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2007.11.09|その他

これからの日本政治と民主党

民主党副代表

岡 田 克 也 氏

皆さん、こんにちは。今ご紹介いただきました岡田克也です。今日は、たくさんの皆さん、ありがとうございます。そして先般の参議院選挙におきまして、わが党の一川(保夫)候補を見事、当選をさせていただきました。そのことに対して、まず、厚く御礼を申し上げたいと思います。

私も実のところ、果たして石川で勝てるか、私自身も石川に告示の直前と期間中、二度、参りましたが、なかなかそれは、森(喜朗)さんのお膝元だし厳しいなという気持ちはあったんですが、しかし、本当に県民の皆様のご支援を頂き、当選をさせていただいたことを厚く御礼申し上げたいと思います。民主党にとって、北陸三県は四国と並んで民主不毛の地と、こう言われていまして、私が幹事長、代表の時も、総選挙、あるいは参議院選挙、なかなか勝てない、そういう地域であったにもかかわらず、今回は様変わりして、北陸三県でもそのうちの二つを制し、福井も善戦をいたしました。四国に至っては四県とも勝つという、そういうことになって、本当に歴史的な勝利をさせていただいたというふうに思っております。

なぜ、選挙に勝ったのか。私なりの考え方を少しお話ししたいと思いますが、数字で言いますと、三人区、五人区の勝利と、そして圧倒的に一人区で勝ったということになるわけです。私が代表を務めました三年前も、自民党を上回る議席ということではありましたが、基本的には二人区というのは、自民と民主が分け合う形になります。もちろん二人区に二人を出すことがありますが、それはあくまで例外的でありまして、基本的には二人区は分け合える選挙区ですから差がつかないわけですね。

そうすると、やっぱり三人区。三人区というのは、今回の選挙で言えば埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪と、五つあるわけですね。ここで複数立てて勝つということが、まず一つ目指さなければいけない方向になります。ついでに言いますと五人区、東京は五人区でありまして、もちろんここも、三人出せればいいんですが、それはなかなか難しくて二人立てるということであります。この中で今回は、大阪だけはどうしても二人立てられなかったんですが、その他の三人区、五人区は二人立てまして、そしてすべて勝たしていただいたということですね。三年前には、埼玉も二人立てたものの勝てず、愛知、神奈川、東京にとどまったわけですが、それに対して埼玉、それから新しく三人区になった千葉、ここで議席を増やすことができました。その結果として、公明党が埼玉でも、そして愛知でも、神奈川でも議席を失うということになったわけです。これが勝因の一つですね。

しかし、圧倒的な勝因はやっぱり一人区です。一人区で、六年前は確か二勝ですね。二十七の一人区があって二勝二十五敗、三年前が十三勝十四敗。今回は、自民党は六つですか、ですから六勝二十三敗、我々が二十三勝六敗ということで、やっぱりこの一人区での勝利ということがポイントになったことは間違いありません。そして、その一人区というのは大都会ではないわけで、そういった所で勝利できたということが、非常に今回の選挙の結果に直結をしたということになります。

そういう意味では、私は、一人区を重視した、あるいは地方を重視した、小沢(一郎)さんの戦略、戦術がまさしく的中したというふうに評価できると思います。もちろん一人区重視というのは三年前も同じだったんですが、より具体的に、例えば農業、一次産業、現在、疲弊している地方について、しっかりと政策も打ち出し、そして何よりも、民主党が関心を持ってるというメッセージを送ったこと。小沢さんがいろんな田園風景の中で街頭演説をした、それが映像になって流れたということが、一つの大きな、そういった一人区、特に地方の有権者に対する強いメッセージになったというふうに思っております。そういう意味では、小沢さんの作戦勝ち。戦略、戦術共に小沢さんの、その狙いが的中したと。そういう選挙だったというふうに思っております。

もう一つ、言っておかなきゃいけないことは、この選挙は、その小泉(純一郎)さんの改革の結果として、こうなったのかどうか。実は選挙が終わって間もなく、加藤紘一さんと、あるテレビに出る機会がありました。私はあんまりテレビに出ないことにしているんですが、朝早い番組に加藤さんと二人で出演をしました。で、加藤さんが最初に、今回の選挙の敗因は、やっぱり小泉改革五年間の結果であると、こういうふうに言われたんですね。地方は疲弊していると。これは小泉改革のせいだと。そういうふうにおっしゃいました。私は、それは違うんじゃないかということで、そこで少し議論になったんですね。

つまり、地方は疲弊していることは事実だけど、それは別に小泉改革のせいだけじゃないと。もっと根深いものじゃないかということを私は申し上げたわけです。地方は疲弊しているという中で、例えば一次産業、農林水産業が非常に希望のない状況になっている。それは別に小泉さんの改革の結果としてそうなっているんじゃなくて、小泉さん、じゃあ、農業や林業、水産業について、改革とか政策の変更をしたかというと、基本的にはほとんどしていないわけですから、むしろ放ったらかしと言った方が正しいと思うんですね。

ですから、それは小泉さんの結果ではなくて、それ以前からの、その自民党政治の結果じゃないかというふうに私は申し上げました。農業についてはそれは言える。つまり、戦後の農政、その結果としての現在の農村や農業の疲弊があって、そして、その結果として今回、有権者はノーと言ったと。農業に携わる皆さんはノーと言ったと。それは小泉さんだけのせいじゃなくて、もっとその前から含めての根深い話じゃないかということを、私は申し上げたわけであります。加藤さんは農林族の一人でもありますから、非常に嫌な顔をしていましてけども、私にはそう思えてなりません。

それから、公共事業を減らしたことは、これ、間違いありません。小泉さんの時に大幅に減ったと。しかし、じゃあ、他の政権だったら増やせたか、あるいは、もう少し横ばいとか維持ができたかというと、とてもそれはできない財政状況にあることも間違いはないわけですね。だから誰が総理になったって、公共事業、どれぐらい思い切って減らすかっていう議論は、それはあると思いますが、しかし、減らすっていう以外の道はなかったということだと思います。結局、それは、戦後、自民党が十八番としてきた分配の政治が、もう通用しなくなっているわけですね。

つまり、高度成長期は有り余る税収、それをばらまく、分配すると、そのことによって自民党政治は成り立ってきたわけです。分配政治。しかし、もうそういう時代じゃない、少なくとも財源はない。公共事業を幅広く地方に配分しようとしてもできない、そういう中で今回の地方の疲弊があるわけです。いずれにしても、そういう自民党型の分配政治がもう限界に来ていて、小泉さんの時代は、ある意味で、それに代わるものが、小泉さんが提示するような錯覚には陥ったと思うんですけれども、冷静に考えてみると、自民党のそういうやり方はもう限界だということ、そのことがやっぱり背景にあるんだというふうに私は思います。

実は二年前です。二年前の総選挙、その時に私、代表を務めておりましたが、民主党は大きな敗北を喫しました。都市部を中心に議席を大きく減らしたわけですが、しかし、あの時ですら、選挙区における民主党の候補者のその得票は、二千四百八十万票という、かつてない最高の得票を得ているわけですね。しかし投票率が上がって自民党がそれ以上に得票して、小選挙区の特徴が非常によく出て、議席を自民党は大きく伸ばし、民主党は減らす結果になりましたが、あれだけの状況でも二千四百八十万人の方に民主党の候補者の名前を書いて頂いた。このことを考えますと、やっぱりトレンドとして、自民党の構造的なその衰退。そして、その結果として民主党が継続的に得票を伸ばしているという、そういう大きなトレンドがあって、その中で、その時の状況によって議席が減ったり増えたりしていると、そういうことだと私には思えてなりません。

