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2002.07.30|国会会議録

154回-衆議院本会議 6号

議長(綿貫民輔君) 岡田克也君。

〔岡田克也君登壇)

岡田克也 民主党の岡田克也です。

私は、ただいま提案されました小泉内閣不信任案について、民主党・無所属クラブを代表して、賛成の討論を行います。(拍手)

まず申し上げなければいけないのは、今国会が、残念ながら、国民を代表する国権の最高機関としての権威、立法府としての機能を十分に発揮し得なかったと いうことです。二百日近い国会会期を費やしたにもかかわらず、重要法案について十分な審議がなされませんでした。政治と金の問題についても具体的な成果は 見られないままでした。本当に残念なことです。

なぜ、このような状態で会期末を迎えなければならなかったのか。その責任は、小泉総理、まさにあなたにあるのです。あなたが内閣総理大臣としてのリーダーシップを欠いていることが、この国の政治の混乱を招いているのです。

先ほど町村議員から野党間の政策の不一致を言われましたが、野党の不一致よりも、自民党の中の不一致、自民党と小泉総理の不一致の方がはるかに大きい。それは、国民だれもが知っていることであります。(拍手)

まず、経済の問題について申し上げます。

改革なくして成長なしというあなたの言葉は、改革しなければ本当の意味での経済再生はないという意味では、私は、間違っていないと思います。しかし、あ なたは果たして改革したのでしょうか。不良債権の問題はどうなったのでしょうか。私は、あなたがまだこの不良債権の問題の本質を理解していないのではない か、そういうふうに思わざるを得ないのであります。

郵政問題もそうです。

あなたは、郵政の問題を、最初からこの問題を指摘していたのは自分であると胸を張られますが、本当にこの問題の本質を理解しているのでしょうか。政府案 は、郵便事業への民間参入に重点を置いたものでした。しかし、本来であれば、郵貯、簡保の問題に焦点が当てられるべきだったのです。あなたは、民営化の問 題は次の段階で議論すると言いますが、経済再生のために官民の線引きを、役割分担を見直すというのであれば、少なくとも、今回、郵貯、簡保の限度額を引き 下げるという程度のことはなぜできなかったのでしょうか。

ついでながら、郵政公社化法案のアイデアは、これは橋本内閣のときに既にあったわけであり、あなたのアイデアではありません。あなたが総理大臣であることによって、郵政改革が、郵政公社の問題が何か進展したということは何もありません。

税制改革をめぐる政府内の不統一もひどいものでした。

経済財政諮問会議と政府税調が、基本理念のところで食い違っていました。すなわち、中立か活力かということについて、数カ月間、政府の中で意見がまとま らなかったのです。あなたが最初に明確な方針を示すことなく政府の中での議論をスタートさせたことがその原因です。

この間の経済閣僚間の混乱ぶりもひどいものがありました。未曾有の倒産、失業という厳しい経済実態の中から一日も早く脱却することが求められている中で、あなたのリーダーシップの不在により、多くの時間とエネルギーが空費されたのです。

次に、個人情報保護法についても申し上げます。

この法案のできの悪さ、危うさは、与党議員も含めて、十分おわかりだったと思います。本来であれば、前国会終了後、新しい法案を出し直すべきだったので す。今の法案を前提に国会で議論を始めた以上、この国会で成立しないことは最初から明らかだったはずです。さらに、個人情報保護法の成立が困難となった時 点で、住民基本台帳ネットワークの始動について再考すべきでした。既に準備に入っているからという官僚的な理由で、個人情報の保護が行われず国民の個人情 報が侵害される大きなリスクにさらされることになってしまいました。

さらに、小泉内閣の罪は、健康保険法改正案にも如実に示されています。

議会のルールを踏みにじり、衆議院でも参議院でも強行採決によって与党単独で法案を成立させ、国民に大幅な負担増を強いる一方、これも公約である医療制 度の抜本改革は、先送りされたままであります。まさに、国民に痛みだけをもたらし、これからの展望は示されないという無責任な姿勢に終始していると言えま す。

