他では、はばかられるせいか、余り書かないわけですけれども、日本の民間のレポートと同じように、アメリカ政府も、やはり原因は消費税の増税だ、あるいはその他の負担増も含めた負担増が不況を招いた、こういうふうに言っているわけですが、総理はこういった見解が出てきたことについてどのようにお感じでしょうか。

小渕内閣総理大臣 アメリカ政府の経済レポートにつきまして、私、詳細にすべて理解をしておりませんので、お答えをすることは難しいかと思いますが、今委員の御指摘で言えば、日本の九六年の経済の成長に伴いまして、以降の財政構造改革に伴う予算、あるいはまた消費税の増徴その他の原因によって、先ほどのお話によりますと、アジア経済が失速した、こういうふうに決めつけておられるようでございますけれども、もし日本の政策そのものがすべてアジアの経済、特に金融・通貨不安をもたらしたという見解であるとすれば、必ずしも私はそのように考えておらない、こう思います。

岡田委員 私はそういうことは別に言っておりません。

ただ、今の日本の現下のこの不況の最大の原因が九兆円の負担増にある、そのことについてどう思うかというふうにお聞きしているわけです。

小渕内閣総理大臣 日本経済に影響を与えておることを否定はいたしませんけれども、減税につきましても、その前数カ年にわたりまして、お約束によりまして先に減税を実施したという経過もありまして、その減税に対する補てんとしての増徴ということは、これは国会でいろいろ御相談の上で、そういった方策をとったということでございまして、しからば、そのことが全く日本経済に影響を与えなかったかと言われれば、それは影響はあったかと思いますが、それをもって日本の経済のマイナス成長に陥った原因のすべてとすることはあり得ない、こう考えています。

岡田委員 私は別にすべてというふうには言っておりませんが、主たる原因は何かという議論をしているわけでございます。

先ほど堺屋長官は、橋本政権の経済政策が失敗であった、失政であった、こういうふうに言われたわけであります。総理と企画庁長官で少し見解が違うようですが、企画庁長官、いかがでしょうか。

堺屋国務大臣 岡田委員御指摘のアメリカの文書というのは、「ジャパンズ・エコノミック・アンド・ファイナンシャル・クライシス」という、二月四日にアメリカのCEAの年次報告に出ている文書だろうと思うんでございますが、そこには、九六年に日本経済は立ち直るかに見えた、ところが、増税をしたこと等もあって失速してしまった、そのことがアジアの経済にも悪影響を与えた。まあアジアの問題がすべて日本とは書いておりませんが、悪影響を与えたというふうに書いてあります。私もそれは確かに間違いではないと思います。

しかし、日本が今の不況に陥ったのは、必ずしも増税ばかりではなくして、やはりバブル以来のいろいろな蓄積が放置されていたことも大きな原因だと思っております。私はやはり、岡田委員御指摘のように、九七年の増税、負担増が原因の一つではあったということは、はっきり認めたいと思います。

岡田委員 総理はいかがでしょうか。

小渕内閣総理大臣 ワン・オブ・ゼムという言葉を使えばその原因の一つであったかと思いますが、こうした問題は、一つということで限られないで、すべて総合的にあらゆる問題が起こってきた。今堺屋長官の言われましたように、もともと、たどれば、九〇年当初のあの日本経済の大きなバブルに対して、これをずっと処理することになおざりであったそれぞれの内閣におきましての処置もその原因を来しておるんではないか、こう考えます。

岡田委員 堺屋長官に比べると大分慎重な言い回しになるわけでありますが、それはいわば当然のことですね。つまり、橋本政権も自民党政権であり、小渕政権も、自自とはいっても自民党政権でありますから、同じ政党の政権ですから、橋本政権のときに失敗したけれども今度はいいんだなんという、そういう理屈は本来通用しないわけですね。同じ責任を持つ同じ政党が単にトップがかわっただけでありますから、やはり前政権の失敗というものについての責任は、後の同じ政党の政権も負うのは当然であります。

しかも、総理はその橋本政権の重要閣僚、外務大臣をやっておられた。したがって、閣議の一致で物事を決めていくわけでありますから、橋本政権の九兆円の増税というものが、負担増というものが景気後退の大きな原因であるとすれば、それは総理にも大きな責任がある、そのことを私はまず指摘を申し上げておきたいと思います。

堺屋長官のお話を聞いておりますと、何か、違う党の政権があれは失敗したんですと。堺屋長官のお立場では、そのときには閣僚でもありませんでしたし、政治家でもありませんでしたのでそれでいいんですけれども、しかし私は、やはり小渕総理の前政権時代の閣僚としての非常に重い責任がある、そのことをまず御指摘を申し上げておきたいと思います。

そこで、来年度の経済見通し、先ほども仙谷委員の中でいろいろ話が出てまいりましたが、私は非常に憂慮をしております。特に、個人消費がどうなるかということが非常に大きな要素であると思います。全体のGDP、名目五百兆の中で個人消費は三百兆であります。非常に大きいわけですね。最近政府の家計調査の十二月の数字が出てまいりました。実収入は対前年同期比で二・八%の減。特に、臨時収入といいますか、ボーナスにつきましては四・四%の減でありますので、そのことが一―三月の消費にどのように響いてくるかということが大変気になるところでございます。

