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2005.04.06|国会会議録

国家基本政策委員会合同審査会(党首討論)

岡田克也君 民主党の岡田克也です。

きょうは、まずは年金制度改革について、総理に幾つか確認をしておきたいと思います。

まず、年金を初めとする社会保障制度の改革について、与野党で議論をする国会の場に衆参両院の合同会議が設けられることが決定をいたしました。私はそのことを非常に喜んでおります。

この年金の問題あるいは社会保障制度全体の議論は、総理ともこの国会でも何度か議論をさせていただきました。私の思いとしては、議論の大枠をきちんと決めて、その中で議論していこう、単なる先送りにならないように、しっかり結論を出すように議論していこう、そういう思いの中で今まで何度か議論をさせていただきました。

そして、今回、幾つかのことが枠組みとして決定をされました。一つは、国会の場で議論をするということです。つまり、政党間で、国民の見えないところで議論をするのではなくて、国民に開かれた国会の場で議論をする、非常に大事なことだと思います。

そして第二は、衆議院、参議院別々に議論をするのではなくて、一緒の場で議論をする。これは今までの国会の歴史の中でも非常にまれなることで、新しい国会の意欲的な取り組みだ、そういうふうに考えております。そういったこと。

そして、もう一つ申し上げると、議員間で議論をする。丸いテーブルで、お互いマイクを前に置いて、そして、官僚や閣僚相手に議論をするのではなくて、議員がそれぞれの見識に基づいて議論をしていく。そういうやり方が実現をしたことは、私は、大きな前進だ、そういうふうに考えております。

同時に、この場でも以前確認しようとしたことがありますが、社会保障制度全体の議論の中で、まずは年金、国民の最も関心が高く、そして生活に密接に関係している年金の問題について、ことしの秋までにその改革の骨格をつくり上げるということ、そのことが確認されました。両院のそれぞれの本会議でも確認されています。

私は、国民に対して、我々政治家がこの年金の問題を、秋までにその骨格について成案を得ると約束したことは大変大きなことだ、責任も重いというふうに考えています。しっかり結論を出していきたい、そういう思いでありますが、総理も恐らく同じ思いだというふうに考えております。まず、総理が、ことしの秋までに年金の改革についてその骨格を得る、その認識について、しっかりと国民に対して約束をしていただきたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今回、与野党が合意されまして、全政党参加のもとにこの年金を含む社会保障全体の協議会が、衆参両院議員参加のもとに開かれるということは、私も歓迎しております。

今岡田代表が言われた趣旨にのっとって成果を上げられるよう、各党建設的な議論をしていただきたいと、心から期待しております。

岡田克也君 今、総理は総理としてのお立場を言われたのかもしれませんが、小泉総理は同時に自民党総裁でもあります。したがって、当事者でもあるわけです。各党が協議することを期待するという言い方ではなくて、みずからがこの年金の改革の問題について、秋までに骨格、成案を得るということについて責任を負っている、そういう認識はないんですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) かねがね申し上げておるとおり、成果を上げられるよう各党が努力しなければいけないと。もちろん、今までの年金の問題にしても、医療の問題にいたしましても、各党、意見の違いがあるということは承知しております。

しかし、この年金にしても医療にしても、あるいは介護にしても、社会保障全体、各政党、それぞれの今までの意見はありますけれども、将来長く持続できるような制度にしていかなきゃならないということは、私は、意見の違いはあったとしても、共通していると思います。認識を共有していると思います。

そういう観点から、今までの各党の賛成、反対、そういうことだけにこだわっていれば、今までの委員会と同じになってしまうんです。各党が主張を闘わせて、それで意見の調整がつかないということでありますので、立場を超えて、率直に、まとめ上げる努力をしていきたい。そのために我々としてはこの協議会を立ち上げたという点というものを見失ってはいけないと思うのであります



もとより、今後どういう意見が出てくるか。協議の運営については、それぞれ見識のある専門家の方々が各党委員になっているわけですから、そういう趣旨を念頭に、お互いまとめていこうという努力が必要だ。自由民主党としても、当然そういう気持ちを持って参加しているわけでありますので、各党もそのような気持ちで協議を重ねて、いい結論を出していただきたいと思っております。

