定例記者会見録 2002年6月
6月27日
○官房機密費取り扱い方針は長官による不透明な出費が残る不十分なもの
○中東問題—-指導者を選挙で選べとは言えても、誰が駄目だとは言えない
○円高というよりドル安というのが現状、中長期的には円安を心配すべき
○郵政改革—-自己責任に基づかない民間出資を認めれば後に悔いを残す
官房機密費の取り扱い基本方針
【政調会長】官房機密費についての取り扱い基本方針が出されました。私も2月の予算委員会で機密費の問題はかなり取り上げて、何か政府の中で検討してるなという感触はあったんですが、今回改めて4月に決めたものが出てきたということです。
ただ、私が非常に不満に思っているのは、結局、官房長官が自分の判断で誰にいくら出したのかが分からないという部分が依然として残されていますので、そういう意味では極めて不十分な方針ではないかと思います。
我々はすでに、議員立法を出していますが、将来的に開示されるという緊張感があって初めて、一部に出た「背広券」とか「靴券」というような馬鹿げたものがなくなるわけで、今回の基本方針というのは、そういう余地を残したままです。そういう意味では改革になっていないと言わざるを得ないと思います。
いずれにしても、総理はよく「抵抗勢力」ということを言われますが、官房機密費に抵抗勢力はないわけで、総理がその気になればできる話ですから、それがこういう中途半端な形に終わっているということは、「小泉総理自身に変える気がない」と言われても仕方がないと思っています。
サミット
【政調会長】あと、サミットが今行われていますが、私自身は報道されている以上のニュースを持っていませんが、やや世界経済の状況が悪いというなかで、日本問題が少し焦点からそれた感じもしますが、現時点で特に私から申し上げることはありません。
中東問題
【記者】サミットに関連するかもしれませんが、中東問題に対するアメリカの方針について民主党はどういった立場なんでしょうか。
【政調会長】私の個人的意見ですが、選挙でトップを選ぶということは正論だと思いますね。しかし、「誰が駄目だ」とか、そういう権利はないと思います。アメリカ合衆国大統領であってもね。
そういう意味で、「選挙をきちんとして指導者を選べ」というところまでは私は言ってもいいと思いますが、「誰が駄目だ」とか「誰はいい」と言うべきでは絶対にないと思います。
【記者】それを評価した小泉首相の態度についてはどうですか。
【政調会長】どういうおつもりで評価したのか分かりませんが、それは是非お帰りになったら訊いてみたいと思いますね。
もし、アラファト議長自身を排除するということまで含めて評価するということであれば、これまでの日本??\xBD政府の考え方とは違いますから、どういう根拠でそうおっしゃったのか、それは是非訊いてみたいと思っています。
いかなる国といえども、一国のリーダーについて「この人は駄目だ」と言う権利はないと私は思います、犯罪者でない限り。そういう、リーダーとしてあまりにも相応しくないということがあれば別ですが、今まで日本国政府としてそういう評価をアラファト議長に対してしてきたことはないわけですから。
円高・株安
【記者】経済なんですが、円高・株安の状況について一言お願いします。
【政調会長】まあ、「円高」と言うべきではないでしょうね。「ドル安」と言うべきでしょう。そういう意味で、結果的にドルとの対比で円高になってはいますが、世界的なドル安の中で起こっている現象だと思います。
もちろん、よく言われているようにアメリカ経済の先行きに対して、一時あった楽観論が慎重になってきたということだと思いますが、目の前の現象はいろいろあっても、長い目で見れば、やっぱり基本的には今のままだと円安のほうをむしろ心配すべきだと思いますね。
郵政関連法案
【記者】郵政関連法案についてなんですが、与党側は来週、委員会採決の考えのようですが、信書便法案と郵政公社化法案のそれぞれについての民主党の考え方を伺えますか。
【政調会長】この前の役員会で確認したんですが、まず、そういう早急な採決はさせないと。とにかく我々としては早急な採決には賛成できないという立場です。
それを押し切って採決するということになると、それだけ厳しい態度を取らざるを得ないことになりますが、役員会のレベルで確認したことは、今の政府案を後退させるような修正案が出てくるということになれば、それには賛成できないということです。
【記者】「厳しい態度を取らざるを得ない」というのは、来週採決を押し切ってくるということだとそれは法案に賛成できないということですか。
【政調会長】いや、そこはまだ決めていません。押しきり方にもよりますし。それは現場のこれからの判断ですけれども。
【記者】郵政関連法案については自民党が修正を求めていて、その焦点の1つが郵政公社が民間企業に出資することを認めるかどうかということですが、それについては?
