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2009.05.27|国会会議録

平成21年5月12日 第171回国会 衆議院予算委員会「世襲、経済、地球温暖化、核不拡散について」

岡田委員 民主党の岡田克也です。

きょうは、時間をいただきまして、幾つかの当面の政治課題、そして将来の日本社会のあり方について議論させていただきたいと思います。

まず、先ほど自民党の鈴木議員の方からも議論が出ておりましたいわゆる世襲の問題について、総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。

定義がはっきりしないというふうに総理はおっしゃられると思いますので、民主党が決めている世襲の定義は、同じ選挙区で配偶者または三親等以内の親族が前任者に引き続いて連続して立候補することを認めない、これが民主党の考え方であります。

これは、自民党の中にも同じような考え方を述べられる方もかなりいらっしゃるやに聞きますけれども、総理、現在日本の政治のリーダーに立っておられる総理として、そういう考え方に立つべきとお考えなのか、あるいはそうでないのか、そして、それはなぜなのか、簡潔にお話しいただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 先ほど鈴木先生からの御質問にも似たような御質問があったと記憶しますが、政治家の、政治家というのは多分、国会議員に限っておられるのだと思いますので、県会とかあるいはほかは知りませんが、国会議員の世襲の問題につきましては、今の定義でいくと、麻生太郎は世襲ではないということになるわけですね。だからいいなんと言うつもりはありません、それほど安易な話だとは思いませんので。

ただ、二世というのだったら、私は五世ぐらいになるだろうと思います、いろいろな意味で、おたくの鳩山さんも四世ぐらいになられると思いますので、いろいろいらっしゃるんだと存じます。

政治家の親族だからといって、安易に、地元で当然のごとく立候補なり公認が与えられるというのは、私としては、ちょっと問題なんじゃないのかなというのは、率直にそう思っております。先ほど鈴木議員の中にも御意見がありましたように、三重一区なら三重一区において、その三重一区の支部内できちんとした討議を経て何とかというんならともかくもということだと思いますので、私は、それは基本的に賛成であります。

また、注意しておかないかぬのは、有為な人材であったけれども、それがたまたまおやじが政治家、だから政治家になれないということになりますと、これまた逆に問題になろうと思います。こういったことは、法律上、被選挙権の話になりますと、これは憲法上という話にもなるんだと思います。そういったところでこれは慎重な検討が必要なんだと思いますが、いろいろな意味で、各党でいろいろな議論がなされている、みずからルールをつくるというのはいいことだ、私は基本的にそう思っております。

今、自民党の中でもいろいろ議論がされていると聞いておりますので、大事なことは、有能でかつやる気のある人、そういった人が広く選ばれてくるシステムをいかにつくり上げるか、民主党より自民党の方がいいのか、自民党より民主党の方がいいのかという話にもなろうと思いますので、そういう選び方の制度というものをきちんとつくり上げていくというのが各党にとりましても大事なことだと思っております。

岡田委員 今、総理が言われた中で、たまたま近い親族に政治家がいた場合に、有力な、能力のある人が出られなくなるじゃないかと。ここは、私はこう考えるんです。本当にその方が有能であれば、もちろん、今でも有能な二世議員、三世議員、たくさんおられるわけですけれども、本当に有能であれば違う選挙区から出ればいい、それだけのことだというふうに思うわけですね。

そして、一定のルールに基づいてという総理のお考えのようですけれども、私は、今の小選挙区制度のもとで、基本的に一つの党から一人しか出られない。それはそういう制度を我々が選んだわけですね。

そして、日本のメンタリティーとしても、そういう人をつい選びがちな、そういうメンタリティーも現にあると思います。それは悪いことではないんですけれども、そういうメンタリティーはある。だから、いろいろな条件に恵まれて、地盤、看板、かばん、そしてそういうメンタリティーもあって、二世が選ばれやすいという風土があることは間違いありません。

しかし、そのことを放置すると一体どうなるか。余りにも同じような経歴の人間ばかりが集まってしまった、その結果として、日本の民主主義が弱くなるんじゃないか。それは、党とかあるいはその候補者とかそういう次元を超えて、日本の民主主義そのものが非常に同質的になって、狭くなって、脆弱になるんじゃないか、それこそが私はこの問題の本質だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