岡田克也君 総理も、今は郵政でいろいろお忙しいようですが、郵政については相当前面に出て、自民党の中でリーダーシップを発揮しておられる、それが成功しているかどうかはわかりませんが。そういったリーダーシップをぜひこの年金の問題でも発揮していただきたい。今、聞きようによっては他人事のようにも聞こえましたが、ぜひそこは自民党の総裁としてしっかりリーダーシップを発揮して、自民党の中の議論をリードしていただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。

そこで、もう一点だけ年金について確認しておきたいと思います。

この議論を始める前の前提としての本会議における決議の中で、それぞれの党が具体案を持って議論をするということも同時に確認をされております。私たちの具体案は、既に何度か申し上げたように、既にございます。

念のために今、主な骨格について申し上げますと、第一には、今の制度が分立している状態から、全国民を対象とする年金制度の一元化を実現する、これが第一点です。

第二点は、一階部分、我々でいうと最低保障年金、別の言い方をすると基礎年金という言い方もできるかもしれませんが、ここの部分については全額税方式にして、そして年金目的消費税を活用する。

第三点は、二階部分については所得比例年金にする。つまり、所得に応じて保険料を負担し、払った保険料に応じて年金がもらえる仕組みにする。

第四点は、保険料率については一五%を超えない範囲で制度設計する。

そして第五点ですが、所得の把握を公正に行うために納税者番号制を導入する。

こういう五つの骨格をもって制度設計をしようとしています。もちろん、議論はこれからですから、議論していく中で、それがそのまますべていくのか、あるいは一部変更するのかわかりませんが、いずれにしても、私たちとしての案を持って議論を挑んでおります。

自由民主党の案は一体どういうことなんでしょうか。具体案は出てくるんでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) まず、この協議会というのは、最初に結論ありきではございません。各党、今民主党が言われました案は、民主党案としてそれを出されるのは結構でありますし、その主張が会議を進行していく上で、それぞれかなり焦点となっていく課題だと認識しております。

自由民主党としては、年金一元化を含んだ社会保障全体でありますし、年金の問題について最初にやろうということについても異議はございません。将来、でき得れば年金の一元化が望ましいということも私は申し上げております。

しかし、最初の議論のスタートとして、自民党として今考えていることは、まず、一元化の前に、厚生年金と共済年金の一元化が先だろう、一挙に厚生、共済、国民年金を一元化でどうだということは、現時点では時期が早いかなと。まず、自民党として出す案としては、厚生年金、共済年金の一元化に向けて自民党としてこう考えているという案を出したいと思っております。これはどういう案を出すかというのは、今後、今までに長年この年金問題に携わってきた方がメンバーに自民党は入っていますから、その方々に今任せております。と同時に、民主党が主張している点についても耳を傾けていきたいと思っております。

それは、民主党は、国民年金も一緒に一元化しようということであります。そういう点に関しますと、これはかなり時間のかかることであり、納税者番号というものを導入しなければならない。そういう点がありますから、まず、民主党が国民年金を含めた一元化という場合に、納税者番号と税方式でやると言っていますから、その考えはやはり具体的に聞かせていただくというのもいいと思います。

そういう点から踏み込んで、果たして国民から理解が得られるような納税者番号というものはどういうものか、非常に具体的に輪郭が浮き上がってくると思います。そういう点から、私どもとしては民主党の考えも十分聞かせていただく。

そして、国民年金も同時に厚生、共済と一元化ということになりますと、税方式になりますと、この問題は必ず今後の議論の中で浮き上がってくると思いますが、生活保護と年金との関係はどうなるか、税で全部これを面倒見るということになりますと、どのぐらいの税負担が必要かという問題も出てきてまいります。そういうことも含めて率直に議論していくのがいいんじゃないかと。

国民年金と厚生年金、共済年金となりますと、負担の仕方も給付の額も随分違ってまいります。どっちに合わせるかによって負担と給付は大幅に違ってまいります。(発言する者あり)そういう点にありますから、私どもはまず、どうしたらいいかというやじが飛んでおりますが、厚生年金と共済年金の一元化がまず先だ、それははっきり申し上げます。それからである、国民年金も一緒にしていく議論というのは。その点は、今後、十分議論していただきたいと思っております。

岡田克也君 私は、民主党案についてのコメントを求めたのではなくて、自民党の案を述べていただきたいと申し上げたんですが、それはありませんでした。これからだという話もありますが、本会議におけるその決議の中で、それぞれが具体案を持って議論するということは約束されているんです。それじゃ、今、具体案はないじゃないですか。

