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2007.01.11|マスコミ

トヨタ国富論 第8部 インタビュー編 4

「自民肩入れ」説明を

「育てる経営」に期待

 民主党の岡田克也副代表は党代表として臨んだ二〇〇五年の衆院選挙で与党に三百を超える議席を奪われ、敗北した。自民党圧勝の陰に、トヨタ自動車グループの積極的な支援があったといわれる。政治とかかわる際、企業には説明責任があると指摘する。

一昨年の衆院選でトヨタの役員が鉢巻き締めて自民党を応援したのには首をかしげました。候補者を判断して推したのなら良いですが、自民党だからとの理由で旗を振ったのなら残念です。

特定の政党を支援するなら、説明責任を果たさねばならない。自由主義を守る、というなら民主党も同じです。具体的な政策について自民党のどこが良くて、民主党が悪かったのか。連合や全トヨタ労働組合連合会は、政策的に合致しているから民主党を応援しているのです。

企業の政治献金についても、政権交代可能な二大政党制を日本に根付かせるには公平な分配が不可欠と訴える。

企業献金はだめだ、とは思いません。企業もいろんな社会貢献活動をしているわけで、政党に対する支援はその一環といえる。ただ、自民党だけに肩入れすることは理解ができない。

(経営者が個人資格で加入する)経済同友会で話をすると、民主党の政策と同友会の政策に共通点が少なくありません。しかし、個人では民主党の政策がいいという経営者も、なぜ会社単位になると自民党になるのか。よく分かりません。

下請け企業も含めた雇用や人材育成でトヨタは言行不一致ではないか、と疑問を呈する。

トヨタは人材の層が厚い。中部国際空港もトヨタ出身の平野幸久社長らががんばったから、効率的に建設できたと思います。ただ、トヨタでも、期間従業員など正社員ではない従業員が増えている。働く現場が岐路に直面していると思う。

かつてトヨタの張富士夫会長があるインタビューで「選ぶ経営」と「育てる経営」といった趣旨のことを語っていました。米国は今あるものをチョイスする。し かし日本の経営は働く人も育てるし、取引先も育てる。そこが日本の特徴だと。ところが現実はそれとは逆の方向になりつつあるのではないですか。

トヨタ本体でなく、下請けを含めればまさしくそうなっています。トヨタの一挙手一投足を企業社会は見ています。トヨタに期待しているだけに「育てる経営」を見せてもらいたいですね。

今後迎える少子高齢化社会。外国人の受け入れは国を発展させていく上で必要だが、雇用や居住など官民挙げたルールの整備が重要と説く。一方で自動車や航空宇宙分野に続く十年先、二十年先の未来像が見えにくい。

地元(三重県)を含めて働く現場を見ると、外国人労働者が非常に増えている。三重県四日市市ではクラスの過半数が外国人という小学校もある。この状況に政治や行政の対応が遅れている。

日系人は定住思考が強くなっている。義務教育を受けていない子どもたちもたくさんいる。一定レベル以上の外国人の受け入れは必要ですが、単純労働の分野で受け入れていくのであれば、基本的に期限を切ってきちんと帰っていただく仕組みにすべきです。

中部は自動車だけでなく工作機械も航空宇宙も半導体産業も集積しています。中でもトヨタは大きな存在ですが、拠点の分散を意識的にやっている。九州に拠点 の集積を進めているし、アイシン精機が北海道に行ったり、岩手県にグループ会社(関東自動車工業)の工場があったり。この傾向を考えると、中部はバラエ ティーに富んだものづくりの拠点になることが望ましい。

おかだ・かつや 通産省(現経済産業省)を経て1990年に衆院議員初当選。自民党から新生党などを経て民主党に。民主党では政調会長や幹事長などを歴任 し、04年に代表就任。05年の衆院選後に代表を辞任し、現在は副代表を務める。父の卓也氏はイオン名誉会長、兄の元也氏は同社社長。三重県出身、53 歳。




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