トピックス

2002.01.31|その他

定例記者会見録 2002年1月

1月31日

○外相更迭—-単なる人事問題として片付けた小泉総理は問題

○一般教書でイラクを名指しで批判した米国の姿勢はテロ後も変わっていない

○人口推計—-悲劇的な少子化問題は政治として取り組むべき最大の課題

○田中前外相との連携については、あまり空騒ぎしないほうがいい

○外務省の歪みを世の中に発信することは田中前外相の今後の責務

○敵失ではなく、民主党自身の力で支持を獲得すべき

国会の混乱と田中外相の更迭

【政調会長】まず、国会についてですが、衆議院における採決が終わったあと、外相更迭というやや予想外のことがありまして、私も少し驚いたところです。

これは言い尽くされたことですが、アフガニスタン復興会議へのNGOの参加に政治が介入したことに今回の問題の本質があるとすれば、それを無視して単に人事の問題として片付けてしまった小泉総理には、非常に問題があると言わざるを得ないと思います。

田中外相は今までいろいろトラブルを起こしてきましたので、私も必ずしも外相の立場に立つわけではありませんが、今回のことに関して言えば、ややお気の毒という感じがしますし、ある意味では密室的な、 自民党内の抵抗勢力との折り合いのなかで決定がなされたことは大変残 念な気がします。

小泉政権の支持率という観点だけではなくて、抵抗勢力との折り合いの付け方という意味でも、今回の事件が小泉内閣にとって一つのター ニ ング・ポイントになるかもしれない—-。そんな予感がしています。

そういったことも含めて、また施政方針演説がありますので、代表 質問あるいは予算委員会等を通じて、我が党としてもしっかり総理の基 本 姿勢について議論していかなければいけないと思っています。

ブッシュ米大統領の一般教書演説

【政調会長】 それから話は変わりますが、ブッシュ米大統領の一般教 書 が出まして、私も要約を新聞で読んだだけで原文には当たっていませんが、やや気になるのは教書のなかに国連に対する言及がなかったことです。

同盟国あるいはロシアや中国との協力ということは言われてますが、それは必要に応じてそういった国々と協調してやっていくということであって、やはり基本的にはアメリカの自国の国益を中心に据えた考え方が示されています。ブッシュ政権になってからアメリカはそういう姿 勢 を取っていますが、テロ事件が起こったあとも考え方は変わっていな いということが改めて確認されたと思います。

そのなかで特に気になったのは、いくつかの国を名指しで非難している点です。具体的には、北朝鮮やイラン、イラクですが、とりわけイランに対して「選挙で選ばれていない人物が云々」といった表現が若干あるようですが、選挙で代表者を選ばない国は別にイランだけではありません。今回のアフガニスタンの問題でも、イランの役割・存在はある意味で 重 要だったわけで、アメリカら見たイランの位置付けが今回のテロ事件 で少し変わったのかなと思っていましたが、結果的には全然変わっていなかったということですから、これはやや私としては意外な感じがしま し た。

そして、あれだけ明白に批判したことで、今後アメリカとイランの緊張関係が高まるとすれば、いろんな影響が出てくるだろうと思っています。この辺りは、総理がどのように受け止められたか、予算委員会で 訊いてみたいと思っています。

我が国としては、イランとの関係は大事にしてきた面があるわけですが、今回のアメリカの扱い方というのは、意外な感じがしました。

人口の将来推計

【政調会長】それから、人口の将来推計が出まして、出生率がさらに 1.61から1.39に下がるということです。確かに、前回の見通しでもか なり下がったんですが、それでも少し見通しが甘かったということになるわけです、今回の数字を見ると。

しかし、今回の数字はかなり悲劇的でありまして、前回は晩婚化が 原 因であって、晩婚化というのはずっと晩婚化が進んでいくわけではなくて、どこかで止まるだろうと。つまり、女性が結婚する年齢が高くなっ てもどこかで止まって、そこで打ち止めになるということで、その後 出生率が上がっていくということを想定していたわけですが、今回は結 婚していても子どもの数が非常に少ない、あるいはいないカップルが増えてきていることを反映して出生率が落ちたということですので、ます ます、これは政治として真剣に取り組まなければいけない問題であるということがはっきりしたと思います。ある意味では、最大の課題である と言ってもいいかもしれません。 ただ、なかなかいい解決策がないわけですし、結婚するかしないか、 子供を何人つくるかということは極めて個人の領域に属することですから、言い方は非常に気を付けなければいけないと思いますが、このまま放置しておくと 2050年にはほぼ1億人になるということで、そこからさらに50年先となると、恐らく6000万人ぐらいになるんじゃないかと思います。そういう意味では、非常に問題のある状況であるということが 示されたと思います。

もちろん、そのことが年金その他に大きな影響を及ぼすこともこれ また事実ですし、少子化に対する政治的な対応をもう一度きちんと議論し、対策を考えていかなければならないと思っています。

田中前外相との連携

【記者】田中前外相と菅幹事長がNGO問題について意見交換をしていたということで、今後の連携の可能性ということが言われてるんですが、 それについて政調会長はどのようにお考えですか。

【政調会長】菅さんには、私も党役員会のときに「電話で確認されたらどうですか」と申し上げた一人です。つまり、2枚目の政府見解の文書が上がってきたときですが、2枚目 の文書は途中で内容が変わりましたよね。それで、最終的なものがちゃんと田中さんのところに行ってるのか、「政府」と言ってるけれど、外務大臣がとちゃんと入ったうえでの「政府」なのかどうか確認したほうがいいんじゃないかと申し上げたんですが、だからといって、今後連携 していくかというのは別問題です。

田中さんは大臣を辞められても、もちろん自民党の国会議員ですから、連携ということの意味にもよりますが、同じ目的を共有する部分については意見交換をしていくということはあるかもしれませんが、あまり空騒ぎはしないほうがいいと思いますね。

【記者】今回のNGO問題に関して、民主党は田中さんの言い分が正しいというスタンスだと思うんですが、今後も同じ態度で臨まれるんでしょうか。

【政調会長】アフガン会議へのNGOの参加問題に関して政治的な介入があった、つまり外務省の判断がねじ曲げられた可能性が大きいということについては、田中さんは当事者の一人ですから、是非、民主党にと いうよりも世の中に発信していただきたいと思います。

