166-衆-予算委員会-11号 平成19年02月19日
岡田委員 民主党の岡田克也です。
まず、官房長官にお聞きしたいと思います。
安倍内閣、もちろん毎週、閣議を原則二回開かれていると思いますが、この閣議で、安倍内閣総理大臣が入室されたときに、そのまま、それまで各大臣、当然 お話しになっている方はいらっしゃると思いますが、総理大臣が入ってきてもそういった私語、雑談を続けている大臣というのは多いんですか、この内閣は。
塩崎国務大臣 閣議室内での模様については、申し上げるべきことではないと思っております。
岡田委員 まあ、普通なら明確に否定されると思うんですが、否定されなかったということは、そういうことが常態化しているというふうに想像するわけですが、もう一つ聞きます。
中川幹事長、昨日もこういうふうにおっしゃったそうです。「自分が目立つことを最優先する政治家や、」ここはちょっと首をかしげますが、「野党の追及が 怖くて改革を進められない政治家は、内閣・首相官邸から去るべきだ。」そういう政治家がいるんですか。今の閣僚の中にはいるんですか。官邸にはいるんです か。
塩崎国務大臣 いないと思います。
岡田委員 中川幹事長が、公といいますか公開の場でそういうことをおっしゃっているわけですね。そうすると、中川幹事長の言っていることは間違っているということですか。
塩崎国務大臣 中川幹事長に聞いてください。
岡田委員 もしこれが、今官房長官が言われたように、事実じゃないということだとすると、あなたは中川幹事長に厳しくそのことを問い詰めなきゃいけませんよ。
私がこの発言を聞いて思うのは、恐らくこれに近いことはあるんだろうと想像しながら、この日本の最高意思決定機関である閣議の場というのが一体どういう状況になっているのか、私は一国民としてもとても不安ですよ。一体どういう状況なんでしょうか。
塩崎国務大臣 閣議が始まる前に、その控室があって、それはテレビに映っております。総理が入ってくるときに我々がどうしているのか。全員起立をして、ちゃんとごあいさ つをしております。閣議の部屋の中で行われていることはつまびらかにするべきことではありませんが、規律正しくやっております。
岡田委員 まあ、規律正しくやっているのなら、中川幹事長がこういうお話をするというのは間違ったということになるわけで、そこはぜひ二人できちっと、どちらが正しいかについてまた聞きますから、確認をしておいていただきたいと思います。
こういった、非常に今の内閣に対して、もちろん、いろいろな緊急事態が発生したときに、やはり最終的には閣議の場で物事を決めていかなきゃいけませんか ら、そこがもし、規律もなく、言われているようなことであるとすると、それは私、とても心配になる、国民の一人としても心配になる、そういう視点で今申し 上げたわけであります。
そこで、先般発表された成長力底上げ戦略、これについて簡単に少し聞いておきたいと思いますが、この中身に行く前に、そこに書かれたこういう文言、私は 非常に気になったんです。「単に「結果平等」を目指すような格差是正策とは異なり、」というふうに書いてあります。もちろん、努力を全くしない人とした人 で結果が同じになるようにすべきだなどと言う人は私はいないと思うんですね。やはり、努力というものがきちっと反映された、そういう結果でなければいけな いと思います。
しかし、いろいろな努力をしても報われない人がいる、そしてその結果として格差がつくこともある、そういう場合には、今の内閣、「「結果平等」を目指す ような格差是正策とは異なり、」と言っているということは、これは格差を是正しなくていいということですか。
塩崎国務大臣 ちょうどいいチャンスなので少し御説明申し上げたいと思いますけれども、この成長力底上げ戦略は、成長戦略の一環として、経済成長を下支えする基盤、人材 能力、就職機会、中小企業の向上を図って、働く人全体の所得や生活水準を上げて格差の固定化を防いでいこうじゃないかというのが大きな考え方であります。
今御指摘の結果平等云々の話でありますけれども、我々は、言ってみれば格差是正というものを目標にする対症療法的なことを考えているわけではない、今 の、人材能力、就労機会、中小企業戦略、この三つの矢でいこうじゃないか、こう言っているわけであって、意欲のある人とか企業がみずからの能力向上に努め られるように、言ってみればチャンスの平等といいましょうか、今まさに大事なことを岡田委員もおっしゃったと思いますけれども、やはりチャンスを最大限に 拡大して、人材の労働市場への参加とか生産性の向上を図っていくことで成長を全体として底上げて、そして、いわゆる格差問題と呼ばれている問題の固定化と いうものを避けていこうじゃないか、こういうことを申し上げているわけであります。
ですから、言ってみれば、結果平等で何しろ格差を是正すればいいんだということだけではないだろうということを我々は申し上げているわけで、まずはチャ ンスを平等に与えなければいけないというのは、まさに今岡田先生おっしゃったとおりで、我々はまさにその考えに基づきながら、そのための支援をやって、働 けない人が働けるように、そして、生活保護や福祉の中に言ってみれば閉じこもってしまった人に、足腰をみずからが強くできるようなチャンスを我々が支援し ながらやっていこうじゃないか、そういうことで、いわゆる格差と呼ばれている問題、あるいは、けさ川内先生から大分出た、いわゆるワーキングプアの問題な どから脱却をしていくように底上げを図っていこう、こういうことだと思うんですね。
岡田委員 結果平等から機会平等へというのが一つの大きな流れだと私も思います。しかし、だからといって、結果平等というものを全く考えなくて、機会さえ平等であれ ばいい、まあその機会ということの意味もいろいろあると思いますが、実質的な機会を確保されたらそれでよしということでは私はないと思うんですね。
