外務大臣会見記録(平成21年12月11日)
外務大臣会見記録(平成21年12月11日(金曜日)16時20分~ 於:本省会見室)
○冒頭発言
(1)習近平中華人民共和国国家副主席の訪日について
(2)ケビン・ラッド・オーストラリア首相の訪日について
(3)政務三役会議
○習近平中華人民共和国国家副主席の訪日
○米軍再編問題
○米朝協議
○日米関係
○防衛大綱の見直し
○捕鯨問題
○その他
冒頭発言
(1)習近平中華人民共和国国家副主席の訪日について
【大臣】それでは私(大臣)から三点。まず第一点は、習近平中華人民共和国国家副主席の訪日についてです。12月14日(月曜日)から16日(水曜日)まで、我が国政府の貴賓客として、訪日する予定です。滞在期間中、天皇陛下の御引見、鳩山内閣総理大臣や私(大臣)と会見を行うほか、各界要人との会見、九州視察等を行う予定です。この度の訪日は、日中両国間のハイレベル交流の一環として実施されるものでありますが、習近平国家副主席には、この訪日を通じて日本に対する理解を深めていただき、今後の両国関係の更なる発展の為の基礎を、一層盤石にしたいと考えています。
(2)ケビン・ラッド・オーストラリア首相の訪日について
【大臣】もう一点は、ケビン・ラッド・オーストラリア首相の訪日についてです。15日(火曜日)、オーストラリアのケビン・ラッド首相がCOP15出席の途中でありますが、訪日する予定です。同日、鳩山総理とラッド首相は首脳会談を行い、気候変動、核軍縮・核不拡散及び二国間関係について意見交換を行うとともに、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」のギャレス・エバンズ及び川口順子両共同議長より同委員会の報告書を受け取る予定です。また首脳会談に先立ち、私(大臣)もラッド首相の表敬訪問を受ける予定であります。
(3)政務三役会議
【大臣】もう一点、政務三役会議については、特に今日お伝えするものはありません。私(大臣)から防衛大綱の見直しに関する閣僚委員会、閣議、閣僚懇の報告をいたしました。武正副大臣から、在勤手当ワーキンググループの検証結果を発表した旨の報告がありました。外務省政策会議の在り方について若干議論が出まして、西村政務官から少し従来のやり方で十分かどうか検討した上で、もう一度(政務)三役会議に諮るというお話がありました。
習近平中華人民共和国国家副主席の訪日
【朝日新聞 東岡記者】冒頭御紹介がありました、陛下と習近平国家副主席の御引見についてお尋ねします。本日午前中の平野官房長官の会見で、総理の指示によって急遽調整がされたとのことです。もともとは1か月前に申請が必要なものが特例的に扱われているようですけれども、この経緯と、政治利用ではないかという批判があるわけですけれども、これに対して大臣はどうお考えになりますでしょうか。
【大臣】経緯は官房長官が述べられた通りだと思います。それから、「政治利用」というのは、陛下が外国からのお客様にお会いすることが「政治利用である」というようには思っておりません。
【共同通信 斉藤記者】今の御引見について、お伺いします。このいわゆる「1か月ルール」というものは、これまで基本的には厳格に運用されてきたと聞いています。今回、中国の習近平副主席を、このルールの枠から外れる形で会見に応じた場合、他国の方々との間で若干の不平等・不公平が生まれるのではないかとも推察されるのですが、この点についてはいかがでしょうか。厳格に運用するか、それとも柔軟に運用するか、その点について御認識をお願いします。
【大臣】基本的に「1か月ルール」は、陛下のご健康ということを考えて設けられているものだと承知しております。陛下のご健康に支障がないという範囲で今回の決定がなされたと考えております。詳細については、むしろ官邸で具体的に働きかけをされたことでありますので、私(大臣)がお答えしないほうがいいと思います。
【朝日新聞 東岡記者】習近平国家副主席の今回の訪日の意義ですが、ポスト胡錦涛の有力候補であると言われている一方で、日本についてはあまり縁がないという指摘もあります。今回の来日の意義について将来の主席としてどのような関係を作っていきたいか、改めて大臣のお考えをお聞かせください。
【大臣】訪日経験があまりない、或いはないかもしれません。若い頃のことは承知しておりませんけれども、少なくとも中国の要人として来日された経験はないように聞いております。折角のこの機会、日本としても大いにこの機会に習近平国家副主席に日本を理解して頂く、或いは逆に我々としても習近平国家副主席の人となり、考え方について十分に理解をさせて頂く貴重な機会だと思っています。
