(質疑内容)経済の現状認識と補正予算、高速道路整備、医療制度改革、選挙制度改革など
岡田委員 民主党の岡田克也です。きょうは七十分間のお時間をいただいて、総理に質問したいと思っています。
きょう、補正予算の審議でありますので、補正予算を中心とする経済、雇用の問 題、そして小泉改革の象徴としての高速道路、あるいは医療制度の改革の問題を中心 に総理にお聞きしていきたいと思いますが、総理、お見受けすると、最近ちょっと元 気がないという話があるんですよね。ですから、きょうは、ぜひ元気よくお答えをい ただきたい、端的にお答えをいただきたい、そういうふうにお願いをしておきたいと 思います。
さて、ちょっと通告の順序と変えますが、まず、外交、安全保障の問題を三点だ け、端的にお聞きをしておきたいと思います。
第一点は、先ほど井上委員がお話しになっていた京都議定書の問題であります。
私は総理にお聞きしたいと思っておりますが、先ほどの質問の中でも、ちょっと歯 切れが悪いなという感じがしたんですね。きょうの夕方改めて会議を開いて方針をお 決めになるんだろうと思いますが、総理として、この京都議定書、国会の承認、これ は通常国会での国会の承認に向けて、総理としてどういうお考えなのか。きちんと通 常国会に批准案をお出しになる、そういうことをこの場で明確にお述べいただきたい と思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 前国会から私は一貫しているんですよ。何ら変わっていない。 二〇〇二年発効を目指して努力すると。今回のCOP7、ボン会議に続いて、できる だけ合意に向けて努力しようと。京都メカニズム、日本の立場を尊重しながら各国と の合意に向けて極力努力してくれと。ある場面においては決裂するかもしれないとい う際どい交渉を川口大臣が見事にやってのけてくれまして、今回ようやく合意にこぎ つけた。私は、川口大臣の努力、苦労を高く評価しております。
来年、日本は、残念ながらアメリカは不参加でしたけれども、今後とも粘り強く、 アメリカも建設的な提案を出していただきまして、この京都メカニズム発効のために 協力できるような働きかけを日本としても鋭意続けていきたい。この姿勢は、前国会 から全く変わっておりません。
岡田委員 いろいろ議論はありますが、今、我が国が批准をするということに対し て総理が積極的な姿勢をお示しになったというその一点で、次の質問に移らせていた だきたいと思います。 アメリカの核政策について一言お聞きをしたいと思っています。
日本が提出をした核廃絶決議案に対して、米国政府が反対をいたしました。あるい は、今開会中の核実験停止条約について、CTBTについて、国連の会議にアメリカ はボイコットいたしました。そういうことを見ておりますと、米国政府のこの核の問 題に対する取り組みが大分変わってきたんだろう、ブッシュ政権になって変わってき たんだろうというふうに思わざるを得ないわけであります。
しかし、核の問題は、唯一の被爆国である我が国にとって、核の廃絶に向けて努力 を続けていくということは、これは非常に重要なテーマだというふうに思います。 今回の米国で起きたテロ事件を見ておりましても、私は、核の問題というのが実は 潜在的な大きなテーマになっていると思うのです。
米国政府は、米国内にビンラディンの一派が核を持ち込むんじゃないかということを懸念しております。高層ビルに飛行機がぶつかったのも悪夢でありますが、米国の 大都市で小型核爆弾が爆発をするというのはそれを上回る悲劇だというふうに思います。あるいは、パキスタンという国が今問題になっておりますが、パキスタンは核保 有国であります。もし、パキスタンの国にクーデターが起きて、そしてより不安定な 政権になれば、これまた世界の平和と安全にとって非常に重要な事態であります。
そういうこともありますから、核の問題にアメリカがしっかり取り組んでいくということは私は非常に大事なことだと思いますが、私自身のアメリカ政府と話したその 感触でも、果たしてこの核実験停止条約についてアメリカがいつまでも守り続けるのか、あるいはどこかでこれを破ってしまうんじゃないかという懸念がぬぐい切れないわけであります。そして、もしアメリカが核実験停止条約をボイコットするといいま すか、このモラトリアムをやめるということになりますと、これは当然、中国初めほ かの核保有国に波及をし、あるいはインドもパキスタンもということになって、今の 核体制がばらばらになってしまう危険をはらんでおります。
そういう意味で、ぜひ総理には、ブッシュ大統領とこの問題について真剣なテーマ として取り上げて議論していただきたい、そういうふうに思っておりますが、総理の 御見解をお聞きしておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 包括的核実験禁止条約、いわゆるCTBTですけれども、これについて、日本の提案に対してアメリカの賛成を得ることはできませんでしたが、今 後とも、日本の非核政策、核のない世界をつくろうということに対しましてアメリカの理解を得れるように、粘り強く努力を続けていきたいと思っております。
岡田委員 これは、単に日米の問題ではなくて世界の平和と安全の問題だ、しっかり取り組んでいただきたいと御要望申し上げておきます。
三番目に、例のテロ特措法の話でありますが、私は、国会の事前承認ができなかった、法律上改正ができなかったということは非常に残念なことだと今でも思っており ますが、いずれにしろ、事後承認であれ、国会承認という手続がとられるわけであります。
ただ、これは今とても微妙な段階にあって、二十日以内ということでありますが、 場合によっては、この国会に承認手続がとられないという可能性もございます。そう いうことになりますと、法律上は次の通常国会。そのときにはもう恐らく自衛隊の活 動はもちろん始まっておりますし、場合によっては終わっているかもしれない、そう いう状況であります。
そこで、ぜひ、この国会に承認手続をかけていただきたい。そのことをお約束いた だきたいと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 これは、基本計画を策定し、自衛隊をある地域に派遣するよう な状況になりましたならば、当然国会に事後承認を求めるわけであります。しかし、 その時期によって、まだいつ派遣するか決めていないわけです。今国会、十二月七日 に閉会でありますが、この期間中にそういう状況になるのかならないのかというの は、現時点ではまだ判断するのは早いと思われまして、これはその時点で判断するし かないと。当然、国会開会中であれば事後承認を求めますし、閉会していたならば、 次期国会に速やかに承認を受けなきゃならないという法律の規定どおり対応していき たいと思います。
