岡田克也さんの「スキッ!」
カエルの置物
よみがえる土地の記憶
国会議員の部屋といえば、外国要人との写真や揮毫(きごう)が誇らしげに飾ってありそうだが、びっしりとカエルの置物。机の上で律義に同じ方向を向いている。自分で買ったのが約30個、もらった分を合わせると約50個になる。
「カエルは面白いですよ。卵からオタマジャクシになり、脚が生え、まるで違う形のカエルになる変化が。子どもの頃田んぼに囲まれて育ったので、よく飼っていました」
外国を訪れたときに土産として買うことに決めている。最初は96年のパレスチナ選挙監視団で訪れたイスラエルのホテルで。銀製で、マッチョに筋肉が盛り上がったカエルだった。デザインが気に入った。
「パレスチナ初の選挙で『こういう日が来るとは思わなかった』と感極まって涙するお年寄りもいた。本当に忘れがたい」
98年に中国・西安で買ったヒスイのカエル。そこから車で5時間行った内陸部の、最貧地区の村に行ったことを思い出す。
「電気も水道もなく、人々はがけに掘った穴に暮らしていた。でも子どもたちが勉強熱心で、笑顔が明るいことに救われました」
つるつるした大理石のカエルは、今年1月に訪れたパキスタン。地震の被災地のいまだ厳しいテント暮らし……。カエルを眺めるうち、その土地の記憶と人々の顔が浮かぶ。
「買った場所と日付を記しておくだけですが、メモ以上に情報量が多いかもしれない」
カエルは各国で子孫繁栄や幸福の象徴とされる。「前へ前へ」と跳ぶことから、中国では積極性の象徴ともされるとか。
「柳に跳びつくカエル。何でも果敢にチャレンジすること。私の信条でもある」
さて、コレクションをよく見ると、亀のように見えなくもない、ビミョーな置物がいくつかある。「私は亀も大好きでね。以前飼っていました。『前へ前へ』も、亀がまさにそうでしょう」
(文・宇都宮健太朗、写真・飯塚悟)
おかだ・かつや 民主党の前代表。1953年三重県四日市市生まれ。東大法学部卒業後、76年に通産省(当時)入省。90年、自民党から衆院議員に初当 選。新進党を経て98年に民主党に参加。04年に党代表に就任し、参院選で躍進するが、05年の衆院選で敗北。趣味はDVD鑑賞で地方遊説にも持参する。 好きな言葉は「大器晩成」。