【共同通信 斎藤記者】もう一度「1か月ルール」に話を戻したいのですが、一般論として、この「1か月ルール」を外務省として、これは宮内庁と外務省(が担当)ですか、今後も守っていくべきものなのかどうか、これについてもご見解をお願いいたします。
【大臣】これは外務省というよりも、宮内庁の方でお決めになっている一つの考え方だというように理解しております。外務省としては、なるべく多くの外国のお客様のご希望があれば、陛下にお会いしていただきたいという思いはあります。しかし、その一方でご健康のこともあるので、こういうルールを設けておられるというように考えております。
米軍再編問題
【朝日新聞 内田記者】米軍普天間飛行場の関係でお伺いします。鳩山首相はCOP15の前に米国側に政府の方針を説明して理解を求めていきたいと話しておりましたけれども、何らかの政府方針が現時点で固まったのでしょうか。もし、固まっていないとしたら、大臣の感覚では今、何合目くらいまで登ってきているという受け止めでしょうか。
【大臣】今、検討中です。何合目というのは、人によって違うと思いますし、私(大臣)があまりコメントしない方がいいと思います。なるべく早く政府の方針を固めたいと考えています。
【時事通信 水島記者】先程、鳩山総理と北澤防衛大臣と岡田大臣が普天間基地問題に関して意見交換をされていたと思いますが、防衛大臣のグアム視察を受けて、どのような協議があったのかということと、グアム移転そのものに関して岡田大臣はどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。
【大臣】前原国土交通大臣、平野官房長官も入って5者での意見交換を致しました。その中で、グアム移転についての議論は出ておりません。私(大臣)はどう考えているかというのは特に申し上げるべきことはありません。
【フリ-ランス 岩上氏】普天間基地問題に関連してお尋ねします。国民新党の下地幹郎政調会長が本日渡米して米国の要人と会談をしてくるという話を伺っております。会談相手としては、キャンベル国務次官補、ケビン・ベア国務省日本部長、グレグソン国防次官補といった名前も出ております。こうした二元外交ともいうような動きが連立政権内部で起こっていることについて、プラスの面とマイナスの面もあると思いますが、岡田大臣はどのようにお考え、どのように受け止めていらっしゃるかお聞かせ願えますでしょうか。
【大臣】必ずしも二元外交という認識はありません。個人の資格で行かれた訳で、別に政府の特使等の位置付けは全くありません。私(大臣)も野党時代には随分ワシントン、或いはその中の国務省や国防省に行っておりました。そういう自由はあると思います。米国側には政府の特使とか、政府の見解を述べに行くとか、或いは意見交換するとかという立場ではないということは米国側も承知しております。
【共同通信 上西川原記者】普天間飛行場問題ですが、日米合意では、2006年のロ-ドマップでは名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部にV字型滑走路を造るということが明記されていますが、今後の交渉としてV字型滑走路を造らないという選択肢はあるのでしょうか。仮に造らないとすると、日米合意を破棄するということになるとの認識をお持ちでしょうか。
【大臣】今、まさしく方針を検討しているところですので、あまり個別のことに私(大臣)がコメントするべきではないと思います。
【ドイツTV 西里記者】普天間基地の問題について、先頃、東京に上京していた宜野湾市の伊波市長は「海兵隊は全部、殆どの実戦部隊はグアムに移転するのではないか。しかもグアムにも、事実上70機程度のヘリコプターの施設が出来ている」と言われ、うがった見方をすれば、「グアムの代理基地建設のための思いやり予算を確保するために、海兵隊もやはり(沖縄に)残るのだ」という説が報道され始めております。その辺について、どのように理解されていらっしゃるのでしょうか。
【大臣】伊波市長の方からそういうお話を少しお伺いしましたが、私(大臣)は「根拠がよく分からない」と申し上げました。伊波市長の資料によれば、「誰々と会ったときに、このように言っていた」ということが、いくつか資料の中に挙げられていました。これは、言った、言わないの話であり、確認のしようがありません。グアムにそういう施設が出来るということは、緊急時を考えれば、そういう施設を持つということはあり得る話であり、だから、普天間からヘリコプターがなくなるというように直結しない問題だと思っております。