今回は、そういうトレンドの中で、それに小沢さんの一人区対策がピタッとはまって、大きな議席増になったんだと、そんなふうに私には思えるわけであります。いずれにしても、私、加藤紘一さんに申し上げたのは、だからこそ、自民党にとってはより深刻ですよと、事態は。小泉さんが悪いと言って小泉さんのせいに全部して、じゃあ、元の自民党に戻ったから、それで支持されるかと言えば、そんなことはもうないと。そういうことを申し上げたわけで、私は基本的にそういうふうに思っているわけであります。もう分配の政治は終わったと。そして分配の政治が終わると共に自民党の政治も終わったと、いうふうに考えております。

さて、そういう結果ではありますが、私、本音を申し上げますと、しかし、ちょっと振れが大きすぎないかという感じはするんですね。二年前の総選挙、そして今回の選挙、もちろん、それは小選挙区制度、一人区というのは小選挙区制度ですから、その一人区の特徴がよく出ていることは間違いありません。小選挙区制度というのは振れが大きくなるんですね。だから得票差は、例えば三年前に比べて三ポイントぐらい民主は増えている。だけどそれが議席数になると、ドーンと増えているわけですから。比例はそんなに増えているわけじゃないですね。三年前の民主党の比例の議席は十九議席です。今回二十議席ですから、一議席しか増えていないんです。自民党は一議席しか減らしていないんです。だけど選挙区で見ると、一人区を中心にガーンと差がついた。それは小選挙区の特徴です。

それにしても、二年前の総選挙でガーンと民主党はお灸を据えられて、今度はガーンと増えるという、ちょっと行方が定まらない大きな塊が国民の中にあるという感じはしますね。それは、政治がキチッとそれをとらえきれていないと、いうことでもあると思います。で、もう少し過去にさかのぼれば、それはやっぱり、一昔前の「加藤の乱」、加藤紘一さんがその自民党に反旗を翻した。その時にメールが殺到したわけですね。最終的に加藤さん、その期待を裏切ってしまうわけですが、そして小泉さんが登場して、小泉さんに対するフィーバー、そして今回のこと。

そういうふうに見ますと、非常に不安定な、行方が定まらないようなマグマと言いますか、エネルギーというものが国民の中にあるということだと思います。それをキチッととらえきれる状況にはまだどの政党もなっていない。こういう現状認識で、これは変な方向に行くととても危ない、そういうことだと思いますが、我々はもっともっと努力をして、そういった国民の皆さんにある、今の政治に対する、いわば不満のエネルギーと言いますか、そういうものをキチッととらえていくだけの存在にならなきゃいけない、政党にならなきゃいけないと、そういうふうに改めて感じております。

そして、もう少し政策本位の選挙にならなきゃいけないと、いうふうに感じております。今回も安倍政権、安倍さんが総理としてふさわしいかどうかというのは、私は今回の選挙の隠れたテーマだったと思いますが、あまり政策で議論された、そういう形跡はありませんよね。もちろん我々、消えた年金と、子育て支援と、農業、この三つなんですけれども、しかし、あんまり政策論争、丁丁発止やったという感じもありません。しかし、本来はそういった政策できちんと議論できる、争える選挙にしたいものだと、そういうふうに考えております。

日本が抱える課題

さて、今の、この日本をどう考えるか。私は今、民主党の副代表を務めておりますが、副代表というのは執行部ではございません。執行部の定義は役員会メンバーということで、私はその役員会のメンバーではありません。常任幹事会のメンバーではありますが。したがって、執行部そのものではないという認識であります。今回も執行部を外から支えたいということを、早い機会に自分のブログに書かせていただきました。何とか、小沢さんを代表とする民主党で政権を取りたいという思いは強いし、しっかりまとまっていくことは大事だというふうに思いますが、ちょっと休みたいなという感じも、正直言ってあるわけですね。ずっと政調会長や幹事長、代表を五年ぐらいやっていましたので、、少し距離を置いて政治を客観的に見たいと、いう気持ちも一方であります。

そういう意味で、今回も引き続き副代表をお引き受けし、そして予算の筆頭理事をやれということですから、一生懸命、働かせていただきますが、執行部そのものではないということであります。したがって、今から述べることも、ちょっと私の考える政策でありまして、これは党の政策と直接リンクしていないと。概ねオーバラップしているんですけれども、もう少し自由な立場でモノを申し上げたいというふうに思います。

さて、まず、今、政治が何をやらなければいけないかということですが、私はやっぱり改革だと。基本は改革であるというふうに思います。今、国民の皆さんの中にあるのは、小泉改革よりも、私は小泉改革、これを改革だとは思いませんが、しかし、小泉改革によって出てきた、いろんなマイナス点をしっかりと補ってもらいたいと、これは国民の皆さんの気持ちであり、参議院選挙もそういう声は非常に強かったと思います。特に地方では強かったと思います。そのことを私、否定するわけではありませんが、しかし基本はやっぱり改革をしっかり進めていくと、いうことだと思います。

で、改革っていうのは何だと。簡単に言ってしまうと、日本の戦後の、いわば高度成長を前提にしたいろんな仕組みがあるんですね。そういうものを新しい時代の変化、新しい時代の変化というのは、私は三つあるというふうに思っているんですが、それに合わせて変えていくことだと。新しい時代の変化っていうのは、一つはやはり経済がグローバル化しているという、世界共通の現象ですね。そして日本の国内で少子高齢化が確実に進んでいくという現実。そして私はもう一つ、そこに、これからアジアの時代、いうのがやってくると。この三つの変化に合わせて、日本の政治を変えていくことが改革であると、いうふうに思っているわけです。

今までは高度成長を前提にして、先程来、自民党政治ということで申し上げていますが、税収もどんどん増える、そういう中で、それを分配することが政治だったわけですね。しかし、もうそういう時代はとっくに終わっているわけです。もう二十年以上前に終わっていると私は思うんですが、そして、少なくともバブルが崩壊した後、民間の皆さんは、そういう成長神話じゃない前提で、いろんなものを組み替えられたと思います。それがうまくいかない所は、やっぱり淘汰される。もう民間のレベルでは、あるいは家計も含めて、そういうふうにモデルチェンジをしておられるわけです。

ところが、やっぱり公の部分。官僚機構も含めてですね。あるいは政治、そういう部分は、まだ高度成長期、分配の政治という感性と言いますか、そういう癖がまだ抜け切っていないということだと思います。それをしっかりと新しい時代に合わせて、グローバル化と少子高齢化、アジアの時代という、そういう新しい条件に合わせて変えていくことこそが改革であると、そういうふうに私は思っております。

そして、これはやらないかぎり日本は沈んで行くだけだと。次の世代に対して、今の豊さ、あるいは平和すらも残せないと、こう考えておりますので、そういう意味で、しっかりと改革をやり遂げていくということが、政治の最大のやらなきゃいけないことだと思っております。ただ、その改革は一体、何であるのかということは、これからお話し申し上げますが、私は小泉さんの改革、もちろん評価すべき点もありますが、ほとんどは、周辺のことはいろいろやっていたけども、本質的には改革というのはなおざりになってしまったと、そういうふうに評価を、マイナスの評価ですが、しているわけであります。

年金をどうするか

さて、その改革、大きな改革というふうに私は言っておりますが、具体的に何かというと、一つは、やっぱり持続可能な社会保障制度、そして財政の立て直し、三番目に強い経済と社会的公正の両立と。私は基本的にこの三つだというふうに考えております。で、持続可能な社会保障制度。これは少子高齢化という中で、このままでは社会保障制度、例えば年金はその典型ですけれども、あるいは高齢者医療、そういうものがこのままじゃ続かないということは、多くの皆さんは実感されている。

