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2000.01.03|マスコミ

特集 財投改革の焦点-「財投改革の基本理念を問いただす」ー

郵貯、公的年金の自主運用は国債などに限定すべし

まず、今回の財政投融資改革で郵便貯金、公的年金について大蔵省資金運用部への預託義務を廃止して自主運用することとし、その金が財投機関に直接流れることがない仕組みにしたことは方向性としては正しい。しかし、具体的内容にはさまざまな問題がある。

たとえば、郵便貯金の自主運用について言えば、将来の公社化を前提とすればそのような仕組みをとらざるを得ないだろう。したがって、自主運用自体は否定しないが、政府ないし公社が莫大な金を運用することのデメリットについてよく考えておく必要がある。

第一に、政府ないし公社による効率的な運用が可能なのかという問題がある。たとえば、年金福祉事業団ではかなり非効率的な運用がされてきたという事実がある。そもそも、政府には利益をあげるという動機がないわけだから、効率的な運用を求めること自体に無理があるといえよう。

また、役所は機会があれば権限を拡大しようとするために、いつのまにか役人の権限拡大のための運用がなされてしまう。今回もそうした疑念を払拭しきれない。

第二に、国が最終的に責任をもって調達した金がマーケットに出て行くことの悪影響を考えなければならない。

いままでは、郵便貯金、公的年金で集めた金が財投という形で利用されてきたわけだがこれをマーケットで自主運用することにし、財投のための資金は別に調達するということになれば、市場における官のプレゼンスは二倍に拡大してしまう。

私は以上の懸念を払拭するため郵便貯金、公的年金の運用対象を限定すべきだとおもう。長期で見れば、株式や債権の利回りは国債の利回りに収斂していくはずである。特に年金資金は超長期かつ多額の資金であり、国債で運用すればいい。今回の年金改革法では公的年金の自主運用に、裁量の余地を与えすぎている。グリーンスパンFRB議長は公的年金を株式で運用することに反対したが、私も基本的に同じ考えをもっている。郵貯の場合は国債以外の運用を認めるのであればあくまでも公社の自己責任、独立採算、すなわち運用で穴があけば最終的には預金者が負担するという前提で自主運用を行っていくべきと思う。

次に今回の財投改革で財投機関を規律付けるために、マーケットメカニズムを働かせるという考え方をとっていること自体は正しいと思う。しかし、それが現実にどこまで可能なのかという懸念があり、さらなる議論が必要と思う。

財投機関の資金調達は原則的に財投機関債により、それを補うものとして政府保証債や財投債を活用するということだが今の特殊法人の経営形態を前提にして財投機関債にy彫る自力調達など果たして可能なのだろうか。

情報公開、会計基準の整備などが必要とも言われているが、より根本的には財投機関の経費のうちどれだけが税金で賄われるのかについてルールが明確にならなければ、投資家はその信用を評価しようがないのではないか。しかし将来の補助金の出し方をルール化することなど可能だろうか。

また、大蔵省の説明では、財投に必要な資金のうち、どれだけが財投機関債で賄われ、どれだけが財投債で賄われることになるのかがはっきりしない。この点は財投機関を最終的に税金で支えるのか、倒産させるのかにもかかわってくると考えられ、財投機関債と財投債の割合を財投機関ごとに明らかにする必要がある。

大蔵省は「財投機関も倒産しうる、そのための法律を整備する」という説明をしている。しかし、国の政策目的を達成するために存在する財投機関を本当に倒産させることなどできるのだろうか。財投機関は国にとって必要だから存在しているのに、マーケットに受け入れられないから倒産させるという論理は矛盾していないだろうか。こうした議論の整理が十分にできていない。

結局、市場で資金調達できない財投機関は倒産させ、損失を税金で補填しないことを確認する一方で、このような場合の政策目的の達成は直接税金で実現するなど新たな枠組みを別途考えるしかないのではないか。たとえば、住宅金融公庫が財投機関債で資金調達できないのであれば、住宅金融公庫はスクラップにして民間の住宅融資に対する金利補助や減税により同じ政策目的を達成することにすべきである。

現在は景気対策のために財投規模が膨れ上がっているが、その中身には相当問題がある。いまの財投機関に民間企業と同様の会計基準を適用すれば、相当の不良資産が出てくるはずだ。

将来にわたって有益な事業でなければ景気対策としても実施する価値がないはずで、景気対策の中身を再点検する必要がある。従来の潤沢な財投原資を前提にした事業運営の発想を根本的に改める必要がるが、いまの政府の景気対策の大盤振る舞いを見ていると、はたしてそれが可能なのか大きな疑問がある。いずれにせよ、今回の財投改革の方向性は正しく、これまで指摘した問題点を克服しながら、あくまでも改革を実現しなければならないと思う。(談)




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