[政思万考]メダカからアユへ変身?
民主党は若い政党だ。51歳の岡田代表が言っているように、衆院議員では、「政治家になって15年の私以下の経験の議員が、全体の9割を占める」まるで 「メダカの学校」のよう、とからかわれる理由もそこにある。しかし、メダカの世界も、狭い水槽に閉じ込められると、〈いちばん強いのが底近くへ、次のが中 層へとなわばりをつくり、あぶれた連中は表層へかたまることがある〉(宮地伝三郎著『アユの話』岩波新書)。
岡田氏は、この底近くを遊泳しているようである。が、仮に水槽からこの強いメダカを外すと、その場所はすぐ次の強者に入れ替わるというから大変だ。
民主党代表になって1年余の間、そんな「岡田外し」の動きが止まらない。
「なあなあ、まあまあ、まるくまるくでは、荒波は越えられない」と、小沢一郎副代表の注文はつねに厳しい。
岡田氏は小沢氏について、昨年9月、テレビ番組で「政治の世界の父親」と語っている。同時に「羽田(孜・元首相)さんが母親」であって、この二人がケンカするので非常につらい時期があったとも言っている。
1993年、この親子3人は、そろって自民党を飛び出し、非自民・細川政権を樹立した。羽田内閣を経て野党に転落すると、父母は離別してしまい、のちに 父は自民党と連立さえした。その意味で右往左往してこなかった岡田氏こそ、非自民直系の「孝子(こうし)」である。
最近、岡田氏は、
「国会では、政権をとった時に、きちんとできるということを頭の中に描きながら議論をしている」と述べている。これは二大政党時代の野党の姿として正し い。それなら自信をもって進めばよいのに、衆院郵政民営化特別委員会でまたも審議拒否戦術をとった。
こんな笑い話がある。
2003年衆院選で当選したばかりの民主党の1年生議員が、ベテランに聞いた。
「『寝る』って、家で寝ていればいいのですか」
国会の隠語で「寝る」とは審議拒否のこと。これを知らなかった若手に安易な寝グセをつけてはいけない。不毛な審議拒否を繰り返すとは、「政権準備政党」の名が泣く。4月の衆院統一補選で、岡田民主党は2戦2敗した。
鳩山由紀夫・元代表が「このままでいくと政権がとれない」と批判した。こうした声は受け流したらよい。岡田氏は今こそ、総選挙準備に一層拍車をかけるべきである。
補選前に来日した豪州のハワード首相から、「私たちはセンターライト(中道右派)だ。自民党もそうだと思うが、民主党はどうなっているのか」と聞かれた岡田氏は、
「我々は真ん中だ。ヨーロッパの社民主義政党よりはアメリカの民主党のスタンスに近いのではないか」と応じた。元官僚という岡田氏の安定感と「中道」の 位置取りは、政権を争う上でプラスに作用するだろう。ただし、岡田民主党の政権とりの挑戦は、次の総選挙一回限りである。
民主党議員が国会審議の場に戻ってきた1日、各地でアユ釣りが解禁された。
メダカから渓流でピチピチ躍るアユへ――岡田氏は党のイメージ・チェンジを急がなくてはならない。そして自らに課すべきは、もう少しのユーモアと覇気である。