麻生内閣総理大臣 一番根源的なところだと思いますので、同様な、似たようなのばかり集めるとやはり会社もだめとよく言われるのと同じように、ちょっとまた具体的なことを言い過ぎると多々問題になりますのでこの程度でやめておきますが、そういった意味では、基本的に、同様な人ではなくて、いろいろな違った、思想信条はともかくとして、その他の部分に関してはいろいろな経歴の人を多く集めた方が、より柔軟性、より強さが出てくると思っております。それは、各党においてもそういった人を集める努力は大いにされるべきだと思いますし、余りにも似たようなのばかり集めないようにする努力というのはすごく大事なところだと、私も基本的な考え方に賛成であります。

岡田委員 そこで、総理お考えの、我が党のように公認そのものを同じ選挙区からは認めないという考え方に立つのか、あるいは、ちょっと先ほど総理が言われた、一定のルールで、公募して手続を経て、支部で、公募手続の中で決めればいいというふうにお考えなのか、どっちなんでしょうか。

麻生内閣総理大臣 これは目下、それこそ党改革委員会か、あそこで検討している最中だと思います。これは岡田さん、選挙ですから、勝てそうな候補者をやはりどうしたって各選挙区では考えてくると思いますので、その意味では、優秀だけれどもたまたま世襲だからというのに当てはまるからというので立候補させない、その人が無所属で出る、片っ方の人が公認になったけれどもこっちが落ちちゃうというふうな形を考えるとき、やはり当選する確率の高い方にどうしても行こうとするのは、僕は、選挙をやりますと、どうしてもそういうことになってくるんだと思っております。

したがいまして、どういったようなルールにするのがいいのかというのは目下検討中で、ちょっと今の段階でそれに細目詳しいわけではありません。

岡田委員 私も申し上げましたように、ですから、二世、三世候補というのは強い候補なんですね、基本的には。ですから、政党としては出したくなる、そういう誘惑は当然あります。我々もそういうふうに今までも考えてきました。しかし、そのことに甘えてしまうと、中長期的に見ると、やはり政党そのものにも問題が出てくる、ここが一番大事なところだと思うんです。

そこで、麻生総理、先ほどルールの話をされましたが、実は自民党にはもうルールはあるんですね。例えば、二〇〇四年六月に、これは自民党ですけれども、党改革検証・推進委員会、当時の幹事長であった安倍さんが委員長をやられました。ここで決めたことは、空白区及び補欠選挙における候補者選考は公募を原則とする、そういうルールが既におありなんですけれども、そのことは御存じでしたか。そして、このルール以上に何かお考えなんですか。

麻生内閣総理大臣 幹事長代理のときじゃなかったですか、されたと思いますので。その当時何をしていましたか、総務大臣だったか、政調会長だったかしていたと記憶しますけれども、何回か御相談をさせていただいたので、その内容について細目詳しいわけではありませんけれども、公募というのはいい方法なんじゃないかと私の方が言ったと思うぐらい、広く集めて公募したらいいじゃないかという話はした記憶があります。その後、それがどれぐらい細目が詰まったかの内容まで正確に全部知っているわけではありませんけれども、事のいきさつを知っております。

したがって、公募という方式というのは、公認の今現職の人ですら、こういった公募でやるというのは決して悪い方法ではない。現職優先というのではなくて、現職であろうとも公募して、もっとほかのいいのが出てくるという確率があるのであれば、その人たちが出る確率を与えないと、中選挙区と違って、小選挙区になりますと、なかなか新しい人が出にくくなるという問題があろうと思いますので、公募というのは、岡田さん、いい方法だ、私は基本的にそう思っております。

岡田委員 私は、いい方法かどうかを聞いたのではなくて、既に自民党にこういうルールがありますねということを確認したわけです。(麻生内閣総理大臣「はい、ございます」と呼ぶ)あるというふうに総理もおっしゃっておられるわけです。

そこで、私は、個別のことに触れるのはいかがかと思うんですけれども、小泉総理の後継者の選び方について、二〇〇八年九月二十七日に、地元の後援会、横須賀の後援会で、次男をよろしくと。親ばかぶりを御容赦いただき、私が賜った御厚情を次男にもいただけますとありがたく存じます、こういうふうに言われたということであります。この後援会で突然、九月二十七日、小泉さんが次は出ないということは二十五日に大体明らかになったと思いますが、そのわずか二日後に地元の後援会でいわばみずからの次男を後継指名した。