つまり、政治の大きな課題の中に所得の再分配というものがある。そこについての安倍内閣の基本的考え方というものが、ずっと安倍さんの話を聞いていても見えてこないものですから、官房長官、もしお答えできるならお答えしていただきたいと思います。
塩崎国務大臣 今、岡田先生、所得再分配のお話をされました。所得再分配は、言ってみれば、全員が同じ所得を得ている場合には所得再分配というのはあり得ないわけであり ます。したがって、所得の多い人、少ない人があって、その中でどうやってみんなで支え合っていくかというのがまさに所得再分配。これは、税もあるし社会保 障もあるわけであります。
我々は、格差を是正することだけを目標にするのでは決してなくて、それぞれの人々にチャンスを与え、そして、みずから働くことによって、働けない人が働 き、そして働けない人が、今の言ってみれば生活保護という福祉の世界の中でもちゃんとやっていけるようにしていかなきゃいけないということは、もちろん我 々、福祉の問題としてやっていかなきゃいけませんが、福祉にいなくてもいい人たちにも上がってもらわなきゃいけないということで言っているわけでありま す。
ですから、この我々の戦略は、まさに成長をする中でパイを大きくしていく、その中でこの所得再分配も起きていくわけで、格差を是正する元手はどこにある のかというと、やはりそれは全体のパイがでかくなったり成長していくことによって初めてこの格差是正のための元手というのが出てくるんだろうと思うので、 それを我々はしっかりと支えていこうじゃないか、下支えしていこうじゃないかと。そして、その基本は、やはり一人一人の働く人たちの能力でありますから、 その能力向上をどうやって図っていくかということで、ジョブカードを中心に、人々がキャリアアップできるようなチャンスをみんなで支えていこう、そして、 一方で、就労がなかなかできない人には、先ほど来繰り返し申し上げているように、働く機会をできる限りつくっていく支援をやっていこうということだと思い ます。
岡田委員 この中身は、例えばジョブカードにしたって、どのぐらいの規模でやろうとしておられるのかというと、全く書いていないんですね。ですから、この報告書を見たってイメージがわかないんですよ、一体何を考えているのか。
官房長官、これは非常に急がれたと思うんですが、たしか二週間でしたか、どうしてこんなに急いで結論を出されたんですか。
塩崎国務大臣 正式に諮問会議で総理から骨太の方針を待たずしてこの底上げの問題については早くやれと言われてから二週間、三週間の話でありました。しかしながら、我々 は、もう政権発足当時から、もちろん、先ほど川内先生のときにお話ししたNHKの「ワーキングプア」の番組も見て問題意識はさらに先鋭化もしておりました し、準備はずっとしておったことでありまして、二週間で全部つくったということでは決してない。ただ、前倒して早くやれということであったので、この二週 間集中的にやったというだけで、突然二週間前に始めて二週間後に出てきたというような話では決してないということでございます。
岡田委員 もし今官房長官のおっしゃるように、政権発足後ずっと真剣な議論をしてきたということであれば、どうして実施が、来年度ではなくて再来年度、平成二十年度 からなんですか。今から一年以上空白になるんですよ。その間は準備期間だ、本格的な実施は平成二十年度からだと。もし本当に、官房長官がさっきおっしゃっ たように、これは重要な問題である、政権発足以来非常にプライオリティーを高く置いて検討してきたと、そうであれば、どうして来年度予算にそのことが盛り 込まれていないんですか、一年間あけるんですか、そのことをお聞きしたい。
塩崎国務大臣 もともと諮問会議などで、生産性の向上というのはもう重点プログラムとしてやっております。加速プログラムというのを今やって、これから中身が出てくると 思います。高市大臣がやっていただいているイノベーション25、これも、製造業のみならず、非製造業にどういう生産性向上のイノベーションがあり得るかと いう観点を含めてやっているわけであります。
それから、最低賃金の問題はもう柳澤大臣から何度も繰り返しお答えをしているように、そういうようなものがすべて入っているわけでありますが、例えば ジョブカードのようなものは年明けになって具体化を、名前をつけたりすることはやってまいりましたが、あらゆることは考えてきているわけでありますけれど も、今御指摘のとおり、中には予算化がまだできていないようなものが、二十年度からというのはあります。
しかし、今回のジョブカードにしても、基本的には、国家資格でもないし、国が全部やるわけではない。やはり民が中心となって、それも政労使、行政も、そ れから労働組合の皆さんも、それから企業の人たちも、これは一緒になってやらにゃいかぬ。こういうことで、なるべく、国のお金をつぎ込んでやるようなもの ではなくて、民間の知恵の中で、キャリアアップをみずからの力でやれるような仕組みをつくっていこうじゃないか、こういうことで予算化されていないものも あるわけでありますが、もちろん事務費的なものが要ったりとか、そういうものはこれからもあろうと思いますので、おっしゃるとおり、それはこれからまた考 えていかなきゃいけないことでありますけれども、いろいろな問題については、ずっと考えてきたことでございます。
岡田委員 いろいろ言われましたけれども、この報告書自身にどう書いてあるか、もう一回最後に読んでおきます。「平成十九年度中は、基本的には本格実施の準備及び各 施策を有効に組み合わせた先行的取組みを展開する期間とし、本格実施は平成二十年度からとする。」明確に書いてあるんですよ。だから、十九年度は準備期間 だ。本当に、官房長官おっしゃるように、重要なもので前から検討してきた、そういうことであれば、こういうことにはならないと私は思います。そのことをま ず申し上げておきたいと思います。