岡田委員 今のは役人答弁だと思うんですが、基本計画の決定は、これはもう近々 あるということも言われております。それに基づいて自衛隊が出ていくというのも、 恐らく、この国会開会中にはそういうことになるんだろうと思うんですね。それから 二十日以内ということですから、国会開会中に自衛隊が出ていくことになれば、速や かに承認手続をとっていただきたい。
二十日あるからといって延ばしている間に国会は終わってしまう。次の通常国会に なるということになりますと、これは自衛隊の皆さんにとっても、自分たちが国会の承認をきちんと得て活動するのか、あるいは得ないで活動するのかというの は、これは相当違うと思いますから、極力そういう方向で努力をしていただきたいと思います が、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 今私が考えることは、国会の事後承認を得れるような基本計 画、派遣は考えていないということであります。国会の事後承認を得れることができ ないような計画は考えていないということで御理解いただきたいと思います。
岡田委員 それは、与党が多数ですから、政府がつくれば事後承認は得られるんだ と思います。しかし、我々もそれはできるだけ、これは中身を見ないとわかりません が、できるだけ承認をしたい、そういう気持ちはあります。そして、自衛隊の皆さん も恐らく、多数の、圧倒的多数の承認を得て活動するということを望んでおられると 思いますから、極力そういう方向で御努力をいただきたい、そのことを申し上げてお きたいと思います。
さて、経済あるいは雇用の問題、補正予算の問題について質問したいと思います。
まず、今回の補正予算でありますけれども、ある意味で小泉総理の思いがかなり凝 縮をした、そういう予算だろうというふうに思っております。つまり、第一に、三十 兆円の枠を守った。そして、従来型の公共事業の追加による景気浮揚策というものを ほとんど入れなかった。この点は私は、非常にわかりやすい予算だ、そういうふうに 思うわけであります。しかし、他方で、経済の状況は非常に悪い。町を歩けば、あち こちから悲鳴が聞こえる。そういう状況にあることもこれまた事実であります。
そういう意味で、今回のこの予算というものは、私は、二次補正は総理は考えてお られないと思いますので、この予算で本当に今の経済の状況に対して対応できるんだろうか、そういう疑問の声が当然あるわけでありますが、そこのところの総理のお考 えというものを、あるいは経済の現状に対する認識というものをお聞かせいただきた いと思います。
小泉内閣総理大臣 確かに景気状況は厳しいものがありまして、できれば、国債を 増発して景気が回復するんだったら私もやりたいですよ。しかし、今の日本の財政状 況、景気状況、そして過去の、今までの景気刺激策を考えると、ここで五兆円でも十 兆円でも国債を増発しろという声がありますけれども、果たしてそういうことをして 持続的な経済成長を確保できるだろうか。その確信を持てたら私もやりますよ。確信を持てないところに苦しいところがあるんですよ。
そこで、私としては、ある程度、二、三年は低成長を甘受しなきゃならないな。将 来の持続的成長を考えるならば、当面の景気を考えて国債増発をすれば、ある程度プ ラス成長には寄与する面もあると思いますが、同時に副作用のマイナス効果も出てく る。両面を考えなきゃいかぬということで、私が総理に就任したらすぐ景気回復する んじゃないかという見方もありますが、そうじゃないんです。
私ほどきつい、甘い公約をしなかった総理はいないと言われているぐらい、甘いこ とを言っていませんよ。私が総理をやめたら景気回復するだろうと言っているぐらい なんですから。二、三年は低成長を我慢してくれ、その覚悟が必要だということで、 改革なくして成長なしということで取り組んでいるんですから。私は、今の、改革を しないで景気回復する、国債を増発して景気回復するんだったら、とっくにやってい ますよ。そういう状況にならないという認識の上に、低成長を覚悟しながらも、改革 を進めていって、持続的な経済成長に持っていきたいということでやっているわけで あります。
今回も、そういう中で、私は、できるだけ構造改革に資するような補正予算を組み たい。同時に、その中で、雇用が厳しい状況でありますから、公共事業によって失業者を救済するということでなくて、むしろ新しい産業に向けるような、そして雇用対 策が生きてくるような方面に重点的に予算を使いたいということでやっているわけで ありまして、私はむしろ、民主党が、厳しく三十兆円以下に抑えなきゃいかぬということを野党でありながら言っていることに対して、共感を覚え、評価をしているぐら いなんですよ。
そういうことを考えて、私は、現下の厳しい状況、国債増発が果たして本当に景気 浮揚に役立つのかということをむしろ厳しく点検しながらも、選択の幅の狭い政策運 営に細心の注意を払わなきゃいけないと思っております。
岡田委員 今年度の補正後の国債の発行額九十九兆八千億、もちろん新発債は三十 兆でありますが、借りかえも含めますともうほぼ百兆という規模に達している。そう いう中で、国債マーケットは大変緊張感のある運営を強いられる。ちょっとしたこと があれば長期金利が急上昇する。そういう危険を秘めた中での財政運営でありますか ら、そのことも考えながら全体を組み立てていかなきゃいけない、そういうふうに私 も思います。
ただ、いろいろお聞きしていると、閣内でいろいろな雑音といいますか、多様な意 見が聞こえてくるわけであります。
二次補正の声は、私が聞いているだけでも何人かの閣僚が、明確には言っていない かもしれませんが、かなりそれを類推させるような言い方で言われているわけであり ます。もし二次補正で、そしてその中で国債、もちろん二次補正を組むということは 三十兆の枠を超えてしまうわけですが、十五カ月予算を二次補正で組むということに なりますと、これは、今年度の三十兆ばかりか来年度の三十兆も事実上崩すというこ とになるわけであります。
そういう意味で、総理がそこまでおっしゃいながら、もし二次補正予算を組むということになると、私は、総理が今言われたことは全部うそになってしまう、こういうふうに思いますが、そこはいかがなんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 それは、積極財政論者から言わせれば、小泉は来年度予算三十 兆円を目標にしているのだから、今年度は十兆円だろうが二十兆円だろうが出せばいいじゃないかという声がありますが、私は、その辺は財政規律というものも考えな きゃいかぬということで、厳しく今の歳出構造を見直そうということに重点を置いて いるわけであります。
そういう中で、今後、テロ発生後の状況は、アメリカの経済においても大分見通し が違ってまいりました。今、補正予算を審議している段階でありますので、この補正 予算を通すことに対して全力を投球していきたい。今後、非常な経済状況に変化が あった、経済は生き物といいますから、そういう状況については私は大胆な政策をと るのはやぶさかではありませんが、現在は、今までの状況について、今の補正予算について、まずはこの予算を成立させることに全力投球するというのが私の責任であると思っております。
〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
岡田委員 今の総理の御答弁を聞くと、一つ前の御答弁と随分落差があるようにも 思われるわけで、経済状況の変化があればということですが、もう既に今、テロが起 きて時間もたって、経済の全体の見通しということはわかりつつあるわけで、その時 期に、今、補正を出して三十兆の枠を守った、そして、従来型の需要不足を追加する ようなそういうものはやらないのだと胸を張っておられながら、今の答弁を聞くと、 果たしてどちらに真意があるのだろうか、こんな感じがしてならないわけであります。
私は、もし必要があるのであれば、三十兆の枠を守ってでも今やるべきことはたく さんある、そんなふうに思っております。
これは、総理御就任のときの予算委員会でも申し上げたことでありますが、今年度 予算を聖域化せずに、その組み替えをすることで財源はまだ出せる、まだ公共事業予算も二兆円ぐらい残っている、もちろんかなり進んでいるものもありますが、その中 から一部を捻出することで、私は、例えば雇用対策はもっともっと充実できる、そん なふうに思っております。
そこで、雇用対策の問題について一言お聞きをしたいと思っておりますが、失業率 五・三%、恐らくこれは、ここでとどまるものではなくて、さらに失業率は高まって いくということは明らかだと思いますが、そういう中でどうしても雇用対策がおくれ ている。参議院選挙の前から、我々は、雇用対策を中心にしっかりとした予算を組む べきだということを申し上げてきたわけでありますが、それが十分にできないまま今 日まで至っております。
今回の五千五百億円の雇用対策ということでありますが、我々、それは質、量とも に不十分である、そういうふうに考えております。例えば、これは後ほど同僚の議員 から詳しくいろいろな議論があると思いますが、緊急地域雇用特別交付金三千五百億 円というのがありますけれども、果たして今まで、同様の交付金の中で雇用は十分に ふえてきたのか、こういう問題があります。あるいは、我々が以前から主張しており ますように、雇用保険が切れた方に対する対策、あるいは、そもそも雇用保険の適用 がない自営業者で廃業した方に対する対策、そういうものが今回十分手当てされてい るかというと、私は、それは非常に不十分である、そういうふうに指摘せざるを得な いわけであります。
我が党はこの国会に、雇用関係、従来からの我が党の主張に基づいて二つの法案を 準備しております。そして同時に、先ほどの、予算の組み替えによって約八千億円の 雇用対策を提案しているわけでございます。
総理、今の雇用情勢を見て、今回のこの五千五百億だけで十分だ、そういうふうに お考えなんでしょうか。御意見を聞かせていただきたいと思います。
坂口国務大臣 私からまず具体的なことだけ少し申し上げたいというふうに思いま すが、実質的に一兆円、その中で五千五百億ということでございますから、これはま あかなり大きな額でありまして、今までなかなかこれだけの割合を振り向けたことは なかったというふうに思っています。したがいまして、この五千五百億の内容をより 効果的に我々は運用しなければならないというふうに思っています。
先ほど御提示のございました三千五百億円の特別交付金の問題にいたしましても、 確かに、今までなかなか十分にその効果を発揮しなかった面もあることを、率直に私 たちは認めなければならないというふうに思っています。この点につきましては、今 までから、地域においてどういう雇用を創出するかということで、地域に考えていた だくということをしてきたわけでございますが、やはりその辺のところをもう少し御 相談させていただきながら、より効果的にしていかなければならない。
また、失業者というものを中心にしてやはりしていかなければ、失業をしていない 人がそこに入り込んでくるというようなことになってはいけないわけでございますの で、完全失業者の中からその人たちを十分にしていくといったようなこともしてい く。
それからもう一つは、自営業者の皆さん方で廃業なさる方も非常にふえてきている ことを私たちも非常に気にしているわけでございまして、この皆さん方に対しまして も、今回、融資を受けていただきやすいような体制をつくった、そういうことでござ います。
岡田委員 雇用の問題は今回の補正予算の中心テーマでありますから、私は総理に もぜひ御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 今回は、テロが発生する以前の状況におきましては、雇用対策 国会という見方が大方の見るところでございましたけれども、テロ発生後、いろいろ な問題が出ておりまして、そういう中でも、今回、雇用対策においては最重点施策と して、それぞれの予算を今厚生労働大臣から述べたとおりに打っているわけでありま す。
それは、多ければ多いほどいいという状況ではございますが、今までの雇用対策資 金というものが有効に使われているのだろうか、あるいは、多くの求人がありながら 求職者がその求人企業に行かないという点、情報公開においてもっと行き届いた配慮 が必要ではないか、あるいは、雇用保険を受給できない方々に対してどういう対策が あるかということをきめ細かに打っておりますので、私は、この効果を今後十分に注 視していかなきゃならないと思っております。
〔(北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
岡田委員 職を失うということは、人生において最もつらい経験の一つだろうとい うふうに思います。
そういう意味で、今回のこの補正、私は雇用対策は十分ではないと思いますが、今 後、来年度予算の編成に当たっても、この雇用の問題に引き続き重点を置いてしっか りとした雇用対策を組んでいただきたい、そういうふうに思いますが、総理のお考え、決意を聞かせていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 職を持たないという苦しさ、これは大変なものだと思います。
そういう点におきまして、この改革が成功するかどうかというものは、雇用対策、 失業対策をどう有効に機能させるか。また、多くの国民が新しい産業に対してどのよ うに希望を持って立ち向かうことができるかということを考えましても、雇用対策と いうのは、改革を成功させるかどうかの大きなかぎであるということを認識しており ます。
岡田委員 今回のこの補正のもとになった改革先行プログラム、この中に、ある意 味では政府の基本的な財政に対する考え方が述べられていると私は思います。
この中に具体的に書いてある、先ほどの総理の答弁にも共通するものがあるわけですが、現在不況であるということを述べた上で、「しかし、この状況に、単なる公共 投資等による従来型の需要追加策によって対応し、日本経済にとって必要とされる構 造問題の解決を先送りにしてはならない。」こういうふうに述べております。