具体的な中身については、これから合同会議で議論しますので、きょうはこの辺にとどめますが、やはり与党としての責任感を持って、しっかりとした具体案を持って議論をしていただきたい。我々の案にここが問題、あそこが問題と言うんじゃなくて、確かに、今、例えば国民年金一つとっても、四割の人が払っていないという制度が事実上壊れた状態、そういったことにきちんと対応できる改革案を持って議論していただきたいと思います。

もちろん、我々民主党は議論に逃げることはありません。この年金の問題はだれが議論しても難しい問題だと思います。少子高齢化の中で保険料の負担はふえていく、給付はふえないという状態、しかし、国民の皆さんは、そのことは十分わかった上で、安定した、将来確実にもらえる制度を政治の責任でしっかりつくってもらいたいと思っていると思うんです。

そういったことについて、お互い政治家としてしっかりとした議論をしていきたいと思いますし、その前提として、ぜひ早い段階で与党案を出していただきたい。案がなければ議論がきちんとできません、そのことを申し上げておきたいと思います。

そこで次に、災害被災者の生活支援の問題について議論をしたいと思っています。

総理も福岡に行っていただきました。いろいろ現場に入られて、そして被災者の皆さんの声も直接お聞きになったことだと思います。私も、同じように被災地を訪れて、そしていろいろな声を聞いてまいりました。

確かに、今、港湾とか道路とか漁港とか、そういった従来の公共事業が相当壊れていますから、そういったものに対して、国が責任を負うべき部分についてはしっかり予算をつけて対応していく、そのことは必要なことであり、私からも政府に対してお願いをしておきたいと思います。

しかし、同時に、被災者の生活を支援してもらいたい。被災者生活支援法を拡充してもらいたい、こういう要望が現地からも上がっています。玄界島、総理も行かれたと思いますが、ほとんど今のままでは生活ができない。建物がぐちゃぐちゃになっています。あそこに玄界島の皆さんがもう一回戻って漁業を中心とした生活を成り立たせるためには、相当なことが私は必要だと思います。

私は、この国会が始まるに当たって被災者生活再建支援法の改正案を衆議院に提出いたしました。このことはこの国会冒頭の代表質問でも申し上げたとおりです。

私たちは、それほど法外な、大きなことを言っているわけじゃありません。被災者の皆さんの住宅本体が壊れた、その住宅の再建のためにもこの被災者生活再建支援法が適用できるようにしてもらいたい。これは、実は私たちが言っているだけではありません、各地区の知事が、あるいは被災者の皆さん御自身がそういうふうに言っている。しかし、その審議は全く進んでいません。

代表質問に続いてもう一度お聞きしたいと思いますが、この被災者生活再建支援法を改正して住宅本体の再建まで適用できるようにする、そのことについて総理としての御見解を確認しておきたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私も、今回の玄界島における地震災害の現地を視察いたしまして、現地の方々、被災された方々が大変苦労されている状況を見てまいりまして、政府としても、地元の市、県と協力してできるだけの支援をしていかなきゃならないと、いろいろ対策を講じております。

その中で、今、被災者再建支援法の拡大ということでありますが、今までも、被災者の方々の御意見を聞きながら、台風災害、あるいは集中豪雨の災害、そして地震の災害、家の損壊におきましても、かなり被災者の立場に立って使い勝手のいい支援策を講じていかなきゃならないということで拡充してまいりました。

今まで百万円の範囲の支援が、そのような意見も踏まえまして、昨年四月から三百万円まで拡大されました。今、民主党がこれをさらに五百万円まで引き上げろという話も伺っております。

と同時に、この使い勝手が悪いという声も聞いております。どの程度、損壊した部分に対して、どの部分だったらこの支援法の基準に合って資金が出せるかという点につきましても、被災者の声を聞いてみますと、なるほどなという面も随分あります。

そういう点も含めて、今後、地震等、被災、災害の規模にもよると思いますが、よく十分皆様方の意見を聞いて、現在の範囲でできること、そしてさらに拡充が必要なところ、よく状況を見て、今後適切な支援策をしていかなきゃならないということでありまして、現在でも地元の意見を聞きながら、今後よく支援ができるような対策を講じていきたいと思っております。

岡田克也君 総理、多分十分認識しておられないと思うんですが、使い勝手が悪いという話ももちろんあります。そこの部分と、住宅本体の再建には使えない、これは法律上できないんですよ、そこの問題と、別の問題なんです。