中身はこれからもう少し煮詰まったところで議論させていただきたいと思いますが、三本の矢ということでありますけれども、それぞれに具体性が非常にない、そういうふうに私の印象を申し上げておきたいと思います。
さて、もう一つの格差社会の問題として、外国人労働者の問題について少し申し上げたいと思います。先般、同僚の中川議員が取り上げておられましたが、中川さんと私は選挙区が隣同士で、同じような現実を見て、問題意識を持っているわけであります。
そこで、まずお聞きしたいと思いますけれども、日系外国人が日本に入ってきて労働者として働いているという中で、この前も私少し申し上げましたが、子供 たちが学校に行く、そのことは非常に結構なことなんですけれども、しかし、学校に行かない子供もたくさんいるという現実がございます。
文部大臣、これをちょっとまずお聞きしたいと思いますが、義務教育の就学年齢の子供たちの中で、もちろん義務じゃないということではあるんですけれど も、どのぐらいの子供たちが小学校、中学校に行っていないという現実にあると思っておられるんでしょうか。
伊吹国務大臣 まず、外国人の入出国を管理しているのは、御承知のとおり、法務省です。法務省の統計によりますと、平成十七年度末で、我が国の外国人の登録者は約二百万 人でございます。このうち、今先生が御指摘になりました、日本でいえば義務教育の年齢に当たる五歳から十四歳までの児童は十二万三千人おります。同時に、 私たちが学校を調査しております。その調査で、義務教育の諸学校に在籍する外国人生徒は六万四千でございます。そうすると、先ほどの十二万三千と六万四千 の差の約六万、これが未就学の児童生徒かというと、そうではないんですね。
それは、外国人学校へ行っている子供もおります。それから、何より私たちにとって悩ましいのは、法務省に外国人登録をしておられる二百万人という外国人 だけではないんですね、日本におられるのは。ビザ切れの後で不法に日本におられる方もたくさんおられます。その方にもある程度責任があると思いますが、そ の方の子供さんにまで責任があるかというと、これはやはり非常に問題があると思いますから、この十二万三千と六万四千の差の六万以上に未就学の児童生徒は いると考えないといけないと思うんですね。
そこで、これは法務省の仕事でもあるかもわかりませんが、我が文部科学省としては、外国人が非常に多い地域、例えば先生のお地元の四日市ですね、こうい うところの十四地域について、未就学の学生がどれぐらいいるかということを予算をかけて調査しております。まだ完全に、すべての数字が地方自治体から出て きておりませんけれども、例えば富士市という市がありますが、ここは、外国人の義務教育就学年齢に当たるけれども行っていない人が一・一いるとか、あるい は太田市というところでは一・七いるとか、こういう数字が出てきております。
この子供たちをどう扱うかについては、引き続き御質問があればお答えいたしたいと思いますが、とりあえず、実態はどうなっているかという御質問でございますので、以上のようなことでございます。
岡田委員 日系外国人の場合に、それこそ派遣社員であったりというようなケースが非常に多いわけですから、なかなか一カ所にいない。例えばきょう、私の地元、三重県 四日市市にいたと思えば、もう来月から浜松に行っているとか太田に行っているとか、そういうことも十分にあり得るわけで、そういう意味では、把握がどこま でできているかという問題は、幾ら調査してもあると思うんですね。
私は、子供たちには全く罪のない話で、本当にきちんと教育を受けさせてあげたいと思うわけですけれども、同時に、日本の国あるいは日本国民という視点で 見たときに、違法に今日本にとどまっている人たちはもうお帰りいただかなくちゃいけないということでありますが、日系人として日本で働いておられて、そし て今非常に定住化志向が高まっています。以前であれば、何年か働いてブラジルとかボリビアとかいろいろな国にお帰りになっていたのが、日本でずっと暮らし たいと。そういう事態が一方であるときに、義務教育すら終えていない若者たちがどんどんそういう形で日本にとどまって、そして、義務教育も受けていないと いうことであれば、なかなか就職もままならない。そういう中で、これは、本人にとってもお気の毒なんですけれども、日本社会にとっても大きな問題を今生み つつあるんじゃないか、私はこういうふうに思うわけであります。
したがって、ここは、どの役所かと、この前も厚労大臣は自分の役所だけではないと研修に関して言われましたが、やはりもっと大きな取り組みで、例えばそ ういった子供をきちんと就学させていない日系人についてはもうお帰りいただくとか、そういうことも含めて、つまり、条件をつけるということも含めてきちん とした対応をしなければいけないのではないか、こう思いますが、だれに聞けばいいかわからないので、これは官房長官にお聞きしましょうか。官房長官、いか がでしょう。
伊吹国務大臣 岡田委員の今の御質問は、私は非常にバランスのとれた御質問だと思います。
この問題の根本は、これはその人の、国家、日本の国をどう考えているかという政治理念、価値観によって大きく違ってくると思いますが、外国人労働者とい うものを経済の観点から日本の国内へ受け入れるべきなのか、それともどうするかというこの根本論をやはりきちっと議論するのが大前提だと私は思います。