今後、来年度予算の編成に当たっても、基本的にこの考えを踏襲し、景気対策の名 のもとに野方図な公共事業あるいは需要追加策を行っていかない、そのことについ て、もう一度総理の決意をお述べいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私は最近疑問に思っているのは、私の経済財政政策あるいは構 造改革路線に対して厳しい批判を加えている積極財政論者の議論を聞きますと、今私 が進めている構造改革を全然言っていないんですよ。国債をふやせば景気が回復する、規制緩和をしろ、規制改革をしろ、細かく見ますと全部やっているのです。積極 財政論者が言わなかった構造改革に初めて手をつけているんですよ。
私は、経済成長がプラスになろうが、あるいは低成長、マイナスになろうが、今私 が進めている構造改革路線というのはどうしても進めていかなきゃならない、そういう覚悟でやっていることを御理解いただきたいと思います。
岡田委員 それでは、その小泉構造改革について、具体論について幾つかお聞きし たいと思います。
新聞報道等では、どうも具体策になった途端に、いろいろ与党の中でも、あるいは 場合によっては政府の中でも異論が噴出をして、具体的な構造改革が進んでいないの ではないか、こういう報道が非常に目立つようになってまいりました。私は、まさし くこの十一月、そして十二月、この二カ月間が正念場、ここで本当に小泉構造改革な るものをきちんと進めていくということになるのか、それとも、結局は従来のように、口では叫べど実態は進まないということになってしまうのか、非常に大事な二カ 月だというふうに思っております。
そういう問題意識の中で、まず高速道路の整備の問題についてお聞きをしたいとい うふうに思っております。
きのうもテレビ番組等でやっておりましたが、この問題を考えるスタートは、私 は、やはり本四公団、本四架橋の失敗という事実だというふうに思っております。
平成十二年度のこの本四公団の収支をホームページで見ますと、とにかく料金収入 は八百七十億円、そして金利と管理費合わせて千六百三十億円。つまり、本来であれ ば、料金収入で少なくとも金利と管理費は賄い、そして一部返済に回す、五十年で全 部返済を終わるという前提で組み立てられていたものが、今や料金収入の倍ぐらいの コストになっている。八百七十億円の料金収入に対して、金利と管理費だけで千六百 三十億円になっている。民間企業であれば、一億円の売り上げの企業が二億円の赤字 を出している、それに近いような状況だと私は思うわけであります。そんなことは民 間では全く成り立たない。
なぜこういう失敗が起きたか、総理、どういうふうにお考えでしょうか。
小泉内閣総理大臣 これは費用対効果を厳しく見直す点に怠りがあったと思いますね。 そして、道路をつくってくれという声はどこでも多いんですよ。政治家、政党は、 選挙になれば、あるいは選挙を経験している方はよくわかると思いますが、道路をつ くった方がいいかつくらない方がいいかといえば、みんなつくってほしいんですよ、 どこの地域でも。その要求にこたえるのが政治家じゃないかと。候補者になれば、あ る地域に行って、ここの道路をつくってくれと。そんな必要ないと言ったら、もう総 反発を受けることは目に見えていますよね。できないなんて言うと、できないことを できるのが政治家じゃないかという文句は、必ず有権者は、与野党問わず声が出てき ます。それで、やりますやりますと。
もう、自分たち、税金を負担していないところでも、だれかが負担するんだろう と。税金を投入するということは自分たちの負担と思っていませんから、多くの地域 においては。おもしろいことですよ。実際、自分の負担になるんだけれども、国費で 負担しろ、税金を投入するということは、地元じゃ負担しないと思っている地域の住 民がいっぱいあるわけです。そういう方々を相手にしていかに当選しなきゃならない かというのが、政治家は苦労するわけですよ。希望を持たせなきゃいかぬ。できない できないということじゃなくて、できるんだ、おれがやるんだと言ってみんな当選してきているわけでしょう。それで、みんな、やりますよやりますよと。そして、負担 は後へ回しましょう。
先ほど扇国土大臣がいいこと言ったじゃないですか。オリンピックのとき百円だ、 いずれただになります、今、七百円になったと。一つ期間が終わると、もっと必要だ とまたやる。そういうところに今行き詰まりが来ているんじゃないかということで、 私は見直しが必要だと。そこが構造改革なんですよ。
今は大転換期だとみんな言いますよ。明治維新、第二次世界大戦後に匹敵する大転 換期だ、転換しなきゃならないと言いながら、高速道路計画を見てみなさい、今、私 の構造改革に反対している人たちは、今までの計画を継続しなきゃいかぬ、現状維持 を守らなきゃいけないと言っています。何のためにそれじゃ転換しようとしたんです か。だから私は、そうじゃない、転換する必要がある、見直しということを言ってい るんです。
今、この十一月末には大体の方向が見えてきます。私は、小泉改革ができっこない できっこない、道路公団の民営化なんかできっこないと言った、できっこないところを最初にやるんですよ。時期が、もうじき迫っています。今、まだ言う段階じゃあり ません。できないという見方に対して、どうなるか、見ていただきたいと思います。
岡田委員 今、道路公団のお話をされましたが、確かに私は道路公団の現状という のはかなり危機的状況にある、こういうふうに思います。
先ほど本四公団で、これも本四公団の責任というより私は政治の責任だと思います が、しかし、その本四公団で、料金収入の中でとても利息も管理費も払えないという 状況を申し上げましたが、道路公団の路線の中でも十八路線は、料金収入の中で管理 費と利息を払って、若干返済もできている。その中には、もう既に償還の終わった東 名や名神もある。しかし、残りの十八路線は、同じように料金収入の中で管理費と利 息が払えない状況にある。もちろん、その中にはまだ完成途上にある路線も含まれて いることも事実でありますが、しかし、このまま放置しておくと道路公団も大変な重 荷になる可能性がある。
これはいろいろな見方がありますけれども、例えばこの構想日本のレポートによる と、最大限で四十四兆円の未償還金が発生するおそれがある。四十四兆円の未償還金 という意味は、我々の税金を四十四兆円投入しなければならなくなる、こういうこと であります。そういう状況にある中で、私は、道路計画の見直しというのは急務だと 思うのです。