彼女が外務大臣として今までやってきたなかで、外務省の政策決定 が 外部から歪められるという事実があったんなら、そのことは全部喋るべきだと。言うことによって正していくということだと思うんですね。

そういう意味では辞めたあとも、むしろ辞めたからこそ彼女の責任といいますか、期待される役割というのは大きいんじゃないかと思います。彼女も政治改革を目指してきたんだということをおっしゃったわけですから、その思いは辞めたあともしっかりと貫いていただきたいと思います。

今後の国会審議の焦点

【記者】今日の役員会でも話題になった、武部農水大臣の不信任案提出の件ですが、本予算審議は経済中心でいくべきだということで、提出には慎重な意見もありますが、その点についてはどのように……

【政調会長】それは役員会で議論して決めることですから、あまり私の考えで言わないほうがいいと思います。今日、もう一度役員会が予定 さ れてますから。

【記者】委員会審議のほうは経済中心にやるということですか。

【政調会長】経済プラス小泉構造改革の具体的姿というかね、もうす で にマスコミを賑わせている道路公団改革の第三者機関の話であるとか、医療制度の改革であるとか、すでに与党と小泉総理との間でしっかりもめてますけど、そういった問題について、今国会では法案の形で出てくるわけですから、それが中身のあるものかどうかということをしっか り 議論していくということも大事だと思います。

外相更迭の小泉内閣支持率への影響

【記者】 この間も政調会長は「支持率には興味がない」とおっしゃった んですけれど、今回の外相更迭劇の影響が週末の世論調査にかなり出るんじゃないかということで、民主党に風が吹き始めてるんじゃないかという話もありますが、その辺は?

【政調会長】相手の支持率が下がった結果、こちらが上がるというのは、それは反射的効果ですから、そんなことがあってもあまり長続きしないと思うんですね。

ですから、民主党の支持率は民主党自身がしっかりとやるべきことをやるなかで獲得していかないといけないと思います。

ただ、小泉総理の支持率が下がるというのは、今までが異常に高い 数字だったんで、国民的な熱気が少し冷静になるということはあるかもしれませんね。

【記者】小泉内閣の支持率が急落した結果は熱気が冷めたからというのは、それは一時的な現象ではなくて、元に戻る可能性がないということでしょうか。

【政調会長】今の支持率はちょっと異常ですよね。だから、いずれにせよ時間が経てば、それなりのところまでは下がる数字だと思ってますので、それ自体は別に驚かないんですが、さらに下がる、例えば5割を切 るというようなことになると、これはまた別の問題が出てきますよね。

自民党内の抵抗勢力がより大手を振って歩き出すことは明らかで、 そういうなかで小泉総理がどういうふうになっていくのかと。抵抗勢力との妥協をさらに重ねていくのか、あるいは孤立していくのかというのは関心のあるところですね。

1月24日

○外相と議運委員長の見解が違うのは異常、国会の権威のためにも決着を

○衆院選挙区割—-審議会の勧告が出た以上、早急に法案化すべき

○あっせん利得の対象に私設秘書や親族を加える方向で野党間協議

○2次補正予算と14年度予算について党の考え方をまとめる

○緊急事態法制—-結党以来の「早期整備」の方針を党内で再確認する

○将来の生産性や生活の豊かさを向上させるような公共投資を行うべき

○金融機関への公的資金注入の場合、金融相や内閣の責任は免れない

予算委員会

【政調会長】菅幹事長も参加した今日の予算委員会を見た私の感想は、 大変歯切れのいい質問で、小泉総理の本質、ピシッと質問に対して明確 答えない姿勢がはっきりしたんではないかと思います。

それから、アフガニスタン復興会議へのNGO出席拒否問題についての鈴木宗男・議院運営委員長の話も、田中外相がはっきりと認めましたので、これは今後大きな問題として、継続していくべきことだと思ってい ます。

外務大臣という内閣の主要閣僚と、議運の委員長という国会運営の中枢人物の見解が違うといいますか、一方が一方を否定してるわけで、これは普通じゃないことですから、国会の権威のためにも、もし鈴木委員長が言ってることが正しいのなら国会の権威のために、そして嘘を言ってるなら、そういう人が議運の委員長であるということが、これまた問題ですから、どちらにしろ、白黒はっきり決着を、どちらが本当のことを言ってるのかということを決着をつけなければいけない問題だと思っています。

選挙区割とあっせん利得

【政調会長】 次に、今日のNC(ネクスト・キャビネット)で、我が党の 政治改革推進本部から二つの点について報告があり、了承されました。 一つは衆議院の小選挙区割改正の問題です。

これには3点あって、1番目は、都道府県基数配分(300 小選挙区の 区割を行う際に、まず各都道府県に1議席ずつ配分する方式)をやめ て、1票の格差を抜本的に是正するという基本方針は引き続き堅持して いくと。我々は法案も出しています。

2番目に、ただし、選挙区画定審議会(区割審議会)が勧告を行った 現在、速やかにこの勧告を法案としたうえで、国会の議論に付すべきで あると。

そして3番目は、次期衆議院選挙に向けて、現行選挙制度の根幹は前 提としつつ、周辺の問題、例えば選挙運動の見直しとか、あるいは敗者 復活ですね、小選挙区の落選者が惜敗率で当選することそれ自体を否定 するというよりは、もう少し工夫ができないかとかですね、あまりにも 得票が少ないのに惜敗率で当選してしまうといった問題について検討を 進めると。

例えば、惜敗率で当選する人の数をもう少し制限できないかか、つまり 惜敗率で当選する人は、全員が当選したうえで、その次のグループを分 けるとそういうことになって、惜敗率で当選する人たちも、いくつかに グループ分けするというような発想もあるわけですね。

元々の小選挙区から出る人と、本来意図していない小選挙区から出る 人とを同じ土俵で競わせるんじゃなくて、普通は自分の選挙区以外から 出た人を名簿の上位に持ってくるんですが、その人たちが全部片付かな いと本当の小選挙区から出た人は全然当選しないということになりますから、もう少し技術的に上手くできないのかとか、あと比例区の議席数 が今のままでいいのかとか、いろんな議論が周辺にはあるんだと思います。

