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2002.04.04|マスコミ

「多様な価値観を活かせる社会に」Q&A


モデレーター 参議院議員 山本一太

【山本】では、これから会場の皆さんとの質疑応答に移ります。

Q 民主党が政権をとったときに、自民党の政権とはどこが違うのか、岡田政調会長からご説明ください。

岡田 前提として、55年体制では自民党と社会党はイデオロギーが違いました。そういう違いを、もし民主党に求められているとすると、それは違うと言わざるを得ない。民主党も自民党も市場経済に基本的に重きを置いているし、自由ということに非常に重きを置いているわけですから、かつての自社のような違いはありません。その上で、敢えて言わせていただくと、自民党がいろいろな既得権がある人たち、あるいは供給者側に立った党であるとすれば、我々はその逆にあるということです。一般のまじめに働き、税金を納めているような人の立場に立った政党でありたいと思っています。自民党も言うことは似ていますので、最後は「やるか、やらないか」の違いじゃないかなという気もします。小泉さんの言っていることは、正直言って僕はそんなに間違っていると思ってないです。ただ、やってないだけ。それを我々ならやりますよ、ということです。

Q 自由市場と逆行するPKOや空売りなどに対してどう思われますか。

岡田 それは変えるしかない。自民党のお偉い人たちは、マーケットに介入をすることが長い目で見て完全に自殺行為だということを全然わかってない。政府は認めようとしませんが、先週のテレビに出た亀井静香さんが、いや、おれのときはPKOを随分やったけど、今回もやっているんだろうと言っていました(笑)。株を売ると金融庁から厳しくチェックが入るとか、いろいろなことが3月に言われましたが、とても残念だと思います。

Q ハーバード大学に留学中に政治の重要性を認識なさったそうですが、具体的に何があったのですか。

岡田 よくわからないんですけど、多分、気が大きくなったんだと思うんですね(笑)。でも、海外に行って政治家になろうと決意するケースは結構あるんですよ、私の周りでも。私、実はあまり政治が好きじゃなかったものですから、役所時代にも政治家とおつき合いしたくなかったし、20代の頃は実は投票にも行ったことはないんです(笑)。しかし、役所に入って役人の限界も感じたし、アメリカで政治家がそれなりに尊敬を受けていることも知って、「じゃあ、自分もやってみるか」と思ったんです。やっぱり若い世代が頑張らなきゃいけないんじゃないかなと。でも、気が大きくならなきゃこんな無謀なことはやらなかったと思いますけどね。

Q 海外援助は相互依存と人道主義と国益だと言われておりますけれども、国益をさらにブレークダウンしていくとどういうことだと思われますか。

岡田 援助は一つは人道的なもの。これは薄く広くばらまく。もう一つは国益。このときの国益は「日本の安全や豊かさに直接的に影響がある」ということだと思います。例えば、そういう意味ではパレスチナなども石油の安定供給確保という観点から位置づけられますし、アジアの国に対する援助も、そういう意味で位置づけられます。きちんとめり張りつけることが大事で、すべてにわたって同じように援助していく必要はないと思います。

Q 総理になったら東京の国連大学や国連をどのように活用されますか。

岡田 どうやって国連大学や国連を活用するかという以前に、アジアにおいて国連の果たす役割はかなり大きいと僕は思います。NATOのあるヨーロッパとは大分違う。日本外交も国連中心主義と言われていますが、やっぱり日米同盟と国連をうまく使い分け、バランスを崩さないようにしなきゃいけないんじゃないかと思います。その前提として、日本が常任理事国になるのは当然のことだと思いますね。

山本 常任理事国入りには岡田さんは賛成ですか。

岡田 戦争が終わったときの戦勝国がいまだに常任理事国で、日本やドイツが排除されているのは、どう考えてもおかしいですよ。

山本 いや、それを聞いて力強いです。日本の常任理事国入りを推進する議員連盟をつくっているものですから。自民党がつぶれたら、あとはよろしくお願いいたします(笑)。

Q 若い人たちに贈る言葉を。

岡田 「自分を磨く」という言葉を贈りたいですね。政治の責任で経済を再生していくと同時に、個人が自分の生きざまを見つけてほしい。そこを国に頼ってはいけない。自分の生き方はやっぱり自分で見つけるべきです。

Q 地球温暖化対策の推進大綱が発表されましたが、岡田さんは京都議定書や自然エネルギーの問題、原発の問題をどう思われますか。

岡田 一般的なご質問なので、どこまで答えられるかわかりませんが、私は日本社会が今、元気がなくなっていることに危機感を感じています。これらの問題でもそうだと思うんです。3月19日でしたか、政府が決めて発表しても国民は自分の問題としてとらえていない。産業界もそう。私はたまたま第2次オイルショックのときに通産省で石油を担当してましたので、あのときの危機を乗り切った活力がどこへいっちゃったのだろうと感じます。これではお答えになっていないですかね。

質問者 自然エネルギーについてはどうでしょう。

岡田 もちろん自然エネルギーは最初はインセンティブをつけてでも導入すべきだと思いますが、原子力なしで済ませることは今の段階では非現実的だと思います。

Q 総理になる前に、大臣としてはどんなことをやりたいと思われますか。

岡田 僕は別に総理になりたいと言ったつもりはないんですけれどもね。大事なことはまず政権を変えること。日本の政治が機能していないのは政権交代がないからです。当たり前のように政権交代が起こるようなシステムに変えないといけない。僕は「自民党をぶっつぶす」と言いましたけれども、そうでもしない限り自民党は変われない。山本さんがどれだけ頑張っても、自民党を変えることはできないと思いますよ。しかし、自民党が野党になれば、そこで大きく変えるチャンスが出てくる。私は、自民党の若い人も自らを野党にして、クーデターを起こせと言いたいですね。