そのことと、先ほどの、原則公募で選ぶんだということとの関係はどうなっているんですか。

麻生内閣総理大臣 神奈川何区だっけ。横須賀ですけれども、神奈川十何区の経緯をちょっと、岡田先生、よく詳しく知りませんので何とも申し上げようがありませんが、少なくともその選び方に関しましては、神奈川十何区の自由民主党の支部で、後援会ではなくて神奈川十何区支部において、党支部大会なり党支部の幹事会なりを開いた上できちんと手続を踏まれるという手続が抜けているのかなという感じがいたします。

いずれにしても、やめられた後、神奈川十何区では今現職が出ません、したがってその後の公募を募りますという形で開いて、その上で、十何区で支部大会を開かれるなり支部の幹事会でそれを決定されるという手続をされた方がより明確になったのではないかという感じがいたします。

岡田委員 こういう形で、非常に有力な議員が選挙直前になって、あのときはもう解散近しと言われていたわけですから、近くになって、実は自分は次は出ないんだと。突然そう言われても、では次、手を挙げるチャンスがあるかというと、時間的にもう事実上ない、だから、では親族に、こういうことになるというケースは幾つか自民党の中に見られるわけで、やはり私はこういうことをきちんと対処されていくべきではないかと。

もちろんそれは政党の判断ですから私はこれ以上言うつもりはありませんけれども、少なくとも民主党は、みずから志があって、そして努力をして、そういう人が国会議員になりたいという思いの中で頑張れば国会議員になるチャンスがある政党である、これが私は民主党だというふうに考えております。自民党がこれからこの問題をどういうふうにお考えになるか、それはこれから麻生総理の、総裁のさばき方を注視していきたいというふうに考えております。

もう一つ、この世襲の問題、お金の問題というのがあります。

先ほどのは内規で私たちはやろうとしているんですけれども、これは、我々、内規ではなくて法律改正をしようというふうに考えています。政治資金規正法の改正。それは、国会議員に関係する政治団体が、その政治団体の代表者である国会議員が引退したり、あるいは亡くなった場合に、その代表者を、配偶者ないし三親等以内の親族にそのまま引き継ぐことは禁止をしよう、あるいは、配偶者、三親等内親族にその政治資金を贈与するということも禁止をしよう、こういう法案の提出を考えているわけですけれども、総理、賛成していただけませんか。

麻生内閣総理大臣 今伺った中なので詳細がちょっとわかりませんで、うかつなことは言えませんが、政治団体の代表者というものにある程度制限を加えるということになるんだと思います。

これは前にも、たしか政調会長のころに議論したことがあるんだと思います。憲法二十条だったか二十一条だかの中に結社の自由というのがあるんだと思いますが、その結社の自由との関係において過度な制限にならないかというところが一番問題なんだと、当時法律の専門家の方から言われたなどと思っております。

もう一点は、引き継ぐというのは仮になくても、新たな団体をそこに別につくって、別の政治団体ですよ、その新たな団体に対して寄附するということになると、実効性という意味からいったらなかなか上がらないんじゃないのかなというのが当時指摘された。

たしかいろいろな御意見があのときいっぱい出たんですが、そういった検討すべき課題が多くあるなと、当時いろいろ話をした記憶があります。ちょっと正確な記憶ではありませんけれども、たしか今申し上げたような経緯があったと記憶をいたします。

したがいまして、この問題に関しましては、いろいろな制限をかけるというのは正しいんであって、いろいろなところでそれが土地に化けちゃったとかマンションに化けちゃったとかいう話をよく聞いておられるのは、御自分の身を考えた上でしゃべっておられるのか、勇気ある発言だ、私自身はそう思って聞いておりますよ、まじめな話。すごく大事なところですから、これは。

そういった意味では、私どもは、こういったところはすごくきちんとしておかないと、先ほど鈴木議員の質問になった不信を招くということになっていくということだと思いますので、きちんと対応すべき大事なところだと思っております。

岡田委員 この政治資金、いわば相続税、贈与税のかからない資金の移動ということに対して、私は、自民党の中にもさまざまな議論があるんだと思います。

この予算委員会で、数年前でしたけれども、当選一回の議員だったと思いますけれども、そのことを取り上げられたことがございます。やはりスタートから違うんだ、資金力、そこだけで圧倒的に違うんだ、これは不公平じゃないかという議論をされた自民党の委員がおられました。私は、聞いていて、ああ、自民党の中にもやはりそういう意識があるんだなということを改めて感じました。

この問題も含めてやはりしっかりと議論して国民の政治不信を取り除いていきたい、そういうふうに考えておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

