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2004.07.31|マスコミ

日経ビジネスアソシエ7/20号掲載


(本文のみ)

・・今の日本にとって、一番切実な問題は何だと思いますか。

岡田 財政も環境も含め、社会が持続可能でなくなっていることです。まだ高度成長期の思考方法から抜け出せていない。右肩上がりの時代は終わったのに、政治家が無責任なせいで、古い仕組みが温存されている。

私は基本的に楽観主義者ですから、人口も減少する中、極端に言えば「マイナス成長でなければよい」と思っている。安定成長ではあっても、内部は変化し続 けていて、新しい企業や産業がどんどん出てきて、ダメな部分と入れ替わっていく。こんなイメージの社会を目指しています。

経済に関しては市場主義を支持しているので、政治や官僚はなるべく関与すべきでない。市場だけで問題解決できない部分で「社会的公正」を担保するのが政治家の役割です。

社会的公正には2つの要素がある。1つは多様性を認める社会。自分が尊重されたければ、他人の価値観も認めなくてはいけない。そういう意味で多様性を認めるべきです。

もう1つは、これまで日本の特徴だった中間層の厚みを大切にする。政治的安定のためには分厚い中間層の存在がとても大事です。日本はまだ、米国ほど所得 格差が拡大していないので、社会の二極分化を食い止められるはず。パートや派遣など雇用形態は多様化していますが、所得税制や社会保障で調整すれば、中間 層の維持は可能です。機会の平等も非常に大事です。特に公教育。所得で教育レベルに差が出るのは非常にまずい。

・・ご自身は、いわゆる「エスタブリッシュメント」ですよね。

岡田  いえ。私は田舎の生まれですし、公立校出身です。だから周囲を見ていて、機会が不平等だと感じますよ。特に、東京では格差拡大が深刻になっている。例えば 中高一貫教育の方が、いわゆる「いい大学」に入りやすい。それがいけない理由は、あまり早い段階でふるいにかけてしまうと、人的資源を最大限に使えないた めです。

私は、日本人にはまだまだ力があると感じています。十分に引き出されていないだけ。みんなが外に向かって力を発揮すれば、持続可能な社会を作れると思います。

先の総選挙で、民主党は「年金を税で賄う。だから消費税を上げる」と言いました。勇気が必要だったし、他党には攻撃材料にされたが、有権者の信頼は基本的には揺らがなかった。これが自信につながりました。

年金に関するアンケートでも「保険料が上がる」とか「年金受給額が下がる」ことより「安定した(持続可能な)制度でないのが一番問題だ」と考える人が多い。決して、自分の利益だけを考えてはいません。問題は、政治家が率直に語らないことです。

・・過去の政治家に比べると、小泉首相は率直なイメージですが。

岡田 彼は正直には語っていません。その時、その時をショーのように見せているだけです。年金改革、医療制度改革など、いろいろおっしゃるけれど中身を伴わず、先延ばしをしている。

例えば道路公団の民営化問題。私は予算委員会で「何のために民営化するんですか」と尋ねたら「無駄な道路を作らないため」と答えましたが、結局は(国の 整備計画「9342km」を)全部作るんですよ。民営化された道路公団が作らない部分は(「新直轄」方式で)税金を使って作る。実態は何も変わらない。高 度成長期やバブル期に作った高速道路の建設計画を実行しようとしている。民間企業がバブル期の事業計画をそのまま進めたら、とっくにつぶれている。小泉首 相は結局、道路族の圧力に屈したんです。

・・外交や国防問題についてのお考えを聞かせてください。

岡田 私は、集団的自衛権(=日米同盟)については慎重であるべきだと考えています。米国が戦争を始めた際、日本も参加することを含むからです。先の戦争への反省を踏まえれば、武力行使には慎重であるべきです。

一方、国連決議に基づいた、集団的安全保障への関与には賛成です。平和を作る活動に対して、日本はもっと積極的になるべきです。

ただ、そのためには、憲法改正が必要でしょう。現行憲法のまま自衛隊を多国籍軍に参加させるという小泉首相の決定には大きな問題がある。

国連が主導権を持ち、安定時に行われる集団的安全保障と、ブッシュ政権が主張する「先制攻撃」や「単独主義」は明らかに方向が違う。米軍の上に自衛隊が 乗っかっている現状では、米国と日本の国益が合致しなくても、日本は独自の判断ができない。米国とは対等の関係で、日本の国益を考えて行動できるようにす べきです。

・・女性政治家については、どう考えていますか。

岡田 民主党を政権党にするには、女性候補者を増やす必要がある。幹事長時代には、女性の新人候補を優遇する策を考えたこともあります。

全体的には良い方向に変化しています。一昔前は小選挙区で女性が勝つのは不可能と言われていましたが、先の選挙では小選挙区で勝ち抜く女性がいました。 地方選挙も含めて、女性の候補者への資金援助や、当選後の情報交換会などをしています。ビジネス界やNGO、国際機関などで活躍している女性たちに、日本 の政治に参入していただきたい。

・・仮に政権を取った場合、どのくらいの期間で日本を良くできますか。

岡田  財政を本格的に整えるのに10年かかります。でも現実には総理総裁の任期は2年。選挙と選挙の間は4年なので、このくらいの期間で何ができるか示す必要が あります。まず地方に財源と権限を移譲する。国は口を挟まず、良い市長や知事を選ぶことを通じて、地域の人々が自分たちで変えていくべきでしょう。

経済については日本企業にまだまだ力があると思う。独禁法改正や規制改革は必要ですが、民主党は既得権とのつながりがないので、変えるのは難しくありません。

多くの人は、自分の生まれたこの国をそれぞれの立場で良くしたいと思っているんじゃないでしょうか。だから最低限、投票には行ってほしいし、やる気のある方には自分で政治家になってほしいと思います。




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