今、まず総理がおっしゃった道路公団の民営化という話であります。しかし、私 は、民営化の前にやはり議論すべきは、今の整備計画をどうするか、こういう話だと 思います。そこのところを議論せずして、つくることはもう政治で決めたからこれは 全部つくれ、こういうふうに言って、そして民営化だ、自分の足で歩いていけ、こういう議論は成り立たないだろう。民営化するということは、みずから設備投資につい て意思決定ができる、少なくとも押しつけられないということがなければ、民営化の 意味はないわけであります。そういう意味で、私は、民営化も大事だが、それ以上 に、それ以前に整備計画をどうするんだ、やはりこういう問題が重要だというふうに 思っています。
総理はこの整備計画の残る約二千四百キロについて、私は、一たん凍結をして、そ んな時間をかける必要はありませんから、凍結した上でしっかり採算を見直す、そし て採算の合わないものについては基本的にやらない、こういう考え方で挑むべきだと 思いますが、総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今、いろいろな案が出てきております。最近ようやく、民営化 なんかできっこない、あり得ないんだと言っていた人たちも、民営化はやむを得ないという議論に変わってきているのも御存じだと思います。だんだん世の中が変わって きているんですよ。しかし、民営化はさせるけれども今までの計画は全部実施するん だ、形だけ民営化して実体は変わらないという意見も出てきております。私は、いろ いろな案を今聞いているところであります。そして、今月末には結論を出しますか ら、その点について御批判をいただきたいと思います。
今私が考えているのは、私は、道路整備計画あるいは高速道路運営、道路公団の運 営に対して専門家ではありません。独断専行を排するように努力はしますけれども、 大筋の方向としていかに税金のむだ遣いをなくすか、こういう観点から、民営化する 限りはむだな、あるいは将来多くの国民に負担を課すような道路建設を避けるような形で、必要な道路は一体どこの地域なんだろうか、どういう道路なんだろうか、建設 費をできるだけ下げるためにはどういう努力が必要になるんだろうかという観点から、しっかりとした、民営化なら民営化として効率的な道路建設に何がふさわしいか という案を今検討しているところであります。
そういう面においてもう少し時間がかかりますけれども、そう長くはかかりませ ん。今月末には、私の考えている方向がどういうものになるか、しばらく、御期待と 言ってはちょっと失礼でありますけれども、時間をかしていただきたいと思います が、しっかりとした方針を明示していきたいと思います。
岡田委員 具体的にはよくわからないわけでありますが、今の総理のお考えを私な りに解釈すると、今の整備計画をそのままにした上での民営化というのは、それはな いんだ、整備計画の見直しはする、こういうふうにはお聞きをしました。ただ、見直 しの中身もいろいろある。それは、コストを下げるとかいろいろなことがあるんだろ うと思いますが、私は、今のこの状況は、単に例えばコストを一割二割下げたからと いってそれで済む話じゃないというふうに思うわけですね。
そういう意味で、やはり一たん凍結をして、そしてきちんと、申しわけないが国土 交通省じゃなくて、その外のところで専門家が集まって、これは半年か一年あれば採算の見直しなんかできますから、そういう場をつくってしっかり見直しをす る、採算性の見直しをする、こういうことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 今は大きな転換期である。転換期であるならば、今までの計画を維持する、継続するということはあり得ないんです。見直すんです。
岡田委員 整備計画の見直しという意味は、それは今の九千三百四十二キロ、これ について見直しをして、そしてつくらないものも出てくる、こういうことですね。
小泉内閣総理大臣 見直します。
岡田委員 一時凍結をするとか、あるいはこの九千三百四十二キロを見直しをした 結果中止するものが出てくる、こういう明快な総理の答弁を期待しておったんです が、非常にわかりにくい答弁で残念です。
私は、総理みずからもおっしゃるように、バブルの時期につくった計画を、民間で は、そのときにあった設備投資の結果として今非常に苦しんでいる、バブルの後遺症 に悩んでいる企業は多いわけです。しかし、この話はバブルのときにつくった計画をこれからやろうという話ですから、これはとんでもないことだというふうに思うんで すね。
そして、責任はだれがとるかといえば、結局だれもとらない。税金でやっているな ら、毎年毎年のことですから、ある意味じゃそのときの納税者が結果的に責任をとる ということでありますが、これは借金でやっていくわけですから、先ほど言ったように、二十兆、三十兆あるいは四十兆も税金で後で穴埋めしなければいけないというこ とになったときに、それは我々ではなくて次の世代に対して責任をかぶせていくとい うことになります。
もう既に現在のこの国の国債の発行状況、国、地方合わせて六百六十兆を超える借金があって、そして今でもその借金をふやし続けている中で、そして高齢化社会を迎 える中で、この国にそんな余裕はないと思うのです。だからこそ、これはしっかり総 理にやっていただきたい。私は、小泉改革の一番大事なところだと思いますが、もう 一度、できるだけ具体的に総理の決意をお述べいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 ようやく、小泉内閣が発足してから半年が経過いたしました。 そして、すぐ変えろ、すぐ変えろと。大きな方針は出して、それを具体化する時期に 入ってきたわけです。まず、今月末には大きな具体化への一歩が出てくると思いま す。そして、今言った道路計画につきましても見直しの方向が出てまいりますが、同 時に、反対、抵抗、反発も強くなってくると思います。
私が今まで言ってきたことはほとんど少数意見だったこと、むしろ、変人扱いされ て見向きもされなかったことを大きな目標に掲げているわけです。いずれもそうで しょう。具体的に言えば、今言った道路公団の民営化もそうです。住宅金融公庫の廃 止もそうです。石油公団の廃止もそうです。あるいは、特殊法人に対する補助金削減 を一兆円目標にするということ。すべてできっこないと二、三カ月前には言っていた じゃないですか。ほとんど実現しますよ。 しかし、半年では実現できません。これから、その目標に向けて今着々と、実施に 向けての準備は進んでいる、しかし、今はっきりと言う段階ではないということを御 理解いただきたいと思います。
岡田委員 まず、今の小泉総理の御答弁の中で一つ修正をさせていただきたいと思 います。だれも民営化を言っていなかったとおっしゃいましたが、民主党は民営化を 小泉総理が登場前から言っておりましたので、そのことをまず明確に申し上げておき たいと思います。
きのう、たまたま、テレビに自民党の古賀道路調査会長が出られていろいろ御発言 になっておりました。その中で、整備計画は国民との約束であるということを言われ て、だからこれは変えられないんだ、こうおっしゃっておりました。しかし、私はそ れはそうじゃないと思うんですね。国民との約束といっても、例えば法律の中に改正の手続だってちゃんとあるわけです。つまり、一たん決めたから、それがすべて約束 だからできないということになれば改正の手続なんかあるはずがないわけで、やはり そのときの状況、状況変化がありますから、それを踏まえて変えていくというのは当 然のことだと思っております。
