岡田克也「政権奪取の秘策」を語る
天才詐欺師・小泉さんに正々堂々と打ち勝つ
岡田克也「政権奪取の秘策」を語る
吉田茂人=構成
二転三転した代表選びで露呈した民主党の弱点を、いかに克服するのか。自民党から政権を奪取するために、どのようなシナリオを描いているのか。「次の総選挙で政権を取る」と意欲を見せる新代表の岡田克也氏を直撃、その熱い胸の内を聞いた。
「一度決めたらトコトンやり抜く」
──菅前代表、小沢前代表代行などの年金問題で、民主党の信頼やイメージは落ちかけているが。
菅さんの辞任で、民主党そのものが根本から揺らいでいるとは感じていない。私が幹事長を一年五カ月務めている間に、民主党の基礎工事はほぼ完了したと 思っている。その基礎の上に立って、これから力強く政権担当能力のある民主党をしっかり訴えていきたい。
──「官僚的」「原則主義者」というイメージがありますが。
幹事長時代は、ルールに基づく党の運営をかなり厳しくやってきた。前回の衆議院選挙では、小選挙区を持たない人の立候補は認めないことを決め、例外なく 実行した。それで、若い、新しい人たちが、比例区の惜敗率で当選してきた。長期的展望に立って、必要なことは実行する。一度決めたら、トコトンやり抜く。 その結果、敵も増えたと思う。私への評価に様々あることは承知しているが、民主党の将来を考えてやってきたことで、あまり気にしていない。それを恐れた ら、改革はできない。党の体質改善、改革はこの一年で、かなり進めたとの自負がある。
具体的には、新人候補者に月々の支援を増やし、いろんなアドバイスができる体制も整えた。多様な人材を国会議員にすることが、民主党の躍進につながる。 そのために、党の限られたおカネをムダに使わない対策を講じてきた。菅さんにも・ファーストクラスはダメですよ・と申し上げた。大きな企業のトップでもな い政治家が、ファーストクラスに乗ることなど、私には考えられない。資金を戦略的に、必要な部分へ、集中的に投資してきた。
さらに監査法人が党本部や各都道府県連の収支を監査するようにした。政党は特別な存在ではない。一般の常識が通用する仕組みの導入に努めてきた。
──自分ではどのようなリーダー像を描いていますか。
トップになれば、これまでの幹事長と違って、求められるものも違ってくる。組織全体を奮い立たせて、共通の目標を達成する。つまり、次の総選挙で政権を 取るということだ。その目標に向けて、全員が力を結集できるようにもっていくことが、トップのするべきことだ。同時に、国民に対して、民主党が日本の政権 を十分に担いうる存在であることを、いかにアピールしていくかが、私の役割だと思う。
中身が全くない「天才詐欺師」
──リーダー像で、具体的にイメージする人物はいますか。
歴史上では、織田信長が好きだ。本当の意味で、従来の発想や既得権にとらわれない改革者だと思う。やりすぎた面もあるかもしれないが、日本の歴史の中で際立った人物だと思う。
──脱永田町・をスローガンとして掲げているが。
「脱永田町」は、私の一つの政治スタイルだ。小泉さんは永田町の変人と言われているが、やはりこの世界は、普通の人から見たら明らかにおかしい。例えば、 小泉さんは四年にわたって厚生年金の支払いを、知り合いの社長の会社に肩代わりしてもらっていた。これは誰が見ても勤務実態がなく、刑法の詐欺罪に相当す るような話だ。それを一国の首相がしゃーしゃーと、「いや、太っ腹な社長がいてね」と公言して、何ら恥じるところがない。まさに永田町の論理そのもので あって、これが当たり前のことになっている。
自民党の次の時代を担う若い議員たちが、迂回献金などによって、日本歯科医師連盟から何千万円というオーダーのカネを受け取っていた。一般の人から見れ ば、全く理解できないことだ。民主党はそういうものを正していく存在でないといけない。普通の人の感覚が通用する政党であり、政治であるという意味の「脱 永田町」だ。