教育の観点からいうと、日本の国というものを大前提にする限りは、憲法と教育については教育基本法というもので日本の教育の統治システムができている。 そうすると、「日本国民は、」と書いてあるわけですね。しかし、先生が先ほどおっしゃった、それをよくわかった上でとおっしゃっているのは、まさにそのと おりなんです。一方で、国際人権規約の条約がございますね。それから、私たちは、教育基本法を議論する際に、民主党の出していただいた案についても、やは り国会でかなり幅広く議論されております。ここは、日本国内におられるあらゆる人はという書き方になっておりますね。
ですから、いいところはお互いに取り入れてやっていけばいいわけですから、この二つのことを考えると、入れてしまった限りは、不法な方は、これは政府の見解というんじゃなくて、政治家として私は、やはり帰っていただくのが筋だと思います。
しかし、合法的に日本に入っておられる方については、経済的な観点が一つ、それからもう一つは、語学的な面で日本の義務教育へ行けないという観点があり ます。ですから、経済的な分野は、就学のための助成というのは我が省でできますが、それ以上のことは少し難しい問題が残っております。
しかし、事語学が十分できないために日本の学校へ行けないという方々については、今まさにおっしゃった日系人、ブラジルの方々ですね、ポルトガル語を中 心に就学ガイドブックその他をつくって、できるだけ日本語とポルトガル語の間の相互理解ができるように、各教育委員会に通知を出して、予算措置を講じてお ります。
見ておりますと、多くはやはり、語学がというよりも、なかなか、先生がおっしゃったように、いろいろなところへ移っていく、それから経済的な基盤が整っ ていないということもあって、言葉だけをこちらが助成したから学校へ行けるという状態でもないようなんです。ですから、少なくとも合法的に日本に入ってこ られた方については、私の役所だけではできませんけれども、全力を挙げてやはり日本としてそれに措置をするのが私は筋だと思って文教行政を預かっておりま す。
岡田委員 今大臣がおっしゃったことに加えて、私が申し上げたのは、合法的に今の制度のもとで入ってきたとしても、将来いろいろな問題を生みそうな場合にはやはり一 定の制約をかけるべきではないか。そもそも、今の入管制度の中で合法であっても、実際にはそういう労働力として入ってきて、そこはいわゆる想定外のことが 日系人については起きているわけですから、それを正面からやはりきちんととらえて制度を組み立てるべきではないか、そういう問題意識で申し上げておりま す。
もう一つの、外国人労働力という意味で、研修・技能実習制度についても、これは厚労大臣だと思いますが、いろいろ政府の中でも議論されていることはそれ なりに承知をしておりますが、入り口のところで、技能研修制度、それがきちんと機能していない。だから、それを直さなきゃいけないという発想で物事を組み 立てていくのか。現実に、この技能研修制度の圧倒的な部分は単純労働である。だから、本当に技能研修という形で日本に入ってきている人、もちろん、いない とは言いませんけれども、それは限られた範囲で、ほとんどが単純労働。
例えば、最近ですと、もちろん中小零細企業で働いている方が多いわけですけれども、第一次産業、農業や漁業の現場でも随分働いておられますよね。例えば アジの干物をつくったり、カキの貝をより分けたりとかですね。そういったものは果たしてこの制度が前提にしているような高度な技能が必要なのかというと、 現実は単純労働として、なかなか日本人もそうやりたがらない仕事ということもあると思いますが、行われている。
そういったことについて、これからどう考えていくのか。やはり単純労働というものも、この前も同僚の中川さんも言われましたが、一定の範囲で認めていく べきじゃないか、認めた上で制度をしっかりとつくるべきじゃないか。今の研修制度ですと、一年目は最賃法の適用もない。そういう中でいろいろな収奪も行わ れている。そういうことを考えると、本当に技能の伝承のために必要な部分は部分として、それは一つの制度としてあってもいいと思いますが、単純労働につい ても一定のたがをはめた上で認めていく、ただし、それは一定の期間いていただいてお帰りいただくという前提、そういうふうにきちんと整理すべきじゃないか というふうに私は思うわけです。
これは各省庁ではなかなか結論が出ない問題で、やはり私は、内閣官房が中心になって真剣に議論していただく必要がある、こういうふうに思いますが、まず厚労大臣、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 技能実習制度につきましては、私は、両面あったと思います。日本が空洞化というふうな言われ方もしたんですが、海外に工場進出するときに、そこで雇用する 労働者をあらかじめ日本に呼んで本社工場か何かでがっちり技能実習をさせる、そういう意味の、本当にコネクションもしっかりした枠組みでのそういう技能実 習制度もあったと思うんです。しかし、また他面、今岡田委員が指摘するような形で、むしろ、技能実習というよりも単純労働というようなものを頭に置きなが ら、そういった制度に乗せていったというようなことも実例としてはあるのではないか、このように思います。
これを一体どうするか。もう技能実習などという枠組みを取っ払って単純労働という形に思い切ってして、そういうこととして規制をしていったらどうか、こ ういう御提案かと思いますけれども、私ども、今技能実習制度というものを所管している役所の立場からすると、やはり、研修は研修でこの充実を図り、また実 務の方は実務の方でしっかりと雇用管理をしていくというような方向でのいわば制度の改善、こういうことを志向していく、こういう方向にございまして、現 在、その考え方に沿ってどういう改善が図り得るかということについて、専門家の人たちによる検討をお願いしているという状況です。