【政調会長】出資の話は郵政改革の趣旨から言うとやや性格が違うんですよね。民間の力を活かしていこうという観点からの議論とは異なる議論なんでやや難しいんですけれども、私の意見を言わせていただくと、自己責任を問われないなかで自由に活動を認めるということは、後で悔いを残すことになるだろうと思います。
全て自己責任でやって、後で税金で穴埋めしないという前提であれば、かなりの自由を認めてもいいと思いますが、責任は取らない、しかし自由に経済活動をするというのは、非常に疑問だと思います。
6月20日
○税制改革—-人的控除の手当振り替え、ローン利子控除などで経済活性化
○鈴木議員逮捕—-政治資金規正法の改正等が延長国会の重要課題になる
○国際空港—-上下分離方式の民営化では、民営化の意味がない
○田中議員の疑惑は今後国会で追及、潔白であればそれを証明すべき
○自由党と個々の政策を付き合わせるより政権獲得後の方向性の一致が重要
税制改革
【政調会長】まず、税制改革についてですが、全体の税制改革に対する民主党の考え方は、2年ほど前にまとめたものがありますが、今さらに議論をしておりまして、課題として特に重要なものとしては、特定財源と環境税の話ですとか、社会保障と税といった話について、これから1カ月ぐらい議論を詰めたうえ、改めて民主党としての税制改革の基本的な考え方をまとめようということで、今日のNC(ネクストキャビネット)で確認しました。
今日は、とりあえず経済活性化関連の部分を党としてまとめました。その中身ですが、第一に所得税については、民主主義基盤の強化のため、納税者権利憲章を制定したうえで確定申告を原則にして給与所得者については年末調整も選択できるようにすると。
それから、世帯単位の「税の控除」から必要な人への「社会保障給付」への転換ということで、扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除などの人的控除を見直して、それによって生じる財源を子育て支援などの社会保障給付に充てる。
消費の活性化としては、これは従来から予算の組み替えという形で出しておりますが、住宅・耐久消費財・教育などのローン利子を所得控除するということを唱えています。ここの部分は、予算の組み替えでも要求していますので、今すぐにでもやるべきだという考えを持っています。
第二に、法人税ですが、政策減税として研究開発や環境対策に対する減税を拡大すると。それは一時的なものではなくて恒久措置にするというということで、法人税法の本則に書くことになると思います。減価償却制度も抜本的に見直し、その他の租税特別措置については原則として一旦廃止すると。
国際競争力の確保ということでは、長期的な方向としては外形標準課税の導入を将来的課題として取り上げていますが、タイミングとして今やるべきかといえば、それは慎重であるべきだと。
あと、NPO税制、寄付金税制の拡充と公益法人課税の見直しという我々の従来の主張にも触れています。
第三に、中間層の生活を守る相続税・贈与税改革として、相続税は70%の最高税率はほとんど適用されていませんので、それを50%に引き下げ、贈与税の最高税率も連動して引き下げると。 それから、基礎控除の引き上げということで、現行の配偶者と子供3人のモデルで9000万円の基礎控除額をアメリカ・ドイツ並みの1億5000万円程度まで引き上げるということを主張しています。
第四に、その他の改革として、土地関連税制の適切な負担への転換ということで、以上のように、経済活性化関連として我々の考え方をまとめました。
鈴木宗男議員の逮捕
【政調会長】それから、鈴木宗男議員が逮捕されました。いろんな方がいろんなことを語っておられますので重ねては申し上げませんが、やはり制度的対応と自民党固有の問題と両面あるわけで、特に制度的対応という意味では、「政治とカネ」の問題をもう一度政治資金規正法の改正などによって実効性ある規正ができるようにしていかなければいけないと思います。
我々が提出している、一度は小泉総理ご自身もおっしゃった、公共事業受注企業からの献金禁止や政党支部数の制限、あるいは透明性を高めるためのインターネットでの政治資金収支報告書の公開など我々の出している法案について、未だ衆議院で吊されて審議すらされない状況ですが、これについて、延長国会最大のテーマと位置付けて、与野党でしっかり議論していく必要があると考えています。