住宅本体の再建について使えるようにすべきだというのが私たちの意見です。この福岡の今回の地震でも、全壊が約五百戸、そして半壊が約千戸です。新潟の地震では三千戸が全壊し一万戸が半壊です。住宅が壊れたときにそれに対してお金は出ないんです。ですから、私たちは、そこも見られるようにすべきだ、そのことを何回も申し上げているんですが、いろいろ検討する、検討しなければいけないとおっしゃいました。検討している間にどんどん時間はたって、もう一月からでも何カ月たちましたか。結局何も進んでいないじゃありませんか。

ですから、きちんと総理が、住宅本体についても適用するんだ、そのことについては方向性を、リーダーシップを発揮していただきたい、そう思って何回も私は申し上げているわけです。いかがでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは公共団体がやる支援と、それから個人財産に対して個人がやることと、それぞれ違いがあると思います。そういう点の意見も踏まえて協議していかなきゃならない問題だと思っております。

岡田克也君 その議論も私の代表質問に対する総理のお答えの中に既に入っていました。しかし、やはり住宅をしっかりと再建するということは、実際に被害に遭われた皆さんにとって根源的に大事なことなんです、生活再建にとって。だからこそ、ここは国がしっかり見るべきだ。もちろん、今の制度の中で三百万、あるいは我々の改正案でも五百万ですから、それで住宅全部建つかと言えばそうじゃないかもしれません。しかし、実際にやはり被害に遭っている皆さんに勇気を与えてもらいたいんですよ。それが政治の仕事じゃないですか。そのために、ここは制度を変えるというその決断をしてもらいたい、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) そういう御意見もあるということを十分承知しながら、地元の方々の実際の支援に役立つような支援を考えているわけであります。

岡田克也君 確かに、県は、それぞれ独自に住宅本体について支援する制度をつくっている県が十県ほどありますよ。つまり、県の方がある意味では国より先に行っているんです。しかし、やはり県だって厳しい財政の中で対応していかなきゃいけない。特に地震などは地域的に偏りがありますから、なかなか大変ですよ。だからこそ、国がそういうものをしっかりすべきじゃないか、こういうふうに考えているわけです。

総理はいつか、地震保険があるじゃないかというふうに言われましたが、地震保険について、総理、どのぐらいの人が地震保険に入っているか御存じですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 具体的な数は承知しておりません。極めて少数だと思います。これは、地震がいつ起こるかわからない、また地震保険料も高い、いろいろな理由があると思いますけれども、極めて少数だと思っております。

岡田克也君 総理は以前の答弁で地震保険もあると言われたんですが、私は、あれかこれかじゃなくて、あれもこれもの話だと思うんです。

ですから、被災者再建支援法も改正をする、そして地震保険についても、今共済も含めるとその加入者は約三〇%です。その加入者をもっと飛躍的にふやさなきゃいけないと思うんですね。今回の福岡の地震や新潟の地震は、今まで地震が多分起こらないだろう、起こる可能性が低いと思われるところに起こりましたから、これは全国どこでもあり得る話ですね。

そうすると、私は、この地震保険についても、基本的には民間の保険ですけれども、それについて短期間で多くの方に入っていただくように、PRももちろん必要ですが、同時に税制上の優遇措置とかそういうものを期限を切ってやって、そして入っていただく。地震保険も手当てされ、被災者再建支援法もある、そういう中で、私は、かなりのところはカバーされていくということだと思っております。そういうことについて、ぜひ検討していただきたいと思います。

そしてもう一点、これも総理、御存じなければ別にそのことを批判するつもりはないんですが、新潟の地震で寄附、つまり個人とか企業、団体、どのぐらい集まったか御存じですか。実はこれは八十五万件で三百五十億円なんです。私は、そのことを知ったときに、本当に日本というのはすばらしい国だというふうに思ったんですね。それはそれぞれ一人一人、そんなに楽な生活じゃありません。だけれども、そういう中で三百五十億円というお金が、新潟県やあるいは赤十字に対して供出をされています。それ以外にもちろん物で供出された分もありますから、金額はさらにそれを超えるわけですね。

私は、そういったことに対しても国がもっとしっかりこたえていくべきだと思うんですね。つまり、今被災地で、福岡でも新潟でも、NPOがいろいろ活動しています。そういったNPOに対する寄附、残念ながら、寄附控除が適用されるのは非常に限られています、今は。