単純労働ということについては、これは入管法の本来の考え方、大きな枠組みがあるわけですけれども、それとの調整というようなことも当然必要になってく るでありましょう。そういう観点から、私がここで何か明確に物を言うということは、やはり差し控えたいと思います。
塩崎国務大臣 特にいただいていた質問ではないわけでありますが、極めて重要な問題だと思います。
先生、今、外国人労働者、単純労働でも入れるべきではないか、そういうふうに思っていらっしゃるというふうにおっしゃったと思うんですね。今後どうするべきかということを政府として考えるべきではないか、こういうお尋ねだったかと思います。
いろいろ考慮すべき問題があると思います。先生がなぜ単純労働者を外国から入れるべきだとお考えになっているのか……(発言する者あり)入れるべきだと いうお話で、これからの話、現状の問題点はまた別にして、それで、入れる理由というものが何なのかということだと思うんです。もし、労働力がこれから減っ ていくから、単純労働者も減っていくから外から引っ張ってこいということであるならば、まだ我々は、さらにその手前に考えなければいけないことがあるので はないか。
まず第一に、日本国内で本当に、ニートというのは働いていらっしゃらないわけでありますから、こういう人たちがいる、この存在をどうして労働力化しない のかというようなこともあります。つまり、日本人の人的資源をフル活用しないままに単純労働者を外国から入れるということをどう考えるのか。
もう一つは、先生の御出身の官庁であります経産省が所管をしている産業構造の問題として、単純労働者を入れるということが日本の産業構造の変化にとって どういう意味を持つのか、これも考えなきゃいけないと思うんですね。つまり、絶えず高度化をしなければいけないということであれば、賃金が安いことをもっ て外国人労働者を入れればいいということであれば、競争力のない産業だけでも賃金を安くすればまだ競争力があるという産業をそのまま生かし続けることがい いか悪いか、そういう問題も考えなければいけない。
もう一つは、この社会、日本社会のあり方の問題として、ドイツやフランスなどでのいろいろな経験があって、我々はそれをどう受けとめていくべきなのか、そういった問題をやはり考えていかなければいけないんじゃないかなというふうに思っています。
したがって、どっちという問題ではなくて、先生が御提起されている問題、極めて重要な問題でありますが、さまざまの問題をやはりクリアしていかなければいけないし、またダイナミックに考えていかなければいけない問題だと思っております。
官房で検討すべきということでありますが、問題意識は持って考えていきたいと思っております。
岡田委員 官房長官、恐縮ですけれども、私、評論家に聞いたんじゃなくて、官房長官に聞いたんです。もちろん、あなたがおっしゃったようなことは十分わかった上で質 問しているわけです。単純労働を入れれば、恐らく日本の、最賃法の話が今出ていますけれども、やはり賃金引き下げ圧力にもなっている、そういう面もあると 思います。
しかし、一番考えなきゃいけないのは、もう既に単純労働として数十万の人が入っているという現実ですよ。これからのことを言っているんじゃないんです。 今そういう現実にあって、それが、建前は研修とかそういうことですから、そのそご、建前と実際の違いの中でいろいろな問題が発生してきている、そのことを 何とかしなければいけないんじゃないか。
もちろん、単純労働をどんどん認めろと言っているんじゃありません。しかし、今の現実がなしで済むかというと、私は必ずしもそうは思えないものですか ら、そういう意味で、一定のたがをはめた上でそういったものも認めていく、そういうことしかないんじゃないか、そのことについて、少なくとも総合的にきち んと内閣として検討すべきだということを申し上げているわけです。
塩崎国務大臣 私は別に評論家として言ったわけではなくて、内閣官房長官として申し上げたわけでありますが、それは当然先生も、単純労働者を入れるべきだということであるならば、今私が申し上げたような問題について、すべてを答えていただかなければいけないと思うんですね。
では、あえて今の政府の立場を申し上げれば、どちらかといえば、やはり専門的、技術的分野については海外から入れましょうと。しかし、これは実際はふえていないんですね。むしろ減っている、職種によっては。では、それをどう考えるのか。
つまり、どういう経済社会を日本はつくっていくのかというときに、今は、外国から入ってきてもらう人たちには、やはり専門的な人たちに入ってきてもらっ て、そして日本の産業を高度化していかないといけない、競争力を強くしていかないといけないという意味でこうやっているわけです。したがって、単純労働者 を入れることによって産業の競争力を引き上げていくという逆の方向をやるということが、それがいいことかどうかということを考えなければいけない。
今とろうとしているのは、やはり産業競争力は強くしていかなきゃいけないということで、日本の経済を、社会を強くしていこうということをやっているわけであって、そこにこの外国人労働者の扱いというのは政策として出ているわけであります。
それをどうするかというのは、さっき言ったような問題が全部クリアできたらやるという意味ですよというのは、それはなかなか難しいですよねということを 丁寧にちょっと言ったつもりであって、もう少しはっきり言ってしまえば、今の問題がクリアされていない限りは、やはり、今まだできていないアッパーエンド の労働力を外国から入れるということをもっとやってから考えるべきことじゃないのか。そのことによって日本の経済というのは強くなるわけですから、それも できていないうちに、単純労働者だけ、数が減ってくるから入れようぜという話では済まないんじゃないかということを言っているわけであります。