国際拠点空港の民営化問題
【政調会長】それから、国際拠点空港の民営化問題ですが、成田と中部と関西の3空港について、国土交通省の審議会で上下分離方式が出たわけで、これは今後政府内で検討されていくと思いますが、私は基本的に上下分離方式というのは、いろんなところで指摘されているように、関空の救済ということになるわけで、基本的には自己責任原則の下で、上下一体でやっていくべきだと考えています。
これは道路公団もそうなんですが、一番の問題は設備投資をいかに効率的にやっていくかということが民営化の最大の意味ですから、それを分離してしまったのでは、ほとんど民営化する意味がないということになります。
もちろん、民間だけではやっていけないからこそ国が関与しているわけですが、一定の責任を負わせ、例えば関空であれば、当初の見通しに比べて投資額が格段に膨れ上がる、あるいは利用率が低いというのであれば、それはその責任というものが当然伴うわけです。
そういう声はあまり出てきませんが、今の関空の経営者の責任の問題を含めて、あとは自己責任ということですから、当初予想しただけの利用率に達しないということであれば、その分、国がたくさんのカネを出すというよりは、むしろカネを引き上げるぐらいの気概を持って、まず自分たちの責任を果たしていくべきだと感じています。
田中真紀子議員の処分
【政調会長】あと、田中真紀子さんの処分が出たということですが、今までは基本的に自民党内の問題ということでしたが、自分たちでは疑惑を解明できないという、それは大変情けない話ですが、しかし自民党としてそういう結論を出したというのであれば、次は国会の責任として事実関係を究明していかなければいけないと思っています。
今国会でも、社民党の辻元清美さんが秘書給与の問題で議員辞職をしたわけですし、古くは我が党の山本穣治議員が1年6カ月の実刑判決を受けて現在執行中ですから、そういうバランスから見ても、事実関係をきちんと究明して、そして、仮に辻元さんや山本さんと同じような事実関係にあるんであれば、それは同じような扱いを受けないと「法の下の平等」に反するということになります。
そして、そうでない、事実は違うというんであれば、そのことを田中さんご本人が証明するしかないわけで、この問題を国会の場に移して、究明されていく必要があると考えています。
減税の財源
【記者】税制改革についてですが、ローン利子控除は来年度からの措置ですか。
【政調会長】直ちにやるべきものとしてはローン利子控除と申し上げました。その他については、来年度以降の税制改正のなかの問題として議論していくべきだということです。
【記者】基本的な減税財源は歳出の合理化で賄うんですか。
【政調会長】以前、我々は予算の組み替え案を出したわけですが、そういった組み替えで賄っていくべきだと考えています。
自由党との政策協議
【記者】5月の連休中の鳩山代表と自由党の小沢党首の会談を受けて、政策協議を進めるということでしたが、その後、安全保障政策などの協議は進んでるんでしょうか。
【政調会長】ええ……ご案内のとおりです(笑)。
まあ、今は国会対応をめぐって野党内で意見対立がありますので、電話してもガチャンと切られそうだし、少し落ち着いたら藤井さんと話をしたいと思っています。
【記者】それに関連するんですが、国会対応でさえ民主党と自由党がうまくいかないのに、政権を担って一緒にやっていけるんでしょうか。
【政調会長】今回のことは残念だと思いますが、それが永続するわけではありませんので、それに個々の法案対応で必ずしも一致するわけではないし、あまりそこは神経質に考える必要はないんだろうと思いますね。
全部一致するんなら、一つの党でいいんですから、そこは個性をお互い主張しながら、まとまるときはまとまると。こういう考え方でいいんだろうと思います。
政策協議でも、個々の政策について、細かく突き合わせる必要はなくて、基本的に我々が政権を取ったときに、その4年間でどういうことをやるのかということがしっかり認識できていればいいんだと私は思います。
それより長期的な話とか、あるいはそれより前の短期的な話というのは、それは必ずしも一致する必要はないと考えます。
6月13日
○郵政関連法案に関する論点メモを党として承認、委員会で質していく
○信書の定義が役所の自由裁量であることは問題、法案に明記すべき
○あまりに信書の範囲を広げると、民間の活動領域を削ぐ
郵政関連法案