我々、NPOについて幅広く寄附の控除を認めるべきだという考え方に立っていますが、少なくとも被災地において活動しているそういうNPOに対しては、寄附控除を幅広く認めていくべきじゃないか、そのことによって寄附をする国民の皆さんのその気持ちにこたえていくべきじゃないか、そう考えていますが、いかがでしょうか。賛成していただけませんでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 多くの方々が被災者の方々に支援をしようということで、そのような多額の額が寄附されて、被災者の支援に役立っている、心強いと思っております。

実際、現地に行きましても、一般ボランティアの方々が、あの暑い中、寒い中、泥まみれになって支援をしている姿を見て、大変感銘しております。そういうみずから汗を流して支援する方と、そして寄金、資金を出して協力する方、こういう一般の方々の支援というのは大変貴重なものだと私も考えております。

できるだけ、そういう善意の方々の寄附を募りやすいようにといいますか出しやすいように、対策は講じなきゃいけないと思っています。今かなり、私は、そういう善意の寄金をしやすいような税制にかつてに比べればなってきたと思います。

今後とも、そのような税制優遇という点につきましても、よく現状を踏まえながら、また外国の例も参考にしながら、やっていかなきゃならないと思っております。

岡田克也君 実は、今私が申し上げたこと、つまり、そういった被災地で頑張るNPOに対する寄附を寄附控除の対象にするというのは、民主党はもう既に法案としてこの国会に出しているんです。ぜひ、この法案についても、これは与党、野党ありませんから、しっかり真剣に受けとめて議論していただきたいというふうに思っています。

私は、この被災地の支援について三つのことをきょう申し上げました。被災者再建支援法の見直し、そして地震保険についての加入促進のための税制措置、そして被災地で頑張るNPOに対する寄附控除の拡大。

この三つをしっかりやれば、私は、国民の皆さんに、あるいは被災地で今苦しんでいる皆さんに、政治が何をしようとしているかという、そういう意思がしっかり伝わると思うんですよ。頑張っている皆さんに対する、お金はそう大したお金じゃありません、しかし気持ちがしっかり伝わる、そういうふうに思っております。

ぜひ、こういったことは与党、野党ないと思いますから、真剣に受けとめ、検討していただきたいということをお願いしておきたいと思います。

次に、BSEの問題、申し上げたいと思います。

私は、このBSEの問題は、特にBSEの中でも、これから問題になってくるアメリカ産の牛肉の輸入の問題ですが、これは日米間で大きなボタンのかけ違いがあると思います。つまり、アメリカはもう即座に輸入は解禁されるというふうに期待をしていた節があります。現に、この前日本に来られたライス国務長官も、解決は間近だと思っていましたというふうに言っておられます。しかし、現実はそうではありません。まだこの問題の検討はこれからです。

どうしてこれだけ日米間の認識のギャップができてしまったのか。これは、放置しておきますと、例えばアメリカ側の通商上の報復措置とか、いろんなことに波及していってしまいます。早くこの認識のギャップを解消しなきゃいけない。

私は、なぜ日米間でそういう認識のギャップが生じたかということについて、総理がブッシュ大統領とどういう議論をしてきたのかということをぜひお話しいただきたいと思うんですよ。

昨年六月のシーアイランド・サミットのときに、日米首脳会談、ブッシュ大統領と小泉総理がお会いになったときに、この問題がまず出されたというふうに聞いております。そのときには、アメリカ側はランチを設定して、わざわざアメリカのビフテキを出して、そして総理に対してこの問題を迫った、これはそういうふうに報道されているわけですね。しかし、具体的にどういう議論がされたかは全く報道されていませんから、私たちにはわかりません。そして、九月の日米首脳会談でもこの問題が議論になって、そのときには、日米の合意事項として、米国産牛肉の早期輸入再開の重要性で一致したということになっています。

私は、この間、ブッシュ大統領と小泉総理の間でどういう議論がなされてきたんだろうかと。日本には日本の手続があり、安全のためにしっかりとした手順を踏んでいかなきゃいけないんだ、科学的知見に基づいて判断していかなきゃいけないんだということがアメリカ側に本当に伝わっているのかどうか、疑問に思っています。日米間でどういった議論を今までしてこられたのか。ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは認識の違いといいますか、アメリカにしては、もっと早く日本が、アメリカの牛肉を買ってもらうような、貿易再開できるような決断がなされると思っていたということは、アメリカはそう思ったということを私は否定するものじゃありません。