私には、小泉総理が厚生大臣のときに、二〇〇〇年までに医療の構造改革をやると国会で明確に約束していただきながら、すべてほごにされたという苦い思い があります。当時の私は、厚生委員会の野党側筆頭理事でありました。その反省に立って、今回は改革の約束をしないということなんでしょうか。とにかく負担 増だけは約束するというのでは、国民の将来不安は広がり、我が国経済はますます失速すると言わざるを得ません。ここにも小泉総理のリーダーシップの不在が あります。

最後に、政治倫理の問題を指摘します。

この国会の最大のテーマは、実は政治と金の問題でした。しかし、総理には、政治そのものが問われているという危機感を感じることができません。

昨日、与党三党の党首会談で、今国会で政治改革について「確実な前進があったことを評価する。引き続きさらなる政治倫理の確立に向けた具体案の検討を進 める。」ということが確認されました。こうした形だけの対応で済ませようという、ごまかそうという発想が私には信じられません。

十数年前にリクルート事件が発生しました。その折に、当時の自民党は、党議決定した政治改革大綱の中で、「政治と金の問題は政治不信の最大の元凶であ る。」として、政治資金制度や選挙制度の抜本的な改革に立ち向かったのです。小泉総理には、この自民党の政治改革大綱をぜひ読み返していただきたい。さき の与党三党首会談の文書との落差、志の違いに気づかれると思います。

これだけ多くの事件が起きながら、危機感すら感じることのできない今の自民党、今の小泉総理、これこそがこの国の本当の危機であることを示していると思います。(拍手)

昨年のKSD事件に引き続き、今国会で、加藤元自民党幹事長、井上参議院議長が議員辞職し、鈴木宗男前衆議院議院運営委員長が逮捕されました。公共事業 に関与して一定の手数料を得るというビジネスが存在していること、いまだに政治資金に関して裏金が存在していること、公私混同があることなど、とんでもな い実態が明らかになりつつあります。

政治に対する国民の信頼が根本的に揺らいでいる今、それに対し、政治家、とりわけ一国のリーダーが何をすべきかが問われているのです。しかし、あなた は、自民党総裁として、日本国総理大臣として、リーダーシップを発揮することなく、この問題に終始、他人事でした。

野党四党は、政治資金規正法改正案を国会に提出しました。その内容に、公共事業を受注した企業に対する政治資金を一定期間制限するという小泉総理御自身 の提案を盛り込んだ法案であるにもかかわらず、与党の反対でいまだ委員会にも付託されていません。恥を知れと言いたい。(拍手)

小泉総理は、この不信任案上程に関して、与党の数の力で否決すれば国民の信任を得たことになると言っていると聞きますが、それは全くの誤りです。リー ダーシップを決定的に欠きながら、与党と妥協を繰り返すあなたの姿は、改革者の姿勢とはほど遠く、もはや、小泉内閣の使命は未達成のまま、その命脈は尽き たと言わざるを得ません。

民主党は、政治への信頼回復のため、小泉連立政権を厳しく糾弾し、その打倒を強く国民に訴えるために、本不信任案を提出いたしました。たとえこの場で不 信任案が否決されるようなことになろうとも、国民の小泉総理に対する信頼は回復しません。リーダーシップを根本的に欠いた小泉総理、それを牽制したり応援 したりしながら政権に執着することが自己目的化した自民党、保守党、そして公明党、この三党ではこの国の改革と再生は不可能です。今こそ、新しい政治、新 しいリーダーシップが求められているのです。(拍手)

以上、民主党が不信任案可決に賛成する理由を申し述べました。

野党のみならず、与党の中にも心ある皆さんがいる、その心ある皆さんのこの不信任案への賛成を心から期待しながら、私の賛成討論といたします。(拍手)




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