[点検・小沢民主党](6)"次へ"脱皮期す岡田氏(連載)
「みなさん、どうぞ。飲みながらやりましょう」
民主党が小沢体制に衣替えして2か月近くたった5月23日。細川政権以降の”失敗”を検証する勉強会の初会合で、呼び掛け人の元党代表・岡田克也はにこ やかに語りかけた。岡田とつきあいの長い議員は、テーブル上に用意された箱弁当とビールを見て、驚いた。
「岡田さんの勉強会でビールが出るなんて、今までなかったことだ」
昨年の衆院選で大敗し、代表の座を降りた岡田は、今を「充電期間」と位置づける。ただ、活動は極めて精力的だ。
党内にグループを作らず、「一匹オオカミ」と言われてきたが、3月に「党NGO海外活動推進議員連盟」、5月には細川政権以降の”失敗”検証の勉強会を 相次いで発足させた。今月22日には、「党核軍縮促進議連」の設立総会を開く予定だ。「岡田さんは各議員と個人的なつながりを意識的に作ろうとしている」 と見る議員もいる。
この夏は1週間の日程で、党衆院議員の三日月大造、森本哲生らを引き連れ、ケニアを訪れた。貧困とエイズの蔓延(まんえん)に苦しむアフリカの現状視察が目的だった。岡田は8月3日、1泊500円ほどの安宿の食堂で、三日月らにこう心情を吐露した。
「今は、フリーな立場でいろいろ勉強できる。それを謳歌(おうか)してるよ」
三日月は「代表時代の岡田さんには堅苦しい印象を持っていたが、今は肩の力が抜け、非常に魅力的だ」とケニア訪問を振り返る。
こうした岡田の姿は、「9月の代表選の出馬準備ではないか」との憶測を呼んだ。同時期の自民党総裁選への埋没を避けるため、代表選を行うべきだと考える議員には、「岡田さんが出馬すれば、代表選に迫力が出る」との声も広がった。
しかし、岡田自身は「今の党は小沢代表でまとまっている。代表選には出ない」と、きっぱり否定する。「出たい人は代表選に出ればいいが、無理に選挙をやる必要はない。小沢さんの再選は、だいたい見えているから」とも語る。
ただ、小沢体制の下でも、「言うべきことは言う」という岡田特有の頑固さは健在だ。党の意思決定機関の常任幹事会でも、岡田は以前同様に積極的に発言し ている。幹部の1人が「小沢代表で結束する中、会議で発言するのは岡田さんぐらいだ。彼は原理主義者だからな」と揶揄(やゆ)するほどだ。そんな声を知っ てか知らずか、岡田は「前原(誠司・前代表)時代とはうってかわって静かになった。みんなもっと発言すればいいのに」と、党内の議論が減ったことに不満を 漏らす。
こうした岡田のスタンスを、小沢との確執をからめて見る向きもある。
岡田は、2大政党制の実現を目指し、93年に小沢と共に自民党を飛び出し、新進党の結党でも行動を共にした。だが、党首だった小沢が唐突に解党を決めた97年の新進党両院議員総会で、小沢に激しくかみついた。
「納得できない。新進党と(投票用紙に)書いた有権者への裏切りだ」
当時を知る議員は「岡田さんには、民主党が新進党の二の舞いになることへの警戒感がある。だから、言うべきことはきちんと言おうとしている」と解説する。
岡田は今、小沢と個人的に会うことはない。現在の小沢執行部については、「今はうまくいっている、とだけは言える。新進党の時のような、ごたごたした感じはない」と語るが、それ以上の論評は避ける。
小沢は来年の参院選で与党を過半数割れに追い込むことを最大の目標に掲げ、党内も結束を維持している。だが、参院選で敗退すれば、小沢の責任論が浮上することは間違いない。岡田の視線は、その先を見据えているのかもしれない。(敬称略、終わり)
この連載は河島光平、吉山一輝、赤津良太、東武雄、加藤理一郎が担当しました。
写真=今月3日に訪れたケニアのリンギッティ島で、子供たちと交流する岡田克也・元代表