トピックス

2009.12.02|夕刊フジ

夕刊フジコラム「ズバリ直球」09年12月3日号

夕刊フジ 09年12月3日号掲載

今回は「外交密約」問題を取り上げたい。
 
私は9月16日に外相を拝命した直後、薮中三十二事務次官に対し、日本への核持ち込みの黙認など4つのいわゆる「密約」について徹底調査を行うよう、大臣命令を出した。
 
自民党政権時代、歴代首相や外相らは密約の存在を完全に否定してきた。しかし、米国では密約を裏付ける資料が一部公開されているうえ、次官OBの中から密約を認める証言も報じられていた。
 
外交は国民の理解と信頼がなければ成り立たない。密約問題を放置すれば、国民の不信感は高まる一方だ。私は野党時代から「事実を明らかにすべきだ」と主張してきた。政権交代を果たした今こそ、密約問題に決着をつける絶好の機会だと確信したのだ。
 
誤解してほしくないのは、私は密約の暴露を目的にしているわけではない。「自民党政権はケシカラン」と批判するためでもない。
 
外交交渉では当然、表に出せない話もある。相手国との関係もある。それは理解している。ただ、4つの密約は1960年の日米安保条約改定と74年の沖縄返還に関するもので、30年、40年以上前の話だ。民主主義を機能させるためにも、一定期間が過ぎれば外交文書は公開するというルールを構築すべきだろう。
 
例えば、25年後とか30年後に公開されることが決まっていたら、当事者たちにも自制が働く。先日、麻生前内閣が総選挙の翌々日に官房機密費2億5000万円を支出していたことが発覚したが、多くの人が「なぜ、選挙後に多額のお金が必要なのか」と疑問に思ったはず。あれも将来にわたり収支非公開としているために生じた出来事といえる。
 
先週、密約にかかわる内部資料を検証する第三者委員会を設置した。座長の北岡伸一東大教授をはじめ、日米外交の専門家6人を選んだ。資料が膨大なため、省内に部屋を設けて、メンバーは資料を24時間閲覧できるようにした。外務省参与に任命し、守秘義務もかけた。時代背景なども含めて、報告書を公表したい。
 
密約が解明されれば、現在の問題として、難しい課題も出てくるかもしれない。日米両国政府間の話し合いも必要になるだろう。ただ、米政府関係者に密約問題について話した際に、向こうは笑っていたことも付け加えたい。情報公開が進んだ国としては、今までの日本政府の対応を滑稽に感じたのだろうか。ともかく、外交への国民の理解と信頼を取り戻すため、今は事実関係を明らかにすることに集中したいと思う。

(C) 夕刊フジ




TOP