今、総理がかなり力強くおっしゃいましたので、月末を期待して待ちたいと思いま すが、その期待が期待外れに終わらないようにしっかり頑張っていただきたいと思い ますし、我々ももちろん、政党は違いますし、野党という立場でありますが、ですか ら、すべて小泉総理の言うことに賛成をするわけではありませんが、しかし、いいも のを総理が言われるときには私どもは率先して賛成をしていきたい、そういうふうに 思っておりますので、しっかりとした改革案をつくっていただきたい、そのことをお願いしておきたいと思います。
それでは、次の具体的な項目について移りたいと思いますが、医療制度の改革であ ります。
この問題は、私、この前の五月の予算委員会でも申し上げましたが、橋本内閣の時 代、小泉厚生大臣の時代に、厚生委員会、予算委員会で随分議論をさせていただきま した。私は、この医療の問題というのは、大きくいって二つの視点から考える必要が あるというふうに思います。
一つは、もちろん医療というのは人間の命を預かる、そういう問題でありますか ら、そこをきちんと踏まえて議論しなければいけないということだと思います。しかし同時に、二番目ですけれども、この医療費の大きさというものをやはり常に頭に置 いて考えなきゃいけない。
今、三十兆円の医療費、国家予算は八十兆ですけれども、国の税収は五十兆です が、医療費全体で三十兆ある。その三十兆の中で、いろいろな中身がありますけれど も、例えば保険料が十七兆、患者負担が五兆、そして税が八兆、こういう内訳になっ ているわけであります。しかし、名前は違うけれども、実際はそれはすべて国民負担 という意味では非常に大きな塊であります。ここをいかに効率的にやっていくかとい うことは、国家財政八十兆をどうやって効率的に運営していくかに並ぶ極めて大事な 問題だ、そういう意識でこの問題を考えていかなければいけない、そういうふうに私 は思っております。
さて、今回の改革に当たって、前回の改革のときの総理の言葉を思い出します。つ まり、私が言ったのは、負担増を先行させるべきじゃない、負担増と構造改革をセッ トでやるべきだ、こういうふうに申し上げたところ、総理は、それはわかるけれど も、しかし、この程度の負担、この程度の負担というのはサラリーマンの負担が一割 から二割に上がったことを主として指されたと思いますが、この程度の負担はどんな 改革をやっても避けられないんだからこれを認めてほしい、しかし二〇〇〇年までに はしっかりとした構造改革をやるからということをおっしゃったわけであります。そ れは、結局できなかった。
前回の五月の予算委員会で私が、なぜできなかったか、こう聞いたら、総理は、努 力が足らなかったと反省している、せっかく総理大臣になったんだからその実現に向 かって努力したい、協力もお願いしたい、こういうふうに言われました。我々も、いいものであれば協力する用意は十分あります。問題は、いいものかどうか、そして改 革ができるかどうかということでございます。
これも年末までには決めなければいけないことでありますけれども、まず、この医療制度の構造改革について総理の決意をお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これは四年前ですか、私が厚生大臣のときに岡田さんと議論し たとき以来の懸案でございます。
今回の医療制度改革、いわゆる世界的水準を考えてもすぐれたものである医療保険 制度というものを維持発展させていかなきゃならない、効率的に運営していかなきゃ ならないという視点から、どのような改革がふさわしいかということで今まで議論を 重ねてきたわけであります。
そういう中にあって、私は、ある面においては特殊法人改革以上に難しい、しかし 国民生活にも大きく影響ある問題でもあると認識しております。しかし、高齢少子社 会、しかも年々年々財政状況が悪化する中で、限られた費用の中でどのようないい医 療、診療を受けられるかということを考えますと、もう避けては通れない、先送りは 許されない状況だということは十分理解しているつもりであります。
そういう中で、よく私が言っているのは、三方一両損、診療側にも支払い側にも患 者側にもある程度、今までの状況では済まされないんだから、痛みを伴うようなこと は覚悟してほしいということは、これは国民にとって全体にプラスになる医療保険制 度を維持していきたいがためなんです。このまま放置していきますと、医療保険制度 が崩壊してしまう。病気にならないで保険料を負担している人が、こんなに保険料を 負担するんだったら病気になった方が得だと思われるんだったら、医療保険制度は破 綻しちゃいますから。
そういう面においては、三方一両損ということは、国民にとっては、長い目で見れ ばプラスになる改革をしたいということで言っているわけでありますので、私は、患 者側の負担だけでなく、いわゆる診療側にも支払い側にも、そして今の制度を維持さ せていこうという方々の理解を得て、しっかりした医療制度改革の案を示すことがで きるように、今鋭意、厚生労働大臣初め各閣僚と協議をしていることでございますの で、この結論も近い将来出さなきゃなりません。懸命に努力をしていきたいと思います。
岡田委員 総理はよく三方一両損という言葉を使われるわけですけれども、私は、 前回の改革から今日に至るまで、それがそうじゃないから問題があるんだというふう に思うんですね。具体的には、医療提供者側、もう少しわかりやすく言うと日本医師 会の負担というものが一体どれだけあったんだろうかということであります。
前回の改革以来、いろいろな政府サイドでつくった改革案というものが次々にもと に戻ったり先送りをされてきた、そういう歴史があることは総理も御存じのとおりで あります。
例えば薬価制度の改革案について、これは総理が厚生大臣のときにも随分議論いた しましたが、結局これは白紙還元されました。あるいは老人の薬剤費の別途負担、こ れもそのときに決めた話でありますが、結局廃止をされてしまいました。広告規制の 緩和も最低限しか認められなかった。あるいはカルテの開示の法制化も、厚生省の中 で提言をされましたけれども、これも法制化は見送られました。そういう歴史を見て いるだけに、本当に三方一両損なのかという疑問が残るわけであります。
日本医師会というのは、私は、個々のお医者さんには随分患者の健康を考えて立派 にやっておられる、そういう医師も多いんだと思いますけれども、日本医師会という 一つの固まりになったときに、どうしても、政治力が強くて、主としてこれは自民党 に対していろいろな圧力をかけてそういう改革案を葬り去ってきた、こういう歴史が あると思うのです。この点について、総理は基本的にどういうふうに認識しておられ るのか、お聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 今岡田議員がいろいろお出しをいただきました内容につきまして、 一つ一つ今検討を重ねているところでございます。