だからこそ、今回の選挙でも年金が大きなテーマになったと思います。もちろん消えた年金の問題も、こんなでたらめなことが行われているというのは全く異常なことで、非常に重要なテーマですが、それはいわば運用の問題ですから、そのことと並んで、あるいはより本質的には、やはり年金制度をどうするのかと。これからどうやって持続可能にするのかということが、より本質的な問題であること間違いありません。そういう議論は、先の選挙でもあまりされなかったわけですけれども、やはり年金制度をどう組み立てていくかということに、もっとしっかりと政治は取り組まなきゃいけないというふうに思います。

そういうふうにいうと、じゃあ、与野党で年金制度の改革を話し合うべきだと、いう話がすぐ出てきそうなんですが、私は、この点については非常に否定的であります。私が代表の時に、年金制度を与野党を超えて議論する場、というものを国会の中に作りました。で、小泉総理に、党首討論の場で何回も言われたんですね。「岡田さん。年金制度、やっぱり、これ与野党を超えて議論しなきゃ駄目だ」と。だからそういう場を作ろうと。私はそのことに応じて、実は衆参両院を通じた検討の場というのが国会の中にできたわけです。本会議で決議までしてできたわけですね。

その時に、そういうものを作ろうというふうに、私、代表として決断した時に、党の中からずいぶん批判されました。「どうせ、そんなの、まともにやる気はないんだから、自民党は」、形だけ作るだけだから騙されるなと。私も、騙されることになるかもしれないなと。だけど、私は自分のモットーとして、一度は騙されていいというふうに。そういうモットーでいろんなことをやっているんです。いちいち人を疑っていたら切りがないと。一度は騙されるリスクを取ってやってみるべきだと。その代わり、一回騙されたらもう絶対、そいつは信用しないと、人間っていうのはそう変わるもんじゃないと。

そういうふうに思っていまして、小泉さん、いろいろ言っている。選挙の争点を一つ消したい、年金を争点じゃなくしたいということかもしれないけど、しかし真面目に言っている可能性もあると。で、国民的には、やっぱり年金制度、超党派で議論するっていうことは大事なことだから、まあ、一回、賭けてみようかということで、議論をする場を超党派で作ったわけですね。ただ、その時に一つだけ条件を付けました。年金制度については、秋までに、その時は春だったんですね。秋までに骨格は作ると。つまり、いつまでもだらだら議論するんじゃなくて、秋までにきちんとした年金制度の改革の骨格を作りましょうと。それだけちゃんと約束してくれたら、議論していいですよということにしたわけです。

しかし、議論が始まると、その与野党で議論をする場を作ったんですが、結局、自民党の中で柳沢(伯夫)さんだけでしたね、真面目に議論しようというふうに言ったのは。あとはみんな、いや、年金制度の大事なのは、共済年金と厚生年金を一つにすることであって、それ以外のこと、民主党が主張していたのは国民年金を含む一元化、そして税方式の導入ですね、そういう話は議論する必要がないんだ言わんばかりの、そういう委員会での議論展開になったわけです。

そうじゃなくて、大きな改革を議論をしようということで始めたわけですが、そういうのはもう議論しませんと。そして揚げ句の果てには、秋までに改革の骨格を作ると約束した小泉さんご自身が、郵政解散で解散しちゃったわけですね。もちろん総理の解散権というのは縛れませんよ。だけど、国会で本会議決議までして、超党派で年金制度を議論しましょうと約束した張本人が、その秋を前にして解散しちゃったわけですから、もう私は、これは完全な約束違反であるというふうに思っております。したがって、一度は騙されてもいいが二度は絶対騙されないという、私のモットーからいっても、もう年金制度で超党派で議論するなどということは有り得ないことだと思っております。

最近もテレビを見ておりましたら、自民党の政調会長になった石原(伸晃)さんが、自民党の中にも税方式賛成論者はいるんだとか、議論しましょうよとか、こう言っていますが、よくも恥ずかしくもなくああいうことを言うもんだと。一年前のことを思い出せと、そういうふうに私は思います。その時、わが党の直嶋(正行)政調会長と石原政調会長が、『サンデープロジェクト』でしたかね、議論していたんですが、後で直嶋さんに電話で連絡して、「絶対、騙されるな」というふうに言っておきましたが、いずれにしても、自民党に真面目に話をする気はないというふうに思っております。

そして、じゃあ、年金制度、わが党の主張は先程言いましたように、一元化と税方式ですが、やっぱり詳細をもう少しちゃんと議論しなきゃいけないというふうに思っております。その税方式をとるときに、消費税を将来的に上げなきゃいけないかどうかというのは、小沢さんは当面消費税は上げないという、これはトップの判断ですから、私は、それは尊重されるべきだというふうに思いますが、長い目で見れば、その財源をどうやって手当てするかという問題は、将来的には出てくるんだろうと思います。

私は、消費税というのも一つの考え方ですが、他にもいろんなアイデアがあっていいだろうと。例えば所得比例税とかですね。あるいは環境税などというのも、そういうものに充てていいのかなというふうに思っております。消費税というのはですね、実は地方と都市の偏在ってあんまりない税目なんですね。だから、むしろ地方分権のために使った方がいいんじゃないかと。これからさらに税源移譲をしていくときにですね。まずは所得税で税源移譲やりました。三兆円。所得税から最低税率の部分を住民税に移すということをやりました。

それはそれでいいんですが、次なる税源移譲の、そのタマとして何がるかと考えますと、私は消費税というのが一つ上がってくるのかなというふうに思っております。と、何でもかんでも消費税というわけにはいきませんから、消費税以外のもの、もちろん一般財源でもいいんですが、所得に比例した、所得税以外の所得比例税というのを作るか、あるいはドイツなどがやっていますように、環境税の税収をそういう社会保障に充てていくというのも、非常に面白いアイデアではないかというふうに思っております。

いずれにしても、その辺はこれから党の中で議論していくことで、私の個人的な意見として申し上げましたが、そういう税方式、そして将来的に二階建ての部分をどうしていくかと。もちろん一つにしていく、一元化していくという前提ですが、その二階建て部分、今の報酬比例部分ですね、厚生年金でいう。これをどの程度のものにしていくのかということも、これからもう少し議論をしっかり詰めなければいけない点だというふうに思います。

私は、将来的には積立方式ということも選択肢になるのかなと、個人的には思っていますが、いずれにしても、そういった年金制度の大きな改革をしっかりと、党としてもより具体的にして打ち出していかなきゃいけないというふうに思っております。もちろん、今の党の政策は完全な一元化と、一階は税方式で、二階は所得比例年金にすると、こういうことであります。それが基本であることは間違いありませんが、もう少し議論が必要かというふうには思っています。

そして、あとは高齢者医療、どういう枠組みの中でやっていくかということも、それに並ぶ大きな課題であることは間違いありません。私は、まだ医療制度、いろいろ無駄はあるというふうには思っています。しかし他方でいろんな弊害も出てきていると。小児科や産婦人科の不足、地方では医療を受ける機会が決定的に減っているというような、そういう大きな弊害も出てきていますから、そこに手当てをしっかりしながら、しかし、まだまだ無駄は削れるはずだというふうに個人的には思っています。そういったことをやりながら、医療制度の改革、健保がその典型ですが、払う側の力を強くするということで、もう少しいろんな意味での改革というのがあるんだというふうに思っていますが、そういった高齢者医療の改革。もう一つ言わせていただくと少子化対策。そういったことの、大きな意味での社会保障制度の改革が大きな改革に第一であります。

財政再建は政治の責任

二番目が財政の再建。財政の再建というのは、政治家にとってなかなか言い辛い話なんですよね。言っていると、自分でも何となくしょぼくなってくる。歳出カットの話ですからね、基本的には。その次にはもちろん増税というメニューもありますが、まずは歳出カットをしっかりしろと、いうのは有権者の皆さんの変わらぬお気持ちだと思います。しかし、じゃあ、どこをどうやってカットするのかということですね。これは民主党としても、行財政改革で財源をひねり出すということを皆さんに申し上げているわけで、より具体的な議論をこれからさらに進めていかなきゃいけないというふうに思います。