【政調会長】郵政関連法案についてですが、今日の参考人質疑も含めて4回の質疑をするなかで、「我々としてはこういう点が問題ですよ」と いう論点を総務部門で精力的にご議論いただいてきました。
まあ、いろんな意見があるということは記者の皆さんもご案内のとおりですが(笑)、今日、論点メモが総務部門から出てまいりまして、ネクストキャビネット(NC)で承認しました。
今までも何度か中間報告をいただきながら、その都度、方向性については承認をしてきたわけですが、政府から具体的法案が出てきましたの で、その論点について部門でご議論いただき、それが今日のNCで承認 されて、「民主党の論点」になったということです。
中身としては、「信書便法案」のほうは大きく3つ触れておりまして、第1に、信書の定義については具体的に法案に明記すべきではない かということです。ガイドラインでは駄目だと。
第2に、ユニバーサルサービスの基準については、それは必要である と従来から我が党は主張しているわけですが、基準については必要最小 限にすべきではないか。そして、できるだけ法案に明記すべきではない かと。
第3に、民間参入規制については、「利用者の選択の機会拡大」が本 当に図られるのか疑問がある。つまり、誰も参入しないんじゃないかと。それから、民間事業者が協定を結んでの参入は不可能だとされてま すが、そもそも、なるべく多くの民間事業者が参入しやすくするという視点で法案ができてるんじゃなくて、その逆じゃないかと。そういう意味で問題があるということです。
公社化法案のほうは、第1に、郵貯・簡保については規模が過大で、 1000万円の預入限度額の引き下げを図るべきだと。
第2に、長期借入金については、健全経営の観点から懸念が残り、検 討する必要があると。
第3に、国庫納付金については、我々は預金保険料相当分の納付を確 保すべきじゃないかということを前から申し上げているわけですが、政府案は具体的な納付内容・時期・額があまりに不明確であると。結局、 納付金は空振りになるんじゃないかということです。
第4に、郵貯・簡保の資産運用についても、郵政審議会等の位置付けも含め、経営責任体制が不明確であると。
第5に、公社による民間への出資問題については、出資を認めるよう に法案修正すべきだという意見もありますが、むしろ公社による民間出資は、組織の公的な位置付けにかんがみ、慎重に対応すべきじゃないかと。
第6に、特定郵便局制度については、これを見直すべきだと。
そして第7に、組織の効率性に問題があるんじゃないかと。
こういった問題があるということが今日のNCで確認されましたので、今止まっている状態ですから、これから国会がどうなるか分かりませんが、機会があれば委員会のなかでさらに議論を詰めていくということです。
論点メモの位置付け
【記者】郵政関連法案の論点メモについてですが、これは実質上、民主党の修正要求だと捉えて宜しいんでしょうか。
【政調会長】修正要求というふうに短絡的に捉えられると困るんですが、委員会でこういう点について政府の考え方を質していくとというこ とですね。
まあ、これに対して全部100点満点の回答であれば、それは賛成ということになるんでしょうが、修正要求ということですと、次は修正協議という話になるわけですが、現状はとてもそこまで行ってませんので、こういった論点について委員会質疑のなかで質していくということです。
どっかで聞いたようなセリフになってきたね、段々(笑)。有事法制 とスタイルが似てきたのかもしれません。突然誰かが「廃案」と言うんじゃないかと思って心配してるんですが(笑)……まあ、そういうことはないと思います(笑)。
信書の定義
【記者】信書便法案の定義について具体的に法案に明記すべきだということですが、何を念頭に置いてるんでしょうか。これは自民党内にも同じような意見があるんですが、それとの違いは?
【政調会長】現象面では似てるかもしれませんね、そこは。
ただ、「告示」に過ぎないガイドラインだと役所が自由にできるわけ で、それは法律で定めるべきだと。信書便法案の「信書の定義」なんですから、一番核のところですからね。これが、あまりにも役所の自由裁 量に委ねられているということは問題であると。
こういうふうに言うと荒井さん(自民党総務部会長)と似てくるのかもしれませんが、我々の考えはそういうことです。
【記者】政調会長としては、具体的にどこまで信書に含めるべきだと?