そこで、私は総理にお聞きしたいわけですけれども、一月の月給をもらった人、もう既に一月の月給は出ておりますけれども、少し驚いたんじゃないかと思うんですね。つまり、減税がない。一月の減税というのは一月の給与に反映されない。これはこの前もお話をいたしましたが、六月のときにまとめて一―三月の減税の分については引き落としがされる、こういうことになっております。

しかし、私は、やはり一月、二月、三月が非常に大事である。特に、三月の決算を控えて、一―三月の景気の動向が非常に重要であるというのであれば、なぜ一月からきちんと減税がされるような手を打たなかったのか。これは重大な失政だ、こういうふうに私は思うわけですが、その点について責任はお感じになっておられるでしょうか。

宮澤国務大臣 それは私が責任者でいたしましたことなので、小渕内閣が発足いたしましたときに、昨年の八月に、所得税の減税につきましてはあらかたの考え方は決めておったわけでございます。そのときには、平成十年分の所得についての定額の減税が進行いたしておりました。そこで、八月に決めましたのは、当然のことながら、平成十一年分の所得に関する減税であったわけであります。

岡田委員の御指摘は、なぜそれを早く国会に提出して成立させなかったかということでございました。いつかも申し上げましたが、税額表、源泉徴収のテーブルでございますが、法律が確定いたしましてから、税額表をつくるのに一月、それに関係者が習熟するのに二月かかるというやむを得ない制約がありまして、一月の分を一月の源泉徴収にしますためには、十月に法律が成立していないといけない。小渕内閣が八月に発足をしまして、十月にこの税法を成立させるということは事実上無理なことであった。

現実には、実は、所得税減税を国税と地方税にどう分けるかということにつきまして、地方税との関係で非常に長い折衝を必要といたしましたものですから、それだけでも十月に法律を成立させるということは無理であったのでございますが、まことに残念ですけれども、源泉徴収という技術的な事情が非常に大きくかぶりまして、そこで一月の源泉徴収、二月の源泉徴収、三月の源泉徴収からはこれができませんで、当初十二月と考えておりましたが、御批判がありまして、今度は二〇%ぽんと切ればいいわけでございますから、二割、おおむねのところはそれで間違いませんので、六月に引かせてもらおうということになりました。

私どもも、一、二、三という大事なときにお金が戻ってこないといいますか、銀行に残るというか、しませんのは残念に思いましたが、そのような事情でございました。

岡田委員 そのお話はこの前もお聞きしたわけでありますが、私は、二カ月ぐらいかかるということは承知をしておりますが、ではどうして十月に税法だけ臨時国会に出して、野党にも協力をお求めにならなかったのか。

今、国税と地方税の負担の問題がある、こういうふうにおっしゃいました。それは役所でいえば大蔵省と自治省の話し合いということになるわけでありますが、それは実務的にいろいろやっていれば、お互いお金の取り分、予算のとり合いになりますから、もめるのは当然でありますけれども、両大臣同士がお話し合いになってどこかでえいやっと決める話ですから、そういうことがどうして早くできなかったのか。それさえきちんとやっておれば、私は一月から実際に減税ができた、こういうふうに思いますし、そしてそれは、やはり小渕総理がどこまで一月から減税をしなきゃいかぬということを真剣にとらえたかという問題だと思うのです。大蔵大臣と自治大臣がもめていれば、早く決着しようと、そのことが一番大事なことだと、どうしてそういうふうに総理は指示を出さなかったのでしょうか。

宮澤国務大臣 それではもう少し続けさせていただきますけれども、自治省と国との関係は自治大臣と私がその後何度かお話しして決まったのですが、そのためには自治大臣自身が地方財政の財政需要を知っておられなければならなくて、八月の時点で地方財政の財政需要は実際わかりません。ですから、自治大臣と私の折衝は随分遅くなって、十一月でございますか、行われたのでございまして、八月に財政需要がわかるというのはやはり無理でございました。

それからもう一つ、強いて申しますと、所得税の減税をしますためには、法人税の小法人についての課税と法人成りの関係があって非常に密接にいきますので、所得税だけ出すということがまた難しかった。いろいろなことが絡まっておりますので、これ以上申し上げませんけれども、所得税のその分だけぽんと早く出すべきであったとおっしゃることは、実際問題としては難しかったように思います。

岡田委員 積み上げで言うと、今大蔵大臣御説明いただいたようなことになると思うのですが、そこは、どこまで蛮勇を振るってえいっと、こういうふうに決めるかの政治のリーダーシップの問題である、私はそういうふうに思っております。

いずれにいたしましても、この一―三月、非常に重要でありますから、減税がおくれたことによって消費が非常に滞るということになれば、私は、そのことの政治責任ははっきりとっていただかなきゃいけない、そういうふうに申し上げておきたいと思います。

さて、先ほど言いましたように、今個人消費が非常に重要だという中で、政府経済見通しでは雇用者所得が〇・五%上がる、こういうふうに見ておられますが、私はそこは若干首をかしげております。しかし、いずれにしろ、消費がアップしていくためには消費マインド、数字でいえば消費性向がどのように上がっていくかということが非常に大事だと思います。

企画庁長官は最近、所得が比較的低い層の消費性向が落ちているということをこの場で何回もおっしゃっておられますが、例えば九〇年から九八年で見ますと、もちろん所得が低い第一段階、第二段階の層も、第一段階ですと、九〇年の消費性向は八三が九八年には七九と四ポイント落ちております。第二段階は七七が七二と五ポイント落ちている。しかし、平均で見ましても七五が七一で四ポイント落ちているわけですから、全体的にここ九〇年から九八年の間で四ポイントから五ポイントも落ちている、こういうことでございます。