岡田委員 私の言っていることに全く答えていないわけですけれども、官房長官、ちょっと現実をよく見た方がいいと思う。もっと現場をしっかり見ていただきたい。
現実に、研修・技能実習制度という名の中でそれだけの単純労働が大量に入っている。これはこれからもどんどんふえていきますよ、放置しておけば。だか ら、単純労働を認めないというなら、現実に単純労働がどんどんふえている、そして研修・技能制度、先ほども言いましたけれども、一年目は研修だ、最賃法の 適用もない、いろいろな人権侵害も報告されている、そういう現状があるということをしっかり踏まえて、そしてそれをどうすべきなのか。
もちろん、単純労働全部なしにこの国が回っていくならいいですよ。しかし、現実はそうじゃないでしょう。特に一次産業や零細企業でそういった外国人の力 をもし取り除いてしまったら、やっていけないというところはかなりあると思います。それをどこまで認めるかというのは、もちろん政治の判断ですよ。
ですから、そういうことを、もっと正面から、逃げずに、現実を見て、そして内閣として対応を考えていただきたい、そのことを申し上げているわけでございます。
塩崎国務大臣 全然逃げているわけではなくて、この研修・技能実習については、さっき柳澤大臣からお答えを申し上げたように、今いろいろな検討をしているわけですね。 さっき御指摘のように、一年目は最賃も適用されないということで、結果として、あのNHKの「ワーキングプア」で出てきているようなものも、賃金が下がっ ている、あるいは下請代金が下がっているというのは、そういうところから起因しているというような指摘もあるわけであります。
それで、何もやっていないわけでは全くなくて、きょうは中野先生がおいでですけれども、私が前、副大臣をやっていました副大臣会議でも、この問題につい ては正面から、それこそがんがんの議論で、どっちかという方向は明確に出ないものもありましたけれども、先生が御指摘になっているようなことはすべて考え ていることであり、今も考えていることであるわけで、現実を見ていないわけではなくて、むしろ現実を見ているからこそ我々はずっと真剣な議論をやっている わけで、場合によっては、私たちがやった、中野先生が中心になってまとめていただいたペーパーもお届けしてもいいです。どれだけ我々が真剣に考えている か、あるいは現実を踏まえているかというのがおわかりいただけると思います。
むしろ、外国人労働者を入れること、単純労働者を入れることによって、では、どういう産業構造、競争力の産業をつくろうとしているのかというのを明示し ていただいた方がいろいろな議論にプラスだと思うので、ぜひ、先生、入れるべきだということを明言されるならば、どういう社会、経済にしていくのかという のもセットでお出しをいただくと、お互い勉強になっていいんじゃないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
岡田委員 官房長官、あなた、本当に不誠実な人ですね。
つまり、さっきから私が言っているのは、もう単純労働で入っているという現実をしっかり見据えて対策を考えるべきだと言っているんです。あなたは、単純労働は入っていないんだと言う。
そして、あなたが議論してきたその紙も私は全部見ていますよ。単純労働、外国労働者に依存しないという前提を立てて議論しているじゃないですか。結論は そうじゃないですか。だから、そこが、もう少し真剣に、いや、それは、心ある政治家は、どちらの言っていることが説得力があるか、みんな現場を見てわかっ ていると思いますよ。
ぜひ内閣として、しっかりと正面からとらえてもらいたい。このまま放置しておいたのでは、いろいろな問題が現に起きているし、さっきの学校の問題もそう ですよ、いろいろな人権侵害もそうですよ。もちろん、ちゃんと研修制度の中でやっている人たちもいる。だけれども、そうじゃない部分もあるから私は申し上 げているわけであります。
これでもう終わります。この話は不愉快だ。これ以上あなたとしても仕方がない。
塩崎国務大臣 現実を踏まえていないというわけでも全くないし、単純労働者が事実上入っているという御指摘の点についても、私もよくわかっています。だからこそ、副大臣会議でも、それから今回の底上げでも真剣な議論をしてきたところです。
私の愛媛県は、今治地区にはタオルがあります。ここの、例えば染色とかそういう三Kのところは、ほとんどこの技能実習の人たちがやっているんですね。で は、これをどう考えるのかということも考えなきゃいかぬ。造船もそうです。造船も、結構中国からたくさん入ってこられています、この技能実習で。それか ら、木材の加工をやっているところなんかもそうですよ。私たちは、それはもうよくわかって、現実にそれを見ていて、地域の経済の強さ、弱さというものを見 ながら、今先生が御指摘になっているような問題については、本当に真剣に考えなきゃいけないと思って、現実に考えていることであります。
ですから、入っていないなどということを言っているわけでは全くないわけでありますが、なかなかしかし、そう一筋縄でいく話ではないからこそ、今一生懸 命検討を続けているところでございますので、そこのところは、御理解をいただいて、答えが出てくるのを待っていただいて、それでまた議論をさせていただけ ればありがたいと思うし、また議論も、その間、一緒にやらせていただきたいと思います。
岡田委員 今、官房長官は、単純労働という現実はある、外国人が単純労働に携わっている現実はあるというふうにお認めになったわけです。