最後に、企業・団体献金の禁止の話について。

これは、いろいろな議論があると思います。私も、企業・団体献金がすべて悪であるというふうには思っておりません。ただ、いろいろなものが紛れ込むということもリスクとしてあるわけで、そういうことも踏まえながら、実は、企業・団体献金を禁止していこうという流れは、既に一九九四年の、当時の細川総理と河野自民党総裁との間の合意でレールが引かれたわけですね。

あのときに決めたことは、五年間の限定で資金管理団体に限り献金を認めますということを決めたわけです。五年たって、一九九九年に、政治資金規制法再改正をして、そして政治団体への献金を禁止するということで約束を果たされました。しかし、政党支部に対しては、これは献金が認められる、こういうことであります。

私は、それは一つの考え方として、そういう考え方もあると思いますが、本来の政治献金、企業・団体献金を禁止するという趣旨からいえば、本当は、政党支部、実態は資金管理団体とどうやって線を引くのかという非常に難しいところもあるわけですから、私は、政党支部も含めて規制していくというのが大きな流れに沿った結論ではないか、こういうふうに思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

麻生内閣総理大臣 これは、基本的には、政治というものを考えました場合に、金がかかるというところだと思います。

例えばはがき一枚にいたしましても、これを十万人に配れば、掛ける百円だ、百二十円だ、まあ八十円、いろいろな表現がありますけれども、印刷代を含めましたらとかいろいろなことになりますと、それだけですぐ数千万にいく可能性が高いわけですから、そういう面で、年に二回ぐらいの季節のあれをやったってそれぐらいかかるという話で、こう幾らでも話が出てきますので、そういったことを考えると、金がない人じゃなきゃ出られなくなるというのは、これはもっと問題なんだ、私はそう思っております。

したがって、地元で、みんなで金を出してあの人を、アソウカツヤなりオカダタロウなりを出そうということになったときに、あれをみんなで応援してやろうやということになって集めるときに、僕は、企業としてもそれに関して賛成だ、ああいう人が出てくるのがいいということで考えるときには、労働組合含めて、これは、団体、企業というものは、政治活動の自由というものを考えたときに、やはりそれに参加できるというのは当然のことなんだ、私はそう思っております。これが大前提だと思っております。企業も団体も、民主主義のコストというものに関して、それを何らかの形で払うという意欲なり資格なりというものはきちんとしておくべきなんだと思っております。

いずれにしても、長い間の議論を経てこの話はここまでずっといろいろ煮詰まってきて、これまで何回となく、私が当選してから後も何回となくこれは改正されたんだと思っておりますので、いろいろ、各党において、もしくは各会派においてこのルールを詰めていくんだと思いますが。

いずれにしても、岡田先生、これは定められた、決まったルールというものができたら、要は、後はそれをきちんと守ってもらわぬとどうにもならぬのだと思うんですね。

だから、やはりそういう意味では、守る守らないという話にならぬと一番いかぬのであって、何か起きるたびにいろいろルールを改正するというのが起きますが、あれはルールに違反しているからということになっておりますので、ルールに違反しないというのが大前提で考えないと、幾らやっても下に潜っていくだけの話になっていって妙な形にゆがんでいくのは、きちんとしておかねばならぬ大事なところかなと思っております。

岡田委員 ルールを守らなければならないのは当然であります。

ただ、先ほど私申し上げましたように、細川政権、そして一九九九年の改正へと、大きな流れは企業・団体献金をやめる、そういう流れの中で累次の改正が行われてきた。にもかかわらず、現実はそうはなっていないということについて、私は、やはりここはぜひ胸襟を開いて、我々も法案を出しますから、ぜひ賛成をしていただきたい、そういうふうに考えております。

さて、次に、経済の問題について基本的な認識の話をちょっと総理にお伺いしたいと思います。

去年の十月三十日の総理の記者会見、追加経済対策を発表されました。そのときに、百年に一度の危機だという表現を総理は使われたと思います。より正確に言うと、現在の経済は百年に一度の暴風雨が吹き荒れている、こういうふうに言われたと思うんです。

これは、私は実は大変違和感を感じた言葉なんですけれども、この百年に一度の危機、経済危機というのは、具体的に何をおっしゃったんでしょうか。

麻生内閣総理大臣 これは、たしか一九〇七年に、J・ピアモント・モルガン、今でいうJPモルガンのもとですけれども、このJ・ピアモント・モルガンという人が、当時の信託銀行の貸し付けの失敗から、えらい取りつけ騒ぎが起きてぐちゃぐちゃになったのが、アメリカのあの時代にありました。当時は、まだFRBもできる前の話です。そこで、ピアモント・モルガンが多額の金を出して、いろいろ集めて、結果的に流動性資金が全く動かなくなりましたものですから、そういう危機を救ったのがJPモルガンのもとなんですが。