【政調会長】それは現段階ではまだ申し上げていませんが、政府の考え方がより明確になってきた段階で、我々としての立場を申し上げることになると思います。
しかし、一般論として言えば、あまりにも信書の範囲(郵便事業の独占)を広げすぎることには問題があると思います。実質的に民間事業者の活動領域を削いでしまうことになりますので。
6月6日
○あっせん利得法衆院通過—-世論の反発を恐れて形だけ取り繕ったもの
○民主党核政策—-核武装論は明らかに日本の国益に反する
○政府首脳はもう少し勉強してから発言すべき
○政と官—-問題は歴代外相の不作為にある、その再発防止策を議論すべき
○現段階で有事関連法案の修正協議に応じることはない
○外形課税は結構だが、時期や規模等がはっきりしないのでコメントで きない
○予算の歳出制限に着目するのはよいが、結局一律削減になるのではないか
あっせん利得処罰法改正案
【政調会長】今日、あっせん利得処罰法改正案が衆議院を通過しましたが、形だけの最低限の改正ということで、小泉内閣の「政治とカネ」に 対する非常に後ろ向きな姿勢を表すのものだと思っています。
我々が提出してる政治資金規正法改正案(企業献金を受けられる政党 支部数の制限、公共事業受注企業の政治献金の禁止等)のほうは、現在も与党によって本会議で吊されて審議もされないままになってまして、 そういったことを見ても、世論の反発を恐れて形だけ取り繕ったに過ぎないと思っています。
民主党の核政策
【政調会長】それから、来週10日、福田官房長官と安倍副長官の核兵 器発言についての質疑がありますが、すでに我々は「民主党核政策」というものをまとめておりまして(2000年4月)、基本的な認識が全 く違うと思っています。
この核政策は、私が座長としてまとめたものなんですが、まず核兵器 が将来に向かって確実に廃絶されること、そして核兵器を持つ国がこれ以上拡大しないことは、いずれも日本にとって重要な国益であるという基本認識です。
従って、日本の果たすべき役割は、核の拡散を防ぎ、核軍縮を着実に進めるためのリーダーシップを発揮することにあると考えています。
そして、日本が核武装することについて国内においても若干の議論があるが、日本が核不拡散(NPT)条約を脱退し核兵器を持つことは、 三つの点で日本の安全にとり重大な脅威を招くこととなり、明らかに国 益に反すると。
第一に、国際的な孤立の道を選択することになる。第二に、微妙なバ ランスの上にあるNPT体制を崩壊させる引き金になる可能性が大きい。第三に、少なくとも日本周辺国の核武装化のリスクや東アジア地域 全体の緊張と軍拡を招くことになる—-こういう大きく三つの理由で我々は核武装論に対して強く反対をするということを主張しています。
内閣の中枢にある官房長官や副長官であれば、感覚でものを言うのではなくて、もう少し勉強されてから物を言われたらいかがかと。安倍副 長官の発言も週刊誌などに出ていますが、少しは勉強されてから発言さ れたらどうかと申し上げておきたいと思います。
こういった三つの点についてどう考えておられるのかということを、 是非お聞きしたいものだと考えていますが、私に言わせると安易なナ ショナリズムであって、政治家として最も気を付けなければいけないことだと思います。
さらにもう一点付け加えると、最近のブッシュ政権の核政策というものが、核実験の再開をするのではないかと取り沙汰されたり、あるいは米ロの核軍縮交渉にあっても結局は核弾頭の廃棄にまでは行かないというようなことを見ると、全体の核軍縮あるいは不拡散ということに対する方向付けが揺らいでいます。そういう意味では核政策の大きな転換点になるかもしれないという状況です。
そういう中での日本の首脳の発言であるだけに、それだけ罪は重いと思います。是非、来週の審議の中で、小泉さんには総理としてきちんとした修正のメッセージを出していただきたいと要望しておきたいと思い ます。
政と官の関係
【政調会長】それから、政と官の関係について、自民党でもいろいろご 議論があって一定の方向性が出たようですが、最初の出だしと比べると 相当後退したなという感じがします。
当初案が出たときに、国家戦略本部から総理のところにも説明に行っ たと思うんですね。それに、国家戦略本部はそもそも総理がトップの組織ですから。それが安易に結論を出し、それがまた引っ込められるというのは全く組織としての体をなしていないと言わざるを得ません。
この政と官の関係、政治家と官僚の接触ルールの問題は、これはこれで我が党でも議論中で、しっかりと議論しなければいけないと思います が、もともと、この問題は鈴木宗男議員の外務省に対する働きかけが きっかけになったわけですが、実はこの問題で一番重要なことは、政と官の関係の問題ではなくて、それは問題のすり替えだと私は思っていま す。
一番の問題は、鈴木宗男議員がそういったとんでもない働きかけを外 務省に対して行ったときに、外務行政の最高責任者である外務大臣、通 常であれば自民党の有力者、政治家ですね。