で、無駄はいっぱいあると、いうふうに皆さんも思っておられると思いますし、私もそう思います。例えば官製談合とか、いろんな役所のやっている無茶苦茶なこと。この前も、二日ほど前ですが小田原に、勉強会があってスパウザ小田原というのに一泊したんですね。これは、今はヒルトンホテルが運営している立派なホテルです。いろんな施設も整った。でも、ちょっと前までは雇用促進事業団が建てた保養施設だったんですね。百億円以上かかっていると思いますが、トータルでいうと百億じゃとってもきかないと思いますが、そういうのを雇用促進事業団が、皆さんから頂いた保険料、本来、失業給付に回したり、職業訓練に回さなきゃいけないお金で建てて、その百億以上かけた物を結局、運用できなくなって、小田原市に確か、九億円ぐらいで売ったんですね。

小田原市は、それを年間三億円でヒルトンホテルに貸しているわけですよ。三年間で元を取るんで、小田原市もなかなかいい商売をしたなと思うんですが、しかし、百億以上の我々の払った、私は公務員時代は雇用保険料払っていませんから、公務員は払わなくていいんで、私が払ったというのはちょっと言い過ぎですが、皆さんがお払い頂いた失業保険、雇用保険の保険料でできているわけですから、何でこんな物を雇用保険で造らなきゃいけないのか。私は非常に気持ちよく一泊させていただきましたけれども、同時に、やっぱり腹が立ってしかたがなかったですね。こんな無駄遣いをしていると。そういうのを見ていると、まだまだ、いろんな所に無駄があるということは言えると思います。そのことはやっぱり具体的にキチッと見直していかなきゃいけないと、いうことになります。

一方で、二〇一一年に、プライマリーバランスを黒字化するという政府の方針があります。私は、その方針は基本的に正しいと言いますか、できれば二〇一〇年ぐらいに前倒しした方が、可能であればした方がいいと思いますが、まず一里塚としてそこまでいくということは、これは先延ばしては絶対いけないことだというふうに思っております。で、二〇一一年にプライマリーバランスを黒字化するというのも、今年の収入で今年の支出を賄えるようになるというだけですから。過去の借金の金利の利払いとか、過去の借金を減らすという状態にはまだいかないんですね。二〇一一年では。

それを、やっぱりやらなきゃいけないわけですね。今、金利がこれだけ低いからいいわけですけれども、例えば八百兆円の借金があればですね、一%金利が上がっただけで八兆円増えるわけです。それはもちろん時差があります、国債ですから。だけど基本的には、一%上がれば八百兆の一%、八兆円上がるということですね。それは国の財政の規模、八十兆から見て大変な話です。だから早く、その借金を少しずつでも減らしていく。そういう状況にもっていかないといけない。それが二〇一一年以降の第二段階なんですね。

そこまでキチッと、私は道筋を書くべきだというふう思いますが、いずれにしても、この財政再建、参議院選挙の敗北によって、与党はいろんな支出を増やすと、そういう動きというのが一方でありますから、それに乗ってしまって財政の立て直しの機会をここで失すると、恐らく永遠に財政の立て直しというのはできなくんではないか。もし、やるとしたら、大幅な増税をドカンとやらざるを得なくなっちゃうんじゃないか。そういうことを防ぐためにも、この年末の予算編成、キチッと従来の方針に沿って歳出削減、それをやり遂げていくということは、一方で非常に重要なことだと思っております。

いずれにしても、この財政再建の具体的なプランというものを、もう一回、しっかり見直して、より前倒しでそれができるようにしていくということが、政治の責任だと思います。ただ、この話は、すればするほど、だんだん皆さんが、言ってる本人も含めて、寂しい気持ちになってきますので、前向きの話でなく削る話ですからね。しかし、ぜひ、やらなきゃいけないと思います。

分権による地方の自立

三番目に、強い経済と社会的公正の両立。つまり、経済のグローバル化が一方で進むと。そういうことで、一体、世界で何が起こっているかということですね。これは国会、予算委員会での議論でも、安倍さんに言いました。安倍さんは、経済成長することで、その成長の果実を全体に行き渡らせることができると。まだ、そこまで至っていないが途中経過であって、成長していく中で、例えば地方とか、あるいは格差が拡大している、貧富の差が拡大している、そういう問題が解決できるんだと、いうのが安倍さんの持論ですね。

しかし、私は、それは全く事実に反するということを申し上げているわけです。つまり、世界全体で今、格差が拡大している。それは、やっぱり経済のグローバル化の負の側面ですね。で、それは、例えばアメリカだって経済は成長していますよ。そういう中で格差は拡大してきているわけですね。だから、そのことを正確に認識をして、単に経済成長を遂げれば、格差の問題はなくなっていくというふうに考えるのは間違いで、経済成長はもちろん必要なことでありますが、しかし、それだけで政治の責任を果たしたということではなくて、成長しててもやっぱり格差の拡大は続いていく。そのことをきちんと認識をして、政治は手を打っていかなきゃいけないということであります。

日本でも、経済は成長して確かに企業収益、大企業を中心に上がってはいますけども、しかし個人の所得は増えていない。増えているとしたら、株の売買では所得は増えているんですが、給与所得は増えていない。一部の大企業では多少、ボーナスが上がるということがあるかもしれませんが、しかし多くの人々にとって、経済は成長しているっていうのは、なかなか実感できないという現象。これは一時的、経過的なものではなくて、構造的なものであるということをきちんと認識して、政治はしっかりと手を打っていかなきゃいけないというふうに思います。

そういった大きな改革ということが、まず、政治家が果たさなければいけないこと。二番目は地方の底上げと自立というふうに申し上げました。最初に申し上げましたが、地方に対する自民党政治の要というのは、一つは公共事業の分配ですね。そしてもう一つは、農業。これに対する補助金での分配。昔は米価だったんです。それが補助金という形の分配。しかし、そういうものはもう通用しなくなってきたという中で、新たな地方経済の成長モデルというものを作り上げなきゃいけないんですね。それが全くできていないのが今の自民党政治。

じゃあ、新たな地方の自立的な経済成長のモデルというものを、どうやって作っていくかということになるわけです。私は、一つはやっぱり分権だと思うんですね。この分権改革は、小泉さんの下で最もうまくいかなかった改革の一つです。で、三兆円の税源移譲というのは行われました。これはたった一つの成果だと、私は思います。しかし、税源移譲をするということは、自由に使えますよと、いうのが税源移譲の目的なんですね。地方に権限と財源を移して、そして自由に判断してやってもらえるようにする。これが分権の基本的な発想です。

ところが、三兆円の税源移譲をしたけれども、結局、各省庁は何をしたかというと、補助率を下げるということをやったわけですね。つまり、国は権限は手放さない。補助金を無くすということをやれば、無くした中で地方が自由に動けるわけですけれども、補助制度は維持して、例えば、従来、三分の二、補助していたのを、二分の一とか三分の一にすると。で、補助制度はそのまま残すと。これだと、何の意味もないわけですね。結局、地方としては、裁量の余地は全く増えていないわけです。これが小泉さんの分権の本質ですね。 

そうじゃなくて、やっぱり権限、財源をきちんと地方に移すと。そして自由度を高めて、逆に言うと自己責任で、都道府県や市町村にやっていただく。それこそが本当の分権改革であって、これをきちんとやっていくということが、地方の活性化につながる、いうことであります。地方にはそれぞれニーズの違いはあります。それを中央集権で一律にやっていくという中で、いろんな無駄も生まれますし、何より、どこに責任があるのか分からないような、そういう政治になってしまうわけで、やはり地方に権限、財源を移すということが、まず必要なことになります。

