岡田外務大臣会見記録(平成21年9月17日)
岡田外務大臣会見記録(平成21年9月17日(木曜日)0時50分~ 於:外務省会見室)
○冒頭発言-「密約」問題に関する調査命令
○「密約」問題
○米軍再編問題
○インド洋における補給支援活動の延長
○事務次官会見の廃止
○北朝鮮問題
○副大臣、政務官に関する人事
○国家戦略室と外交政策の関係
○日米外相会談
○軍縮・不拡散
○集団的自衛権
○東アジア共同体
○日中関係
○核の先制不使用
○WTO交渉
冒頭発言-「密約」問題に関する調査命令
(外務大臣)皆さん、こんばんは。時間が遅くなってしまいまして恐縮です。このたび外務大臣を拝命いたしました岡田克也です。よろしくお願いします。先ほど官邸で既に記者会見を行いましたので、重なることは申し上げないようにしたいと思います。またご質問があればお聞きいただきたいと思います。本日は先ほども少しふれました密約の問題について資料をお配りさせて頂きました。いわゆる「密約」の問題は、外交というのは国民の理解と信頼の上に成り立っていると考えていますので、そのような意味でこの密約の問題は外交に対する国民の不信感を高めている、結果として日本の外交を弱くしていると思います。私は従来、この密約の問題は、外務大臣なり総理大臣、つまり政治家が自らイニシアチブを発揮しなければならない問題であって、総理や外務大臣が「密約はありません」と明言する限りは事務方も同じように言うことしかないのであって、まさしく政治家のリーダーシップを試されているとかねがね申し上げてまいりました。
このたび外務大臣になりました、この機会を捉えて、いわゆる政権交代という一つの大きな変化を機会として、この密約を巡る過去の事実を徹底的に明らかにし、国民の理解と信頼に基づく外交を実現する必要があると考えております。
そこで、国家行政組織法第10条及び第14条第2項に基づく大臣命令(PDF)を発し、下記4点の「密約」について、外務省内に存在する原資料を徹底的に調査をし、本年11月末を目処に調査結果を報告することを求めたものでございます。作業の進捗状況については、随時報告を求め必要に応じて指示を仰ぐように併せて求めているところです。
一 1960年1月の安保条約改定時の、核持ち込みに関する「密約」
二 同じく、朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動に関する「密約」
三 1972年の沖縄返還時の、有事の際の核持ち込みな関する「密約」
四 同じく、沖縄返還時の現状回復補償費の肩代わりに関する「密約」
ということでございます。
先程、省議が開かれまして、その場で私から薮中事務次官に対してこの命令を発しと言いますと大げさですけれども、徹底的に自ら自浄能力を発揮して既存の資料の調査を徹底する。そのことを求め、次官の方からはそれに対してそのことを実行するとお返事を頂いたところです。
なかなか大変な調査になると思います。聞くところによりますと、日米安保関係の関連ファイルが約2700冊、沖縄返還関連が570冊ということです。これを一つ一つにあたってもらうことになります。マンパワーが足りないということであれば、在外公館から一時的に職員を呼び戻して、経験者その他理解する能力のある皆さんに11月末まで残ってもらって作業してもらうと考えているところです。
薮中事務次官の方からは、9月25日に調査を開始して約6週間位を目処に原資を調査して、その後2週間を目途にその精査取り纏めを行って、11月末に大臣に報告するというお話しを頂いているところです。なお、これは外務省の中での徹底的な調査ということですが、それに加えてOBの皆さんでいろいろな発言もあります。それからその資料の評価というものも第三者の目で行うことも必要になるだろうと思います。したがって将来的には、一ヶ月プラスアルファ位の先には外部の有識者による委員会を立ち上げて、そこでも併せ調査をし、同時にOBからもヒアリングをしてもらい、必要があれば米国にも調査に行き、外務省の中で見つかった資料を更に精査してもらおうと考えております。併せてこの密約という問題が議論された時代状況ということも併せて検討してもらう必要があるのではないか。何故こういうことになったのか、ならざるを得なかったのかということも、外部の目で分析をしてもらい、全体トータルとして国民に対する説明責任を果たしたいと考えております。併せて、密約に限らず外交に関する情報公開については、現在、基本的に30年、一定のルールに基づいて公開ということになっておりますが、必ずしも十分な公開になっていないと考えています。例えば、日本では公開されていないけれども、韓国や米国では公開されているということもあります。したがって公開のルールそのもの、運用についても有識者に併せて議論をしてもらい、必要があれば新しいルール、新しい運用というものについて提言を頂きたいと考えております。それだけの想いを持って、とりあえず先ず中にある資料を徹底的に調査してもらいたいということで、命令を発したところでございます。
•いわゆる「密約」問題に関する調査命令について(国家行政組織法第10条及び第14条第2項に基づく大臣命令)(PDF)
「密約」問題
(問)有識者委員会ですが、11月末の外務省内の調査が終わってから立ち上げて、更にそこから一ヶ月位かけてその調査報告を見ると言う事ですか?