一連の事件の起こった時期は、河野洋平さん、高村正彦さん、その前 であれば小渕恵三さん、そういった方々が外務大臣を務めておられたわ けですが、結局彼らは何をしていたのかということだと思います。当然 彼らは事実関係を把握していたはずです。 国会議員に対して官僚が「ノー」と言えというのが難しいのは事実で、 やはり行政の最高責任者である大臣が、鈴木宗男議員に対してストップ をかける責任があったはずです。それがなぜなされなかったのか、その 背景は何なのか、いろんな理由が考えられるわけですが、そういったことについて、自民党内でしっかり議論をし、再発防止策を作るということが私は事の本質ではないかと思っています。
有事法制
【記者】有事法制についてなんですが、安倍官房副長官が「民主党は政 府案をどのように修正すれば賛成するのか、具体的な提案をして欲し い」ということをおっしゃってるんですが、それについてどのように思われますか。
【政調会長】それはまず、政府としての正式なお考えなのかということ を聞かなければいけないですよね。ご自分の発言に責任を持って言っていただきたいという感じがします。
我々の基本的な立場はすでに申し上げているとおりでして、委員会で 審議をしながら論点を整理していくと。そして、その論点が煮詰まるような答弁があれば次のステップについて考えるというものです。前提としては、有事法制は必要であるという立場です。
その委員会審議が進まない、その原因を作った一人は安倍さんですが、そういう状況の中でやや止まった状態になっているということですから、一連の核兵器に関する発言についてきちんとけじめが付き、我々 が提案しているいくつかの点についてきちんと解決されれば、委員会審議もまた再開されると思いますので、そういうことを通じながら論点も 絞られていくと思います。
私も先般、質問主意書を出しましたが、それに対してもほとんど新味のない答えしか返ってきてませんので、そういう答えを出しておいてよ く言うなという感じがしますね。
【記者】修正協議の打診があるのかということと、もし打診があった場 合どうするのかということをお聞きしたいのですが。
【政調会長】ですから、我々はきちんとした委員会審議を行ったうえで、次のステップを考えるということですから、今の段階で修正協議の 打診があっても、それにお応えするつもりは全くありません。
私に対してそういう修正協議のお話はありませんし、この前も党役員 会で確認しましたが、民主党として現段階で修正協議には応じないと。 仮に、それぞれ個別にいろんな話があったとしても、それに対しては はっきりお断りするということを確認したところです。
税制改革
【記者】税制改革についてですが、政府が外形標準課税を導入して法人 税の実効税率を引き下げることで合意したという話ですが、それについてどのようにお考えですか。
【政調会長】まだ正式に出てませんからね、どういうタイムスケジュー ルで考えているのかが分かりませんよね。ですから、今の段階でコメン トすることはできないと思います。
もちろん、外形標準課税は必要だと私も考えていますが、タイミングの問題もあります。今のこの厳しい経済状況の中で直ちに導入できるの かどうか。これは赤字法人にも税金をかけるわけですから。
明日にも総理の指示が出るということですが、政府としてその辺をど ういうふうに整理されるのかということもはっきり分かりません。
それから、法人税の引き下げは方向としては結構だと思いますが、外 形標準課税だけで減税分を賄えるというような仕組みになるのかどうか も分かりませんから、ちょっと今の段階ではコメントしにくいと申し上 げておきます。
【記者】外形標準課税については、民主党としては「基本的には必要だ が、タイミングの問題もあるので検討を要する」という段階にとどまっ ていると思うんですが、今、民主党税調ではどういう議論になってるん でしょうか。
【政調会長】最近の民主党税調の議論は把握してませんが、そういう方 向性のままになってるんじゃないでしょうか。
ただ、政府が具体的な話をして動き出すんであれば、我々の考え方も 早急にまとめなければいけないと思います。
財制審の建議
【記者】財政制度審議会が来年度予算の建議をまとめまして、一般歳出 については02年度を上回らないということなんですが、それについては?
【政調会長】党内で一々政府の審議会の出したものについて検討してい るわけではありませんのでこれは私の個人的な感触ですが、30兆と いった数字にこだわること自体はあまり意味がないといいますか、歳入がどうなるかによって変わってくる話ですので、そういう意味で、歳出 に着目するという方向性は正しいと思います。
今年度予算については、一般歳出について「5兆円減らして2兆円増やす」ということだったんですが内容的にはかなりいい加減で、予算委 員会で私も一部触れたんですが、結局看板だけ替えただけで、本当に不 必要なものを削減しているわけではありません。
そこに本格的に取り組むというのであれば、それは評価に値しますが、従来の実績を見ると、掛け声はいいんですが本当にきちんとした意味のある削減になるのか相当の疑問があります。最終的には、また一律削減みたいなことになってしまうんじゃないかという気がしています。