イラン訪問〜ボルジェルディ国会安全保障外交委員長との会談要旨
(1)イラク情勢
ボルジェルディ委員長 イラクについては、治安の早期の安定を期待しており、そのためにイランはできるだけの協力を行ってきたし、これからも行う。イラクの現在の不安定の理由は明白である。アフガニスタンをソ連が侵攻した際、米国はビン・ラーデンを育て、アフガニスタンがソ連から解放された時点では、アルカイダは既に力を有するようになっていた。現在アルカイダは、イラクにもテロ活動のため多くの分子を送り込んでいる。アルカイダに加えたイラク不安定の理由は旧バアス党の勢力である。つまり、イラクの治安を不安定にしている要因は、アルカイダとバアス党残党勢力の2つである。米国が治安問題解決に努力し、イラク国民に権力を返すなら、新政権が力を得て国内不安は解消できる。
岡田元代表 自分は米国によるイラク戦争には反対したとだけ申し上げたい。国際社会の合意がない中で、一方的な武力行使は認められない。
(2)アフガニスタン情勢
ボルジェルディ委員長 アフガニスタン復興においてイランは尽力しており、東京復興支援会議でも5億6千万ドルの支援をプレッジした。現在も、種々のプロジェクトがある。イランはアフガニスタンと長い国境線を有し、共通の文化、言語を有しており、協力を実施していく基盤が整っている。日本との協力も歓迎する。
岡田元代表 アフガニスタン、イラクの復興支援に関しては、イランが中東の大国として、また隣国として今後も重要な役割を果たして頂きたい。
(3)パレスチナ情勢
ボルジェルディ委員長 民主的選挙によりハマスが勝利したが、西側は良い対応をしておらず、支援も停止されている。しかし、ハマスは国民の支持により勝利したことを西側が理解することを希望する。これは昨日もドイツの外交委員長に述べた。イスラエルに対する種々の国連決議、特に重要な安保理決議242及び338は完全に無視されており、米国は逆にイスラエルを支持している。イランが主張する明確な解決方法は、種々の国々に散らばっているパレスチナ難民を帰還させた上で国民投票を行い、その結果を支持するというものである。パレスチナ難民の帰還は安保理決議にも含まれている。
岡田元代表 自分としては、国民から選ばれたハマス政権ではあるが、イスラエルの存在を認め、対話する道を探って欲しいと希望している。昨年ヨルダンのパレスチナ難民キャンプを訪問する機会があり、多くの子供達が生活しているのを見た。彼等にとり平和の時代が早く来ることを希望している。
(4)イランの核問題
ボルジェルディ委員長 イランは革命前は西側と23,000MWの電力を原発で賄うことで合意していた。しかし革命後、石油生産が半分になったにも拘わらず西側は、イランは石油が豊富なのだから原発は持つ必要がないと主張する。これはイランの核について西側が政治的見地でみていることを示すものである。西側は、イランが平和的な核開発能力を持つことを妨害しようとしている。イランの全ての核活動はNPTの枠組みに沿っている。西側からイランの核開発に対する疑問が提起されて後、イランは2年半自発的に活動を停止した。その結果2005年11月のエルバラダイ報告は、「イランはNPTの枠組みから逸脱していない」と記載している。西側の、イランは核開発を停止せよとの圧力は政治的なものであり、平和的なイランの核開発を妨害しようとするものである。これをイランが受け入れることはない。イランは5%までの濃縮能力は既に獲得している。もちろんこれらの活動は全てIAEAの査察下で行われている。核兵器開発につながりかねないとの懸念があるのであれば、査察が最良の方法である。日本もIAEA査察を受け入れているが、イランも日本と同様の査察を受け入れる用意がある。またアフマディネジャード大統領も国連総会で、各国がイランの核活動に参加してコンソーシアムを作るという提案を行っている。
岡田元代表 日本とイランの関係に関しては経済関係も深く、中東の安定にとってもイランの役割は重要である。私は日本政府の外交政策については、あまりにも米国に追随することが多いと批判することが多いが、イランに対する日本政府の政策は評価している。そういう目で現状を見た場合、イランの核問題を大変懸念している。最初の私の考えを2点申し上げたい。第一は、仮に米国が、国連決議がない中で武力行使をするのであれば反対である。第二に、イランが核の平和利用に留まらず、軍事利用するのであれば反対である。イラン政府は軍事利用につき否定しているが、国際社会は疑念を有している。イランにはその疑念をはらす努力が求められている。IAEA保障措置協定に18年間違反してきたとの事実は重い。米国のみでなく、欧州も重大な懸念を有している。その懸念を払拭するには思い切ったイランの行動が必要である。そのためには一旦濃縮活動を止めることが議論の前提であると思う。もしイランが核の軍事利用を考えていないとしたら、本来難しい問題ではない。お互い意地になることにより、悲劇的結果を招くことは是非避けて頂きたい。日本としてもイランと国際社会の誤解が解けるように、よい役割を果たせるのではと思う。