ただ、それは区割の問題とは直接関係のない問題だと思います。区割 審議会とは関係ありませんので。それはそれで、党内的に検討を進めて いくという3点を確認しました。

それから、あっせん利得処罰法については、150国会(2000年臨時国会) での野党案をベースにやるということで、私設秘書や親族を犯罪の主体 に加えるということとか、「その権限に基づく影響力を行使して」とい う文言を削除するといったことを含めて、これから野党4党間で協議していくとということです。

事務局長の堀込議員の話ですと、4党間であまり意見の違いはないとい うことですので、割と早くまとまって、法案提出ということになってい くんじゃないかと思っています。

2次補正および平成14年度予算に対する考え方

【政調会長】それから、2次補正予算についての民主党の考え方です が、それについては今回発表した「当面の経済財政政策に関する考え 方」の中に書いたとおりです。

結論として、2次補正予算にはいろいろと問題があるということに なっていますが、まだ予算委員会も始まったばかりですので、今日の段 階ではまだ賛否は決めずに、私に一任ということにしていただきまし た。月曜日のしかるべき段階で正式に決めるということになると思いま す。ただ、予算という大きな話ですので、どこかで幹部の了解も取って おかないといけない問題だと思っています。

あと、「当面の経済財政に関する考え方」の中には、平成14年度予算 に対する考え方もまとめてあります。 結論を出したわけではありませんが、第1に歳出の規模は維持する。 第2に、公共事業および従来型の支出を削減する。第3に、雇用対策に 重点を置き、その他企業再建や起業支援等も拡充する。第4に、ローン 利子控除等の政策減税を検討すると。

本予算については、まだまだこれから審議が始まりますし、野党4党 の協議もありますので、大まかな方向だけ、今日は確認しました。

緊急事態法制

【政調会長】それから、我々の緊急事態法制(有事法制)についてです が、いよいよ明日から党内論議が始まりますので、きちんとした議論を していきたいと思います。

この緊急事態法制の話は、結党のときからいろんな文書に出てまいり ますが、結論は一貫して「早期の法制整備」ということです。

ただ、「基本的人権について、十分配慮しなければいけない」という 考え方ですので、まずその認識が党内的に—-全員というわけにはなか なかいかないかもしれませんが—-大体のところで共有されるように 持っていくことが最初のステップじゃないかと思っています。

今回の参院選も含めて、選挙ごとに同じような考え方を示しています ので、民主党で当選してきた人は党の考え方はお分かりいただいている はずです。 もちろん、個人的にはいろんな考え方があるとは思いますが、党として はこういう考え方を貫いてきているということを、まずしっかり議論を しながら理解・納得していただくという作業が、スタートとして非常に 大事なんじゃないかと思っています。

当然、中身に入ればいろんな議論があると思います。具体的には、基 本的人権との関係が非常に重要だというときに、一体どこまでそういう ものについて配慮するのかといようなことは議論があってしかるべきだ と思います。

その辺は、政府の案を見ながら議論していくということになるんだろ うと思いますが、私としては、入口のところで「こういう法制はいらな い」というのは、今の党の見解とは明らかに違いますので、そこは是 非、多くの人に納得していただきたいし、そのための努力をしなければ いけないと思っています。

BSE対策と予算の組み替え

【記者】BSE(狂牛病)対策緊急措置法案を野党4党で共同提出する予定 ということですが、その対策費の約3000億円も含めて、来年度予算の組 み替えを要求していくんでしょうか。

【政調会長】BSEについては4党で合意してますから、来年度予算として 1回でどこまで金額を盛り込むかというのは多少あるとしても、私はそ んなに難しい話じゃないと思いますね。

個々の話でいうと、我々はローン減税を言ってますが、他党が言って るわけではないとか、その辺の調整は必要になってくると思います。

去年もそうですが、各党の主張は主張としてあると。しかし、4党共 同で出すときはその最大公約数、つまり共通するものを中心に組み替え 要求を出すと。そういう割り切りをしないといけないと思います。皆が ピタッと一致するまで議論するというのは、なかなかできないと思いますので。

経済構造改革に資する公共投資

【記者】 今回、民主党が出した「当面の経済財政政策」のなかに、「経 済構造改革に資する公共投資を重点的に行う」とあって、一方で「単な る需要追加策としての公共事業は行わない」とありますが、単なる需要追加策ではなくて経済構造改革に資する公共投資とは、具体的にどういったものなんでしょうか。

【政調会長】政府もこの前の1次補正のときに、「需要不足を財政出動 で補うようなことはしない」と明言したんですね。その後、デフレ・ス パイラルの回避という理由で—-この辺は予算委員会の審議でしっかり 質していきたいと思いますが—-今回の公共投資中心の2次補正が出て きたということです。

私も、公共投資がゼロでいいとは全く思いません。しかるべき規模の 公共投資は必要だと。国家も投資というものが当然必要になるわけです から。

ただ、それは景気が悪いから慌てて追加すると。しかも、従来型の公 共投資を中心に追加していくという考え方を我々は取らないということ で、本来、国としてやるべき一定水準の公共投資というのは当然あります。

我々も5年で予算の3割削減とか、そういうことを言ってきたわけです が、逆に言うと、それ以外はやるということですので、そういう前提の 下で中身を精査して、将来的な日本の生産性を高める、あるいは個人の 生活を豊かにする、そういった内容の公共投資を集中的にやっていくということです。

金融機関への公的資金注入

【記者】金融の話ですが、民主党は新しい法律を出して対処するという ことですが、政府が現行の預金保険法に基づいて公的資金を注入した場合、注入そのものについての評価について、政調会長はどのように思わ れますか。

【政調会長】まず柳沢金融担当大臣は、「今、金融機関は公的資金を注 入するような実態ではない」と言ってるんですね、柳沢さんは。ということは、注入ということ起こり得ないと思います。

もし、それが注入という事態になったとすれば、例えばコンピュータ がぶっ壊れて大銀行の取引が作動しなくなったとか、外国で何かあった とか、そういった外部的な大事件が起きてシステミック・リスク(金融 システム危機)が発生したというようなことでもない限り、それは金融 担当大臣や内閣が見通しを誤っていた、あるいは嘘を言っていたという ことになるわけですね。そのときの責任は免れないと思います。

外部的な要因でたまたま起こったようなことまではなかなかとがめら れませんが、そうじゃない場合は、中身を一番知ってるのは柳沢さんな んですね。その柳沢さんが「問題ない」と言っていて、問題が発生した ら、それは柳沢さんの責任は免れないし、そして「問題があるんじゃないか」と我々がこれだけ国会で言い、マーケットからもそういう声が上 がっているのに、柳沢さんを放置していた小泉さんの責任も同様に免れ ないと思います。

【記者】 現行の預金保険法に基づいて資本注入することのほうは?