逆に言いますと、これが、九〇年段階まで戻すと、四ポイントか五ポイント上がれば、非常に雑な話をするかもしれませんが、GDPに占める名目の消費が三百兆でありますから、それが五ポイント上がるということは十五兆、GDP五百兆の中の十五ということですから、それだけで三%成長ができてしまう、こういう話になるわけですね。

そういった消費マインドを好転させるために決め手になるものは一体何なのか。企画庁長官で結構ですから、御説明をいただきたいと思います。

堺屋国務大臣 岡田委員御指摘のように、家計調査で見ます限り消費性向はどんどん下がっておりまして、八〇年に比べますと特に低所得者で下落しておりますし、また高齢者でも下落しているという数字が出ております。

これはいろいろな原因があるんだろうと思います。少子化の問題もございますでしょうし、いろいろな原因があるんだろうと思いますが、一つはやはり将来不安ということも関係しているだろうと思います。

幸いにして、十二月調査で見ますと、九月調査に比べて消費者の意欲が少し上昇してきております。これは、やはり経済対策の問題もございますでしょうし、あるいは消費マインドが出てきたということだろうと思います。消費者態度指数というのを見ますと、最悪の時期が去年の九月でございまして、少し上昇してきているような気配もございます。

大事なことは、一つはやはりお金を使うことの楽しさといいますか、生活の楽しさをつくり出さなきゃいけない。これが大変冷え込んで、おもしろくないというのが一つあるだろうと思います。

もう一つ、やはり将来不安でございますが、先ほどの財政の話にもございましたけれども、あえて申し上げますと、あれは、名目成長率と金利、そして税収の弾性値を固定しますと、算術的にあんな結果になるのでございます。ところが、アメリカの結果、諸外国、日本でも、過去の例を見ますと必ずこの三つの関数が変わることによって財政の改善も見られております。

したがって、今私たちに大事なことは、現在の悪い状態を前提としてすべてを計算していく、それを固定化するのではなくして、やはり将来、経済が生き物として発展するような、そういった新しいプロジェクトなり新しい企業家精神なりをつくり出していく構造転換が必要だろうと考えております。ようやくそういう芽が出てきたのかなと、この消費者態度指数の動きなどから、私ども、少し淡い期待を持っているような状況でございます。

岡田委員 文字どおり淡い期待だろうというふうに思いますが、私は、やはり政治に対する信頼感というものが非常に失われているということが一つの大きな原因だというふうに思っております。これは、具体的に言うと私は二つあると思うんです。

一つは、今年度の予算を見たときに、もちろんこういう経済状況ですから、減税をしたり公共投資をふやしたり、そういうことは私も否定をいたしませんけれども、しかし、その陰に隠れて、何でもありの財政になっているんじゃないか。本来やっちゃいけないことまでどんどんその中でやってしまっているんではないか。そのことを見て、果たして政治がきちんとこの国の将来を見据えて本当にちゃんとやってくれているのか、そういう不安が国民の中に出てきている。これが第一点であります。具体的に後で申し上げます。

第二は、やはり構造改革への姿勢だと思います。幾ら景気が悪いからといって、将来を見据えた構造改革をきちんとやっていくという、そういう姿勢がなかったら、先ほどの仙谷委員の話ではありませんけれども、一体この国の将来はどうなってしまうんだろうか、こういうことで、一層不安感が募るわけであります。私は、その二点が今年度の予算を見ていて大変疑問を感じるところでございます。

具体的に申し上げたいと思いますが、まず、大蔵大臣にお聞きをいたしますが、整備新幹線につきましては、橋本内閣のもとで、既に着工している三線五区間について、これに絞って予算をつけていこう、こういう方針がございました。しかし、平成十年十月の財政構造改革法の凍結を受けまして、新規着工の、つまり新しい三区間についても事業費の抑制方針を解除して、これも並行して進めていこう、こういうふうになったというふうに聞いております。そして、自民党、自由党との話し合いの中でもその方針が確認をされた、こう聞いております。

なぜ、そういった従来の既着工三線五区間に限定をしてまずやっていこうという考え方を放棄して、新しい三路線三区間についても並行してやっていくというふうにお決めになったのか、大蔵大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

宮澤国務大臣 平成八年末に政府・与党等関係者で基本的枠組みを決めまして、それから、既着工区間の優先整備方針や新規着工三区間の間の優先順位等を維持しつつ、所要の事業費を措置云々ということであったわけであります。

そこで、今回やりましたことは、昨年十一月の申し合わせで、新規の着工区間、平成九年三月に着工した三区間でありますが、この事業費の抑制方針を見直したというもので、未着工区間の着工に関するものではない、着工を決めた中での事業費の抑制を一遍やっておりましたが、それを見直したということでございます。