先ほど総理からもお話がございましたとおり、十一月末あるいは十二月の頭になる かもしれませんが、とにかく十一月末には結論を出さなければならないというふうに 思っているわけでございまして、清水の舞台から飛びおりるつもりでやらなければな らないというふうに思っているわけでございます。
その中の個々の内容、今幾つかお挙げになりましたようなことにつきましても、一 つ一つこれは決着をしていかなければならない問題でございますので、今それをやら せていただいているところでございます。
御承知のとおり、この医療改革につきましてはいろいろの御意見があるということ も事実でございまして、多くの皆さん方の御意見を伺いながら、今最終結論に向かわ せていただいているところでございますので、いましばらくの御猶予をちょうだいし たいと存じます。
岡田委員 私が聞いたのは、個々の具体的中身を聞いたのではなくて、過去のそういった、次々に改革が先送りをされてきた、そういう中でやはり医師会の存在は大き かったんじゃないか、そこのところをどう考えているのかということをお聞きしたわ けですが、総理、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 医師会としては、それぞれのあるべき医療の姿を提言しており ます。主張も展開しております。そういう面を聞きながらも、全体からかんがみて、 そういう主張が果たして国民から支持を得れるものだろうか、合理的なものだろうか ということをよく吟味する必要がある。
過去、今岡田議員が言われたような批判されるべき点もあったと思います。また、 医師会初め多くのお医者さんの方は非常に努力をされていますし、ある面においては 採算を考えずに、患者さんを治すために献身的な努力をされているお医者さんもたく さんおられるわけであります。あるいは、時間も考えずにいろいろ、自分の生活を犠 牲にしながら医療活動に従事しているお医者さんもたくさんおられるわけでありま す。
そういう点を考えながらも、医療全体を見て、果たして医師会の主張が妥当なもの であるかということについて、今までの一方からの批判も十分受けとめて、できるだ け多くの国民が理解を得れるような案を今後提示するように、今までの御批判を踏ま えて検討していきたいと思います。
岡田委員 今、総理は客観的におっしゃられたのですが、実際は、日本医師会と自 民党の間でそういう改革つぶしをやってきたというのが歴史であるということは、 はっきり申し上げておかなければいけないと思います。
私は、医師会の話が出ましたから、もう一つ医師会について申し上げたいと思いますが、日本医師会というのは、国から補助金を得ている団体であります。国から補助 金を得ている団体は、もちろん政治献金はできません。だからということでしょう、 政治連盟をおつくりになっているということであります。しかし、その政治連盟が医 師会と表裏一体の関係にあったとすれば、それは単なる脱法行為だということであり ます。
そういう意味で、厚生省の方もいろいろ通知を出されたりして改善には努力されて いるようでありますけれども、しかし、今まだ、実態を見ると、政治連盟と医師会の事務所が共通であるとか、あるいは人事が完全にダブっているとか、そういう問題は あちこちに、日本医師会だけじゃなくて地方も含めてあるわけであります。
私は、そういうことを早くきちんと是正するということは、これはいわば法律違反 の状態が起こっているに等しいことでありますから、絶対必要なことだと思いますし、そして何より大事なことは、今回、国立大学の先生方が政治連盟に入って、税金 で政治献金を事実上していたということが随分問題になりましたが、そういうことが 起こるのも、医師会の会費と政治連盟のお金が一緒くたになっていて、そして知らな いうちに徴収されているという事実もあるんじゃないかと思うんですね。だからそこ は、医師会に加盟することと政治連盟に入ることは別のことですから、ここはきちん と手続を分けて、それぞれ意思確認をしてやっていくということは最低限必要なこと だと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 公益法人であります日本医師会と日本医師連盟というものが一体で あると誤解を与えるような行為は、決して好ましくないというふうに考えておりま す。
両者の会員は明確に区別をされること、事務所についても適正な賃貸料が支払われ ること、そして、医師会に対する医師連盟への加入の強制や加入しないことへの不利 益な取り扱いがないこと、これらのことが大事なことだというふうに思っている次第 でございます。そうした点を中心にしまして、今やっているところでございます。
よろしくお願いします。
岡田委員 これは、やっているのも結構なんですが、しっかり指導していただきた い、そういうふうに申し上げておきたいと思います。
それじゃ、医療の、今、少しいろいろ先送りになった話をいたしましたが、医療の 効率化ということが非常に大事だと。全体の三十兆の医療費をいかに質は落とさずに 効率化して圧縮していくかということがなければ、結局は、それはいろいろな議論は ありますが、何らかの形での国民負担になることは間違いない。それが税なのか、保 険料なのか、あるいは個人負担なのか。だから、名前は違いますが、結局は、財布は 一つですから、全部国民負担になるわけであります。それを負担をふやさないという ためには、やはり全体の額をいかに合理化、圧縮していくか、こういうことであると 思います。
そういう意味で考えると、例えば一つは診療報酬明細書、レセプトの問題がありま す。
今は、特殊法人である支払基金に必ず経由するということになっておりまして、御 存じのように、一枚当たり百十八円の手数料を取っているということであります。しかし、今民間業者が、その支払基金は前提にしてでありますが、再チェックをしてい る。その費用というのは大体十円から三十五円ぐらいだと。ここはやはり基金が独占 していることによって、一枚百十八円という、そういうことが起きているんだと思い ます。たかが百十八円と言われるかもしれませんが、トータルの枚数は十億枚であり ます。ですから、それだけで一千億以上の税金あるいは保険料がかかっている、こう いうことであります。
この基金の独占を崩して、そして民間の業者にもそのチェックができるようにす る、大きくはそういう方向にあると思いますが、私は、ここ一年ぐらいの間に完全に 自由化すべきだ、順次やるんじゃなくて、厚生労働省は順次やるとおっしゃっているが、しかし、これは一挙に自由化して、後はもうまさしく健保組合の判断に任せるべ きだ、そういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 レセプト審査の自由化の問題だというふうに思いますが、保険者の 自主的な事業運営や規制緩和を推進していくことは、医療保険制度の運営の効率化を 高めていく上で非常に大事なことだというふうに私も思っております。