しかし、これは、官僚や、その後ろにいる族議員にとっては絶対、許せないことなんですね。自分の権限が減っちゃう、無くなっちゃう。ですから小泉さん、できなかったわけです。今度、増田(寛也)さんが総務大臣になって、増田さんは私も親しい人ですので期待はしますけれども、しかし今のリーダーシップがない状態の安倍政権で、じゃあ、各省庁や族議員が押さえられるかというと、私は非常に悲観的であります。それをキチッとやり遂げていくということが必要なこと。民主党政権になれば、まずやらなきゃいけないことだと思います。

一次産業の立て直し

そして同時に、地方というときに、やっぱり農林水産業、これをどうやって立て直していくかということが、次の大きな課題になります。民主党は、農業や林業についてはプランを出していますけれども、農業は選挙でも強調しました。所得補償方式ですね。それでやっていくと。いろんなご批判もあります。だけど、例えば一兆円ということを我々は言っているわけですね。と、専業農家二百万、一兆円ということは五十万ですか。で、ヨーロッパは、農家の所得に占める、その税金の割合というのは半分ぐらいある所が多いわけですね。

もちろん、私は大規模化とか、あるいは会社が農業をやっていくという道もしっかり作る必要があると思います。だけど、効率化して、それで白地で競争できるかというと、それは、私は、全然、人件費が、これだけレベルの差があるアジアの中で、日本の農業、あなたたち大規模化してやっていきなさいと、それだけでやっていきなさいというのは、これは無理難題を押しつけているようなものだと思います。そういう意味で、効率化、大規模化というのは一つの方向ですが、しかし同時に、しっかりと所得補償をしていく中で支えていくという、そのことが行われなければ、私は日本の農業は立ちいかない。そういう意味で、民主党の主張している所得補償方式というのは、方向としては、それしかないんだというふうに思います。

日本の農業、今、どういう状況かというのは、皆さん、ご存じのとおりで、自給率は四十パーセントをとうとう切ってしまいましたし、ほとんど高齢化が進んで、若い人はやりたがらない。兼業農家だって、結局、会社勤めでもらったボーナスを注ぎ込んで、農機具を買っているような状況、それが普通だと思うんですね。その恒常的な赤字。そいう中でやる気になれないのは当然でありまして、それが、ちゃんと真面目にやれば所得が増える、そういう仕組みに変えなきゃいけないというふうに思います。

同時に、農業の分野ほど、いろんな利権が入り組んでいるところは私はないと思うんですね。建設もそうでしたけれども、建設はいろんな意味でメスが少しずつ入ってきました。農水相を、今度の遠藤(武彦)さんになって、共済組合の理事長をやっているわけでしょう。政治家が。そのことが異常だというふうに、やっぱり思わなきゃいけないですよね。土地改良だってずいぶんあると思うんです。県会議員さんや国会議員がトップをやっているというケースはね。だけど、それは補助を受ける側ですよね。

農業共済だってずいぶん税金が入っていますよ。で、農業共済だと査定をしなきゃいけないんですね。今度の遠藤さんの組合は水増しが行われて、そこでインチキをやっていたということですが、例えば災害が起きて、天気が悪くてリンゴのできが悪かった。どのぐらい悪いか。査定しなきゃいけません。これは一種の損害保険と一緒ですから。そして、それによってお金を出すと。そういう側に政治家が座って、税金の配分に責任を持つべき政治家が、受け取る側の責任者もやってるということは、私は本当は異常なことなんだと思います。

で、選挙になれば、そういう人がトップに座っていれば、その共済組合の皆さんは、一生懸命、選挙をやるでしょう。いざと言う時に助けてもらいたいと思えば。ですから私に言わせれば、そういった補助金を受ける団体、組合に政治家が座るということを全体をやめていかなければ、この問題の本質的な解決にはならないというふうに思っています。それは当たり前のことだというふうに私は思います。遠藤問題の本質はそこに実はあるわけです。

ちょっと話はずれましたが、農業の問題というのは、いろんな意味で、まだそういう利権とか古い構造が残っていますから、そこに徹底的にメスを入れて、そして財源を得て、それを農家に直接行く形に変えていくということが、民主党が主張している、一兆円の所得補償方式であります。

そして、そういう一次産業が自立的にやっていけるという形を、これは農業だけじゃなくて林業も漁業もそうですが、作ることで、地域の活性化というものの基礎ができる。これは農業もそうですが、林業や漁業、少し明るさが見てきたとは思います。例えば木材の価格が上がる。魚価も上がる。それは中国始め、いろんな所で需要が出てきた。ですから今、山も木材価格が少し持ち直して、ロシアや中国が木材の輸出を規制をし、むしろ需要する側に回ったと。これは魚価についても、世界的に魚の需要が高まって魚価が上がっていると。そういう中で、日本の一次産業を立て直していく、そういう今、チャンスだというふうに思っております。

最後に、分権・霞ヶ関改革というふうに(レジュメに)書きましたが、分権というのは先程言ったとおりなんですが、ちょっと地方の底上げとは直接関係はありませんが、霞ヶ関改革ということを政治がやらなきゃいけないことの一つとして書いて置きました。で、私は、この安倍政権を見ていまして非常に面白いなと思ったのは、官邸に補佐官を置いてやっていくという、官邸主導の政治というものに挑戦したということは非常に興味深く見ておりました。

ただ、言っちゃ悪いですが補佐官の顔触れを見て、これは無理だなというふうに思っていましたし、そのとおりになりましたが、しかし官邸に、総理の周りに一定の厚みをつけて、そして総理大臣が中心になって政治を動かして行くという形自身は、私は間違っていないというふうに思います。したがって、今回の第一次安倍内閣の失敗はどこにあったのか。もちろん人にあったことは一つですけれども、それ以外にもいろいろあったと思います。

で、霞ヶ関行政指導の政治から本当の政治に変えていくために、その中で官邸というものが大きな力を発揮しなきゃいけないことは、私は間違いのない事実だと思いますので、補佐官制度の活用も含めて、どこに安倍さんの失敗があって、どうすればいいのかということはきちんと検証して、そして民主党政権の時に、その検証結果を生かしていくということは非常に重要なことではないかと、いうふうに思っております。

地球的規模の課題の克服

最後に、地球的規模の課題の克服と書きました。これは簡単に申し上げますが、代表を辞めて、少し大きな問題に取り組もうということで、私が力を入れている問題であります。世界的な貧困の問題。貧困の問題は、特にアフリカのサハラ砂漠以南のサブサハラ、そこの問題が最大の貧困の問題であります。もちろんアジアにもあります。しかし、一日一ドル以下で生活する貧困層というのは、アジアではだいぶ減ってきました。それは中国やインドが経済発展してきたということが大きな要因です。しかし、二ドル以下ということになると、アジアはあんまり減っていないんですね、まだ。先般、私もミャンマーとカンボジアに行って参りましたが、やっぱりアジアの貧しさ。それから中国だって奥の方に入ると、電気も何もないところで子供たちが勉強しているなんていう所は、まだ結構あるわけですね。インドもそうです。

ですから、そういうアジアの貧困、そして何よりアフリカの貧困、で、その貧困の中で負の連鎖として、エイズやマラリアと言った病気の蔓延ですね。私は去年、ケニアのビクトリア湖の中にある島を訪ねたんですが、そこでは本当に女性の四十パーセント以上がHIV(エイズの病原体ウイルス)のポジティブ、男性でも三十パーセント以上、そして孤児がたくさんいるわけですね。両親共にエイズで死んじゃったという子供たちが結構いる。で、その子供たちは貧しいですから、結局、少女売春とか、ストリートチルドレンになって、女の子はもう子供から少女売春というような形で、またこれがエイズになるという負の連鎖ですね。