そうであれば、この技能研修制度で、その手直しでそれができるのかというのが次の問いなんですね。それは、技能研修制度の趣旨というのは、単純労働じゃ ないという前提で組み立てられていますから、それではその手直しではできないだろうというふうに私は思って、今まで議論をさせていただいたわけでございま す。
続きは、また改めてやりたいと思いますが、とにかく、非常に重要な問題であるという認識を持って、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。
次に、経済と財政の問題について少し申し上げたいと思います。
この前も少し議論をしたわけですが、大田大臣に、小泉内閣のときの「改革と展望」、そこで示されたシナリオと、今回の「進路と戦略」の移行シナリオ、これは基本的な性格が変わったんじゃないかと私は思うんですが、いかがですか。
大田国務大臣 数字的なものは前回申し上げました。
今回の「進路と戦略」は、安倍内閣になってから初めて示す中期的な展望になります。安倍内閣は成長力強化ということを最大の課題にしております。した がって、その成長力強化のための政策をとり、その効果が十分に発揮された場合の経済の姿を示すというところに主眼を置いております。
岡田委員 もうちょっと端的に言いますと、「改革と展望」の中ではこういう表現ですよね、政策努力を前提にした、標準時に考えられるケース。ところが、「進路と戦 略」の中では、移行シナリオについての説明ですけれども、政策実行の場合に、視野に入ることが期待されるもの。つまり、標準的なケース、一定の努力は必要 だけれども標準的なケースだというふうに示した「改革と展望」と、それから、政策実行の場合に視野に入ることが期待されるシナリオ、これは移行シナリオで すね。基本的に位置づけが変わっているんじゃないですか。
大田国務大臣 御指摘のとおりです。
「改革と展望」の参考試算におきましては、過去のトレンドと足元の実績に基づいて改革の効果を平均的に見積もっております。「進路と戦略」につきまして は、成長力強化のための政策をとり、その効果が十分に発現された場合ということで試算をお示ししております。
もちろん、この政策の効果がどれくらい出るかというのは、民間を通して発揮されますので、不確実性がございます。したがって、発揮が不十分な場合、あるいは外部経済に悪い要因があった場合の成長制約シナリオもあわせて示しております。
岡田委員 そこで財務大臣にお聞きしたいんですが、財政再建の際のもとになる数字ですね。
「改革と展望」、つまり昨年のときには、いわば改革努力を前提にしながら、標準的なケースということで、二〇一一年、三・二%、名目成長率、それで数字 をはじかれた。今度は、それが三・九になった。しかし、それは、単に数字がふえただけじゃなくて、位置づけも変わった。かなり楽観的といいますか、期待値 が入った数字に変わったわけですよ。
そうであれば、財政の計算をするときの前提として三・九というものを用いるのは、これはやはり違うんじゃないかというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
尾身国務大臣 このたびの「進路と戦略」につきましては、高い数字と低い数字と二つありまして、私どもは、非常に政策効果が十分に出た場合、あるいは世界経済が順調に いった場合というのを高い数字と考えておりまして、いろいろな要因で政策効果が十分に出なかった場合、世界経済の動向等が思うようにいかなかった場合とい うことで、二種類ございます。
私どもは、そのいずれをとるということではなしに、そのいずれの前提においても財政健全化ができるようなことを考えながら政策運営をしていきたい、こういうふうな考えでございます。
岡田委員 これは、昨年随分経済財政諮問会議でも激論が闘わされたところだと思うんですけれども、昨年の骨太の方針二〇〇六では「財政健全化の取組は、」「名目成長 率三%程度の「堅実な経済前提」に立つ。」と。いろいろな議論が行われた結果、やはり財政再建の前提になる数字というのはかたく見なきゃいけないんだ、そ ういう思想があったと思うんです。
今回、全体の見通しは三・九とぐっと上がったわけですが、しかし、ここの考え方は、やはり私は生きているべきじゃないか。将来目指す数字を、高目を目指 すというのは、それはそれで一つの考え方かもしれませんが、やはり財政再建ということを考えるときには、そういう楽観的な数字ではなくて、かなり地に足の ついた、そういう堅実な数字で財政再建の数字をはじくべきじゃないか、こう思いますが、いかがですか。
尾身国務大臣 全体として二つのパスを考えておりまして、そのいずれの場合にも財政再建が実現できるようにしていきたいというふうに私どもは考えております。
これが、具体的に、結果としてどのような数字になるかということはまたちょっと別でございますが、政策としては、高い成長を目指すような政策をとりながら、その現実の結果がどうなるかということを見きわめていきたい、こういうふうに考えております。
岡田委員 大田大臣もお認めになったように、「改革と展望」の三・二と、それから今回の「進路と戦略」の三・九は数字の性格が違うということですから、そういう異な る、性格が変わったにもかかわらず、財政とかあるいは年金とか、いろいろなものの前提にこの三・九を置いて計算をしていくとすれば、それはかなりミスリー ディングであるということを私は思うわけですけれども、大田大臣、いかがでしょうか。
大田国務大臣 各省の試算が成長率についてどのような想定を置くかというのは、それぞれの考え方があると思います。
まず、今ちょっとお挙げになった年金の財政、これは超長期の経済前提によるものです。今回出されました暫定試算も、二〇一一年度までの経済前提は「進路 と戦略」によっておりますが、二〇一二年度から二一〇〇年度までの超長期の経済前提は、最近の経済動向を踏まえて厚労省が設定したものです。実際、その 「進路と戦略」の下の方のシナリオ、成長制約シナリオに基づいて想定がなされた場合も、年金の所得代替率は大きく変わらないということが示されておりま す。