──「自民党をぶっ壊す」小泉首相と違うところは。
小泉さん自身は、自民党という基盤の上に立ったリーダーだから、自民党を変えられないし、壊せるはずがない。それは自己矛盾になる。私自身は数年かかって、そうした既得権にとらわれない組織であり政党としての民主党をつくってきたつもりだ。
──菅前代表は小泉政治を「やるやる詐欺」と命名したが、代表が一言で総括するとどうなりますか。
私は「天才詐欺師」と言っている。この三年間、小泉政権が国民のために何かいいことをしましたか。何もなかったと言って過言ではない。経済は、輸出関連を中心に自律的によくなっているのは事実だが、政府の政策と何の関係もない動きだ。
道路公団民営化にしても、何のために議論してきたのかわからない。ムダな道路はつくらないと言って、結局、全部つくってしまうわけだし、地方分権についてもしかり。スローガンだけは先走るけれども、中身が全くない。
「自民党を土俵の外に投げ飛ばす」
──小沢前代表代行との連携は、どう取っていくのですか。
共に政権を代えてこの国を立て直す政治を目指してきたが、最後の仕上げの時期との認識は共通している。経験豊富で力のある方だから、個人的にアドバイスをもらう、相談役的存在だ。
──参議院選挙では、何を争点にして戦うのですか。
年金の抜本改革、イラク、北朝鮮、もう少し大きいところでは、小泉改革三年間の総括になるでしょうか。
──選挙戦で岡田色を出すとしたら、どういう分野になりますか。
党内で議論していくことだが、私自身が日頃感じていることの一つは、競争を軸とした強い経済の確立だ。これによって日本を再生する。同時に、その結果と して生じるいろんな問題について、「公正な社会」の視点の下に、政治はその実現のために補正をしていく。つまり強い経済と公正な社会の両立というのが、私 の基本的な考え方で、それがにじみ出るようなかたちにしたいと思っている。
──参院選の獲得議席の目標の数はいくつですか。
自民党以上の議席を取りたい。昨年の総選挙でも二二〇〇万票を集めて第一党になっているので、その流れをさらに進めていく。比例はもちろん、選挙区も自 信はある。三人区、四人区では負けることはないし、二人区はそれぞれ一勝一敗。一人区が勝負になるが、一人区もかなり期待できるところが二七のうち、半分 ぐらいはある。
──参院選で自民党より多くの議席を獲得し、次の衆議院選挙で政権奪取を目指すわけですが、そのシナリオはどのように描いていますか。
それは党としての体力、実力がどれぐらいつくかの問題で、あまり奇策を考えるべきではない。細川政権の誕生は、ある意味では一つの奇策だったと思うが、 やはり堂々の四つ相撲を取って、自民党を土俵の外に投げ飛ばすことを考えている。いったん政権につけば、五年、あるいは一〇年は、政権与党であり続けなけ れば意味がない。
それには、民主党の基礎体力をいかに強くし、人を育てるかにかかっている。そのための基盤は、私の幹事長時代に築いたと思う。後は人材で、三〇〇小選挙 区の中で、約七〇人の新人を立てなければいけない。政権奪取は、そうした準備をしっかりやって、それぞれの選挙区で堂々と勝負し、勝ち上がっていくことに つきると思う。
岡田克也
1953年、三重県生まれ。東京大学法学部卒業。
76年、通産省に入省。資源エネルギー庁国際資源課長補佐を経て、大臣官房企画調査官を最後に通産省退職。
90年、自民党から衆議院議員に当選。竹下派、羽田派を経て、93年に新生党の結党、94年には新進党の結党に参画。
98年、二大政党制を目指し、新たな民主党結党に参加。政調会長代理に就任。
党政調会長、党幹事長代理を歴任。
2002年、党代表選に出馬し菅直人に敗れ、党幹事長に就任。04年5月、党代表に就任。