【政調会長】それは、どういう状況で資本注入するかですよね。本当 に、法律に書いてあるような、国あるいは地方のシステミック・リスク に対応するような状況のなかで投入するなら、今言ったような話になる わけです。

一方、そうじゃなくて、個別の銀行が何らかの理由でおかしくなった というときに、野放図に資本注入していくということになると、これは 法の趣旨を逸脱してますから、それもまたおかしいということになるわ けですね。

あくまでも、システミック・リスクという公益のために、税金を使うことが認められているわけであって、個々の銀行の救済のために資本注 入を認めてるわけではありませんので、預金保険法は。そこをもし履き 違えるとすれば、それはまた責任が重いと思います。

1月15日

○2次補正はやり方が不透明で姑息、「隠れ借金」等問題が多い

○需要不足を財政出動で埋め合わせないという総理の発言は何だったのか

○代表が大きな方向性を示して、民主への期待感を上昇させなければな らない

○野党間協力は進めるべきだが、その大前提として信頼関係が不可欠

○今年は女性政策・社会保障・経済再生に特に力点を置きたい

○議員歳費だけでなく、文書交通通信滞在費や議員年金も見直すべき

○控除を整理しても、手当に振り替えなければ低所得者層の負担増にな るだけ

○消費税増税は経済状況を考えれば無理で、今は歳出削減を徹底すべき

○現段階での増税は、財政再建を実質上放棄したも同じ

次期通常国会に向けての議論

【政調会長】某新聞によると、最も野党共闘に消極的な政調会長ですが (笑)、若干事実と違うんじゃないかと、さっきも「抗議」をしたとこ ろです。

さて、今日のNC(ネクスト・キャビネット)なんですが、主として次 期通常国会あるいは来年度に向けての大きな政策上の論点について議論 をしました。

お手元に「2002年政策の中心課題に関する展望」という資料を配 らせていただきました。まだ若干直しが入りますが、19日の党大会での政策・広報宣伝小委員会で配られるものです。少し変わるところがあるという前提で、今日は少し前触れに配らせてもらいましたので、またあとで結構ですから読んでおいていただきたいと思います。

より詳しい、政府の法案対応につきましては、国会が始まってから大体の概要が固まってまいりますので、2月11日の建国記念日に丸1日 取って、どこかのホテルで具体的な法案については議論したいと思って います。

今日は、それに先だって大まかな議論をいたしまして、大体の方向性を確認をしたということです。

2次補正予算の問題点

【政調会長】 国会がいよいよ始まるということで、第2次補正予算の審 議から入っていくわけですが、補正については今日、予算委員会と財政 金融部門の関係者が集まって、内閣府や財務省から話も聞いて、大きな 方向性について議論をしました。

まだ正式には決めていませんし、予算委員会の審議が始まったうえで賛 否については決めるということになりますが、今日の時点で方向性とし ては、非常に問題があるという認識を確認しました。

理由はいくつかあるわけですが、一つはやり方が極めて不透明で姑息で あるということです。まず、「国債30兆円枠は守ります」と、第1次 補正予算のときに、それで完結するかのような言い方をしておきなが ら、また即座に2次補正の意思決定をしたということ自体が、国民に対 して正直でない、国民を欺いたと言われても仕方がないと思っています。 しかも、そのやり方が「隠れ借金」方式ですから、さらに不透明 性を増したということです。

内容的にも、「需要不足を公共事業等の財政出動で埋め合わせるような ことはしない」と1次補正のときに総理は断言したにもかかわらず、まだ詳しく精査はしていませんが、しかし公共事業であることは間違いな いわけで、そういう意味では、予算委員会での総理のあのご発言は一体何だったのかということになると思います。

そういうことについて今日議論をして、非常に問題があるということを 確認いたしました。正式な決定は、予算委員会での議論を少ししたうえ で賛否を決めたいということでありますが、問題があるという認識で一 致をしたということです。

党大会の意義

【政調会長】あと、補正が終わったら本予算ということになり、通常国会を順次進め ていくわけですが、そこに入る前に、今週末に党大会があります。この 党大会が非常に重要であるということは、前回の、それから今日の党役 員会でも申し上げましたが、ここで鳩山代表にしっかりとした方向性を 示していただくということが、民主党の将来にとって非常に重要な意味 を持つと考えています。

年末年始にかけて、ややガタガタした印象を与え、民主党の支持者からは「民主党はどうなるのか」というご心配もいただいているわけですから、ここで、きちんと結束して事に当たるということが見える形でない といけないと強く思っています。

党大会でもいろんな議論が出ると思いますし、議論が出ること自体はも ちろん構わないわけですが、それに対して執行部としてきちんとした対応ができる、そして党大会というのは所属議員だけではなくて、それぞれの地方からも関係者の方々に来ていただくわけですが、少なくとも議員レベルでは、同じベクトルでしっかりこの党で選挙を戦って政権を取っていくということが、共通認識として持たれている必要があると思っているところです。

そういうことで、今日少し提案もさせていただいて、所属議員の間の意 思疎通を良くするという意味で、全議員懇談会を党大会の当日に1時間 ほど開くことも、常任幹事会で正式に決めていただいたところです。必 ずしも十分な時間ではないかもしれませんが、今申し上げたような趣旨 で、議員間の意見交換の場を作ったということです。