岡田委員 見直した結果、新しいその三区間ですね、対象となった三区間で、合計すると、現時点でも一兆二千四百億円の工事費がかかる、こういうことですね。

従来の橋本政権のもとで、財政構造改革のもとで、まず既に着工しているものに集中してやろう、それのめどがついたところで新しい話は考えていこう、こういう考え方だったと思うわけですけれども、それを一挙に三つのものについても見直して並行的に進めていこうというのは、私は財政規律を完全に失っていると思うんです。それだけたくさんのものに手をつけたら、いざ今度景気が上昇基調に乗って公共事業費を締めようというときに、締めようがないじゃないですか。どうしてそういうことを大蔵大臣として了解されたんでしょうか。

宮澤国務大臣 これは、岡田委員も御所見をお持ちでしょうし、議員各位いろいろなお考えをお持ちでいらっしゃるんですが、私自身は、新幹線というものを、できるだけのことはして少しでも余計つくってやりたいという気持ちを持っております。こんなことを言っていいかどうかはわかりませんですが、正直を申しまして、やはりこれの国民的な期待というのは大きいし、その及ぼす経済的な効果もあるんでございますから、ただ、営業としてなかなか黒字にならないというのは泣きどころでございますけれども、できるならば、やはり国民のそういう希望というのは少しずつでも実現していくのが本当じゃないかという気持ちを、本来、御批判があるかもしれませんが、持っておりまして、今度の場合、多少積極的に国の経済を地方にも担ってもらいたいということがございますものですから、できる範囲でこういうふうにいたした。

本来、何十年もかかるものを一遍にあちこちやるんなら、これは商売じゃとてもつぶれてしまいますが、国でございますから、そういうことはある程度やはり国民の気持ちというものを酌んでいくのかなという思いがあるわけです。

岡田委員 私も、整備新幹線が全部だめだと言っているわけではございません。しかし、従来の考え方、まず既着工のものをある程度めどをつけて、その上で次の延長を考えていこう、こういう考え方だったんですね。しかし、新規三区間も一緒にやるということは、虫食いになっちゃうわけですよ。そうすると、全体として使いようがない。そういう状態が長く続けば続くほど、結局、いざ財政を締めようというときに締まらなくなっちゃう、そういうことであります。

私、今の大蔵大臣の御答弁を聞いて大変失望をいたしました。これ以上申し上げませんが、そういうことをしているから、私は、国の財政規律に対する国民の信頼が失われていくんだ、そういうふうに申し上げておきたいと思います。

もう一つ申し上げます。

午前中の自見委員の中で少し触れられたわけでありますが、高齢者の薬代について一部負担というのが導入されました。それを今回、ことしの七月から一部負担を停止する、こういうお話でございます。

これは確かに、我々もこういう場でこの問題を取り上げるのはつらいところがあります。高齢者の方は、今まで薬代がかかったのがただになるんだからいいじゃないか、こういう御意見は当然出るわけでありますけれども、しかし、いろいろな経緯を考えたときに、これは二年前に改革をして、サラリーマンの自己負担を、一割を二割に上げた、そして、薬代の負担もここに入れた。そのときに、高齢者の方についても若干の改革をして、こういう自己負担を多少は入れていかないとどんどんむだな薬が出されてしまう。そのことについて、ただだから、受け取る側、高齢者の側もさしたる問題意識もなくてそれを受け取ってしまう。そういう中で大きなむだが出てくるから、それは自己負担というものも入れてそういうむだをなくしていこう、そういう考え方が、私は当時厚生委員会の野党の筆頭理事をさせていただいておりましたが、小泉厚生大臣と議論する中でそういう話がございました。

なぜこれを今回やめることにしたのか。これは決して少ない予算ではございません。ことしの予算だけで千二百七十億円、これに働く世代の負担でありますとか地方の負担を加えますと、二千二百四十億円。これは七月からの話ですから、通年で見れば三千億円ぐらいの負担になっているわけですね。

厚生大臣、なぜこの制度を、今回こういった高齢者の方の薬代の一時停止という措置をとられたのか。それは厚生大臣の意向に沿ったものなのかどうかということも含めて、お聞かせをいただきたいと思います。

宮下国務大臣 一昨年の九月からの健康保険法の改正等によって、薬剤費につきまして定額負担をお願いいたしました。これは、薬剤についてのコスト意識等を高めるためにも必要であるという認識のもとに導入したものでございます。

その後の医療費の推移を見ますと、一部非常に低減をいたしましたが、その後最近においては復活しておりますが、私どもは、予算編成過程の中で、厳しい経済事情等もございますし、それから高齢者の医療機関に通う頻度等もございますし、そういったことを総合的に勘案いたしまして、与党自民党との話し合いも持ちまして、総合的に判断をして決定いたしました。

七月から、今のお説のように七十歳以上の高齢者及び六十五歳以上の身体障害者の方には国がかわってその分を負担する、そして、今御指摘のように保険者とか地方団体その他の負担が随伴的に行われますが、これもすべて国の経費で見ようということでございますから、大体委員のおっしゃられたような数字になると存じます。

しかしながら、これは私どもが抜本改革を否定したものではなくて、抜本改革は平成十二年度からこれを実施したいということで、目下、診療報酬のあり方、薬価のあり方、あるいは老人保健制度のあり方、医療提供体制等について非常に精力的に検討いたしておりまして、抜本改革までのつなぎの措置として位置づけられる、暫定的な措置であるということで、総合判断をして決定したものでございます。

岡田委員 抜本改革の話は、きょうはいたしませんが、あれも本来は去年の国会に出てくるというのが最初のお約束だったのですよ。それが一年延びて、この国会へもどうも大したものが出てきそうもない。本当に平成十二年度にちゃんとできるのか、そういう疑問の声が非常に大きいということを一言申し上げておきます。