そのピアモント・モルガンという人だけに頼っておくのはいかがなものかということで、たしかそれから五年、六年がたった一九一三年にFRBという、連邦準備銀行というのができた経緯。これが多分、一九二九年の始まる前、アメリカで起きた一番大きな騒ぎで、これが百年と、グリーンスパンという人が最初にこの百年に一度という言葉をアメリカで使った人だと思いますが、多分この人もピアモント・モルガンのこの事件をもとにして百年に一度と言ったんだ、私はそう思っております。

私自身は、たまたま学校で習ったものですから、ああ、ちょうど百年たっているなという記憶がございます。

岡田委員 グリーンスパン元FRB議長が、百年に一回の危機だという表現を使った。グリーンスパンさんは、金融危機についてそういうふうに言ったと思うんですね。確かにアメリカの金融は、おっしゃるように百年に一回の危機だ、そう言っても決して大げさではなかったかもしれません。

しかし、総理が発言されると、これは金融だけではなくて経済全体、しかも日本の経済が百年に一回の危機に今直面している、今現になっている、そういうふうに私は聞こえたと思うんですけれども、そういう意味も込めてお話しになったんでしょうか。

麻生内閣総理大臣 九月の十五日のリーマン・ブラザーズに先立って、その他の、住宅金融公社みたいな、半分公社みたいなものが、フレディーマックだ、ファニーメイだというような会社が、いずれも倒産の危機になった。あの時代を経て九月のいわゆるリーマン・ブラザーズにつながっていくんですが、このときの話というのは、私どもにとりましては、金融というものに関しては、これはしんどくなるなと正直思いました。ただ、これほど深くなって、クライスラーが倒産するの、ゼネラル・モーターズがどこかに何とかなるのというようなことまで想像していたわけではありません。

ただ、そういうところまでいきますと、我々としては結果として、そういう話が出るぞというお話が出ましたものですから、イコール、これは日本の輸出には物すごく大きく響いてくるな、そのときそう思いましたので、うちの方は、金融は九七年に一回手痛い目に遭っておりますので、各銀行の対応は極めて慎重に対応しておられましたので、今回のいわゆるサブプライムローンというものに余りひっかかることなく、今回はくぐり抜けた、欧米に比べて。

ところが、実物経済の方は輸出の部分が非常に多かった。日本の場合は、GDPに占める比率は一五、六%だとは思いますけれども、それでも非常に大きな部分、自動車、それから家電、精密機械といったような、輸出産業に頼っている部分が多かった部分が、アメリカに輸出できない。アメリカへ輸出がとまったもんだから、中国からの輸出もできないので、中国にも輸出できないという関連、全部関連してきて、結果として日本に大きく響いてくるという可能性をこれほど大きいと思ったわけではありません。これほど大きいとは思っていませんでしたけれども、ああ、これは実物経済の方はしんどくなるなという感じは、正直ございました。

岡田委員 私は、百年に一度の危機という総理の発言に非常に違和感を感じました。大変深刻な状況であるということは間違いありません。しかし、百年に一度の危機というふうに言いっ放しで、一国のリーダーが言われる、これは、私は、国民に大きな不安を抱かせたというふうに思います。

私は、一国のリーダーであれば、あのとき言うべきせりふは、私が百年に一回の危機にはしない、きちんとした対応を打つ、そういったことを発信すべきだったんではないかと。百年に一回の危機が来る、そして経済対策が言われましたが、実は一周おくれの経済対策。具体的な対策は、そのとき有効な対策は打ち出されなかった。私は、そのことが、国民全体の心理を非常に冷やしたのではないかと。危機に際してのリーダーとしての言葉としては、非常に軽率であった、軽かったというふうに私は考えております。

次に、今の経済の状況について、今、総理は先取りして言われましたけれども、十―十二月期のGDPの成長ですね。実質マイナス三・二%ということですけれども、その中で、ほとんどが外需であると。内需のマイナスは、実は〇・一。寄与度もマイナスの〇・一。だから、マイナス三・二のほとんどは外需によるものである。マイナスの三・一とか三・〇とかということですね。つまり、十―十二月、がくんと落ち込んだほとんどは、輸出と輸入、外需によって説明されるということであります。