そういうのを見ておりますと、やっぱりここで、ODA(政府開発援助)の予算もだいぶ減ってしまいましたけれども、日本はきちんと責任を果たしていかなくてはいけないんじゃないかと、改めてそういうふうに感じた次第であります。アジアで最悪の状況を脱しつつあるというのは一つのいいモデル。で、日本が大きな役割を果たしてきたことも事実だと思います。しかしアフリカは、今、うまくいっておりません。アフリカについてもう少し、これはブレアさんとかヨーロッパは割と熱心ですが、日本ももっと力が発揮できるんじゃないかというふうに思っています。

そして温暖化。温暖化は、今度の予算委員会で安倍さんともぜひ議論したいと思ってるんですが、安倍さんの「美しい星50」という構想を出されました。総理が温暖化の問題に非常に関心を持って、そしてインドとか、いろんな国で発言をされていることは、私は評価していいというふうに思います。ただ、やっぱり大事なことは、具体的にどうするかということなんですね。二〇五〇年に温暖化ガスの排出を半分にすると、いうふうに安倍さんは言われています。そのことは、実は半分でもまだ足らないんですけども、私は一つの目標として評価できるというふうに思います。

ただ、そのときに、二〇五〇年というのは、私も安倍さんも百近いわけですから、そういう先に目標を立てることは大事ですが、じゃあ、足元で具体的にどうするのかということを同時に語らないと、これは意味がないんだと思うんですね。そういう観点で見ると、日本は京都議定書に約束した、その目標の達成を、私はできないと思いますが、非常に厳しい状況になっている。そのことに対して、じゃあ、具体的に何かやっているかというと、ほとんど何もやっていない。まあ、国民に一人一キログラムのCO2の削減ということを政府は呼び掛けていますが、みんな国民の方にそれを押しつけているだけで、しかも精神運動って言いますか、そういうことになっているんで、仕組みとしてしっかりと温暖化をやるような、例えば環境税とか、あるいは排出権取引とか、そういう仕組みの導入ということには至ってないわけですね。

そういうことを本来きちんとすべきだし、それから二〇二〇年に、じゃあ、どのぐらい減らすのか。二〇五〇年に全体で五十パーセント減らすということは、発展途上国がこれから経済成長していけば当然増えてきますから、今の状況を固定するというのは、これはアンフェアだと私は思うんですね。やっぱり一人当たりどれだけかと。最終的にはそういうことだと思うんです。一人当たりで見れば途上国はまだまだ少ないわけですね。アメリカ始め先進国は、一人当たりのCO2の排出量というのは大きいわけですから。

そういう意味で見ると、二〇五〇年に半分にするということは、先進国は七割、八割減らさなきゃいけないということです、今から。だからそのために、じゃあ、二〇二〇年にはどのぐらい減らすのか。もちろん、その前提として京都議定書の目標は最低限として、きちんとクリアしなきゃいけないわけですが、それすら危ぶまれているという現状。そういった問題が、美しい星50構想にはあるというふうに思います。

そして核の問題。インド、パキスタン、北朝鮮、イランと、核の拡散が止まらなくなっていますが、この問題に対して、日本としてもっと力を発揮する余地はあるというふうに思います。残念ながら、先般、安倍さんはインドに行かれて、インドの核、アメリカとの原子力協力を進めようとしていることについての発言は、ほとんどありませんでした。少なくとも、それをやめるべきだという発言は全くないわけですね。非常にあいまいな物言いに終始しているわけで、もちろんインドは大事な国です。大事な国ですが、やっぱり核の問題では、妥協を許さない態度というのが日本には私は求められているというふうに思っております。そういったことを、これから私は個人的に、あるいは将来的には民主党の大きなテーマとして、取り組んでいかなければいけないというふうに思います。

政権交代ある政治へ

さて、もう一時間経ちましたので、あと、簡単にまとめたいと思いますが、これから政治はどう動いて行くかということです。具体的なテロ特措法がどうかとかいろんな話は、ご質問があればお答えしたいと思いますが、まずは解散はどうなるのかと。よく、解散に追い込むと、いう言葉が語られることがあるんですね。野党は安倍政権を解散に追い込まなきゃいけないと。私はこれは、永田町にまんえんする無意味な言葉の一つであるというふうに思っております。 つまり、解散をするかしないかは総理が決めます。したがって最終的に、自分の不利な時に解散するなどということは有り得ないわけですね。ですから、状況を追い込んで行くということは分かりますが、最終的に解散を野党はできるわけじゃありませんから、だから民主党、あるいは野党が安倍政権を解散に追い込む、あるいは追い込まなきゃいけないというのは、私はほとんど無意味なことを語っているにすぎないんじゃないかと、いう気がするわけであります。しかし、今、安倍政権、政治と金の問題を始め、非常に求心力をなくしております。自民党の中でも、そういう声は非常に強くなっています。ですから我々は、最終的に解散するかどうか、安倍さんが決めることですが、まず安倍政権を辞めてもらうというところまで、何とか、この国会の中で持って行きたいというふうに思います。それができれば、国会での論戦ですね。国会での論戦の中で、国民の皆さんの中にも、かなり根強くあると思います、もう安倍さん、辞めてもらいたいと。そのことを実現し、そうしたら、その時、解散に弾みになるかもしれませんが、基本的には安倍さんの代わりに、次に新しい総理が出てくるということだと思います。

そして、その新しい総理と、通常国会で堂々と論戦をやって、どこかでは、あと二年しか任期はないわけですから、どこかでは総理は解散されるんだというふうに思いますが、次の総理が解散されるまでに、その総理が、安倍さんに引き続いていかにいい加減ということを、国会論戦の中で明らかにしていくということが、我々がやらなければいけないことじゃないかと。そして同時に、民主党が政権を取れば、こうなるということを、かなり具体的な政策はもうすでに述べておりますが、より重要なものについては法案の形で出しながら、論戦していくということが私たちの責任ではないかというふうに思います。

一番最初に申し上げましたように、トレンドとしては、もう自民党の長期低落というのは続いております。そして、どの国を見たって政権交代というのはあるわけですね。政権党が失敗すれば、政権を代えて新しい発想、新しい政策、新しい人でやり直すと。これは民主主義の基本です。ようやく民主党も力をつけて、そういうことが国民の皆さんに、ある程度、期待していただくところまでこれたというふうに思っております。

あとは、参議院で与野党逆転している、このチャンスを生かして、次なる総選挙で政権交代をする。そのことをしっかりと目指して、そしてわが党の代表である小沢さんを総理にする。そのために我々一致協力して、サポートしていかなきゃいけないと、そんなふうに感じているところでございます。

ちょっと、最初の話が長くて、最後のほうが短くなったかもしれませんが、以上にさせていただいて、あとは皆様のご質問にお答えをさせていただきたいと思います。どうか、よろしくお願いします。

質疑応答

質問 臨時国会が十日に招集されますけど、最大の焦点になるのは、やはりテロ対策特別措置法の延長問題だと思います。この問題に民主党は、どう対応していかれるんでしょうか。

 このテロ対策特別措置法というのは、九・一一の直後に、九・一一テロを起こしたビンラディン、そしてタリバン、アフガニスタンにいたわけですね。アフガニスタンを支配していたわけですね、タリバン。そこに対してアメリカが武力攻撃をすると。その時に、日本がどうするかということを問われたわけですね。私は、その時に政調会長をやっていまして、このテロ対策特措法の審議の委員会の筆頭理事、かつ、交渉責任者という立場でした。で、民主党は私と、そして自民党が久間(章生)さん、委員長が加藤紘一さんだったんですね。

あの時の民主党としての整理は、これはアメリカの自衛の戦争であると。つまり九・一一でテロをされた、そのことの自衛権の行使であると。それは国連も認めていたんですね。その自衛権の行使に対して、日本は集団的自衛権というのは認めていませんから。ヨーロッパの国々は、NATO(北大西洋条約機構)の国々の集団的自衛権の行使として、その戦争に協力をすると。で、日本は、集団的自衛権を認めていませんので、武力行使そのものはしないと。だけど周辺で協力をしようという、そういう法律にしたわけですね。もちろん、アメリカの自衛の戦争であるということを国連もキチッと認めていたわけで、そのことも、我々が協力するということの一つの理由になりました。