そこで、厚生大臣にお聞きしますが、厚生大臣あてに医療保険福祉審議会の運営部会長の塩野谷さんから、こういう意見というのが出ておりますね。それは、この今の特例措置についての意見なんですが、特例措置といったような問題は、本来当審議会などの場で関係者が十分に議論を積み重ねた上で決定されるべきものであるのに、その民主的ルールを無視し、高齢者医療や薬価制度の問題がまさに審議されている中でこの措置がとられたことは、極めて遺憾である、今後、かかるルール無視、審議会軽視の措置を重ねて行うことのないよう申し入れる、厚生大臣殿、こういうことになっております。この申し入れについて、どういうふうにお考えですか。

宮下国務大臣 いろいろの医療改革につきまして、保険福祉審議会等で御審議をいただいておる委員の方から、私ども年末の予算編成期に決定いたしましたので、特に相談も申し上げていないという点からすれば、その意見書の意味するところは私もよく理解できます。

しかしながら、この問題は、法律的にあるいは法制的に改革をするとか、制度自体を改革してしまうというようなことでありますれば、通常、審議会にも諮問し、その意見を承るわけでございますが、今回の措置は、従来の枠組みを変えることなく、高齢者の自己負担分を国がかわってこれを支給するということを事実上やるだけでございまして、法改正その他、制度の抜本的な改革とは関係ございませんから、私どもはあえて審議会に諮問をしませんでした。

それと同時に、これから審議会の問題は、やはり審議会絶対至上主義ではなくて、あくまで政府がそれは決定すべき事柄でございますから、注意は注意として私ども受けとめますけれども、今後も、そうした政府限りで可能な事態であれば、これは、その趣旨は生かしながらも検討して決定していくということはあり得るのではないかと思います。

岡田委員 今の、大臣はいろいろるる御説明されましたが、私は、大臣も本来この制度に対してかなり疑問をお持ちだったと思います。しかし、それをノーと言うだけの、そういう立場になかった、そういうふうに思うわけであります。

総理にお聞きしますけれども、平成十年八月二十七日に、日本医師会長と自民党の政務調査会長、そして自民党の幹事長の間でも覚書というものがある。その中に、「薬剤費の一部負担については、早期に再検討する」、こういうふうに書いてあります。この覚書に基づいて、日本医師会と自民党との話し合いの中で、こういった制度改革が唐突に行われた、こういうことだと私は理解しておりますが、いかがでしょうか。総理にお聞きしております。

宮下国務大臣 事実関係がございますので私の方から申し上げさせていただきますが、これは突如として起こった話ではございませんで、医療関係団体、つまり、今医師会というお話が出ましたが、そういった方々との間で薬剤費の負担のあり方につきましていろいろ御議論があったということで、党におきましてもやはりこれは大きな課題でございますから、それを検討するということをお約束なすったものだと存じます。しかし、最終的には、これは私ども政府側の、予算を計上してあるわけでございますから、私どもの責任においてそれを総合的に判断して決定したということだけ申し上げさせていただきます。

小渕内閣総理大臣 予算の編成につきましては、政府が責任を持って、これを最終的決定をして御提出をいたしておるわけでございます。

しかし、過去もそうでありますが、予算編成に当たりましては、各界各層の御意見も拝聴しながら、与党として、そのお考えもお聞きしながら取りまとめてこられたということは過去の例としては存在するわけでございまして、本件がそれに当たるかどうか十分承知をいたしませんけれども、しかし究極は、お年寄りの皆さんが、医療費につきまして、現下の経済情勢にかんがみまして、その負担を軽減したいという政治的な考え方によりまして、党としてもそういう考え方を納得した上で、与党として最終決定をさせていただいたわけでございますし、政府としては、その方針にのっとって、先ほど厚生大臣がお話ししたような趣旨に基づいて予算に計上させていただいた、こういうことでございます。

岡田委員 この制度の変更というのは概算要求に入っていないわけですね。突然出てきた話であります。

今総理は、お年寄りの負担軽減だというふうに言われました。確かにそういう面があるかもしれない。しかし、従来の薬の負担についても、所得の低い方に対する配慮はしてあるのです。今回のこの負担の免除は、所得の多寡にかかわらず負担を免除するのですね。本当に困っているお年寄りを救うというのであれば、なぜ所得の高い人までこれを免除してしまうのですか。全然説明できないじゃないですか。いかがですか。

宮下国務大臣 あるいは技術的にはそういうことを考えるべきであったのかもわかりませんが、私どもとしては、やはりそこを、資力調査によって一々その薬剤費の負担を医療機関のもとで判定するというのは、なかなか難しいことでございます。

したがって、これは、先ほど申しましたように、あくまで暫定的な、特例的な措置として、抜本改革までのつなぎの問題として意識をいたしております。

なお、つけ加えさせていただくならば、ああいう定額負担で本当にいいのかどうかという問題も意識しつつ、抜本改革においては、あるいは薬剤の問題は少し検討し直して、定額でない方がいいのかなという意見もかなり強うございますし、私も現にそんな感じもいたしておりますから、そのような措置をとらせていただきました。

岡田委員 最後のお話は、我々もこの負担増を決めたときに、きちんと抜本改革とあわせて一割なら一割という形で負担をすべきである、そういうふうに、当時は新進党でありましたが、申し上げたところでございます。