(外務大臣)必ずしも全部終わる必要は無いと思います。これから調査やるわけですから、今すぐ立ち上げる必要はありませんが、私は重なって活動している時期が必要だと思います。そうでないと時間が非常にかかってしまいますので、11月末に結論が出る、それを全て待つ必要はないというように思っています。
(問)文書の掘り起こしなんですけども、この部分については、中の調査だけで行うのか、第三者委員会もそれにあたるのか、それからその第三者委員会の調査はいつ頃目処に完了したいと考えていらっしゃるのですか?
(外務大臣)一つ一つの資料を外部の人が、例えば一時的に公務員の身分を与えるにしても、守秘義務の問題もありますから、それを全部チェックするというのは現実的では無いと思います。しかし、微妙な問題資料については、直接見てもらうという事もあり得るというふうに思っています。いつ頃までにというのは、ちょっとやって見なくては分かりませんが、そう長く時間をかける問題では無いと思いますので、11月、例えば11月初め位から平行して検討をはじめてもらって、そう時間をかけずにしっかりとした提言をもらいたいということを考えています。しかし、最も大事な事はまず事実をちゃんと出すということだと思います。そう言う意味では外務省の中での調査というものを非常に重視しているという事でございます。
(問)この密約の問題について、これまでに非公式に引き継ぎがされていたと思うのですが、この中で薮中次官からのこれまで説明を受けられて、現在、密約があるという蓋然性についてどのような心証をもっていますか?
(外務大臣)まあ、私自身は、今日外務大臣になったばかりで、現時点でそう言う引き継ぎとかそう言う事は特に受けておりません、先ほど、外務省に初めて足を踏み入れた訳であります。それから、私はかなりの確度でいわゆる密約と言うものは存在しているというふうに思っています。ただ、それは確たる根拠がある訳では有りませんので、今後の調査を待ちたいというように思っております。
米軍再編問題
(問)先ほどの官邸での会見でもお答えになっていましたが、米軍再編について2点伺いします。県外、国外移設の表記について、沖縄ビジョンには書いてあるけれども、マニフェストには書いていないというご説明でしたが、マニフェストに書いていないと繰り返しご説明されたということは、県外、国外移設を目指すという姿勢を変えられたと受け止められかねないですが、姿勢を変えられたのか、それとも変わらず県外、国外移設を目指すということで理解して良いのでしょうか。
(外務大臣)目指すという姿勢は変わっていません。ただ、沖縄ビジョンには書いていますが、マニフェスト、或いは連立政権樹立の政策にはそこまで書かなかったということです。想いは変わっていませんが、あまりに手足を縛ってしまうと身動きがとれないということにもなりかねない訳で、多少選択肢を増やすということもあるんだと思います。それは普天間の問題だけを米国側と協議するわけではなくて、様々な問題、全部机の上に並べるべきとは思いませんが、年内で言えば、普天間の問題とアフガニスタンとパキスタン支援の問題という2つの大きなテーマがあるわけで、これは直接的には関係のない話ですが、実際には各ステージで米国側と議論しなければならない、そういう場面もあるかもしれません。そういう意味で、我々は絶対譲りませんよって全部言ってしまっては交渉になりませんので、少し懐を大きくして交渉したいと考えています。想いは変わっていません。
(問)米軍再編問題に関して、年内に着手すべき課題というふうなご認識をお持ちということですが、再編見直しの交渉を始めて、目標としてはいつ頃までに新たな答えを出したいとお考えですか。
(外務大臣)相手のある話ですから、そう簡単には申し上げられません。ただ、どんどん米軍再編の中で、辺野古への移転の問題というのは進んでいますから、放置しておけば既成事実がどんどん積み重なっていくということになると思います。従って、我々としては議論は急がなければならないと考えています。
(問)普天間の県外移設問題に関して確かマニフェストに書いていないんですけれども、日米地位協定の改定を提起するというのはマニフェストに書いてありまして、三党合意にも書いてあるわけですけれども、これについては具体的にどの部分を改定したいとお考えでしょうか。刑事裁判権の問題なのか、それとも環境評価なのか、政府は具体的にどれを想定しているのでしょうか。