例えば、鈴木宗男さんだって次に野党になると思ったら、あんなこと絶対できません。加藤紘一さんだってそうです。政権交代があれば自浄作用や競争原理が働く。いい意味で競争ができるような仕組みに持っていくことが、私が目指している最大のことです。

Q その仕組みをつくるスタートはどこでしょうか。

岡田 若くていい人材を登用して民主党をしっかりつくることです。若い人のレベルでは自民党に決して負けないと思います。そう言うと菅さんや鳩山さんが怒るものですから、最近は55歳以下と言っていますけれど(笑)。

山本 私も、健全な政権交代、健全な競争には同感です。そこで岡田さん、今の民主党は政権とれますかね。そういう力はあると思いますか。

岡田 ないですか(笑)。

山本 正直に言って自民党もいろいろな矛盾を抱えています。あらゆるウイングを吸収してきた政党なので、随分内部に矛盾があるわけですが、民主党も安全保障や福祉の問題など、随分違う意見の人たちがいるように思えます。このままで政権を担当できる政党になるんでしょうか。

岡田 僕は、そのぐらいの幅はあっていいと思います。ただ、民主党にやや欠けているのは決めたことを守るということ。自分の信念には反しても、党の決めたことに従うという点が少し欠けている。もちろん本当に信念に反するときは党を出ればいいんですがね。

今朝も全議員協議会で選択的夫婦別姓の法案を出したのですが、「やっぱりそれはけしからん」という意見が出て大議論していたんです。党として選挙公約に出して法案まで国会に出していることを、今さら引っ込めろという人がいること自体理解できない。リーダーが政権を本当にとるんだという方向に引っ張っていくことが大事だと思いますね。

Q 「選挙」も一種の市場であって、「政権交代がないのはおかしい」というのは、株式市場で上がらない会社の社長が「うちの会社の株を買ってくれる人がいないのは、市場が間違っている」と言っているのと同じように聞こえます。連立与党が過半数をとっているのは国民の選択であり、民主主義が機能しているからではないですか。その点どうお考えでしょうか。

岡田 基本的にはそうです。ですから、我々も選挙で勝って政権をとろうと考えています。ただ、議席の配分が地方に偏り過ぎ、1票の格差があります。もう一つは55年体制の名残りで、自民党でなきゃ絶対だめだという人が70才以上の人に結構いらっしゃる。そこを乗り越えるだけのパワーが必要です。

反面、山本さんがいる前で恐縮ですが、台湾の国民党みたいに自民党も崩れ出したらガタガタになる可能性が十分にある。そういう中で、若い人が主導権を持って新しい自民党をつくれるわけです。そういうドラマが5年以内に必ず起こると思っています。といいながら、もう5年ぐらいたちましたけれど(笑)。

山本 ありがとうございました。いつものように最後に私からコメントさせていただきたいと思います。

このセミナーには本当に日本のリーダーになれる人を呼ぼうということで、いろいろな形で選定しました。岡田さんの名前は最初のリストからあったんですが、政調会長だからとか、テレビでご活躍されているからとかいう理由で、まだ腹を割って話をしたことのない方に出演をお願いするのは失礼だと思っていまして、後半にお呼びすることになりました。その間に、民主党の若手議員やいろいろな方々に岡田さんのことをうかがいました。とにかくみんなが言うのは、岡田さんはいつも書類を持ち歩いていて、政策のインズ・アンド・アウツを知り尽くした人だと。ただ、「ものすごくまじめで緻密なので、準備をして行かないと断られるよ」と言われたものですから、岡田さんの本を読んだり、新聞記事を引っ張り出したり、岡田政調会長が出てしゃべられる番組を思い出しながら会いに行きました。会いに行ってご説明したら、私の言うことをきちっと聞いていただいて快く受けてくださいました。そのときに初めて岡田さんとお話をしさせていただき、我々の世代で、ここまでまじめに政策を勉強し、まじめに政治のことを考えている人は本当にいるだろうかと思いました。やっぱり岡田さんには政策派の論客として、我々の世代のエースのひとりとして、総理を目指して王道を行っていただきたいと思います。先ほど「総理を目指しているわけじゃない」とおっしゃいましたが、ここまでまじめに政治を考えているのですから、当然、究極的には日本を引っ張っていくリーダーを目指していただきたい。今日は改めてその気持ちを強くしました。ただ、個人的にはやっぱり総理を目指す人に好きな曲がないというのは、これはほとんど許されないことだと思いますので(笑)、岡田政調会長に音楽を聞かせる会か何かを超党派でつくって、1カ月に1枚はCDを送るのはどうでしょうか。岡田さんは、政策は申し分ない、ビジョンもある、顔もいいし、選挙も強い。しかし、「女房を愛しているんだ」と言えて、しかも「このCDが好きだ」と言えるような状況に我々が何とか持っていきたい。自民党議員の私がそんなことを言ってはいけないのですが、正直、そう思いました。岡田さん、今日は本当にありがとうございました(拍手)




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