しかし私は、今のいろいろな議論を通じて、何といいますか、やはりこの国の政治はどういう仕組みで動いているのかということに対して国民の皆さんがいろいろな意味で疑問を持っている、その一つのあらわれが先ほどの整備新幹線であり、このお年寄りの薬の一部負担の免除措置だと思うのです。

そういうことについて、今まで財政構造改革ということでわきを締めて、むだなことはやらない、将来の世代のためにそういう考え方でやってきた。しかし、景気が悪くなって、そこの部分について景気対策としてやらなければいけない。それはわかりますけれども、そのときに、従来わきを締めてきたものを甘くして、何でもありになってしまっているんじゃないか、そのことが非常に、政府に対する、政治に対する不信感を招いているんじゃないか、そのように私は申し上げておきたいと思います。後はテレビをごらんになった国民の皆さんがどういうふうに判断するかの問題だと思います。

さて、では構造改革について申し上げたいと思いますが、私ども民主党は子供手当ということを主張しております。これは、この場でも公明党の冬柴委員の方からもお話がありました。たまたま非常によく似た制度を民主党と公明党が主張しているわけでありますが、二党が同じような主張になったというのも、それだけの合理性があるんだ、その結果だというふうに私は思うわけでございます。

現在の児童手当というのは、三歳未満で第一子、第二子が五千円、第三子からが一万円。それを私どもは、例えば十八歳あるいはそれ以上まで延ばして、第一子、第二子は一万円、第三子は二万円にする、その財源として、現在の扶養控除について、子供にかかわる部分について廃止をする、こういうことを申し上げているわけでございます。

私は、やはり基本的な考え方として、子供を育てていくということが、これはプライベートな問題なのか、それとも社会性を持った問題なのかという、そこの議論だと思うのですね。大蔵大臣は、この前の予算委員会の議論の中で、それは各国によっていろいろであります、扶養控除を採用しているところもあれば手当を採用している国もある。ヨーロッパは、フランスとかイギリスなどは手当ですね、アメリカは控除、これは税額控除なんですね。

いずれにいたしましても、私は、子供を育てていくということは、もちろんこれは非常にプライベートなことですけれども、しかし同時に、社会的な意味が非常にある。特に、現在の少子高齢化、少子化社会の進行の中で、社会全体としても、子供をふやし、育てていくということは国として応援していかなきゃいけないことだ、そういう面があると思うのですね。

そういうことを考えれば、やはりこれは所得税をまけるとかそういう話ではなくて、国として責任を持って手当として出していくということじゃないかと思いますが、大蔵大臣の御見解を聞きたいと思います。

宮澤国務大臣 いつぞやもこのお話ございましたが、私自身、これはやはりなかなかいろいろな問題があって難しい問題だなというふうに大変正直に思っておるわけです。

それは、各国に違ったやり方があるように、両方にメリットもデメリットもあるのだと思いますが、例えば、今、岡田委員のお考えを伺っていますと、税の方の扶養控除、これを全部やめるのか、一部こっちへ、控除の方の財源を今の児童手当の方に回すという考えがあるじゃないか、公明党もそのような御主張でございますが、税の方で申しますと、やはり納税者にいろいろ家族構成がございます。家族構成によって担税力も違いますし、また、正直言って、子供さんが多ければそれだけ費用もかかるということもございますから、税の方で、税の応能負担と申しますか、公正負担ということからいいますと、扶養者の控除をするということはやはり税にとっては大事なことだという主張がございますでしょう、恐らく。児童手当がいけないというのではなくて、税としての一種の論理がきっとある。そこをどうするのかということがございますし、それから、児童手当ということにいたしまして、それを歳出で賄っていくことが、今度はそれ自身にまたいろいろな問題が、これは詳しく申し上げませんが、あるのだろうと思います。

それから、恐らく御家庭の中には、子供にそういう手当をもらうよりは、むしろ歳出で、そのための施設でございますね、児童のための、あるいは幼児のための施設を国の政策として充実し、あるいは地方の施策として充実してもらった方が金銭としてもらうよりはむしろ好ましいと考えていらっしゃる方、あるいは考える考え方もあるでございましょうし、どうもその辺のところが、私もいろいろまだ考え足りないところがございます。

今、岡田委員のおっしゃいますことを私は反対でございますという気持ちで申し上げているのではなくて、いろいろ考える問題がある。そうして、児童の方に何かするとすれば、それは金で上げるのがいいのか。どうも既婚の女性方は金がないからとおっしゃっているのではないので、結婚をされないことによって児童の数がふえないということの方がどうも大きい要因のように思われますから、そうすると、金の問題なのか、あるいは、むしろそれだったらいろいろな施設を充実した方がいいのかというような問題もきっとその世界にはあるんだろうと。

結論で申しまして、なかなかどちらともわかりにくい問題で、いろいろ御議論が成熟していくのを、やはりそれにまつということが入り用なのかなと。少なくとも扶養控除の方を財源の関係からこっちへ持っていくということ自身には、なかなか税の方にも問題がありそうに思うわけでございます。

岡田委員 私は、施設整備をするというのは別の次元の問題で、それは当然やっていかなきゃいけないことだと思います。しかし、その施設をつくっても、それを利用するにはまたお金がかかりますね。そのときに、控除制度でやった場合と手当でやった場合で、どちらが公平か、そういう議論だと思います。