(外務大臣)私の判断は、何からやっていくのかということを明確にしたほうがいいと思います。そしておっしゃるように地位協定は、全面的な改定案ですが、三党で改定案も出したという経緯もあります。非常に重要な問題だと思います。しかし、時間的に迫られている問題は米軍再編、基地の問題だと考えております。そういうことから考えると、どちらを急ぐかといえば、私は米軍再編・基地の問題をより急ぐべきだと、地位協定の問題はもちろん、こちらにとってすべての要求が通れば良いのですが、やはり相手のあることでありますので、ある程度絞り込んで、そして議論に入ったほうがいいと。その議論に入る時期は、私はお互いの信頼関係に基づいて、米軍再編の問題とか、あるいはパキスタン・アフガニスタンの問題について解決策が見出された、その次のステップの問題ではないかな、と個人的には私そう考えているところです。どういうところを絞り込むべきかという勉強は続けていきたいと思います。
(問)米軍再編ともかかわってくる最初の再編ロードマップでのグアム移転協定が進んでいるんですけれども、これはたとえば二十八億ドルの負担等を新たな合意ができるまでは有効だとお考えなのか、予算執行の停止を考えるのか、その辺はいかがですか。
(外務大臣)そこまでいけばこれは完全な対立になってしまいます。話はそう延々とやるわけではありませんので、私は現実的な判断が求められると思います。お互いの信頼関係に基づいて、より良い解を求めて議論をするということであって、対立することが目的ではありません。
インド洋における補給支援活動の延長
(問)インド洋での給油問題ですが、来年1月で現在やっているものが切れますが、継続されるお考えでしょうか。それともやはり見直しのお考えでしょうか。
(外務大臣)選挙の時に申し上げましたし、選挙の後でも申し上げましたが、「単純延長はしない」というのが私の考えです。
(問)それに変わる何か別の支援を考えてらっしゃるということでしょうか。
(外務大臣)「単純延長はしない」ということは、それ以上でもそれ以下でもありません。
(問)また更なる追加支援ということについては、どうお考えでしょうか。
(外務大臣)この問題とは直接リンクしている話ではありませんが、、現在のアフガニスタンの状況を見れば、或いはパキスタンも含めてですが、かなりしっかりとした支援というものを日本は求められていると考えています。それが具体的にどういうものがあり得るのかしっかり議論していきたいと、国民の皆さんにとっては税金を使うわけですから、国民の皆さんにも納得して頂かなくてはいけません。そういう前提の中でしっかり議論していきたいと考えています。
事務次官会見の廃止
(問)事務次官会見の廃止についてですが、先ほど岡田大臣以外の大臣にかなり質問がありましたが、会見を廃止するのは政治主導を必ずしも邪魔するとは思えないのですが、過去の事務次官会見では、官僚が隠そうとしていたことが明らかになったりすることもあった訳で、たとえば岡田さんが幹事長の時におっしゃっていたような世論を誘導するおそれがあるということでしたら、その回答を聞いた時点で大臣が何か言えば良いわけですし、会見を中止するという意味合いが分からないのですが。
(外務大臣)例えば国会でも、今や局長の答弁は原則無いということになっています。勿論、これは完全に貫徹されている訳ではありませんが、大臣、副大臣の答弁だけで、それが何か知る権利を害しているとか、そういうことは全く成り立たないと思っています。これからは大臣や副大臣、或いは政務官が会見をするということですから、回数は増やさざるを得ないかもしれませんが、それが何か問題になるとは思っていません。ただ、皆さんも取材には行かれたりしますので、そういうことを考えると、その延長としての懇談のような形で行われることを私は制限する理由はないと思っています。
北朝鮮問題
(問)北朝鮮について、伺います。先ほどの会見では核、拉致、ミサイルを包括的に解決するとのことでしたが、全面解決に向けて、民主党自ら率先して政府間対話、北朝鮮に対話を求めていく考えはあるのでしょうか。