党大会での持って行き方も非常に大事だと思いますが、代表は非常に誠 実な方ですので、年末の全国幹事長会議なんかを見てますと、出た質問に一つひとつ丁寧にお答えになるわけですが、必ずしもその必要はなくて、それは幹事長なり、政策であれば私のほうで答えさせていただく、党の運営であれば総務局長が答えるというなかで、代表には大きな方向 性、決意を示していただくということでいいんじゃないのかなと思って、そういうことも役員会で申し上げておきました。

とにかく、しっかり党大会でまとまっているという印象を皆さんに持っていただくように、一生懸命努力をしなければいけないと思っています。そして、そういったことを通じて、この前も申し上げましたが、民主党に対するトレンドが上向きになる、早く上向きにして、とにかく小泉改革が行き詰まったときに、「選択肢は民主党である」ということが、自然な流れとして国民の皆さんに思っていただけるように努力をしていかなければいけない、非常に重要な1年であると考えています。

2次補正に対する賛否

【記者】2次補正についてですが、今日の議論というのは予算委員会や 財金部門のメンバーで集まって、役所から話を聞いて議論をしたという ことですか。

【政調会長】そうですね、はい。

【記者】それで、今回は最終的な決定はまだだとしながらも、問題点が 極めて多いという方向で議論が進んでるということですが、それは基本 的には反対する方向で、今後細かい議論をやっていくという……

【政調会長】まだ「反対」という言葉を言うにはちょっと早いですね。 「反対」と言えば新聞に載るのかもしれないけど。ちょっとまだ早いん で、それはやっぱりNCで最終的には決めるんですが、まだ細かい内容 も分かりませんからね。

例えば今日出た議論で、政府も今回の歳出は「供給サイドの構造を変え る」とか「需要を増やすというものではない」と言ってるんですが、 我々はとてもそう思えないわけですが、それは具体的に中身を精査して みないと言えませんので、そういう作業がまだ残っているということで す。

野党共闘の前提条件

【記者】野党共闘について伺いたいんですが、共闘といっても国会対応 から政策、選挙まであると思うんですが、それぞれのレベルについて政 調会長はどういうお考えですか。

【政調会長】基本的には、野党間は協力すべきだと思います。その大枠 のなかで、具体的な話になるわけですが、私は政調会長ですので政策に 関して言えば、なるべく共通点を見出していく努力はしていかなければ いけないと思っています。

去年も、予算については共産党も含めて4党で組み替え要求をいたしま した。これは初めてのことです。そういう実績もありますので、今年の 本予算も是非同じように組み替え要求というような形に持っていけないかと思っています。

それから、個々の法案についても、この国会を見ると緊急事態法制とか なかなか難しい話があるようにも思いますが、なるべく話し合いをしていくなかで少しでも共通点を見出していきたいと。その積み重ねが大事 だと思っています。国会対応も全く同じではないでしょうか。

選挙に関して言うと、それはまさしく幹事長中心にお決めになることな んで、私がとやかく言う立場にはありませんが、少なくとも敵対してい るという状況は与党を利するだけですから、そういうふうにならないよ うに協力していくことは非常に意味のあることだと思います。

積極的にギブ・アンド・テイクという形にならずに、ギブ・アンド・ギ ブに近い形になってしまうかもしれませんが、そうであっても、例えば 候補者の調整をするとか、そういう意味でのメリットもあるわけなん で、私は前向きに捉えていっていいんじゃないかと思っています。

ただ、そういったことの大前提は信頼関係だと思います。明日の夜も野 党各党の政調会長が集まって、これは毎回やってますが、懇談をして今 後のことをざっくばらんに話そうと思っていますが、年末年始のことは 私も詳細は承知していませんが、もし仮に他の野党が意識的に民主党の 一部の人たちと文書を交わしたり、何らかの政策的な合意をしたりとい うことだとすると、それはやっぱり公党間の信頼を損なうものと取られ ても仕方のないことで、そういうことはやめていただかないと困ると 思っています。

政党間の信頼関係を前提にしていろんな協力関係が出てくるんであっ て、勝手にかき回して、それで信頼関係が深まるわけがありませんの で、それは基本的なやり方として間違っている—-もしそういう事実が あるとすれば—-そういうふうに申し上げておきたいと思います。

組み替え予算の提案

【記者】先ほどの野党協力のことなんですが、本予算の組み替え要求を やっていけないかというお話だったんですが、明日の野党各党の政調会 長会談のなかで、それを提案するお考えですか。

【政調会長】まあ、まだちょっと早いわねえ。予算委員会もまだ始まってませんからね。いろんな話のなかで、「前回はやりましたね」という ようなことは出るとは思いますが。

これまでも適宜、政調会長同士が電話その他で話し合いをしながら、いろいろと連携を取ってきたんですが、もう少しカチッとした形にしたほ うがいいのかもしれませんので、例えば定期的に会うとかですね、その辺も少し相談をしたいなと思っています。

政策の目玉—-女性政策・社会保障・経済再生

【記者】先ほど「2002年政策の中心課題に関する展望」について お話がありましたが、それはこの1年、民主党がどういう政策に取り組 んでいくかということをまとめたものだと思うんですが、そのなかで特 に特に力を入れたいという目玉は何でしょうか。

【政調会長】「この国会で」ということではなくて、「今年1年で」と いうことなんですが、ただ話は9月までというふうに考えてるんですが —-9月に党の体制が変わる可能性があるわけなんで、それ以上先のことをいうのは僭越だと思いますので—-まず、参議院選挙政策を事実上、去年の今頃まとめたわけなんですが、それから1年が経ちましたので、党としての政策の全体像をもう少しきちんとした形で示したいと 思っています。

なかなかPRも行き届かないという問題も指摘されていますので、全体を集大成して議員立法も全部盛り込んで、我々がどういうことを考えて いるかということを分かりやすく示していきたいと思っています。それは大きな我々のテーマだと考えています。

具体的な話としては、私は一つは「女性政策」ですね。これは、東大の大沢真理教授に入っていただいて、週1回ぐらいのペースで議論してまいりまして草案を今作ってるんですが、これを党に示して、少し議論してもらおうと思っています。

今までは部門会議で積み上げていくやり方を取ってきたんですが、女性政策で初めて、私や関係者に加えて外の人も入って、まず議論をして草案を作って、それを部門会議で議論してもらうというやり方を採用しつつあるわけですが、この女性政策をまとめたいというのが、まず今年の春ぐらいまでの課題の一つとしてあります。