ボルジェルディ委員長 説明に感謝する。1点触れたい。国際社会のイランに対する懸念は、米国が存在しない問題をあたかも存在していると強調していることで拡がっている。これはいわゆる18年間の未申告の活動に関するものである。イランの核活動は全て明白であり、全てのサイトをIAEA査察団に開放し、3年前から2000人・日の査察を受けている。イランが18年間未申告で活動していたとの主張は言いがかりである。いつか石油も枯渇する。将来世代のエネルギーを外国に依存することをイランは欲しない。ウラン燃料を国際的に確保するといってもそれは最終的に実現させる担保がない。IAEAの場では委員会を作り7年に亘り、国際的燃料供給につき議論したが、何らの成果も挙げられなかった。イランは自らの将来のために、自ら燃料生産する必要がある。仮に西側に懸念があるなら、査察すれば良い。仮にイランの濃縮能力保有を阻止しようとしても、イランはそれを既に実現しているのである。日本もイランの政策を支持して欲しい
岡田元代表 イランが将来的に原子力の平和的利用を行うという方向性は当然と思う。但し、問題は本当に平和的利用にとどまるかについて国際社会は疑念を有しており、その疑念をはらわねばならない。濃縮活動を停止し、ロシアから燃料を購入するとの選択も当然あると思う。イラク戦争前に米国は色々な主張を行ったが、国際社会の意見は分裂していた。しかし、イランの問題については、米国のみではなく欧州、日本も疑念を持っていることは共通である。例えば期限を切って、その間濃縮活動停止という選択もあると思う。我々は米国の主張を全て真に受けている訳ではないし、ここ数年間のイランに対する米国の言動に対して、私は個人的には大きな疑問を有している。その私でも、濃縮を継続すると言われると疑念がぬぐえない。
ボルジェルディ委員長 懸念を払拭するために、査察を行うことができるし、ジョイント・ヴェンチャーもできる。イランは2年半活動を停止してきた。信頼醸成のためにはお互いが努力せねばならない。現在、イランは西側を信頼できない。米国はイランが能力を保有することを阻止しようとしている。そのための口実を探している。西側はイランの主張を受け入れない故に、我々も西側を信頼できない。現在もNPTの枠内で査察は継続されている。近い将来に安保理においてイランに対する決議が採択されれば、このような協力の道も閉ざされる可能性がある。イランへの圧力により、イランがNPT脱退というようなことにならないよう努力すべき。イランは査察を受け入れるし、他方西側もイランがNPTの枠内で平和的核開発を行うことを認めるべきである。
岡田元代表 個別に査察を行うとしても限界がある。国際的な枠組みで疑念をもたれないようにすることが重要である。これから安保理での議論となるが、物事が進み出すとこれを止めることは簡単ではない。後追いではなく、国際的議論の一歩先を行く提案を期待したい。日本としてもイランを重視しており、友人としてイランが国際的に孤立していく姿は見たくない。色々な提案は、まず濃縮を止めることがあって、それから議論すれば良い。止めない限り、国際社会は安保理の議論を進めざるを得ない。そこを認識して頂きたい。
ボルジェルディ委員長 イランは2年半停止してきた。これ以上停止する理由はない。停止という要求は、西側が他の目的のために行っているものである。
岡田元代表 2年半停止してきたのだから、期限は別問題としてもう一度停止するという決断を頂きたい。イラク問題を巡る米国との対話に触れられたが、核問題についても米国と直接対話を行って頂きたい。日本としてもそのために役割を果たすことは十分できる。このままの道を進むことは、イランにとっても、日本にとっても、また世界全体にとっても不幸なことと思う。
ボルジェルディ委員長 もちろん解決のための交渉は重要である。イランも交渉を望んでおり、政府、国会など種々のレベルで行っている。イランは協議を重要と認識しており、継続していく。日本側も積極的役割を果たして頂きたい。
ボルジェルディ委員長 イランは現状の活動を継続する。その上で直ちに交渉を開始し、追加議定書を実質的に履行する。追加議定書批准法案を国会に提出して、批准プロセスを進める。その代わり西側はイランに協力して、イランの原発建設で協力することを求める。