改革先行プログラムにおきましては、保険者みずからが審査支払いを行うことを可 能とすることにより、今年度中にレセプト審査への民間参入を拡大することが盛り込 まれたわけでございます。厚生労働省といたしましても、医療制度改革試案の中にお きまして、本年度中にこの保険者みずからによる直接審査及びその民間委託を可能に するということを盛り込んだところでございます。
これを一年というのは、なかなかこれはいろいろの問題が生ずることでございます から、鋭意その方針を貫いていきたいと思っております。
岡田委員 全部強制的に自由化しろと言っているんじゃないんですね。自由化する ことで、後は自由な選択に任せるべきだというふうに言っているわけです。これは順 次自由化なんと言っているとまた十年仕事になるんじゃないか、そういうふうに思い ますので、これはぜひ総理もお考えいただきたいと思います。
もう一つは、このレセプトを今紙でやっている、一部フロッピーディスクが認めら れるようになったというちょっと信じがたい状況にありますが、これはオンラインで あれば随分効率化するわけですね。そういうことに対して、私は診療報酬上のメリッ トを与えるべきだと。そうすれば、これは一挙に進みます。オンラインで集めれば、 統計的な処理も可能になりますから、いろいろな問題病院なども、これは統計的な分 析をする中で出てくる、チェックができる。一枚一枚の紙じゃ、そんなこととてもで きません。そういう意味で、これは思い切ってそういうことも進めていただきたい、 そういうふうに思います。
いずれにしても、この効率化のためのいろいろな具体策が言われていますが、期限 がはっきりしていないんですね。結局、ゆっくりゆっくりやっている間にあるいは内 閣もかわっちゃうかもしれない、こういうことでありますので、これはそれぞれの問 題について、やや具体的な細かい話になりますが、ぜひ総理、おしりを切って、そし てしっかりやる、そういう姿勢で挑んでいただきたいと思いますが、いかがでしょう か。
小泉内閣総理大臣 どの業界も、やはり競争というのは自分のところに対しては嫌 がるんですね。新規参入も嫌がるんです。医師会も例外じゃない。しかし、競争を通 じて合理化していこうという努力は、どの産業にも結果的に出ているんです。
そういうことから、何としても現状維持したい、既得権を守りたいというところに メスを入れるのが構造改革ですから、今言われたような御指摘もどんどんしていただきまして、いいものはできるだけ早く改善していくということが必要ではないかと思 います。
岡田委員 ある意味じゃ、医療の世界というのは、すべて診療報酬という形で点数 がつけられていますから、社会主義みたいなものなんですね。全部政府が値段を決め る。そういう中にかなり大きな合理化の余地というのは私はあると思いますので、そ の点しっかり、全体の額を減らすことが国民の負担減につながるんだという視点で やっていただきたいと思います。
もう一つ大事なことをお聞きしたいと思いますが、その三方一両損の中で、来年度 の診療報酬の改定の問題ですが、これをどういうふうにお考えか。一両損というから には、まあマイナスにはされるんだろう、こういうふうに思います。
私は、この診療報酬、これも政治的にいろいろ動きがあって、通常であればやはり 賃金や物価の上昇に応じて考えられるべきところですが、前回の平成十年度の改定に ついてはかなりおかしな動きがあった、政治的な加算があったというふうに言わざる を得ないわけです。賃金も物価も下がっておる中で、なぜ、例えば医科の診療報酬が 二ポイント、二%も上がったのかというのは、これは誰にも説明できない。
そういうことを考えると、そういうことも織り込んでかなりのマイナス幅にすると いうことが私は三方一両損だと思いますが、ここは総理の御見解をお聞きしておきた いと思います。
小泉内閣総理大臣 これは、毎年毎年この診療報酬の問題でもめにもめるんです よ。いかに難しいか。一万点以上にわたる細々とした技術的な問題、これを何とか合理的なものにできないか、もっと簡素化できないか、あるいは技術料を正当に評価で きないかという問題も含めまして、今の状況から診療報酬を上げるような状況ではな いと。
この問題については、私も、今の議員の指摘を十分勘案しながら、今までのような 状況にないということも医師会に十分御理解をいただきたいと思っております。
岡田委員 この点も小泉構造改革の重要なポイントだと思いますから、ぜひしっか りやっていただきたいと思います。
最後に一言、政治改革の問題についてお聞きしたいと思いますが、選挙制度を変えるという与党の間の話し合いについては先般一とんざしたということでありますが、 その中で、与党三党、小泉総裁も入って、選挙制度改革等に対する合意というのがあ ります。その中に、今後一年以内にいろいろな改革について、与党のおっしゃる改革 でありますが、一年以内に成案を得て一体処理するということが書かれています。しかし、十二月末には、現在の選挙区画定審議会の答申といいますか、勧告が出るわけ であります。
そうすると、その勧告というのは、総理は一年間塩漬けにされる、こういうことな んでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、勧告が出れば、そういう具体的な勧告をどう判断するか というものも含めて協議していきたい。そして、この選挙制度改革というのは、各党 の議席の消長に大きく影響してくるものでありますので、できるだけ多くの政党の御 理解を得る努力をしなきゃいかぬ。特に野党第一党、これは常に政権を交代する、あ るいは政権を担当する準備を進めている政党ですから、そういう政党の意見というも のも十分聞かなきゃならないし、そして理解も得れるような努力をしなきゃならない という点から、私は、いろいろな意見を十分考えながら、議論を十分していただい て、いい結論を出すようにしたいと思います。
岡田委員 この問題を議論するのは、本来、国会であります。前回の政治改革の議 論は、平成五年、第百二十八国会で百二十一時間議論をいたしまして、最終的には当 時の細川総理と河野自民党総裁の間で合意をし、そして次の国会で圧倒的多数を得 て、つまり、五百十一名中、共産党の十五名以外の賛成を得て成立したという経緯が あります。やはり選挙制度というのはそれだけの重みがあるものだ、したがって、これは与党だけで議論する話ではないということを申し上げておきたいと思います。
そして最後に、この勧告が出たときに、これは国会に報告をする義務が総理に発生 いたしますので、その報告はぜひ速やかにやっていただきたい、法律で定められた手 続でありますので、お願い申し上げておきたいと思います。