それから社会保障関係、特に医療・年金について、医療はこの国会での 議論でもありますが、カチッとしたものを、介護についてはかなりうちにもありますので、医療・年金についてまとめることで、できればそれに雇用も加えて、セーフティ・ネットとしての一つの固まりの政策を作り上げたいと思っています。 そういうところが特にやってみたいと思っていることです。もちろん経済対策、日本経済の再生という観点からの議論もしっかりしたいと考えています。

議員歳費カット

【記者】今日の常任幹事会で、議員歳費1割カットということが党の方 針として確認されたということなんですが、歳費カットの方法とか、い つまでやるとか、その辺りについて政調会長はどのようにお考えなんで しょうか。

【政調会長】それは与党のお考えも示されるでしょうから、それを見つ つというふうに思っていますが、まずは緊急避難的なものとして、一定 の期間を区切ってやるということだろうと思っています。

ただ、今日の役員会でも少し申し上げたんですが、この歳費のカットだ けではなくて、一つは綿貫議長の下の私的諮問機関で提起された問題の なかに、「文書交通通信滞在費の明確化」というものがありました。 これは非常に大事なことだと私は思っています。ともすれば、この文書交通通信滞在費というものは使途が非常に漠然としていまして、私が当選して2〜3年目ですかね、「滞在」というのが加わったことで余計に曖昧になってしまったわけです。

これが歳費と一緒くたになってる部分があるんじゃないかと。これは所得じゃありませんから、税金のかからない、まさしく目的の決められた お金ですので、きちっと領収書を取って使い道の説明責任を果たしてい くということが大事だと思います。

それから議員年金ですね。やっぱり国会議員の年金について、一般の厚生年金や国民年金の加入者から見ると不公平が過ぎるんじゃないかとい う議論が当然あると思いますので、そういうことについても、民間の常 識に沿ったような年金制度に変えていく必要があるんじゃないかと私自 身は思っていまして、そういう議論を党内でしっかりしていきたいと 思っています。

消費税増税と課税最低限の引き下げ

【記者】政府税調(税制調査会)での議論がこれから本格的に始まるん ですが、消費税増税と課税最低限の引き下げについての政調会長のお考 えを。

【政調会長】課税最低限の話は、下げること自体に意味があるとは思っ ていません。ただ、いろんな人的控除のなかに、合理性の乏しいものが あるということで、それを整理していった結果、課税最低限が「下が る」ということだと思います。

先ほど女性政策の話をしましたが、例えば配偶者控除や配偶者特別控除 といったようなものは大幅に縮小するか廃止していくべきだと私は思ってまして、それだけもかなり課税最低限は下がるわけです。それから、 扶養控除もそうです。

ただ、課税最低限を下げたときに、一般財源として歳入に立てるんでは なくて、基本的にはそれを子育てのための支援措置として使うと。つまり、児童手当の財源にしたり、あるいは保育所の整備に使うというよう なことであれば、それは負担増にはならないし、むしろはっきり政策目的が明確になっていいんじゃないかと思っています。単に整理するだけでは、それは所得の低い層に負担増になるだけで、あまり意味のないこ とだと思います。

消費税のほうは、現在、不公平で問題があると言われている部分について手直しをするということは考えられますが、消費税を増税するということは今の経済状況のなかで考えられないことだと思っています。

そもそも、プライマリー・バランス(交際関係予算を除く基礎的財政収 支)を確保するまでは、歳出削減で行くべきだというのが私の持論で す。それは相当大変なことなんですが。

けれども、それで財政の建て直しが終わるわけじゃなくて、そこから毎 年の国債発行高をゼロにする。その次に累積残高を減らしていくという 3段階があるわけですから、最初の段階で増税カードを切ってしまった ら、あとはどうしようもなくなる。結局、財政再建はできないというこ とになりますので、第1段階は、まず歳出の徹底削減をやって、そのう えで、次のステップとして増税についてどうするかを考えると。こういうことだと思っています。

政府がどういうふうに考えるかは分かりませんが、もし最初の増税とい うことを言われるとすると、それは財政の建て直しということを実質上 放棄したのに近いんじゃないかと思いますね。最終的には、国債30兆 円をゼロにしなければいかんわけでしょ?

元秘書の逮捕

【記者】今日、鹿野副代表の元秘書の方が逮捕されたんですけれど、民 主党としての対応は?

【政調会長】民主党としての対応はまだ、むしろ政策の問題じゃないん で、私のレベルでは特に議論してませんが、事実関係は基本的に、秘書 を辞められたあとの組織の立ち上げだと理解していますので、辞めたあ とのことまで責任を問うということは、それは基本的に違うんじゃない かと私は思っています。監督責任というものはないわけですから。

1月8日

○党大会に向けて、党内が政権獲得という同じベクトルでまとまることが重要

○経済・金融、小泉改革の具体的中身、安保論議の三つが大きな課題

○経済政策は歳出拡大ではなくて、予算の組み替えや減税を中心にすべき

○財政再建への長い道程を考えれば、今の段階で増税すべきではない

○各種控除を廃止・縮小して子育てへの手当に振り替えていくべき

○国連決議があるからといっても憲法9条を無視することはできない

党大会を控えて

【政調会長】明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いい たします。

まず、今日の役員会での議論にも関係しますが、党大会を控えて、非 常に我が党として重要な場面といいますか、大切な時期に来ていると 思っています。今年1年を見渡したときに、残念ながら昨年は小泉政権 が発足して、やや民主党の存在感が薄くなったと。

それ以前に、森政権の時代から、あの総理でしたから、民主党の支持率が飛躍的に上がっても良かったはずなんですが、森政権の時代もさほ ど支持率が上がるということもなく、小泉政権の誕生とともに、小泉人 気に支持者を喰われてしまったということですので、今年はそんなトレンドを変えなければいけない、重要な年であると。

しかも、トレンドを変えるのは今年の前半、つまり通常国会の中で、 民主党に対する国民の皆さんの期待が大いに高まるという状況を創り出 すということは、絶対に必要なことだと。