例えば、私どもの案と政府の案を比較して、例えば所得が二百万の方ですと、これは所得税を払っておられませんから、政府の控除制度では、三歳まではともかくとして、四歳以上は国の負担はゼロであります。一銭ももらえない。私どもの案ですと、例えば三人子供がいるケースを考えると四十八万円であります。平均的な七百万ですと、政府の案では十五万に対して、私どもは年間四十八万。例えば、三千万の高所得の方ですと、政府の控除制度ですと五十九万、私どもですと、所得制限がありますからゼロであります。どっちが公平なのかという問題だと思います。私は、やはり私どもの制度の方が公平だ、そういうふうに考えます。

そこのところについて、私どもは以上のような考え方に基づいて、しかも財源についてはそういった扶養控除を廃止するという思い切った提案もしながら御提案申し上げているわけで、これから長く議論していくというふうにはおっしゃらずに、早急に議論をしていただいて、私は今年度の予算からそういうものを反映していただきたい、そういうふうに申し上げておきたいと思います。

もう一つは、年金であります。
年金については、もう時間もなくなってまいりましたが、私自身も大変苦い思いがございます。五年前に、細川政権のもとで私どもは与党でありました。五年前の年金改革について、私も責任者の一人として議論をしてまいりました。

かなり思い切った改革をやったつもりでありますが、例えば基礎年金部分について、六十歳を将来二〇一三年から六十五歳にするとか、あるいはボーナスについても一%保険料をいただくとか、いろいろな改革をしたつもりですけれども、しかし結局見通しが甘過ぎて、今回また、それではとてもやっていけないと。もし放置しておけば、若い人の保険料が三〇%をはるかに超えてしまうということになる。

いろいろ議論していくと、なるべくつじつまが合うように数字をつくってしまいますので、そういうふうになりがちなわけでありますが、やはり年金制度を五年ごとに大きく変えていくということ自身が年金制度に対する不信感を招いているわけでありますから、一たん制度を大きく変えたら、そのまま二〇二五年あるいは二〇五〇年までそう制度の枠組みそのものは変えずにやっていける、そういう安心感を与えることが非常に大事なことだと思うわけでございます。

そういう中で、私は、特に今回やらなければいけないのは基礎年金、国民年金の改革だと思います。

政府の案はそこよりはむしろ二階部分にいっているように思いますけれども、やはり私はこの根っこの部分をどうするか。根っこの部分について、既に政府の方も将来二分の一は税でやるということは、何となくでありますが、お決めになって法律にも何らかの形で書かれるということでありますが、私は、これは全額税にするということをもう今決めるべきだ、そして来年からは二分の一少なくとも税を入れるということをやるべきだ、民主党はそういうふうに主張しているわけでございます。

これはいろいろな問題があるわけなんですが、例えば税方式を入れるとどういうメリットがあるか。これは厚生省の資料にもいろいろ書いてございますが、例えば第三号被保険者問題、あるいは学生の問題、障害者の無年金の問題などはすべて解決をする。それから、未納、未加入の問題、これは現在国民年金の支払いといいますか、保険料を負担する二千万人の方のうちの三分の一が何と納めておられないわけですね。そういう問題も税方式にすればなくなる、こういうことでございます。

こういった全額税方式について早急に検討して、来年からということになりますと、これは財源の問題が出てまいりますけれども、例えば五年以内に税方式にするんだということをきちんと出されるということが私は年金について大きな安心感を呼ぶと思うんですが、この点についてお考え、いかがでしょうか。厚生大臣、短くお願いします。

宮下国務大臣 今議員のおっしゃられた五年の見直しというのは、私どもとしては条件変化がなければ今回見直しする必要はございません。しかし、人口問題研究所の発表によりましても、高齢化がより進んでおるという点がございますので、このまま放置しておきますと保険料が三五%ぐらいになるのではないか、これでは維持できないということで今回改正に踏み切っている点は、御理解いただきたいと思います。

それから、基礎年金、国民年金の全額税方式につきましては、たびたび申し上げておりますように、そういたしますと、社会保険としての特質、メリットが失われていくということのほかに、税で国家が所得保障するということになりますれば、どうしても、今現在国家保障しているのは生活保護者等でございます。したがって、やがて資力制限その他の問題も出てまいりましょうし、全額税でやるということについては、私どもは、大変これは難しい、できないことではないかと思っております。

ただ、二分の一程度であれば、将来的に、中期的に見て検討しなければならないかということは頭に置きながら今回の改正に臨んでおる、こういうことでございます。

岡田委員 生活保護と同じようになって、例えばミーンズテストとか、そういうものが必要になるというお話をよく聞くのですが、これはそういうふうに考えればそうですけれども、そういうふうに考えなきゃいいのです。別に法律というか、憲法にそんなことが書いてあるわけじゃないですから。

それは、そういう新しい制度、例えば義務教育を考えてください。義務教育というのは、国が義務を負っていますけれども、それについては所得の制限とかそんなものはないですね。だれでも小学校や中学校に行って教育を受ける権利があります。それについて所得に応じてどうこうという話は、基本的にありません。だから、それは制度の立て方の問題であって、私はそれが理由になるというふうには思いません。