【日経新聞 山内記者】普天間問題です。社民党は、国外と県外への移転を主張されていて、具体的にはグアムだとか、硫黄島という話をされています。これについて、今までのワーキング・グループでは、検証対象となっていないと承知しますが、これからの検証の可能性について、どのように考えていらっしゃいますか。
【大臣】ワーキング・グループで検証することは、ワーキング・グループの本来の役割とは違いますので、考えられません。それ以外にどうするかということは、これからの全体の方針に関わる話ですので、今コメントしない方がいいと思います。
【J-CASTニュース 亀松記者】普天間に関連して日米関係の問題についてお伺いします。日米関係について、米国側が不信感を強めているというような報道が強まっているように思われます。前回もそういうお話がありましたが、現時点での日米関係についての危機感というか、その辺りのご認識をお伺いしたいと思います。
【大臣】前回お話したことと変わりません。したがって、なるべく早く方針を決めるべきだと思っております。
【NHK 梶原記者】普天間の関連ですが、政府内、特に官房長官などがそうだと思いますが、普天間飛行場の移設先が決まる決まらないとは別に、危険性の除去、或いは負担の軽減というものを先行すべきだという意見も出ているようですが、これについて大臣はどのようにお考えになっているでしょうか。
【大臣】先行するというのは、日本単独でできることでは恐らくないと思います。現時点で聞けば、米国側は「約束を守って下さい。(約束を)果たして下さい」という答が返ってくると思います。したがって、官房長官も入ってこれからの方針について議論している訳ですから、そのことを踏まえて、今ご質問があったことについても考えていけばいいと思っています。
【フリーランス 上杉氏】官房長官と普天間についてですが、一昨日の記者会見で平野官房長官が普天間の移設に関して、「住民の移転もあり得る」というような発言をされたということで、私は官房長官の記者会見に出れないので、正確な引用はできないのですが、そのような報道がありましたが、政府内で官房長官の発言に関して検証されたという経緯があるのでしょうか。
【大臣】私(大臣)は聞いておりません。
【ビデオ・ニュース 神保記者】普天間に関連して、米国側が日米間に不信感という話がありますが、その不信感についてお伺いしたのですが、それは「日本の政府が一回約束したことを実行しないような政府であることへの不信感」なのか、それとも「日本が日米同盟について、これまで米国が理解してきたもの、日米間で同意されてきたものと違うような考えを持っているのではないかという不信感」なのか、不信感の中身について、もう少し詳しく教えて頂けますか。
【大臣】私(大臣)の理解は前者です。約束は守ってもらいたいということで、それが守られないとすれば、果たして信頼できるのかという話だと思います。
【ビデオ・ニュース 神保記者】後者ではないということですね。
【大臣】違います。
【フリーランス 岩上氏】普天間に関連して、10日発売の今月号の中央公論に、守屋元防衛次官の手記といいますかインタビューが掲載されております。この内容を大臣はご覧になったか、或いは、その内容についてお耳に入れられているでしょうか。その中では、今までの普天間の13年間にわたる経緯が書かれており、「不透明に事業規模が利権がらみで拡大してきた」というような記述があるのですが、こうした点も含めて検証、或いは検討されているのか、その点についてお聞かせください。
【大臣】私(大臣)はまず(ご指摘の)中央公論(の記事)を承知しておりません。見ておりません。守屋元次官がどういう趣旨で言っておられるのかも承知しておりませんので、コメントできません。ただ当事者でした。今の守屋さんの立場も考えると、それがどのくらい信憑性があるのかいうのは、私(大臣)には判断しかねます。
【共同通信 上西川原記者】今、関係閣僚等で協議中の政府方針について、当初「(COP15の12月)18日の日米首脳会談で一報を伝えることができれば」ということで年内ということがあったと思います。「それまでに取りまとめることができれば」というような趣旨の発言が総理からもあったと思いますが、そこが無くなった時点で、まだ年内に一定の政府方針というか、考えをまとめる必要があるとお考えでしょうか。それとも、越年する可能性もあるとお考えでしょうか。
【大臣】総理の18日というご発言は、私(大臣)は聞いておりませんでした。突然出て来たので、やや驚いた訳であります。私(大臣)が前から申し上げていることは、「なるべく早く方針を決めた方がいい」ということで、今日もそのことは申し上げておきました。