私はかねて「政権交代ができる政治」ということを、この12年間言い 続けてきた一人ですが、小泉政権がこの1年間のどこかで政策的に行き 詰まる可能性が高いわけで、そのときに国民の皆さんの期待が民主党に 対して注がれるという状況を創り出しておくということが非常に重要な ことであると思います。政権交代がこの国の政治に根付くかどうかの大 事な1年だというふうに認識しています。

そのスタートとして、今度の党大会があるということです。ここで、 民主党が何を目指しているのか、あるいは鳩山代表がどうリーダーシッ プを発揮していくのかということが問われるわけで、今日の役員会でも 代表に申し上げましたが、党大会での代表のスピーチが非常に重要であ るというふうに思っています。

そして、もちろん代表だけではなくて、党所属の国会議員がこの党大 会をきっかけとして、我々が選挙で勝って政権を取っていくんだ、政権 を担うんだと。もちろん、政権を担うことが自己目的ではなくて、政権 を担った結果として日本の政治を良くしていく、変えていくんだ—-。 そういう思いを党所属議員がしっかり持って、同じベクトルで進んでい けるかどうかが問われていると思っています。

是非、次の党大会がそういう重要なものであるということを認識し、 実りあるものにしたい。そういうふうに考えているところです。

通常国会の政策課題

【政調会長】政策の問題については、来週2回NC(ネクストキャビネッ ト)を開きまして、通常国会に向けての大まかな議論をしたいと思って います。今日はその前段階として、政調役員、つまり私と政調会長代 理、それから副会長で2時間ほど、食事もは挟みながら大まかな議論を しました。

かなり課題山積ですが、大きく括れば、第1に経済・景気・金融と いった問題、これは前半国会の最大のポイントだと思っています。

第2は小泉改革を具体化する法案が出てくる。医療制度もあれば、郵 政の問題もあれば、特殊法人の問題もあります。そういう小泉改革の中 身が具体的に議論される国会でもあると。

そして、第3は安全保障論議、特に政府のいう有事法制、我々のいう 緊急事態法制です。他にもいろいろとありますが、大きく括って、その 三つの大きな問題がありますので、それぞれに対してしっかり議論をし て、後になって時間が足りないということにならないように対応してい かなければならないということを先ほど確認したところです。

とにかく、特に150日の通常国会の会期内が中心になると思いますが、 民主党の支持が「ジリ貧」ではなくて「ジリ高」になっていくように、 一つひとつの課題について一生懸命努力をしていかなければいけないと 改めて感じているところです。

年末年始の党内問題

【政調会長】そこで、記者の皆さんからもご質問が出るでしょうから、 年末から年始にかけての党内でのいろんな議論について、私が感じてい ることを申し上げたいと思います。

役員会のブリーフィングもあったようですので、すでにお聞きになっ たかもしれませんが、まあブリーフする人によってニュアンスが違うか もしれません。私が役員会で申し上げたのは、先ほどお話ししましたよ うに、党大会に向けて党内がしっかりまとまっているということが一番 重要なことだと考えていますので、まずそれを第一に考えるべきだと。

そしてそのためにも、党内がいろいろと違うベクトルで動いていると いうことは決して望ましいことではないと。特にこちらが、党としてで はなくて、有志の方が他の野党の代表クラスと話をして、いろいろ議論 が進んでいくような印象を与えているということは、これは我が党にとっては望ましいことではありませんし、原則的にいえば、他の野党が 野党間の協力を望んでいるのであれば、当然それをわきまえて、我が党 の中の有志の方との意見交換ということは、それだけ慎重に考えていた だかなければいけないと考えています。

もし政策の議論を野党間でする必要があるとすれば、それは政調会長 ベースで議論することは、もちろんやぶさかではありませんので、大い に議論したいと考えていますし、政党間でそういう形で議論することは 当然のことだと思っています。

横路さんとは、羽田特別代表と菅幹事長がもう一度お話いただくこと になりましたが、民主党を強くして政権を取って、そして日本の政治を 変えていくという民主党結党の精神、そこに横路さんの思いもあると思 いますので、もしそうであれば、やはりここは党内がバラバラであるか のような印象を与えるような行動は控えていただくべきではないかと。

純粋な勉強会そのものを駄目だということは言えませんし、それはむ しろ望ましい部分もあると思いますが、今回のことは少し手垢が付きす ぎていますので、一旦なかったことにして、誰が見ても本当の勉強会で あるというような形でやっていただくべきではないかと思っています。 いずれにしても、横路さんと特別代表、幹事長との話し合いの結果を待 ちたいと思っています。

それから、先ほど言い忘れましたが、経済・金融の問題については、 先月25日の記者会見でも申し上げましたように、党大会前日の18日にも う一度集まって議論をしたいと思っています。国会も予算委員会がす ぐに開かれることになると思いますが、しっかり議論の方向性を定めて おきたいと考えているところです。

経済政策の転換

【記者】経済政策について、幹事長が「新しい経済政策を考えるべき だ」とおっしゃってるんですが、政調会長はこれまでの構造改革路線を 見直す考えがあるのかどうかということと、もし新しい経済政策があるとすれば、どういったものが想定されるのかということについて伺えますか。

【政調会長】我が党の考え方は、もちろん緊縮財政路線ではありませ ん。 経済の構造改革をしていくというなかで、景気の回復という言い方が いいのか、ある程度の経済成長という言い方がいいのか、いずれにせ よ、その二兎を追うという幹事長の言い方が全くの的外れだとは私は思 いません。

だからこそ、我々は本年度の当初予算についても組み替えを主張し続 けてきたわけですし、来年度予算についても歳出の規模を増やさない範囲で組み替える、より効率のいい分野に予算をシフトしていくということを主張することになると思いますが、現状ではまだまだ効率の悪い分野に予算が投入されていますし、その結果として景気の足を引っ張っていると認識しているからこそ、そういうふうに主張しているわけで、その意味においては、私は幹事長のおっしゃっていることはある程度分か ります。