(外務大臣)これは、政権が変わったので、いろいろな動きがあるかもしれません。ただ、気をつけなければいけないのは、先ほどの質問に出ましたが、再調査という、拉致の問題ですが、それについて、(北は)ほぼゼロ回答で、全く約束を果たしていないわけです。それから核、ミサイルの問題についても核実験を行ったり、核の保有を宣言したり、ミサイルを飛ばしたりとやりたい放題というのが現状ですから、こういう状況にあるにも関わらず、話し合いというのは違うと思います。強く出れば、話し合いに結びつくんだという誤ったメッセージを送ることにもなりかねません。今はしっかりと制裁を強化していく中で、しかし制裁をするということは話し合いのテーブルに着かせるために制裁をしている訳ですから、その制裁を進めていく中で、北朝鮮側に何らかの変化があれば、変化があればという意味は、今言ったようないろんなことを止めて話し合いをきちんとするという状況が生まれれば、六カ国協議の枠の中で話し合いをしていけば良いことだと考えています。
(問)同時に現在六カ国協議が全く開かれていません。状況としては、正に大臣がおっしゃったような状況があって、政府が全く出てこないという状況がずっと続いています。この膠着状態をどう打開していくのか。米朝で二国間対話を北朝鮮が求めているようですが、そうした中で日本が独自に北との二国間関係を進展させていく余地があるのかどうかその点についてはいかがでしょうか。
(外務大臣)これから事務方ともよく議論していかなければいけないと思います。その点については、基本的には慎重に考えるべきだと思っています。先ほど言った理由と同じです。
(問)通常国会で廃案となった、北朝鮮に対する制裁に関する貨物船検査、特措法案をどのように取り扱われるのでしょうか。
(外務大臣)この法案は急いで成立させたいと考えております。このことは、選挙の最中も言ってきました。(開会中の)現在の特別国会という訳にはいきませんが、出来れば、次の臨時国会で成立を目指したいと考えております。自民党も自ら作られた法案ですから、そういった意味で、そう議論無く成立が可能なのではないかと期待しております。
(問)北朝鮮情勢について、制裁を強化しながら北朝鮮が変化するのを待つということで、前の自民党政権と現政権では、北朝鮮に対する政策の違いはないということでしょうか。
(外務大臣)前の政権と言っても、いつからカウントするのかと言った問題もあるかと思います。米国では、ブッシュ前大統領の時代には、現北朝鮮政権を変えると言われた時期がありましたし、同じように我が国の政権の中でも体制の転換ということを強調された総理もいたかと思いますが、我々新政権は、そのような考え方には立ちません。そういう可能性を感じれば、益々話し合いという可能性は遠のいてしまうと思います。基本的には、ブッシュ前政権の時には、ブッシュ前政権の間にということで、時間の利益は、北朝鮮側にあったかもしれませんが、今やオバマ政権が誕生して、そういう意味では時間の利益は、こちら側にあると思います。したがって、焦ることなくじっくりと対応していけばいいと思います。もちろん、拉致の問題等もありますので、ゆっくり構える訳にはいきませんが、焦って我々からいろいろな提案をするとかいう必要はないかと思います。
副大臣、政務官に関する人事
(問)副大臣、政務官の人選についてお尋ねします。
(外務大臣)副大臣、政務官の人選について、私としては、平野官房長官に希望は述べていますが、恐らく同じ人に集中する現象があるかもしれませんし、委員長等の国会人事とも重なってくるので、調整が必要だと思います。本日の閣議、閣僚懇談会でもそういった話は出ました。私としては、明日の然るべき時間までに調整してもらうことを期待しています。具体的な名前は、今申し上げられる段階ではありません。
(問)副大臣、政務官の人事に関して、今、名前を述べられる段階ではないということですが、希望を述べる段階で、どういった基準で、どういったプライオリティーを勘案されて希望を出されたのでしょうか。
(外務大臣)一つは、個人の能力。もう一つは、チームとしてしっかり活動できるという視点で、私の方でしっかり候補者を選択させて頂きました。
国家戦略室と外交政策の関係
(問)菅直人副総理が担当される国家戦略室と外交政策をどのように両立させていくのでしょうか。
(外務大臣)国家戦略室は、未だ法律に基づく組織ではありませんので、弾力的に考えなくてはいけませんが、基本的に私の理解は、一つは予算に関すること、当面はこのことに相当なエネルギーを割かれると思います。予算に加えて、鳩山総理が、具体的にこの問題について、国家戦略室で取り扱えと指示される問題、その中には外交も含まれるでしょうが、そういった問題を国家戦略室で取り扱うことになると思います。現時点では、外交に関する指示は出ていないと理解しています。
おそらく次の臨時国会では、国家戦略室を法律の形で出すことになると思います。国家戦略室をきちんと位置づけて、所掌の問題等をきちんと整理することになると思います。