法案の審議は、確か三日か四日で終わっちゃったと思いますが、我々も協力をして土曜日の審議も応じて、審議そのものは妨げないと、これだけ大変な事態であるということでありました。そして討論の中も、国会で自衛隊を出す前に、あらかじめ承認をするということを、法律の中できちんと認めれば賛成をすると、法案に。党の中にいろんな議論がありましたが、最終的に議員総会で私が一任を取り付けて、そして総理官邸で最後の交渉をしたわけですね。

鳩山(由紀夫)さんが代表、菅(直人)さんが幹事長、私が政調会長。で、総理官邸で、事前承認さえ取れれば我々は賛成できると、いうふうに言ったんですが、結局、事前承認は駄目だということになって我々は反対に回ったと、こういう経緯があります。ですから事前承認さえ取れれば、我々は中身は賛成だよということを明らかにしていたんですね。話はちょっと細かくなりますが、なぜ、じゃあ、小泉さん、あるいは自民党が、事前承認制度っていうのを認めなかったのかというのは、当時、言われていたのは、やっぱり公明党が反対したからだと。

公明党はなぜ反対したかというと、どうも、こうすると民主党は賛成すると。と、自民党と民主党の間にパイプができてちゃうと、つながっちゃうと。それはやっぱり公明党としては困ると。自公政権がいつの間にか変わっちゃうかもしれないと、いうふうに考えたんではないかと私は推測していますが、いずれにしろ、最終的に小泉さんはノーと言って、我々は反対に回ったということです。

しかし、その後、度々、延長するというときには、我々ずっと反対をしてまいりました。それは理由のあることなんですね。つまり、自衛権の行使というのは、それは何年も続く話じゃないんですよ。九・一一テロに対する自衛権の行使というなら、やっぱりそれは、その範囲というのがあるんですね。自衛権の行使というのは、やられたに見合っただけのところまではいいんですが、それ以上にどんどんやるような話じゃないわけです。で、国連憲章だって自衛権の行使を一時的に認めていますが、最終的には国連がキチッとそれを検証して、国連全体で対応しなきゃいけないということになっているわけです。

で、今回の件は、基本的に海での活動なんですが、自衛隊がやっているのは。これはきちんとした国連決議がないまま、アメリカが自衛の戦争をずっと無制限に続けていると。それにいつまでも協力するのは、これはもう自衛権の行使と言えないわけで、やっぱり国連の決議がないまま協力をいつまでも続けるのは、これはおかしいというのが我々の考え方です。もちろん陸では、国連決議がちゃんとあって、今、イギリスやフランスや、アメリカと一緒になってやっているんですね。治安維持活動をやっています。で、小沢さんも一時、言われましたが、ここは国連決議がちゃんとあるんだから、日本も協力したらいいじゃないかという議論はあります。 しかし、陸は大変厳しい状況なんですね、今。イギリスもドイツも、たくさんの人が亡くなっています。そういう中で今の自衛隊を出せるかというのは、これはまた別の判断が必要になってまいります。いずれにしろ、海に関して言えば、明確な国連決議がないままに、だらだらと続けてるということについて、本来、二年間の時限立法、自衛権の行使ということに対する時限立法ということでやったわけですから、とっくにやめていかなきゃいけない話。これが一つです。

それから、もう一つ。最近、テレビなどでも議論されていますが、本当にアメリカは、アフガニスタンのための活動だけなのかということですね。つまり日本は給油をしているわけです。給油をしているんですけども、じゃあ、インド洋に浮かんでる各国の船は、本当にアフガニスタンのためだけにやっているのか。別に海に色分けできないんですね。公海上でやっているわけですから。ただ、そこで給油した船がイラクのために活動していると。あるいは将来、イランのために活動するかもしれない。

と、それはわが国の法律、特措法が予定するアフガンのためだということを超えているわけですね。現に超えているんじゃないかと。その辺をしっかりと検証しないと、説明してもらわないといけないと、いうふうに考えております。それは安全の問題があるとか、いろんなことで政府の方は説明を拒んでおりますが、しかし参議院で逆転したという事態を踏まえて、きちんと説明してもらいたいと。その説明もないままに賛成しろとか、そういうことは有り得ないし、基本的には我々は賛成することはないと思っていますが、しかし、国会の責任として検証する作業は必要ですから、これだけは少なくともしっかりやらせてもらいたいというふうに思います。

それが、この問題に関する我々の考え方で、私は、さっき申し上げた理由で、賛成するということはない。そういう意味では小沢さんの言っているとおりだというふうに思いますが、しかし検証作業というのは、我々の責任としてしなきゃいけませんので、頭からないと言っちゃうと、その検証作業すら飛んでしまう可能性もあるんで、多少、菅さんなんかは含みを持たせていますが、それはやっぱり、きちんとした検証が必要だという趣旨で、おっしゃってるんだと理解をしております。

質問 分権と言われているんですが、地方分権とも言われ、ある人に言わせると、地域主権だという考え方もあって、国と県、市町村と三段階あると思うんですけど、岡田先生は、民主党の考えも含めて、それをどのように将来的に考えておられるか。

 まず私は、分権というときに大事なのは、基礎自治体であると。基礎自治体というのは市町村ですね。という基本的考え方に立ってます。で、民主党も基本的に、小沢代表もそういうふうな考え方に立っているというふうに私は思います。小沢さんは、三百自治体にすべきだということをおっしゃってますが、三百かどうかは別にして、私は基本的に基礎自治体はある程度の塊にする。そこに権限と財源を移すということが地方分権であると。で、中二階である県とか、あるいは道州制とか言われますが、それは二義的な話であると。なぜならば、やっぱり住民に一番近いところにある自治体、そこに自由度を与えることは分権の本質であると、いうふうに考えているからです。

そのときに、じゃあ、市町村、そこに権限、財源を移すというときに、やっぱりある程度の塊にはする必要があると。で、もちろん、いや、私は人口五千の町ですが、それでやって行きますというのは、それでいいと思います。そういう、それぞれの自主性というのは尊重されるべきですが、しかし、例えば人口一万の基礎自治体、町があるとして、人口一万だと役場の規模というのは、大体、百人ぐらいだと思うんですね。一パーセントぐらいです。百人で、いろんなことを任されてやろうとすると、非常に難しいんじゃないかと。つまり、権限、財源がきて、専門的知識を持ってやっていこうとすると、なかなか専門家を育てるところまでいかないんだと思うんですね。そういう意味で、私は最低でも十万、できれば二十万、三十万ぐらいの塊にしていくことが望ましいと思いますが、それは最終的には住民の皆さんの判断だと思います。

それから、道州制の議論というのは、これは経済界からよく出るんですね。私は市町村に権限を思い切って移したときに、例えば今の政令都市ぐらいの権限を基礎自治体に移すということにしたときに、県の役割というのはほとんどなくなります。つまり政令市と県の関係というのはいつも問題になるんですが、ほとんど政令市は自立的にできちゃうんですね。だから基礎自治体、例えば二十万、三十万の塊にして、そこに今の政令市並の権限を移すして、そして財源、権限にもっと自由度を与えるということにすると、県の役割というのはほとんどなくなっちゃうんで、結果として、それを大きくして州にするというのは、結果論としてはあると思いますが、州を作ることを目的にして、地方自治を論じるのは間違いというふうに思います。大事なのは基礎自治体。あくまでも。と、いうふうに思っています。