【フリーランス 上杉氏】普天間と官房長官について、官房長官が昨日の会見で同じように普天間に言及して、閣僚級のワーキング・グループに関して「普天間以外の議題設定の見直しをする」と発言をされたと報道にありましたが、その辺りについて政府内で話し合われて発言されたことかどうか、外務大臣の方からお聞かせ願えますか。
【大臣】その話は承知しておりません。いずれにせよ、ワーキング・グループというのは、何度も申し上げておりますが、今の現行案に至った経緯を検証するということで設けられたものです。それ以外の役割をするとすれば、もう一度日米間で話し合わなければいけないということで、日本だけで決められる問題ではないというように思います。かなり性格が変わりますので、何と言いますか、今のワーキング・グループの改編なのか、新たなものなのか、官房長官がどういう趣旨で仰っておられるのかわかりません。今のままではそれは出来ません。
米朝協議
【毎日新聞 須藤記者】ボズワース米北朝鮮政策特別代表の訪朝に関してお尋ねします。直接関係ありませんが、基本的に米朝交渉は六者(協議)の枠の中でということだ思いますが、それとは別に日本の戦略として、旧政権時代は六者協議の中で日米韓の連携を重視しつつという基本的な方針があったと思います。今後、米朝協議が進む中で、日本と米国と韓国の連携というものをどのように考えてやっていこうと思っていらっしゃるかをお話し下さい。
【大臣】今回のボズワース米北朝鮮政策特別代表の訪朝に関してもそうですが、北朝鮮の問題に関する日本と韓国と米国の意志疎通・連携というものは十分に図られていると考えています。
日米関係
【テレビ朝日 新堀記者】最近、在京米国大使館のズムワルト公使が山岡国会対策委員長や輿石幹事長代行といった(民主)党の方と会われたり、或いはルース米国大使が小沢幹事長と会いたいのではないかという話が私どもの取材では入ってきています。そういった件も大臣はご承知であるかどうか、ということと、それについてどのような感想をお持ちなのか、党の動き、党と米国との外交についてはどのようにお考えになっているかお聞かせ願えますでしょうか。
【大臣】事前に何か承知している訳ではありません。報道で国対委員長とズムワルト公使が会われたことは承知しております。それは(駐日)米国大使館の判断ですので、私(大臣)が何かコメントする必要はないと思います。
防衛大綱の見直し
【時事通信 水島記者】防衛大綱の閣僚会議についてお伺いします。来年度予算に関して、普天間の移設関連の予算の扱いとPAC3の予算の扱いで方向性が出ているようでしたら確認したいと思いますが、どうでしょうか。
【大臣】普天間の件は、今お答え申し上げられません。まだ方針が決まっていませんから、そのことも決まっていないと理解しています。それから、PAC3については、一定の方向性が本日の議論の中でも示されたというように思います。ただ、外に出るのはきちんとした発表文書で出るべきで、私(大臣)が中身について触れるべきではないと思っています。
捕鯨問題
【AP通信 岩佐記者】オーストラリアのラッド首相が、地元のラジオ局で「日本が調査捕鯨を止めなければ、法的措置も辞さない」と仰っているのですが、そのことについて、何か大臣の見解があれば、お教えていただけますでしょうか。
【大臣】「法的措置」という意味がよく分かりません。私(大臣)の理解では、調査捕鯨は認められた仕組みであるというように考えております。昨日もオーストラリアのメディアのインタビューを受けて申し上げたのですが、「食」というのは一つの文化でありますので、私(大臣)は鯨を食べるということは、日本の伝統的な文化であるというように思います。そのことが、もし駄目だというのであれば、もちろん絶滅しそうだから、それを控えるということはよく分かります。そうでないにもかかわらず「止めろ」というのであれば、私(大臣)は、お互いに寛容にそして多様な文化や考え方を認め合うということが基本であるべきだと考えております。
その他
【日本テレビ「バンキシャ」担当 小原記者】普天間移設問題が長引く中で、正直最近、大臣はお痩せになったのではないでしょうか。
【大臣】痩せておりません。残念ながら。
【日本テレビ「バンキシャ」担当 小原記者】体調の方は大丈夫でしょうか。
【大臣】全く問題ありません。
【日本テレビ「バンキシャ」担当 小原記者】正直、お顔の頬の方とか、目の下が窪んでいらっしゃるのではないかと心配しております。
【大臣】それは、この記者会見のせいですかね。全く問題ないです。大丈夫です。そういうことは、あまり公の場で言われない方がいいと思います。
【日本テレビ「バンキシャ」担当 小原記者】済みません。ありがとうございました。