日米外相会談
(問)早ければ来週にも、日米外相会談が行われる可能性があると思いますが、その一回目の会談で外務大臣は、密約の問題や米軍再編の問題等を提起される考えはありますか。
(外務大臣)密約の問題については、調査を開始したという事実は伝えなくてはならないと思いますが、米国側にも影響が及ぶ可能性はあると思います。どこまで公開できるかという、我が国だけでは判断できない問題も出てくるかもしれませんので、そのようなことは米国に断っておく必要はあるかと思います。その他の個別具体的な話について私は、初めて米国側と会うので、もう少し時間を見た方が良いのではないかと思います。双方の信頼関係を深めあうことを中心に、日米同盟の重要性の共通認識を持つことに力点を置きたいと考えております。
軍縮・不拡散
(問)外務大臣は、かねてより軍縮・不拡散に熱心に取り組んで参りました。前任の中曽根外務大臣も、我が国で来年にも軍縮の国際会議を開催したいとの考えを表明されましたが、岡田外務大臣は、そのような会議を開催されるお考えはありますか。
(外務大臣)私は詳細を承知している訳ではありませんが、そのような機会があれば是非活かしたいと考えております。そもそも核の核軍縮、不拡散の問題については、今年の秋に広島で、共同議長である川口元外務大臣とエバンズ元豪外務大臣による報告書が出来上がって、会議が開催されるということもあります。様々な場面で我が国がもっと前に出るべきだという様に考えております。先般、川口元外務大臣からは、現状についていろいろ御報告を頂きました。出来れば、エバンズ元豪外務大臣とも直接話したいというメッセージを、近々エバンズ元豪外務大臣と会う予定の皆様に託したところであります。
集団的自衛権
(問)集団的自衛権の問題ですけれども、現在の政府解釈だと集団的自衛権の行使は禁じられているわけですけれども、これを見直す必要性があるとお考えでしょうか。もしくは、鳩山政権においては政府解釈を踏襲するのでしょうか。
(外務大臣)これ(集団的自衛権の解釈)を変える、ということを(民主党の)マニフェストその他にうたったということはありません。そこは私の意見を言わせてもらうと、これを早急に変える必要はないと考えております。ただ安倍政権の下で四類型でしたか、さまざまな議論をいたしました。いろんな種類のものが含まれていたと考えますけれども、既存の解釈を少し広げる中で、あるいはそれで十分なものもあるかもしれませんし、基本的に集団的自衛権という概念を認めないとできないこともあるかもしれません。その辺の議論は必要だと思いますが、私は、集団的自衛権を幅広く認めていくということは、少なくとも憲法との関係でいえば、海外における武力行使に制限的であるという憲法9条の基本的考え方とかなり矛盾する問題だと思っています。
東アジア共同体
(問)大臣はかねてより東アジア共同体の構築ということをおっしゃっておられますけれども、具体的にどういったことをどういった時間軸で進めていきたいとお考えでしょうか。
(外務大臣)わたくしだけではなくて、実は鳩山総理も言われています。もちろんEUのように通貨も一つになったり、政治的な統合も進んでいくというようなイメージではなかなかありません。やはり体制の違う国がその中にあるわけです。みんなが民主主義国家というわけではありませんから、政治的な統合というのはかなり先の話だと思います。しかし、経済的な相互依存関係という意味でいえば、EUほどではありませんがNAFTAよりは相互依存が進んでいるし、最近更にそれは深まっております。そういう経済面での相互依存の深まりということを、経済だけではなくその周辺にも広げていく、例えばエネルギーや環境、保健とかインフルエンザの問題とか、ということで多層的に相互依存を深めていくということが、私はこの地域の平和と安定にも大いにプラスになると考えております。ですからできるところからことからしっかりやっていく、というアプローチで当面いいと思います。
日中関係
(問)日中関係ですが、まもなく日中韓首脳会談もあると伝えられておりますが、今後どういう風に中国と向き合っていくのか。近く中国のGDPが日本を追い抜くと言われています。大変な勢いで経済、各方面で国力をつけてきておりますけれども、その中国というのを脅威と見るのか、あるいは違う見方をされるのかがまず一点。それから、これまで日本の歴代内閣と中国共産党との間で、四つの重要文書があります。最近では福田元首相と胡錦濤国家主席との間で戦略的互恵関係の共同声明を締結したわけですけれども、これを踏襲するのか、この二点についてお伺いしたいと思います。