その認識は、数字の問題ですから共有されていると思いますけれども、では、先ほど総理もおっしゃった、二〇〇七年で輸出の依存度、つまり輸出の実質GDPに占める割合は一五・六%です。しかし、二〇〇一年、小泉政権が始まったころの輸出依存度、つまり輸出の実質GDP比率は一〇・二。ずっと一〇%くらいで来ているわけです、日本は。ところが、この二〇〇一年から二〇〇七年までの六年間で、一〇・二が一五・六にふえた、こういうことだと思うんですね。

ですから、私、二〇〇五年の総選挙のときのことを思い出すんですけれども、小泉総理は、改革の結果として経済成長をしているんだ、こういうふうに強調されたわけですね。もう一つ言われて、その改革の成果というのは、やがて国民にひとしく均てんされるということも言われたわけですけれども、とにかく、改革の結果、成長している。

しかし、今振り返ってみれば、当時も私たちは主張したわけですけれども、今振り返って、より明らかになったことは、実は輸出がふえていただけだと。だから、日本経済の構造改革、体質転換というものは、この小泉・安倍時代にほとんど進まなかったと言うべきではないか、単に輸出がふえて潤っていただけじゃないか、こういうふうに私は思うんですが、総理の御認識、いかがですか。

麻生内閣総理大臣 少なくとも、二〇〇一年から小泉内閣が終わるまでの間、約七年だろうと思いますが、岡田さん、あのころの日本というのは、何となく閉塞感みたいなものが漂っていて、その大きな理由として不良資産やら何やらのものがありましたので、これを一掃する、不良債権処理の一掃というようなものに関しては、あの改革というのは極めて大きな効果を有したんだ、私自身はそう思っております。

その上で、今言われましたように、この六年、七年で見ますと、いわゆる内需のかなり大きな要素を占めます公共事業というものは、国内で見ますと、一番多かった十四兆五千億から、七兆を切りましたので六兆円台まで、七兆円ぐらいまで下がってきております。その意味では、内需というものを、経済、財政再建、いろいろな理由もありましたでしょうが、公共事業は悪というようなイメージも当時かなり吹聴された時代でもあって、公共事業は大幅に減り、特に地方の、投資の部分でも三十二兆が十五、六兆まで下がったと思いますので、地方の公共事業が大幅に減っていったというのはこれは間違いない事実だと思います。その意味からいきますと、内需の中に占めます官公需要は大幅に減ったというのは事実だと思います。

傍ら、今言われましたように、輸出はその間、自動車、家電というのは、省エネというのが結構いろいろ言われるような時代にもなりましたし、アメリカやら何やらに限らずヨーロッパでも、多くの自動車会社が海外に出ていったりして、そういった部分からいきますと、輸出はかなりな部分でそれを補ったことは事実だと思います。

したがいまして、今言われましたように、国内の改革に寄与したところもある程度認めていただかないと、丸々それが意味がなかったということにはならないのではないかと思います。

岡田委員 私は、小泉改革そのものを丸ごと否定していることはありません。

私がいつも言っておりますのは、小泉改革は二つ評価できる点がある。それは今総理もおっしゃったことなんですけれども、一つは不良債権の処理を比較的迅速に進めた、これは大変だったと思います。そしてもう一つは、公共事業、需要喚起策としての公共事業という手段をとらなかった、むしろ減らしてきた。この二つは私は評価できる点だと思います。

その上で、しかし、改革の結果景気が回復したというけれども、実質的には、それは円安、あるいは金利安を背景に円安があって、その円安に基づいて輸出がふえていっただけではないか。本当の意味での日本産業の構造転換というのはまだ手がついていない。それをきちんとやっていくことが我々の責任である。そのことを確認しておきたいと思います。

時間も限られておりますので、地球温暖化の問題についてお聞きしたいと思います。

総理も御存じのように、今、二〇二〇年の温室効果ガスの削減目標、いわゆる中期目標について、政府の方で六つの案をお示しになって、最終的に六月中に一つにすると総理がおっしゃっているわけですけれども、今議論されているところであります。

私は、この六つの案を見ておりまして、例えば経済界の一部がプラス四%案、これは一九九〇年比ですね、ということを言っておられます。これは私は、具体的な中期目標の数字としてはあり得ない数字だろうというふうに考えるわけです。つまり、京都議定書で定めた数字はマイナス六%であります。それが逆に九〇年からふえてしまう、数字は。二〇二〇年にやるということでありますと、結局、一たん減ってまたふえるということになるわけですね。