経済界からは、やっぱり県では小さすぎるんで、州ぐらいの塊にしてもらいたいと、いう声はよく聞くんですけども、逆にいうと、経済活動という意味で見ると、これから人口の減っていく日本で、この一億三千万がやがて一億とか、七千万とかなっていくときに、それを幾つかにまた分けてどうするのという感じはしますね。だから、基本的には基礎自治体と国の二層制で、その間にある県なり州は非常に小さな権限を持つ、そういう存在であるというのが私のイメージです。

質問 世界的にというか、地球的なことで先生が言われていることは、アジアの時代だと。アジアの時代だということの意味について、世界的にアジアの時代だという意味なのか、それもあると思うし、日本的にアジアの時代だというのか、ということも含めて。それで、今、世界的な歴史からいうと、EU(欧州連合)が世界的に一番先を進んでいるんじゃないかと。そういう意味において、日本が大東亜共栄圏とか過去のそんなことじゃなしに、新しくアジア共同体、東アジア共同体ですかね、そういったことを将来的に考えておられるのかどうか。

 ちょっとアジアの話をするのを私も飛ばしましたので、いいご質問を頂いたんですが、EUというのは一つのモデルですよね、将来的な方向性としての。私がアジアの時代というのは、圧倒的にアジアの存在が大きくなっていくと。それは経済の力、あるいは人口。中国、インド、そしてASEAN(東南アジア諸国連合)、日本と、こういう大体、四つの塊だと思いますが、それが協力していくことで、圧倒的にこの地球の中でアジアの存在というものは大きくなっていく。そういう意味でアジアの時代だと。経済力も、そして人口でも。それを背景にした政治力も含めてね、アジアの時代がくると。

そして、日本がアジアにあることは、日本にとって非常に幸運なことであると。このアジアの発展というものを、日本の成長、あるいは豊さ、平和、そういうものにつなげていかなきゃいけないし、逆に日本の、そういう成長とか豊かさとか、あるいは平和というものを、平和で豊なアジアをつくるために使っていかなきゃいけないと、いうのが私の基本的な発想であります。

で、東アジア共同体というのは、私が代表の時に申し上げました。将来的にはそういう方向を目指すべきだと。しかし、当面は経済中心なんですね。経済の統合というのは、もうEUと同じぐらい、総合依存関係というのはアジアの中でも進んでいるんです。そして、それにプラスして、例えばエネルギーとか、環境とか、保健とか、さまざまな協力ができると思います。アジアの中で。

しかし、政治的な統合ということになると、それは、例えば中国というのは、残念ながら民主主義ではまだありませんし、それからASEANの中にも、きちんとした民主主義が機能している国というのはまだ限られているわけですから、そういう意味では、政治的統合というのは長期的な目標で、まずは経済。そして、できるところはしっかりやっていくということだと思います。

で、具体的な提案として私が申し上げているのは、OECD(経済協力開発機構)事務局のような、各国の官僚でも民間人でもいいんですが、それが集まって常設の議論をする場、そして一番基礎的には、まず整合性のある統計を作る場をアジアの中に作るべきであると。そこからだんだん政策提言機関に、それが発展していって一定の役割を果たすと。それが東アジア共同体の事務局的になっていくと、いうことを申し上げております。

質問 農業の問題で一つ。最近、日本の食料の自給率が三十三パーセントとか、三十八パーセントという話をよく聞きますけども、実際は減反をしているわけですね。そういうことを考えると、そういう点がちょっと矛盾しているんではないかと。それからもう一点は、農家の人が農地を売ろうとしても、農業以外には売れないわけですね。そういうふうなことで農家の人も非常に困っておりますと。少なくても自給自足は六割は必要ではないかという場合に、企業も農業に参加できるような時代に入ってきているんではないかなというふうに思いますが。

 減反の問題は、減反している農地が三割ぐらいあると思いますが、これは今の日本の国内の住宅地域と同じぐらいの面積なんですよね。それだけのものがいわば遊んでいる。もちろん転作しているものもありますが、そういう事態です。でも、自給率というときに、米の自給率は実は四割ではなくて、九十パーセントぐらいあるわけです。輸入している部分を除いては。そういう意味で、減反している分を全部、米を作ったら、じゃあ自給率は上がるかというと、そういうことにはならないということですね。

そして、農地の流動化をより高めるということは非常に大事な政策です。ただし、それは農地以外に転用することを自由に認めるということではなくて、やっぱり農業をやりたいと思っている人、今、農業というのは世襲制で、親が農家でないとなかなか農業はできないんです。農地がないわけですから。だから、そういう人も農業を新たにできるようにする。それから会社の参入ですね。そういうこともできるようにする。そのために、会社に売っちゃうと、その後、転用するんじゃないかと農林省は言うんですが、貸し借りはできるわけですから、農地を持った人が所有権を持ったまま貸せるような、そういう仕組みをもっともっと、しっかりと作っていかなくちゃいけないというふうに思います。

そういう中で集約化していくと。今まで、戦後は農地改革をして多くの自作農ができたけれども、結局、そういう限られた土地で、食っていこうと思っても食っていけないわけですから、みんなが兼業農家にならざるを得なかったという、そういうことですよね。だから、早くもっと農地を流動化していけば、もっと集約化は進んだかもしれません。そういった方向で進めて行くことも重要なことことだと。ただし、小規模に兼業でやっておられる所を排除する必要は、私はないと思います。そういう所はそういうところで生き残っていけるような、そういう道も残しつつ進めて行くことが大事じゃないかなと思いますが。

あと、農業でちょっと期待を持てるのは、燃料としてのね、農業というか、例えばブラジルの砂糖キビとか、アメリカのコーンとか有名ですが、ドイツなんかでもバイオディーゼルと言って、菜種油で車を走らせているわけですね。そういうことも含めて、つまり食料としての農業だけじゃなくて、燃料としての農業というのも期待が持てるんじゃないかと思いますが。



質問 公明党が自民党と連立を組んでいますけれども、もし、いま選挙でがたがたになっていますので、解消した場合、民主党と組むということはありますか。

 それは、「たら」「れば」、の話で、相手が決めることですから。公明党がですね。ただ、民主党が、じゃあ、公明党と組むかといったら、私はないと思いますね。で、今、民主党と自民党、自力で勝負したら、私は勝てる自信はあるんですね。だから、公明党と協力しているから自民党は、それなりの強さをまだ保っているんであって、この前の参議院選挙は全く駄目でしたがね。小選挙区、例えば衆議院の小選挙区で、もし公明党が中立になっただけで、ほとんどの選挙区で自民党は負けてしまいますよ。

それは逆に言うと、強力な公明党が応援してくれるという中で、自民党の基盤がどんどん、どんどん、弱くなってきたというのが、サボっていたというわけじゃありませんが、ここの十年の歴史だったと思うんですね。だから、本当に公明党が離れるというか、ニュートラルになるだけで、私は選挙区の状況というのは激変すると思います。

民主党が、公明党と組むかどうかというのは、それは、私は基本的にないと。しかし、自民党から離れるかどうか、公明党の自由ですから。そうなれば、それだけでも大変な影響があると。しかし、公式に答えを求められれば、自公に勝てる民主党になるということです。それは十分に可能です。

質問 と、いうことは、ずばり、民主党は次期衆院選で政権を取れるということですか。

 チャンスは十分ある、ということですね。この参議院で与野党逆転している状況は、最低三年は続くわけですね。おそらく六年ぐらい続く可能性は高い、そういう中で、答えはもう一つしかないんですから。政権交代して、衆議院で民主党政権を作らない限り、このねじれは続くわけですね。ですから、そういう中で我々は大きなチャンスを頂いたと思っています。で、そのチャンスを生かし切って、政権交代を必ず次の総選挙で実現をすると、いうことが私たちの責任であるというふうに思います。ぜひ、皆さんにもご理解いただいて、我々に一度、任せていただきたいというふうに考えています。




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