したがって、一方的に楽観的な試算を出している、そういうことは全くございません。そういう政策をこれから講じていくということです。
岡田委員 前回、私は、上げ底路線だというふうに申し上げたんですけれども、目標としてそういうのを据えることを私は否定するものではありませんが、その目標値がい つの間にか実現可能な数字という前提でいろいろな計画ができていくということになると、それは違いますということを申し上げておきたいと思います。
次に、ノロウイルスの風評被害について一言。
この点は自民党の小野寺議員からも先般質問が出たところですが、私は、やはり相当気の毒なことになっているなと思うんですね。今、カキの養殖に携わる人 たち、生産額が半分以下に、あるいはそれ以下に落ち込んで、単価も下がって、年が越えられない。つまり、春になるともうそれは廃棄しなきゃいけないという ところも多いわけですね。
こういう事態にどうしてなったんだろうか。私は、役所の側に問題はなかったのかというと、やはりかなり責任があるんじゃないかと思いますが、厚労大臣、いかがですか。
柳澤国務大臣 ノロウイルスについては、やはり、ウイルスで現実に発症をしてしまうというようなことを、私どもは一番、役所の役割柄、最も強い関心を払っているところであります。
そういう意味で、少し流行の兆しが見えた段階で、十二月の十八日でしたけれども、総理からも特別な指示をいただいて、よく推移を見て対策をとるようにと いうことで、私ども、その予防のためのPRということを一生懸命やらせていただいたわけでございます。
そういうことが最も強い関心事でございますが、同時に、無用な風評被害等を生むということは、これはもう私ども断然避けなければならないことでございま すので、私ども、今度のノロウイルス食中毒の発生状況などにつきましても、速報値を取りまとめながら、その時点におきまして原因食品がカキと特定された事 例の報告はなかったというようなことを公表して、そういう無用な風評被害というようなものが生じないように、また特段の配慮をいたしたつもりでございま す。
岡田委員 私が問題だと思うのは、今のお話だと、十二月十八日の段階でカキを原因とするノロウイルスの発生はなかった。そして、ここ数年を見ても、かつてはノロウイ ルスの発生の中で魚介類を明らかに原因とするものが二割近く、二〇〇一年は二二%、二〇〇二年は一八%。しかし、二〇〇四年、二〇〇五年にはそれが四から 六%程度にまで、半減以下、非常に減っているわけですね。そういうことの説明もきちんと国民に対してなされていない。ただ従来からの延長線上でやってこら れた。ましてや、十二月の十八日までの段階では、その年はなかったにもかかわらず、カキとノロウイルスというのが非常に結びつけられて報道された。
そういうことについて、厚労省の発表の仕方、そこにやはり問題があったんだというふうに私は思いますが、いかがですか。
柳澤国務大臣 そういうようなことは、当然、私ども避けなければならないわけでありまして、その観点から、都道府県等に対しまして、食中毒原因の公表の際に、正確な原因 の公表によって風評被害の防止に努めるよう、そういうことに格段の留意をするように通知をするとともに、厚生労働省においては今シーズンの食中毒原因等の 速報値の公表、また関係団体の要請を踏まえたQアンドA、これはもう非常に、厚労省としてのこの問題についての基本的な文書でございますので、これについ てもこの要請を踏まえた改定を行った、こういうようなことをいたしておるわけでございます。
したがいまして、今後とも、専門家、関係者の意見を踏まえて、より的確な情報提供に努めて、特定の食品に対する風評被害が起きないように、これはもう格段の注意を払っていきたい、このように考えます。
岡田委員 私も、ノロウイルスというのは非常に影響の大きい、しかも、昨年の暮れから非常に大規模にその被害が拡大する可能性があったわけですから、そのことについて厚労省がきちんと正面から取り組む、そのことは重要なことだ、そういう前提でお話ししております。
しかし、それにしても、ここ数年かなり減ったこととか、去年の段階で、まだその時点では出ていなかったこととか、そういうことがきちんと厚労省から伝え られないまま、従来の延長線上で報道された。そして、現に今大変な状況になっている。こういうことですから、単に想定問答を少し変えたとか、あるいは一般 論として風評被害にならないようにと通達をしたということではなくて、やはり、カキを初め二枚貝の生産者の皆さんが今現に被害を受けているということに対 して、もっとポジティブな、これは本来厚労省じゃないと言われるかもしれないけれども、しかし、現にその原因をつくったわけですから、もっとポジティブな 広報をやって、そして国民の間にある固定観念というか誤解を解いていく、そういう努力を、厚労大臣、ぜひやってもらいたいと思うんですが、いかがでしょう か。
柳澤国務大臣 そのつもりで取り組んでまいりたい、このように思います。
同時に、我々は、この問題について、やはり水産庁との連携も非常に大事だと思います。ですから、我々は客観的な事実をしっかり把握する、そしてそれを水 産庁にしっかり受け渡して、水産庁はそれを受けて、厚労省もこう言っていますよというようなことでやっていくというような連係プレーも必要であろうと思い ますし、現にそういうことにも心がけたというのが今度の我々の取り組み方でございました。
岡田委員 まだ国民の認識はそう変わっているとは思えませんので、しっかりとやっていただきたいと思います。
きょうは終わります。