ですから、私は、こういったプラスの数字、あるいはプラス・マイナス・ゼロに近いような提案というのは案にならないんだというふうに思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

麻生内閣総理大臣 この温室効果ガスという話なんですが、これは今、御存じのように、六つの案を示して、目下、パブリックコメントにかけております。いろいろな御意見をたくさんいただいておるというように理解をしております。

私どもは基本的に、今の一から六までの間のどこになるかということを考えるときに、前回の京都の最大の失敗は、アメリカとか中国とかいういわゆる排出大国というか、そういった排出の量の多い国々がこれに参加していなくて、世界の約三割、三割五分程度しかこれに参加し得ないものになったというのが最大の失敗。アメリカの参加しない国際連盟がだめになったのと同じような形になった、私にはそう思えます。

私は、今回の中期目標は、これは間違いなく、地球温暖化というものに対抗することにきちんと貢献するというのが一番。そして、アメリカ、中国、最近ではインド、ロシアなどいろいろありましょうけれども、すべての主要排出国、主要経済国が参加するような国際的な枠組みにしなけりゃならぬ、これが二つ目。そして、単なる、これだけといっても、現実がついていかないような数字を掲げても、ほかの国が入ってこないとか現実にできないということになるのを避けたいと思いますので、経済面でもこれは実行可能でないといかぬ。

今度のパブリックコメントをかけましても、いわゆる御家庭の方々から個別のものも随分来ていますが、その中を見てみると、うちの家庭にかかるコストはどれくらい上がるんですかという御質問というのは結構多いと思っております。そういった意味では、国民生活全般にわたってきちんとしたものを、説得力を持たなきゃいかぬなどなど、いろいろなことを考えて最終的に決めにゃいかぬと思っておりますので、現時点でこれをどうというのを今の段階で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、六月ぐらいまでには私どもとしてきちんとしたものをお示ししたいものだと考えております。

岡田委員 六つの案それぞれ、その案を採用した場合にどういう負担がかかるかということも述べられております。国民に当然負担がかかる話、私はそのことをしっかり述べるということは大事だと思います。

しかし、私は、あの六つの案、例えば一番厳しい案はマイナス二五%、これは民主党が国会に法案として出しているものと同じ数字なんですけれども……(麻生内閣総理大臣「六番」と呼ぶ)はい、六番ですね、マイナス二五%、一九九〇年比。これなどを見ていて感じるのは、大きな負担がかかるということは書いてあるんですけれども、しかし、これは日本だけではどうしようもない問題ではありますけれども、では温暖化対策を講じなかったときにどういうマイナスが人類全体にとってあるのかということについて、しっかり述べていないし、カウントもしていないわけですね。例えば、水位が上がる、気候が不安定になる、水の問題、食料の問題、さまざまな問題があるからこそ温暖化問題に真剣に取り組まなきゃいけないということになっているわけですけれども、そういうことが結局カウントされていない。

あるいは、総理御自身もグリーン・ニューディールということを言われているわけです。こういう需要不足の時代にあっては、温暖化対策をとることでそこに雇用も発生するし、新たな産業も発生する、そういうことのメリットもきちんと入っていない。そして、マイナスだけ強調する。これは私は一種の世論誘導だと思うんですね。だから、そういうことも含めてきちんと説明して、その上でどれがいいかということを求めるべきだと思いますが、いかがですか。

麻生内閣総理大臣 この中期目標検討委員会というところでは、世界全体で排出削減が、仮に今岡田さん言われたように実施されない場合には、洪水による被害というようなものが起きたり温暖化による影響というものの被害コストが増大するといった側面については同時に分析を行っているところなんですが、その分析結果も示しつつ国民の意見を伺っている、あのパブコメを見ていただくと結構出ていると思うんですが。影響被害というものは極めて、今言われたように長期的な課題でもありますので、被害コストを全部網羅して詳細というのはちょっとなかなか困難なんですが、いずれにしても、日本については、これは個々の選択というものに応じた被害コストを出すということもちょっとなかなか個別にやるのは、百年ぐらいの話を計算しなきゃならぬというので結構難しいところがあろうと思います。

いずれにしても、洪水による被害とかそういったいろいろな問題が起きてくるという点は、我々が言っているのと同時に、いろいろな雑誌や新聞等々でこの種の話は既に十分意識をされてきつつある問題なんだ、私自身はそう思っております。