それから、未納者の問題はどうされるのですか。例えば二分の一にしても、この未納者の問題というのは解決しないわけですね。

これは厚生省の資料ですけれども、例えば、未納者の七割が民間の生命保険や個人年金に加入して国民年金の倍の掛金を払っている。いろいろ説得に行って払ってくださいと言っても、いやいや、民間の個人年金に入っているからといって追い返される。あるいは、収入が十分あるからいい、そもそも国なんか信用していないからいいよと。こういう人たちに出せと言う方が無理で、例えば強制執行みたいな形で強制的に集めたとしても、その次の分を集めたとしても、その後のことはまた同じことの繰り返しでありますから、もう私は制度的に崩壊しているのだ、そういうふうに思います。

そういう点も含め考えたときに、私は、税方式に思い切っていくべきだ、こういうふうに思うわけでございます。そういうことによって、例えば高齢者の方の生活保護の予算も要らなくなりますね。そういうプラス面も出てまいります。

ここは総理にお聞きしたいのですが、経済戦略会議の中では税方式が望ましいというふうに書いてありますが、総理としてどうされるおつもりですか。

小渕内閣総理大臣 経済戦略会議、最終報告をまだちょうだいいたしておりません。しかし、中間的にはそうした考え方が有力として報告をいただいております。

今、質疑者、厚生大臣、いろいろお話しされておりましたように、これはお二人のみならず、本問題につきましては、本院としてもかねて来大きなテーマとして取り組んできておるところでございまして、そういった意味で、戦略会議としても一つの考え方として打ち出されたものであろうかと思っておりますので、最終答申をいただきましたらそうした考え方も、私の諮問したこの会議そのものがそうした考え方を打ち出すということであれば、これは広くやはり国会におきましても御議論をいただくというようなことも必要ではないか、こう考えております。最終的答申をいただきましたら、十分検討させていただきたいと思っております。

ただ、なかなか困難な問題であることは、従前からここで御議論をお聞きいたしておりますと、私自身、大変難しい問題、こう理解しております。

岡田委員 それは、決断の問題なんですね。
もう少し言っておきますと、例えば、今の水準でいえば基礎年金お一人六万五千円、御夫婦で十三万円ですね。これだけの額が来るということになりますと、私は、例えば介護でありますとか高齢者の医療でありますとか、少なくともお一人六万五千円の月の収入が必ずあるという前提で組み立てることができますから、かなり制度の仕組みについていろいろなバリエーションをとる余地が出てくるというふうに思います。その収入がほとんどゼロの方もいらっしゃれば六万五千円の方もいればということですと限られてしまいますけれども、そういう全体に及ぼすメリットもございます。

それから二階建て部分についても、やはりこの一階部分をどうするかということが決まらないと二階建て部分がはっきりしてまいりませんので、そういう意味でも早くこれは政治の決断でやるべきだ、そういうふうに思っているところでございます。

残された時間が非常にわずかになりましたが、公務員の定数削減の問題について一言お聞きしたいと思います。総理にお聞きします。

自自の合意でも、十年間で二五%削減するんだ、こういうことをお決めになりました。しかし、この予算委員会での議論を聞いておりますと、独立行政法人に移行する約七万人の分について、そのうちのどれだけが公務員の身分を保障されるかわからないけれども、しかしその分も含めて二五%だ、こういうお話ですね。すると、独立行政法人に私は公務員の身分を持っていくこと自身が矛盾していると思いますが、それも含めてということになりますと、その分除くと二五%削減というのはかなり偽りの数字で、実際には一割そこそこの数字になっちゃうんじゃないか、こういうふうに思いますが、ここは、そういったものは含まずに、本当の意味での国家公務員の枠の中で二五%減らすということをお約束いただけませんでしょうか。

小渕内閣総理大臣 まず、当初自民党として考え、そして発表いたしておりましたのは二〇%削減でございました。これは、中央省庁等改革にあわせまして、十年間で一〇%以上の計画的削減と、独立法人化により十年間で二〇%削減を行うものであり、中央省庁等改革基本法で明確でなかった独立行政法人化を含めた削減率について具体的に数値を示し、私の決意を表明したものでございます。

お尋ねの点につきましては、先般、自民、自由両党間での合意を受けまして、中央省庁等改革に係る大綱に盛り込んだ、御指摘の十年二五%削減を達成するため、与党とも密接に連携しつつ、その実現に最大限努力してまいりたいと思いますが、この時点におきまして独立行政法人を除くということをお約束せよと言われましても、これから両党間の話もございますので、大変申しわけありませんが、そこまでの決断はしかねるところでございます。

岡田委員 もう時間もありませんので申しませんが、特殊法人の改革についても、私は役所の皆さんにこの特殊法人の改革で一体幾ら予算が節約できるのかと聞いたら、わかりませんというお話ですね。民間であればやはりリストラや合併によって幾らお金が浮くかということがポイントでありますけれども、そういう話は全くないわけで、私は、いろいろな改革というものが大変中途半端に終わっているということを申し上げたいと思います。

最後に、この「財政構造改革を考える 明るい未来を子どもたちに」という財政制度審議会の平成八年の報告がございます。この中に書いてあることですけれども、基本的に野方図な財政支出を続けていたらその国の国債というのは消化できないような状態になる、こういう話がございます。まさしく今の日本はそういう状況になっているんじゃないか、そのことを指摘申し上げて、私の質問にいたします。

終わります。




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