しかし、日本には、食の安全、安心を確保するために日本の基準があります。それをきちんと説明したわけです。そして、これについて、アメリカの基準と日本の基準が違うということから、アメリカは、日本の決定というのは遅いんじゃないか、結論というのは遅いんじゃないかと。確かに、日本人がアメリカへ行けば、日本の基準に合わない牛肉でもどんどん食べています。日本人もアメリカへ来てアメリカの基準の肉を全然食べているじゃないかという意見があるのも承知しております。

そして、そういうことから、どこがどういう基準にしたら安全か。三十カ月以下の牛なら安全なのか、二十カ月以下の牛なら安全なのかということについて、私はその知識はありません、率直に言って。どこの部位を取れば安全なのか、危険なのかということも私はわかりません。だからこそ私は、この問題については、科学者が、有識者がそれぞれの今までの研究からわかっている側ですから、そういう専門の委員会が日本にはあるんだと。

政治的判断で一つの決断を下すべき問題じゃない。科学的知見に基づいて、日本には日本の基準があるんだから、そういう点につきましてはしっかりと手続を踏んで、できれば貿易は再開、早い方がいい、できるだけ早くするということについては、お互い望ましいということは認識を共有しているわけだから、しっかりやりましょうという話をしたわけであります。

岡田克也君 総理は、国内向けにはずっとそういう答弁を繰り返してきておられます。そして、私はその答弁が間違っているとは思いません。

しかし、現実にアメリカがもっと早く解禁されると思っていたというふうに認識をしている。認識ギャップがそこにある。認識ギャップがそこにあるとしたら、それは外交の失敗です。総理は本当に、首脳会談でブッシュ大統領に対して、あるいは政府の各レベルで、きちんとこの問題について説明をしてきたのか、納得を得てきたのか。納得を得ていないからこういうことになっているわけですよ。そこに大きな問題があると思います。

もう一つ申し上げますと、去年の十月に、これは事務レベル日米両国政府の牛肉貿易再開に関する共同記者発表というのがありました。その中で、二十カ月以内の牛肉についてアメリカが販売促進プログラムを設けるということで、日米間合意しています。しかし、二十カ月以内のものについて、今回食品安全委員会が、二十カ月以内のものは検査をしなくてもリスクは余りふえないという結論を出して、今パブリックコメント中です。このことについてもいろいろ議論はあるでしょうが、しかし、国内牛についてすら二十カ月という話が最近出てきたにもかかわらず、どうして米国産について、去年の十月の段階で輸入促進プログラムに合意するんですか。順序が逆じゃないですか。

まず国産のものについてどうするか、そして米国産についてどうするか、食品安全委員会が議論をした上でこういうことを進めるべきであって、去年の十月の段階でこういうものを出してしまっていますから、アメリカ側としては、すぐ輸入が自由化される、解禁されると考えても、決してその期待は私は間違いじゃなかったと思うんですよ。

そういう誤解を与えたことについて、私は、日本国政府にあるいは小泉総理に責任があるのではないかということを申し上げているわけです。いかがでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 何でも責任は私にあると思っておりますから、それはきちんとやります。

しかし、手続に従って日本はやっている。確かに、日本の全頭検査というのは世界から見れば異例であります。そういうことを考えれば、アメリカの検査と比べれば異例なんです、日本というのは。しかし、日本は食の安全、安心というものは重視しているからこれはきちんとやっているんだ。そこまでやる必要ないじゃないかというのはアメリカの意見であります。日本には日本の意見があります。決められた食品安全委員会を設けて、所要の手続を踏んでやっているわけですから、私は、これは科学的知見に基づいてやるべき問題だ。

政治的判断で何月までに再開できるということについて、私はそれはできないとはっきりアメリカに申し上げているわけでありますから、そういう日本の基準にのっとって、食の安全、安心を確保しながら、日米間のこの問題が特別な対立の種にならないように、日米関係の信頼を損なわないような形で解決をしていこうというのが外交上大切なことではないかと私は思っております。

岡田克也君 総理から、日米間の認識ギャップがある、誤解を招いている、与えているということについての説明は私はなかったと思うんですね。今総理がおっしゃったことを本当にアメリカに対してきちんと説得をして説明していれば、こういう認識ギャップは出てこなかったと思うんです。そこについて私は問題があるんじゃないかということを申し上げているわけです。