岡田委員 総理、やはりここは、過去の失敗というものをきちんと反省をして、その反省に基づいて次のことを考えるべきだというふうに思うんですね。

反省というのは、要するに、二〇〇七年度の日本のこの排出量というのは九%増ですね。ですから、六%減らさなきゃいけないときに九%もふえちゃっているんです。もう京都議定書の期間に入っているわけですよ。だから、この経済危機の中で一時的にはその排出量は落ちるかもしれませんけれども、しかし、本来減らさなきゃいけないのがむしろふえちゃっている。この十年間、一体何をしてきたのかと。

例えば、石炭火力発電所はどんどんふえました。それは、原子力が落ちて稼働率が上がっているという部分もありますけれども、しかし、量的にもふえているんです。電力会社からすれば、あるいは民間の企業からいえば、石炭は安いし安定的です、地域的に偏在していませんから。だから、ほっておいたらどんどんふえるのは当たり前です。しかし、そこにやはり地球温暖化という視点を持って、政府が何らかの歯どめをかけなきゃいけなかった。それを放置していた結果としてどんどんふえてしまった。

ですから、そこのところをしっかりと踏まえて、これから、科学の要請に基づいてこれだけは必要だという数字はあるわけですから、その数字と整合性のある目標をつくっていただきたい、選んでいただきたい。そのことを申し上げておきたいと思います。

限られた時間ですが、核の問題について、先ほども議論が出ておりましたが、少し申し上げたいと思います。

総理は、オバマ大統領のプラハでの演説について、これまでのアメリカ大統領の演説で最も印象的で極めて重要だというふうに答弁されました。一国のリーダーとしてそういう認識を持っていただいたことは、私、大変うれしく思っております。

ただ、この核の問題について、では日本はどうするのかという問題があります。もちろん総理は、国連の中で決議を毎年毎年やってきた、それはそのとおりです。しかし、例えば、アメリカが核の先制使用も辞さずとブッシュ政権の時代は言っていました。今もそれを明確には否定していないと思いますけれども、そういったことに対して日本政府は、私はむしろ核の先制使用はやめるべきだと言うべきだと考えますけれども、今までの国会での外務大臣の答弁などを見ておりましても、いや、核の先制使用を否定すると核の抑止が弱くなるから、それは望ましくないという答弁もされています。

ここのところはどうなんでしょうか。核をなくしていくんだ、減らしていくんだという基本的考え方に立てば、やはり核の先制使用は少なくともやめる、そういった考え方を世界の中で共通の考え方として持つ、その先頭に日本は立つべきじゃありませんか。

麻生内閣総理大臣 これは基本的にはおっしゃるとおりなんですが、現実の今、国際社会の中においては、いまだに核戦力というのを含む大規模な軍事力というものが存在しているという大前提をちょっとまず忘れず、我々は直視せにゃいかぬところだと思っております。

その上で、核兵器だけを他の兵器と切り離して取り扱おうとしてもこれはちょっと現実的ではありませんので、抑止のバランスを崩すことになりかねませんので、一国の安全保障を考えたときにおいては、これは結構大事なところだと思っております。

もう一点は、当事国の意図、考え方というものに関しては、これは岡田さん、何の保証もない先制不使用というのは、これは検証の方策が全然ありませんから、言うだけ。うちも先制不使用ですとみんな言うだけで、その方策がありませんので、先制不使用という言葉だけに頼るというのは、安全保障上はこれは十分を期するということにはならないということになろうと思います。

これを持っておりますのは、アメリカ以外の国、NPT等々に参加していない国というのは幾つかあるので、こういったものも含めて考えにゃいかぬというところが最も難しいところだと思いますが、基本的な流れとしてはそのとおりだと存じます。

岡田委員 もう終わりますけれども、やはり核兵器というのは特別だからこそ、オバマ大統領もプラハでわざわざ演説をし、そして世界も議論しているわけです。

例えば、ほかの大量破壊兵器、生物化学兵器については、禁止をするということはもう確立しているわけです。残された核兵器について、少なくとも先制使用は認めない、あるいは、核を持っていない国に対して核兵器を使用することは即違法である、そういう規範をきちんと確立する。日本がリーダーとしてその先頭に立つ。そのぐらいのことがなければ、単にアメリカの大統領がオバマ大統領にかわって、核軍縮あるいは核不拡散に熱心な大統領が出てきたからそれに対して調子を合わせているだけではないかというふうに見られかねない。

やはり、核の傘にあるといっても、今申し上げたようなことはきちんとできることだというふうに私は申し上げておきたいと思います。

また引き続き議論したいと思います。ありがとうございました。




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