(外務大臣)まず後者から言いますと、戦略的互恵関係という言葉は、鳩山さんは既に使われています。したがって、基本的に四つの文書についてはそのまま引き継がれていくと、私は判断しております。戦略的互恵関係とはなかなか分かりにくい言葉で、僕は普通の人が聞いてわかるかなという感じはありますけれども、しかしこれは中国側も熱心に唱えられた単語、ワーディングでありますので、それをそのまま引き継いでいいのかなと、鳩山首相もそのまま使われておりますから、そう思います。脅威については、確かにGDPで見れば日本は追い抜かれるということかもしれませんが、人口が10倍違うわけですから、あまり大げさに考える必要はない。むしろ中国の経済が非常に成長しているということのメリット、恩恵もたいへんもあるわけで、現に日本の経済というのはその恩恵を享受しているわけですから、あまりネガティブに考える必要はない。しかし、それだけ政治的にも経済的にもパワーを持った国がすぐ近くにあるということ、プラスマイナスという観点ではなく、そういう事実はしっかりと踏まえて、様々な政策をとっていく必要があると思います。
核の先制不使用
(問)核の先制不使用政策について聞きたいのですが、核兵器廃絶に向けた取り組みに関して、官邸での会見で300日プランによる少し長期の取り組みになるという話をされていたと思いますが、先程述べられたエバンス、川口両氏の核軍縮委員会が、核先制不使用への支持を米国にも求める内容を主とした報告書を年内にまとめ、米国が核態勢の見直しをやはり年内に国防総省を中心となってまとめて議会に提出するようです。今まで日本政府は一貫して化学、生物兵器に対しても先制使用で守ってくれるよう求めてきたと思うのですが、この機会に年末にかけて日本を守ってもらうために核の先制使用は不要だというメッセージを何らかの形で発するお気持ちはございますでしょうか。
(外務大臣)私の持論はそういうことですが、今回大臣になりましたので、事務当局によく聞いてみたいと思います。エバンスさん、川口さんの報告書は政府のものではありません。有識者としての世界各国から集まった人たちの一つのレポートでありますので、私は日本政府がいかなる考え方を採ったとしても、それとは独立して自らの信ずるところに従ってレポートをおまとめになったらどうかと考えております。
(問)政府はとしてトラック2のレポートであっても、そういった何らかの意思表示がないと、結局は報告書も絵に描いた餅になりかねないと思うんですけれども。
(外務大臣)報告書が提出された上で政府としてもう一度きちんとした議論をすればいいのではないかと思っています。ただ、核の先制使用、例えばそれが大量破壊兵器に対する報復であったとしても、つまり生物兵器や科学兵器を違法に使われたことに対する報復であったとしても、核を先制使用するということは倫理的にも、そして核を将来なくしていこうという考え方からいっても、なかなか認めがたいことではないかという風に私は現時点では思っております。このことは核で攻撃を受けたときに核での報復を禁ずるものではありませんので、先制使用はアメリカだけではなく、核を保有している国々が先制使用しないということをお互い確認するというのは、どこまで実行を確保できるのかという問題もありますけれども、核廃絶に向けての一歩になるのではないかという風に現時点では思っています。
併せて、核を持っていない国に対する核の使用は、他の大量破壊兵器それ自体が違法となっていますが、核はそういう扱いにはなっておりません。核を持っていない国に対して核保有国が核を使うというのは、私はそれ自身が違法だという議論が成り立つ可能性があると思っています。
WTO交渉
(問)WTO交渉、あるいはEPA、FTA交渉でのスタンスに関しまして、大臣は前政権までと違ったカラーを出していくことになるのか、さらに、今月上旬のWTO非公式閣僚会合に閣僚が出席しなかったことは前の政権だったということがありますが、閣僚が参加できなかったことへのお考えをお聞かせください。
(外務大臣)閣僚が出席しなかったことは無責任ではないかということは、我々はそのときに申し上げたことであります。そして、これからどういうスタンスで臨んでいくかということは、まだ政権が今日始まったばかりなので議論しておりません。関係省庁とよく議論しながら対処方針を考えていきたいと思います。現時点ではまだ決めておりません。