それでは、総理がおっしゃった中で、政治的にねじ曲げちゃいけない、科学的知見に基づいてやっていかなきゃいけない、それはそのとおりですよ。

そこで、具体的にお聞きしたいと思いますが、今、国産牛についての食品安全委員会のとりあえずの結論が出て、今パブリックコメント中です。これからそれを踏まえて政府としてどうするかということが決まると思います。そこについてもいろいろ議論はありますから、私、きょうは申し上げませんが、食品安全委員会もいろいろな提言をしていますから、単に二十カ月以内は検査しなくていいということだけで済まない問題だということだけは申し上げておきたいと思います。

そこで、問題はその次のステップ、つまり、米国産牛についてこれをどうするか。問題は、食品安全委員会に対して政府が諮問するわけですね。つまり、こういう問題を検討してくださいということを政府が、具体的には農水大臣、厚労大臣が諮問をする。その諮問に基づいて食品安全委員会は検討する。ですから、その諮問というのは決定的に大事なんですよ。国産牛と同じような諮問をされるんですか。

例えば、えさの問題ですね、飼料の問題。きちんと肉骨粉がまざらないようなそういう仕組みができているのかどうかとか、あるいは危険部位についてきちんと除去できるのかどうかとか、あるいはアメリカの牛はいつ生まれたかというのが、大きな牧場でなかなかわからないということですから、それにかわる月齢をきちんと判定する客観的な基準があるのかどうかとか、そういったことについて食品安全委員会に諮問をして判断をさせる、そのことをお約束いただけませんか。

もしそういったことを諮問しなければ、食品安全委員会は諮問された範囲でしか判断できませんから、それは政府が勝手に決めてしまうことになります。それでは科学的な知見に基づいた判断とは言えませんから、ぜひその点についてはお約束をいただきたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、今具体的なことと言われましたけれども、そういう点については私は詳しい知識を持っておりませんから、担当大臣がいます。日本の国民の食品、安全、安心を確保するために所要の手続をとるように、それをしっかりやっていくようにということで指示しておりますので、そのような日本の所要の手続をしっかりとって、国民の食の安全を確保しながらこの問題を解決していきたいと思っております。

岡田克也君 大臣に任せきりにせずに、きょうをきっかけに少し総理も関心を持って、国民の安全にかかわる問題ですから、しっかり勉強していただきたいというふうに思うんですね。

例えば、今二十カ月以下かあるいはそれを超えているかという判断が、米国産牛についてはいつ生まれたかがはっきりわからないものが多いということでできない。それにかわるものとしての肉の格付システムを使っていこうという方向だと聞いています。

しかし一方で、そういうものが、つまり肉の品質ですね、熟した肉か若い肉かという判断をするその基準と、安全にかかわる基準が同じであっていいのかという議論があります。本当に、二十カ月以内か二十カ月を超えるかという判断ができるのか。骨の状態、肉の状態を調べてわかるのか。例えば、私自身、今五十一歳です。私の骨や肉を調べて私が五十歳以上か以下か、多分そこまでわからないと思うんですね。

ですから、牛だって二十カ月以上か以下か、本当に科学的にきちんとわかるかどうかという疑問もあるわけですよ。それが本当にできるかどうか、これは科学的にやはりきちんと調べなきゃいけません。科学的に調べるためには、これは食品安全委員会に諮問しないとできないわけですね。農水省や厚労省が自分の手前勝手に判断するんじゃなくて、食品安全委員会でしっかり判断することが必要です。

あるいは、飼料の問題。この飼料に肉骨粉が混入しないかどうかということが根源的に重要な対策である、食品安全委員会はそう述べているわけですね。しかし、現実に、例えば、この三月にアメリカのGAO、つまり会計検査院が調べた調査によると、一九%の飼料製造業者については五年以上検査していないし、現時点で肉骨粉を使用しているかどうか把握できないと言っているわけですよ。そういう状況の中で、本当に米国産牛の安全が確保されるのか、これも科学的にきちんと調べないとできない問題です。

そういう問題について、しっかりと食品安全委員会で議論する。もちろん、だらだら議論していいはずはありません。しかし、しっかりとした科学的知見に基づく議論をするということについて、ここは総理がリーダーシップを発揮すべきだと思いますが、いかがですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは私も、二十カ月以下とか三十カ月以下なんというのは判断できませんし、どれが安全かというのも、私自身率直に言ってわかりません。