しかし、歳出規模を拡大してということになると、それは先月25日の 議論でも、歳出拡大については慎重であるべきだという意見が大勢を占めていました。

ただ、減税については考えてもいいんじゃないかと我々は思っていますので、ローン減税やNPOに対する減税を我々は主張しています。直接的 な景気対策ではありませんが、ローン減税なんかは個人における不良債 権の処理のような側面がありますから、そういう意味では構造改革として位置付けて進めていくことは意味のあることではないかと思っていま す。

そして、その結果として、個人の借金が減れば、消費の拡大にもつな がっていくわけですから、結果的には景気回復にも資するということに なるかもしれません。

増税

【記者】増税についてはどうでしょうか。

【政調会長】短期的には、今増税ということはあり得ないんじゃないで すか。ただ、中長期的な問題として、税制改革ということで議論してい くというのは、それはあるんだろうとは思いますが、個人的な意見を言 わせていただけば、私はプライマリー・バランス(公債関係予算を除い た基礎的財政収支)を確保するところまでは、極力歳出削減でやってい くべきだと。

プライマリー・バランスを確保してそれで終わりであれば、増税も含 めてあらゆる手段を動員してやっていくというのも一つの考え方です が、そうではありません。プライマリー・バランスというのは単なる一 里塚で、その後は国債の発行を限りなくゼロに近付けていく。

そして、国債発行がゼロになれば、次は累積債務を減らしていくとい う3段階の中の第1段階に過ぎないわけですから、そこでもう増税を やってしまうということになると、その後消費税がどれだけ上がるのか と。想像できないような税率になってしまうわけですから、まず第1段 階としては歳出削減を徹底すると。

それもかなり考え方を変えないと10兆円ぐらいの歳出削減というのは できないと思いますが、プライマリー・バランスはまず歳出削減を中心 にして実現するというのが妥当な順序だと思います。

そしてその上で、次のステップとして、増税も含めた税制改革という ことになります。しかし、それは5年以上先の話だと思います。

だからといって、税制について何も言わなくていいということではなくて、特に所得税については、我々は参院選でも申し上げましたように —-課税最低限を下げるという言い方は私は好きではありませんが—- いろんな控除を整理することで、結果的に課税最低限が下がるとという ことは当然あると思っています。

配偶者控除、配偶者特別控除や扶養控除を縮減あるいは廃止して、そこから出てきた税収については子育てに対する手当に振り替えると。そういう意味ではニュートラル、つまり一般の財源として使うわけではな くて、そういう形での子育てのための手当としての歳出に使うということです。

そういう控除をやめれば、課税最低限は下がることになりますが、所得の低い方から見ると、課税最低限が下がるとしても、その代わりに手 当がありますから、負担増にはならないということです。

今の話は、これから民主党女性政策の大きな柱として打ち出していきたいと思っています。

一国会議員としての抱負

【記者】昨年は、政調会長として党内の政策論議を引っ張っられたと思うんですが、今年、一国会議員としてどのような1年にしようと思って いらっしゃいますか。

【政調会長】一国会議員として?

【記者】一国会議員として。

【政調会長】一国会議員といっても、少なくとも民主党所属議員としての立場があるわけですから、民主党が政権を取れる党に早い段階で持っ ていくということに尽きると思います。

まあ、多少うるさいと思われても、言うべきことはしっかり言っていきたいと。民主党をつくるという1点に集中してやっていきたいと思っています。

他党との連携と安保合意

【記者】横路さんの他党との連携についてですが、「一旦なかったこと に」というお話でしたが、単なる勉強会としても今回の場合はやめたほ うがいいと?

【政調会長】まず、相手が党としての対応ということであれば、明らか におかしいわけですね。有志同士ということであれば、それは考えられ ますが、そのときには、それぞれの党の役職に就いた人は表に出ない形 で若い人中心の勉強会の場として、あるいは交流の場として考えると。

で、そのときは別に今まで中心になってきた人たちだけじゃなくて、 誰もが参加できる形を確保したうえでやっていくということであれば、 それは問題ないんだろうと思います。

【記者】それに関連してですね、自由党との間で安全保障の分野で政策 合意をしたということなんですが、これは政調会長はどう思われます か。

【政調会長】私にははっきりしたことは分かりませんが、新聞報道の範 囲で私の感想を申し上げますと、小沢さんの持論は「国連決議があれば 憲法9条の問題ではなくなる。従って、多国籍軍への参加・武力行使も 含めてやるべきだ」と、こういう意見ですね。

で、新聞報道を見る限り、合意の中でも、そういう路線は変わってい ないと思います。まあ、別組織にするというのは、今まで小沢さんは 言ってなかったことなんで、そこは若干変わってるのかもしれません が、多国籍軍への参加、そして武力行使への参加ということについて否 定しない文言になってるんじゃないかと思われますので、それで本当に いいのかということだと思いますね。

我が党は、多国籍軍には参加しないということを安全保障基本政策の 中で、党の幹部が皆入って議論した結果として、そういう結論になってますから、そういう党の従来の考え方と違いますし、個人的に、憲法9条があるときに、国連決議があるからといって、9条を全く離れて、武力行使に参加するというような解釈変更を安易にしていいと私は思いま せん。

そこをどう考えておられるのか、もしサインをしたとすれば、お訊き したいなと思います。土井さんもそれでいいんですかね?

代表選と党の基本方針

【記者】代表選の考え方についてですが、今までの政調会長の議論は、 党の積み上げを大事にしてきたと思うんですが、代表選には、そういっ た党の考え方を軽視した、これまでの議論をガラッと変えるような公約 を掲げて出てくる人もいると思うんですが、そういう代表の公約と党の 積み上げの議論との関係はどうあるべきだと思われますか。

【政調会長】党のスタートのときの理念といいますか、いろんな文書もありますが、それは憲法みたいなものですから、代表選がオープンに行 われて、それと違う主張を予め述べながら代表選に出て、そしてその方 が正規の手続きで選ばれれば、それはそちらに変えていくということは 私は何の問題もないと思います。常に時代に応じて変わっていくという ことは当然のことではないでしょうか。

【記者】そういう大きな基本方針の変更は、NC等の議論ではなくて、代表選のような場でなければいけないと?

【政調会長】いえ、NCでちゃんと議論をして手続きを踏めばいいと思い ますよ。まあ、党ができたときの考え方は、かなり抽象的に書いてあり ますしね。




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