しかし、これは科学的知見に基づいて食の安全、安心を確保する、所要の手続をしっかり踏むようにという指示を出すのは私の責任であります。あと、今言った細かいこと、私は岡田さんほど知識ありません、率直に言って。それは専門家に任せる、政治的判断でやるべきものじゃないということを言っているわけです。これが私の政治的責任であります。

そこで、各担当大臣がいる、食品安全委員会もある、専門家もしっかりした検査をしている。そういう方々に、きちんと所要の手続を踏んで、国民の食の安全、安心を確保して、でき得れば早期に貿易再開ができればいいな、これが私の率直な考え方でございます。

岡田克也君 総理は細かいことと言われましたが、私は、細かいことだとは思いませんよ、これ。そして具体的に私、申し上げました。これをぜひ真剣に受けとめて、そして大臣に具体的に指示していただきたい。

つまり、きちんと諮問しろということですよ。このBSEの問題は、皆さんそうかもしれません、まあそんなに大した問題じゃないと考えておられる方もいるかもしれません。だけれども、これは極めて深刻な問題だし、特に、我々はもういいかもしれませんが、しかし、若い子供さんを持ったその親の立場からすれば、とても心配、深刻な問題ですから、そういう意味で、具体的に科学的知見をもって食品安全委員会で議論させる、そのことを求めておきたいと思います。

最後に、総理、例の旧橋本派の一億円の問題ですが、これは、もう何度聞いても、これは党の問題ではないということで総理はずっと答えてこられました。しかし、そうすると、これは個人の問題だとおっしゃるわけですか。しかし、今名前の挙がっている橋本さんや青木さん、これはそれぞれ自民党の重要な役職についていたり、あるいは派閥の幹部であったりするわけですね。それに対して、党の問題ではないということで、本当に知らぬ顔をして、第三者の顔をしていていいんでしょうか。

今回、橋本派は、十数億円の使途不明金ということで政治資金収支報告の報告をするという話も聞いておりますが、十数億の使途不明金があるということは、その十数億を受け取った人たちもいるということですよ。つまり、これは個人の問題じゃなくて組織の問題になっているわけですよ。

そのことについて、ぜひ総理として、しっかりと証人喚問をして、国会の場で国民に対して明らかにする、その責任を果たすべきだと考えますが、もしそういうことをしないということになれば、これは政治不信、全体の政治不信になりますから、ぜひ総理、この点について、もう一度決意を聞かせていただきたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 政治資金のことについて言えば、それは党の政治資金と個人の政治資金、それから政治団体の政治資金があると思います。

それぞれ、個人の資金にまつわる問題、これについての問題については、個人がしっかりと対処すべき問題である。また、政治団体もそうであります。党としては、今までの御指摘を踏まえまして、独自の調査をし、はっきりと新しい体制をとっております。

今、そしてまた、国会には政治資金規正法改正案が提案されております。そういう中で議論していただきたいし、我々としては、この政治資金の問題につきましては、資金の調達面も含めて、また使い方、さらには今後の資金のあり方については、国会にはその担当の委員会がありますから、しかも法案が提案されているわけでありますので、各党しっかりと議論をしていただきまして、政治活動というのは、国民の協力によってなされるものだ。民主主義というのは、私は、国民の協力と、資金の拠出におきましても、国民の協力がないと政治活動はできません。税金だけに頼っていては、これは健全な政治活動とは言えません。そういう面におきまして、私は、資金のあり方については、今後、担当委員会で十分議論をしていただきたいと思っております。

会長(丹羽雄哉君) これにて岡田君の発言は……

岡田克也君 総理、総理、今、それは政治団体の問題であり、個人の問題だと言われましたが、その使途不明金は選挙に使われたということになっているんですよ。つまり、そのことによって、裏金が選挙に使われて、政治がねじ曲がっているんですよ。そして、それは自由民主党の公認候補として当選してきているわけですよ。

ぜひ、総理……

会長(丹羽雄哉君) 岡田君に申し上げます。

持ち時間が終わっております。簡潔に願います。

岡田克也君 そこのところをしっかり踏まえて、証人喚問、実現をしていただきたい、そのことを重ねて申し上げておきたいと思います。

終わります。

会長(丹羽雄哉君) これにて岡田君の発言は終了いたしました。

以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。

次回は、衆議院、参議院、それぞれの公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。


午後三時四十七分散会




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